説明

オゾン測定装置

【課題】 オゾン分解器の分解効率を自己診断することで、高頻度で校正を行い、高い稼働率を維持することができるオゾン測定装置を提供する。
【解決手段】 ゼロガス精製器4で精製したゼロガスを、オゾン分解器7を通過させたものと通過させなかったものとを測定し、ゼロガスのオゾン濃度を測定する。ゼロガスにオゾン発生器6で発生したオゾンを加えたガスを、オゾン分解器7を通過させたものと通過させなかったものとを測定し、発生したオゾンのオゾン濃度を測定する。発生したオゾンを加えたゼロガスをオゾン分解器7に通過させたものと、ゼロガス精製器4で精製したゼロガスを測定し、分解効率を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境大気中に含まれるオゾンを測定するオゾン測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシダントは光化学スモッグの原因となり、高濃度では粘膜への影響などが知られているほか、農作物などへの影響も報告されている。オキシダントとは、全オキシダント、光化学オキシダント、オゾン等の酸化性物質の総称である。全オキシダントは、中性よう化カリウム溶液からよう素を遊離するすべての酸化性物質の総称であり、全オキシタントの中から二酸化窒素を除いた物質が光化学オキシダントと呼ばれる。
【0003】
工場や自動車から排出される窒素酸化物及び炭化水素類(揮発性有機化合物)を主体とする一次汚染物質が、太陽の紫外線照射を受けて光化学反応を起こすことによって、オゾンなどの酸化性物質やアルデヒドなどの還元性物質といった二次汚染物質を生成する。この二次汚染物質のほとんどがオゾンである。
【0004】
環境大気中の光化学オキシダント自動測定機としては、吸光光度法、電量法、紫外線吸収法および化学発光法に基づく方式があり、現在では紫外線吸収法による測定がよく用いられる。
【0005】
オゾンは、紫外線吸収スペクトルから波長254nm付近での紫外線吸収領域に極大吸収帯を有している。この領域では、環境大気中に共存する一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、および二酸化窒素による吸収がなく、共存成分による測定への影響は比較的受けにくい。この方法では、光源から光学フィルタを通して得られる短波長の紫外線を測定光として、オゾンによる吸光度を測定する方法である。
【0006】
オゾン濃度は、ランベルト−ベールの法則に基づいて、気体の状態方程式を適用することにより、以下の式(1)で決定することができる。
【0007】
【数1】

【0008】
ここで、cはオゾン濃度(ppm)であり、I0は、オゾンを除去した場合の試料セル透過光の強度であり、Iは、オゾンを含む試料セル透過光の強度であり、εはオゾンの吸光係数(m−1)であり、Lは光路長(m)であり、pはセル内の圧力(kPa)であり、Tはセル内のガスの温度(K)である。
【0009】
前述のように、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、および二酸化窒素などの影響は無いが、ベンゼン、トルエンなどの有機物は波長254nm付近での吸収があり、その影響を補正するために、I0として、オゾン分解器でオゾンを分解除去した比較ガスを試料セルに導入したときの透過光強度を測定する必要がある(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】環境省水・大気環境局編、環境大気常時監視マニュアル、日本環境技術協会、第5版、平成19年3月、p110−116,189
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1記載の保守点検要領では、3ヶ月に1回の頻度で、標準オゾンガス発生器を用いて、オゾン分解器の分解効率を確認し、校正されている。
【0011】
しかしながら、たとえば点検した次の日にオゾン分解器の分解効率が低下してしまっており、次の点検時に分解効率の低下が発覚したとすると、それまでに取得したデータは全て利用することができず、3ヶ月間のデータ欠損することになる。
【0012】
単に、前回の確認時から3ヶ月間にわたる測定データを棄却しなければならないという事態が発生するだけではなく、その期間、光化学オキシダントの監視測定の重要な目的である「緊急時発令」措置が適正施行されなかったのではないかという重大な懸念が生ずる。
【0013】
本発明の目的は、オゾン分解器の分解効率を自己診断することで、高頻度で校正を行い、高い稼働率を維持することができるオゾン測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、環境大気試料中に含まれるオゾン濃度を測定する紫外線吸収方式のオゾン測定装置において、
オゾンを発生するオゾン発生器と、
オゾンを分解するオゾン分解器と、
オゾンの紫外線吸収を測定し濃度を測定する検出部と、
前記オゾン発生器で発生したオゾンを加えた試料ガスのオゾンを、前記オゾン分解器で分解し、オゾン分解後の試料ガスのオゾン濃度を測定することでオゾン分解器の分解効率を判断する制御部とを備えることを特徴とするオゾン測定装置である。
【0015】
また本発明は、前記環境大気からゼロガスを精製するゼロガス精製器をさらに備え、
前記制御部は、ゼロガスを測定し、前記オゾン発生器で発生したオゾン濃度を測定し、該試料ガスに含まれるオゾンをオゾン分解器で分解した分解後試料ガスのオゾン濃度を測定することでオゾン分解器の分解効率を判断することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記分解効率が予め定める分解効率よりも低くなったときは、警告を発することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、環境大気試料中に含まれるオゾン濃度を測定する紫外線吸収法式のオゾン測定装置において、
オゾンを分解するオゾン分解器と、
オゾンの紫外線吸収を測定する検出部と、
ゼロガスを精製するゼロガス精製器とを備え、
オゾンを測定するとともに、オゾン分解器を通過させた試料ガスとゼロガス精製器を通過させた試料ガスとを比べることで大気中に含まれる波長254nmに吸収のある有機化合物を測定することを特徴とするオゾン測定装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オゾン発生器で発生したオゾンを加えた試料ガスを生成し、この試料ガスに含まれるオゾンを、オゾン分解器で分解する。制御部は、オゾン分解後の試料ガスのオゾン濃度を測定することでオゾン分解器の分解効率を判断する。
【0019】
オゾン分解器の分解効率を自己診断することで、たとえば1時間に1回の測定により高頻度で校正を行い、高い稼働率を維持することができる。
【0020】
また本発明によれば、前記環境大気からゼロガスを精製するゼロガス精製器をさらに備え、前記制御部は、ゼロガスに、前記オゾン発生器で発生したオゾンを加えた試料ガスのオゾン濃度を測定し、該試料ガスに含まれるオゾンをオゾン分解器で分解した分解後試料ガスのオゾン濃度を測定することでオゾン分解器の分解効率を判断する。
【0021】
装置内で精製したゼロガスを用いて、発生したオゾンの分解を行うことで、より精度高く分離効率を測定することができる。
【0022】
また本発明によれば、前記分解効率が予め定める分解効率よりも低くなったときは、警告を発するので、装置のオペレータに迅速な対応を促すことができ、測定を停止するなどして稼働率をより高く維持することができる。
【0023】
また本発明によれば、オゾンを測定するとともに、オゾン分解器を透過させた試料ガスとゼロガス精製器を透過させた試料ガスとを比べることで大気中に含まれる波長254nmに吸収のある有機化合物を測定する。
【0024】
これにより、オゾンのみならず、芳香族炭化水素のような波長254nmに吸収のある有機化合物の測定もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態であるオゾン測定装置1の構成を示す概略図である。
オゾン測定装置1は、除じんフィルタ2、除湿器3、ゼロガス精製器4、ミニフィルタ5、オゾン発生器6、オゾン分解器7、試料セル8、オゾン処理機9、流量計10、温度センサ11、圧力センサ12で構成される。
【0026】
除じんフィルタ2は、オゾン濃度測定に影響を与えないよう、取り込んだ試料大気から塵芥を取り除くフィルタである。除じんフィルタ2としては、たとえば、オゾンの吸着や分解が少ない4フッ化エチレン樹脂などを用いることができる。
【0027】
除湿機3は、試料大気から水分を除去し、試料大気を所定の湿度状態に保持する。ゼロガス精製器4は、零位調整標準ガス(ゼロガス)を調製する装置であり、試料大気に含まれる不純物を酸化させた後、モレキュラシーブ等の吸着剤を通して精製したガスを供給する装置である。ミニフィルタ5は、ゼロガス精製器4から供給されるゼロガスに含まれる不純物を除去する。
【0028】
オゾン発生器6は、ゼロガスに水銀放電管による波長185nmの紫外線を照射し、大気中の酸素を反応させてオゾンを発生させる。
【0029】
オゾン分解器7は、試料大気中のオゾンを選択的に分解するための装置であり、たとえば、二酸化マンガンなどの分解触媒を含むカラムに試料大気を通過させることで分解させる。オゾン分解器7によってオゾンが分解されたガスを比較ガスと呼ぶ。
【0030】
試料セル8は、測定対象となる試料大気をその内部に一定の流量で流し、試料大気および比較ガスに紫外線を照射してそのときの吸光度を測定する。セルは光散乱やオゾンの吸着、分解能を有しない金属管、ガラス管、内面に4フッ化エチレン樹脂を塗布した金属管などを用いることができる。吸光度検出器は、石英窓と光電管検出器で構成する検出器、光学多層膜の干渉フィルタと半導体検出器で構成する検出器などが用いられる。試料セル8内の温度および圧力を測定するために、温度センサ11および圧力センサ12が設けられる。
【0031】
オゾン処理器9、測定が終了した試料大気に含まれるオゾンを分解、除去しオゾンを装置外に放出しないようにする。
【0032】
流量計10は、装置外の吸引ポンプから吸引することによって装置系内の流量を調整するにあたり、流量を測定する。測定値は、図示しない制御部へ出力され、制御部では測定された流量に基づいて流量調整を行う。
【0033】
オゾン測定装置1では、ゼロ校正、オゾン分解器7の分解効率診断などを行うために複数のガス流路が設けられ、これらのガス流路は分岐部分に設けられた切換バルブ(3ポートバルブ)を制御することにより適宜切り換えることができる。
【0034】
除湿器3から出た試料大気は、ラインa0−a1、a0−a2のいずれかに導入される。
【0035】
ラインa0−a1は、ゼロガス精製器4、ミニフィルタ5を通り、ラインb0−b1、b0−b2のいずれかに導入され、バルブV1,V2に到る流路である。ラインa0−a2は、直接バルブV2に到る流路である。
【0036】
ラインb0−b1は、オゾン発生器を通りバルブV1に到る流路であり、ラインb0−b2は直接バルブV1に到る流路である。
【0037】
バルブV2からのガスは、ラインc0−c1、c0−c2のいずれかに導入される。
ラインc0−c1は、オゾン分解器7を通りバルブV3に到る流路であり、ラインc0−c2は、直接バルブV3に到る流路である。
【0038】
ラインa0−a1、a0−a2の切り換えは、バルブV2のポートを切り換えることで行う。ラインb0−b1、b0−b2の切り換えは、バルブV1のポートを切り換えることで行う。ラインc0−c1、c0−c2の切り換えは、バルブV3のポートを切り換えることで行う。
【0039】
以下では、実際にオゾン測定装置1を各動作モードで動作させる場合について詳細に説明する。なお、動作モードは制御部によって切り換えることが可能であり、ユーザによる切り換え指示の入力があった場合、予め定める時間帯となったときに制御部の判断で切り換えるように構成される。
【0040】
(1)オゾン濃度測定モード
オゾン濃度を測定する場合の流路は、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってラインa0−a2に切り換えられ、さらにバルブV3によってラインc0−c2に切り換えられて試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(サンプル)とする。
【0041】
ABS(サンプル)の測定後、バルブV3によってラインc0−c1に切り換えられ、オゾン分解器7を通ってオゾン分解されたガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(オゾン分解後)とする。
【0042】
これらの測定が終了したのち、以下の式(2)によってオゾン濃度を算出する。
c(オゾン濃度)=fεL(ABS(サンプル)
−ABS(オゾン分解後)) …(2)
【0043】
ここで、f:ファクターであり、ε:オゾンの波長254nmにおけるモル吸光係数であり、L:セル長さ(光路長)である。このとき、オゾン分解器7はオゾンのみを分解するもので、芳香族炭化水素のように波長254nmに吸収のある有機物が入ってきても、オゾン分解器7によって、分解することがないので、ABS(サンプル)とABS(オゾン分解後)の差をとることでキャンセルすることができる。fについては標準ガス発生装置を使い濃度の分かったオゾンを導入して校正を行い、fを決める。標準ガス発生装置にはGPT(気相滴定法)によってオゾンを定めることができるものもある。
【0044】
(2)オゾン分解器7の分解効率診断モード
・ゼロガスの測定
オゾン分解器7の分解効率を自己診断するにあたって、まずゼロガスの測定を行う。
【0045】
ゼロガス測定の場合の流路は、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってa0−a1に切り換えられてゼロガス精製器4、ミニフィルタ5を通過し、ゼロガスが精製される。バルブV1によってラインb0−b2に切り換えられ、バルブV3によってラインc0−c2に切り換えられて精製されたゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(ゼロ、サンプル)とする。
【0046】
ABS(ゼロ、サンプル)の測定後、バルブV3によってラインc0−c1に切り換えられ、オゾン分解器7を通ってオゾン分解されたゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(ゼロ、オゾン分解後)とする。
【0047】
これらの測定が終了したのち、以下の式(3)によってゼロガス濃度を算出する。
c(ゼロガス)=fεL(ABS(ゼロ、サンプル)
−ABS(ゼロ、オゾン分解後)) …(3)
【0048】
ここで、f:ファクターであり、ε:オゾンの波長254nmにおけるモル吸光係数であり、L:セル長さ(光路長)である。
【0049】
・発生オゾン濃度の測定
次にオゾン発生器6で発生させたオゾン濃度を測定する。
【0050】
発生オゾン濃度測定の場合の流路は、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってa0−a1に切り換えられてゼロガス精製器4、ミニフィルタ5を通過し、ゼロガスが精製される。バルブV1によってラインb0−b1に切り換えられてオゾン発生器6を通り、ゼロガスに発生したオゾンが含有される。バルブV3によってラインc0−c2に切り換えられて発生オゾンを含むガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(オゾン、サンプル)とする。
【0051】
ABS(オゾン、サンプル)の測定後、バルブV3によってラインc0−c1に切り換えられ、オゾン分解器7を通ってオゾン分解されたゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(オゾン、オゾン分解後)とする。
【0052】
これらの測定が終了したのち、以下の式(4)によって発生オゾン濃度を算出する。
c(発生オゾン)=fεL(ABS(オゾン、サンプル)
−ABS(オゾン、オゾン分解後)) …(4)
【0053】
・発生オゾン分解後濃度の測定
発生させたオゾンをオゾン分解器7で分解したガスのオゾン濃度を測定する。
【0054】
発生オゾン分解後濃度の測定の場合の流路は、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってa0−a1に切り換えられてゼロガス精製器4、ミニフィルタ5を通過し、ゼロガスが精製される。バルブV1によってラインb0−b1に切り換えられてオゾン発生器6を通り、ゼロガスに発生したオゾンが含有される。バルブV3によってラインc0−c1に切り換えられ、オゾン分解器7を通ってオゾン分解されたゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(発生オゾン、分解後)とする。
【0055】
ABS(発生オゾン、分解後)の測定後、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってラインa0−a1に切り換えられてゼロガス精製器4、ミニフィルタ5を通過し、ゼロガスが精製される。バルブV1によってラインb0−b2に切り換えられ、バルブV3によってラインc0−c2に切り換えられて精製されたゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値は、上述のABS(ゼロ、サンプル)である。
【0056】
これらの測定が終了したのち、以下の式(5)によって発生オゾン濃度を算出する。
c(発生オゾン、分解後)=fεL(ABS(オゾン、オゾン分解後)
−ABS(ゼロ、サンプル)) …(5)
【0057】
・分解効率の算出
本モードで、上記のように測定したのち、オゾン分解器7の分解効率を以下の式(6)によって算出する。
【0058】
分解効率R=1−(c(発生オゾン、分解後)/c(発生オゾン)) …(6)
このように、本発明のオゾン測定装置1は、自装置内にオゾン分解器7の分解効率を算出する機能を有している。そして、算出された分解効率については、たとえば、予め判定基準(たとえば0.99)を設けておき、判断基準以上であれば合格とし、判断基準よりも小さくなった場合は、テレメータによりアラームを発し、不良データを測定結果から除去するなど自己診断によりオペレータに対して迅速な対応を促すことができ、稼働率を高く維持することができる。
【0059】
分解効率診断モードは、日没後の夜間に実行することが好ましい。日中オゾンは、太陽光に含まれる紫外線により反応生成されるが、夜間は一酸化窒素と反応して二酸化窒素と酸素になることで大気中のオゾン濃度がほぼゼロになる。分解効率の診断を行っている間は、オゾン濃度の測定を行えないが、分解効率の診断を夜間に行うことで、日中オゾンの測定データの欠損を無くすことができる。
【0060】
図2は、本発明の第2実施形態であるオゾン測定装置20の構成を示す概略図である。
図1に示した第1実施形態とは、ラインa0−a1の流路部分が異なっている。具体的には、図1に示した上記の実施形態ではオゾン発生器6を通過するラインb0−b1と、通過せずに直接バルブV1に到るラインb0−b2とが設けられていたが、バルブV1がなく必ずオゾン発生器6を通過する構成となっている。他の構成は、図1に示した上記の実施形態と同じであるので説明は省略する。
【0061】
以下では、実際にオゾン測定装置20を各動作モードで動作させる場合について詳細に説明する。なお、動作モードは制御部によって切り換えることが可能であり、ユーザによる切り換え指示の入力があった場合、予め定める時間帯となったときに制御部の判断で切り換えるように構成される。
【0062】
(1)オゾン濃度測定モード
オゾン濃度を測定する場合の流路は、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってラインa0−a2に切り換えられ、さらにバルブV3によってラインc0−c2に切り換えられて試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(サンプル)とする。
【0063】
ABS(サンプル)の測定後、バルブV3によってラインc0−c1に切り換えられ、オゾン分解器7を通ってオゾン分解されたガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(オゾン分解後)とする。
これらの測定が終了したのち、上記の式(2)によってオゾン濃度を算出する。
【0064】
(2)オゾン分解器7の分解効率診断モード
・ゼロガスの測定
オゾン分解器7の分解効率を自己診断するにあたって、まずゼロガスの測定を行う。このとき、オゾン発生器6のランプを消しておく。バルブV2によってa0−a1に切り換えられてゼロガス精製器4、ミニフィルタ5、オゾン発生器6(オゾンランプが消えている状態)を通り、さらにバルブV3によってラインc0−c2に切り換えられてゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(ゼロ、サンプル)とする。
【0065】
・発生オゾン濃度の測定
次にオゾン発生器6で発生させたオゾン濃度を測定する。
【0066】
発生オゾン濃度測定の場合の流路は、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってa0−a1に切り換えられてゼロガス精製器4、ミニフィルタ5、オゾン発生器6を通り、ゼロガスに発生したオゾンが含有される。バルブV3によってラインc0−c2に切り換えられて発生オゾンを含むガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(オゾン、サンプル)とする。
【0067】
ABS(オゾン、サンプル)の測定後、バルブV3によってラインc0−c1に切り換えられ、オゾン分解器7を通ってオゾン分解されたゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(オゾン、オゾン分解後)とする。
これらの測定が終了したのち、上記の式(4)によって発生オゾン濃度を算出する。
【0068】
・発生オゾン分解後濃度の測定
図1に示した実施形態と同様に測定して、発生オゾン分解後濃度を上記の式(5)よって算出する。なお、第1実施形態におけるバルブV1の切り換えによってオゾン発生器6の通過の有無を切り換える動作の代わりに、第2実施形態では、上記のゼロガスの測定と同様にオゾンランプの点灯、消灯を切り換える動作を行っている。
【0069】
・分解効率の算出
本モードで、上記のように測定したのち、オゾン分解器7の分解効率を上記の式(6)によって算出する。
【0070】
図3は、本発明の第3実施形態であるオゾン測定装置30の構成を示す概略図である。
図2に示した第2実施形態とは、ラインd0−d1、ラインd0−d2およびバルブV4の部分が異なっている。具体的には、図2に示した第2実施形態ではバルブV2通過後は、ラインc0−c1およびラインc0−c2に直結されていたが、バルブV4によって、ゼロガス精製器4aおよびミニフィルタ5aを通過しラインc0−c1およびラインc0−c2を通過しないラインd0−d1と、ラインc0−c1およびラインc0−c2、バルブV3を通過するラインd0−d2とが切り換えられる構成となっている。他の構成は、図1および図2に示した上記の実施形態と同じであるので説明は省略する。
【0071】
第3実施形態では、(1)オゾン濃度測定モード、(2)オゾン分解器7の分解効率診断モードに加えて(3)波長254nmに吸収のある有機化合物測定モードでの動作が可能となっている。
【0072】
(1)オゾン濃度測定モード、(2)オゾン分解器7の分解効率診断モードでの動作時には、バルブV4によってラインd0−d2に切り換えられて固定され、それ以降の動作は第2実施形態と同様である。
【0073】
(3)有機化合物測定モード
試料大気をオゾン分解器7で分解したガスのオゾン濃度を測定する。
【0074】
この場合の流路は、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってa0−a2に切り換えられる。バルブV4によってラインd0−d2に切り換えられ、バルブV3によってラインc0−c1に切り換えられ、オゾン分解器7を通ってオゾン分解された資料ガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(オゾン分解後)とする。
【0075】
ABS(オゾン分解後)の測定後、取り込まれた試料大気が、除じんフィルタ2、除湿器3を通過し、バルブV2によってラインa0−a2に切り換えられる。バルブV4によってd0−d1に切り換えられて、ゼロガス精製器4a、ミニフィルタ5aを通り、ゼロガスが精製され、精製されたゼロガスが試料セル8に導入される。このときの測定値をABS(ゼロ精製)とする。
【0076】
これらの測定が終了したのち、以下の式(7)によって波長254nmに吸収のある有機化合物濃度を算出する。
c(有機化合物)=fεL(ABS(オゾン分解後)
−ABS(ゼロ精製)) …(7)
【0077】
さらに、本発明の他の実施形態として、オゾン発生器6から流量計10の出口側へとバイパスする流路を設け、オゾン発生器6で発生したオゾンを、バイパスを介して排出することにより、オゾンを常時発生させることができ、発生オゾン濃度を安定させることができる。
【実施例】
【0078】
以下に本発明のオゾン測定装置1によって測定した測定結果を実施例として示す。
1時間ごとに測定を行い、その測定結果をプロットしてオゾン測定装置が正常に動作しているか否かを判断した。
【0079】
図4は、オゾン測定装置1が正常動作した場合の測定結果を示すグラフである。
図4(a)は、ゼロガスの測定結果を示し、図4(b)は、発生オゾンの測定結果を示し、図4(c)は、発生オゾン分解後の結果を示し、図4(d)は、分解効率の結果を示す。
【0080】
図4(a)からわかるように、濃度はほぼ0で一定であり、ゼロガスの測定は正常に行われていた。オゾン分解器7以外で装置の安定性に問題が無いことがわかる。図4(b)からわかるように、発生オゾン濃度は、500〜540ppb程度で推移しており、正常にオゾンが発生していることが確認できる。図4(c)からわかるように、発生オゾン分解後の測定では0で一定であり、オゾンが正常に分解されていることがわかった。この結果は、図4(d)の分解効率にも明確に示されており、分解効率が100%に保たれているのがわかった。
【0081】
図5は、オゾン測定装置1が異常動作した場合の測定結果を示すグラフである。
図5(a)は、ゼロガスの測定結果を示し、図5(b)は、発生オゾンの測定結果を示し、図5(c)は、発生オゾン分解後の結果を示し、図5(d)は、分解効率の結果を示す。
【0082】
図5(a)からわかるように、濃度はほぼ0で一定であり、ゼロガスの測定は正常に行われていた。図4(b)からわかるように、発生オゾン濃度は、460〜500ppb程度で推移しており、正常にオゾンが発生していることが確認できる。これに対して、発生オゾン分解後の測定結果では、図5(c)に示すように、測定を始めてから数時間後にオゾンが分解しきれず濃度上昇が観測された。この結果は、図5(d)の分解効率にも明確に示されており、分解効率が測定を始めてから数時間後に100%から低下した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態であるオゾン測定装置1の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態であるオゾン測定装置20の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第3実施形態であるオゾン測定装置30の構成を示す概略図である。
【図4】オゾン測定装置1が正常動作した場合の測定結果を示すグラフである。
【図5】オゾン測定装置1が異常動作した場合の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0084】
1 オゾン測定装置
2 除じんフィルタ
3 除湿器
4 ゼロガス精製器
5 ミニフィルタ
6 オゾン発生器
7 オゾン分解器
8 試料セル
9 オゾン処理機
10 流量計
11 温度センサ
12 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境大気試料中に含まれるオゾン濃度を測定する紫外線吸収方式のオゾン測定装置において、
オゾンを発生するオゾン発生器と、
オゾンを分解するオゾン分解器と、
オゾンの紫外線吸収を測定し濃度を測定する検出部と、
前記オゾン発生器で発生したオゾンを加えた試料ガスのオゾンを、前記オゾン分解器で分解し、オゾン分解後の試料ガスのオゾン濃度を測定することでオゾン分解器の分解効率を判断する制御部とを備えることを特徴とするオゾン測定装置。
【請求項2】
前記環境大気からゼロガスを精製するゼロガス精製器をさらに備え、
前記制御部は、ゼロガスを測定し、前記オゾン発生器で発生したオゾン濃度を測定し、該試料ガスに含まれるオゾンをオゾン分解器で分解した分解後試料ガスのオゾン濃度を測定することでオゾン分解器の分解効率を判断することを特徴とする請求項1記載のオゾン測定装置。
【請求項3】
前記分解効率が予め定める分解効率よりも低くなったときは、警告を発することを特徴とする請求項1または2記載のオゾン測定装置。
【請求項4】
環境大気試料中に含まれるオゾン濃度を測定する紫外線吸収法式のオゾン測定装置において、
オゾンを分解するオゾン分解器と、
オゾンの紫外線吸収を測定する検出部と、
ゼロガスを精製するゼロガス精製器とを備え、
オゾンを測定するとともに、オゾン分解器を通過させた試料ガスとゼロガス精製器を通過させた試料ガスとを比べることで大気中に含まれる波長254nmに吸収のある有機化合物を測定することを特徴とするオゾン測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−47610(P2009−47610A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215316(P2007−215316)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(591081321)紀本電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】