説明

オットーエンジンを有する車両のサーボブレーキ内の低圧を計算する方法

本発明は、ブレーキプロセスの最適性能を得るために、加圧吸気管を備えるエンジン設備を備える自動車用の作動装置によって作動させられるサーボブレーキ内の圧力を、圧力センサなしで求める方法に関する。当該方法によれば、走行状態を識別し、走行状態に応じて圧力(BP_SIM)をシミュレートする。本発明はまた、作動装置、及びより低い圧力に依存すると共に作動装置に結合されるサーボ装置を備えるオットーモータによって操作される自動車内のブレーキ力を増幅するための装置にも関する。サーボ装置は、低圧センサを含まない。本発明は、本方法を実行するための手段を備えるサーボブレーキにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動操作の最適実行のために、自動車用のアクチュエータで作動する制動倍力装置(ブレーキブースター)内の圧力を、圧力センサなしで求める方法、アクチュエータ及び当該アクチュエータに結合された真空依存型昇圧器を備える流量制御型オットーエンジンによって駆動される自動車内のブレーキ圧力を上昇させる装置、及びブレーキブースターに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の方法及び装置は、ほぼすべてのオットーエンジン駆動式自動車に使用されている。
【0003】
ドイツ公開特許第19753450号から、エンジン内に真空を発生する方法及び装置が既知である。エンジンは、吸気路、燃焼室及び排気路を有する。吸気路内の空気流量は、スロットル弁によって制御される。排気ガス再循環(EGR)路は、排気路からの排気ガスの流れの一部を吸気路へ流用させる。EGR弁は、EGR路内を流れる排気ガスの流量を調整する。ブレーキブースターが、吸気路に接続されて、車両のブレーキ圧力を上昇させる。圧力センサが、ブースター内の圧力を検出する。中央処理装置(CPU)が、検出圧力が所定値より高いか否かを確定する。エンジンが層状燃焼を実行するとき、スロットル弁は比較的大きく開いた位置にある。スロットル弁が流量を絞るとき、スロットル弁は吸気路内の圧力を低下させる。CPUは、ブースター圧力が所定値より高いとき、スロットル弁を制御して吸気路内の圧力を低下させるようにし、また、CPUはEGR弁を作動させ、それにより、EGR路内のガス流量を減少させる。これにより、より良好なブレーキ及びエンジン動作が得られる。
【0004】
上記特許に記載されている方法及び装置には、真空の制御を最適化するために、ブレーキブースターの真空室内の圧力を検出するためのセンサが必要であるという欠点がある。このセンサは、エラー源であり得ると共に、このセンサが故障した場合、或る程度の労力を払って修理又は交換できるだけである。
【0005】
欧州特許第1021327号から、自動車の車両制動システムであって、その車輪上の制動装置が、マスターブレーキシリンダを介して圧力を受けることができるようになっており、可動壁によって互いに分離された真空室及び圧力室を有する電子制御可能なブレーキブースターと、電磁アクチュエータによって作動させることができると共に、圧力室及び真空室間の圧力差を設定することができる制御弁アセンブリとを備え、可動壁は、位置を変化させ、その過程でマスターブレーキシリンダを真空室及び圧力室内の圧力状態の関数として作動させるようになっており、電磁アクチュエータは、作動中、電子制御ユニットによって、電子制御ユニットに接続されたセンサによって検出される動的状態又は外部影響の関数として電子制御ユニットが発生する現在信号を供給され、また、所定の確率でマスターブレーキシリンダを所定時間内に作動させることが必要となる一定の動的状態又は外部影響又はそれらの組み合わせが存在する場合、電子制御ユニットは、電磁アクチュエータ用の現在信号を発生し、それにより、少なくともブレーキブースター内に存在する遊び、自由移動又は許容差関連の空動きが克服される程度まで、制御弁アセンブリを作動させることができ、そこでは制動装置の作動がなく、電子制御ユニットは、センサによって検出された信号を所定の規則に従って結び付けるためのコンピュータと、所定の規則、及び車両制動システムの動作中に得られる経験値を記憶するためのメモリとを有し、メモリ内に記憶された経験値は、検出されたセンサ信号と、制動が過去に実行された確率値との組み合わせであり、検出されたセンサ信号のそれぞれの組み合わせは、一定時間内に存在するようにした、車両制動システムが既知である。
【0006】
上記車両制動システムには、車両状態に応じて、アクチュエータが電子制御ユニットを介して作動されるだけであり、ブレーキ圧力は所定の規則を介して制御可能ではなく、それにより、ここでは制動室内の圧力が求められないという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ブレーキ圧力を倍力(上昇)させるための方法及び装置と、ブレーキブースターとを提供し、これにより、ブレーキブースター内の真空を、圧力センサの助けによらないで求め、それぞれの走行状態が必要とする場合、ブレーキブースター内に最適真空を与えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1、12、13の前文に従った、ブレーキ圧力を倍力させるための方法及び装置、及びブレーキブースターから始まって、本目的は、以下の特徴的機能部と組み合わせて達成される。
【0009】
本発明の好都合な展開が、従属請求項において与えられる。
【0010】
本発明は、制動操作の最適性能を得るために、自動車用のアクチュエータで作動させられるブレーキブースター内の圧力を、圧力センサなしで求める方法には、走行状態を検出する工程と、圧力を走行状態の関数としてシミュレートする工程とが含まれるという技術仕様を含む。
【0011】
この解決策は、ブレーキブースター内の真空、又は一般的に圧力を求めるために、関連の配線を伴った複雑な圧力センサ、及びエンジン制御装置内の任意の評価ユニットが、圧力をそれぞれの走行状態に適応させるのに必要なくなるという利点を与える。
【0012】
さらに、本発明は、アクチュエータ、及び該アクチュエータに結合された真空依存型昇圧器を備えるピストンエンジンによって駆動される自動車内のブレーキ圧力を倍力させる装置において、昇圧器を、圧力センサなしで、真空の関数として構成するために、昇圧器は、真空センサなしで構成されるという技術仕様を含む。
【0013】
また、本発明は、ブレーキブースター内に、本発明による方法を実行するための手段を設けるという技術仕様を含む。
【0014】
圧力センサなしでブレーキブースター内の圧力を求めることにより、センサ及び任意の他の評価ユニットの独立性のため、圧力計算した場合のエラーに対する影響が大幅に低下する。
【0015】
走行状態モデルの検出は、圧力の初期値を確認する工程と、可変走行状態パラメータを検出して記憶する工程と、固定走行状態パラメータを画定する工程とを含むことが好ましい。
【0016】
これらの工程により、圧力を計算する基準として働くモデルを、常に変化する状態に適応させること、及び/又は発展させて、自動適用システムとして構成することも可能になる。
【0017】
圧力のシミュレーションは、圧力を初期化する工程と、アクチュエータが作動しているか否かを調べて信号化する工程と、圧力を走行状態パラメータ及びアクチュエータの作動の関数として計算する工程と、圧力を、実施した計算の関数として固定する工程とを含むことがさらに好ましい。
【0018】
したがって、走行状態によって、対応する圧力が与えられることができることにより、最適な制動倍力が常に達成されることができる。
【0019】
好ましくは、走行状態パラメータは、吸気管圧力、ブレーキ灯スイッチ信号、ブレーキスイッチ信号、車速、周囲圧力、車両加速度、トルク、エンジン速度及びギヤを含む群から選択される。
【0020】
最適制動操作のために、アクチュエータの、したがって間接的にブレーキ及び/又はブレーキ灯スイッチの作動時に、車速を監視し、また少なくとも1つの可変走行状態パラメータを計算することも好ましい。
【0021】
特に、可変走行状態パラメータは、減速度であることができる。
【0022】
ブレーキスイッチを作動させるとき、圧力は、減速度の関数として増加することが好ましい。
【0023】
急ブレーキの場合、固定された走行状態パラメータは、減速度の値であることができ、あらかじめ決定されている。
【0024】
車速が限界値より低くなるとき、アクチュエータの作動時に、急ブレーキに対応するブレーキ真空の低下又は圧力増加がシミュレートされることも好ましい。
【0025】
ブレーキブースター内の圧力がエンジン内の吸気圧力より高いとき、圧力を吸気管圧力レベルまで低下させることも好ましい。
【0026】
ブレーキブースター内の圧力を計算するための圧力センサがないブレーキブースターを有する自動車用の制動システムを動作させる方法には、最適制動操作を実行できるようにするために、上記方法が含まれることがさらに好ましい。
【0027】
アクチュエータ、及びアクチュエータに結合された真空依存型昇圧器を備えるオットーエンジン駆動式自動車内のブレーキ圧力を倍力させる装置も好ましく、昇圧器は、真空センサなしで構成される。
【0028】
このように、さほど複雑ではない昇圧器を、故障し難い部品で製造することができる。
【0029】
特に、昇圧システムは、本発明による方法を実行するための手段を備えるブレーキブースターとして構成されることが好ましい。本方法は、たとえば、回路として、又はコンピュータプログラム・プロダクトとして実現されることができる。
【0030】
本方法を実行するために、まったく異なった入力変数が必要である。したがって、本方法を実行するためのモデルは、たとえば5つの入力変数を必要とする。これらは、吸気管内の圧力、ブレーキ灯作動ビット、ブレーキビット、車速及び環境の気圧を含む群から選択される。
【0031】
出力変数として、モデルは、ブレーキブースター内の模擬圧力を出力する。
【0032】
本方法が異なる状態に柔軟に適応できるようにするために、モデルはさまざまな較正変数を使用する。これらは、ブレーキブースターの容積因子(以下にKで示す)、速度依存性の限界(以下にKで示す)、ブレーキ灯作動ビットの作動の際の最小模擬ブレーキ圧力増加(以下にKで示す)、ブレーキビットの作動時の最小模擬ブレーキ圧力増加(以下にKで示す)、急ブレーキの際の車両減速度因子(以下にKで示す)、及び吸気管内の圧力の関数としての模擬ブレーキ圧力の圧力均等化の平滑化因子(以下にKで示す)を含む群から選択される。
【0033】
本方法は、初期化で始まる、すなわち、模擬ブレーキ圧力が初期値に設定される。シミュレーションはリアルタイムで行われる、すなわち、シミュレーションの時間ステップは、使用される測定の時間ステップと同一である。基本的に、以下の場合のうちの1つが起きるまで、模擬ブレーキ圧力は常に初期値のままである。
1.吸気管内の圧力が、模擬ブレーキ圧力より低くなる、すなわち、より正確に言うと、吸気管圧力が、ブレーキブースター内の圧力未満に低下する、又は
2.ブレーキ灯又はブレーキのビットが1から0に変化し、これは、ブレーキペダルが解放されることを意味する。
【0034】
これらの場合、模擬ブレーキ圧力は、場合に応じて次のように変化する。
【0035】
第1の場合、模擬ブレーキ圧力は、以下の式に従った均一なスライディング平均によって減少する。
【0036】
【数1】

【0037】
但し、BPは模擬ブレーキ圧力を表し、Kは上記較正因子を表し、MAPは吸気管内の圧力を表す。この場合、Kは0〜1の範囲内にある。したがって、模擬ブレーキ圧力の計算において、慣性が圧力均等化で注目される。Kがゼロである場合、圧力均等化がまったく起きず、Kが1である場合、直接的な圧力均等化が起きる。
【0038】
第2の場合、さらに、車速が臨界速度を超えているか否かが識別される。この場合、臨界速度が、上記較正因子Kを介して考慮される。
【0039】
したがって、車速が臨界速度より低い場合、たとえば停止又は歩行速度の間、制動操作中にブレーキ灯ビットが1であった場合、急ブレーキを想定して、以下の式に従って模擬ブレーキ圧力が増加する。
【0040】
【数2】

【0041】
但し、Kは基本的に以下の式に従って計算される。
【0042】
【数3】

【0043】
但し、Vwork.maxは、急ブレーキ中のブレーキブースター内の作動室の容積に対応し、Vtotは、ブレーキブースターの全容積に対応する。したがって、Kは、ブレーキブースターの容積因子の較正変数を表す。この場合、AMPは、環境の気圧に対応する。
【0044】
制動操作中にブレーキビットが0であった場合、非常に緩やかなブレーキを想定して、模擬ブレーキ圧力が増加し、これは以下の式の通りである。
【0045】
【数4】

【0046】
但し、Kは、ブレーキ灯ビットだけが作動する場合の最小模擬ブレーキ圧力増加の上記較正変数に対応する。Kは、0〜1の範囲内にあり、たとえば、0.2の値をとることができる。
【0047】
車速が、速度依存性の限界の較正因子以上である値を有する場合、ブレーキ操作中、車両の計算最大減速度に従って、模擬ブレーキ圧力が増加し、これは以下の式の通りである。
【0048】
【数5】

【0049】
この場合、(VSx−0.05−VS)は、0.05秒の間隔をおいた2回の走査間での速度差を表し、Kは、急ブレーキ中のこの差を表し、そのため、急ブレーキ中の車両減速度の較正変数に対応する。K(上記較正変数)は、aの最小値に対応し、これは、少なくとも制動操作中にブレーキビットが0であるときに設定される。ブレーキビットが1である場合、Kの代わりに、較正変数K(ブレーキビットが作動するときの最小模擬ブレーキ圧力の増加)が最小値として使用され、ここでK≧0且つ≦1、たとえば0.3であることができる。この場合、上記式は次のように変化する。
【0050】
【数6】

【0051】
ここで、車速は常に制動操作の開始、すなわち、ブレーキ灯ビット又はブレーキビットが0から1に変化するときに考えられる。
【0052】
本発明を改善するさらなる方策が、従属請求項において与えられるか、又は図面を援用して本発明の幾つかの好適な実施形態の説明と共に以下により詳細に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
図1は、圧力センサなしでブレーキブースター内の圧力を計算するための方法のモデル10又は概略図を示す。モデル10は、幾つかのサブモデルを含み、本例では3つのサブモデル、すなわち、最大減速度用の第1のサブモデル11、ブレーキ圧力均等化用の第2のサブモデル12、及び制動検出器としての第3のサブモデルが示されている。さらに、モデル10は、アベレージャ(平均化装置)20を備え、これは、増幅器21及び飽和構成要素22を有する。モデル10はまた、スイッチ30、保持構成要素40及び様々な計算構成要素50を備え、計算構成要素は、第1の加算器51、第2の加算器52及び第3の加算器53を含む。
【0054】
モデル10は、幾つかの、本例では5つのモデル入力信号を受け取る。第1のモデル入力信号MAPは、吸気管内の圧力、すなわち吸気管圧力をhPa単位で表す。第2のモデル入力信号LV_BLS、すなわちブレーキ灯ビットは、ブレーキ灯がオン又はオフのいずれであるかを2進形式で表し、値1は「オン」を意味する。第3の入力信号LV_BTS、すなわちブレーキビットは、ブレーキが作動又は不作動のいずれであるかを2進形式で表し、値1は「ブレーキの作動」を意味する。第5のモデル入力信号VS、すなわち車速は、車速をkm/hの単位で表す。第5のモデル入力信号AMP、すなわち環境の気圧は、環境の気圧をhPaの単位で表す。
【0055】
モデル出力信号BP_sim、すなわちブレーキブースター内の模擬圧力として、モデル10はブレーキブースター内の模擬ブレーキ圧力をhPa単位で出力する。
【0056】
第1の入力信号MAPは、第2の加算器52へ直接的に進む。
【0057】
第2の入力信号LV_BLSは、第3の加算器53へ直接的に進む。
【0058】
第3の入力信号LV_BTSは、第3の加算器53及び第1のサブモデル11の両方へ進む。
【0059】
第3の加算器53は、第3加算器出力信号BTS_plus_BLSとして、第1の入力変数及び第2の入力変数の和を出力する。
【0060】
第4の入力信号VSは、第1のサブモデル11へ直接的に進む。
【0061】
第5の入力信号AMPは、第2のサブモデル12へ直接的に進む。
【0062】
よりわかりやすくするために、モデル10をさらに説明する前に、まずは図2〜図4に示すサブモデル11、12、13を説明する。ここでは、まず最初に、わかりやすくする理由から、図4に示す第3のサブモデル13を説明する。
【0063】
図4は、制動検出器をモデル化する第3のサブモデル13を示す。入力信号として、第3のサブモデル13は、第3加算器出力信号BTS_plus_BLSを有する。
【0064】
第3のサブモデル13は、幾つかの第3サブモデル検出器構成要素1310を有し、本例では4つの第3サブモデル検出器構成要素1311、1321、1331、1341を有する。
【0065】
さらに、第3のサブモデル13は、幾つかの第3サブモデル積分器構成要素1320を有し、ここでは2つの第3サブモデル積分器構成要素1321、1322を有する。
【0066】
第3のサブモデル13の入力信号BTS_plus_BLSは分岐されて、第1の第3サブモデル検出器構成要素1311及び第2の第3サブモデル検出器構成要素1313へ進む。
【0067】
第1の第3サブモデル検出器構成要素1311において、入力信号が増加中か否かが確認される。
【0068】
第2の第3サブモデル検出器構成要素1313において、入力信号が減少中か否かが確認される。
【0069】
第1の第3サブモデル検出器構成要素1311において信号の増加が確認される場合、信号は分岐されて、第1の第3サブモデル積分器構成要素1321及び第2の第3サブモデル積分器構成要素1322へ進む。
【0070】
第2の第3サブモデル検出器構成要素1312において信号の減少が確認される場合、信号は分岐されて、同様に第1の第3サブモデル積分器構成要素1321及び第2の第3サブモデル積分器構成要素1322へ進む。
【0071】
第3サブモデル積分器構成要素1321、1322は、信号を加算し、それぞれの場合、さらなる信号を出力し、それに応じて、これはそれぞれ第3の第3サブモデル検出器構成要素1312及び第4の第3のサブモデル検出器構成要素1314へ進む。そこで、第1の第3サブモデル検出器構成要素1311及び第2の第3サブモデル検出器構成要素1313と同様に、信号の増減が確認され、それに応じて、第3サブモデル出力信号BRAKE_START及びBRAKE_STOPが設定される。第3サブモデル入力信号BTS_plus_BLSが増加する(すなわち、ブレーキビット又はブレーキ灯ビットが0から1に進む)とき、BRAKE_STARTは正確に1であり、そうではなく、BTS_plus_BLSが減少する(すなわち、ブレーキビット又はブレーキ灯ビットが1から0に進む)とき、BRAKE_START又はBRAKE_STOPが正確に1であり、そうでなく、BRAKE_STOP又はBRAKE_STARTは、したがって、制動操作の開始を知らせ、BRAKE_STOPはブレーキ操作の終了を知らせる。
【0072】
この第3サブモデル出力信号BRAKE_STARTはここで、第1にスイッチ30へ、第2に第1のサブモデル11へ第2の第1サブモデル入力信号BRAKE_STARTとして進む。第1のサブモデルを図2に示す。
【0073】
図2は、第1のサブモデル11を示す。第1のサブモデル11は、3つの第1サブモデル入力信号、すなわち、第1の第1サブモデル入力信号1111、第2の第1サブモデル入力信号1112及び第3の第1サブモデル入力信号1113を有する。
【0074】
第1の第1サブモデル入力信号1111は、第3の入力信号LV_BTSである。
【0075】
第2の第1サブモデル入力信号1112は、第3サブモデル出力信号BRAKE_STARTである。
【0076】
第3の第1サブモデル入力信号1113は、第4の入力信号VSである。
【0077】
さらに、第1のサブモデル11は、3つの出力変数、すなわち、第1の第1サブモデル出力変数BRAKE、第2の第1サブモデル出力変数DECEL(=VERZ)、及び第3の第1サブモデル出力変数MAX_VSを有する。
【0078】
第1のサブモデル11はまた、第1サブモデル保持構成要素1120、第1サブモデル積構成要素1130、第1サブモデル最大構成要素1140、第1サブモデル否定構成要素1150、及び第1サブモデル加算構成要素1160、又は最後のものの場合、単に加算器を有する。
【0079】
より正確に言うと、第1のサブモデル11は、4つの第1サブモデル保持構成要素1121、1122、1123、1124と、3つの第1サブモデル積構成要素1131、1132、1133と、3つの第1サブモデル最大構成要素1141、1142、1143と、1つの第1サブモデル否定構成要素1150と、1つの第1サブモデル加算器1160と、1つの第1サブモデル増幅器1170とを有する。
【0080】
第1の第1サブモデル入力信号1111は、第1の第1サブモデル最大構成要素1141へ進む。
【0081】
第2の第1サブモデル入力信号1112は、トリガ信号として設計されて、ブレーキ又はブレーキ灯が作動するときだけ1になるが、第1サブモデル否定構成要素1150へ進み、そこで2進形式で反転される、すなわち、第2の第1サブモデル入力信号1112が1であった時、0になり、逆の場合も同様である。
【0082】
したがって、3つの第1サブモデル出力変数BRAKE、DECEL、MAX_VSは、制動の開始時に0にリセットされる。否定された第2の第1サブモデル入力信号は、第1の第1サブモデル積構成要素1131、第2の第1サブモデル積構成要素1132及び第3の第1サブモデル積構成要素1133へ進む。
【0083】
第3の第1サブモデル入力変数1133、すなわちVSは、分岐されて、第1の第1サブモデル保持構成要素1121、第1の第1サブモデル加算器1160及び第2の第1サブモデル最大構成要素1142へ進む。
【0084】
同様に、第3の積構成要素内で否定且つ乗算された入力変数1112は、第2の最大構成要素1142へ進む。
【0085】
第2の最大構成要素1142の出力信号は、第2の保持構成要素1122を介してフィードバックされて第2の積構成要素1132へ進む。
【0086】
第2の最大構成要素1142は、現在の制動操作中の最大速度を、第3の第1サブモデル出力信号MAX_VSとして出力する。
【0087】
入力変数又は入力信号VSが、約0.05秒間(走査速度に基づく)保持された後にだけ進められるようにする保持構成要素1121からの入力変数VSも同様に、加算器1160へ進む。加算器1160は、その和を増幅器1170へ進める。増幅器1170から、増幅された信号は、第3の最大構成要素1143へ進む。
【0088】
第1の積構成要素1131で否定且つ生成された第2の入力信号1112は、第3の最大構成要素1143へ進む。
【0089】
第3の最大構成要素1143が出力する値は、第2の出力信号DECELであり、減速度を表す。
【0090】
この出力信号DECELは、第3の保持構成要素1123を介して、第1の積構成要素1131にフィードバックされる。
【0091】
現在の減速度を前の減速度と比較して、高い方の値が常に進められる。これは、0〜1であり、0は減速度なしを示し、1は急ブレーキを示す。したがって、DECELは、現在の制動操作中の最大減速度を意味する。
【0092】
否定された第2の入力信号1112は、第3の積構成要素1133へ進む。第3の積構成要素1133は、信号を第1の最大構成要素1141へ進め、そこで、その信号が第1の入力信号1111と比較される。その結果、第2の出力変数BRAKEが生成される。最後の制動開始以来、ブレーキスイッチが入ったままであるとき、第2の出力変数は、この場合、1である。この第2の出力変数BRAKEは、第4の保持構成要素1124を介して第3の積構成要素1133にフィードバックされる。
【0093】
第1のサブモデル11の3つの出力信号BRAKE、DECEL、MAX_VSは、第2のサブモデル12へ進む。第5の入力信号AMP及びフィードバック出力信号BP_SIMも、第2のサブモデル12へ進む。第2のサブモデル12を図3に示す。
【0094】
図3は、第2のサブモデル12を示す。第2のサブモデル12は、4つの第2サブモデル入力変数、すなわち第1の入力変数DECEL、第2の入力変数BRAKE、第3の入力変数MAX_VS及び第4の入力変数BP_INを有する。
【0095】
さらに、第2のサブモデル12は、最大構成要素1210、計算構成要素1220、2つのスイッチ1230、2つの増幅器1240、積構成要素1250、2つの加算器1260及び飽和構成要素1270を有する。
【0096】
第1の入力変数DECELは、最大構成要素1210へ進む。
【0097】
第2の入力変数BRAKEは、分岐されて、ゲインK(上記較正変数)の第1の増幅器1241を介して、同様に最大構成要素1210へ、また第1のスイッチ1231へ進む。
【0098】
第1の最大構成要素1211は信号を発生し、それは飽和構成要素1270へ進む。飽和構成要素の下限は、較正変数Kによって求められる。1270は、飽和構成要素出力信号を生成し、この信号は、第2のスイッチ1232へ進められる。切り換えられたスイッチ出力信号は、第2の増幅器1242へ進み、第2の増幅器1242から積部材1250へ進む。そこから、信号は第1加算器1261へ進み、それは、出力変数として、第2サブモデル出力信号BP_OUTを出力する。
【0099】
第3の出力信号MAX_VSは、計算構成要素1220へ進む。この計算要素1220は、第3の入力信号MAX_VSを所定値と比較して、第1計算構成要素出力信号を出力し、第1計算構成要素出力信号は第2のスイッチ1232へ進められる。
【0100】
第4の入力信号BP_INは、分岐されて、一度、第1の加算器1261へ、この次ぎに第2の加算器1262へ進む。
【0101】
第2の加算器1262において、第4の入力信号BP_INは第5の入力信号AMPに加算されて、積構成要素1250へ進む。
【0102】
積構成要素1250は、信号を第1の加算器1261へ出力し、それはこの信号を第4の入力信号BP_INに加算し、そして第2サブモデル出力信号BP_OUTを出力する。
【0103】
図1において、BP_OUT、BRAKE_STOP及びBP_SIMは、ここでスイッチに加えられる。スイッチによって切り換えられた信号BPは分岐されて、2つの加算器へ進み、そこで一方では、第1の入力変数に加算され、増幅されて飽和され、それから第2の加算器へ進み、そこで信号BPに加算される。その結果、模擬圧力BP_SIMになる。この値はフィードバックされる。
【0104】
ブレーキブースター内の圧力のシミュレーション方法は、追加の入力変数を使用して、勾配検出によって拡張されることができる。その時、上記段落[0032]に示す入力変数に加えて、車両加速度、トルク、エンジン速度及びギヤが必要とされる。減速DECELは道路の勾配によっても決まるので、勾配検出により、圧力BP_SIMのシミュレーションが、非平坦道路上の走行について改善される。
【0105】
勾配は、以下の原理に従って求められる。
【0106】
エンジンによって出力される動力は、トルク及びエンジン速度から計算され、平坦な道路上での道路抵抗で消費される動力は、車速及びギヤから計算される。これらから、平坦道路上での車両の公称加速度が求められる。公称加速度と実際の車両加速度との差から、勾配が決定され、これは次に、第2の第1サブモデル出力変数DECELの計算に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】幾つかのサブモデルを有するブレーキブースター内の圧力を計算する方法の概略図である。
【図2】第1のサブモデル(最大減速度)の概略図である。
【図3】第2のサブモデル(ブレーキ圧力均等化)の概略図である。
【図4】第3のサブモデル(制動検出器)の概略図である。
【符号の説明】
【0108】
10 モデル
11 第1のサブモデル
12 第2のサブモデル
13 第3のサブモデル
20 アベレージャ
21 増幅器
22 飽和構成要素
30 スイッチ
40 保持構成要素
50 計算構成要素
51 第1の加算器
52 第2の加算器
53 第3の加算器
MAP 第1のモデル入力変数
LB_BLS 第2のモデル入力変数
LV_BTS 第3のモデル入力変数
VS 第4のモデル入力変数
AMP 第5のモデル入力変数
BP_sim モデル出力変数
BTS_plus_BLS 第3加算器出力信号
1310 第3サブモデル検出器構成要素
1311 第1の第3サブモデル検出器構成要素
1312 第2の第3サブモデル検出器構成要素
1313 第3の第3サブモデル検出器構成要素
1314 第4の第3サブモデル検出器構成要素
1320 第3サブモデル積分器構成要素
1321 第1の第3サブモデル積分器構成要素
1322 第2の第3サブモデル積分器構成要素
BRAKE_START 第1の第3サブモデル出力信号
BRAKE_STOP 第2の第3サブモデル出力信号
1111 第1の第1サブモデル入力信号
1112 第2の第1サブモデル入力信号
1113 第3の第1サブモデル入力信号
BRAKE 第1の第1サブモデル出力変数
DECEL(=VERZ) 第2の第1サブモデル出力変数
MAX_VS 第3の第1サブモデル出力変数
1120 第1サブモデル保持構成要素
1121 第1の第1サブモデル保持構成要素
1122 第2の第1サブモデル保持構成要素
1123 第3の第1サブモデル保持構成要素
1124 第4の第1サブモデル保持構成要素
1130 第1サブモデル積構成要素
1131 第1の第1サブモデル積構成要素
1132 第2の第1サブモデル積構成要素
1133 第3の第1サブモデル積構成要素
1140 第1サブモデル最大構成要素
1141 第1の第1サブモデル最大構成要素
1142 第2の第1サブモデル最大構成要素
1143 第3の第1サブモデル最大構成要素
1150 第1サブモデル否定構成要素
1160 第1サブモデル加算器
1170 第1サブモデル増幅器
BP_IN 第4の第2サブモデル入力変数
1210 第2サブモデル最大構成要素
1220 第2サブモデル計算構成要素
1221 第1の第2サブモデル計算構成要素
1222 第2の第2サブモデル計算構成要素
1223 第3の第2サブモデル計算構成要素
1230 第2サブモデルスイッチ
1231 第1の第2サブモデルスイッチ
1242 第2の第2サブモデルスイッチ
1240 第2サブモデル増幅器
1241 第1の第2サブモデル増幅器
1242 第2の第2サブモデル増幅器
1250 第2サブモデル積構成要素
1260 第2サブモデル加算器
1261 第1の第2サブモデル加算器
1262 第2の第2サブモデル加算器
1270 第2サブモデル飽和構成要素
BP_OUT 第2の第2サブモデル出力信号
K_1 第1の較正変数
K_2 第2の較正変数
K_3 第3の較正変数
K_4 第4の較正変数
K_5 第5の較正変数
K_6 第6の較正変数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動操作の最適性能を得るために、吸気管圧力を受ける吸気管を含むエンジンシステムを備える自動車用のアクチュエータで作動させられるブレーキブースター内の圧力を、圧力センサなしで求める方法であって、
前記走行状態を検出する工程と、
前記圧力(BP_SIM)を前記走行状態の関数としてシミュレートする工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記走行状態を検出する前記工程は、
前記圧力(BP_SIM)の前記初期値を確認する工程と、
可変走行状態パラメータを検出して記憶する工程と、
固定走行状態パラメータを画定する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力(BP_SIM)をシミュレートする前記工程は、
前記圧力(BP_SIM)を初期化する工程と、
アクチュエータが作動しているか否かを調べて信号化する工程と、
前記圧力(BP_SIM)を前記走行状態パラメータ及び前記アクチュエータの作動(LV_BLS、LV_BTS)の関数として計算する工程と、
前記圧力(BP_SIM)を、実施した前記計算の関数として固定する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記走行状態パラメータは、
吸気管圧力(MAP)、
ブレーキ灯スイッチ信号(LV_BLS)、
ブレーキスイッチ信号(LV_BTS)、
車速(VS)、
周囲圧力(AMP)、
車両加速度(ACC)、
トルク(TQ)、
エンジン速度(N)、及び
ギヤ(GEAR)
を含む群から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
最適制動操作のために、前記アクチュエータの、したがって間接的にブレーキ及び/又はブレーキ灯スイッチの作動時に、前記車速を監視し、また少なくとも1つの可変走行状態パラメータを計算することを特徴とする請求項1又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記可変走行状態パラメータは、減速度であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレーキスイッチを作動させるとき、前記圧力(BP_SIM)は、前記減速度の関数として増加することを特徴とする請求項4又は6に記載の方法。
【請求項8】
急ブレーキの場合、固定された走行状態パラメータは、減速度の値であって、あらかじめ決定されていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記車速が限界値より低くなるとき、前記アクチュエータの作動時に、急ブレーキに対応する圧力増加がシミュレートされることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキブースター内の前記圧力(BP_SIM)が前記吸気管内の前記吸気管圧力より高いとき、前記圧力(BP_SIM)を前記吸気管圧力レベルまで低下させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
圧力センサがないブレーキブースターを有する自動車用の制動システムを動作させる方法であって、
前記ブレーキブースター内の前記圧力(BP_SIM)を計算するために、請求項1〜10に記載の方法を含み、それにより、最適制動操作を実行できるようにすることを特徴とする方法。
【請求項12】
アクチュエータと該アクチュエータに結合された真空依存型昇圧器とを備えるオットーエンジン駆動式自動車内のブレーキ圧力を倍力させる装置であって、
前記真空依存型昇圧器は、真空センサなしで構成されることを特徴とするブレーキ圧力を倍力させる装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法を実行する手段を特徴とするブレーキブースター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−544923(P2008−544923A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519847(P2008−519847)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006483
【国際公開番号】WO2007/006453
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(506425295)ジーエム グローバル テクノロジー オペレーションズ,インク. (22)
【Fターム(参考)】