説明

オロパタジン塩酸塩の多形形態並びにオロパタジン及びその塩の製造方法

塩基の存在下、11-オキソ-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸と3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムハライドのウィッティヒ反応によってオロパタジン又はその塩を製造する方法、オロパタジン又はその塩を含有するジアステレオマー混合物の(Z)/(E)比を高める方法、11-オキソ-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸及び3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドの製造方法、並びにオロパタジン塩酸塩の多形B形。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、オロパタジン塩酸塩の新規な多形形態、及びオロパタジンの新規な製造方法、及びその医薬的に許容しうる塩に関する。
〔関連技術の背景〕
オロパタジン-HCl([(Z)-3-(ジメチルアミノ)プロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩)は、季節的なアレルギー性結膜炎の眼の症状の治療のために使用される選択的なヒスタミンH1-受容体アンタゴニストである。固体経口剤形で、又は点眼剤としてこの化合物を投与することができる。
【化1】

【0002】
オロパタジンは、アレルギー性鼻炎及びじんま疹の症状(例えば、くしゃみ、鼻汁及び鼻充血)の有効な治療法であるのみならず、湿疹及び皮膚炎などの種々の皮膚疾患の治療でも有効であると言われている。
オロパタジンとその医薬的に許容しうる塩は、EP0214779、米国特許第4,871,865号、EP0235796及び米国特許第5,116,863号で開示されている。EP0214779に記載されているオロパタジン製造の2つの一般経路がある:一方はウィッティヒ反応を含み、他方はグリニャール反応後脱水工程を含む。オロパタジンとその塩の合成の詳細な説明はOhshima, E.ら, J. Med. Chem. 1992, 35, 2074-2084にも開示されている。
EP0235796は、11-オキソ-6,11-ジヒドロキシジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸から出発するオロパタジン誘導体の製法、並びに下記スキーム1〜3に示すような、対応するジメチルアミノプロピリデン-ジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体の調製の以下の3つの異なる合成経路を開示している。
【0003】
【化2】

【0004】
【化3】

【0005】
【化4】

【0006】
いくつかの対応する三環式誘導体の合成が同様にEP0214779で開示されており、キー反応としてグリニャール付加(スキーム1に類似)とウィッティヒ反応(スキーム3に類似)が記載されている。
オロパタジン調製のための上記スキーム2及び3に示される合成経路は、Ohshima, E.ら, J. Med. Chem. 1992, 35, 2074-2084でも開示されている(下記スキーム4及び5)。上記特許と対照的に、この刊行物はZ/Eジアステレオマーの分離を記載している(スキーム5)。
【0007】
【化5】

【0008】
スキーム4に示される合成経路の有意な欠点は、脱水工程のジアステレオ選択性であり、90%までの望ましくないE-異性体を与える。この刊行物には最終工程(酸化)は記載されていない。
下記スキーム5は、Ohshima, E.ら(前出)に開示されている先行技術の方法を示す。
【0009】
【化6】

【0010】
各先行技術のオロパタジンの合成法は、有意な費用及び実行可能性の欠点がある。特にスキーム5に示した方法について下記欠点が挙げられる:
(1)過剰な試薬が必要、例えばウィッティヒ反応のため4.9当量のウィッティヒ試薬と、塩基として7.6当量のBuLi(高価でありうる);
(2)ウィッティヒ試薬をその塩酸塩形態で使用する必要があるので、塩の「中和」のためさらなる量の高価かつ危険なブチルリチウム試薬が必要である(すなわち、中和のため過剰なブチルリチウムが必要);
(3)7.6当量のブチルリチウムを使用するので(9.8当量の(Olo-IM4)ウィッティヒ試薬に比べて)、ウィッティヒ試薬が完全には反応性イリドの形態に変換せず、2当量より多くのウィッティヒ試薬がむだである;
(4)ウィッティヒ反応後にさらなるエステル化反応(おそらく反応混合物からの生成物の単離を容易にするため)及び結果として生じた油のクロマトグラフィーによる精製が必要;
(5)エステルを鹸化し、ジアステレオマーの分離前に反応生成物(ジアステレオマー混合物)をイオン交換樹脂で脱塩する必要がある;
(6)ジアステレオマーの分離、及び所望ジアステレオマーのその対応するpTsOH塩からの遊離後、生成物(オロパタジン)を再びイオン交換樹脂で脱塩する必要がある;
(7)オロパタジンからオロパタジン塩酸塩の形成を2-プロパノール中8NのHClを用いて行うと、2-プロパノールがオロパタジンをエステル化してさらなる不純物及び/又はオロパタジンの損失を生じさせうる;及び
(8)ジアステレオマーの分離を含むオロパタジンの全収率は約24%でしかなく、体積収率は1%未満である。
【0011】
上述したように、ウィッティヒ反応でオロパタジンを調製する既知の方法は、中間化合物6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸及び3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩を使用する。先行技術の合成によるこれらの化学中間体の調製は、オロパタジン合成の費用と複雑さに加え、多くの欠点をもたらす。
6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の調製の1つの既知の方法を下記スキーム6に示す。米国特許第4,585,788号;独国特許公開DE2716230、DE2435613、DE2442060、DE2600768;及びD.E., et al., J. Med. Chem. (1977), 20(1), 66-70;及びAultz, D.E., et al., J. Med. Chem. (1977), 20(11), 1499-1501をも参照されたい。
【0012】
【化7】

【0013】
さらに、米国特許第4,417,063号は、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の別の調製方法を開示しており、下記スキーム7に示す。
【化8】

【0014】
Ueno, K., et al., J. Med. Chem. (1976), 19(7), 941は、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のさらに別の先行技術の調製方法を開示しており、下記スキーム8に示す。
【化9】

【0015】
さらに、下記スキーム9に示すように、米国特許第4,118,401号;第4,175,209号;及び第4,160,781号は、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の別の合成方法を開示している。
【化10】

【0016】
JP07002733も、下記スキーム10に従う、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の製法を開示している。
【化11】

【0017】
4-(2-カルボキシベンジルオキシ)-フェニル酢酸を環化して6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を形成するための分子内フリーデル-クラフツ反応を行うための詳細な方法と試薬は下記文献に記載されている:(1)EP 0068370及びDE 3125374(溶媒としてトルエン、キシレン又は無水酢酸中、リン酸の存在下で塩化アセチル又は無水酢酸と還流させて環化を行った);(2)EP 0069810及びUS 4282365(加圧ビン中、トリフルオロ無水酢酸で70〜80℃にて環化を行った);及び(3)EP 0235796;US 5,116,863(BF3・OEt2の存在下で、溶媒として塩化メチレン中にてトリフルオロ無水酢酸で環化を行った)。
オロパタジン、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド-臭化水素酸塩の調製で使うウィッティヒ試薬に話を戻すと、その調製方法は、米国特許第3,354,155号;第3,509,175号;第5,116,863号、及びEP 0235796に記載されており、下記スキーム11に示す。
【0018】
【化12】

【0019】
Corey, E.J., et al., Tetrahedron Letters, Vol. 26, No. 47, 5747-5748, 1985は、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(遊離塩基)の調製のための合成方法について記載しており、下記スキーム12に示す。
【化13】

【0020】
先行技術のオロパタジンの調製方法並びに化学中間体6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸、及び3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド-臭化水素酸塩(及びその対応する遊離塩基)は、商業規模のオロパタジンの合成には望ましくない。例えば、高い反応温度と溶媒の非存在のため、中間体4-(2-カルボキシベンジルオキシ)フェニル酢酸の調製のため、Ueno, K., et al., J. Med. Chem. (1976), 19(7), 941及び米国特許第4,282,365号に記載されている合成は商業規模のプロセスでは望ましくないが、JP 07002733に記載され、かつ下記スキーム13に示される合成は許容しうる溶媒中で行われる。
【化14】

【0021】
6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を調製するために用いられる分子内フリーデル-クラフツアシル化についての文献記載の方法は、一般的に高沸点溶媒(例えばスルホラン)中の激しい条件を必要とするか、或いは中間体として対応する酸塩化物との二工程合成を必要とするので、商業規模の合成では望ましくない。さらに、欧州特許文献EP 0069810及びEP 0235796に記載されているような6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の合成手順は、過剰なトリフルオロ無水酢酸を使用し(スキーム14参照)、かつ加圧ビン中70〜80℃にて溶媒なしで(EP 0069810)或いは触媒量のBF3・Et2Oを用いて塩化メチレン中で室温にて(EP 0235796)行われる。
【化15】

【0022】
EP 0235795の教示に従い、エタノール中の3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4)の懸濁液を13.5当量のジメチルアミン水溶液(50%)で処理してジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドHBrを得た。この反応後、蒸留して溶媒を除去し、残留物を再結晶させた(収率:59%)。
米国特許第3,354,155号は、3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドと4.5当量のジメチルアミンの反応を開示している。溶液を濃縮し、残留物をエタノールに懸濁させ、エバポレートして再びエタノールに取った。混合物が酸性になるまで、気体の臭化水素を溶液に通した。ろ過後、溶液を濃縮すると生成物が晶化した(粗生成物の収率:85%)。粗生成物をエタノールから再結晶させた。
先行技術の3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩の製造方法の有意な欠点は、過剰なジメチルアミンは反応生成物の結晶化を妨げるので、過剰なジメチルアミンを除去するために時間のかかる工程が必要なことに関係する。従って、結晶化を達成するため、先行技術の方法は、例えば、反応混合物の反復エバポレーション(乾燥するまで)を必要とし、オロパタジンの商業規模の合成に望ましくない。
Corey, E.J., et al., Tetrahedron Letters, Vol. 26, No. 47, 5747-5748 (1985)は、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(遊離塩基)のその対応する臭化水素酸塩からの調製を開示している。しかし、溶媒として塩化メチレンを用いる抽出工程を利用する遊離塩基の調製は、化学製品の商業生産に望ましい多くの有機溶媒中での該遊離塩基の不十分な溶解度のため、及び該遊離塩基の水中での高い溶解度(低い体積収率と原料の損失をもたらす)のため商業生産に望ましくない。さらに、この刊行物に従うと、仕上げ手順は油を与えたが、これはトルエン中での反復エバポレーション後にしか結晶化しなかった。
【0023】
費用効果性で、かつ低レベルの望ましくないジアステレオマーといった低レベルの不純物を有するオロパタジンを提供する様式で、大規模、例えば商業規模でオロパタジンを調製するための方法を提供することが望ましいだろう。
さらに、例えば、エステル化によって、反応混合物からオロパタジンを分離するため、ウィッティヒ反応のオロパタジン生成物を誘導体化する必要を排除することが望ましいだろう。反応混合物から直接オロパタジンを単離できるオロパタジンの調製方法を提供することが特に望ましいだろう。
前述したオロパタジンを製造するためのウィッティヒ反応で使用されている、費用のかかる危険な塩基、ブチルリチウムの必要を排除することも望ましいだろう。
ウィッティヒ反応によるオロパタジンの合成で使用する化学中間体の改良された調製方法を提供することも望ましいだろう。
以下の出願人の発明の種々の局面の説明では、直後に述べる命名法に従って、化学中間体、最終生成物及び副生物を言及する。
本明細書で論じる化合物について化学名と構造を下表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
〔発明の説明〕
一局面では、本発明の方法は、オロパタジン又はその塩の製造方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(a)11-オキソ-6,11-ジヒドロキシジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸と、3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド及びその塩から成る群より選択されるウィッティヒ試薬と、適切な塩基とを、ウィッティヒ反応条件下で反応させて、オロパタジンを含有する反応混合物を与える工程;
(b)前記反応混合物中に存在する残存イリドをプロトン化するのに十分な量の水を添加して、加水分解した反応混合物を与える工程;
(c)工程(b)の前記加水分解した反応混合物のpHが少なくとも約12でない場合、前記加水分解した反応混合物又はその水相のpHを約12以上のpHに調整して、過剰の3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド、又はその塩を3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドに変換する工程;
(d)工程(c)の溶液を適切な溶媒で抽出して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のジアステレオマー混合物を含有し、かつ実質的に低減した量の3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドを有する溶液を与える工程;
(e)工程(d)で得た溶液のpHを約4〜5のpHに調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を与える工程;
(f)前記オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を、(i)n-ブタノール;及び(ii)メチル-THFとC1-C4アルコールの混合物から成る群より選択される水-混和性溶媒で抽出する工程(但し、前記選択溶媒がメチル-THFとC1-C4アルコールの混合物の場合、該溶液をエバポレートして残留物をn-ブタノール/水に取る);
(g)共沸蒸留によって、前記オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を含有するn-ブタノール/水溶媒を濃縮する工程;及び
(h)オロパタジンの酸付加塩を分別結晶させる工程。
【0028】
別の局面では、本発明の方法は、オロパタジン又はその塩の製造方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(a)11-オキソ-6,11-ジヒドロキシジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸と、3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド及びその塩から成る群より選択されるウィッティヒ試薬と、適切な塩基とを、ウィッティヒ反応条件下で反応させて、オロパタジンを含有する反応混合物を与える工程;
(b)前記反応混合物中に存在する残存イリドをプロトン化するのに十分な量の水を添加して、加水分解した反応混合物を与える工程;
(c)工程(b)の前記加水分解した反応混合物のpHが少なくとも約12でない場合、前記加水分解した反応混合物又はその水相のpHを約12以上のpHに調整して、過剰の3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド、又はその塩を3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドに変換する工程;
(d)工程(c)の溶液を適切な溶媒で抽出して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のジアステレオマー混合物を含有し、かつ実質的に低減した量の3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドを有する溶液を与える工程;
(e)工程(d)で得た溶液のpHを約6.5〜8.0のpHに調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を含有する溶液を与える工程;
(f)工程(e)で得た前記溶液をn-ブタノールで抽出して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のn-ブタノール/水溶液を与える工程;
【0029】
(g)工程(f)で得た溶液のpHを約4〜約5のpHに調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を与える工程;
(h)共沸蒸留によって、前記オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を含有するn-ブタノール/水溶媒を濃縮する工程;
(i)オロパタジンの酸付加塩を分別結晶させる工程。
本方法の他の実施形態では、任意に前記オロパタジンの酸付加塩を十分な量の塩基で処理して、オロパタジンの遊離塩基を遊離させてよく、かつ任意に前記塩基から医薬的に許容しうる塩に変換してもよい。
オロパタジン臭化水素酸塩の好ましい合成(例えば、工程(e)でHBrを用いてpHを約4〜5のpHに下げる)及びジアステレオマーの分離の一般経路を下記スキーム15に示す。
【0030】
【化16】

【0031】
イリドはウィッティヒ反応で反応性種であり、かつ3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドHBr、若しくはその対応する遊離塩基、又は他の3-ジメチルプロピルトリフェニルホスホニウムハライド及びそのハロゲン化水素酸塩(ハロゲンは臭素、塩素又はヨウ素)から簡便に調製されうることが分かるだろう。イリドを与える好ましい方法は、適切な溶媒中、N2雰囲気下で3-ジメチルプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドHBr(Olo-IM4)、又はその対応する遊離塩基、ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4遊離塩基)をNaHと反応させる工程を伴う。好ましくは、NaH又は他の塩基は、本明細書で述べるようにモル過剰で存在する。イリドを形成するための反応は、好ましくは10〜70℃の範囲の温度で行われる。好ましい反応は、10〜40℃、さらに好ましくは20〜30℃の範囲の温度で約40分間行われ、次いで温度を約40〜70℃、さらに好ましくは55〜60℃に約3時間上昇させる。次に、イリド含有反応混合物を10℃未満の温度に冷却し、濃縮後、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)の溶液を慎重に添加してウィッティヒ反応を惹起する。添加後、好ましくは20〜25℃で約20〜30時間反応混合物を撹拌してから10℃未満に冷却後、水を加えて反応をクエンチする。イリド形成工程を含むウィッティヒ反応を行うために適した溶媒として、無水溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)及びトルエンが挙げられる。
【0032】
我々は、先行技術の反応で使用されている危険かつ高価なブチルリチウム試薬を有利に水素化ナトリウム(NaH)と交換できることを見出した。THF、DMF、NMP及びトルエン、並びにその混合物といった種々の溶媒中で使用する場合でさえ、LiH、NaOtBu、NaOtPent、KOtBu、NaOMe、NaOEt、及びKHMDS、並びにこれら塩基の混合物といった代替塩基は、ブチルリチウム又はNaHより実質的に劣ることが分かった。ブチルリチウムとNaH以外の塩基は、不完全な変換、オロパタジンの望ましくない(E)-ジアステレオマーへの異性化(特に塩基を過剰に使用した場合)又は多くの副生物の形成をもたらした。
我々は、室温にて30時間以内で、約2.7当量の3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)と多くても約7〜8当量のNaHを用いる反応がほとんど定量的に6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)のオロパタジンのジアステレオマー混合物(約70:30の(Z)/(E)比)への変換を与えることを見出した。遊離塩基、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドの使用は、約3.5〜4当量のNaHしか必要としない。下記スキーム16を参照されたい。(Z)-異性体についての反応収率は67%までだった。このNaHを用いる新規ウィッティヒ反応は安定かつ頑強である。過剰なNaHも、より高い温度(30℃まで)も、反応の選択性と収率に不利な影響を与えないことが分かった。
NaHとウィッティヒ試薬(3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド又はその対応する臭化水素酸塩)の混合物をTHF中で2.5〜3時間55〜60℃で加熱することによって、ほとんど定量的にイリドが形成される。次に、橙色混合物に6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)を添加し、その懸濁液を室温で撹拌してよい。6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のイリドへの添加は、イリドの部分的なプロトン化を引き起こすが、存在する過剰なNaHがイリド形態を再生しうる。
【0033】
【化17】

【0034】
6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の添加前に3-ジメチルアミノ-プロピリデン-トリフェニルホスフィン(Olo-IM4イリド)を形成することが好ましいが、例えばNaH、ウィッティヒ試薬、及び6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)をTHF中で室温にて混合かつ撹拌することによってウィッティヒ反応を行う場合、5〜6日間にわたって反応を行ってよい。おそらく、THF中でのウィッティヒ試薬とNaHの両方の制限された溶解度によって長い撹拌時間がもたらされるのだろう。
本発明の方法のいくつかの有利な特徴の1つは、未反応ウィッティヒ試薬からオロパタジンを分離する方法である(上記方法の工程(c)及び(d)参照)。本発明の方法のこの局面によれば、水を添加して反応混合物をクエンチした後、反応混合物のpHは、未反応ウィッティヒ試薬を3-ジメチルアミノプロピルジフェニルホスフィンオキシドとトリフェニルホスフィンオキシドに変換する12以上のpHである(又は12以上のpHに調整される)。十分なモル過剰のNaH(又は他の適切な塩基)をウィッティヒ反応で使用できるので、水を添加して反応をクエンチすると、残存塩基が12以上のpHを与える。反応混合物のpHが12未満の場合、NaOH等のいずれの適宜の強塩基を与えてpHを12以上に上昇させてもよい。
約12〜13のpHのオロパタジン含有反応混合物中における過剰なNaHの加水分解は、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4遊離塩基)と3-ジメチルアミノプロピリデントリフェニルホスフィン(Olo-IM4イリド)の副生物3-ジメチルアミノプロピルジフェニルホスフィンオキシド(Olo-IM4BP1)とトリフェニルホスフィンオキシドへのほとんど完全な変換を与え、副生物はほとんど定量的に(pH12〜13で)抽出され、オロパタジンの損失(≦2%)は無視できる。
【0035】
【化18】

【0036】
オロパタジンの溶解度に対して3-ジメチルアミノプロピルジフェニルホスフィンオキシドとトリフェニルホスフィンオキシドの溶解度が高い、適切な溶媒を用いて、反応混合物からの3-ジメチルアミノプロピルジフェニルホスフィンオキシドとトリフェニルホスフィンオキシド副生物の1回以上の抽出を行うことができる。好ましい溶媒として、トルエン又はトルエンとn-ブタノールの混合物が挙げられる。現在好ましい溶媒はトルエン:n-ブタノール(9:1)である。
副生物の濃度が実質的に減少するように副生物を除去するための1回以上の抽出後、オロパタジン含有溶液に十分な量の酸を添加してpHを8以下に下げて、オロパタジンとそのジアステレオマー(酸付加塩又は「遊離アミノ酸」として)抽出する。好ましい実施形態では、HBrを添加してpHを約4〜5、さらに好ましくはpH4.2〜4.6にして、臭化水素酸塩としてオロパタジンとそのジアステレオマーを与える。別の実施形態では、酸を添加して、約6.5〜8のpH、好ましくは6.8〜7.2のpHにして、オロパタジンとそのジアステレオマー(その遊離アミノ酸形態で)をn-ブタノール中に抽出してからHBrで約4〜5のpH、さらに好ましくは4.2〜4.6のpHに酸性化する。
【0037】
現在、オロパタジンとそのジアステレオマーである(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の混合物を酸性にしてその対応する酸付加塩を形成することが好ましい。pHを臭化水素酸で約4.2〜4.6に調整すると、臭化水素酸塩としてジアステレオマー混合物を与えるが、pHを塩酸で調整すると混合塩(塩酸塩/臭化水素酸塩)としてジアステレオマー混合物を与えることが分かるだろう。オロパタジンと酸付加塩を形成する他の酸をも使用しうる。次に、塩のジアステレオマー混合物を、水含有有機層を与えるのに適した有機溶媒中に抽出することができる。酸付加塩のジアステレオマー混合物の抽出に適した有機溶媒として、n-ブタノール、2-メチルテトラヒドロフランとC1-C4アルコールの混合物、好ましくは2-メチルテトラヒドロフランと2-プロパノール、及びTHF(水層をNaCl又は他の適切な塩で飽和後)が挙げられる。最も好ましくはn-ブタノールを使用する。この抽出工程でn-ブタノール以外の溶媒を使用する場合、次いで有機層(水含有)を減圧下、例えば約200mbar〜500mbarでエバポレートしてからn-ブタノールで希釈してよい。
本発明のさらなる局面では、我々は、n-ブタノール(水含有)に溶解又は懸濁させたジアステレオマー混合物の分別結晶化をオロパタジンの等電点より有意に低いpHで行うと、望ましい収率のオロパタジン塩が得られることを見出した。実際に、オロパタジン塩、例えばオロパタジンHBrのpH4.2〜pH4.6での結晶化に比し、等電点(例えば、pH6.8〜7.2)で存在するいわゆる「遊離アミノ酸」形態のオロパタジンの水層からの直接結晶化によって、或いは抽出後の分別結晶化によっての単離は、望ましくない低収率をもたらし、部分的に分別結晶化の際の不十分な選択性、及び/又はろ別できない樹脂性沈殿物の形成を伴う。
【0038】
酸付加塩として、最も好ましくはn-ブタノール(水含有)に溶解又は懸濁させたオロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のジアステレオマー組成物の分別結晶化は、予想外に、改良された(Z)/(E)比を有する結晶性オロパタジン塩を与えることが分かった。オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(酸付加塩として)の分別結晶化は、共沸蒸留によって容易に達成される。典型的に、ブタノール/水溶媒は、最初約10〜20%の水から成る。最も好ましくはオロパタジン塩は臭化水素酸塩、塩酸塩又はこれら2種の塩の混合物として存在する。共沸蒸留を行って結晶化を惹起しうる。分別結晶化は、オロパタジン塩のジアステレオマー混合物の出発比に比べて向上した(Z)/(E)比を与える。次に、オロパタジン塩の懸濁液を室温に冷まし(かつ室温で維持しながら)約1〜約20時間、好ましくは約16時間にわたって撹拌する。分別結晶化後の結晶化溶媒の最終含水量は0.5%〜5%、好ましくは1%〜4%の水でなければならず、この時点で結果のオロパタジン塩は典型的に約86/14〜90/10又はそれより高いジアステレオマーの(Z)/(E)比を有する。理論に拘泥されるものではないが、改良された(Z)/(E)比は、該ジアステレオマー混合物が、約10%-20%の含水量を有する水性nBuOHに容易に溶けるが、無水/乾燥nBuOH中におけるこれらの塩の溶解度が非常に低いという事実に起因すると考えられる。オロパタジンを含むジアステレオマー混合物の溶解度は、pH=4.2〜4.6の水中でも低い。
【0039】
また、オロパタジン塩、例えば初期(Z)/(E)比が約86/14以上であるオロパタジン臭化水素酸塩の(Z)/(E)異性体比は、少なくとも約0.2%の水濃度、さらに好ましくは約2〜4%の水を有するn-ブタノールに該オロパタジン塩を懸濁させることによって、さらに高められることをも発見した。スラリーを約0.5〜約2時間、好ましくは約1時間、高温、好ましくは約80℃で撹拌してから室温に冷ましてさらに16時間までか又はそれより長時間撹拌することができる。好ましくは、オロパタジン塩はオロパタジン臭化水素酸塩若しくはオロパタジン塩酸塩又はその混合物である。臭化水素酸塩を使用すると、スラリー化条件が約99:1以上までの(Z)/(E)比を与えることを発見した。
オロパタジン塩を、適切な溶媒、好ましくは水中、室温で約1〜約20時間、例えば約16時間、強塩基、好ましくはNaOHとの反応によって、その遊離塩基形態に変換することができ、有利には結果として(Z)/(E)比が上昇する。次に、任意にオロパタジン遊離塩基を酸と反応させることによって、オロパタジン遊離塩基をオロパタジンの医薬的に許容しうる塩、例えば、対応するHCl塩、HBr塩、アセテート、トシレート、メシレート又は技術上周知の他の医薬的に許容しうる塩に変換してよく、有利にはさらに(Z)/(E)比が約99.9/0.1まで上昇する。現在好ましい塩は、HCl塩である。
下記スキーム18に示されるように、オロパタジン臭化水素酸塩からオロパタジン塩酸塩(Olo-HCl)を調製するため、塩酸塩を水に懸濁させてpHを6.8〜7.2に調整した。中和の際、短時間で溶液を得てから遊離アミノ酸を結晶化した。その後、遊離アミノ酸を有機溶媒中で濃塩酸にて処理して対応する塩酸塩を得た(オロパタジン塩酸塩の全体収率:Olo-IM2に対して50〜52%;4〜5%までの体積収率)。
【0040】
【化19】

【0041】
上記説明は、ウィッティヒ反応で開始して高純度形態のオロパタジンの医薬的に許容しうる塩の形成を通じて続けるオロパタジンの包括的な合成と精製について述べたが、個々の工程の組合せ内及び種々の反応物の調製にはさらなる発明局面が存在する。
従って、上記本発明の別の局面は、オロパタジンを調製するための新規なウィッティヒ反応であって、以下の工程を含む反応に関する:
(a)3-ジメチルプロピルトリフェニルホスホニウムハライド塩酸塩、又はその対応する遊離塩基と、水素化ナトリウムを適切な溶媒中で混合して、イリド、3-ジメチルアミノプロピリデントリフェニルホスフィンを含有する反応混合物を与える工程;
(b)前記イリドを含有する反応混合物をウィッティヒ反応条件下で6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸と混合して、オロパタジンを含むジアステレオマー混合物を与える工程。
さらなる局面では、本発明は、オロパタジンの調製方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(a)オロパタジンを含有するジアステレオマー混合物を含んでなるウィッティヒ反応混合物を供給する工程;
(b)前記反応混合物中に残留する残存イリドをプロトン化するのに十分な量の水を添加する工程;
(c)必要な場合、前記オロパタジン含有加水分解反応混合物、又はその水相のpHを約12以上のpHに調整して、過剰の3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド、又はその塩を3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドに変換する工程;及び
(d)工程(c)の溶液を適切な溶媒で抽出して、実質的に3-ジメチルアミノプロピルジフェニルホスフィンオキシドとトリフェニルホスフィンのない、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のジアステレオマー混合物を与える工程。
【0042】
なおさらなる局面では、本発明は、オロパタジンの塩を含有するジアステレオマー混合物の(Z)/(E)比を高める方法であって、以下の工程を含む方法を伴う:
(a)酸付加塩としてのオロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノ-プロピリデン]-6,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のブタノール/水懸濁液を供給する工程(ここで、初期(Z)/(E)比は少なくとも約86/14);及び
(b)前記懸濁液を共沸蒸留で分別結晶させて、初期(Z)/(E)比より高い(Z)/(E)比を有する結晶性オロパタジン塩を与える工程。
さらなる局面では、本発明は、オロパタジンの塩を含有するジアステレオマー混合物の(Z)/(E)比を高める方法であって、以下の工程を含む方法に関係する:
(a)オロパタジン塩を含有するジアステレオマー混合物をブタノール/水に懸濁させる工程;及び
(b)前記懸濁液を、懸濁オロパタジン塩の割合をそのジアステレオマーに対して高めるのに十分な量の時間撹拌する工程。
【0043】
これらのプロセス工程の各組合せは上述され、かつ下記実施例で例示される。
さて、オロパタジンの調製で使用する特定の出発原料を製造するための方法に話を向けると、そのさらに別の局面では、本発明は、4-(2-カルボキシベンジルオキシ)-フェニル酢酸(Olo-IM1)の分子内フリーデル-クラフツ反応での6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)の調製のための新規反応に関係する。適切な不活性な芳香族溶媒、例えば置換若しくは無置換芳香族溶媒中(ここで、該置換基はアルキル、ハロ、又はニトロの群から選択される)、約20℃〜約40℃、好ましくは約20℃〜約25℃の中程度の温度で、この反応を有利に行うことができる。好ましい溶媒はトルエンであり、この溶媒中では、フリーデル-クラフツ反応は、触媒量のトリフルオロメタンスルホン酸又はBF3・Et2Oの存在下でたった約1.1〜約1.2当量のトリフルオロ無水酢酸を用いて約1時間以内で、該芳香族溶媒による競合的有害反応もなく、かつほとんど定量的に進行する(下記スキーム19参照)。
【0044】
【化20】

【0045】
引き続き、オロパタジンの生成につながる反応スキームで6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)を3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)と反応させる。
先行技術の方法で必要な大過剰のジメチルアミンを回避しながら、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)の大規模生産を行える新規かつ非自明な方法を発見した。本発明の方法は、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)の反応混合物からの直接結晶化を斟酌する。
従って、その別の局面では、本発明は、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)の調製方法であって、(a)3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM3)をジメチルアミンと反応させてOlo-IM4を与える工程;及び(b)前記反応混合物から3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩を直接結晶化できるように、十分な残余ジメチルアミンを封鎖する工程を含む方法に関係する。好ましくは、この反応は3〜4倍のモル過剰のジメチルアミンで行われる。
【0046】
反応混合物から反応生成物が直接結晶できるように、ジメチルアミンを封鎖できる化合物には、ハロゲン化アセチル、オキシハロゲン化リン、ハロゲン化シアヌル、ハロゲン化スルフリル、例えば臭化アセチル、オキシ臭化リン、臭化シアヌル、臭化スルフリル等である。下記スキーム20は、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)を調製するための反応を示す。この反応では、臭化アセチルの添加後、反応混合物から直接生成物が結晶化する。
さらに、公知なように、ホスホニウムハライド由来のハライド対イオンの同一性はウィッティヒ反応の結果にほとんど影響しない。従って、ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムクロリド塩酸塩も対応する遊離塩基を生成し、塩化水素-生成封鎖剤、例えば、塩化アセチルを用いて過剰のジメチルアミンを除去しうる。
【0047】
【化21】

【0048】
粗製3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)生成物を直接ろ別してから、エタノール又は他の適切な溶媒から容易に再結晶させて、該再結晶工程について85%を超える収率でほとんど純粋な生成物を得ることができる。この新規方法は、有利なことに、適切な純度の結晶性物質を得るめに先行技術の方法で必要な、繰返しOlo-IM4生成物の溶液から溶媒(及び残存溶媒)と過剰なジメチルアミンを蒸留/除去する必要を排除する。
別の局面では、本発明は、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド遊離塩基(Olo-IM4遊離塩基)の調製方法であって、適切な溶媒中で3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩とアルカリ土類金属の炭酸塩又はアルカリ金属の炭酸塩を混合する工程を含む方法に関係する。この新規方法は、スキーム21に示されるように、Olo-IM4遊離塩基をその対応する臭化水素酸塩から遊離させ、この遊離塩基の大規模な簡易生産を斟酌する。
【0049】
【化22】

【0050】
3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(遊離塩基)をその対応する臭化水素酸塩から遊離させる方法は、50℃より高い温度で進行し、好ましくは塩基として炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを使用する。この方法に好適な溶媒として、アルコール、例えばC1-C4アルコール、アセトニトリル又はこれらの溶媒と水が挙げられる。反応後、塩をろ別し、水(存在する場合)を除去し、ろ液を濃縮して遊離塩基の結晶化を惹起することができる。貧溶媒、MTBE若しくはシクロヘキサン又はその混合物を1:2までのMTBE:シクロヘキサンの比、好ましくは約1:1のMTBE:シクロヘキサンの比で添加して結晶化を仕上げて、約95%の収率でOlo-IM4(遊離塩基)を与えることができる。しかし、シクロヘキサンを使用せずに結晶化を仕上げることが好ましく、この反応で使用する溶媒はメタノール又はアセトニトリルである。
3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM3)から0lo-IM4遊離塩基を直接調製するため、3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドをまずジメチルアミン、例えば、エタノール中のジメチルアミンの溶液又は溶媒として2-プロパノールに溶かした気体ジメチルアミンと反応させた後、反応混合物を炭酸カリウムで処理し、その懸濁液を約45℃で撹拌し、ろ過し、濃縮し、MTBE(及びシクロヘキサン)又はトルエンを添加して完全に結晶化する。約93%までの収率を得ることができる。
【0051】
【化23】

【0052】
オロパタジン及びオロパタジンの医薬的に許容しうる塩を投与のため医薬的に許容しうる組成物に調製することができる。オロパタジン又はその塩を用いて製造した医薬組成物は眼の局所投与に有用であり、既知技術を用いて製造することができる。眼に許容しうる賦形剤、例えば緊張度調整剤、pH-調整剤、緩衝剤、保存剤、快適向上剤、粘度調節剤、安定剤などを含めうる。使用しうる等張剤として、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム及び他の電解質などが挙げられる。使用しうる緩衝剤には、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、ホウ酸などがある。望ましくは、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、安定化オキシクロロ複合体(Purite(登録商標))、フェニル酢酸第二水銀、クロロブタノール、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール等の保存剤を添加しうる。エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、及びエデト酸二カリウムナトリウム等といったエデト酸塩のような安定剤をも使用しうる。さらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロースエーテル(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギナート、カラギーナン、グアー、カラヤ、アガロース、イナゴマメの実、キサンタンガム等の添加によって点眼剤の粘度を増強することが望ましいこともある。点眼剤のpHを水酸化ナトリウム、塩酸等で適切なpH、一般的に約6.8〜7.6に調整しうる。オロパタジンを含有する製剤が他の活性剤を含んでもよい。
点眼製剤は、典型的に眼に、1日1回〜数回、一度に1〜数滴の量で適用されるが、さらにひどい場合、点滴薬を1日に数回適用してよい。
【0053】
この発明の医薬組成物は、抗アレルギー活性を提供する活性成分として有効な量のオロパタジン塩に加え、不活性な医薬的に許容しうる担体を含んでよく、担体は固体又は液体でよい。固体形態の組成物には、散剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、カシェ剤及び座剤がある。固体の医薬的に許容しうる担体として、希釈剤、調味料、可溶化剤、潤沢剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤又は封入材料が挙げられる。錠剤では、活性化合物を、必要な結合特性を有する適量の担体と混合し、混合物を錠剤形態に圧縮する。散剤用の担体は微粉固体であり、これを微粉オロパタジン又はその塩と混ぜ合わせる。固形組成物は、好ましくは約2%〜約30%のオロパタジン又はその医薬的に許容しうる塩を含む。このような組成物に好適な固形担体及び該組成物の製造方法は技術上周知である。
なお別の局面では、オロパタジン塩酸塩の新規かつ非自明な結晶形(本明細書ではオロパタジン塩酸塩B形と称する)を発見した。オロパタジン塩酸塩B形は、銅Kα放射線を用いて得られる、実質的に以下のX線回折ピーク(°2θ)を有すると特徴づけられる:9.03、10.39、16.93、20.09、21.90、22.94、23.23、及び29.82。
オロパタジン塩酸塩は、アルコールと、該アルコールと混和しうるか又は不完全に混和しうる有機溶媒とから成る二相溶媒混合物である混合有機溶媒からの結晶化又は再結晶化によって調製される。例えば、オロパタジン塩酸塩のアルコール溶液を、該アルコールと混和しうるか又は不完全に混和しうる溶媒と混ぜ合わせることによって、結晶化又は再結晶化を行うことができる。このような結晶化溶媒は、(i)メタノール又はエタノール、好ましくはメタノールであるアルコール、及びC6-C10脂肪族又は脂環式炭化水素、好ましくはヘキサン又はヘプタンを含みうる。好ましくは、結晶化/再結晶化用の混合溶媒は約40〜90%の少なくとも1種の高級アルカンと、残りの10〜60%の混合溶媒(少なくとも1種の低級アルカノールである)を含む。オロパタジン塩酸塩のアルコール溶液と混ぜ合わせる前に、C6-C10脂肪族又は脂環式炭化水素を例えば0℃〜5℃に冷却することが望ましい。結晶性オロパタジン塩酸塩B形は、少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも80%、なおさらに好ましくは少なくとも90%の多形純度、最も好ましくは95%以上の多形純度を有する。
下表2は、結晶性オロパタジン塩酸塩B形のX線回折データを示す。
【0054】
表2
オロパタジン-HClの多形B形のXRDデータ

【0055】
表2(続き)

【0056】
A形は、下表3に示すXRDによって特徴づけられる。単結晶のシンクロトロン、及びX線測定がこの形態を明白に確証する。
【0057】
表3
オロパタジン-HClの多形A形のXRDデータ

【0058】
Oshima, E., J. Med. Chem., 1992, 35, 2074-2084は、オロパタジン塩酸塩をアセトン/水から結晶化することを開示している。結晶化実験は、アセトン/水結晶化溶媒といった広範な結晶化溶媒から、B形ではなく、A形が結晶化することを明らかにした。
A.エタノールからの再結晶化
エタノール(80ml)中のオロパタジン-HCl(1.5g)の懸濁液を加熱還流させて清澄溶液を得た。20〜25℃に冷却後、懸濁液をろ過し、湿潤生成物を真空乾燥させて(14時間,60℃)多形A形でオロパタジン-HClを得た(収率:1.10g,73.3%)。
B.アセトン/水からの再結晶化
アセトン(20ml)中のオロパタジン-HCl(5g)の懸濁液を加熱還流させた。次に、水(5.6ml)を加えて清澄溶液を得た。まず20〜25℃に冷却してから0〜5℃に冷却後、懸濁液をろ過し、湿潤生成物をアセトン(6ml)で洗浄し、真空乾燥させて(一晩,60℃)多形A形でオロパタジン-HClを得た(収率:3.47g,69.4%)。
C.メタノール性オロパタジン-HCl溶液のMTBEへの添加による沈殿
オロパタジン-HCl(1.0g)をメタノール(25ml)に30〜40℃で溶かし、この溶液を予冷(0〜5℃)MTBE(100ml)に加えた。懸濁液をろ過し、湿潤生成物を真空乾燥させて(1.5時間,60℃)多形A形でオロパタジン-HClを得た(収率:0.82g,82%)。
D.オロパタジン-HClのDMF溶液のジイソプロピルエーテルえの添加による沈殿
DMF(30ml)中のオロパタジン-HCl(1.0g)の溶液を20〜25℃でジイソプロピルエーテル(100ml)に加えた。この温度で1時間撹拌後、懸濁液をろ過し、湿潤生成物をジイソプロピルエーテル(2〜3ml)で洗浄し、真空乾燥させて(一晩,60℃)多形A形でオロパタジン-HClを得た(収率:0.9g,90%)。
【0059】
E.オロパタジン-HClのDMSO溶液のトルエンへの添加による沈殿
DMSO(7ml)中のオロパタジン-HCl(1.0g)の溶液を20〜25℃でトルエン(100ml)に加えた。この温度で40分撹拌後、懸濁液をろ過し、湿潤生成物を真空乾燥させて(一晩,60℃)多形A形でオロパタジン-HClを得た(収率:0.92g,92%)。
F.メタノール性オロパタジン-HCl溶液のヘキサンへの添加による沈殿
オロパタジン-HCl(1.0g)をメタノール(25ml)に35〜40℃で溶かし、この溶液を予冷(0〜5℃)ヘキサン(100ml)に添加した。懸濁液を0〜5℃で1.5〜2時間撹拌してからろ過し、湿潤生成物を真空乾燥させて(1.5時間,60℃)多形B形でオロパタジン-HClを得た(収率:0.59g,59%)。
G.メタノール性オロパタジン-HCl溶液のヘプタンへの添加による沈殿
オロパタジン-HCl(1.0g)をメタノール(25ml)に35〜40℃で溶かし、この溶液を予冷(0〜5℃)ヘプタン(100ml)に添加した。懸濁液を0〜5℃で1.5時間撹拌してからろ過し、湿潤生成物を真空乾燥させて(1.5時間,60℃)多形B形でオロパタジン-HClを得た(収率:0.51g,51%)。
オロパタジン塩酸塩B形は、下表4に示すXRDデータによって特徴づけられる。
【0060】
下表4は、A形又はB形のオロパタジン-HClの異なるバッチを種々の条件下で製造したときに得られた種々の結果(例えば%収率)を示す。
(表4−1)

【0061】
(表4−2)

【0062】
表4(続き)
(表4−3)

【0063】
(表4−4)

【0064】
表4(続き)
(表4−5)

【0065】
(表4−6)

【0066】
表4(続き)
(表4−7)

【0067】
(表4−8)

【0068】
表4(続き)
(表4−9)

【0069】
(表4−10)

【0070】
図1に示されるX線粉末回折パターンはオロパタジン塩酸塩B形(バッチFE002.34.3.1)のものである。図2に示されるX線粉末回折パターンはオロパタジン塩酸塩A形(Batch 765.63.12)のものである。図1及び図2に示される種々のXRDピークは、技術上周知なように、テクスチャー効果によって変化しうる。
この文書全体を通じて、種々の書籍、特許、雑誌記事、ウェブサイト及び他の出版物を引用した。これらの各書籍、特許、雑誌記事、ウェブサイト及び他の出版物の全体が、参照によって本明細書に取り込まれる。
【実施例】
【0071】
下記実施例はオロパタジン-HClの多形、及び本発明内の方法を記載かつ説明する。実施例は単に本発明の例示にすぎず、本発明の範囲又は精神内の前記多形及び方法を制限するものではない。当業者は、実施例に記載の手順で使用される特定の条件及び/又は工程の変形を用いてこれらの多形、オロパタジン又はその塩を調製できることが容易に分かるだろう。計算したすべての収率をアッセイで補正した。
【0072】
〔実施例1〕
中間体4-(2-カルボキシベンジルオキシ)フェニル酢酸(Olo-IM1)の合成
DMF(323g)中の4-ヒドロキシフェニル酢酸(90.0g,0.58mol;アッセイ>98%)とフタリド(85.07g,0.63mol)の溶液を内部温度130℃に加熱した。圧力を800mbarに下げ、内部温度を約100℃で維持しながら混合物にナトリウムメトキシド(224.6g,1.25mol,アッセイ:30%のメタノール溶液)をゆっくり加えた。添加中にメタノールを蒸留で除去し、添加後、内部温度が再び130℃に上昇するまで常圧で蒸留を続けた(260gの留出物)。この温度で6.5時間撹拌後、フタリド(8.5g,0.06mol)を加えて混合物を一晩撹拌した(16時間)。その後、混合物を100℃に冷却して水(1040g)で加水分解した。10℃未満に冷却後、塩酸(163.5g,1.43mol;アッセイ:32%)で混合物のpHを1に調整した。生成物をろ別し、水(700g)で洗浄し、15時間60℃で真空乾燥させて粗製4-(2-カルボキシベンジルオキシ)フェニル酢酸(Olo-IM1)を得た(収率:174.6g,0.48mol,82.1%;HPLCアッセイ:78.0%)。
粗製Olo-IM1(50.0g,アッセイ:78.0%,0.14mol)をアセトニトリル/水(40ml,1/1)から再結晶させた。ろ過後、湿潤生成物を連続的にアセトニトリル/水(98ml,1/1)と水(20ml)で洗浄してわずかに橙色の4-(2-カルボキシベンジルオキシ)フェニル酢酸(Olo-IM1)を得た(収率:35.27g,0.12mol,88.1%;HPLCアッセイ:97.4%;全体収率:72.3%)。
【0073】
〔実施例2〕
中間体6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)の合成
トルエン(1122g)中の4-(2-カルボキシベンジルオキシ)フェニル酢酸(Olo-IM1)(300.09g,1.04mol;アッセイ:99.0%)とトリフルオロメタンスルホン酸(4.77g,0.03mol;アッセイ:98.0%)の懸濁液にゆっくりトリフルオロ無水酢酸(255.18g,1.20mol;アッセイ:99.0%)を20〜35℃で加えた。トリフルオロ無水酢酸の完全な添加後、褐色溶液を20〜25℃で1時間撹拌してから混合物を水(99.0g)で加水分解した。その後、蒸気温度が105〜110℃になるまで混合物を常圧下で蒸留した(1191gの二相留出物)。残留物をトルエン(261g)で希釈し、懸濁液を加熱還流させた。この暗色溶液を75℃に冷まして6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)の結晶を播いた。懸濁液を20〜25℃に冷却後、この温度でさらに1〜2時間撹拌した。生成物をろ別し、シクロヘキサン(600g)と水(390g)で洗浄し、真空乾燥させて(20時間,50℃)6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)を得た(収率:203.21g,0.76mol,73.0%;HPLCアッセイ>99.5%,HPLC純度:99.62%)。次に、この生成物をシクロヘキサン(700g)とトルエン(1892g)の混合物から再結晶させた。ろ過後、湿潤生成物をシクロヘキサン(466g)で洗浄し、真空乾燥させて(15時間,70℃)わずかに灰色の6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)を得た(収率:198.4g,0.74mol,97.6%;HPLCアッセイ>99.5%,HPLC純度:99.90%;全体収率:71.3%)。
【0074】
〔実施例3〕
中間体3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM3)の合成
トルエン(800g)中のトリフェニルホスフィン(511g,1.85mol;アッセイ:95.0%)の撹拌溶液に、1,3-ジブロモプロパン(371g,1.82mol;アッセイ:99.0%)を5℃未満でゆっくり1時間以内で加えた。完全な添加後、溶液を17時間加熱還流させて得た懸濁液を室温に戻した。生成物を20℃でろ別し、トルエン(2×800g)で洗浄し、真空乾燥させて(21時間,60℃)3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM3)を白色の結晶性固体として得た(収率:757g,1.63mol,89.6%)。
【0075】
〔実施例4〕
ウィッティヒ試薬3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド*HBr(Olo-IM4)の合成
無水エタノール(664g)中の3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM3)(420g,0.90mol)の撹拌溶液に無水エタノール中のジメチルアミンの溶液(368g,2.69mol,アッセイ:33%)を室温でゆっくり30分以内で加えた。完全な添加後、懸濁液を還流させながら1時間撹拌して溶液を得た。この溶液を0〜10℃の温度に冷却して臭化アセチル(202.7g,1.65mol)をpHが1未満になるまで滴加し、結果の懸濁液を20〜25℃に温めた。白色懸濁液をろ過した後、湿潤生成物を無水エタノール(237g)で洗浄してから真空乾燥させて(15時間,70℃)3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド*HBr(Olo-IM4)を白色固体として得た(収率:471.2g,0.77mol,85.1%;HPLCアッセイ:83.2%,HPLC純度:98.72%)。
この粗製物質(460g,0.75mol;アッセイ:83.2%)を無水エタノール(395g)に懸濁させて還流温度で撹拌することによってさらに精製した。さらに無水エタノール(435g)を添加後、すべての物質を溶解させて溶液を室温に戻し、69℃で結晶核を入れて結晶化を惹起した。室温で4時間撹拌後、生成物をろ別し、エタノール(140g)で洗浄してから真空乾燥させて(15時間,70℃)3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド*HBr(Olo-IM4)を結晶性白色固体として得た(収率:333.7g,0.66mol,87.2%;HPLCアッセイ>99.9%,HPLC純度:99.85%,全体収率:74.2%)。
【0076】
〔実施例5〕
ウィッティヒ試薬3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4,遊離塩基)の合成
(a)3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド*HBr(Olo-IM4)から
3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド*HBr(128.1g,0.25mol)、Na2CO3(31.8g,0.30mol)及び2-プロパノール(590g)を含有するフラスコを50℃で6時間撹拌した。次に、混合物を室温に冷まし、セライト(15g)でろ過してケークを2-プロパノール(2×186g)で洗浄した。減圧下(45℃,100mbar)でほとんどの溶媒を除去して過飽和生成物溶液を得た(170g)。この溶液を撹拌しながらOlo-IM4(遊離塩基)の結晶を入れて結晶化を惹起した。この白色懸濁液にMTBE(240g)とシクロヘキサン(253g)を加え、混合物を一晩撹拌して結晶化を完了した。生成物をろ別し、MTBE(2×74g)で洗浄し、50℃で7時間真空乾燥させて3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4,遊離塩基)を白色の結晶性固体として得た(収率:101.7g,0.24mol,94.4%)。
(b)3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM3)とジメチルアミン 溶液から
2-プロパノール(78.5g)中の3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(11.64g,25.1mmol)の撹拌懸濁液に、無水エタノール中のジメチルアミンの溶液(10.25g,75.0mmol;アッセイ:33%)を室温でゆっくり10分以内で加えた。添加完了後、懸濁液を還流温度で45分間撹拌してから減圧蒸留(62℃,500mbar)で26.4gの溶媒を除去した。K2CO3(4.15g,30mmol)の添加後、懸濁液を還流温度で3.5時間撹拌してから室温に冷まし、セライト(3g)でろ過し、ケークを2-プロパノール(2×15.7g)で洗浄した。減圧下(45℃,100mbar)でほとんどの溶媒を除去して過飽和生成物溶液を得た(25.1g)。この溶液を撹拌しながらOlo-IM4(遊離塩基)結晶を入れて結晶化を惹起した。この白色懸濁液にMTBE(37g)とシクロヘキサン(39g)をゆっくり加え、懸濁液を一晩撹拌して結晶化を完了した。生成物をろ別し、MTBE(2×18.5g)で洗浄し、真空乾燥させて(7時間,50℃)3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4,遊離塩基)を白色の結晶性固体として得た(収率:7.53g,17.1mmol,68.0%,HPLCアッセイ:97.03%)。
【0077】
(c)3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドと気体のジメチルアミンから
2-プロパノール(400g)中の3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(58.02g,125mmol)の撹拌懸濁液中に、気体のジメチルアミン(17.3g,383mmol)を0〜10℃にて15分以内で泡立てた。その後、懸濁液を35〜40℃に加熱して16時間撹拌した。次に、この清澄溶液から183gの溶媒を減圧蒸留で除いた(58〜61℃,400mbar)。45〜50℃で水(3.0g)とK2CO3(17.28g,125mmol)を加えた。減圧下(400mbar)で、懸濁液を55〜60℃に加熱し、9時間撹拌すると、その間にいくらかの溶媒が蒸留で除かれ、ほとんどのジメチルアミンが除去された。蒸留された量の溶媒(65g)を再び加えた。白色懸濁液を20〜25℃に冷まして30〜60分間撹拌した。次に、懸濁液をろ過し、2-プロパノール(55g)で洗浄した。白色固体(乾燥24.15g)を捨てた。減圧下(400mbar)60〜62℃で蒸留してろ液(291g)から全部で183gの溶媒を除去した。残留物を20〜25℃に冷却してMTBE(202g)を加えた。白色の乳状エマルションにOlo-IM4(遊離塩基)結晶を入れて結晶化を惹起した。結晶化が非常に速く進行した。次に白色懸濁液を還流温度(55℃)に加熱して1時間撹拌した。次に、懸濁液を20〜25℃に冷却して3時間撹拌した。生成物をろ別し、MTBE(50g)で洗浄し、真空乾燥させて(12時間,50℃)3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4,遊離塩基)を白色の結晶性固体(収率:51.34g,116mmol,92.8%,HPLC純度:99.17%,HPLCアッセイ:96.45%)として得た。
【0078】
〔実施例6〕
(Z)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩(オロパタジン塩酸塩)
(手順1)
工程a:オロパタジン臭化水素酸塩の調製
窒素雰囲気下で、機械式撹拌機を備えた2500mlの5-口フラスコを3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩(Olo-IM4)(299.6g,0.584mol;HPLCアッセイ:99.4%)と水素化ナトリウム(70.28g,1.757mol,アッセイ:60%)で充填した。予冷(4℃)乾燥THF(284g)を加え、懸濁液をN2雰囲気下20〜30℃で40分間及び55〜60℃で3時間撹拌した。常圧で蒸留して橙色懸濁液から160gの溶媒を除去し、反応混合物を10℃未満に冷却した。次に、乾燥THF(100g)中の6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)(57.69g,0.215mol,HPLCアッセイ>99.5%)の溶液を慎重に加えて反応混合物を20〜30時間20〜25℃で撹拌した。反応混合物を10℃未満に冷却し、THF(75g)中の水(25g)の溶液をゆっくり加えた。水(270g)で希釈後、二相溶液を分けて水層を常圧下で濃縮して286gの留出物を得た。この層の濃縮前、pHを調べて(20〜25℃)、pHが12以上であることを確実にし(かつ必要な場合、30%のNaOH水溶液でpHを12以上にした)。
【0079】
残留物を水(765g)で希釈し、トルエンで5回(それぞれ500g)抽出した。2-メチルテトラヒドロフラン(490g)と2-プロパノール(90g)の溶液を加え、臭化水素酸水溶液(169.2g,1.04mol;アッセイ:48%)を添加して水層のpHを13.8から4.3〜4.4に調整した。相を分け、それぞれ2-メチルテトラヒドロフラン(490g)と2-プロパノール(90g)の混合物で3回水相を抽出した。混ぜ合わせた褐色有機層を500mbarの減圧下でエバポレートして2350gの留出物を得た。残存褐色油をn-ブタノール(233g)で希釈し、混合物を再び500mbarの減圧下でエバポレートして共沸蒸留で水を除去した(275gの二相留出物)。残留物にn-ブタノール(537g)と結晶核物質を加え、スラリーを75℃で1時間撹拌した。スラリーを20〜25℃に冷却し、この温度で14時間撹拌してろ別した。湿潤生成物をn-ブタノール(130g)で洗浄し、真空乾燥させて(15時間,80℃)ベージュ色の粉状オロパタジン臭化水素酸塩を得た(収率:52.11g,0.122mol,56.9%; HPLCアッセイ:98.17%,HPLC純度:98.16%,Z/E-異性体:98.5/1.5)。
750mlの5-口フラスコ内で、上で得た乾燥生成物(50.0g,0.117mol;HPLCアッセイ:98.17%)のn-ブタノール(325g)中の懸濁液を80℃で1時間加熱した(混合物の含水量:1.87%)。この淡いベージュ色のスラリーをゆっくり5℃未満に冷却し、この温度で1時間撹拌した。ろ過後、湿潤生成物をn-ブタノール(200g)で洗浄し、真空乾燥させて(15時間,60℃)淡いベージュ色のオロパタジン臭化水素酸塩を得た(収率:48.22g,0.114mol,96.95%;HPLCアッセイ:98.69%,HPLC純度:98.60%, Z/E-異性体:98.9/1.1)。
【0080】
工程b:オロパタジンHBrのオロパタジン(遊離塩基)への変換
350mlの5-口フラスコ内でオロパタジン臭化水素酸塩(44.0g,0.104mol;HPLCアッセイ:98.69%)を水(101g)に懸濁させた。2Nの水酸化ナトリウム水溶液(55g)を用いて懸濁液を20〜25℃で6.8〜7.2の範囲のpHに調整した。ベージュ色溶液にオロパタジン遊離塩基の種晶を加え、pHをモニターしながら(かつ必要な場合2Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて6.8〜7.2のpHを維持しながら)混合物を20〜25℃で1時間撹拌した。ほぼ白色のスラリーを20〜25℃で17時間及び5℃未満で2時間撹拌した。次にスラリーをろ過し、湿潤生成物を水(144g)で洗浄し、60℃で15時間真空乾燥させてオフホワイトのオロパタジンを得た(収率:38.99g,0.101mol,97.63%;HPLCアッセイ:87.70%,HPLC純度:99.09%,含水量:12%,Z/E-異性体:99.4/0.6)。
工程c:オロパタジン(遊離塩基)のオロパタジン塩酸塩への変換
上で得たオロパタジン(30.0g,0.078mol;HPLCアッセイ:87.70%)のアセトン(226g)中の懸濁液に濃塩酸(9.73g,0.085mol;アッセイ:32%)を加えた。塩酸の添加後、懸濁液は粘性になった。さらにアセトン(226g)を加えた。混合物を20〜25℃で1時間撹拌し、5℃未満に冷却し、この温度でさらに1時間撹拌した。ろ過後、白色固体をアセトン(96g)で洗浄し、60℃で15時間真空乾燥させて白色の微粉状オロパタジン塩酸塩を得た(収率:28.04g,0.065mol;アッセイ:99.39%(NaOH),HPLC純度:99.92%,Z/E-異性体:99.98/0.02,収率:95.60%,多形A形)。Olo-IM2に対するオロパタジン塩酸塩の全体収率:51.5%。オロパタジン-HClの合成について計算した体積収率:1.48%
【0081】
(手順2)
工程a:オロパタジン臭化水素酸塩の調製
窒素雰囲気下、機械式撹拌機、還流冷却器及び内部温度計を備えた1250mlの4-口フラスコを20〜25℃の内部温度にて3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(Olo-IM4,遊離塩基)(283.23g,0.648mol,アッセイ:98.0%)、水素化ナトリウム(38.40g,0.960 mol,アッセイ:60%)及び乾燥THF(317g)で充填した。白色懸濁液を55〜60℃に2.5時間加熱すると、色が橙色に変わった。常圧下で蒸留して189gの溶媒を除去後、反応混合物を15〜20℃に冷却した。次に、乾燥THF(111g)中の6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸(Olo-IM2)(64.39g,0.240mol,HPLCアッセイ>99.5%)の溶液を慎重に加えて反応混合物を40時間20〜25℃で撹拌した。反応混合物を0〜5℃に冷却し、THF(60g)中の水(24g)の溶液をゆっくり(0〜20℃で)加えた。水(290g)で希釈して10〜15分間20〜25℃で撹拌後、二相溶液を分けて水層を常圧下で濃縮して276gの留出物を得た。この層の濃縮前に、pHを調べて(20〜25℃で)pHが12以上であることを確認した(必要な場合、30%のNaOH水溶液でpHを12以上に上昇させた)。
残留物を25〜30℃に冷却し、まずトルエン/n-ブタノール(9/1,300g)で抽出してからトルエン/n-ブタノール(9/1,各抽出について240g)で3回抽出した。これらの抽出の際、3層を得たら、各場合にその2層を分けて再び抽出した。その後、水層をトルエン(200g)で1回抽出した。この場合、抽出中に2層のみ得た。次に、n-ブタノール(240g)を水層に加え、0〜10℃にて、臭化水素酸水溶液(78.65g,0.467mol;アッセイ:48%)を添加してpHを12.59から4.2〜4.6に調整した。混合物を20〜25℃に戻して水層を分け、再びn-ブタノール(240.0g)で抽出した。混ぜ合わせた有機層を水(120.0g)で洗浄してから木炭(5.0g)で処理した。懸濁液のセライトろ床(10.0g)に通すろ過及びフィルターケークのn-ブタノール(30g)による洗浄後、混ぜ合わせたろ液を真空中(200mbar)で内部温度が72〜75℃に上昇するまで濃縮して330〜390gの留出物を得た。結果として生じた懸濁液に水(4.27g)を65〜74℃にて添加し、混合物を2〜3時間以内で20〜25℃の内部温度に冷ました。懸濁液をこの温度で16時間撹拌してからろ過した。湿潤生成物をn-ブタノール(72.0g)で洗浄し、80℃で14時間真空乾燥させてベージュ色の固体を得た(収率:54.91g,0.128mol,53.5%; HPLCアッセイ:97.85%,HPLC純度:97.80%,Z/E-異性体:98.1/1.9)。この生成物をさらに精製せずに次工程で使用した。
【0082】
工程b:オロパタジンHBrのオロパタジン(遊離塩基)への変換
工程aで得たオロパタジンHBr生成物(54.91g,0.128mol;HPLCアッセイ:97.85%)を500mlの3-口フラスコに装填した。20〜25℃で、水(374g)中NaOH(5.12g,0.128mol)の溶液を加え、5分後に黄色溶液を得た(pH=6.4)。この混合物にさらに2NのNaOH(2.46g,4.6mmol)を添加してpHを6.8〜7.2に調整し(オロパタジン遊離塩基の結晶化は一般的に中和後自然に始まる)、オロパタジン種晶(20mg)を加えた。pHをモニターしながら混合物を20〜25℃で1時間撹拌した(2Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.8〜7.2に維持した)。20〜25℃で20時間撹拌後、ベージュ色の懸濁液をろ過し、湿潤生成物を水(103g)で洗浄し、23時間65℃で真空乾燥させてベージュ色の固体を得た(収率:42.40g,0.123mol,96.09%;HPLCアッセイ:97.71%,HPLC純度:99.03%,含水量:2.80%,Z/E-異性体:99.2/0.8)。
工程c:オロパタジン(遊離塩基)のオロパタジン塩酸塩への変換
工程bで生成したオロパタジン(遊離塩基)(42.40g,0.123mol;HPLCアッセイ:97.71%)のアセトン(601g)中の懸濁液に濃塩酸(15.39g,0.135mol;アッセイ:32%)を加えた。白色懸濁液を15時間20〜25℃で撹拌した。ろ過後、白色固体をアセトン(72.5g)で洗浄し、60℃で14時間真空乾燥させてオフホワイトの粉状オロパタジン塩酸塩を得た(収率:44.35g,0.119mol;アッセイ:100%(HPLC),HPLC純度:99.96%,Z/E-異性体:99.97/0.03,収率:96.7%,多形A形)。Olo-IM2に対するオロパタジン塩酸塩の全体収率:49.7%。オロパタジン-HClの合成について計算した体積収率:5.0%。
【0083】
〔実施例7〕
この実施例は、オロパタジン臭化水素酸塩を調製するための実施例6の手順1及び2の工程(a)で述べたウィッティヒ反応及び仕上げ手順で関与する特定パラメーターのバリエーションに関する(すなわち、ウィッティヒ反応条件;クエンチング;洗浄工程;nBuOHを用いる抽出;及び木炭処理)。下表に示すように、結果のオロパタジン生成物を全体収率について分析した。
【0084】
表5

【0085】
表5(続き)

定量的HPLCで収率を決定した。
【0086】
表5で提示した結果は、オロパタジンHBrを反応混合物から調製及び単離する方法の効率と頑強さを示す。ウィッティヒ反応の持続性撹拌時間(63時間まで)も30℃までの反応温度も生成物の収率又は反応の選択性に有害な影響を及ぼさず、生成物のそのHBr塩としての単離は高収率を与えた(Z-異性体の反応収率:66〜67%、及びnBuOHによる抽出後のオロパタジン(Z-異性体)の全体収率:62-64%)。
【0087】
〔実施例8〕
この実施例は、抽出後直接有機層(n-BuOH)からのオロパタジンHBrの結晶化に関する。初期含水量(表6参照)を共沸蒸留で減らして結晶化を惹起した。臭化水素酸塩としてのZ/E-ジアステレオマーを分離するための分別結晶化は高いジアステレオマー純度でオロパタジンHBrを与えた。典型的温度は約20〜25℃の範囲であり、最終含水量は典型的に約1〜3%の範囲だった。より低い温度(0〜5℃)及び/又はより低い含水量では、ジアステレオマーの分離が低下した。
抽出後最初の有機層(オロパタジンHBr-含有溶液)は15.5%の水を含み、70/30のジアステレオマー(Z/E)比を有した。有機層を6つの部分(同サイズ)に分割し、まず部分3〜6を相当量のnBuOHで希釈した。次に、すべての溶液を同様に共沸蒸留で濃縮(表6に示す濃度が得られるまで蒸留して等量の溶媒を除去)して結晶化を開始した。懸濁液を室温で撹拌した後、バッチ2、4及び6を0〜5℃に冷却してこの温度で2.5時間撹拌した。
下表6に示すように、温度はジアステレオマーの分離に重要な影響を及ぼすが(番号2、4及び6参照)、約5〜12%の範囲のオロパタジン濃度の影響はあまり重要でないようである。部分1〜4と対照的に、低濃縮混合物(部分5及び6)からの類似の結晶化実験は低収率をもたらした。約0〜5℃で撹拌した懸濁液はフラスコ内にクラスト(crust)を形成し、この沈殿物は、オロパタジンHBrと共にその対応するE異性体の同時沈殿によって生じたと思われる凝集固体から成った。
【0088】
表6
抽出後有機層からのジアステレオマーの分離のための温度と濃度の影響にする

【0089】
〔実施例9〕
この実施例は、オロパタジンHBrのその対応するE異性体からの分離に及ぼすジアステレオマー含有有機層の含水量の影響に関する。下表8に示す実験では、抽出後最初の有機層(溶液)は18.4%の水を含み、ジアステレオマー比(Z/E)は70/30だった。有機層を5つの同サイズの部分に分割し、5つすべての溶液を同様に共沸蒸留で濃縮して結晶化を開始した。蒸留後、部分2〜4の結晶化のための濃度(Z-異性体Olo-HBrについて)は13〜16%の範囲であり、対応する量の水を添加して含水量を調整した。懸濁液を約73から室温に冷却し、室温で16時間まで撹拌した。
部分1の場合、蒸留後の含水量は<<1%であり、初期濃度は18%だった。結晶化の際、生成物が凝集してろ過できなかった。この凝集は、望ましくないE異性体の同時沈殿を示唆している。さらにn-ブタノールを(12〜13%の濃度に)添加して74℃で再び撹拌してもまだわずかに凝集したが、より良くろ過しうる沈殿をもたらした。
下表7に示す結果は、1%よりずっと低い水濃度は望ましくないE-ジアステレオマーの同時沈殿をもたらしうることを示唆している。この場合(番号1)、このような低い含水量とわずかに高い濃度(Z-異性体に対して13〜16%ではなく18%)を併用すると、ろ過できない凝集沈殿を与えた(表5の結果をも比較されたい)。約12%の濃度への希釈後、沈殿生成物は、よりろ過しうるが、生成物は未だ凝集固体を含有した。Z/E-異性体の比の分析的決定は、この生成物中のより高い量のE-異性体を確証した。
他方、約4%以上の水濃度では(例えば、部分番号3、4及び5を比較されたい)、オロパタジンの収率は、何らさらにZ/E比が向上することなく低減する。15〜18%の含水量は、該生成物をほとんど完全に溶解しうる。
【0090】
表7
抽出及び濃縮後の有機層からのジアステレオマーの分離に対する含水量の影響

【0091】
〔実施例10〕
この実施例は、小量の水を含有するnBuOH中のオロパタジン臭化水素酸塩を含有するジアステレオマー混合物をスラリー化することによって得られるオロパタジン臭化水素酸塩のさらなる富化に関する。70/30比Z/E-異性体の混合物からのOlo-HBrの結晶化と対照的に、0.2%まで下がった水量を含有するn-BuOH中でスラリー化することによって、14%までのZ-異性体を効率的に分離できることが分かった(典型的条件については表8参照)。
【0092】
表8
富化Z-異性体Olo-HBrのスラリー(Z/E異性体の初期比:86/14, Z-異性体についての濃度9〜10%)

【0093】
〔実施例11〕
この実施例は、同時にオロパタジンの量がその対応するE異性体に対して富化する、オロパタジン臭化水素酸塩のオロパタジン(遊離塩基)への変換に関する。90/10〜97.5/2.5比の(Z)/(E)異性体を含有するジアステレオマー混合物を、6.8〜7.2のpHを有する水溶液に溶かして、室温で16時間撹拌することによって、ジアステレオマー比(Z)/(E)が実質的に上昇した。
【0094】
表9
pH=6.8〜7.2の水中におけるオロパタジンHBrからのオロパタジン遊離塩基の遊離

【0095】
〔実施例12〕
この実施例は、オロパタジン(遊離塩基)からのオロパタジンHClの形成に関する。アセトン中のオロパタジンの懸濁液に塩酸(アッセイ32%)を添加した。下表10は、異なる比の(Z)/(E)異性体を含有する出発原料を利用して達成される種々の結果を示す。表11は、1〜3当量のHClを用いてオロパタジン(遊離塩基)をオロパタジン塩酸塩に変換した場合に得られる結果を示す。また、表12はオロパタジン塩酸塩への変換に及ぼす温度の影響を示す。
【0096】
表10
異なる量のE-異性体を含有する出発原料

【0097】
表11
HClの当量の影響

【0098】
表12
HCl塩の形成中の温度の影響

【0099】
結果が示すように、出願人の方法に従うオロパタジン-HCl塩の形成は頑強かつ効率的である。1〜3当量のHClを使用し、かつ0℃〜35℃の範囲の温度でHCl塩の形成の際に、2.4%までの望ましくないE-異性体の含量をオロパタジンから分離することができた。すべての場合、結果のオロパタジンHCl生成物は0.15%未満のE-異性体を含有した。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】オロパタジン塩酸塩の多形B形のXRDプロファイルである。
【図2】オロパタジン-HClの多形A形のXRDプロファイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オロパタジン又はその塩の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)11-オキソ-6,11-ジヒドロキシジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸と、3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド及びその塩から成る群より選択されるウィッティヒ試薬と、適切な塩基とを、ウィッティヒ反応条件下で反応させて、オロパタジンを含有する反応混合物を与える工程;
(b)前記反応混合物中に存在する残存イリドをプロトン化するのに十分な量の水を添加して、加水分解した反応混合物を与える工程;
(c)必要な場合、前記加水分解した反応混合物、又はその水相のpHを約12以上のpHに調整して、過剰の3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド、又はその塩を3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドに変換する工程;
(d)工程(c)の溶液を適切な溶媒で抽出して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のジアステレオマー混合物を含有し、かつ実質的に低減した量の3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドを有する溶液を与える工程;
(e)工程(d)で得た溶液のpHを約4〜5のpHに調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を与える工程;
(f)前記オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を、(i)n-ブタノール;及び(ii)メチル-THFとC1-C4アルコールの混合物から成る群より選択される水-混和性溶媒で抽出する工程(但し、前記選択溶媒がメチル-THFとC1-C4アルコールの混合物の場合、該溶液をエバポレートして残留物をn-ブタノール/水に取る);
(g)共沸蒸留によって、前記オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を含有するn-ブタノール/水溶媒を濃縮する工程;及び
(h)オロパタジンの酸付加塩を分別結晶させる工程。
【請求項2】
オロパタジン又はその塩の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)11-オキソ-6,11-ジヒドロキシジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸と、3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド及びその塩から成る群より選択されるウィッティヒ試薬と、適切な塩基とを、ウィッティヒ反応条件下で反応させて、オロパタジンを含有する反応混合物を与える工程;
(b)前記反応混合物中に存在する残存イリドをプロトン化するのに十分な量の水を添加して、加水分解した反応混合物を与える工程;
(c)必要な場合、前記加水分解した反応混合物、又はその水相のpHを約12以上のpHに調整して、過剰の3-ジメチルアミノ-プロピルトリフェニルホスホニウムハライド、又はその塩を3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドに変換する工程;
(d)工程(c)の溶液を適切な溶媒で抽出して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のジアステレオマー混合物を含有し、かつ実質的に低減した量の3-ジメチルアミノ-プロピルジフェニルホスフィンオキシドを有する溶液を与える工程;
(e)工程(d)で得た溶液のpHを約6.5〜8.0のpHに調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を含有する溶液を与える工程;
(f)工程(e)で得た前記溶液をn-ブタノールで抽出して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸のn-ブタノール/水溶液を与える工程;
(g)工程(f)で得た溶液のpHを約4〜約5のpHに調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を与える工程;
(h)共沸蒸留によって、前記オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を含有するn-ブタノール/水溶媒を濃縮する工程;
(i)オロパタジンの酸付加塩を分別結晶させる工程。
【請求項3】
工程(a)において、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を添加する前に、前記ウィッティヒ試薬を塩基と混合して、3-ジメチルアミノプロピリデン-トリフェニルホスフィンを含有する反応混合物を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基が水素化ナトリウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
約2〜約3当量の前記ウィッティヒ試薬を使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(d)の前記適切な溶媒がトルエン又はトルエンとC1-C4アルコールの混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)において、前記溶液をトルエン:ブタノール(体積で9:1)で抽出する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記pHを調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を与える工程において、前記pHを4.2〜4.6に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
HBr又はHClを単独で使用し、又は併用して前記pHを調整する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(f)において、前記オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩をnBuOHで抽出する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)において、前記適切な溶媒がTHFである、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)において、前記反応混合物に6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を添加する前に、約55℃〜約60℃の範囲の温度で約2.5時間以上、前記ウィッティヒ試薬をNaHと混合する、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
分別結晶で得たオロパタジン塩を、十分な量の塩基で処理してオロパタジン遊離塩基を遊離させる工程、及び前記オロパタジン遊離塩基を医薬的に許容しうる塩に変換する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基がNaOHであり、かつHClを添加することによって、遊離オロパタジンをその対応する塩酸塩にアセトン中で変換させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
約1〜約3当量のHClを用いて前記遊離オロパタジンをオロパタジン塩酸塩に変換する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
約0℃〜約35℃の範囲の温度で前記遊離オロパタジンをオロパタジン塩酸塩に変換する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
以下の工程を含んでなるオロパタジンの製造方法:
(a)適切な溶媒中、3-ジメチルアミノプロピル-トリフェニルホスホニウムハライド又はその塩から成る群より選択されるウィッティヒ試薬を水素化ナトリウムと混合して、3-ジメチルアミノプロピリデン-トリフェニルホスフィンを含有する反応混合物を与える工程;
(b)ウィッティヒ反応条件下、前記反応混合物を6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸と混合して、オロパタジン又はその塩を含有するジアステレオマー混合物を与える工程。
【請求項18】
前記水素化ナトリウムがモル過剰で存在する、請求項17に記載のオロパタジンの製造方法。
【請求項19】
前記反応混合物中に残留する残存イリドをプロトン化するのに十分な量の水を添加する工程をさらに含む、請求項17に記載のオロパタジンの製造方法。
【請求項20】
工程(b)が実質的に完了したとき前記反応混合物中に存在する水素化ナトリウムの量が、前記残存イリドをプロトン化するのに十分な量の水を添加すると、少なくとも約12のpHを有する混合物を与えるのに十分である、請求項19に記載のオロパタジンの製造方法。
【請求項21】
前記溶媒がTHFである、請求項17に記載のオロパタジンの製造方法。
【請求項22】
工程(a)の反応混合物の温度が約50〜約60の範囲である、請求項17に記載のオロパタジンの製造方法。
【請求項23】
オロパタジン又はその塩を含有するジアステレオマー混合物の(Z)/(E)比を高める方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)酸付加塩としての前記ジアステレオマー混合物のn-ブタノール/水溶媒中の溶液を供給する工程、
(b)溶液からの前記オロパタジン塩の分別結晶化を誘発するのに十分な程度まで含水量を低減する工程、及び
(c)結晶性オロパタジン塩を単離する工程。
【請求項24】
前記ジアステレオマー混合物がオロパタジン臭化水素酸塩を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(b)の含水量の低減が、5%より高い含水量を有するn-ブタノール/水の溶液からの共沸蒸留によって与えられる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ジアステレオマー混合物中のオロパタジンの酸付加塩の(Z)/(E)比を高める方法であって、約0.2%〜約4%の水を含有するnBuOH中の前記ジアステレオマー混合物の懸濁液を、懸濁液中の前記混合物の前記(Z)/(E)比を高めるのに十分な量の時間撹拌する工程を含んでなる方法。
【請求項27】
オロパタジンのジアステレオマー混合物の(Z)/(E)比を高める方法であって、ジアステレオマーオロパタジン又はその塩の水中スラリーで開始し、pHをオロパタジンのほぼ等電点以上のpHに調整し、かつ前記(Z)/(E)比を高めるのに十分な量の時間前記スラリーを維持する工程を含んでなる方法。
【請求項28】
出発原料の(Z)/(E)比が少なくとも約90/10である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記(Z)/(E)比を、その初期比から少なくとも約98/2の比に高める、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記混合物のpHが約6.8〜約7.2の範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
下記Olo-IM2の構造
【化1】

を有する化合物6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の製造方法であって、下記Olo-IM1の構造
【化2】

を有する化合物4-(2-カルボキシベンジルオキシ)-フェニル酢酸及びトリフルオロ無水酢酸を不活性な芳香族溶媒中で有効量の適切な触媒と反応させる工程を含んでなる方法。
【請求項32】
約1.1〜約1.2当量のトリフルオロ無水酢酸を使用する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記芳香族溶媒がトルエンである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記触媒が、BF3・OEt2及びトリフルオロメタンスルホン酸から成る群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記触媒が約3mol%のレベルで存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記反応を約20℃〜約40℃の範囲の温度で行う、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
さらに以下の工程:(i)前記反応混合物に十分な量の水を添加して前記反応混合物を加水分解する工程;及び(ii)前記加水分解した反応混合物から共沸蒸留でトリフルオロ酢酸を除去する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
さらに以下の工程:(iii)6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を結晶させる工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
さらに以下の工程:(iv)トルエン/シクロヘキサン溶媒を用いて、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を再結晶させる工程を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
下記構造Olo-IM4
【化3】

の3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)適切な溶媒中、下記構造Olo-IM3
【化4】

の化合物3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドとジメチルアミンを混合して、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩を与える工程:及び
(b)工程(a)の反応混合物に十分な量のジメチルアミン-封鎖試薬を添加して、前記反応混合物から3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド臭化水素酸塩を沈殿させる工程。
【請求項41】
3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド:ジメチルアミンの比が約3:1〜約4:1である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記封鎖試薬が、オキシハロゲン化リン、ハロゲン化アセチル、ハロゲン化シアヌル、及びハロゲン化スルフリルから成る群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記封鎖試薬が臭化アセチルである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記封鎖試薬の添加後の前記反応混合物のpHが1以下である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記適切な溶媒がC1-C4アルコールである、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記適切な溶媒がエタノールである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
下記構造Olo-IM4遊離塩基
【化5】

の3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドの製造方法であって、
3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドの塩を、 金属の炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシド、又は水酸化物から成る群より選択される塩基を含有するアルコール溶媒と混合する工程を含んでなる方法。
【請求項48】
前記3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドの塩が臭化水素酸塩である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記塩基がNa2CO3若しくはK2CO3又はその組合せである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記溶媒がC1-C4アルコールである、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記溶媒が2-プロパノールである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記溶媒に貧溶媒を添加して、溶液から3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドを結晶させる工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記貧溶媒が、MTBE、シクロヘキサン及びMTBE/シクロヘキサン混合物から成る群より選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
下記構造Olo-IM4遊離塩基
【化6】

の3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドの製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)下記式Olo-IM3
【化7】

の3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドをモル過剰のジメチルアミンと反応させて、3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドを与える工程;
(b)前記反応混合物を濃縮して過剰のジメチルアミンを除去する工程;及び
(c)適切な塩基を添加して前記臭化水素酸塩を中和する工程。
【請求項55】
前記塩基が、Na2CO3、K2CO3及びその混合物から成る群より選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記溶媒がC1-C4アルコールである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記溶媒が2-プロパノールである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
さらに以下の工程:(d)MTBE、シクロヘキサン及びMTBE/シクロヘキサン混合物から成る群より選択される貧溶媒を前記溶媒に添加して、溶液から3-ジメチルアミノプロピルトリフェニルホスホニウムブロミドを結晶させる工程を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
実質的に、銅Kα放射線を用いて得られる下記X線粉末回折ピーク(°2θ)を有するオロパタジン塩酸塩B形:9.03、10.39、16.93、20.09、21.90、22.94、23.23、及び29.82。
【請求項60】
実質的に、銅Kα放射線を用いて得られる下記X線粉末回折ピーク(°2θ)を有するオロパタジン塩酸塩B形:9.03、10.39、11.76、12.88、13.18、13.72、14.76、15.14、15.80、16.52、16.93、17.73、18.18、18.48、19.16、19.41、20.09、20.91、21.50、21.90、22.52、22.94、23.23、23.74、24.38、24.86、25.11、25.65、26.40、26.66、27.18、27.42、27.70、28.00、28.71、29.08、29.82、30.65、31.04、31.60、31.91、32.28、32.71、33.45、33.92、34.17、35.02、35.92、36.11、36.31、37.32、37.53、38.28、38.68、及び39.43。
【請求項61】
請求項59の結晶性オロパタジン塩酸塩B形の製造方法であって、以下の工程:オロパタジン塩酸塩の溶液を形成する工程;及び二相溶媒混合物中の溶液から前記オロパタジン塩酸塩を結晶又は再結晶させる工程(前記二相溶媒混合物は、(i)メタノール及びエタノールから成る群より選択されるアルコール中のオロパタジン塩酸塩の溶液:及び(ii)C6-C10脂肪族又は脂環式炭化水素を含む)を含んでなる方法。
【請求項62】
メタノール中のオロパタジン塩酸塩の溶液を、ヘキサン、ヘプタン及びその混合物から成る群より選択される脂肪族炭化水素と混合することによって、前記二相溶媒混合物を形成する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記脂肪族炭化水素を約0〜5℃の範囲の温度で前記オロパタジン塩酸塩溶液に添加する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
抗ヒスタミン有効量の結晶性オロパタジン塩酸塩B形と医薬的に許容しうる担体とを含んでなる医薬製剤。
【請求項65】
工程(a)において、6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を添加する前に、前記ウィッティヒ試薬を前記塩基と混合して、3-ジメチルアミノプロピリデン-トリフェニルホスフィンを含有する反応混合物を与える、請求項2に記載の方法。
【請求項66】
前記塩基が水素化ナトリウムである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
約2〜約3当量の前記ウィッティヒ試薬を使用する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
工程(d)の前記適切な溶媒がトルエン又はトルエンとC1-C4アルコールの混合物である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
工程(d)において、前記溶液をトルエン:ブタノール(体積で9:1)で抽出する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記pHを調整して、オロパタジンと(E)-11-[3-ジメチルアミノプロピリデン]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸の酸付加塩を与える工程において、前記pHを4.2〜4.6に調整する、請求項2に記載の方法。
【請求項71】
HBr又はHClを単独で使用し、又は併用して前記pHを調整する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
工程(a)において、前記適切な溶媒がTHFである、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
工程(a)において、前記反応混合物に6,11-ジヒドロ-11-オキソ-ジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸を添加する前に、前記ウィッティヒ試薬を約55℃〜約60℃の範囲の温度で約2.5時間以上NaHと混合する、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
分別結晶で得たオロパタジン塩を十分な量の塩基で処理してオロパタジン遊離塩基を遊離させて、前記オロパタジン遊離塩基を医薬的に許容しうる塩に変換する工程をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項75】
前記塩基がNaOHであり、かつHClを添加して、前記遊離オロパタジンをアセトン中でその対応する塩酸塩に変換する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
約1〜約3当量のHClを用いて、前記遊離オロパタジンをオロパタジン塩酸塩に変換する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記遊離オロパタジンを約0℃〜約35℃の範囲の温度でオロパタジン塩酸塩に変換する、請求項75に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−531408(P2009−531408A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502240(P2009−502240)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000793
【国際公開番号】WO2007/110761
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(508290633)ユニヴァーシテト チューリッヒ (3)
【出願人】(508290172)アツァート ファーマシューティカル イングリーディエンツ アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】