説明

カウルパネル構造

【課題】 重複配置された交換部品の点検・保守や交換が容易にでき、かつカウルパネルの所定の強度が維持でき、見栄えのよいカウルパネル構造を提供する。
【解決手段】 フェンダ間に連続して渡設されたカウルパネル2の下方に交換部品が配置されたカウルパネル構造において、前記カウルパネル2の前側の一部を切り欠いてカバー体4として残余のカウルパネル本体2Aに着脱自在に装着されたことにより、カバー体4を取り除いた残余のカウルパネル本体2Aの後部がフェンダ間で連続構成されているので、カウルパネル2としての所定の強度が維持・確保できた上で、カバー体4を開いて重複配置された交換部品の点検・保守や交換が容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンダ間に連続して渡設されたカウルパネルの下方に交換部品が配置されたカウルパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
運転席の前方に位置するエジンルーム内には、様々な搭載部品が配置されている。近年では、運転席等を含めて広い居住空間を確保するために、フロントガラスが前方に配設されるようになった。それに伴い、フロントガラスとフロントフードとの間を覆って配設されるカウルパネルも前方に移動配設されている。このような構成が採用されるようになると、カウルパネルと搭載部品とが平面視で重複配置せざるを得ない事態を招いた。特に、搭載部品がバッテリー等の交換部品である場合には部品の交換の際には、カウルパネルを取り外すことも考慮に入れねばならず、面倒な作業が要求された。そこで、カウルパネルの一部を取り外すように構成したものが提案された(例えば下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−153781号公報(図1および図3参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図5を用いて、前記特許文献1に開示された自動車の前部構造について説明する。図5(A)に示すように、カウル14は、左右のフロントピラー12に結合されたカウルインナパネル20とカウルアウタパネル18とで構成された閉断面構造22(図5(B)参照)の前方に結合される。カウル14は、上部のカウルルーバ26と下部のカウルフロントパネル24(図5(B)も参照)とから構成される。カウルルーバ26は、バッテリー38等の部品空間を覆い、所定部位に分離可能に取り付けられた第1ルーバ部46と、それ以外の空気流入空間42を覆い、所定位置に取り付けられた第2ルーバ部47とから構成される。前記第1ルーバ部46は、平面五角形状を呈し、部位50、51、52、53、54でクリップ56(図5(B))により取り付けられる。
【0004】
このような構成としたことにより、バッテリー38やその他の交換部品を交換する必要が生じた場合には、カウルルーバ26における第1ルーバ46を取り外して、部品空間36に配置したバッテー38その他の部品の交換、点検、保守を容易に行えることとなった。しかしながら、この従来のものにあって、フロントガラス74の前縁に接合され、カウルフロントパネル24の上部に配設されるカウルルーバ26が、仕切り44によって、第1ルーバ部46と第2ルーバ部47とに分割構成とされているため、この仕切り44によってカウルルーバ26としての強度が著しく低下する虞れがあった。さらに、第1ルーバ46と第2ルーバ47との分割線がフロントガラス越しに車室内から見えるため、外観上好ましくなかった。
【0005】
そこで本発明は、このような従来の自動車の前部構造の課題を解決して、重複配置された交換部品の点検・保守や交換が容易にでき、かつカウルパネルの所定の強度が維持でき、見栄えのよいカウルパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、フェンダ間に連続して渡設されたカウルパネルの下方に交換部品が配置されたカウルパネル構造において、前記カウルパネルの前側の一部を切り欠いてカバー体として残余のカウルパネル本体に着脱自在に装着されたことを特徴とする。また本発明は、前記カバー体がカウルパネル本体にヒンジ結合されたことを特徴とする。また本発明は、前記カバー体に、カウルパネル本体から連続して形成されたフードシール部材が設置されたことを特徴とする。また本発明は、前記カバー体におけるフードシール部材が、カウルパネル本体に設置されたフードシール部材と分割構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記カバー体およびカウルパネル本体に設置されたフードシール部材が装着されるシール取付突条の底部に破断促進孔を穿設したことを特徴とする。また本発明は、前記破断促進孔はフロントフードと前記フードシール部材とのシール面より後方に穿設されていることを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フェンダ間に連続して渡設されたカウルパネルの下方に交換部品が配置されたカウルパネル構造において、前記カウルパネルの前側の一部を切り欠いてカバー体として残余のカウルパネル本体に着脱自在に装着されたことにより、カバー体を取り除いた残余のカウルパネル本体の後部がフェンダ間で連続構成されているので、カウルパネルとしての所定の強度が維持・確保できた上で、カバー体を開いて重複配置された交換部品の点検・保守や交換が容易にできる。また、前側の一部を切り欠いてカバー体を構成しているので、車室内側のカウルパネルの後側にカバー体とカウルパネル本体との分割線が現れないので見栄えもよい。
【0008】
また、前記カバー体がカウルパネル本体にヒンジ結合された場合は、カバー体を交換部品の点検・保守や交換のために揺動開閉することができるので、取り外したカバー体を放置して破損する虞れもない。さらに、前記カバー体に、カウルパネル本体から連続して形成されたフードシール部材が設置された場合は、フードシール部材をカバー体を回避させる必要がなく、設計の自由度が向上する。
【0009】
さらにまた、前記カバー体におけるフードシール部材が、カウルパネル本体に設置されたフードシール部材と分割構成された場合は、カバー体を開く際に、フードシール部材を構成するシール部分を取付突条から取り外す必要がなくなる。また、前記カバー体およびカウルパネル本体に設置されたフードシール部材が装着されるシール取付突条の底部に破断促進孔を穿設した場合は、衝突時等における歩行者保護のためにカウルパネルの破断が促進できる破断促進孔を目立たない部位に形成することができる。さらに、前記破断促進孔がフロントフードと前記フードシール部材とのシール面より後方に穿設されている場合には、エンジンルーム側の熱気や臭気が居室側に流れることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明のカウルパネル構造の1つの実施例を示す要部平面図、図2は図1のA−A断面図、図3はカウルパネル全体の平面図、図4は図1のB−B断面図である。本発明のカウルパネル構造の基本的な構成は、図1に示すように、フェンダ間に連続して渡設されたカウルパネル2の下方に交換部品が配置されたカウルパネル構造において、前記カウルパネル2の前側の一部を切り欠いてカバー体4として残余のカウルパネル本体2Aに着脱自在に装着されたことを特徴とする。
【0011】
図1に示すように、フェンダ(図示省略)間に渡設されたカウルパネル2は、フロントガラス(図面上方)の下縁側に装着される後部側が連続して構成され、前側の一部を切り欠いてカバー体4(ハッチング部分)が構成される。カバー体4は、該カバー体4を切り欠いたことにより構成される残余のカウルパネル本体2Aに装着される。図1の例は、カバー体4の後部側に突設された2つの舌片から構成された係止部材5、6を、カウルパネル本体2Aに穿設された係止孔に挿入するとともに、カバー体4の前側をバルク1の係止面にクリップ部材7、8等により係止するように構成したものである。
【0012】
図2は図1のA−A断面図で、カウルパネル本体2Aに対するカバー体4における係止部材5の係止状態が明瞭に示される。バルク1の上部にてカウルパネル本体2Aおよび該カウルパネル本体2Aにカバー体4が装着されており、バルク1の適宜の開口に臨んで下方にバッテリー3等の交換部品が配設されている。カバー体4の上面には、図1に示すように、カウルパネル本体2Aから連続して形成されたフードシール部材9が設置される。このような構成により、フードシール部材9をカバー体4を回避させる必要がなく、設計の自由度が向上する。
【0013】
カバー体4のカウルパネル本体2Aに対する装着例としては、図示しての説明は省略するが、カバー体4がカウルパネル本体2Aにヒンジ結合されてもよい。その場合は、前記係止部材としての舌片5、6に代えて、ヒンジ結合とする。カバー体4の前側のクリップ部材7、8についてはそのままの構成としてよい。そのように構成した場合は、カバー体4を交換部品の点検・保守や交換のために揺動開閉することができるので、取り外したカバー体4を放置して、紛失したり破損する虞れがない。
【0014】
図3はカウルパネル全体の平面図で、カウルパネル2の全容が理解される。カウルパネル2のカバー体4を切り欠いた残余の部分であるカウルパネル本体2Aは、後部(図面上方)部分が車体幅方向に連続しており、所定の強度が確保される。フロントフードが閉じられたときに、該フロントフードの後縁が密封されるフードシール部材9が、カウルパネル本体2Aからカバー部材4にかけて連続して設置された状態が理解される。したがって、カバー部材4をカウルパネル本体2Aから取り外したり、ヒンジ結合の場合は揺動開閉する際には、フードシール部材9をシール取付突条10から取り外す必要があるが、フードシール部材9をカバー体4を回避させる必要がなく、設計の自由度が向上する。
【0015】
前記カウルパネル本体2Aからカバー体4にかけて連続設置されるフードシール部材9については、カウルパネル本体2Aとカバー体4との間の分割部9A、9B(図1)で、フードシール部材9も分割して構成することもできる。そのように構成すれば、カバー部材4をカウルパネル本体2Aから取り外したり、揺動開閉する際に、フードシール部材9をシール取付突条10から取り外す必要がなく、カバー体4の着脱がより簡便になる。フードシール部材9の、カウルパネル本体2Aとカバー体4との間の分割部9A、9Bでのシールの連続性は、分割部において、一方のフードシール部材9を小さくして、他方のフードシール部材9を大きくし、これらを重合させることで確保される。
【0016】
図4は図1のB−B断面図で、バルク1の係止面(略水平状)に対してカウル2におけるカバー体4が前部側をクリップ部材8により係止した状態が理解される。カバー体4の着脱は、カウルパネル本体2Aに対して、舌片による係止やヒンジ結合による揺動型のいずれによるものでもよい。図4に拡大して示されるように、フードシール部材9が装着して取り付けられるシール取付突条10は、3列の突条10A、10Bおよび10Cから構成され、これらにフードシール部材9の基部が圧入される。フードシール部材9に関して、フロントフード(図示省略)とのシール面よりも居室側(シール取付突条10Bと10Cとの間)の底部に、シール取付突条10に沿って複数個の起破断促進孔11が穿設される。
【0017】
この破断促進孔11の穿設により、衝突時等における歩行者保護のためにカウルパネル2の破断が促進できる破断促進孔11が目立たない部位に形成することができる。しかも、これらの破断促進孔11がフロントフードとのシール面よりも居室側に穿設されていることによって、エンジンルーム側の熱気や臭気が居室側に流れることが抑制される。破断促進孔11の形状は、長孔や多数の丸孔等の適宜形状のものが複数箇所穿設される。
【0018】
以上、本発明の各実施の形態について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、フェンダへのカウルパネルの渡設形態、カウルパネルの形状、形式および材質(軽金属、樹脂等)、カウルパネルの下部に配設される交換部品の種類(バッテリー等)、カウルパネル前側の一部の切欠き形態すなわちカバー体の形状(方形、扇形、丸形等)、形式、カバー体のカウルパネル本体への着脱形態(舌片による係止、ヒンジ結合による揺動、スライドによる開閉等と、クリップ部材による係止との組合せ等)、分割構成および分割部でのシール形状を含むフードシール部材の形状、形式およびカウルパネルからカバー体への設置形態、フードシール部材のシール取付突条への装着形態、シール取付突条の形状、形式、破断促進孔の形状(長孔、多数の丸孔等)、形式および数等については適宜選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のカウルパネル構造の1つの実施例を示す要部平面図である。
【図2】同、図1のA−A断面図である。
【図3】同、カウルパネル全体の平面図である。
【図4】同、図1のB−B断面図である。
【図5】従来の自動車の前部構造の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 バルク
2 カウルパネル
2A カウルパネル本体
3 バッテリー(交換部品)
4 カバー体
5 係止部材(舌片あるいはヒンジ部材)
6 係止部材(舌片あるいはヒンジ部材)
7 クリップ部材
8 クリップ部材
9 フードシール部材
9A 分割部
9B 分割部
10 シール取付突条
11 破断促進孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンダ間に連続して渡設されたカウルパネルの下方に交換部品が配置されたカウルパネル構造において、前記カウルパネルの前側の一部を切り欠いてカバー体として残余のカウルパネル本体に着脱自在に装着されたことを特徴とするカウルパネル構造。
【請求項2】
前記カバー体がカウルパネル本体にヒンジ結合されたことを特徴とする請求項1に記載のカウルパネル構造。
【請求項3】
前記カバー体に、カウルパネル本体から連続して形成されたフードシール部材が設置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のカウルパネル構造。
【請求項4】
前記カバー体におけるフードシール部材が、カウルパネル本体に設置されたフードシール部材と分割構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のカウルパネル構造。
【請求項5】
前記カバー体およびカウルパネル本体に設置されたフードシール部材が装着されるシール取付突条の底部に破断促進孔を穿設したことを特徴とする3または4に記載のカウルパネル構造。
【請求項6】
前記破断促進孔はフロントフードと前記フードシール部材とのシール面より後方に穿設されていることを特徴とする3から5のいずれかに記載のカウルパネル構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−224789(P2006−224789A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40243(P2005−40243)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】