説明

カチオン型高分子ミセル薬物担体と、その薬物担体含有分散液、及びその薬物担体を配合した皮膚外用剤、化粧料

【課題】 生理活性効果を有する薬効成分の皮膚への浸透性と効果持続性を著しく高めた安全性の高いカチオン型高分子ミセル薬物担体と、その薬物担体含有分散液、及びその薬物担体を配合した皮膚外用剤、化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】 荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン型高分子ミセル薬物担体と、その薬物担体含有分散液、及びその薬物担体を配合した皮膚外用剤、化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
美白成分、抗老化成分、細胞賦活成分、抗菌成分、抗炎症成分などの有効成分を外用する場合、有効成分の皮膚への浸透性を高め、さらにタ−ゲットとなる部位に長時間作用させることが効能効果及び安全性の点で重要である。
【0003】
高分子ミセルは両親媒性高分子の会合体で親水性高分子連鎖を外殻、疎水性高分子連鎖を内殻として形成される微粒子体であり、薬効成分の徐放性を発揮させる新しいDDS製剤として注目されている。そして、このようなDDS製剤に高分子ミセルを適用する技術として、たとえば下記特許文献1のような発明がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−8614号公報
【0005】
しかし、上記特許文献1に係る発明は、眼科用を対象としており、皮膚に対する検討や美白化粧品をはじめとする高機能化粧品への応用検討は少ない。特に皮膚への適用の場合、角層バリア機能により有効成分が浸透しにくい問題があり、従来の高分子ミセルでは皮膚浸透性の点で不十分であった。
【0006】
一方、界面活性剤やメントールなどのエンハンサーにより角層バリア機能を破壊して浸透性を向上させる方法もあり、そのような技術としてたとえば下記特許文献2のような発明がある。
【0007】
【特許文献2】特開2002−322045号公報
【0008】
しかし、安全性や副作用の点で問題があり、また表皮基底層での滞留性、持続性が劣るため有効成分の実際の効果が十分でなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、生理活性効果を有する薬効成分の皮膚への浸透性と効果持続性を著しく高めた安全性の高いカチオン型高分子ミセル薬物担体と、その薬物担体含有分散液、及びその薬物担体を配合した皮膚外用剤、化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、荷電性部位(セグメント)と疎水性部位(セグメント)を有するカチオン性両親媒性高分子と薬効成分と液状油剤から構成されるカチオン型高分子ミセル薬物担体は、皮膚バリア機能を破壊せずに、薬効成分の角層内部への浸透量を高めると同時に表皮や表皮基底層における薬効成分の滞留性を顕著に高めることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、カチオン型高分子ミセル薬物担体に係る請求項1記載の発明は、荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤とを含有することを特徴とする。また請求項2記載の発明は、荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤と、多価アルコールとを含有することを特徴とする。
【0012】
さらに請求項3記載の発明は、荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤と、イオン性水溶性高分子とを含有することを特徴とする。さらに請求項4記載の発明は、荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤と、多価アルコールと、イオン性水溶性高分子とを含有することを特徴とする。
【0013】
さらに請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、ゼ−タ電位が+10mV〜+100mVを示すことを特徴とする。さらに請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、薬物担体の平均粒子径が50nm〜900nmであることを特徴とする。さらに請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、カチオン性両親媒性高分子のゼ−タ電位が+10mV〜+100mVを示すことを特徴とする。
【0014】
さらに請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、カチオン性両親媒性高分子が、部分導入された炭素数4〜20の疎水基部位とカチオン基部位を有するものであることを特徴とする。さらに請求項9記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、カチオン性両親媒性高分子が、部分導入された炭素数4〜20の疎水基部位とアミノ基部位若しくは四級塩アミノ基部位を有するものであることを特徴とする。
【0015】
さらに請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、カチオン性両親媒性高分子が、キチン誘導体又はキトサン誘導体であることを特徴とする。さらに請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、薬効成分の水に対する溶解度が50mg/ml以下であることを特徴とする。さらに請求項12記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、液状油剤のIOB値が0〜1.0であることを特徴とする。
【0016】
さらに請求項13記載の発明は、請求項3乃至12のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、イオン性水溶性高分子が、ゼ−タ電位+5mV〜+100mVを示すカチオン性水溶性高分子であることを特徴とする。さらに請求項14記載の発明は、請求項3乃至13のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、イオン性水溶性高分子がリン脂質構造を有することを特徴とする。
【0017】
さらに請求項15記載の発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、薬効成分が酵素阻害作用、又は酵素合成阻害作用を有するものであることを特徴とする。さらに請求項16記載の発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体において、薬効成分がチロシナーゼ阻害作用、又はチロシナーゼ合成阻害作用を有する美白成分であることを特徴とする。
【0018】
さらにカチオン型高分子ミセル薬物担体含有分散液に係る請求項17記載の発明は、請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする。さらに皮膚外用剤に係る請求項18記載の発明は、請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする。さらに化粧料に係る請求項19記載の発明は、請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする。
【0019】
さらに美白化粧料に係る請求項20記載の発明は、請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする。さらに抗老化化粧料に係る請求項21記載の発明は、請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体は、アニオンサイトの多い角層に多く浸透し、皮膚バリア機能の大部分を担っている角層を浸透した後は、薬物担体に内包、保持されている薬効成分が徐々に放出され、その結果、表皮や表皮基底層に薬効成分が持続的に作用することになる。従って、本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体は、アニオン性の両親媒性高分子やノニオン性である非荷電性の両親媒性高分子から構成される高分子ミセル薬物担体の場合に比べて顕著に優れた効果が得られる。
【0021】
また本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体は、生体膜や粘膜に対しても結合滞留性と薬効成分の徐放性が優れているため、炎症皮膚、唇、眼、鼻腔内、口腔内等の粘膜を有する部位に対しても薬理効果や安全性が高まるという利点がある。たとえばチロシナーゼ阻害作用やチロシナーゼ合成阻害作用を有する美白成分を薬効成分として利用した場合、標的部位である表皮基底層に存在するメラノサイトへの到達量を高めると同時にメラノサイト部位における滞留性と薬効成分の徐放性に由来する効果持続性が高めるため、実際に使用した場合の美白作用と安全性が大きく向上する。
【0022】
さらに本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体は、生体膜や粘膜への安全性や滞留持続性が高いため、炎症や損傷を誘発している皮膚や目や唇などの粘膜への適用、外用することにより、より高い安全性と優れた効能作用を併せ持つ新しい外用剤に利用できる。
【0023】
本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体やこれを含有する分散液は、安定性に劣る薬効成分の安定性を高めるため、薬効成分の変性や分解による薬効低下を抑制、防止することができる。そして、その薬物担体やこれを含有する分散液自体の安定性が高いため、既存の製剤系に混合させても、カチオン型高分子ミセル薬物担体の安定性や有効性が低下することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体には、上述のように、荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤とが含有される。また必要に応じて、多価アルコールやイオン性水溶性高分子が含有される。
【0025】
電性部位(セグメント)と疎水性部位(セグメント)を有するカチオン性両親媒性高分子と薬効成分と液状油剤と多価アルコールを精製水共存下で均一化後、高圧乳化器などの微細乳化機器で高圧処理を1〜10回繰り返すことにより、薬効成分を内包保持したカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有する半透明〜白濁の分散液を得ることができる。さらに凍結乾燥器、限外濾過機器、大型エバポレーターなどを利用することにより、カチオン型高分子ミセル薬物担体や濃縮分散液を得ることができる。
【0026】
このようにして調製されたカチオン型高分子ミセル薬物担体の平均粒子径は、特に制限はないが、50nm〜10μmであることが望ましく、さらに50nm〜900nmであることがより効果を発揮させる上で望ましい。
【0027】
薬効成分の種類は特に問わないが、より効果を発揮し易い点で、薬効成分の水に対する溶解度50mg/ml以下である成分が望ましい。特に、酵素阻害活性や酵素合成系阻害活性を有するものが本発明の有効性を効果的に発揮するのに望ましく、たとえばチロシナーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤 コラゲナーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、セラミダーゼ阻害剤等が例示される。チロシナーゼ阻害作用やチロシナーゼ合成阻害作用を有する美白成分を薬効成分と内包する場合は、生薬や植物由来のポリフェノール系成分やフラボノイド系成分、イソフラバン系成分などが挙げられる。
【0028】
本発明に利用される美白成分は、チロシナーゼ阻害作用やチロシナーゼ合成阻害作用若しくはメラニン生成抑制やメラニン脱色作用、抗酸化作用を有する限り、特に限定されるものではない。標的部位である表皮基底層に存在するメラノサイトへの到達量とメラノサイトに対する持続的作用が高めると同時に安全性を高めるため、美白成分のみを作用させる場合に比べて、実際に使用した場合の美白作用と安全性が大きく向上する。
【0029】
たとえば、本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体の有効性を効果的に発揮させる成分として以下のようなものが例示される。
【0030】
甘草フラボノイドとしてリコカルコン、グラブレジン、グラブリジン及びその誘導体、ヒスパグラブリジンA、B等のグラブリジン系成分、リクイチンなど、これらの甘草フラボノイドを含有する甘草抽出物や甘草フラボノイド混合物、グラブリジンを40%以上含有する甘草抽出物(製品名:カンゾウフラボノイドPT-40、油溶性甘草エキスBGSR、油溶性甘草エキスP-Uなど)、エラグ酸及びエラグ酸を含有する植物抽出物、大豆イソフラボン及び大豆イソフラボンを含有する大豆抽出物、フェルラ酸及びフェルラ酸を含有する植物抽出物、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、ピクノジェノール及びピクノジェノールを含有する植物抽出物プラセンタエキス、クララエキス、ソウハクヒエキス、ユキノシタエキス、カミツレエキス、ローズマリーエキス、オウゴンエキスなどが挙げられる。
【0031】
またカロチノイド類及びこれらを含有する動植物抽出物、カテキン類、プロシアニジン、ルチン、ヘスペリジン、クエルセチン、それらを含有する植物抽出物、ブドウやブドウ種子、アセロラやアセロラ種子等に含有される植物系ポリフェロールなどが挙げられる。メラニン形成刺激ホルモンであるαMSHの産生抑制作用を有する成分もより効果的に発揮させるために有効である。
【0032】
また、ハイドロキノン及びその誘導体、アルブチン及びその誘導体、アルブチンを含有する植物エキス、グルタチオン及びその誘導体、アセチルシステイン、ヒポタウリン、チオタウリン、システイン及びその誘導体、N-アセチルシステイン、システアミン等の含硫アミノ酸系成分とそれらの誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンA及びその誘導体やカロチンやアスタキサンチン等のカロチノイド系成分及びそれらの誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体並びにそれらの塩、パンテノール及びその誘導体、リノール酸やリノレン酸等の高級不飽和脂肪酸及びその誘導体、これらの高級不飽和脂肪酸を10%以上含有する天然油脂などが挙げられる。ビタミンE誘導体として例えばニコチン酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、酢酸トコフェロールなど、ビタミンA誘導体として例えばパルミチン酸レチノール、リノール酸レチノール、酢酸レチノールなどが挙げられる。高級不飽和脂肪酸を10%以上含有する天然油脂としては、例えば、大豆油、コメ油、コメヌカ油、月見草油、コムギ胚芽油、オリーブ油などがある。
【0033】
アスコルビン酸およびその誘導体並びにそれらの塩としては、水溶性アスコルビン酸誘導体として、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、パルミトイル化アスコルビン酸リン酸及びその塩等のアスコルビン酸リン酸エステル及び塩、疎水性アスコルビン酸誘導体として、テトライソパルミチン酸アスコルビル(製品名:VCIP)、パルミチン酸アスコルビル、イソパルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、ジイソパルミチン酸アスコルビルなどのアスコルビン酸アルキルエーテルやアスコルビン酸アルキルエステルなどが挙げられる。その他、アスコルビン酸ポリペプチド、アスコルビン酸キトサンなども挙げられる。
【0034】
内包する液状油剤は特に限定されないが、IOB値が0〜1.0が望ましい。更に望ましくはIOB値が0〜0.5が望ましい。IOB値とは油分の極性の度合いを示す指標であり、無機性の有機性に対する比率を表す値(分子中の炭素原子1個について有機性値を20とし、水酸基1個について無機性を100として、これを基準とした他の置換基(無機性基)の無機性塩を基本として算出される値である(有機概念図−基礎と応用、P227、1984年、三共出版)。IOB値はその成分の無機性値/その成分の有機性値、で示される。IOB値が高いと極性が高まり、IOB値が低いと極性が低くなる。極性が高くなり、IOB値が1.0を超えると本発明に関する効果が十分に発揮できないためである。例えば、具体的にはエステル系液状油剤が挙げられる。
【0035】
具体的な例としては、流動パラフィン(0.0)、流動イソパラフィン(0.0)、スクワラン(0.0)、イソノナン酸イソノニル(0.20)、イソノナン酸2-エチルヘキシル(0.18)、イソノナン酸イソトリデシル(0.15)、エチルヘキサン酸セチル(0.13)、トリ-エチルヘキサン酸グリセリル(0.35)、カプリル酸セチル(0.12)、ジラウリル酸エチレングリコール(0.23)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン(0.33)、パルミチン酸セチル(0.10)、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル(0.09)、ステアリン酸ステアリル(0.08)、ジイソステアリン酸プロピレングリコール(0.16)、ジステアリン酸エチレングリコール(0.16)、パルミチン酸オクチル(0.24)、ミリスチン酸イソステアリル(0.15)、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(0.47)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(0.25)、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル(0.14)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(0.14)、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット(0.35)、ジイソステアリン酸グリセリル(0.29)、ジステアリン酸プロピレングリコール(0.15)、ジオレイン酸プロピレングリコール(0.16)、トリ(カプリル酸・カプリン酸・ステアリン酸)グリセリル(0.23)、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール(0.25)、ジステアリン酸ジエチレングリコール(0.24)、ジオレイン酸ジエチレングリコール(0.25)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(0.32)、ジオレイン酸トリエチレングリコール(0.33)、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール(0.33)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ-2-ヘキシルデシル(0.33)、ジステアリン酸ポリグリセル(0.69)、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル(0.29)、リンゴ酸ジイソステアリル(0.33)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル(0.26)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(0.20)、ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル(0.26)、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(0.19)、トリオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル(0.20)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット(0.33)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル(0.86)、乳酸オクチルドデシル(0.41)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル(0.42)が挙げられる。
【0036】
又、大豆油、コメ油、コメヌカ油、月見草油、コムギ胚芽油、オリーブ油、ホホバ油、ブドウ種子油、カミツレ油、ローズマリ−油、ウイキョウ油等の植物系液状油、ホホバ油、卵黄油などの動物系液状油も挙げられる。
【0037】
本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体およびその分散物に不可欠な(a)カチオン性両親倍性高分子と(b) IOB値が0〜1.0の液状油剤の組成比(重量比)が、(a):(b)=1:0.01〜1:100.00が望ましい。より好ましくは、(a):(b)=1:0.1〜1:50.0が良い。成分(a)に対する成分(b)の重量比が、0.1未満であると薬効成分がカチオン型高分子ミセル薬物担体に内包できず十分な効果が発揮できない。また、成分(a)に対する成分(b)の重量比が50.0を超えると、粒子サイズが大きくなり十分な効果が発揮できないためである。
【0038】
さらに、本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体およびその分散物に多価アルコールを共存させることにより、カチオン型高分子ミセル薬物担体の安定性と微細化および薬効成分のカチオン型高分子ミセル薬物担体への内包、保持性の点から共存させることが更に望ましい。 多価アルコールとしては、1,3−ブチレングリコール, ジプロピレングリコール, グリセリン、ジグリセリン、ペンタジオール、ポリエチレングリコ−ル、ソルビト−ル、マンニトール、エチレングリコール等がある。
【0039】
カチオン性両親倍性高分子は疎水性部位(セグメント)とカチオン基部位を有することが不可欠である。1%水溶液濃度、pH3.5〜5に設定した場合のゼ−タ電位が+20mV〜+100mVを示すことを特徴とする。 疎水性部位(セグメント)は炭素数4〜20の疎水基が望ましく分子構造中に0.1〜50.0%が含有することが望ましい。
望ましいカチオン性両親倍性高分子は荷電性部位(セグメント)としてアミノ基若しくは四級塩アミノ基を有することを特徴とし、疎水性部位(セグメント)炭素数4〜20の疎水基を0.1〜50.0%部分導入したポリアミン誘導体であることを特徴とする。
【0040】
ポリアミンの具体例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミン、ポリリジン、タンパク質、キチン、キトサンなどが挙げられる。
カチオン性水溶性高分子に炭素数4〜20の疎水基を分子構造中に0.1〜50.0%含有させることにより調製することができる。例えば、カチオン性水溶性高分子であるカチオン性のポリアクリル酸エステル系高分子やポリメタアクリル酸エステル系高分子、カチオン性のポリビニル系高分子、天然高分子由来のカチオン性水溶性高分子に炭素数4〜20の疎水基を分子構造中に0.1〜50.0%含有させることにより調製することができる。
【0041】
カチオン性のポリメタアクリル酸エステル系高分子としては、例えばビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレート・アクリレート・PPGジアクリレートコポリマー、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ヒドロキシアクリロイルオキシプロピルトリメチウムクロリドの共重合体(ポリクオタニウム-64)、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム-51)などが挙げられる。これらのポリメタアクリル酸エステル系高分子であるイオン性水溶性高分子は生体適合性の点からリン脂質構造であるポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン部位を有することが更に望ましい。 これらのカチオン性高分子に炭素数ミリストイル基、ステアリル基、ラウリル基・・を分子構造中に0.1〜50.0%結合させることにより調製することができる。
【0042】
カチオン性のポリビニル系高分子としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7)、ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩(ポリクオタニウム-11)、塩化メチルビニルイミダゾリニウム・ビニルピロリドン共重合体アンモニウム塩(ポリクオタニウム-16)、ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノプロピルアミド(ポリクオタニウム-28)、ビニルピロリドン・イミダゾリニウムアンモニウム(ポリクオタニウム-44)、ビニルカプロラクタム・ビニルピロリドン・メチルビニルイミダゾリニウムメチル硫酸(ポリクオタニウム-46)、ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0043】
これらのカチオン性高分子に炭素数4〜20のミリストイル基、ステアリル基、サクシニル基、ラウリル基、オレイル基などのアシル基や炭素数4〜20のオクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などのアルキル基を分子構造中に0.1〜50.0%結合させる、すなわち部分導入させることにより調製することができる。ここで、「部分導入」とはカチオン性高分子のモノマー1残基当たりに高級アシル基等の置換基がどの程度導入されているかを示すもので、「0.1 〜50.0%部分導入した」とは、たとえばモノマー1000残基に、置換基が1 〜500 個導入されていることを意味する。
【0044】
天然高分子由来のカチオン性水溶性高分子としては、カチオン化グァーガム、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)などのカチオン化セルロース、ポリリジン、四級アンモニウム塩であるカチオン化ダイズ蛋白質やカチオン化コンキオリンなどの塩基性蛋白質、カチオン化デキストリン、カチオン化デンプンなど塩基性多糖、部分加水分解キチン、ジカルボキシメチルキトサン、カルボキシブチルキトサン、部分サクシニル化キトサン、エチレングリコールキトサン、サクシニル化カルボキシメチルキトサン、サクシニル化キチン、四級アンモニウム塩である四級塩化キチンや四級塩化キトサン、キチンやキトサンのピロリドンカルボン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩等のキチンやキトサンの塩類等のキチン又はキトサン誘導体が挙げられる。これらのカチオン性高分子に炭素数4〜20のミリストイル基、ステアリル基、ラウリル基、オレイル基などの高級アシル基や炭素数4〜20のオクチル基、デシル基、ドデシル基 オクタデシル基などの高級アルキル基を分子構造中に0.1〜50.0%結合させることにより調製することができる
【0045】
平均分子量は特に限定されないが、1万〜500万程度が望ましい。更に、望ましいのは5〜200万が望ましい。この場合の平均分子量は、たとえばデータモジュールGPC用カートリッジを連結させたGPC−HPLC〔ゲル濾過クロマトグラフィーカラム:東ソー(株)製TSK−gel−G3000WXL+TSK−gel−G2500PWXL、溶媒:0.4 M酢酸−酢酸Na緩衝液(pH=4.8)〕分析により分子量分布を明らかにすることによって測定される。分子量スタンダードとしては、キトサンオリゴ糖(分子量:413,1006)、デキストラン硫酸塩(分子量:5000 、8000) 及びプルラン分子量スタンダードが用いられる。また粘度測定法等からも平均分子量を求めることが可能である。
【0046】
更に望ましいカチオン性両親倍性高分子は、荷電性部位(セグメント)としてアミノ基若しくは四級塩アミノ基を有し、疎水性部位(セグメント)として炭素数4〜20の疎水基を0.1〜50.0%部分導入したようなポリアミンである。
【0047】
疎水性部位(セグメント)を導入するポリアミンの具体例として、ポリリジン、コラーゲン、セリシン等の絹蛋白、大豆タンパク等の植物性タンパク質等のタンパク質やその誘導体、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等の合成高分子、キトサンやキチンの多糖やその誘導体等が挙げられる。平均分子量は特に限定されないが、1〜500万程度が望ましい。
【0048】
特に効果を発揮しやすいカチオン性両親倍性高分子として、キチン誘導体とキトサン誘導体が挙げられる。カチオン性両親倍性高分子は、アミノ基部位若しくは四級塩アミノ基部位を分子構造に有するキトサン誘導体又はキチン誘導体に炭素数4〜20の疎水基部位と0.1〜50.0%部分導入したものが望ましい。キチンやキトサンそれらの誘導体として, 例えば, カルボキシメチルキトサン, 部分サクシニル化キトサン、部分加水分解キチン、リン酸化キトサン、ジカルボキシメチルキトサン、カルボキシブチルキトサン、エチレングリコールキトサン、サクシニル化カルボキシメチルキトサン、サクシニル化キチン、四級アンモニウム塩である四級塩化キチンや四級塩化キトサン、キチンやキトサンのピロリドンカルボン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩等のキチンやキトサンの塩類等が挙げられる。
【0049】
これらのキチンやキトサンの誘導体のアミノ基や水酸基などに炭素数4〜20の疎水基を0.1〜50.0% 部分導入させることによりカチオン性両親倍性高分子が得られる。疎水基の種類は特に限定されないが、脂肪酸基やアルキル基が望ましい。例えばこれらのキチンやキトサンそれらの誘導体に炭素数4〜20のミリストイル基、ステアリル基、ラウリル基、オレイル基、サクシニル基などのアシル基や炭素数4〜20のオクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などのアルキル基を分子構造中に0.1〜50.0%結合させることにより調製することができる。更に部分的にサクシニル基やグルタル基などのカルボキシル含有アシル基を0.1〜50.0%部分導入させることも可能である。
【0050】
具体的には、部分オレイル化キトサン、部分ミリストイル化キトサン, 部分ミリストイル化キチン、部分ミリストイル化四級塩化キトサン、部分ラウリル化四級塩化キトサン、部分ステアリル化キチン、部分ラウロイル化キトサン、部分ミリストイル化部分サクシニル化キトサン、部分ミリストイル化部分グルタル化キトサン、部分ミリストイル化カルボキシメチルキトサン、部分ラウロイル化カルボキシメチルキトサン、部分サクシニル化キトサン、部分ミリストイル化部分加水分解キチン、部分ステアリル化キトサン、部分パルミトイル化キトサン及びそれらのピロリドンカルボン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩、グルタミン酸塩、サリチル酸塩等の塩が挙げられる。
【0051】
イオン性水溶性高分子としては、特に限定されないが1%水溶液濃度でのゼ−タ電位が+5mV〜+100mVを示すカチオン性を示すことが望ましい。ゼータ電位は界面電気二重層による静電反発効果を支配する表面電位を示すものであり、イオン性高分子の電荷の指標となるゼータ電位はカチオン性である+5〜+100mvであることが好ましい。
【0052】
例えばカチオン性水溶性高分子として、カチオン性のポリアクリル酸エステル系高分子やポリメタアクリル酸エステル系高分子、カチオン性のポリビニル系高分子がある。カチオン性のポリメタアクリル酸エステル系高分子としては、例えばビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレート・アクリレート・PPGジアクリレートコポリマー、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ヒドロキシアクリロイルオキシプロピルトリメチウムクロリドの共重合体(ポリクオタニウム-64)、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム-51)などが挙げられる。
【0053】
これらのポリメタアクリル酸エステル系高分子であるイオン性水溶性高分子は生体適合性の点からリン脂質構造であるポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン部位を有することが更に望ましい。
【0054】
カチオン性のポリビニル系高分子としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7)、ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩(ポリクオタニウム-11)、塩化メチルビニルイミダゾリニウム・ビニルピロリドン共重合体アンモニウム塩(ポリクオタニウム-16)、ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノプロピルアミド(ポリクオタニウム-28)、ビニルピロリドン・イミダゾリニウムアンモニウム(ポリクオタニウム-44)、ビニルカプロラクタム・ビニルピロリドン・メチルビニルイミダゾリニウムメチル硫酸(ポリクオタニウム-46)、ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0055】
天然高分子由来のカチオン性水溶性高分子としては、カチオン化グァーガム、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)などのカチオン化セルロース、ポリリジン、四級アンモニウム塩であるカチオン化ダイズ蛋白質やカチオン化コンキオリンなどの塩基性蛋白質、カチオン化デキストリン、カチオン化デンプンなど塩基性多糖、部分加水分解キチン、ジカルボキシメチルキトサン、カルボキシブチルキトサン、部分サクシニル化キトサン、エチレングリコールキトサン、サクシニル化カルボキシメチルキトサン、サクシニル化キチン、四級アンモニウム塩である四級塩化キチンや四級塩化キトサン、キチンやキトサンのピロリドンカルボン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩等のキチンやキトサンの塩類等のキチン又はキトサン誘導体が挙げられる。平均分子量は特に限定されないが、1万〜500万程度が望ましい。更に、望ましいのは5〜200万が望ましい。
【0056】
本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体およびその分散液自体の安定性が高いため、既存の製剤系に混合させても、カチオン型高分子ミセル薬物担体の安定性や有効性が低下することはない。本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体およびその分散液を含有させることにより、化粧料や外用剤や医薬品などに広い製剤系に利用できる。
【0057】
例えば、皮膚に適用する医薬品、皮膚や毛髪、口腔に適用する医薬部外品や化粧料等に広く適用することが可能であり、製剤型もゲル系、可溶化系、乳化系、やや粘性を有するゾル系やエッセンス系、液状系、水-油2層系、粉末含有系等、幅広い製剤に応用できる。本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体の効果が十分に発揮させるためには、カチオン型高分子ミセル薬物担体およびその分散液のpHは2.5〜6.5に調整することが望ましく、よって製剤系に利用した場合もpHは2.5〜6.5に調整することが望ましい。
【0058】
例えば, ローション、O/W型又はW/O型のクリーム、O/W型又はW/O型の乳液、美容液、ジェル、O/W型又はW/O型のUVサンスクリーン、洗顔料、軟膏などの皮膚化粧料、ヘアコンディショナー、ヘアトニック、育毛料、シャンプーなどの毛髪化粧料、リキッドファンデーション、口紅、マスカラなどのメイクアップ化粧料などの製剤として提供することができる。その際は, 外用剤や化粧料などで一般的に用いられる成分を本発明の効果や機能性を阻害しない範囲で広く配合できる。例えば, セタノール, ベヘニルアルコール等の高級アルコール類, 流動パラフィン, スクワラン等の非極性油剤類, パルミチン酸イソプロピル, ミリスチン酸イソプロピル等のエステル系油剤類, 小麦胚芽油やオリーブ油等の植物油類, トリメチルシロキシケイ酸, メチルフェニルポリシロキサン等のシリコン化合物類, パーフルオロポリエーテル等のフッ素化合物類が挙げられる。
【0059】
低分子界面活性剤として、脂肪酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤がある。ただし、これらの低分子界面活性剤を利用する場合は、製剤中の重量%は0〜5%が望ましく、配合量が多くなると本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体の形成が抑制され、効果が十分に発揮できなくなるためである。
【0060】
また, 保湿柔軟化剤, 抗酸化剤, 収斂剤, 抗菌剤, 抗炎症剤, 殺菌剤、抗アレルギー剤、紫外線吸収剤類, 紫外線散乱剤, 安定化剤、ビタミン類, 酵素等の医薬部外品原料規格, 化粧品種別配合成分規格, 化粧品原料基準, 化粧品別紙規格、日本薬局方, 食品添加物公定書規格等の成分等が挙げられる。
【0061】
但し、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤やヒアルロン酸やカルボキシビニルポリマーなどアニオン性高分子などのアニオン性成分を利用する場合は、本発明のカチオン性両親倍性高分子に対して0〜0.5量であることが望ましく、これを上回ると本発明のカチオン型高分子ミセル薬物担体の表面電位が+10mV未満になり効果が十分に発揮できなくなるためである。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1乃至10のカチオン型高分子ミセル薬物担体、及び比較例1乃至10の組成を次に示す。
【0063】
(実施例1)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 1.0
(2)トリ-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB:0.35) 0.5
(3)フ゛チレンク゛リコール 2.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛ 0.2
(製品名:カンソ゛ウフラホ゛ノイト゛PT-40)
(5)部分ミリストイル化キトサン 0.2
(ζ電位:+65.2mV)
(6)部分ミリストイル化キチン 0.2
(ζ電位:+34.1mV)
(7)精製水 残量
【0064】
(実施例2)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 1.0
(2)トリ-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB:0.35) 0.5
(3)フ゛チレンク゛リコール 2.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛ 0.2
(製品名:カンソ゛ウフラホ゛ノイト゛PT-40)
(5)部分ミリストイル化キトサン 0.2
(ζ電位:+65.2mV)
(6)部分ミリストイル化キチン 0.2
(ζ電位:+34.1mV)
(7)ポリクオタニウム-64
(ζ電位:+58.1mV) 0.2
(8)精製水 残量
【0065】
(実施例3)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 1.0
(2)トリ-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB:0.35) 0.5
(3)フ゛チレンク゛リコール 5.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛ 0.2
(製品名:カンソ゛ウフラホ゛ノイト゛PT-40)
(5)リノール酸 0.2
(6)部分ミリストイル化キトサン 0.2
(ζ電位:+65.2mV)
(7)部分ミリストイル化キチン 0.2
(ζ電位:+34.1mV)
(8)ポリクオタニウム-64
(ζ電位:+58.1mV) 0.4
(9)精製水 残量
【0066】
(比較例1)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 1.0
(2)トリ-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB:0.35) 0.5
(3)フ゛チレンク゛リコール 2.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛ 0.2
(製品名:カンソ゛ウフラホ゛ノイト゛PT-40)
(5)POEモノステアリン酸ソルヒ゛タン 3.0
(6)精製水 残量
【0067】
(比較例2)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 1.0
(2)トリ-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB:0.35) 0.5
(3)フ゛チレンク゛リコール 2.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛ 0.2
(製品名:カンソ゛ウフラホ゛ノイト゛PT-40)
(5)POEモノステアリン酸ソルヒ゛タン 3.0
(6)塩化ヘ゛ンサ゛ルニコニウム 0.1
(7)精製水 残量
【0068】
(実施例4)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 2.5
(2)シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコール 5.0
(3)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛液 5.0
(製品名:油溶性甘草エキスBGSR)
(4)ク゛ルタチオン 1.0
(5)β-アルフ゛チン 2.0
(6)テトライソパルミチン酸アスコルビル
(製品名:VCIP) 0.8
(7)酢酸dl-トコフェロール 0.5
(8)アスタキサンチン 0.05
(9)レチノール 0.1
(10)BHT(シ゛フ゛チルヒト゛ロキシトルエン) 0.02
(11) 部分ミリストイル化部分サクシニル化キトサン 0.2
(ζ電位:+55.2mV)
(12)部分ミリストイル化ポリリジン 0.2
(ζ電位:+45.1mV)
(13)ポリクオタニウム-64 (ζ電位:+58.1mV) 0.1
(14)四級塩化キトサン(ζ電位:+78.1mV) 0.1
(15)精製水 残量
【0069】
(実施例5)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 0.5
(2)テトライソステアリン酸ポリグリセリル 2.5
(IOB:0.86)
(3)シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコール 5.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛液 5.0
(製品名:油溶性甘草エキスBGSR)
(5)ク゛ルタチオン 1.0
(6)β-アルフ゛チン 2.0
(7)テトライソパルミチン酸アスコルビル
(製品名:VCIP) 0.8
(8)酢酸dl-トコフェロール 0.5
(9)アスタキサンチン 0.05
(10)レチノール 0.1
(11)BHT(シ゛フ゛チルヒト゛ロキシトルエン) 0.02
(12) 部分ミリストイル化部分サクシニル化キトサン 0.2
(ζ電位:+55.2mV)
(13)部分ミリストイル化ポリリジン 0.2
(ζ電位:+45.1mV)
(14)部分ミリストイル化カルボキシメチルキトサン 0.2
(ζ電位:+25.1mV)
(15)ポリクオタニウム-64 (ζ電位:+58.1mV) 0.1
(16)ポリクオタニウム-51(ζ電位:+11.1mV) 0.1
(17)精製水 残量
【0070】
(実施例6)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 12.0
(2)テトライソステアリン酸ポリグリセリル 5.0
(IOB:0.86)
(3)シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコール 5.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛液 5.0
(製品名:油溶性甘草エキスBGSR)
(5)ク゛ルタチオン 1.0
(6)β-アルフ゛チン 2.0
(7)テトライソパルミチン酸アスコルビル
(製品名:VCIP) 0.8
(8)酢酸dl-トコフェロール 0.5
(9)アスタキサンチン 0.05
(10)レチノール 0.1
(11)BHT(シ゛フ゛チルヒト゛ロキシトルエン) 0.02
(12) 部分ミリストイル化部分サクシニル化キトサン 0.2
(ζ電位:+55.2mV)
(13)部分ミリストイル化ポリリジン 0.2
(ζ電位:+45.1mV)
(14)部分ミリストイル化カルボキシメチルキトサン 0.2
(ζ電位:+25.1mV)
(15)ポリクオタニウム-64 (ζ電位:+58.1mV) 0.1
(16)四級塩化キトサン(ζ電位:+78.1mV) 0.1
(17)精製水 残量
【0071】
(比較例3)
組成 配合量(重量%)
(1)エチルヘキサン酸セチル(IOB:0.13) 1.0
(2)テトライソステアリン酸ポリグリセリル 0.5
(IOB:0.86)
(3)シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコール 5.0
(4)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛液 5.0
(製品名:油溶性甘草エキスBGSR)
(5)ク゛ルタチオン 1.0
(6)β-アルフ゛チン 2.0
(7)テトライソパルミチン酸アスコルビル
(製品名:VCIP) 0.8
(8)酢酸dl-トコフェロール 0.5
(9)アスタキサンチン 0.05
(10)レチノール 0.1
(11)BHT(シ゛フ゛チルヒト゛ロキシトルエン) 0.02
(12)カルホ゛キシル変性ヒ゛ニルホ゜リマ-(ζ電位:-44.1mV)0.3
(製品名:ヘ゜ムレン、アニオン性高分子乳化剤)
(13)精製水 残量
【0072】
(比較例4)
組成 配合量(重量%)
(1)シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコール 5.0
(2)ク゛ラフ゛リシ゛ン含有甘草フラホ゛ノイト゛液 5.0
(製品名:油溶性甘草エキスBGSR)
(3)ク゛ルタチオン 1.0
(4)β-アルフ゛チン 2.0
(5)テトライソパルミチン酸アスコルビル
(製品名:VCIP) 0.8
(6)酢酸dl-トコフェロール 0.5
(7)アスタキサンチン 0.05
(8)レチノール 0.1
(9)BHT(シ゛フ゛チルヒト゛ロキシトルエン) 0.02
(10) 部分ミリストイル化部分サクシニル化キトサン 0.2
(ζ電位:+55.2mV)
(11)部分ミリストイル化ポリリジン 0.2
(ζ電位:+45.1mV)
(12)精製水 残量
【0073】
(実施例7)
組成 配合量(重量%)
(1)ブチレングリコール 10.0
(2)エタノール 5.0
(3)ヒドロキシプロピルセルロース 2.0
(4)実施例2のカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液 20.0
(5)精製水 残量
【0074】
(実施例8)
組成 配合量(重量%)
(1)ブチレングリコール 10.0
(2)エタノール 5.0
(3)ヒドロキシプロピルセルロース 2.0
(4)実施例2のカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液 40.0
(5)精製水 残量
【0075】
(比較例5)
組成 配合量(重量%)
(1)ブチレングリコール 10.0
(2)エタノール 5.0
(3)ヒドロキシプロピルセルロース 2.0
(4)精製水 残量
【0076】
(比較例6)
組成 配合量(重量%)
(1)ブチレングリコール 10.0
(2)エタノール 5.0
(3)ヒドロキシプロピルセルロース 2.0
(4)比較例2の分散液 20.0
(5)精製水 残量
【0077】
(比較例7)
組成 配合量(重量%)
(1)ブチレングリコール 10.0
(2)エタノール 5.0
(3)ヒドロキシプロピルセルロース 2.0
(4)比較例2の分散液 40.0
(5)精製水 残量
【0078】
(実施例9)
組成 配合量(重量%)
(1)ワセリン 5.0
(2)ベヘニルアルコール 10.0
(3)スクワラン 5.0
(4)POEラウリルソルビタン 2.0
(5)ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
(6)実施例4のカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液 20.0
(7)精製水 残量
【0079】
(実施例10)
組成 配合量(重量%)
(1)ワセリン 5.0
(2)ベヘニルアルコール 10.0
(3)スクワラン 5.0
(4)POEラウリルソルビタン 6.0
(5)ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
(6)実施例4のカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液 20.0
(7)精製水 残量
【0080】
(比較例8)
組成 配合量(重量%)
(1)ワセリン 5.0
(2)ベヘニルアルコール 10.0
(3)スクワラン 5.0
(4)POEラウリルソルビタン 2.0
(5)ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
(6)比較例3の分散液
(7)精製水 残量
【0081】
(比較例9)
組成 配合量(重量%)
(1)ワセリン 5.0
(2)ベヘニルアルコール 10.0
(3)スクワラン 5.0
(4)POEラウリルソルビタン 2.0
(5)ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
(6)比較例3の分散液 20.0
(7)精製水 残量
【0082】
(比較例10)
組成 配合量(重量%)
(1)ワセリン 5.0
(2)ベヘニルアルコール 10.0
(3)スクワラン 5.0
(4)POEラウリルソルビタン 2.0
(5)ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
(6)比較例4の分散液 20.0
(7)精製水 残量
【0083】
(試験例1)
<高圧乳化器を利用したカチオン型高分子ミセル薬物担体の調製>
実施例1〜3のカチオン性両親媒性高分子と薬効成分と液状油剤と多価アルコールを精製水共存下でホモミキサー(7000rpm、2分)で均一処理後、高圧型フルイダイザー機器などの微細乳化機器で高圧処理(2000〜10000PSI)を2〜10回繰り返すことにより、薬効成分を内包保持したカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有する半透明〜白濁のpH3.5〜5.8の分散液を調製した。平均粒子径は動的光散乱式粒度分布測定機器(HORIBA社製)、ζ電位はイオン交換水で100倍希釈してM3-PALS法にて測定した。比較例1、2に関しても、同様な調製条件で調製し評価した。その結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
またカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液の薬剤安定性に関しては、40℃、6ヶ月後の外観変化と内包されている薬効成分の残存率をHPLC法から定量して求めた。
薬効成分のカチオン型高分子ミセル薬物担体からの放出性は以下のようにして評価した。カチオン型高分子ミセル薬物担体分散液1mlをフィルター膜(ミリポア製、ポアサイズ:0.025μm)を取り付けたフランツ型拡散セルのドナー部位に添加して、レセプター部位(30%プロピレングリコール含有精製水)に透過してきた薬効成分をHPLC法にて定量した。透過液を12、24、36、48、96、152hrごとにサンプリングして薬効成分の放出性を評価した。その結果を表2、3、4に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
表2、表3からも明らかなように、比較例1及び2では、内包薬効成分の残存率が60〜70%程度で、薬効成分の分離が認められたのに対し、実施例1乃至3では、内包薬効成分の残存率が95%以上で非常に良好であり、薬効成分の分離が認められなかった。さらに表4からも明らかなように、比較例1及び2では薬効成分の放出が認められなかったのに対し、実施例1乃至3では薬効成分の放出が認められた。
【0090】
(試験例2)
<ヒト皮膚モデルを利用した薬効成分の皮膚浸透量測定>
薬効成分の皮膚浸透性は以下の方法で求めた。カチオン型高分子ミセル薬物担体を含有するサンプル液100μlを3次元ヒト皮膚モデル(東洋紡製、製品名;TESTSKIN、LSE003High)の皮膚表面に添加して24時間処理を行った。処理後、皮膚表面をリン酸緩衝液及びエタノールで5回洗浄後、未浸透の薬効成分を除去後、表皮と真皮に分離後、薬効成分抽出液5ml(アルコール溶液またはリン酸緩衝液)を添加して、超音波処理により皮膚中の薬効成分の量を抽出しHPLCにて定量した。その結果を表5に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
また安全性の指標である細胞毒性は、刺激炎症性サイトカインであるIL-1αの産生量をELISA法で測定して求めた。その結果を表6に示す。
【0093】
【表6】

【0094】
表5からも明らかなように、実施例1乃至3では、比較例1及び2に比べて、薬効成分の表皮への浸透量が著しく良好であった。またIL-1αの産生量も実施例1乃至3では比較例1及び2に比べて低く、安全性の高いものであることが確認できた。
【0095】
(試験例3)
<ヒト皮膚モデルを利用したメラニン抑制作用の測定>
皮膚浸透性を考慮したメラニン産生抑制作用は以下の方法で求めた。カチオン型高分子ミセル薬物担体を含有するサンプル液50μlを表皮基底層にメラニン形成細胞であるメラノサイトを有する3次元ヒト皮膚モデル(クラボウ製、製品名;MEL-30)の皮膚表面に添加して培養した。培養後、皮膚表面をリン酸緩衝液及びエタノールで5回洗浄後、未浸透の薬効成分を除去後、皮膚表面を画像に取り込み、明るさの指標であるL*値を計測し求めた。メラニン形成が抑えられるとメラニンが少なくなり明るさが上昇するためL*値は高くなる。L*値からメラニン抑制作用を求めた。その結果を表7に示す。
【0096】
【表7】

【0097】
表7からも明らかなように、実施例1乃至3では、比較例1及び2に比べてL*値か高く、メラニン抑制作用が比較例1及び2に比べて優れていることがわかった。
【0098】
(試験例4)
実施例1のカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液を含有させたローション製剤及びクリーム製剤を製造して、男性モニター(10人、平均年齢:36.3歳)に対する美白作用を求めた。すなわち、前腕内部にUV-B紫外線ランプ(東芝製)により、2MED量を照射した後、各製剤を塗布した。塗布2週間後、4週間後の色素沈着度合いを色差計を用いて皮膚の明るさの指標であるL*値から美白作用を求めた。比較例1、2のものについても同様に試験した。
【0099】
クリーム製剤は、70℃下で水相を油相に添加してホモミキサーで乳化後、冷却させ、40℃付近でカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液を添加、均一化することで乳化クリームを得た。
【0100】
実施例1のカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液を含有させたクリーム製剤を製造して、女性シワモニター(10人、平均年齢:38.7歳)に対するシワ改善作用を求めた。すなわち、左右に同程度の目尻シワを有する女性シワモニターにハーフサイドで実施例クリームを塗布した。塗布4週間、8週間後の塗布部位からレプリカを採取して、画像解析によりシワ平均深さを求めることにより、シワ改善作用を求めた。
比較例1、2のものについても同様に試験した。
【0101】
これらの結果を表8に示す。
【表8】

【0102】
表8からも明らかなように、比較例1、2では、使用8週間でもシミのL*値が
減少しなかったが、実施例1では使用4週間でシミのL*値の減少が認められた。
【0103】
(試験例5)
<高圧乳化器を利用したカチオン型高分子ミセル薬物担体の調製>
実施例4〜6のカチオン性両親媒性高分子と薬効成分と液状油剤と多価アルコールとから、試験例1と同様にしてカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有する半透明〜白濁の分散液を調製し、平均粒子径とζ電位を測定した。比較例3、4に関しても、同様な調製条件で調製し評価した。その結果を表9に示す。
【0104】
【表9】

【0105】
また薬物担体分散液の薬剤安定性、薬効成分の放出性等も試験例1と同様にして測定した。その結果を表10、11に示す。
【0106】
【表10】

【0107】
【表11】

【0108】
表10からも明らかなように、比較例3及び4では薬効成分の分離が認められたのに対し、実施例4及び5では薬効成分の分離が認められなかった。さらに表11からも明らかなように、比較例4では薬効成分の放出が認められなかったのに対し、実施例4乃至6では薬効成分の放出が認められた。
【0109】
(試験例6)
<ヒト皮膚モデルを利用した薬効成分の皮膚浸透量測定>
実施例4〜6及び比較例1、2について、薬効成分の皮膚浸透性等を試験例2と同様にして測定した。その結果を表12に示す。
【0110】
【表12】

【0111】
また細胞毒性も試験例6と同様にして求めた。その結果を表13に示す。
【0112】
【表13】

【0113】
表12からも明らかなように、実施例4乃至6では、比較例3及び4に比べて、薬効成分の表皮への浸透量が良好であった。またIL-1αの産生量も実施例4乃至6では比較例3及び4に比べて低く、安全性の高いものであることが確認できた。
【0114】
(試験例7)
<ヒト皮膚モデルを利用したメラニン抑制作用の測定>
実施例4〜6及び比較例1、2について、メラニン産生抑制作用を試験例3と同様に測定した。その結果を表14に示す。
【0115】
【表14】

【0116】
表14からも明らかなように、実施例4乃至6では、比較例3及び4に比べてL*値が高く、メラニン抑制作用が比較例3及び4に比べて優れていることがわかった。
【0117】
(試験例8)
実施例7、8、及び比較例5乃至7について、試験例4と同様に、モニター試験を行い、さらに副作用の有無を確認した。その結果を表15に示す。
【0118】
【表15】

【0119】
表15からも明らかなように、比較例5乃至7に比べて実施例7、8ではシミの減少効果が優れていた。また比較例7で2名の副作用が認められたのに対し、実施例7、8では副作用が認められなかった。
【0120】
(試験例9)
実施例9、10及び比較例8乃至10について、美白作用、シワ改善作用の試験を行なった。その結果を表16に示す。
【0121】
【表16】

【0122】
表16からも明らかなように、比較例8乃至10に比べて実施例9、10では美白作用、シワ改善作用ともに優れていた。
【0123】
(試験例10)
実施例1のカチオン型高分子ミセル薬物担体について、透過型電子顕微鏡(TEM)像を撮影した。酢酸ウランによるネガティブ染色により行った。カーボン支持膜を張ったグリッド(銅)上にサンプルを載せ、次に酢酸ウラン溶液をサンプル面に載せ、自然乾燥させた。透過型電子顕微鏡JEOL-2010(日本電子製)を用い、加速電圧200kVで観測を行い、撮影にはCCDカメラを使用した。そのTEM写真を図1に示す。図1からも明らかなように、0.5μm(500nm)前後の粒径の薬物担体、及びそれより小さい粒径(100nm以下)の薬物担体が散見された。
【0124】
(試験例11)
実施例1及び3のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有するサンプル液50μlを表皮基底層にメラニン形成細胞であるメラノサイトを有する3次元ヒト皮膚モデル(クラボウ製、製品名;MEL-30)の皮膚表面に添加して培養した。比較例1についても同様に行なった。培養後、リン酸緩衝液及びエタノールで5回洗浄後、未浸透の薬効成分を除去後、皮膚断面を切片にしてメラニン染色を行い、撮影した。その写真を図2乃至図4に示す。図4からも明らかなように、比較例1では写真における皮膚断面切片の下部付近、すなわち表皮の基底層のあたりに、メラニン色素と認められる黒っぽい斑点の集合が認められた。これに対して実施例1、3では、図2及び図3に示すように、比較例1に比べると、メラニン色素と認められる黒っぽい斑点が非常に少なかった。このことから、実施例1、3のカチオン型高分子ミセル薬物担体には皮膚モデルにおけるメラニン生成抑制作用が認められた。尚、実施例3では試験中に皮膚断面切片が剥離してしまったため、図3にはその状態が撮影されているが、メラニン生成抑制作用には何ら影響がないものである。
【0125】
以上の各試験例からも明らかなように、本発明に関するカチオン型高分子ミセル薬物担体分散液は優れた薬効成分(美白成分)の皮膚浸透性の向上と薬効成分による効能作用(美白作用の強化)、更には安全性と安定性に優れていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】試験例10におけるカチオン型高分子ミセル薬物担体の透過型電子顕微鏡像の写真。
【図2】試験例11におけるヒト皮膚モデルのメラニン染色像の写真(実施例1)。
【図3】試験例11におけるヒト皮膚モデルのメラニン染色像の写真(実施例3)。
【図4】試験例11におけるヒト皮膚モデルのメラニン染色像の写真(比較例1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤とを含有することを特徴とするカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項2】
荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤と、多価アルコールとを含有することを特徴とするカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項3】
荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤と、イオン性水溶性高分子とを含有することを特徴とするカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項4】
荷電性部位と疎水性部位を有するカチオン性両親媒性高分子と、薬効成分と、液状油剤と、多価アルコールと、イオン性水溶性高分子とを含有することを特徴とするカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項5】
ゼ−タ電位が+10mV〜+100mVを示す請求項1乃至4のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項6】
薬物担体の平均粒子径が50nm〜900nmである請求項1乃至5のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項7】
カチオン性両親媒性高分子のゼ−タ電位が+10mV〜+100mVを示す請求項1乃至6のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項8】
カチオン性両親媒性高分子が、部分導入された炭素数4〜20の疎水基部位とカチオン基部位を有するものである請求項1乃至7のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項9】
カチオン性両親媒性高分子が、部分導入された炭素数4〜20の疎水基部位とアミノ基部位若しくは四級塩アミノ基部位を有するものである請求項1乃至8のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項10】
カチオン性両親媒性高分子が、キチン誘導体又はキトサン誘導体である請求項1乃至9のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項11】
薬効成分の水に対する溶解度が50mg/ml以下である請求項1乃至10のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項12】
液状油剤のIOB値が0〜1.0である請求項1乃至11のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項13】
イオン性水溶性高分子が、ゼ−タ電位が+5mV〜+100mVを示す請求項3乃至12のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項14】
イオン性水溶性高分子がリン脂質構造を有することを特徴とする請求項3乃至13のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項15】
薬効成分が酵素阻害作用、又は酵素合成阻害作用を有するものである請求項1乃至14のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項16】
薬効成分がチロシナーゼ阻害作用、又はチロシナーゼ合成阻害作用を有する美白成分である請求項1乃至14のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とするカチオン型高分子ミセル薬物担体含有分散液。
【請求項18】
請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項19】
請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項20】
請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする美白化粧料。
【請求項21】
請求項1乃至16のいずれかに記載のカチオン型高分子ミセル薬物担体を含有することを特徴とする抗老化化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−273790(P2006−273790A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98489(P2005−98489)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】