説明

カチオン重合性組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びカチオン重合性組成物の製造方法

【課題】 カチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性化合物の硬化性を阻害せずに長期間の保存安定性を確保でき、インクとしての吐出安定性に優れ、かつ環境適性、製造適性に優れたカチオン重合性組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びカチオン重合性組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性組成物において、前記カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤以外のカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上であることを特徴とするカチオン重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性、硬化性に優れたカチオン重合性組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びカチオン重合性組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
速乾性の印刷用インクとして、従来、紫外線等の活性エネルギー線照射によってラジカル重合して硬化する活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物(以下、インク組成物ともいう)が知られている。このラジカル重合型のインク組成物は、酸素の存在下では、硬化阻害を受けるという問題を抱えていた。
【0003】
近年、活性エネルギー線照射によってカチオン重合して硬化するインク組成物が提案されている。このカチオン重合型のインク組成物としては、オキセタン化合物と光カチオン重合開始剤と顔料とからなり、必要に応じてエポキシ化合物を添加したものが提案されて(例えば、特許文献1参照。)いる。カチオン重合反応は、紫外線等の照射によってカチオン重合開始剤から発生するカチオンの存在により開始されるので、酸素によって重合が阻害されることがなく、特に、不活性雰囲気下で実施しなければならないという制限はなく、空気中で速やかに、かつ完全な重合を行うことができるという利点を有する。
【0004】
しかし、オキセタン化合物やエポキシ化合物などのカチオン重合性化合物に、カチオン重合開始剤を添加した状態で長期間にわたり保存すると、紫外線が遮断された状態でも、カチオン重合開始剤からカチオンが自然発生することがあり、この発生したカチオンにより、カチオン重合性化合物の重合が開始して増粘やゲル化が生ずるという問題点があった。
【0005】
上述の様な課題を解決する方法の1つとして、カチオン重合触媒とカチオン重合性有機材料とを必須成分とする組成物に、グアニジン系化合物、チアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、チアゾールカルボン酸系化合物、スルフェンアミド系化合物、チオウレア系化合物、イミダゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、アルキルフェニルスルフィド系化合物の1種または2種以上を添加することで、該組成物の室温安定性(ポットライフ)を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、オキセタン化合物に、塩基性化合物、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、アルコラートなどの塩基性無機化合物や、アミンその他の含窒素塩基性化合物などの塩基性有機化合物や、水分を添加することにより、オキセタン化合物の開環重合性を損なうことなく貯蔵安定性を改良する方法が提案されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
【0007】
しかしながら、カチオン重合性化合物にカチオン重合開始剤が添加されている場合、上記塩基性化合物を添加しても、その保存安定性は十分に改良されない。特に、カチオン重合性化合物がオキセタン化合物と脂環式エポキシ化合物との混合系である場合、オキセタン化合物の単独系よりもカチオン重合開始剤存在下における反応性が非常に高いため、ゲル化を生じ、十分な保存安定性の改良効果が得られないのが現状である。
【0008】
また、上述のような問題を解決するため、上記グアニジン系化合物や上記塩基性化合物等の添加量を増加させると、カチオン重合性化合物のゲル化の問題は解決されるが、その反面、硬化性が低下するという新たな問題が発生し、保存安定性と硬化性との両者を同時に満足することは困難であった。また、上記グアニジン系化合物や上記塩基性化合物等の中には有害な物質もあり、このような有害な物質を組成物中に多量に含有させることは環境適性上好ましくない。
【特許文献1】特開平8−143806号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開平8−283320号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2000−186079号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開2000−327672号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献5】特開2003−252979号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、カチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性化合物の硬化性を阻害せずに長期間の保存安定性を確保でき、インクとしての吐出安定性に優れ、かつ環境適性、製造適性に優れたカチオン重合性組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びカチオン重合性組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
(1)カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性組成物において、前記カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤以外のカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上であることを特徴とするカチオン重合性組成物。
【0012】
(2)前記カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が、100ppm以下、10ppm以上であることを特徴とする前記(1)に記載のカチオン重合性組成物。
【0013】
(3)前記カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物が、B、F、Na、Mg、Al、P、S、Cl、K、Ca、Cu、Br、Ag、Sn、Sb、As及びWから選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする前記(1)または(2)に記載のカチオン重合性組成物。
【0014】
(4)前記カチオン重合性化合物が、脂環式エポキシ化合物またはオキセタン化合物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【0015】
(5)カチオン重合性組成物全質量に対して、1〜10質量%の水を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【0016】
(6)水蒸発防止剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【0017】
(7)23℃における粘度が、5〜50mPa・sであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【0018】
(8)活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0019】
(9)不純物としての強酸性化合物を含む、カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤及び前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物から選ばれる少なくとも1つを、塩基性吸着剤による吸着処理を施して、該強酸性化合物の含有量を500ppm以下、1ppm以上とする工程を経て製造することを特徴とするカチオン重合性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、カチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性化合物の硬化性を阻害せずに長期間の保存安定性を確保でき、インクとしての吐出安定性に優れ、かつ環境適性、製造適性に優れたカチオン重合性組成物、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びカチオン重合性組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤を含有し、カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤以外のカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上であるカチオン重合性組成物により、カチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性化合物の硬化性を阻害せずに長期間の保存安定性を確保でき、かつ環境適性、製造適性を有するカチオン重合性組成物を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0023】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0024】
本発明のカチオン重合性組成物は、少なくともカチオン重合性化合物及びカチオン重合開始剤を含有する。
【0025】
本発明で用いることのできるカチオン重合性化合物としては、特に制限はなく、例えば、カチオン重合性ビニル化合物、ラクトン類、環状エーテル類などが挙げられる。カチオン重合性ビニル化合物としては、スチレン、ビニールエーテルなどが挙げられる。環状エーテル類としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物のほか、スピロオルソエステル類、ビシクロオルソエステル類、環状カーボナート類などが挙げられる。
【0026】
本発明で用いることのできるエポキシ化合物は、下記一般式(1)で示される三員環であるオキシラン基を有する化合物を意味し、芳香族エポキシ化合物及び脂環式エポキシ化合物などが包含される。
【0027】
【化1】

【0028】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物は、下記一般式(2)で示される四員環エーテルであるオキセタン環を有する化合物を意味する。
【0029】
【化2】

【0030】
本発明のカチオン重合性組成物において、好ましいカチオン重合性化合物は、カチオンの作用により開環重合する環状エーテル類であり、さらに好ましくは、脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物である。特には、硬化性に優れていることから、脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物とを混合して使用することが好ましい。この場合、脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物の混合比率(脂環式エポキシ化合物/オキセタン化合物)は、質量比で5/95〜95/5、好ましくは10/90〜70/30である。オキセタン化合物の量が少な過ぎると、硬化物の屈曲性低下、耐溶剤性低下の傾向を生じ、反面、オキセタン化合物の量が多過ぎると、高湿環境下での硬化不良を引き起こす。
【0031】
本発明のカチオン重合性組成物において、好ましいオキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルなどのオキセタン類が挙げられる。
【0032】
また、好ましい脂環式エポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、商品名UVR6105、UVR6110およびCELLOXIDE2021等の市販品)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、商品名UVR6128の市販品)、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド(例えば、商品名CELOXIDE2000の市販品)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、商品名CELOXIDE2081の市販品)、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン(例えば、商品名CELOXIDE3000の市販品)などの脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。上記のUVR6105、UVR6110及びUVR6128の商品名を有する市販品は、いずれもユニオンカーバイト社から入手できる。上記CELOXIDE2000、CELLOXIDE2021、CELOXIDE2081およびCELOXIDE3000の商品名を有する市販品は、いずれもダイセル化学株式会社から入手できる。なお、UVR6105はUVR6110の低粘度品である。
【0033】
また、カチオン重合性化合物の他の具体例は、特開平8−143806号公報、特開平8−283320号公報、特開2000−186079号公報、特開2000−327672号公報、特開2004−315778号公報、特開2005−29632号公報などにさらに詳細に記載されており、そこに例示されている化合物から適宜選択して、用いることもできる。
【0034】
本発明に用いることができるカチオン重合開始剤はカチオン重合性組成物に適用した場合、カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上であるカチオン重合開始剤であるが、本発明のカチオン重合性組成物の製造方法によりカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上にできるカチオン重合開始剤も用いることが出来る。
【0035】
本発明で用いることのできるカチオン重合開始剤としては、公知のスルホニウム塩、アンモニウム塩などの他、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、例えば、特開平8−143806号公報、特開平8−283320号公報などに記載のものから適宜選択して使用することができる。また、カチオン重合開始剤は、市販品をそのまま使用することができ、市販品の代表例として、例えば、商品名CI−1370、CI−2064、CI−2397、CI−2624、CI−2639、CI−2734、CI−2758、CI−2823、CI−2855およびCI−5102等の市販品(以上、日本曹達株式会社製)、商品名PHOTOINITIATOR2047等の市販品(ローディア社製)、商品名UVI−6974、UVI−6990等の市販品(以上、ユニオンカーバイト社製)などを挙げることができる。
【0036】
本発明のカチオン重合性組成物において、カチオン重合開始剤の使用量は、その種類、使用されるカチオン重合性化合物の種類および使用比、使用条件などによって異なるが、実用上、カチオン重合性組成物中のカチオン重合性化合物100質量部に対して、通常は、0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、更に好ましくは3〜5質量部とされる。カチオン重合開始剤が上記の範囲を超える場合には、速やかに重合は進行するが保存安定性が損なわれやすくなり、逆の上記の範囲未満である場合には、硬化性が低下する。
【0037】
本発明において、カチオン重合性組成物中に含まれるカチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤以外のカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上であることが特徴であるが、好ましくは100ppm以下、10ppm以上である。
【0038】
前記カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物には、前記カチオン重合開始剤の等量のカウンターアニオンは含まれない。
【0039】
これらのカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物は、カチオン重合性組成物を調製する際に、カチオン重合性化合物やカチオン重合開始剤、あるいはその他の添加剤等から持ち込まれる。これら不純物が500ppmを越えると、保存安定性、硬化性、吐出安定性が損なわれる。一方、1ppmを越えない範囲でも、保存安定性、硬化性、吐出安定性が損なわれる。
【0040】
上記カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物としては、B、F、Na、Mg、Al、P、S、Cl、K、Ca、Cu、Br、Ag、Sn、Sb、As、W等の元素、あるいはこれら元素を含む化合物を挙げることができる。
【0041】
また、強酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、AlCl3、AlBr3、FeCl3、BCl3、BBr3、BF3・OEt2、BF3、SbF5、PF5、ZnCl2、TiCl4等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物は、カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤、カチオン重合性組成物のいずれか1つを、塩基性吸着剤による吸着処理、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムクロマトグラフィーなど)、活性炭処理、晶析や再結晶等の分離精製手段による処理を施すことにより、総含有量が500ppm以下、1ppmである本発明のカチオン重合性組成物を得ることができる。
【0043】
特に、強酸性化合物については、上記精製手段の中でも、塩基性吸着剤による吸着処理及びカラムクロマトグラフィーによる分離処理を施すことが好ましい。塩基性吸着剤としては、例えば、商品名「キョーワード」等の塩基性無機吸着剤(例えば、ハイドロタルサイトなど)を使用できる。塩基性吸着剤の使用量は、強酸性化合物の種類や含有量により適宜選択できるが、通常、処理に供する化合物100質量部に対して、1〜200質量部程度である。塩基性吸着剤による吸着処理は、処理に供する化合物を溶解可能な溶媒び溶解して行われる。処理温度は、例えば、10〜100℃程度である。処理は、バッチ式、連続式、流動床方式、充填塔方式等の慣用の方法により行うことができる。
【0044】
なお、これらカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の含有量は、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、元素分析、原子吸光分析、赤外線吸収スペクトル法、NMRスペクトル法、質量分析法、滴定分析等の公知の分析手段により求めることができるが、微量の元素検出と精度の点で原子吸光分析、質量分析法、滴定分析が好ましい。
【0045】
本発明において、カチオン重合性組成物中の水の含有量は、カチオン重合性化合物の種類および含有量比、カチオン重合開始剤の種類および含有量比、保存条件、硬化条件などによって異なるが、カチオン重合性組成物全質量に対して、1質量%以上であることが好ましくは、より好ましくは2質量%以上である。水の含有量が不足するとカチオン重合性化合物の保存安定性を十分に向上させることができない。
【0046】
また、本発明においては、カチオン重合性組成物中に水を過剰に添加することを妨げるものではないが、水はカチオン重合性化合物中に溶解していることが好ましい。従って、水の含有量の上限は、通常、カチオン重合性組成物に溶解する水の量により決定され、一概に特定することはできないが、カチオン重合性組成物全量に対して、実用上、通常は10質量%以下、好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下とされる。水の添加量は、保存及び硬化時などにおける蒸発などによる損耗量を考慮して決定されるが、水の含有量が過剰になるとカチオン重合性化合物の硬化に長時間を要することになり、また、低温環境下で水が析出することがある。
【0047】
更に、本発明においては、カチオン重合性組成物中に水蒸発防止剤を含有することが好ましい。カチオン重合性組成物中に含有された水は、保存中の蒸発により損耗し、時間の経過に伴ってカチオン重合性組成物の保存安定性が低下する傾向にある。しかし、水蒸発防止剤を併用することにより、水の蒸発が防止されるため、カチオン重合性組成物の保存安定性を長期にわたり持続させることができる。水蒸発防止剤の使用は、カチオン重合性組成物を密閉系で保存する場合のみならず、とりわけ、インク用ビヒクルなどのように開放系で保存される場合に好ましい。本発明で用いることのできる水蒸発防止剤として、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜600)、グリセリン、ソルビトール、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、およびその他のアルコール類、糖類、グリコールエーテル類などの保湿作用を有する物質を使用することができる。
【0048】
本発明に係る水蒸発防止剤の使用量は、カチオン重合性化合物の種類、水蒸発防止剤の種類、保存状態、所望の保存期間などによって適宜調節することができるが、カチオン重合性組成物中に含有された水に対して、通常は10〜200質量%、好ましくは50〜100質量%とされる。
【0049】
本発明のカチオン重合性組成物の粘度は、カチオン重合性組成物の用途に応じて、カチオン重合性化合物の分子量や組み合わせを選択することにより適宜調節できる。とりわけ、本発明のカチオン重合性組成物を、業務用インクジェットプリンタの紫外線硬化型インク用のビヒクルとして用いる場合には、23℃における粘度が5〜50mPa・s、好ましくは10〜30mPa・sとなるように調整される。
【0050】
本発明のカチオン重合性組成物は、常法の如く紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線や加熱により重合反応を開始させて硬化させることができる。なお、本発明のカチオン重合性組成物には、所望により、顔料、染料、増感剤、難燃剤および静電防止剤などの各種添加剤を添加することができ、例えば、インク、ビヒクル、艶出しワニス、塗料、接着剤、プリプレグ、封止材料、積層板および成形材料などに好適に使用される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
《カチオン重合開始剤の合成》
〔例示化合物1−1の合成〕
500mlの三口フラスコに四塩化スズを20ml添加し、攪拌しながらアニソールを48.1gを添加した。この溶液を氷冷して10〜15℃の温度範囲を維持しながら、塩化チオニルの6.75gを滴下した。この時、反応物は暗褐色となった。そのまま室温で4時間撹拌を続けた後、この反応液に水を70ml添加した。次いで、オイル層を取り出し、ジエチルエーテルで3回洗浄した。これに、KPF6の18.4gを100gの水に溶解して添加し、一昼夜放置した。オイル層を再び取り出し、ジエチルエーテルで洗浄した後、減圧乾燥して、例示化合物1−1であるトリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフロロフォスフェートを、32.3g(収率59.6%)の白色粉末として得た。なお、この例示化合物1−1は、赤外吸収スペクトル、元素分析及びNMRにより構造を同定した。
【0053】
〔例示化合物1−2の合成〕
上記例示化合物1−1を塩化メチレンに溶解し、アルミナカラムを通した後、炭酸ナトリウム水溶液と混合攪拌した。次いで、塩化メチレン層を取り出し、硫酸マグネシウムで脱水処理後、塩化メチレンを除去乾燥し、メタノールで再結晶を行い、例示化合物1−1に塩基処理を施した例示化合物1−2の白色粉末を得た。
【0054】
〔例示化合物2−1の合成〕
1000mlの三口フラスコに硫酸300gを添加し、攪拌しながら4,4′−ジフルオロジフェニルスルフィドの47.7gを加えた。次いで、4,4′−ジフルオロジフェニルスルフィドが完全に溶解するのを確認した後、3−クロロ−4−フェニルチオ−ベンゾフェノンの65.0gを5回に分けて分割添加した。この時、添加と同時に反応物は暗褐色となった。そのまま室温で24時間撹拌を続けた後、3000mlのビーカーに氷500gとメタノールの500gを混合しておき、ここに上記調製した反応液を投入し、更にトルエンの300gを添加した。この溶液の下層部を取り出し、40%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、酢酸エチルの1500gを添加し撹拌した。次いで、KSbF6の44.2gを添加し、2時間撹拌した。酢酸エチル層を水1000gで2回洗浄した後、減圧濃縮することによって、例示化合物2−1である4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フロロフェニル)スルホニウムヘキサフロロフォスフェートの白色粉末を、139g(収率89%)得た。なお、この例示化合物2−1は、赤外吸収スペクトル、元素分析及びNMRにより構造を同定した。
【0055】
〔例示化合物2−2の合成〕
上記調製した例示化合物2−1を、上記例示化合物1−2の合成と同様にして塩基処理を施して、例示化合物2−2の白色粉末を得た。
【0056】
〔例示化合物3−1の合成〕
500mlの三口フラスコに、メタンスルホン酸の31.71g(0.33モル)、五酸化リンの3.41g(0.024モル)を添加し、70℃に加熱して3時間撹拌して得られた均一溶液を室温まで冷却した。この溶液中に、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホキシドの7.86g(0.033モル)、ジフェニルスルフィドの3.07g(0.0165モル)を添加し、室温で5時間撹拌した。この反応混合物を、3%テトラフェニルボレート・ナトリウム水溶液380ml(0.0333モル)に撹拌しながら、少しずつ滴下し、室温で3時間撹拌した。析出した固体をろ別、乾燥し、次いでイソプロパノールに加熱(70℃)溶解し、0℃まで冷却し、次いでろ別、乾燥後、例示化合物3−1である白色固体のビス[4−(4−フロロ)ジフェニルスルフォニオフェニル]スルファイド、ビス(ヘキサフロロフォスフェート)を14.18g(0.0112モル)得た。なお、この例示化合物3−1は、赤外吸収スペクトル、元素分析及びNMRにより構造を同定した。
【0057】
〔例示化合物3−2の合成〕
上記調製した例示化合物3−1を、上記例示化合物1−2の合成と同様にして塩基処理を施して、例示化合物3−2の白色固体を得た。
【0058】
〔例示化合物4−1の合成〕
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん36g、メタンスルホン酸180gを加え、内温80℃前後にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、ビス(4−メトキフェニル)スルホキシド60.6g、トルエン21.3gを加えた。激しく昇温が始まるので、すぐに水冷しそのまま3時間攪拌した。2Lのコニカルビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム49gを氷水1Lに溶解し、先の反応液をメカニカルスターラーで撹拌しながら少量ずつ加えると、茶褐色のヌガー状アモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、残渣に塩化メチレン800mlを加え、さらにヘキサフルオロリン酸カリウム25g/純粋500ml溶液を加えて1時間分散した。水層分離後、塩化メチレン層を減圧濃縮し粗生成物を得た。溶媒を減圧濃縮後、淡褐色のオイル成分を得た。メタノールを100ml程度加えて再度減圧濃縮し塩化メチレンを完全に除去後、ロータリーポンプにて、減圧乾燥。飴状の堅さに発泡したアモルファスを砕いて、ビス(4−メトキシフェニル)−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェートを得た。収量78.5g(収率70%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0059】
〔例示化合物4−2の合成〕
上記例示化合物4−1を塩化メチレンに溶解し、アルミナカラムを通した後、炭酸ナトリウム水溶液と混合攪拌した。次いで、塩化メチレン層を取り出し、硫酸マグネシウムで脱水処理後、塩化メチレンを除去乾燥し、メタノールで再結晶を行い、例示化合物1−1に塩基処理を施した例示化合物4−2の白色粉末を得た。
【0060】
〔例示化合物5−1の合成〕
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん32g、メタンスルホン酸288gを加え、内温80℃−90℃にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、ビス(4−メトキフェニル)スルホキシド78.7g、1−メチル−4−フェニルスルファニルベンゼン(1−methyl−4−phenylsulfanyl−benzene)60.1gを加え、室温下3時間攪拌した。5Lのコニカルビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム55.2gを純粋3Lに溶解し、メカニカルスターラーで撹拌しながら、先の反応液を少量ずつ加えると、柔らかい白色のアモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、飴状の残渣に塩化メチレン600mlを加えて、さらにヘキサフルオロリン酸カリウム25g/純粋500ml溶液を加えて1時間分散した。水層分離後、塩化メチレン層を減圧濃縮し粗生成物を得た。溶媒を減圧濃縮後、淡褐色のオイル成分を得た。ヘキサンを加えて懸濁し、メカニカルスターラーで激しく撹拌しながら再沈殿後、ビス(4−メトキシフェニル)−(4−p−トリルスルファニルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロフォスフェートを得た。収量166.0g(収率94%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0061】
〔例示化合物5−2の合成〕
上記調製した例示化合物5−1を、上記例示化合物4−2の合成と同様にして塩基処理を施して、例示化合物5−2の白色粉末を得た。
【0062】
〔例示化合物6−1の合成〕
塩化カルシウム管、温度計をセットした1Lのフラスコに酸化りん32g、メタンスルホン酸288gを加え、内温80〜90℃にて3時間加熱攪拌した。室温まで放冷後、p−トルイルスルホキシド69.1g、アニソール33gを加え室温で3時間攪拌した。5Lのビーカーにヘキサフルオロリン酸カリウム55.2gを純粋3Lに溶解し、先の反応液をメカニカルスターラーで撹拌しながら少量ずつ加えると、ヌガー状のアモルファスが生成した。撹拌を停止し、上澄みをデカンテーションで除き、飴状の残渣に塩化メチレン600mlを加えて、さらにヘキサフルオロリン酸カリウム25g/純粋500ml溶液を加えて1時間分散した。水層分離後、塩化メチレン層に活性炭を加えて脱色し、活性炭を濾別後、減圧濃縮して粗生成物を得た。溶媒を減圧濃縮後、粗結晶132.6gを得た。
イソプロピルアルコール300ml、塩化メチレン10〜30mlを加え、60〜70℃の水浴で加熱分散し、室温付近まで放冷後、イソプロピルアルコール200mlを追加し、室温で1時間撹拌後、結晶を濾取しトリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェートを得た。収量123.7g(収率88%)。1H−NMR及びマススペクトルにて目的物と同定した。
【0063】
〔例示化合物6−2の合成〕
上記調製した例示化合物6−1を、上記例示化合物4−2の合成と同様にして塩基処理を施して、例示化合物6−2の白色固体を得た。
【0064】
《カチオン重合性組成物の調製》
〔カチオン重合性組成物1〜3の調製:本発明〕
表1に記載の様に、分散剤(S32000)を2質量部と、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、カチオン重合開始剤(例示化合物1−2、2−2、3−2)をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。次いで、この溶液に顔料(P1)を表1に記載の量添加し、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。次いで、ジルコニアビーズを取り除き、残りの各種添加剤を加えた後、これを0.8μmメンブランフィルターで濾過して、カチオン重合性組成物1〜3を調製した。
【0065】
〔カチオン重合性組成物4〜6の調製:比較例〕
上記カチオン重合性組成物1〜3の調製において、塩基処理を行ったカチオン重合開始剤である例示化合物1−2、2−2、3−2に代えて、未処理品である例示化合物1−1、2−1、3−1をそれぞれ用いた以外は同様にして、カチオン重合性組成物4〜6を調製した。
【0066】
〔カチオン重合性組成物7の調製:本発明〕
上記調製したカチオン重合性組成物4に炭酸ナトリウムの粉体を懸濁させ、1時間攪拌した後、フィルターを用いて炭酸ナトリウムをろ過除去して、精製処理を施したカチオン重合性組成物7を調製した。
【0067】
〔カチオン重合性組成物8〜10の調製:本発明〕
表1に記載の様に、分散剤(S32000)を2質量部と、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、カチオン重合開始剤(例示化合物4−2、5−2、6−2)をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。次いで、この溶液に顔料(P1)を表1に記載の量添加し、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。次いで、ジルコニアビーズを取り除き、残りの各種添加剤を加えた後、これを0.8μmメンブランフィルターで濾過して、カチオン重合性組成物1〜3を調製した。
【0068】
〔カチオン重合性組成物11〜13の調製:比較例〕
上記カチオン重合性組成物8〜10の調製において、塩基処理を行ったカチオン重合開始剤である例示化合物4−2、5−2、6−2に代えて、未処理品である例示化合物4−1、5−1、6−1をそれぞれ用いた以外は同様にして、カチオン重合性組成物11〜13を調製した。
【0069】
なお、表1に略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0070】
UVR6105:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(脂環式エポキシ化合物 ユニオンカーバイト株式会社製、商品名;UVR6105)
OXT221:ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(オキセタン化合物 東亞合成株式会社製、商品名;OXT221)
TEG:トリエチレングリコール
顔料P1:粗製銅フタロシアニン(東洋インク製造社製 銅フタロシアニン)の250部、塩化ナトリウムの2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製 ポリエチレングリコール300)の160部を、スチレン製3.79L(1ガロン)ニーダー(井上製作所社製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5リットルの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、次いで、スプレードライをして乾燥して分散処理を施した顔料P1を得た。
【0071】
S32000:顔料分散剤(脂肪族変性系分散剤 ソルスパーズ32000 ゼネカ社製)
【0072】
【表1】

【0073】
【化3】

【0074】
《カチオン重合性組成物の特性値の測定及び評価》
〔粘度の測定〕
上記調製した各カチオン重合性組成物の粘度を、レオメータMCR300(Physica製)を用い、温度23℃、Shear Rate=1000(1/s)の条件下で測定した。その結果、カチオン重合性組成物のいずれもが、粘度としては25〜27mPa・sの範囲であった。
【0075】
〔含水量の測定〕
上記の各カチオン重合性組成物組成物を調製した直後、含水量(組成物全量中の水分量(質量%))を、カールフィッシャー法(自動水分測定装置 AQV−2000、平沼産業)により測定した。その結果、いずれのカチオン重合性組成物も、含水率は3.5〜4.0質量%の範囲であった。
【0076】
〔カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総量の測定〕
上記調製した各カチオン重合性組成物について、原子吸光分析、質量分析及び滴定分析を用いてカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総量(ppm)の測定を行った。なお、カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物及び構成元素としては、Sn、Sb、Cl、S、K、P、Mg、P、B、Na、F、HCl、HPF6、KSbF6、リン酸、メタンスルホン酸を検出した。
【0077】
〔保存安定性の評価〕
上記調製した各カチオン重合性組成物を、ガラス容器に収納した後、蓋をした状態(以下、密閉系という)と蓋をしない状態(以下、開放系という)とで、約70℃の恒温環境下で1週間の促進処理を行った後、それぞれのカチオン重合性組成物の状態を目視観察し、下記の基準に従って保存安定性の評価を行った。
【0078】
○:密閉系及び開放系のいずれにおいても、カチオン重合性組成物のゲル化が認められなかった
△:開放系においてはカチオン重合性組成物のゲル化がやや認められたが、密閉系においては、カチオン重合性組成物のゲル化が認められなかった
×:開放系及び密閉系のいずれにおいても、カチオン重合性組成物の明らかなゲル化が認められた
〔硬化性の評価〕
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に、各カチオン重合性組成物をワイヤーバーを用いて塗布し、厚さ10μmの薄膜を形成した。このフィルムを、20m/分のベルト搬送速度で80ワットの高圧水銀ランプ光源下を通過させ、薄膜に紫外線を照射して硬化した。この時、高圧水銀ランプの紫外線照射エネルギー量を変化させて、照射直後の薄膜を指で触ってもタックがなくなる時の紫外線照射エネルギー量(mJ/cm2)を求め、これを硬化性の尺度とした。なお、数値が小さいほど硬化性が良好であることを表す。
【0079】
〔吐出安定性の評価〕
各カチオン重合性組成物を、ザール(Xaar)社製インクジェットプリンタの記録ヘッドから30分間連続して吐出させ、各記録ヘッドのノズルからの射出状態を目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性の評価を行った。
【0080】
○:30分連続出射しても、ノズル欠が発生しない
△:30分連続出射でノズル欠がはじないが、わずかにサテライトが発生する
×:30分連続出射で、数カ所以上のノズルでノズル欠が発生する
以上により得られた粘度及び含水率を除く各測定結果及び評価結果について、表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2の結果より明らかなように、カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上である本発明のカチオン重合性組成物は、比較例に対し、保存安定性、硬化性及び吐出安定性に優れていることが分かる。
【0083】
また、本発明のカチオン重合性組成物について、兎の皮膚を用いた皮膚刺激性のパッチテストを実施した結果、いずれのカチオン重合性組成物でもかぶれの発生がないことを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性組成物において、前記カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤以外のカチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が500ppm以下、1ppm以上であることを特徴とするカチオン重合性組成物。
【請求項2】
前記カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物の総含有量が、100ppm以下、10ppm以上であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項3】
前記カチオン性化合物、金属化合物及び強酸性化合物が、B、F、Na、Mg、Al、P、S、Cl、K、Ca、Cu、Br、Ag、Sn、Sb、As及びWから選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項4】
前記カチオン重合性化合物が、脂環式エポキシ化合物またはオキセタン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項5】
カチオン重合性組成物全質量に対して、1〜10質量%の水を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項6】
水蒸発防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項7】
23℃における粘度が、5〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項8】
活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項9】
不純物としての強酸性化合物を含む、カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤及び請求項1〜7のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物から選ばれる少なくとも1つを、塩基性吸着剤による吸着処理を施して、該強酸性化合物の含有量を500ppm以下、1ppm以上とする工程を経て製造することを特徴とするカチオン重合性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−89722(P2006−89722A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229246(P2005−229246)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】