説明

カットデータ作成装置、カットデータ作成プログラム、およびミシン

【課題】所望するパターンの切れ目を短時間で加工布に形成させるためのカットデータを作成するカットデータ作成装置、カットデータ作成プログラム、およびミシンを提供する。
【解決手段】ミシンは、縫針の代わりに、先端に刃を備えた切断針を複数装着する。CPUは、加工布に形成させる切れ目のパターンを取得する(S11)。CPUは、切れ目のパターン上の任意の点を、針落ち点として特定する(S13)。CPUは、針落ち点に突き刺す切断針を、パターンの方向に基づいて特定する(S15)。CPUは、特定した切断針を順番に加工布に突き刺す場合の連続回数を特定する。CPUは、連続回数が所定の閾値未満である場合、所定値未満である切断針を、直前または直後の針落ち点に突き刺す切断針によって置き換え(S17)、カットデータを作成する(S23)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定されたパターンの切れ目を加工布に形成させるために使用されるデータを作成するカットデータ作成装置、カットデータ作成プログラム、およびミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
縫針の代わりに切断針を装着したミシンが知られている。切断針は、先鋭状の刃を先端に備えた棒状の部材である。ミシンは、縫製時と同様の動作を行うことによって切断針を上下動させ、加工布に対して切断針を繰り返し突き刺して加工布の経糸(縦糸)及び緯糸(横糸)を切断する。同時に、ミシンは、加工布を保持した刺繍枠を移動させる。これによってミシンは、指定されたパターンの切れ目を加工布に形成させることができる。
【0003】
例えば特許文献1では、2つの切断針が、先端の刃の方向が互いに直交する状態でミシンに装着される。一方の切断針の刀の方向は、加工布の経糸の延びる方向と直交し、他方の切断針の刀の方向は、加工布の緯糸の延びる方向と直交する。ミシンは、一方の切断針を使用して加工布に切れ目を形成させる動作を行い、次いで、他方の切断針を使用して同様の処理を繰り返す。これによってミシンは、加工布の経糸及び緯糸を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−217261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、4つの切断刃を刃の方向が互いに交差する方向にミシンに装着し、指定されたパターンに沿って、4つの切断針を切り替えながら加工布に切れ目を形成することも考えられる。この場合、2つの切断針で形成する切れ目に比べて、前記パターンに沿った綺麗な切れ目を形成することができる。
【0006】
しかしながらこの場合、使用される切断針を頻繁に切り替える必要がある。従って、切断針を切り替えるために時間が余分にかかり、指定されたパターンの切れ目を加工布に形成させるまでに長時間を要するという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、指定されたパターンの切れ目を短時間で加工布に形成させるためのカットデータを作成するカットデータ作成装置、カットデータ作成プログラム、およびミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係るカットデータ作成装置は、多針ミシンが備える複数の針棒に、先端に刃を備えた複数の切断針を、刃の方向が其々異なるように装着し、前記針棒を駆動して前記切断針を上下動させ、加工布に前記切断針を繰り返し突き刺すことによって前記加工布に切れ目を形成するために使用されるカットデータを作成するカットデータ作成装置であって、前記切れ目のパターンを示すパターン情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターン上の所定の位置を、針落ち点として特定する第一特定手段と、前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点に突き刺す前記切断針を、前記複数の切断針から特定する第二特定手段と、前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点を示す情報と、前記第二特定手段によって特定された前記切断針である特定針を示す情報とを対応付け、記憶手段に記憶する第一制御手段と、前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターンに沿って前記特定針を順番に選択した場合に、同一の前記特定針が連続して選択される場合の連続回数を特定し、前記連続回数が所定の閾値よりも小さい場合に、前記連続回数が小さい前記特定針を示す情報を、前記連続回数が小さい前記特定針の直前または直後に選択される前記特定針を示す情報で置き換え、前記記憶手段に記憶する第二制御手段と、前記第二制御手段によって前記特定針を示す情報が置き換えられた状態の前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記パターン情報によって示される前記パターン上の前記針落ち点に、対応する前記特定針を、前記パターンに沿って順番に突き刺すための前記カットデータを作成する作成手段とを備えている。
【0009】
第一態様によれば、連続回数の小さい特定針を、直前または直後に選択される特定針によって置き換えることによって、加工布に突き刺す特定針が頻繁に切り替わることを抑止することが可能なカットデータを作成することができる。これによってミシンは、特定針を切り替えるために要する時間を短縮することができるので、指定されたパターンの切れ目を短時間で加工布に形成させることができる。
【0010】
第一態様において、前記作成手段は、前記記憶手段に記憶された情報に基づき、共通の前記特定針に対応する前記針落ち点をまとめ、まとめた前記針落ち点の其々に前記共通の特定針を連続して突き刺す処理を、前記特定針の数分繰り返すための前記カットデータを作成してもよい。このようにして作成されたカットデータがミシンに適用された場合、はじめに一の切断針を使用して切れ目を形成させる処理が実行される。次いで、切断針は他の切断針に切り替えられ、他の切断針を使用して切れ目を形成させる処理が実行される。以上の処理が、切断針の数分繰り返される。これによって、ミシンにおいて切断針が切り替わる回数をさらに少なくすることができる。従ってミシンは、指定されたパターンの切れ目を更に短時間で加工布に形成させることができる。
【0011】
第一態様において、前記作成手段は、一の前記特定針を前記針落ち点に順番に突き刺す処理が終了し、他の前記特定針に切り替え、前記他の特定針を前記針落ち点に順番に突き刺す処理を開始する場合に、前記一の特定針を最後に突き刺した前記針落ち点と、前記他の特定針を最初に突き刺す前記針落ち点とが近接するように、前記他の特定針を最初に突き刺す前記針落ち点を決定し、決定した前記針落ち点に前記他の特定針を最初に突き刺すための前記カットデータを作成してもよい。このようにして作成されたカットデータがミシンに適用された場合、一の切断針が他の切断針に切り替えられる場合の、加工布に対する切断針の移動量を短くすることができる。これによってミシンは、加工布及び切断針の相対位置を変更するために要する時間を短くすることができるので、指定されたパターンの切れ目を更に短くすることができる。
【0012】
第一態様において、前記第二特定手段は、前記針落ち点と、前記針落ち点に隣接する他の前記針落ち点とを結ぶ線分の延びる方向に対応する前記切断針を、前記針落ち点に突き刺す前記特定針として特定してもよい。このようにして作成されたカットデータをミシンに適用することによって、ミシンは、針落ち点に突き刺す切断針を容易且つ正確に特定することができる。
【0013】
本発明の第二態様に係るカットデータ作成プログラムは、多針ミシンが備える複数の針棒に、先端に刃を備えた複数の切断針を、刃の方向が其々異なるように装着し、前記針棒を駆動して前記切断針を上下動させ、加工布に前記切断針を繰り返し突き刺すことによって前記加工布に切れ目を形成させるために使用されるカットデータを作成するカットデータ作成プログラムであって、前記切れ目のパターンを示すパターン情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップによって取得された前記パターン情報によって示される前記パターン上の所定の位置を、針落ち点として特定する第一特定ステップと、前記第一特定ステップによって特定された前記針落ち点に突き刺す前記切断針を、前記複数の切断針から特定する第二特定ステップと、前記第一特定ステップによって特定された前記針落ち点を示す情報と、前記第二特定ステップによって特定された前記切断針である特定針を示す情報とを対応付け、記憶手段に記憶する第一制御ステップと、前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記取得ステップによって取得された前記パターン情報によって示される前記パターンに沿って前記特定針を順番に選択した場合に、同一の前記特定針が連続して選択される場合の連続回数を特定し、前記連続回数が所定の閾値よりも小さい場合に、前記連続回数が小さい前記特定針を示す情報を、前記連続回数が小さい前記特定針の直前または直後に選択される前記特定針を示す情報で置き換え、前記記憶手段に記憶する第二制御ステップと、前記第二制御ステップによって前記特定針を示す情報が置き換えられた前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記パターン情報によって示される前記パターン上の前記針落ち点に、対応する前記特定針を、前記パターンに沿って順番に突き刺すための前記カットデータを作成する作成ステップとをコンピュータに実行させる。第二態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【0014】
本発明の第三態様に係るミシンは、先端に刃を備えた複数の切断針を、刃の方向が其々異なるように複数の針棒に装着し、前記針棒を駆動して前記切断針を上下動させ、加工布に前記切断針を繰り返し突き刺すことによって前記加工布に切れ目を形成させるミシンであって、前記切れ目のパターンを示すパターン情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターン上の所定の位置を、針落ち点として特定する第一特定手段と、前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点に突き刺す前記切断針を、前記複数の切断針から特定する第二特定手段と、前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点を示す情報と、前記第二特定手段によって特定された前記切断針である特定針を示す情報とを対応付け、記憶手段に記憶する第一制御手段と、前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターンに沿って前記特定針を順番に選択した場合に、同一の前記特定針が連続して選択される場合の連続回数を特定し、前記連続回数が所定の閾値よりも小さい場合に、前記連続回数が小さい前記特定針を示す情報を、前記連続回数が小さい前記特定針の直前または直後に選択される前記特定針を示す情報で置き換え、前記記憶手段に記憶する第二制御手段と、前記第二制御手段によって前記特定針が置き換えられた前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記パターン情報によって示される前記パターン上の前記針落ち点に、対応する前記特定針を、前記パターンに沿って順番に突き刺すことによって、前記加工布に前記切れ目を形成させる作成手段とを備えている。第三態様によれば、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ミシン1の斜視図である。
【図2】針棒31に固定された切断針52の正面図である。
【図3】刺繍枠84を保持する刺繍枠移動機構11の平面図である。
【図4】ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】メイン処理を示すフローチャートである。
【図6】切れ目のパターン101を示す図である。
【図7】切れ目のパターン101上の針落ち点QXを示す図である。
【図8】切断針52の特定方法を説明するための図である。
【図9】角度範囲161〜164を説明するための図である。
【図10】テーブル141を示す模式図である。
【図11】テーブル141を示す模式図である。
【図12】テーブル141を示す模式図である。
【図13】テーブル141を示す模式図である。
【図14】パターン101に沿って切れ目を形成させる順序を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図1から図3を参照して、実施形態に係る多針ミシン(以下、単にミシンという)1の構成について説明する。以下の説明では、図1の上側、下側、左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側をそれぞれ、ミシン1の上側、下側、正面側、背面側、左側、右側とする。
【0017】
図1に示すように、ミシン1の本体20は、支持部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。支持部2は、平面視逆U字形に形成され、ミシン1全体を支持する。支持部2の上面には、前後方向に伸びる左右一対のガイド溝25がある。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ立設されている。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の先端には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着されている。針棒ケース21の内部には、上下方向に伸びる10本の針棒31(図2参照)が左右方向に等間隔で配置されている。10本の針棒31のうち、縫製位置にある1本の針棒31が、針棒ケース21の内部に設けられた針棒駆動機構32(図4参照)によって上下方向に摺動される。針棒31の下端には、縫針51および切断針52(図2参照)が着脱可能である。
【0018】
縫針51について説明する。縫針51は、10本の針棒31のうち、左側の6本に装着される。図2では、針棒315、316,317に、縫針51(縫針511、512、513)が装着されている。ミシン1は、縫針51が装着された針棒31を上下方向に摺動することによって、縫針51を上下方向に繰り返し往復移動させる。これによってミシン1は、加工布39(図3参照)に縫製を行う。
【0019】
切断針52について説明する。図2に示すように、10本の針棒31のうち右側の4本(針棒311、312、313、314)に、切断針52(切断針521、522、523、524)が縫針51の代わりに装着される。切断針52は、加工布39(図3参照)の糸を切断するための刃を下方先端に備える。切断針521〜524の刃の切っ先の方向は、それぞれ異なる方向を向く。具体的には次の通りである。切断針521の切っ先の方向は、左斜め前から右斜め後ろに向かって延びる。切断針522の切っ先の方向は、左右方向に延びる。切断針523の切っ先の方向は、右斜め前から左斜め後ろに向かって延びる。切断針524の切っ先の方向は、前後方向に延びる。ミシン1は、切断針52が装着された針棒31を上下方向に摺動することによって、切断針52を上下方向に繰り返し往復移動させる。これによってミシン1は、加工布39(図3参照)の経糸及び緯糸を切断し、加工布39に切れ目を形成させる。
【0020】
切断針52の上方の柄部分は、側面に平坦な面を有する部分円柱形状をなしている。刃の切っ先の方向と、柄部分における平坦な面との位置関係は、切断針521〜524で異なる。切断針52は、平坦な面をミシン1の後方に向けた状態で、針棒31に装着可能となる。ミシン1は、切っ先の方向と平坦な面との位置関係が異なる複数の切断針52を針棒31に装着することによって、複数の切断針52間で切っ先の方向を異ならせることができる。詳細は後述するが、ミシン1は、加工布39上に形成させる切れ目のパターンの向きに応じて切断針521〜524を使い分け、加工布39の経糸及び緯糸を順次切断する。
【0021】
アーム部4の前後方向中央部の右側には、操作部6が設けられている。操作部6は、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)7と、タッチパネル8と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。LCD7には、例えば、ユーザが指示を入力するための操作画像といった各種情報が表示される。タッチパネル8は、ユーザからの指示を受け付けるために用いられる。LCD7に表示された入力キー等の位置に対応したタッチパネル8の箇所を、ユーザが、指又はタッチペンを用いて押圧操作すること(以下、この操作を「パネル操作」という)によって、加工布39に設ける切れ目のパターンおよび切断条件といった各種条件を選択又は設定できる。スタート/ストップスイッチ41は、縫製および切断の開始又は停止を指示するためのスイッチである。
【0022】
アーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられている。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示せず)が設けられている。釜は、下糸(図示せず)が巻回されたボビン(図示せず)を収納する。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示せず)がある。釜駆動機構(図示せず)は、釜を回転駆動する。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板16がある。針板16には、縫針51が挿通される針穴36が設けられている。
【0023】
アーム部4の上面の背面側には、左右一対の糸駒台12が設けられている。一対の糸駒台12には、針棒31の数と同じ10個の糸駒13を設置可能である。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19等を経由して、針棒31の下端に装着された縫針51の針孔(図示せず)に供給される。
【0024】
アーム部4の下方には、刺繍枠移動機構11(図4参照)のYキャリッジ23が設けられている。刺繍枠移動機構11は、様々な種類の刺繍枠84(図3参照)を着脱可能に支持する。刺繍枠84は、加工布39を保持する。刺繍枠移動機構11は、X軸モータ132(図4参照)及びY軸モータ134(図4参照)を駆動源として、刺繍枠84を前後左右に移動させる。
【0025】
図3を参照して、刺繍枠84と刺繍枠移動機構11とについて説明する。刺繍枠84は、外枠81と、内枠82と、左右1対の連結部89とを備える。刺繍枠84は、外枠81と内枠82とで加工布39を挟持する。連結部89は、平面視矩形の中央部が矩形に切り抜かれた形状の板部材である。一方の連結部89は、内枠82の右部に螺子95によって固定され、他方の連結部89は、内枠82の左部に螺子94によって固定されている。
【0026】
刺繍枠移動機構11は、ホルダ24と、Xキャリッジ22と、X軸駆動機構(図示せず)と、Yキャリッジ23と、Y軸移動機構(図示せず)とを備える。ホルダ24は、刺繍枠84を着脱可能に支持する。ホルダ24は、取付部91と、右腕部92と、左腕部93とを備える。取付部91は、左右方向に長い平面視矩形の板部材である。右腕部92は、前後方向に伸びる板部材であり、取付部91の右端に固定されている。左腕部93は、前後方向に伸びる板部材である。左腕部93は、取付部91の左部において、取付部91に対する左右方向の位置を調整可能に固定される。右腕部92は、刺繍枠84の一方の連結部89と係合し、左腕部93は、他方の連結部89と係合する。
【0027】
Xキャリッジ22は、左右方向に長い板部材であり、一部分がYキャリッジ23の正面から前方に突出している。Xキャリッジ22には、ホルダ24の取付部91が取り付けられる。X軸駆動機構(図示せず)は、直線移動機構(図示せず)を備える。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、X軸モータ132を駆動源として、Xキャリッジ22を左右方向(X軸方向)に移動させる。
【0028】
Yキャリッジ23は、左右方向に長い箱状である。Yキャリッジ23は、Xキャリッジ22を左右方向に移動可能に支持する。Y軸移動機構(図示せず)は、左右一対の移動体(図示せず)と、直線移動機構(図示せず)とを備える。移動体は、Yキャリッジ23の左右両端の下部に連結され、ガイド溝25(図1参照)を上下方向に貫通している。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、Y軸モータ134を駆動源として、移動体をガイド溝25に沿って前後方向(Y軸方向)に移動させる。移動体に連結されたYキャリッジ23と、Yキャリッジ23に支持されたXキャリッジ22とは、これに伴って前後方向(Y軸方向)に移動する。加工布39を保持する刺繍枠84をXキャリッジ22に装着した状態では、加工布39は、針棒31と、針板16(図1参照)との間に配置される。
【0029】
図4を参照して、ミシン1の電気的構成について説明する。図4に示すように、ミシン1は、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60とを備える。以下、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60について順に詳述する。
【0030】
縫針駆動部120は、主軸モータ122と、駆動回路121と、針棒ケース用モータ45と、駆動回路123とを備える。主軸モータ122は、針棒駆動機構32を駆動させて針棒31を上下方向に往復移動させる。駆動回路121は、制御部60からの制御信号に従って主軸モータ122を駆動する。針棒ケース用モータ45は、針棒ケース21を左右方向に移動させる。駆動回路123は、制御部60からの制御信号に従って針棒ケース用モータ45を駆動する。
【0031】
縫製対象駆動部130は、X軸モータ132と、駆動回路131と、Y軸モータ134と、駆動回路133とを備える。X軸モータ132は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84(図3参照)を左右方向に移動させる。駆動回路131は、制御部60からの制御信号に従ってX軸モータ132を駆動する。Y軸モータ134は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84を前後方向に移動させる。駆動回路133は、制御部60からの制御信号に従ってY軸モータ134を駆動する。
【0032】
操作部6は、タッチパネル8と、駆動回路135と、LCD7と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。駆動回路135は、制御部60からの制御信号に従ってLCD7を駆動する。
【0033】
制御部60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64と、入出力インターフェイス(I/O)66とを備え、これらは信号線65によって相互に接続されている。I/O66には、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6とがそれぞれ接続されている。以下、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64とについて詳述する。
【0034】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62のプログラム記憶エリア(図示せず)に記憶された各種プログラムに従って、縫製に関わる各種演算及び処理を実行する。ROM62は、図示しないが、プログラム記憶エリアを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、メインプログラムを含む、ミシン1を動作させるための各種プログラムが記憶されている。メインプログラムは、後述するメイン処理を実行するためのプログラムである。RAM63には、CPU61が演算処理した演算結果等を収容する記憶エリアが必要に応じて設けられる。EEPROM64には、ミシン1が各種処理を実行するための各種パラメータが記憶されている。
【0035】
図5を参照し、CPU61において実行されるメイン処理について説明する。メイン処理では、はじめに、加工布39に切れ目のパターンを形成させる動作をミシン1に実行させるために必要な制御データ(以下、カットデータともいう。)が作成される(S11〜S23、後述)。続いて、作成されたカットデータに基づき、刺繍枠84を移動させる。これによって、切断針52に対する加工布39の保持位置が変化する。また、切断針52を装着した針棒31を上下方向に摺動させる。これによって、切断針52は上下方向に往復移動して加工布39に繰り返し突き刺さり、加工布39の糸をパターンに沿って切断する。これによって、タッチパネル8を介して入力されたパターンの切れ目が加工布39に形成される(S25、後述)。
【0036】
図5に示すメイン処理は、ユーザがメイン処理を開始する指示を入力した場合に実行される。メイン処理を開始する指示は、例えば、パネル操作によって入力される。メイン処理を実行するためのプログラムは、ROM62(図4参照)に記憶されており、CPU61によって実行される。図5に示すように、はじめにユーザによって、タッチパネル8を介して切れ目のパターンが入力される。CPU61は、入力された切れ目のパターンを示す情報を、パターン情報として取得する(S11)。パターン情報は、加工布39上に切れ目のパターンが形成される場合において、加工布39に対する切れ目のパターン上の任意の点の位置を特定することが可能なベクトル情報である。例えば、図6に示す環状の模様が切れ目のパターン101として入力されたとする。CPU61は、パターン101を示すパターン情報を受け付け、RAM63に記憶する。
【0037】
なおCPU61は、他の方法によってパターン情報を受け付けても良い。例えばユーザは、切れ目のパターンとして複数の点を入力しても良い。CPU61は、入力された複数の点を結ぶ線分を示す情報を、パターン情報として取得してもよい。また例えばミシン1は、図示しないカードスロットを備えていてもよい。ユーザは、パターン情報が記憶されたメモリーカードを、カードスロットに挿入してもよい。CPU61は、カードスロットに挿入されたメモリーカードに記憶されたパターン情報を読み出すことによって、パターン情報を取得してもよい。
【0038】
次にCPU61は、RAM63に記憶されたパターン情報によって示される切れ目のパターン上の任意の点を、針落ち点として特定する(S13)。特定された針落ち点の位置を示す座標情報は、RAM63に設けられたテーブル141(図10等参照)に記憶される。テーブル141の詳細は後述する。例えば図6に示す切れ目のパターン101が入力された場合、CPU61は、切れ目のパターン101上に針落ち点が等間隔で並ぶように、針落ち点を特定する。この場合、図7に示すように、パターン101上に針落ち点QX(X=0・・・67・・・)が特定される。なお、針落ち点QXのうちXに対応する数字は、切れ目のパターン101上の特定の針落ち点(図7における左下の点)をQ0とし、パターン101に沿って順番に割り当てられる。
【0039】
なおCPU61は、他の方法によって針落ち点を特定してもよい。例えばCPU61は、受け付けたパターン情報によって示される切れ目のパターンを、LCD7に表示してもよい。ユーザは、LCD7に表示された切れ目のパターン上に任意の点を指定して入力してもよい。CPU61は、ユーザによって入力された点を針落ち点として特定してもよい。
【0040】
次にCPU61は、S13で特定された針落ち点に突き刺す切断針52を、切断針521〜524の中から針落ち点毎に特定する(S15)。切断針52の特定は、針落ち点の位置における切れ目のパターンの方向に基づいて特定される。詳細は以下のとおりである。
【0041】
図8および図9を参照し、針落ち点における切断針52の特定方法について具体的に説明する。はじめにCPU61は、図8に示すように、隣接する針落ち点間(Q2〜Q3間、Q3〜Q4間、およびQ4〜Q5間)を結ぶ線分111、112、113を定義する。CPU61は、定義した線分111、112、113の延びる方向が、切断針521、522、523、524のそれぞれに予め対応付けられた角度範囲161、162、163、164(図9参照)の何れに該当するかを判断する。図9のうち、矢印151、152、153、154は、それぞれ、切断針521、522、523、524を平面視した場合の切っ先の延びる方向を示している。矢印154、151間の鋭角を二分する線分155と、矢印151、152間の鋭角を二分する線分156とで挟まれた部分が、角度範囲161を示している。線分156と、矢印152、153間の鋭角を二分する線分157とで挟まれた部分が、角度範囲162を示している。線分157と、矢印153、154間の鋭角を二分する線分158とで挟まれた部分が、角度範囲163を示している。線分158と線分155とで挟まれた部分が、角度範囲164を示している。例えば切断針52を平面視した場合において、切断針52に対して右方向を0°とし、切断針52を中心とした場合における反時計回り方向を+方向と定義する。この場合、角度範囲161は、22.5°〜67.5°、および202.5°〜247.5°の範囲を示す。角度範囲162は、337.5°〜22.5°、および157.5°〜202.5°の範囲を示す。角度範囲163は、112.5°〜157.5°、および292.5°〜337.5°の範囲を示す。角度範囲164は、67.5°〜112.5°、および247.5°〜292.5°の範囲を示す。角度範囲161、162、163、164は、それぞれ、切断針521、522、523、524に対応付けられる。
【0042】
例えば図8の線分111、112の延びる方向は、図9のうち角度範囲164に含まれる。この場合、線分111の両端に位置する針落ち点であるQ2、Q3に突き刺す切断針52として、角度範囲164に対応する切断針524が特定される。同様に、線分112の両端に位置する針落ち点であるQ3、Q4に突き刺す切断針52として、角度範囲164に対応する切断針524が特定される。また、線分113の延びる方向は、図9のうち角度範囲161に含まれている。この場合、線分113の両端の針落ち点であるQ4、Q5に突き刺す切断針52として、角度範囲161に対応する切断針521が特定される。以下、針落ち点毎に特定された切断針52を、特定針ともいう。
【0043】
上述のようにして切断針52が特定された場合、切断針52における切っ先の延びる方向は、針落ち点における切れ目のパターンの接線方向と良好に近似する。従って、特定された切断針52を加工布39に突き刺して切れ目を形成させた場合、パターンの延びる方向に沿った見栄えのよい切断面を有する切れ目が加工布39に形成される。また、隣接する針落ち点同士を結ぶ線分の角度に基づいて切断針52が特定されるため、針落ち点における接線を具体的に算出するための複雑な処理が不要となる。従ってCPU61は、針落ち点に突き刺す切断針52を容易且つ正確に特定することができる。
【0044】
ここで、線分111および線分112に基づいて特定される切断針524は一致するため、Q3に対応する切断針52として切断針524が最終的に特定される。一方、線分112に基づいて特定される切断針524と、線分113に基づいて特定される切断針521とは相違するため、Q4に突き刺す切断針52として、二つの切断針521、524が最終的に特定される。Q4には、切断針521、524がそれぞれ突き刺されることになる。
【0045】
以上のようにして針落ち点毎に特定された特定針を示す情報は、針落ち点の位置を示す座標情報に対応付けられ、テーブル141(図10参照)に記憶される(S15、図5参照)。図10に示すテーブル141のうち、QX(X=0、1・・・)は、針落ち点の座標情報を表している。QXに特定針として対応付けられている数字1、2、3、4は、それぞれ、切断針521、522、523、524を示す情報を表している。以下、テーブル141に記憶される針落ち点の座標情報QXを、単に針落ち点QXともいい、特定針を示す情報 1、2、3、4を、単に特定針 1、2、3、4ともいう。
【0046】
図5に示すように、S15で針落ち点毎に切断針が特定針として特定された後、CPU61は、テーブル141(図10等参照)に記憶した特定針を、次のように修正する(S17)。図10のテーブル141を参照しつつ具体的に説明する。CPU61は、テーブル141に記憶された特定針を、針落ち点QXにおけるXの順に参照する。そしてCPU61は、同一の特定針が連続する場合の連続回数を算出する。例えば図10では、針落ち点Q0〜Q4に対して、特定針4(切断針514)が対応付けられているので、連続回数5を算出する。同様に、針落ち点Q4〜Q7に対して、特定針1(切断針521)が対応付けられているので、連続回数4が算出される。針落ち点Q7〜Q11(特定針2(切断針522))に対して連続回数5が算出される。針落ち点Q11〜Q12(特定針3(切断針523))に対して連続回数2が算出される。針落ち点Q12〜Q19(特定針4(切断針524))に対して連続回数8が算出される。同様の算出処理が、すべての針落ち点QXに対して実行される。
【0047】
算出された連続回数と所定の閾値とが比較される。本実施形態では、閾値は4であるとする。そして、算出された連続回数が4未満である針落ち点QXが抽出される。図10の場合、Q11〜Q12(連続回数2回)、Q37〜Q39(連続回数3回)、および、Q47〜Q48(連続回数2回)が抽出される。ここでミシン1において、図10に示すテーブル141に基づきカットデータが作成され、針落ち点QXにおけるXの順で切断針52を針落ち点QXに突き刺す処理が実行された場合を想定する。この場合、上述のようにして抽出された針落ち点の部分では、加工布39に突き刺す切断針52は短期間で頻繁に切り替わることになる。ここで、切断針52を切り替える場合には、主軸モータ122の回転をその都度停止させて、針棒ケース21を左右方向に移動させる必要があるため、共通の切断針52が継続して使用される場合と比較して余分な時間を要する。このため、切断針52が頻繁に切り替わると、加工布39に対して切れ目のパターンを形成させ終えるまでに時間がかかる。
【0048】
これに対してCPU61は、テーブル141のうち連続回数の小さい特定針を、抽出された針落ち点QXの直後の針落ち点QXに対応する特定針によって置き換える。例えば、テーブル141のうちQ11〜Q12の場合、対応する特定針3(切断針523)の連続回数が小さい(2回)ので、直後のQ13に対応する特定針4(切断針524)によって、特定針3(切断針523)が置き換えられる。同様にQ37〜Q39(特定針2(切断針522)、連続回数:3回)の場合、直後のQ40に対応する特定針3(切断針523)によって、特定針2(切断針522)が置き換えられる。Q47〜Q48(特定針1(切断針521)、連続回数:2回)の場合、直後のQ49に対応する特定針2(切断針522)によって、特定針1(切断針521)が置き換えられる。以上の修正が実行されることによって、図10のテーブル141は、図11のテーブル141に修正される。図11のテーブル141では、針落ち点Q11〜Q12、Q37〜Q39、および、Q47〜Q48での特定針の連続回数は、特定針を置き換えることによって大きくなっている。これによって、テーブル141に基づいてカットデータが作成され、ミシン1が駆動した場合、加工布39に突き刺す切断針52が頻繁に切り替わることが抑止される。これによって、加工布39に切れ目のパターンを形成し終えるまでに要する時間を短縮することができる。
【0049】
なお上述では、テーブル141のうち連続回数の小さい特定針を、直後の針落ち点QXに対応する特定針によって置き換えていた。これに対してCPU61は、連続回数の小さい特定針を、直前の針落ち点QXに対応する特定針によって置き換えてもよい。
【0050】
図5に示すように、S17で連続回数の小さい特定針が修正された後、CPU61は、テーブル141に記憶された情報を、同一の切断針52ができるだけ連続して使用されるように特定針毎に並べ替える(S19)。以下、図11、および図12のテーブル141を参照しつつ具体的に説明する。
【0051】
CPU61は、はじめに、テーブル141に記憶された情報のうち、特定針1(切断針521)に対応付けられている針落ち点QXをまとめる。図11のテーブル141では、針落ち点Q4〜Q7、Q19〜Q23、Q30〜Q39、および、Q63〜Q67に対して特定針1(切断針521)が対応付けられているので、これらの針落ち点がまとめられる。まとめられた針落ち点QXは、Xの順に並べられる。次にCPU61は、特定針2(切断針522)に対応付けられている針落ち点QXをまとめる。図11のテーブル141では、Q7〜Q11、Q23〜Q27、Q47〜Q52、およびQ67〜Q70に対して特定針2(切断針522)が対応付けられているので、これらの針落ち点がまとめられ、Xの順に並べられる。同様の処理が、特定針3(切断針523)、および特定針4(切断針524)に対応する針落ち点に対しても実行される。特定針毎にまとめられた針落ち点は、特定針1、2、3、4の順でテーブル141(図12参照)に記憶される。これによって、テーブル141に基づいてカットデータが作成され、ミシン1が駆動した場合、加工布39に突き刺す切断針52が切り替わる回数はさらに少なくなる。これによって、切れ目のパターンを加工布39に形成し終えるまでの時間を更に短縮することができる。
【0052】
図5に示すように、S19で針落ち点QXが並べ替えられた後、CPU61は、テーブル141に記憶された情報を、切断針52を切り替える場合の針落ち点の位置の変化ができるだけ小さくなるように並べ替える(S21)。以下、図12、および図13のテーブル141を参照しつつ具体的に説明する。
【0053】
図12のテーブル141に基づいてカットデータが作成され、ミシン1が駆動した場合、加工布39の針落ち点Q67に対して切断針521が突き刺された後、切断針52は切断針521から切断針522に切り替えられる。またテーブル141では、針落ち点Q67の次に針落ち点Q7が並んでいるので、切断針522を針落ち点Q7に突き刺すことが可能なように、加工布39を保持した刺繍枠84は移動する。ここで針落ち点Q67と針落ち点Q7とは離れているので(図7参照)、刺繍枠84の移動量は大きくなる。刺繍枠84の移動量が大きい場合、刺繍枠84の移動が完了するまでに時間を要する。従って、加工布39に切れ目を形成させ終えるまでの時間は、刺繍枠84の移動に要する時間分長くなる。
【0054】
これに対してCPU61は、次のようにして刺繍枠84の移動量を短くし、移動が完了するまでに要する時間を短くする。CPU61は、Q67に続いて切断針522を突き刺す針落ち点QXとして、針落ち点Q67に近接した針落ち点QXが選択されるように、特定針2(切断針522)に対応する針落ち点QXを並べ替える。図12では、針落ち点Q67に対して特定針1(切断針521)とともに特定針2(切断針522)も対応付けられている。従って、針落ち点Q67を先頭に配置し、これに続いて他の針落ち点QXがXの順に並べられる(図13参照)。このようにして切断針522に対応する針落ち点QXが並べられた場合、末尾に針落ち点Q52が位置することになる(図13参照)。従って、切断針522が最後に突き刺される針落ち点QXは、針落ち点Q52ということになる。
【0055】
次にCPU61は、針落ち点Q52に続いて切断針523を突き刺す針落ち点として、針落ち点Q52に近接した針落ち点QXが選択されるように、特定針3(切断針523)に対応する針落ち点QXを並べ替える。図12では、針落ち点Q52に対して特定針2(切断針522)とともに特定針3(切断針523)も対応付けられている。従って、針落ち点Q52を先頭に配置し、これに続いて他の針落ち点QXがXの順に並べられる(図13参照)。同様の処理が、切断針524に対応する針落ち点に対しても実行される。並べられた針落ち点は、特定針1、2、3、4の順でテーブル141(図13参照)に記憶される。これによって、テーブル141に基づいてカットデータが作成され、ミシン1が駆動した場合、切断針52が切り替わる際の刺繍枠84の移動量を小さくすることができる。従って、刺繍枠84の移動が完了するまでに要する時間は短縮されるので、切れ目のパターンを加工布39に形成し終えるまでの時間を更に短縮することができる。
【0056】
図5に示すように、S21で針落ち点QXが並べ替えられ、且つ、共通の針落ち点QXに対して一の特定針が対応付けられるようテーブル141を調整した後、CPU61は、テーブル141に記憶された特定針によって特定される切断針52を、対応する針落ち点QXに順番に突き刺すために必要なカットデータを作成する(S23)。CPU61は、作成したカットデータに基づき、縫針駆動部120、および縫製対象駆動部130を駆動することによって、刺繍枠84に保持された加工布39に対して切断針52を順次突き刺す。これによってCPU61は、加工布39に切れ目のパターンを形成させる(S25)。メイン処理は終了する。
【0057】
図14は、テーブル141を参照して作成されたカットデータに基づき、加工布39に切れ目のパターンを形成させる場合の針落ち点の変化の様子を示している。はじめに、針落ち点Q4〜Q7に対して切断針521(特定針1)が順に突き刺される。針落ち点は、Q7からQ19に移動する(矢印171)。針落ち点Q19〜Q23に対して切断針521(特定針1)が順に突き刺される。針落ち点は、Q23からQ30に移動する(矢印172)。針落ち点Q30〜Q39に対して切断針521(特定針1)が順に突き刺される。針落ち点は、Q39からQ63に移動する(矢印173)。針落ち点Q63〜Q67に対して切断針521(特定針1)が順に突き刺される。
【0058】
切断針521(特定針1)が切断針に522(特定針2)に切り替えられる。針落ち点Q67〜Q0に対して切断針522(特定針2)が順に突き刺される。針落ち点は、Q0からQ7に移動する(矢印174)。針落ち点Q7〜Q11に対して切断針522(特定針2)が順に突き刺される。針落ち点は、Q11からQ23に移動する(矢印175)。針落ち点Q23〜Q27に対して切断針522(特定針2)が順に突き刺される。針落ち点は、Q27からQ47に移動する(矢印176)。針落ち点Q47〜Q52に対して切断針522(特定針2)が順に突き刺される。
【0059】
切断針522(特定針2)が切断針に523(特定針3)に切り替えられる。針落ち点Q52〜Q57に対して切断針523(特定針3)が順に突き刺される。針落ち点は、Q57からQ27に移動する(矢印177)。針落ち点Q27〜Q30に対して切断針523(特定針3)が順に突き刺される。針落ち点は、Q30からQ39に移動する(矢印178)。針落ち点Q39〜Q42に対して切断針523(特定針3)が順に突き刺される。
【0060】
切断針523(特定針3)が切断針に524(特定針4)に切り替えられる。針落ち点Q42〜Q47に対して切断針524(特定針4)が順に突き刺される。針落ち点は、Q47からQ57に移動する(矢印179)。針落ち点Q57〜Q63に対して切断針524(特定針4)が順に突き刺される。針落ち点は、Q63からQ0に移動する(矢印180)。針落ち点Q0〜Q4に対して切断針524(特定針4)が順に突き刺される。針落ち点は、Q4からQ11に移動する(矢印181)。針落ち点Q11〜Q19に対して切断針524(特定針4)が順に突き刺される。
【0061】
以上のように、作成されたカットパターンに基づいて切れ目のパターンが加工布39に形成された場合、切断針52の切り替えの回数は3回に抑制される。従って、切断針52を切り替える場合に要する時間は短縮される。また、針落ち点が隣接する針落ち点以外の位置に移動する場合の回数は11回に抑制され、移動量は小さくなる。さらに、切断針52が他の切断針52に切り替わる場合における刺繍枠84の移動量は最小限に抑制される。従って、刺繍枠84の移動が完了するまでに要する時間は短縮される。
【0062】
以上説明したように、ミシン1は、同一の切断針52を連続して加工布39に突き刺す場合の連続回数が小さい場合、該当する切断針52を置き換える。これによってミシン1は、加工布39に突き刺す切断針52が頻繁に切り替わることを抑止することができる。従ってミシン1は、切断針52を切り替えるために要する時間を短縮することができるので、ユーザが所望するパターンの切れ目を短時間で加工布39に形成させることができる。
【0063】
なお、S11の処理を行うCPU61が本発明の「取得手段」に相当する。S13の処理を行うCPU61が本発明の「第一特定手段」に相当する。S15の処理を行うCPU61が本発明の「第二特定手段」「第一制御手段」に相当する。S17の処理を行うCPU61が本発明の「第二制御手段」に相当する。S19、S21、S23の処理を行うCPU61が、本発明のデータ作成装置における「作成手段」に相当する。S19、S21、S23、S25の処理を行うCPU61が、本発明のミシンにおける「作成手段」に相当する。S11の処理が本発明の「取得ステップ」に相当する。S13の処理が本発明の「第一特定ステップ」に相当する。S15の処理が本発明の「第二特定ステップ」「第一制御ステップ」に相当する。S17の処理が本発明の「第二制御ステップ」に相当する。S19、S21、S23の処理が本発明の「作成ステップ」に相当する。
【0064】
なお本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。上述において、CPU61は、S23において作成したカットデータに基づき、加工布39に切れ目のパターンを形成させていた。例えばカットデータは、外部機器において作成されてもよい。外部機器として、例えば周知のPC(Personal computer)が使用されてもよい。ミシン1は、外部機器において作成されたカットデータを取得してもよい。例えばPCは、作成したカットデータをメモリーカードに記憶してもよい。ミシン1は、図示しないカードスロットを備え、カットデータが記憶されたメモリーカードがカードスロットに挿入された場合に、メモリーカードに記憶されたカットデータを読み出すことによって取得してもよい。ミシン1は、取得したカットデータに基づき、縫針駆動部120、および縫製対象駆動部130を駆動することによって、加工布39に切れ目のパターンを形成させてもよい。この場合において、外部機器が本発明の「カットデータ作成装置」に相当する。
【0065】
ミシン1に装着される切断針52の本数は、上述の実施形態のように4本に限定されず、他の本数であってもよい。上述のS15における切断針の特定方法は、他の方法であってもよい。例えば、針落ち点QXの位置における切れ目のパターンの接線を算出し、算出した接線の角度に基づいて、切断針52を特定してもよい。上述のS17(図5参照)において用いた所定の閾値は、4より小さくてもよいし、4より大きくしてもよい。閾値が小さい場合は、より綺麗な切れ目が形成できるが、切れ目の形成に時間がかかる。閾値が大きい場合は、切れ目は短時間で形成できるが、切れ目の綺麗さは若干劣る。上述のS19(図5参照)において、CPU61は、共通の特定針に対応する針落ち点QXをまとめることによって、テーブル141に記憶された情報を並べ替えていた。また上述のS21(図5参照)において、CPU61は、針落ち点QXの変化が小さくなるように、テーブル141に記憶された情報を並べ替えていた。これに対してCPU61は、S19に相当する情報の並べ替えを行わなくてもよい。この場合、針落ち点QXはQ0、Q1、・・・の順に移動することになるので、刺繍枠84の移動量を最小限にすることができる。これによって、刺繍枠84の移動に要する時間を短縮することができるので、切れ目のパターンを形成させ終えるまでの時間を短縮することができる。また、S21に相当する情報の並べ替えを行わなくてもよい。
【0066】
上述において、テーブル141に記憶された情報を読み出す順番を示すインデックス情報を対応付けてもよい。ミシン1は、テーブル141に記憶された情報を並べ替える代わりに、対応付けたインデックスを修正することによって、針落ち点の順場を特定してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ミシン
8 タッチパネル
31 針棒
39 加工布
51 縫針
52、521、522、523、524 切断針
60 制御部
61 CPU
63 RAM
84 刺繍枠
101 パターン
120 縫針駆動部
130 縫製対象駆動部
141 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多針ミシンが備える複数の針棒に、先端に刃を備えた複数の切断針を、刃の方向が其々異なるように装着し、前記針棒を駆動して前記切断針を上下動させ、加工布に前記切断針を繰り返し突き刺すことによって前記加工布に切れ目を形成するために使用されるカットデータを作成するカットデータ作成装置であって、
前記切れ目のパターンを示すパターン情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターン上の所定の位置を、針落ち点として特定する第一特定手段と、
前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点に突き刺す前記切断針を、前記複数の切断針から特定する第二特定手段と、
前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点を示す情報と、前記第二特定手段によって特定された前記切断針である特定針を示す情報とを対応付け、記憶手段に記憶する第一制御手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターンに沿って前記特定針を順番に選択した場合に、同一の前記特定針が連続して選択される場合の連続回数を特定し、前記連続回数が所定の閾値よりも小さい場合に、前記連続回数が小さい前記特定針を示す情報を、前記連続回数が小さい前記特定針の直前または直後に選択される前記特定針を示す情報で置き換え、前記記憶手段に記憶する第二制御手段と、
前記第二制御手段によって前記特定針を示す情報が置き換えられた状態の前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記パターン情報によって示される前記パターン上の前記針落ち点に、対応する前記特定針を、前記パターンに沿って順番に突き刺すための前記カットデータを作成する作成手段と
を備えたことを特徴とするカットデータ作成装置。
【請求項2】
前記作成手段は、
前記記憶手段に記憶された情報に基づき、共通の前記特定針に対応する前記針落ち点をまとめ、まとめた前記針落ち点の其々に前記共通の特定針を連続して突き刺す処理を、前記特定針の数分繰り返すための前記カットデータを作成することを特徴とする請求項1に記載のカットデータ作成装置。
【請求項3】
前記作成手段は、
一の前記特定針を前記針落ち点に順番に突き刺す処理が終了し、他の前記特定針に切り替え、前記他の特定針を前記針落ち点に順番に突き刺す処理を開始する場合に、前記一の特定針を最後に突き刺した前記針落ち点と、前記他の特定針を最初に突き刺す前記針落ち点とが近接するように、前記他の特定針を最初に突き刺す前記針落ち点を決定し、決定した前記針落ち点に前記他の特定針を最初に突き刺すための前記カットデータを作成することを特徴とする請求項2に記載のカットデータ作成装置。
【請求項4】
前記第二特定手段は、
前記針落ち点と、前記針落ち点に隣接する他の前記針落ち点とを結ぶ線分の延びる方向に対応する前記切断針を、前記針落ち点に突き刺す前記特定針として特定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカットデータ作成装置。
【請求項5】
多針ミシンが備える複数の針棒に、先端に刃を備えた複数の切断針を、刃の方向が其々異なるように装着し、前記針棒を駆動して前記切断針を上下動させ、加工布に前記切断針を繰り返し突き刺すことによって前記加工布に切れ目を形成させるために使用されるカットデータを作成するカットデータ作成プログラムであって、
前記切れ目のパターンを示すパターン情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記パターン情報によって示される前記パターン上の所定の位置を、針落ち点として特定する第一特定ステップと、
前記第一特定ステップによって特定された前記針落ち点に突き刺す前記切断針を、前記複数の切断針から特定する第二特定ステップと、
前記第一特定ステップによって特定された前記針落ち点を示す情報と、前記第二特定ステップによって特定された前記切断針である特定針を示す情報とを対応付け、記憶手段に記憶する第一制御ステップと、
前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記取得ステップによって取得された前記パターン情報によって示される前記パターンに沿って前記特定針を順番に選択した場合に、同一の前記特定針が連続して選択される場合の連続回数を特定し、前記連続回数が所定の閾値よりも小さい場合に、前記連続回数が小さい前記特定針を示す情報を、前記連続回数が小さい前記特定針の直前または直後に選択される前記特定針を示す情報で置き換え、前記記憶手段に記憶する第二制御ステップと、
前記第二制御ステップによって前記特定針を示す情報が置き換えられた前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記パターン情報によって示される前記パターン上の前記針落ち点に、対応する前記特定針を、前記パターンに沿って順番に突き刺すための前記カットデータを作成する作成ステップと
をコンピュータに実行させるためのカットデータ作成プログラム。
【請求項6】
先端に刃を備えた複数の切断針を、刃の方向が其々異なるように複数の針棒に装着し、前記針棒を駆動して前記切断針を上下動させ、加工布に前記切断針を繰り返し突き刺すことによって前記加工布に切れ目を形成させるミシンであって、
前記切れ目のパターンを示すパターン情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターン上の所定の位置を、針落ち点として特定する第一特定手段と、
前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点に突き刺す前記切断針を、前記複数の切断針から特定する第二特定手段と、
前記第一特定手段によって特定された前記針落ち点を示す情報と、前記第二特定手段によって特定された前記切断針である特定針を示す情報とを対応付け、記憶手段に記憶する第一制御手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記取得手段によって取得された前記パターン情報によって示される前記パターンに沿って前記特定針を順番に選択した場合に、同一の前記特定針が連続して選択される場合の連続回数を特定し、前記連続回数が所定の閾値よりも小さい場合に、前記連続回数が小さい前記特定針を示す情報を、前記連続回数が小さい前記特定針の直前または直後に選択される前記特定針を示す情報で置き換え、前記記憶手段に記憶する第二制御手段と、
前記第二制御手段によって前記特定針が置き換えられた前記記憶手段に記憶された情報に基づき、前記パターン情報によって示される前記パターン上の前記針落ち点に、対応する前記特定針を、前記パターンに沿って順番に突き刺すことによって、前記加工布に前記切れ目を形成させる作成手段と
を備えたことを特徴とするミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−100620(P2013−100620A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245188(P2011−245188)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】