説明

カップラー

【課題】液漏れが生じず、かつ連結操作の容易なカップラーを提供する。
【解決手段】開口部が軸線方向の離れて位置する二つの流路10,13が固定軸5に形成され、その固定軸5の外周面に密着する二つのOリング17,19が固定軸5に対して後退移動するピストン14の内周面に保持され、ソケット2をプラグ1に連結することによりピストン14がソケット2に押されて後退し、各流路10,13が連通する。その第1流路10に連通する流路42,43が形成された弁体33が固定軸5に押されて後退することにより、その流路43の開口端がOリング35を越えてシリンダー30の内部に開口する。第1流路10と弁体33の流路42とは、固定軸5の先端部と弁体33の先端部が当接していることにより互いに連通しており、その結果、プラグ1とソケット2とが連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、供給側と受容側とのコネクターを連結することにより、少なくとも一方のコネクターに設けられた弁体が開いてそれぞれのコネクターの流路を連通させるように構成されたカップラーに関し、特にメタノール燃料電池のカートリッジ容器と燃料電池本体との間に設けられるカップラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体燃料をエネルギー源とする機器においては、従来、機器の運転や使用に伴って減少する燃料などの液体を補充する必要がある場合も多く、機器本体側に設けた容器にカートリッジ容器を連結して燃料などの液体を移して供給したり、容器本体側の容器と別の容器を付け替えて供給することが行われている。
【0003】
このような容器同士の連結や容器の付け替えを簡単にするため着脱可能な種々のカップラーが用いられている。例えば、特許文献1に記載された装置は、ソケットとプラグとのそれぞれに弁体が設けられており、それらの弁体は、その背後(軸線方向での後側)に配置されたスプリングによってハウジングの内壁をガイドにして弁座に対して押圧されるように構成され、かつその弁座に接触する部分より先端側に突出した操作部などの突出部を備えている。したがって、ソケットとプラグとを嵌合させると、それぞれの弁体における突出部が当接した後、スプリングの弾性力に抗してハウジングの内壁をガイドにして弁体が後退して弁座から離れ、開弁する。これとは反対に、プラグをソケットから抜き取る場合、両者の嵌合深さが次第に浅くなるのに従って、それぞれの弁体がスプリングに押されてハウジングの内壁をガイドにしてそれぞれの弁座に向けて移動し、弁座に接触して閉弁するのと同時に各弁体における突出部同士の接触が解除され、かつプラグとソケットとの嵌合が外れる。
【0004】
また、特許文献2には、プラグとソケットとのそれぞれに、互いに当接させられる円筒状の部材と、その円筒状部材の中心部に配置されかつ互いに当接される軸状の部材とを設け、それぞれの円筒状部材と軸状部材との先端部に弁座およびその弁座に密着させられる弁体を形成し、一方の円筒状部材は他方の円筒状部材に押されて弾性部材を圧縮しつつ後退し、その後退移動可能な円筒状部材と共に弁機構を構成している一方の軸状部材は後退移動しないように固定した構成とされ、これとは反対に前記後退移動可能な円筒状部材を押圧する他方の円筒状部材は固定された構成とされ、かつこの固定された円筒状部材と共に弁機構を構成する他方の軸状部材は、前記固定された一方の軸状部材に押圧されて弾性部材を圧縮しつつ後退移動するように構成された連結装置が記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、中心軸線に沿って貫通孔が形成されたピン部材の後端部に、Oリングが嵌合されることにより前記貫通孔を流路に対して封止された蓋状部材が取り付けられ、そのピン部材およびこれと一体の蓋状部材を圧縮スプリングによって先端側に押圧した一対のバルブを有するカップラー構造が記載されている。この特許文献3に記載された構成では、それぞれのピン部材の先端部同士を当接させるように連結することにより、ピン部材およびこれと一体の蓋状部材が圧縮コイルスプリングを圧縮しつつ後退移動し、その結果、蓋状部材の外周面に形成されたスリットがOリングを越えて移動し、そのスリットによってOリングを境にした上下両側の流路もしくは空間部を連通させ、開弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−057007号公報
【特許文献2】特開2003−172487号公報
【特許文献3】特開2009−222125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、特許文献1に記載された装置では、各弁体がそれぞれのハウジングの内壁をガイドにして開閉方向に移動するため、弁体の外径とハウジングの内径の嵌め合いの調節が必要で、嵌め合いが弱いとスプリング側にメタノールが侵入する。このようにして侵入したメタノールが金属と接触すると、溶出した金属イオンが、アノード側で発生した水素イオン(プロトン)が移動するはずの場所を先に占有してしまって水素イオンの移動量を減少させ、アノード側反応速度を低下させ、その結果、燃料電池としての機能を低下させてしまう。
【0008】
また、逆に嵌め合いが強すぎると、弁体の開方向の移動は、嵌合連結の人力で移動は可能だが、嵌合を解除したとき、スプリングの弾性力では弁体が初期位置に復帰しなく、流路が開いた状態でカ一トリッジ容器が取り外されてしまうという課題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載されている装置では、ソケットにおける弁体を押圧するスプリングの弾性力とプラグにおける弁体を押圧するスプリングの弾性力との強弱の関係に応じて、開弁する順序を設定している。具体的には、容器本体側の弁体を押圧しているスプリングの弾性力を相対的に弱くしてその弁体を先に開弁させ、かつ遅れてメタノール容器側が開弁するように構成している。そのため、ソケット側のスプリングとプラグ側のスプリングとのいずれか一方の弾性力を調整する場合、弾性力の強弱関係が反転しないように、またその弾性力の差、もしくは比が変化しないように他方のスプリングの弾性力をも調整する必要があり、弾性力の調整が面倒であるばかりか、スプリングもしくはその弾性力の選択の自由度が制限されるなどの課題がある。
【0010】
これに対して特許文献2に記載された連結装置は、プラグおよびソケットとの一方における固定された部材によって他方の可動部材を押圧することにより開弁するように構成されているので、プラグおよびソケットのそれぞれにおけるスプリングの弾性力を調整する必要は特にはない。しかしながら、特許文献2に記載された構成では、弁体を弁座に押し付けて閉弁するように構成されているので、確実に閉止するためにはスプリングの弾性力をある程度強くする必要があり、そのため連結操作に大きい力を必要としたり、弁座の摩耗が進行しやすいなど耐久性が不十分になる可能性がある。また、プラグおよびソケットのそれぞれにおける可動部材と固定部材とを互いに当接させて更に押圧すると、プラグおよびソケットのそれぞれが同時に開弁してしまい、燃料容器側と機器本体側との弁の開閉に順序を与えることが困難である。
【0011】
さらにまた、特許文献3に記載されたカップラー構造では、弁体を弁座に押し付けて閉弁する構成ではないので、閉弁のための弾性力を強くする必要が特にはなく、したがって弁座の摩耗などの課題は特には生じないが、ピン部材同士を当接させて、それぞれのピン部材を押圧している弾性力に応じていずれか一方のピン部材が後退した後に他方のピン部材が後退して開弁するように構成されているから、それぞれのピン部材を押圧している弾性力を調整する必要があるなど、上記の特許文献1に記載された装置における課題と同様の課題がある。そして、この特許文献3に記載されたカップラー構造や上記の特許文献1に記載された装置では、軸状の弁体もしくはピン部材の後端部が弁として機能するように構成されているので、閉弁した後にプラグやソケットの流路内に残留する液量が多くなり、プラグやソケットの連結を解除した際に液だれが生じる可能性がある。
【0012】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、耐久性に優れ、また連結やその解除が容易であり、さらには液だれなどの生じないカップラーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、供給側コネクターと受容側コネクターとを相互に嵌合させることにより開弁して供給側コネクターに形成されている供給側流路と受容側コネクターに形成されている受容側流路とを連通させるカップラーにおいて、前記供給側コネクターと受容側コネクターとのいずれか一方のコネクターは、先端が開口した接続用円筒部と、その接続用円筒部の後方に設けられたシリンダーと、そのシリンダーの中心軸線に沿って往復動可能に設けられるとともに後退移動することにより開弁する軸状の弁体と、その弁体の先端面と前記弁体の後端側の部分の外周面とに開口するように前記弁体を貫通して形成された流路と、前記弁体の外周面に液密状態に密着し前記弁体が弾性力によって押圧されて前進端に位置する状態では前記流路における前記後端側の外周面に開口する開口部を前記シリンダーの内部に対して遮蔽しかつ前記弁体が後退移動した場合に前記開口部をシリンダーの内部に開口させるシールリングと、前記弁体を前記接続用円筒部の開口端側に押圧する前記弾性力を発生する弾性部材とを備え、前記供給側コネクターと受容側コネクターとの他方のコネクターは、前記一方のコネクターを接続するように開口したハウジングと、前記接続用円筒部に挿入されて前記弁体を軸線方向に押圧するようにハウジングの内部に設けられた固定軸と、前記弁体の先端面に当接される前記固定軸の先端面と前記固定軸の軸線方向での中間部の外周面とに開口するように前記固定軸を貫通して形成された第1流路と、その第1流路よりも前記固定軸の軸線方向で後端側の外周面に開口するとともに前記ハウジングの内部に連通するように前記固定軸を貫通して形成された第2流路と、前記固定軸と同一軸線上に設けられ前記接続用円筒部の先端部に当接して押圧されることにより前記ハウジングの内部に後退移動させられて前記固定軸に形成された流路を前記ハウジングの内外を連通させるように開口させるピストンと、前記第1流路の前記固定軸の外周面における開口端より前記固定軸の先端側の外周面に密着するように前記ピストンの内周面に取り付けられて前記第1流路および第2流路の前記固定軸の外周面における開口端を前記ハウジングの外部に対して遮蔽する第1シールリングと、前記ピストンが前進端に位置する状態では前記第1流路および第2流路の前記固定軸の外周面における開口端の間に位置してこれらの開口端の連通を阻止し、かつ前記ピストンと共に後退移動することにより前記第2流路の前記固定軸の外周面における開口端より固定軸の後端側に位置して前記第1流路および第2流路の前記固定軸の外周面における開口端同士を連通させられる第2シールリングと、前記ピストンを前記ハウジングの開口端側に押圧する他の弾性部材とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記弁体の先端面と前記固定軸の先端面との間に、これらの先端面同士の間をシールするガスケットが配置され、そのガスケットには、前記弁体に形成されている流路と前記固定軸に形成されている第1流路とを連通させる貫通孔が形成されていることを特徴とするカップラーである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記ガスケットの先端面と該先端面に当接される前記弁体の先端面もしくは前記弁体の先端面とのいずれか一方が球面状に窪んだ凹曲面とされ、かつ他方がその凹曲面に一致する球面状に突出した凸曲面とされていることを特徴とするカップラーである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記ハウジングの先端部の内周面に軸線方向に沿う縦溝が形成され、かつそのハウジングの先端部に挿入される前記接続用円筒部の先端部の外周面に、回転方向での位置が前記縦溝に一致することにより前記縦溝に噛み合う凸部が形成され、前記接続用円筒部の先端部を前記ハウジングの先端部に挿入して前記凸部が前記縦溝を通過した状態で、前記接続用円筒部と前記ハウジングとを相対的に回転させて前記凸部を前記ハウジングに係合させて抜け止めするように構成されていることを特徴とするカップラーである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、供給側コネクターと受容側コネクターとを相互に嵌合させると、そのいずれか一方に設けられている接続用円筒部の外側に、他方に設けられているコネクターリングが入り込み、同時にその接続用円筒部の内部に固定軸が入り込む。その状態で、より深く入り込むと固定軸の先端面が弁体の先端面に当接して、固定軸に形成されている第1流路と弁体に形成されている流路とが連通する。この状態では、弁体が軸線方向に後退していないので、その流路はシリンダーの内部に対して連通しておらず、また固定軸に形成されている第1流路は第2流路に対して遮断されている。すなわち各コネクターは閉弁状態になっていて、それぞれの流路は連通していない。各コネクターを更に深く嵌合させると、弁体が後退移動することにより、その流路の開口端がシールリングを越えた位置に至り、シリンダーの内部に開口する。それと並行して、ピストンが接続用円筒部に押されて後退するので、第2シールリングが、第1流路および第2流路の固定軸の外周面における開口端を越えて後退し、その結果、これらの開口端が第1シールリングと第2シールリングとの間に併存することにより両者が連通する。すなわち、第1流路および第2流路が連通し、他方のコネクターは開弁状態となる。こうして前記弁体における流路と固定軸における第1流路および第2流路とが連通して、各コネクターが連通した状態になり、供給側から受容側に液体などの内容物が供給される。このように、弁体やピストンの位置に応じて開弁状態あるいは閉弁状態に切り替えることができるので、シールリングに掛かる荷重を特に大きくする必要がなく、したがって全体としての耐久性を向上させることができ、また弾性力を特には大きくする必要がないことにより、連結操作あるいは連結の解除操作を容易に行うことができる。また、弁体や固定軸あるいは接続用円筒部さらにはピスントの先端部の位置あるいはこれらの部材の長さを適宜に設定することにより、開弁の順序あるいは閉弁の順序を容易に設定することができる。言い換えれば、弾性力の調整を必要としないので、製造や調整が容易である。
【0018】
請求項2あるいは3の発明によれば、前記弁体と固定軸とを互いに当接させた状態では、両者の間が液密状態に維持されるので、それぞれに形成されている流路および第1流路が各コネクターの内部が外部に対して遮蔽され、液漏れを確実に防止することができる。
【0019】
さらに、請求項4の発明によれば、前記凸部が相手方のハウジングに係合するので、各コネクターを接続した状態を容易に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係るカップラーの一例を示す断面図である。
【図2】そのプラグとソケットとの連結初期の状態を示す断面図である。
【図3】そのプラグとソケットとを更に深く嵌合させた状態の断面図である。
【図4】プラグとソケットとの連結が完了した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。図1はこの発明に係るカップラーの一例を示す断面図であり、ここに示すカップラーは、一対のコネクター1,2を備えている。一方のコネクター1はこの発明における供給側コネクターに相当し、図示しない液体容器に取り付けられ、プラグと称することもできる。他方のコネクター2はこの発明における受容側コネクターに相当し、燃料電池などの図示しない機器本体に取り付けられ、ソケットと称することもできる。
【0022】
一方のコネクター(以下、仮にプラグと称す)1の構成について説明すると、先端部が開口したハウジング4を備えており、このハウジング4は円筒状の部材であって以下に述べる外装体としても機能している。このハウジング4の中心部には固定軸(以下、仮にバルブシャフトと記す)5が取り付けられている。すなわち、前記ハウジング4における開口端とは反対側の部分には、中心部に貫通孔が形成されたボス部6が設けられており、バルブシャフト5の一方の端部(後端部)がそのボス部6を貫通させられてボス部6に取り付けられている。
【0023】
バルブシャフト5の先端面(図での上端面)から軸線方向での中間部の所定の箇所まで、中心軸線に沿って流路7が形成され、その流路7の閉じた端部に直交する流路8がバルブシャフト5の半径方向に貫通して形成されている。これらの流路7,8がこの発明における第1流路10であり、したがってこの第1流路10はバルブシャフト5の先端面とバルブシャフト5の軸線方向での中間部の外周面とに開口するようにバルブシャフト5を貫通して形成されている。また、この第1流路10よりもバルブシャフト5の軸線方向で後端側に箇所、より具体的には、前記半径方向に向けた流路8から所定寸法後端側に離れた箇所に、流路8とほぼ平行に流路11が形成され、その流路11はバルブシャフト5の外周面に開口している。そして、バルブシャフト5の後端面(図での下端面)から流路11に至るように、中心軸線に沿って流路12が形成されている。これらの流路11,12がこの発明における第2流路13であり、したがってこの第2流路13はバルブシャフト5の後端面とバルブシャフト5の軸線方向での中間部の外周面とに開口するようにバルブシャフト5を貫通して形成されている。
【0024】
前記ハウジング4のうち前記ボス部6よりより上端側(先端部側)の内径は、バルブシャフト5の外径より十分大きくなっており、この内径の大きい部分に、ピストン14が収容されている。このピストン14は、ハウジング4の内周面に沿ってその軸線方向に前後動できる程度の外径で、かつバルブシャフト5の外径より十分大きい内径の円筒状の部材であり、その長さは、前記ハウジング4における内径の大きい部分の長さより十分短く、したがってピストン14は、ハウジング4の内部を軸線方向に所定の寸法の間、前後動できるようになっている。このピストン14をハウジング4の開口端側に押圧する付勢手段が設けられている。図に示す例では、この付勢手段は弾性体によって構成され、その弾性体の一例としてコイルスプリング15が採用されている。前述したようにボス部6を設けたことによりハウジング4の開口端側を向いた端面が形成され、その端面とピストン14の端部との間にコイルスプリング15が圧縮状態で挿入され、その結果、ピストン14はコイルスプリング15によって図の上側すなわちハウジング4の開口端側に押圧されている。
【0025】
前記ピストン14の前記コイルスプリング15が接触している端部とは反対側の端部(図での上端部)に、内径が前記バルブシャフト5の外径程度のフランジ部(もしくは突条)16が形成されている。ピストン14の内部には、そのフランジ部16によって抜け止めした状態にシールリング(具体的にはOリング)17が配置されており、このOリング17はバルブシャフト5の外周面とピストン14の内周面とに密着することにより、これらバルブシャフト5とピストン14との間を液密状態に封止している。このOリング17に続けて、第1のカラー18と、第2のシールリング(具体的にはOリング)19と、第2のカラー20と、第3のシールリング(具体的にはOリング)21と、ブッシュ22とが、ピストン14の軸線方向に順に並べて配置されている。これら第2および第3のOリング19,21は、いずれもバルブシャフト5の外周面とピストン14の内周面とに密着することにより、これらバルブシャフト5とピストン14との間を液密状態に封止している。これに対して各カラー18,20およびブッシュ22は、所定の長さの円筒状の部材であり、その内径はバルブシャフト5の外径よりも僅かに大きく、したがってそれぞれの内周面とバルブシャフト5の外周面との間に僅かな隙間が形成され、その隙間が流路となっている。そして、第1および第2のカラー18,20は各Oリング17,19,21同士の間隔を維持しており、またブッシュ22はピストン14の後端側の開口部に嵌め込まれて固定されることにより、他のカラー18,20および各Oリング17,19,21をピストン14の内部に固定している。
【0026】
なお、第1のOリング17の位置は、ピストン14と共に最も後退した場合であっても、バルブシャフト5を半径方向に貫通して第1の流路10の一部を形成している前記流路8よりも先端部側にあってピストン14の内部を外部に対して封止する位置である。また、第1のカラー18の長さは、第1の流路10と第2の流路13とのそれぞれ一部を形成している互いに平行な前記流路8,12のバルブシャフト5の外周面での開口端の間隔より長くなっており、したがって第2のOリング19の位置は、ピストン14が最も後退した状態で、それらの流路8,12の開口端が、第1のリング17と第2のOリング19との間にあって互いに連通する位置に設定されている。
【0027】
さらに、ハウジング4の先端部(図での上端部)の内周側には、コネクターリング23が取り付けられている。このコネクターリング23は、ピストン14の前進端を決めている部材であって、ピストン14の先端面を当接させるようにハウジング4の先端内周面に固定されている。その固定のための手段は、それぞれにネジを形成してコネクターリング23をねじ込む構成やしまり嵌めする構造など一般に知られている手段であってよく、図に示す例では、ハウジング4の内周面に凹部を形成し、コネクターリング23の外周面に形成した突部をその凹部に嵌め込んでコネクターリング23をハウジング4に取り付けている。なお、コネクターリング23は、前述した他方のコネクター(ソケット)2を図1の下側に示す一方のコネクター(プラグ)1に連結するためのものであり、その連結のためにコネクターリング23の内周面には、軸線方向に沿った縦溝24が形成されている。
【0028】
前記ピストン14がコイルスプリング15に押されてコネクターリング23に当接している状態では、バルブシャフト5の先端部がピストン14から僅かに突出しており、その先端部にガスケット25が取り付けられている。このガスケット25は、前述した第1流路10を外部に対してシールするためのものであって、第1流路10に連通する貫通孔26が形成されるとともに、その端面はシール性を良好にするために、球面状の凹曲面に形成されている。
【0029】
つぎに、受容側コネクター(以下、仮にソケットと記す。)2の構成について説明する。ソケット2は、上述したピストン14をその軸線方向に押して後退させるように構成されており、したがってソケット2は、上述したハウジング4の内部に挿入される接続用円筒部27を備えている。この接続用円筒部27の先端部(図での下端部)は、前述したハウジング4の内部に挿入される接続用先端部28となっており、その外径は前述したコネクターリング23の内径とほぼ等しく、その外周面にはコネクターリング23に形成されている縦溝24に噛み合う軸線方向に沿った凸部29が形成されている。
【0030】
ソケット2における上記の接続用先端部28より後方側(図での上側)の部分は、接続用先端部28より外径および内径が大きいシリンダー30となっており、そのシリンダー30の側面には、機器本体あるいはカートリッジ(それぞれ図示せず)と接続するためのノズル部31が突出した状態に形成され、そのノズル部31の内部には、ノズル部31の先端から前記シリンダー30の内面に至る流路32が形成されている。
【0031】
上記の接続用円筒部27の内部には、その接続用円筒部27の軸線方向に沿って前後動する弁体33が収容されている。この弁体33は、前述した接続用先端部28の内径より小さい外径の軸状の部材であって、その後端部には、シリンダー30の内径よりわずかに小さい外径の大径部(もしくはフランジ部)34が形成されている。また、弁体33の外周面とシリンダー30の内周面との間を液密状態に封止する二本のシールリングすなわちOリング35,35Aが設けられている。前述したシリンダー30の内周面のうち前記流路32が開口している箇所には、カラー36が配置されており、そのカラー36を挟んだ軸線方向での両側にOリング35,35Aが配置されている。これらのOリング35,35Aは、弁体33の外周面とシリンダー30の内周面とに密着していて、これらの間を液密状態に維持している。なお、カラー36の内径は、弁体33の外径より大きく、またカラー36の外周面から内周面に貫通する貫通孔がカラー36に形成されており、したがって前記流路32はその貫通孔を介してカラー36の内周面、言い換えれば弁体33の外周面に連通している。
【0032】
また一方、シリンダー30の内部には、上記のカラー36との間に他方のOリング35を挟み込んだ状態でブッシュ37が嵌め込まれかつ固定されている。このブッシュ37は、上記の各Oリング35,35Aおよびカラー36をシリンダー30の内部に固定するとともに、弁体33の前進端位置(図では下端位置)を規定するためのものであって、前記弁体33の外径より大きくかつ前記大径部34の外径より小さい内径の環状の部材であり、シリンダー30の内部に挿入された状態でシリンダー30に対して固定されている。
【0033】
そして、接続用円筒部27の後端部(図での上端部)にカバーキャップ38が取り付けられており、そのカバーキャップ38と弁体33の後端面すなわち前記大径部34の端面39との間に、弁体33を前記接続用先端部28側に押圧する付勢手段が設けられている。図に示す例では、この付勢手段は弾性体によって構成され、その弾性体の一例としてコイルスプリング40が採用されている。
【0034】
さらに、弁体33のうち前記接続用先端部28の内部に延びている部分はいわゆる先端軸部41であって、その先端軸部41には先端面から先端軸部41の長さと同程度の長さの流路42が軸線方向に沿って形成されている。またこの流路42の端部で流路42に直交する流路43が先端軸部41に形成されており、この流路43は先端軸部41の外周面に開口している。この流路43の開口端の位置は、弁体33が図1に示す下端にまで押し下げられている状態で、カラー36に対して接続用先端部28側に配置されている前記Oリング35Aよりも先端軸部41の先端面側となるように構成されている。すなわち、弁体33が図1に示す下端にまで押し下げられている状態では、先端軸部41における流路42,43と前記ノズル部31における流路32とを、Oリング35Aによって遮断するように構成されている。また、先端軸部41の先端面は、前述したプラグ1におけるバルブシャフト5の先端部に取り付けられているガスケット25の凹曲面に一致する球面状の凸曲面に形成されており、流路42はその凸曲面の中心部に開口している。そして、先端軸部41の先端面は、弁体33が図1に示す下端にまで押し下げられている状態であっても、接続用先端部28の内部に後退して位置するように構成されている。
【0035】
つぎに上述した図1に示す構成のカップラーの作用について説明する。なお、前述した各構成部材の軸線方向の長さは、以下に説明する作用が生じる長さにそれぞれ設定されている。図1は、プラグ1とソケット2とが離れていて両者が連結されていない状態であり、この状態では、プラグ1におけるバルブシャフト5の先端部はハウジング4の先端開口部側に露出した状態になっている。しかしながら、可動部材であるピストン14の先端面はバルブシャフト5とコネクターリング23とでリング状に開放しているが、バルブシャフト5の外周面とコネクターリング23の内周面とで形成されるリング状の隙間のリング幅が小さいため、プラグ1あるいはこれが取り付けられている容器を不用意に取り扱ったり、小児の悪戯などによって細いピンや軸状の部材が差し込まれても、ピストン14が直ちに押されることがない。すなわち、不用意に液が漏れ出すことが防止もしくは抑制される。
【0036】
カップラーを連結するためには、プラグ1とソケット2とを相互に軸線方向に接近させて嵌合させる。図2にその初期状態を示してあり、ソケット2の接続用先端部28の凸部29がプラグ1におけるコネクターリング23の縦溝24を案内にしてハウジング4内に挿入される。そして、バルブシャフト5の先端部に設けてあるガスケット25に弁体33の先端部が当接する。この状態ではバルブシャフト5の第1流路10と弁体33の流路42とが互いに連通し、かつその連通部分は、弁体26がガスケット25に球状の曲面で密着しているので、外部に対して液密状態にシールされている。すなわち液漏れが防止されている。この図2に示す初期状態では、接続用先端部28とピストン14とは当接していない。
【0037】
図2の状態からプラグ1およびソケット2を更に深く嵌合させると、プラグ1に設けられているバルブシャフト5が、ソケット2側の弁体33に当接していて、その弁体33の後方にあるコイルスプリング40を圧縮しつつ弁体33を押圧して軸線方向に後退移動させる。それに伴って接続用円筒部27がプラグ1側に前進するので、その接続用先端部28の先端面が、プラグ1におけるピストン14の先端面に当接する。ソケット2をプラグ1に対して更に押し込むと、ソケット2における弁体33が更に後退移動し、かつプラグ1におけるピストン14がソケット2における接続用先端部28に押されて、コイルスプリング15を圧縮しつつ後退移動する。
【0038】
そのため、先ず、弁体33の中心軸線に直交する流路43の開口端が、接続用先端部28側(図の下側)に配置されているOリング35Aを乗越えてカラー36の内周側に移動し、その流路43がカラー36に半径方向に向けて形成されている貫通孔を介して、ノズル部31における流路32に連通する。すなわち、ソケット2側の弁機構が開弁状態となる。その状態を図3に示してある。弁体33をこのように開弁させるための荷重は、弁体33の先端軸部41にバルブシャフト5の先端部が当接することにより作用し、弁体33のOリング35,35Aには荷重が作用しないのでOリング35,35Aの損傷や早期劣化などの不都合を回避することができる。そして、弁体33を開弁させる荷重は、プラグ1におけるいわゆる構造部分であるバルブシャフト5から作用するので、プラグ1におけるコイルスプリング15の弾性力には依存しない。
【0039】
ついで、プラグ1におけるピストン14がソケット2のいわゆる構造部分である接続用先端部28に押されて後退する。言い換えれば、流路11,12が形成されているバルブシャフト5が、ピストン14に対してその先端側に相対的に伸び出してくる。そのため、バルブシャフト5に形成されている第1流路10および第2流路13のバルブシャフト5の外周面における各開口端が、ピストン14の先端部側に相対的に移動するが、図3に示す状態の時点では、これらの開口端は、第2のOリング19を挟んだ両側に分かれて位置し、したがって第1流路10と第2流路13とは液密状態に遮断されていて連通していない。
【0040】
ソケット2における接続用先端部28に形成されている前記凸部29が、プラグ1の先端部に取り付けたコネクターリング23の内周面に形成されている縦溝24を通過してハウジング4の内部にまで至る程度にソケット2をプラグ1に挿入すると、ソケット2における弁体33とプラグ1におけるピストン14とが更に後退する。その状態を図4に示してある。この状態では、弁体33の流路42,43がノズル部31における流路32に連通した状態を維持する。これに対してプラグ1においては、ピストン14が更に後退することにより、第1流路10および第2流路13のバルブシャフト5の外周面における各開口端が、第1のOリング7と第2のOリング19との間に位置し、バルブシャフト5の外周面とピストン14の内周面との間に形成されている隙間である流路を介して連通する。すなわち、ハウジング4の内部に連通している第2流路13と第1流路と10とが連通し、その第1流路10に連通している弁体33の流路42,43がノズル部31における流路32に連通するから、結局、プラグ1とソケット2とが連通する。この状態でプラグ1とソケット2とを90度程度相対的に回転させると、縦溝24と凸部29とが噛み合わなくなって凸部29がコネクターリング23の図における下側の端部に引っ掛かって抜け止めされ、プラグ1とソケット2とが完全に連結され、その連結状態に保持される。こうして、図示しない容器から機器本体に対して液体燃料などを供給することができる。なお、その液体の供給は、容器側で液体を加圧して行ってもよく、あるいは、機器本体側で吸引して行ってもよい。なお、プラグ1とソケット2との連結を解く場合には、上述した操作と反対の順序で操作すればよい。
【0041】
この発明に係る上記カップラーでは、ソケット2側の弁体33が開弁した後にプラグ1におけるバルブシャフト5が開弁するように構成することができるので、プラグ1が取り付けられている容器から送り出された液体は、途中で滞ることなくソケット2に供給され、したがって液漏れや液だれを確実に防止することができる。しかも上述した構成では、開弁の順序をコイルスプリング15,40の弾性力の強弱によって決めずに、プラグ1およびソケット2の構造もしくは寸法によって決めるようになっているので、開弁の順序やタイミングに異常を来たすことを容易かつ確実に防止することができる。さらに、この発明に係る上記のカップラーは、軸状の弁体33やバルブシャフト5の軸線方向での中間部が、流路の開閉を行う弁機構として機能するように構成されているので、プラグ1側およびソケット2側の弁機構の間隔を短くして、閉弁後にこれらの弁機構の間に残留する液体の量を少なくすることができる。
【0042】
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、前述した各部分の構成の一部を変更してもよい。例えば、対象とする液体はメタノール以外の液体であってもよく、また機器本体は燃料電池に限られず、さらに、弾性体をコイルスプリング以外のものに変更し、シール材やOリングの数等を変更するなど、設計上の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…コネクター(プラグ)、 2…コネクター(ソケット)、 4…ハウジング、 5…バルブシャフト、 6…ボス部、 10…第1流路、 13…第2流路、 14…ピストン、 15…コイルスプリング、 16…フランジ部、 17,19,21…シールリング(Oリング)、 18,20…カラー、 22…ブッシュ、 23…コネクターリング、 24…縦溝、 25…ガスケット、 26…貫通孔、 27…接続用円筒部、 28…接続用先端部、 29…凸部、 30…シリンダー、 31…ノズル部、 32…流路、 33…弁体、 35,35A…Oリング、 36…カラー、 40…コイルスプリング、 41…先端軸部、 42,43…流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給側コネクターと受容側コネクターとを相互に嵌合させることにより開弁して供給側コネクターに形成されている供給側流路と受容側コネクターに形成されている受容側流路とを連通させるカップラーにおいて、
前記供給側コネクターと受容側コネクターとのいずれか一方のコネクターは、先端が開口した接続用円筒部と、その接続用円筒部の後方に設けられたシリンダーと、そのシリンダーの中心軸線に沿って往復動可能に設けられるとともに後退移動することにより開弁する軸状の弁体と、その弁体の先端面と前記弁体の後端側の部分の外周面とに開口するように前記弁体を貫通して形成された流路と、前記弁体の外周面に液密状態に密着し前記弁体が弾性力によって押圧されて前進端に位置する状態では前記流路における前記後端側の外周面に開口する開口部を前記シリンダーの内部に対して遮蔽しかつ前記弁体が後退移動した場合に前記開口部をシリンダーの内部に開口させるシールリングと、前記弁体を前記接続用円筒部の開口端側に押圧する前記弾性力を発生する弾性部材とを備え、
前記供給側コネクターと受容側コネクターとの他方のコネクターは、前記一方のコネクターを接続するように開口したハウジングと、前記接続用円筒部に挿入されて前記弁体を軸線方向に押圧するようにハウジングの内部に設けられた固定軸と、前記弁体の先端面に当接される前記固定軸の先端面と前記固定軸の軸線方向での中間部の外周面とに開口するように前記固定軸を貫通して形成された第1流路と、その第1流路よりも前記固定軸の軸線方向で後端側の外周面に開口するとともに前記ハウジングの内部に連通するように前記固定軸を貫通して形成された第2流路と、前記固定軸と同一軸線上に設けられ前記接続用円筒部の先端部に当接して押圧されることにより前記ハウジングの内部に後退移動させられて前記固定軸に形成された流路を前記ハウジングの内外を連通させるように開口させるピストンと、前記第1流路の前記固定軸の外周面における開口端より前記固定軸の先端側の外周面に密着するように前記ピストンの内周面に取り付けられて前記第1流路および第2流路の前記固定軸の外周面における開口端を前記ハウジングの外部に対して遮蔽する第1シールリングと、前記ピストンが前進端に位置する状態では前記第1流路および第2流路の前記固定軸の外周面における開口端の間に位置してこれらの開口端の連通を阻止し、かつ前記ピストンと共に後退移動することにより前記第2流路の前記固定軸の外周面における開口端より固定軸の後端側に位置して前記第1流路および第2流路の前記固定軸の外周面における開口端同士を連通させられる第2シールリングと、前記ピストンを前記ハウジングの開口端側に押圧する他の弾性部材とを備えている
ことを特徴とするカップラー。
【請求項2】
前記弁体の先端面と前記固定軸の先端面との間に、これらの先端面同士の間をシールするガスケットが配置され、そのガスケットには、前記弁体に形成されている流路と前記固定軸に形成されている第1流路とを連通させる貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカップラー。
【請求項3】
前記ガスケットの先端面と該先端面に当接される前記弁体の先端面もしくは前記弁体の先端面とのいずれか一方が球面状に窪んだ凹曲面とされ、かつ他方がその凹曲面に一致する球面状に突出した凸曲面とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のカップラー。
【請求項4】
前記ハウジングの先端部の内周面に軸線方向に沿う縦溝が形成され、かつそのハウジングの先端部に挿入される前記接続用円筒部の先端部の外周面に、回転方向での位置が前記縦溝に一致することにより前記縦溝に噛み合う凸部が形成され、
前記接続用円筒部の先端部を前記ハウジングの先端部に挿入して前記凸部が前記縦溝を通過した状態で、前記接続用円筒部と前記ハウジングとを相対的に回転させて前記凸部を前記ハウジングに係合させて抜け止めするように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカップラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−77802(P2012−77802A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221846(P2010−221846)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】