説明

カテーテル

【課題】より高度なカテーテル技術に応じて、カテーテルの操作性を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】カテーテルの管状部材を構成する内筒部材は、遠位端側に配置された相対的に柔軟性の高い部材4a1と近位端側に配置された相対的に柔軟性の低い部材4a2とで構成されている。部材4a1の近位端と部材4a2の遠位端との間に中間部材として制止部材100が設けられている。制止部材100には、第1のルーメン20に対応して、内筒部材4aに設けられた第1のルーメン20の内径よりも小さい内径を有する中空部分102がカテーテルの軸方向に沿って設けられている。中空部分102に挿通された操作用ワイヤ40には、制止部材100より遠位側の所定箇所に移動止め部110が設けられている。移動止め部材110の外径は、中空部分102の内径より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。より具体的には、本発明は、体外に配置される近位端側の操作部を操作することにより、体腔内に挿入された遠位端近傍の向きを容易に変化させることができるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管を通して心臓の内部まで挿入される電極カテーテルなどのカテーテルでは、体内に挿入されたカテーテルの遠位端(先端)の向きが、体外に配置されるカテーテルの近位端(基端または手元側)に装着された操作部を操作することにより偏向される。カテーテルを心臓の内部などの所望の部位にスムースに挿入するために、カテーテルの遠位端近傍は所定のカーブ形状で湾曲可能であることが求められる。
【0003】
複数のルーメンが軸方向に沿って形成された、いわゆるマルチルーメンカテーテルでは、従来、カテーテルの中心軸からずれた位置に形成されたルーメン内に操作用ワイヤを挿通していた。そして、操作部において操作用ワイヤを引っ張ることで、ルーメンの偏芯方向、すなわち管状部材の中心軸からずれた側にカテーテルの遠位端近傍を湾曲させて、遠位端の向きを偏向していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−288095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のカテーテルはプルワイヤを引っ張り操作してカテーテルの遠位側を湾曲させたときに、湾曲した部分のカテーテルの曲率半径が一様であるため、より高度なカテーテル技術への対応が難しくなっていた。たとえば、カテーテルを用いた心臓の治療または検査として、カテーテルを大腿静脈から挿入し、下大静脈から冠状静脈洞へアプローチさせ、冠状静脈洞の内壁に沿って湾曲したカテーテルの先端を右心房に到達させる技術が知られている。このようなカテーテル技術では、カテーテル先端が湾曲したときの曲率半径が一様であると、カテーテルの挿通操作が困難になるという課題が生じている。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より高度なカテーテル技術に応じて、カテーテルの操作性を向上させることのできる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、カテーテルである。当該カテーテルは、複数のルーメンが軸方向に沿って形成された可撓性の管状部材と、複数のルーメンのうち、管状部材の中心軸からはずれた操作用ルーメンに挿通され、一方の端部が管状部材の遠位端の近傍に接続された操作用ワイヤと、管状部材の遠位端と近位端との間に設けられ、操作用ルーメンの内径よりも小さい内径の中空部分が操作用ワイヤを挿通可能に設けられた制止部材と、制止部材より遠位側の操作用ワイヤの所定箇所に設けられ、中空部分の内径より外径が大きい移動止め部と、を備え、操作用ワイヤを引っ張り操作したときに、操作用ワイヤの移動止め部より遠位側の所定部分が制止部材より遠位側の領域に制止されることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、操作用ワイヤを引っ張り操作したときに、移動止め部材が操作用ワイヤの遠位端から所定の距離の位置を固定するアンカーとして機能することにより、湾曲したカテーテルの曲率半径が制止部材より遠位側と近位側とで異なる。具体的には、制止部材より近位側のカテーテル2の曲率半径が制止部材より遠位側のカテーテルの曲率半径より小さくなる。これにより、カテーテルの操作性が向上し、カテーテルの先端部分をより複雑な経路に挿通するカテーテル技術を容易に行うことができる。
【0009】
上記態様のカテーテルにおいて、制止部材により移動止め部が制止されたときに、移動止め部より遠位側の管状部材の曲率半径が移動止め部より近位側の管状部材の曲率半径より大きくてもよい。
【0010】
制止部材が、管状部材の遠位端と近位端との間の複数箇所に設けられ、複数の移動止め部がそれぞれ対応する制止部材より遠位側の操作用ワイヤの所定箇所に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より高度なカテーテル技術に応じて、カテーテルの操作性を向上させることのできる技術の提供にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)および図1(B)は、それぞれ、実施の形態1に係るカテーテルの側面図および上面図である。
【図2】実施の形態1に係るカテーテルにおける、図1(A)、図1(B)のA−A線上の断面図である。
【図3】実施の形態1に係るカテーテルにおける、図1(A)のB−B線上の断面図である。
【図4】実施の形態1に係るカテーテルにおける、図1(B)のC−C線上の断面図である。
【図5】実施の形態1に係るカテーテルの制止部材近傍の断面斜視図である。
【図6】操作用ワイヤを引っ張り操作したときのカテーテルの先端部分の形状を示す断面図である。
【図7】操作用ワイヤを引っ張り操作したときのカテーテルの先端部分の形状を示す断面図である。
【図8】実施の形態2に係るカテーテルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るカテーテルは、先端偏向操作が可能な電極カテーテルであり、たとえば心臓における不整脈の診断または治療、特に、下大静脈から冠状静脈洞へアプローチさせ、冠状静脈洞の内壁に沿って湾曲したカテーテルの先端を右心房に到達させる技術に好適に用いられる。
【0015】
図1(A)および図1(B)は、それぞれ、実施の形態1に係るカテーテルの側面図および上面図である。図1(A)および図1(B)に示すように、実施の形態1に係るカテーテル2は、管状部材4の遠位端部に先端チップ電極10、およびリング状電極12a、12bを有する。先端チップ電極10およびリング状電極12a、12bは、たとえば接着剤などを用いて管状部材4に固定されている。
【0016】
管状部材4の近位端には、操作用のハンドル6が装着されている。ハンドル6から、先端チップ電極10、およびリング状電極12a、12bに電気的に接続される導線の引き出し線が引き出されている。また、ハンドル6には、管状部材4の先端部の偏向移動操作(首振り操作)を行うための摘み7が装着されている。
【0017】
管状部材4は、後述するように軸方向に沿って形成された複数のルーメンを有する中空構造を有する。管状部材4の遠位端部分は相対的に可撓性が高く、管状部材4の近位端部分は相対的に剛性が高い。
【0018】
後述するように、管状部材4は内筒部材4aと外筒部材4bとによって構成されている。さらに、図1(A)および図1(B)に示すように、外筒部材4bは、遠位側から順に外筒部材4b1、外筒部材4b2および外筒部材4b3に分かれて構成されている。外筒部材4b1、外筒部材4b2および外筒部材4b3は、この順で柔軟性が高くなっている。たとえば、外筒部材4b1、外筒部材4b2および外筒部材4b3のショアD硬度の範囲は、それぞれ、30〜63、45〜70、55〜82である。
【0019】
管状部材4の主要部は、たとえばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタンなどの合成樹脂で構成される。管状部材4の外径は、一般に0.6〜3mm程度である。後述するように、管状部材4の軸方向に形成されたルーメンには、図1(A)および図1(B)に示す先端チップ電極10およびリング状電極12a、12bにそれぞれ接続される導線が絶縁された状態で通されている。
【0020】
先端チップ電極10および複数のリング状電極12a、12bは、たとえばアルミニウム、銅、ステンレス、金、白金など、熱伝導性の良好な金属で構成される。なお、X線に対する造影性を良好に持たせるためには、先端チップ電極10およびリング状電極12a、12bは、白金などで構成されることが好ましい。先端チップ電極10およびリング状電極12a、12bの外径は、特に限定されないが、管状部材4の外径と同程度であることが好ましく、通常、0.5〜3mm程度である。
【0021】
図2は、実施の形態1に係るカテーテルにおける、図1(A)、図1(B)のA−A線上の断面図である。図3は、実施形態1に係るカテーテルにおける図1(A)のB−B線上の断面図、図4は、実施形態1に係るカテーテルにおける図1(B)のC−C線上の断面図である。図5は、実施形態1に係るカテーテルの制止部材近傍の断面斜視図である。なお、図5において後述する導線70が省略されている。
【0022】
図2、図3、および図4に示すように、管状部材4は複数のルーメンが形成された内筒部材4aと、内筒部材4aを覆う外筒部材4bとからなり、内筒部材4aには、軸方向に沿って第1のルーメン20、第2のルーメン22、第3のルーメン24および第4のルーメン26が形成されている。第1のルーメン20は、管状部材4の中心軸21を挟んで第2のルーメン22と対向する位置に設られている。すなわち、第1のルーメン20は、管状部材4の中心軸21からずれた位置に設けられている。また、第3のルーメン24は、管状部材4の中心軸21を挟んで第4のルーメン26と対向する位置に設けられている。本実施の形態では、第1のルーメン20と第2のルーメン22とを結ぶ線が第3のルーメン24と第4のルーメン26とを結ぶ線と交わるような配置になっている。第1のルーメン20および第2のルーメン22の径は、管状部材4の直径をRとしたとき、約0.1R〜0.45Rである。また、第3のルーメン24および第4のルーメン26の径は、管状部材4の直径をRとしたとき、約0.1R〜0.45Rである。
【0023】
第1のルーメン20は操作用ルーメンであり、第1のルーメン20には、操作用ワイヤ40がスライド可能に挿通されている。操作用ワイヤ40の遠位端には、操作用ワイヤ40より径が大きいアンカー41が形成されている。操作用ワイヤ40の近位端は、図1(A)および図1(B)に示す摘み7に接続されている。
【0024】
図3および図4に示すように、先端チップ電極10の内側に凹部50が形成されている。この凹部50に、はんだ60が充填されている。操作用ワイヤ40の遠位端は、はんだ50に埋め込まれ、はんだ60および先端チップ電極10に対して固定されることで、管状部材4の遠位端の近傍に接続されている。また、上述のように操作用ワイヤ40の近位端はハンドル6の摘み7に固定されている。これにより、図1(A)および図1(B)等に示す摘み7を操作することにより、操作用ワイヤ40を引っ張り、カテーテル2の遠位端を図1(B)の矢印X方向に首振り偏向可能になっている。なお、本実施の形態では、操作用ワイヤ40の遠位端にアンカー41が設けられているため、操作用ワイヤ40の遠位端がはんだ60から抜けにくくなっている。これにより、カテーテル2の動作信頼性を向上させることができる。
【0025】
図3に示すように、第2のルーメン22に導線70が挿通されている。導線70の遠位端は、はんだ60に埋め込まれている。これにより、はんだ60を介して導線70と先端チップ電極10とが電気的に接続される。
【0026】
また、図4に示すように、第3のルーメン24に導線80が挿通されている。導線80の遠位端は、管状部材4に形成された開口部13aを通ってリング状電極12aに固定されている。この導線80の遠位端は、たとえば、溶接やはんだ等を用いてリング状電極12aに固定されている。これにより、導線80とリング状電極12aとが電気的に接続される。
【0027】
また、第4のルーメン26に導線82が挿通されている。導線82の遠位端は、管状部材4に形成された開口部13bを通ってリング状電極12bに固定されている。この導線82の遠位端は、たとえば、溶接やはんだ等を用いてリング状電極12bに固定されている。これにより、導線82とリング状電極12bとが電気的に接続される。
【0028】
内筒部材4aは、遠位端側に配置された相対的に柔軟性の高い部材4a1と近位端側に配置された相対的に柔軟性の低い部材4a2とで構成されている。本実施形態では、部材4a1のショアD硬度が30〜63であり、部材4a2のショアD硬度が4a1以上である。また、内筒部材4aの長さは20〜300mmであり、内筒部材4aは、管状部材4の遠位端から15〜280mmの範囲に延在している。
【0029】
部材4a1の近位端と部材4a2の遠位端との間に中間部材として制止部材100が設けられている(図5参照)。制止部材100を構成する材料として、たとえば、液晶ポリマー、ステンレスが挙げられる。制止部材100の外側は、外筒部材4b2で被覆されている。外筒部材4b2は、部材4a1の近位側の一部および部材4a2の遠位側の一部と重畳しており、外筒部材4b2は部材4a1の近位側の一部および部材4a2の遠位側の一部と接着している。これにより、外筒部材4bと内筒部材4aとの接合強度の向上が図られている。
【0030】
制止部材100には、第1のルーメン20に対応して、第1のルーメン20の内径よりも小さい内径を有する中空部分102がカテーテル2の軸方向に沿って設けられている。さらに、中空部分102の内径は操作用ワイヤ40の外径よりも大きい。中空部分102の遠位側の開口は、内筒部材4a1に設けられた第1のルーメン20の近位側の開口と対向している。また、中空部分102の近位側の開口は、内筒部材4a2に設けられた第1のルーメン20の遠位側の開口と対向している。これにより、内筒部材4a1に設けられた第1のルーメン20と、内筒部材4a2に設けられた第1のルーメン20とが連通し、上述した操作用ワイヤ40を中空部分102に挿通することができる。
【0031】
また、制止部材100には、第2のルーメン22に対応して、第2のルーメン22の内径と同等の内径を有する中空部分104がカテーテル2の軸方向に沿って設けられている。中空部分104の遠位側の開口は、内筒部材4a1に設けられた第2のルーメン22の近位側の開口と対向している。また、中空部分104の近位側の開口は、内筒部材4a2に設けられた第2のルーメン22bの遠位側の開口と対向している。これにより、内筒部材4a1に設けられた第2のルーメン22と、内筒部材4a2に設けられた第2のルーメン22とが連通し、上述した導線80を中空部分104に挿通することができる。
【0032】
また、制止部材100には、第3のルーメン24、第4のルーメン26にそれぞれ対応して、中空部分106、中空部分108がカテーテル2の軸方向に沿って設けられている。中空部分106、中空部分108の内径は、それぞれ、第3のルーメン24、第4のルーメン26の内径と同等である。中空部分106、中空部分108の遠位側の開口は、それぞれ、内筒部材4a1に設けられた第3のルーメン24、第4のルーメン26の近位側の開口と対向している。また、中空部分106、中空部分108の近位側の開口は、それぞれ、内筒部材4a2に設けられた第3のルーメン24、第4のルーメン26の遠位側の開口と対向している。内筒部材4a1に設けられた第3のルーメン24と、内筒部材4a2に設けられた第3のルーメン24とが連通するとともに、内筒部材4a1に設けられた第4のルーメン26と、内筒部材4a2に設けられた第4のルーメン26とが連通している。これにより、上述した導線82を中空部分106に挿通することができる。
【0033】
中空部分102に挿通された操作用ワイヤ40には、制止部材100より遠位側の所定箇所に移動止め部110が設けられている。移動止め部材110の外径は、中空部分102の内径より大きい。
【0034】
図6および図7は、操作用ワイヤ40を引っ張り操作したときのカテーテル2の先端部分の形状を示す断面図である。図6に示すように、操作用ワイヤ40を引っ張り操作すると、移動止め部材110が近位側、すなわち制止部材100の方へ徐々に移動するにつれて、カテーテル2の先端部分が矢印Xの方へ湾曲する。移動止め部材110が制止部材100の方へ移動する途中の段階では、湾曲した部分のカテーテル2の曲率半径は略一様であり、カテーテル2の湾曲部分の形状は、所定半径の円弧で近似することができる。なお、移動止め部材110が制止部材100の方へ移動するつれて、上記曲率半径は徐々に小さくなる。言い換えると、カテーテル2の湾曲部分の形状を近似する円弧の半径が徐々に小さくなる。
【0035】
さらに、操作用ワイヤ40の引っ張り操作を進めると、図7に示すように、移動止め部材110は制止部材100と接触し、移動止め部材110の動きが制止され、移動止め部材110は制止部材100により位置が固定される。また、操作用ワイヤ40の移動止め部110より遠位側の所定部分が制止部材100より遠位側の領域に制止される。この状態で、さらに操作用ワイヤ40を引っ張り操作すると、移動止め部材110がアンカーとして機能するため、制止部材100より近位側の部分において湾曲の度合いが大きくなる。言い換えると、制止部材100より近位側のカテーテル2の領域は、制止部材100より遠位側のカテーテル2の領域に比べて小さい曲率半径で湾曲する。すなわち、カテーテル2のカーブ形状が2段階となる。
【0036】
なお、カテーテル2が直線状の状態において、カテーテル2の遠位端から制止部材100までの距離を200mmとしたとき、制止部材100と移動止め部材110との距離は、たとえば30mmである。
【0037】
以上説明した実施の形態1のカテーテル2によれば、操作用ワイヤ40を引っ張り操作したときに、移動止め部材110が操作用ワイヤ40の遠位端から所定の距離の位置を固定するアンカーとして機能することにより、湾曲したカテーテル2の曲率半径が制止部材100より遠位側と近位側とで異なり、制止部材100より近位側のカテーテル2の曲率半径が制止部材100より遠位側のカテーテル2の曲率半径より小さくなる。これにより、カテーテル2の操作性が向上し、カテーテル2の先端部分をより複雑な経路に挿通するカテーテル技術を容易に行うことができる。
【0038】
本実施の形態では、移動止め部材110は、操作用ワイヤ40と同一材料にて一体的に形成されている。この他、移動止め部材110は、操作用ワイヤ40と同一材料または別の材料にて、操作用ワイヤ40の周囲にリング状に形成されていてもよい。操作用ワイヤ40の周囲に移動止め部材110を別部材として形成する方法は、特に限定されないが、はんだ接合、かしめによる圧着方法、融着などが挙げられる。
【0039】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2に係るカテーテル2の断面図である。実施の形態2のカテーテル2について、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を付し、説明を適宜省略する。実施の形態1のカテーテル2は、制止部材100と移動止め部材110の一組を有するが、実施の形態2のカテーテル2は、二組の制止部材100、移動止め部材110を有する。本実施の形態では、カテーテル2の遠位側に設けられた一方の組の制止部材100、移動止め部材110を制止部材100a、移動止め部材110aと呼び、他方の組の制止部材100、移動止め部材110を制止部材100b、移動止め部材110bと呼ぶ。
【0040】
なお、本実施の形態では、内筒部材4aは、遠位端側から順に相対的に柔軟性が低くなる部材4a1、部材4a2、部材4a3とで構成されている。また、外筒部材4bは、遠位端側から順に相対的に柔軟性が低くなる部材4b1、部材4b2、部材4b3、部材4b4、部材4b5とで構成されている。
【0041】
図8に示すように、移動止め部材110aはアンカー41と制止部材100aとの間に設けられており、移動止め部材110aは制止部材100aと制止部材100bとの間に設けられている。言い換えると、移動止め部材110a、移動止め部材110bは、それぞれ制止部材100a、制止部材100bより遠位側の操作用ワイヤ40の所定箇所に設けられている。カテーテル2が直線状の状態において、移動止め部材110aと制止部材100aとの距離は、移動止め部材110bと制止部材100bとの距離より短い。
【0042】
本実施の形態では、操作用ワイヤ40を引っ張り操作すると、まず、移動止め部材110aが近位側、すなわち制止部材100aの方へ徐々に移動するにつれて、カテーテル2の先端部分が図8に示した矢印Yの方へ湾曲する。このとき、湾曲した部分のカテーテル2の曲率半径は略一様である。さらに、操作用ワイヤ40の引っ張り操作を進めると、移動止め部材110aは制止部材100aと接触し、移動止め部材110aの動きが制止され、移動止め部材110aは制止部材100aにより位置が固定される。また、操作用ワイヤ40の移動止め部110aより遠位側の所定部分が制止部材100aより遠位側の領域に制止される。この状態で、さらに操作用ワイヤ40を引っ張り操作すると、移動止め部材110aが第1のアンカーとして機能するため、制止部材100aより近位側の部分において湾曲の度合いが大きくなる。言い換えると、制止部材100aより近位側のカテーテル2の領域は、制止部材100aより遠位側のカテーテル2の領域に比べて小さい曲率半径で湾曲する。すなわち、カテーテル2のカーブ形状が2段階となる。
【0043】
さらに、操作用ワイヤ40の引っ張り操作を進めると、移動止め部材110bが制止部材100bと接触し、移動止め部材110bの動きが制止され、移動止め部材110bは制止部材100bにより位置が固定される。また、操作用ワイヤ40の移動止め部110bより遠位側の所定部分が制止部材100bより遠位側の領域に制止される。この状態で、さらに操作用ワイヤ40を引っ張り操作すると、移動止め部材110bが第2のアンカーとして機能するため、制止部材100bより近位側の部分において湾曲の度合いが大きくなる。言い換えると、制止部材100bより近位側のカテーテル2の領域は、制止部材100bより遠位側のカテーテル2の領域に比べてさらに小さい曲率半径で湾曲する。すなわち、カテーテル2のカーブ形状が3段階となる。
【0044】
以上説明した実施の形態2のカテーテル2によれば、操作用ワイヤ40を引っ張り操作したときに、移動止め部材110a、110bが操作用ワイヤ40の遠位端から所定の距離の位置を固定するアンカーとしてそれぞれ機能することにより、湾曲したカテーテル2の曲率半径が各制止部材100より遠位側と近位側とで異なり、各制止部材100より近位側のカテーテル2の曲率半径が各制止部材100より遠位側のカテーテル2の曲率半径より小さくなる。これにより、カテーテル2の操作性が向上し、カテーテル2の先端部分をより複雑な経路に挿通するカテーテル技術を容易に行うことができる。
【0045】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0046】
たとえば、上述した実施形態2のカテーテル2では、制止部材100と移動止め部材110が二組設けられているが、制止部材100と移動止め部材110が三組以上設けられても良い。
【符号の説明】
【0047】
2 カテーテル、4 管状部材、10 先端チップ電極、12 リング状電極、20 第1のルーメン、22 第2のルーメン、24 第3のルーメン、26 第4のルーメン、40 操作用ワイヤ、100 制止部材、110 移動止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のルーメンが軸方向に沿って形成された可撓性の管状部材と、
前記複数のルーメンのうち、前記管状部材の中心軸からはずれた操作用ルーメンに挿通され、一方の端部が前記管状部材の遠位端の近傍に接続された操作用ワイヤと、
前記管状部材の遠位端と近位端との間に設けられ、前記操作用ルーメンの内径よりも小さい内径の中空部分が前記操作用ワイヤを挿通可能に設けられた制止部材と、
前記制止部材より遠位側の前記操作用ワイヤの所定箇所に設けられ、前記中空部分の内径より外径が大きい移動止め部と、
を備え、
前記操作用ワイヤを引っ張り操作したときに、前記操作用ワイヤの前記移動止め部より遠位側の所定部分が前記制止部材より遠位側の領域に制止されることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記制止部材により前記移動止め部が制止されたときに、前記移動止め部より遠位側の前記管状部材の曲率半径が前記移動止め部より近位側の前記管状部材の曲率半径より大きい請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記制止部材が、前記管状部材の遠位端と近位端との間の複数箇所に設けられ、
複数の前記移動止め部がそれぞれ対応する前記制止部材より遠位側の前記操作用ワイヤの所定箇所に設けられている請求項1または2に記載の記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−195(P2012−195A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136461(P2010−136461)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(594170727)日本ライフライン株式会社 (83)
【Fターム(参考)】