説明

カバーガラスおよびその製造方法

【課題】 ガラスのエッチング速度と耐失透性を両立させ、生産性を向上させることが可能なカバーガラスを提供する。
【解決手段】
ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板を化学強化し、表面に圧縮応力層が形成された化学強化ガラス基板からなり、該化学強化用ガラス基板は、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ことを特徴とするカバーガラスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラスを適用したカバーガラスおよびその製造方法に関し、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、PDA、フラットパネルディスプレイなどのディスプレイの保護に適用されるカバーガラスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン交換処理を施すことにより、ガラス基板の強度を化学的に強化した強化ガラスが、例えば、携帯電話やデジタルカメラなどの携帯端末のディスプレイなどを保護するカバーガラスとして適用されている(例えば、特許文献1)。
ここで、近年、携帯端末などは、薄型化、高機能化、形状の複雑化の傾向にある。そのため、携帯端末などのカバーガラスとして利用される強化ガラスには、負の曲率の部分を含む凹部や穴部などを形成することが求められている。
【0003】
しかし、強化ガラスは、高い機械的強度を有しているため、負の曲率の部分を含む凹部や穴部などを形成するという、外部形状の加工が難しいという問題があった。
上記問題を解決するために、イオン交換処理を行う前工程で、エッチングによりガラス基板に凹部や穴部を形成し、その後、イオン交換処理を行うことで、所望の形状のカバーガラスを得る技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−57271号公報
【特許文献2】特開2009−167086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カバーガラスは安価に大量生産することが求められるが、上記特許文献2では、形状加工のためのエッチング処理時間を短縮することができないため、生産性を十分に向上させることができないという問題があった。
上記問題を解決するために、強化ガラスに使用されるガラス基板自体のエッチング速度を向上させることが考えられる。しかし、ガラス基板のエッチング速度を向上させると、ガラスの耐失透性が悪化してしまうという課題があった。
つまり、ガラスのエッチング速度と耐失透性を両立させることは困難であるため、カバーガラスの生産性を十分に向上させることができなかった。
【0006】
ここで、ガラスの成形方法としては、ダウンドロー法を使用することが求められる。これは、ダウンドロー法を使用して成形したガラス基板は、他の方法で成形したガラス基板に比べて、エッチング速度が向上することおよびガラス基板表面が極めて高い平滑性を有するため成形後の研磨工程が不要となることから、コスト低減および生産性向上を実現できるためである。
【0007】
しかし、上述したようにガラスの耐失透性が悪化してしまうと、成形方法にダウンドロー法を使用することができず、カバーガラスを安価に大量生産することができない。
【0008】
本発明は、このような状況下になされたものであり、上記課題を解決し、ガラスのエッチング速度と耐失透性を両立させ、生産性を向上させるとことが可能なカバーガラスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
特定のガラス組成となるようにガラス原料を熔融して得られたガラスは、耐失透性が高く、該熔融ガラスをダウンドロー法により板状に成形された化学強化用ガラス基板は、さらにエッチング速度も十分向上させることができるため、耐失透性とエッチング速度向上とを両立することができることを見出した。
【0010】
このようにしてダウンドロー法により得られた化学強化用ガラス基板に、好ましくはエッチング処理を施したのち、イオン交換処理を施すことにより、品質に優れる化学強化ガラス基板からなるカバーガラスが生産性よく得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1] ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板を化学強化し、表面に圧縮応力層が形成された化学強化ガラス基板からなり、該化学強化用ガラス基板は、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ことを特徴とするカバーガラス、
[2] LiO/(RO+LiO)含有量比が0.3未満である上記[1]項に記載のカバーガラス、
[3] RO含有率が4%超である上記[1]または[2]項に記載のカバーガラス、
[4] (ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiO含有量比が0.3未満である上記[1]〜[3]項のいずれか1項に記載のカバーガラス、
[5] TiO含有率が3%未満である上記[1]〜[4]項のいずれか1項に記載のカバーガラス、
[6] 上記化学強化用ガラス基板は、失透温度が1090℃未満である上記[1]〜[5]項のいずれか1項に記載のカバーガラス、
[7] 板厚が0.3〜1.5mmであり、かつ圧縮層深さが25〜70μm、圧縮応力値が400MPa〜900MPaである、上記[1]〜[6]項のいずれか1項に記載のカバーガラス、
[8] (x)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(y)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程と、(z)前記板状に成形されたガラスにイオン交換処理を施す工程を有することを特徴とするカバーガラスの製造方法、
[9] (y)工程と(z)工程との間に、さらに(y’)工程としてエッチング工程を設ける上記[8]項に記載の方法、
[10] (x)工程におけるLiO/(RO+LiO)含有量比が0.3未満である上記[8]または[9]項に記載の方法、
[11] (x)工程におけるRO含有率が4%超である上記[8]〜[10]項のいずれか1項に記載の方法、
[12] (x)工程における(ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiO含有量比が0.3未満である上記[8]〜[11]項のいずれか1項に記載の方法、
[13] (x)工程におけるTiO含有率が3%未満である上記[8]〜[12]項のいずれか1項に記載の方法、
[14] ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板を化学強化した化学強化ガラス基板であって、表面に圧縮応力層を有し、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ガラスからなることを特徴とする化学強化ガラス基板、
[15] ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板であって、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ガラスからなることを特徴とする化学強化用ガラス基板、
[16] (a)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(b)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程とを有することを特徴とする化学強化用ガラス基板の製造方法、および
[17] (x)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(y)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程と、(z)前記板状に成形されたガラスにイオン交換処理を施す工程を有することを特徴とする化学強化ガラス基板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガラスのエッチング速度と耐失透性を両立させ、生産性を向上させることが可能なカバーガラスおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】SiO含有率−1/2Al含有率とエッチング速度との関係を示すグラフである。
【図2】SiO含有率−1/2Al含有率と、失透温度(Tl)との関係を示すグラフである。
【図3】SiO含有率−1/2Al含有率と、ガラス転移点(Tg)との関係を示すグラフである。
【図4】CaO/RO含有量比と失透温度(Tl)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を説明するが、本明細書において、ガラスを構成する成分の含有量を示す%は、特に記載のない限り、質量%を示す。
【0015】
まず、本実施形態のカバーガラスについて説明する。
[カバーガラス]
本実施形態のカバーガラスは、ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板を化学強化し、表面に圧縮応力層が形成された化学強化ガラス基板からなり、該化学強化用ガラス基板は、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ことを特徴とする。
【0016】
本実施形態において、カバーガラスとは、携帯電話、デジタルカメラ、PDAなどの携帯端末や、フラットパネルディスプレイなどの表示画面の保護に用いられるものをいう。しかし、本実施形態のカバーガラスは、上記の用途に限定されるものではなく、例えば、タッチパネルディスプレイの基板などにも適用することができる。
【0017】
まず、化学強化ガラス基板を構成するガラスの組成について説明する。
(SiO
SiOは、ガラスの骨格をなす成分であり、ガラスの化学的耐久性と耐熱性を高める効果を有している。その含有率が50%未満では、エッチング速度は向上する傾向にあるものの、ガラス化が困難であり、上記効果も十分に得ることができない。他方、含有率が70%を超えると、ガラスが失透を起こしやすくなり、ガラス原料の熔融や成形が困難になるとともに、粘性が上昇してガラスの均質化が困難になるため、ダウンドロー法を利用した安価なガラスの大量生産が困難となる。また、熱膨張率が過剰に低下し金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合しがたくなる。さらに、低温粘性が過度に上昇することで、イオン交換速度が低下するため、化学強化した場合にも十分な強度を得ることができない。したがって、SiOの含有率は、50〜70%であり、53〜67%が好ましく、53〜65%がより好ましく、55〜65%がさらに好ましく、58〜62%が特に好ましい。
【0018】
(Al
Alはガラスの骨格をなす成分であり、ガラスの化学的耐久性と耐熱性、さらにはイオン交換性能やエッチング速度を高める効果を有している。その含有率が5%未満では、上記効果が十分に得られない。他方、含有率が20%を超えると、ガラスの熔融が困難となり、ガラスの粘性が上昇して成形が困難になるため、ダウンドロー法を利用した安価なガラスの大量生産が困難となる。また、耐酸性が過剰に低下してしまうため、カバーガラスとしては好ましくない。また、ガラスが失透を起こしやすくなり、耐失透性も低下するので、オーバーフローダウンドロー法にも適用不可能となる。したがって、Alの含有率は5〜20%であり、8〜17%が好ましく、10〜16%がより好ましく、11〜15%が特に好ましい。
【0019】
本実施形態では、SiO含有率−1/2Al含有率が、46.5〜59%であることを要する。図1に示すように、SiO含有率−1/2Al含有率が59%以下であると、エッチング速度を効果的に向上させることができる。エッチング速度は、生産性を考慮すると2.4μm/min以上であることが好ましい。他方、図2に示すように、SiO含有率−1/2Al含有率が46.5%未満であると、エッチング速度は5μm/min以上にあるものの、図2に示すように、失透温度が高くなるため耐失透性が悪化してしまう。したがって、上記課題である耐失透性とエッチング速度向上の両立を実現させるためには、SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%であることを要する。なお、SiO含有率−1/2Al含有率の好ましい範囲は、50〜58%であり、50〜56%がより好ましく、50〜55%がさらに好ましく、50〜54%が特に好ましい。
【0020】
(B
はガラスの粘性を下げて、ガラスの熔解および清澄を促進する成分である。その含有率が5%を超えると、ガラスの耐酸性が低下するとともに、揮発が増加してガラスの均質化が困難になる。また、揮発が増加することでガラスにムラが生じ、ガラス基板のエッチング速度にもムラが生じる。つまり、エッチングの精度が低下してしまうため、Bを過剰に含有したガラス基板は、高精度が求められる形状加工のためのエッチングなどには不向きとなる。さらに、歪点も低下してしまい、ガラス基板に熱処理を施す際にガラスが変形してしまうという不都合が生じる。したがって、Bの含有率は0〜5%であることが好ましく、0〜3%がより好ましく、0〜2%未満がさらに好ましく、0.01%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0021】
(LiO)
LiOはイオン交換成分の一つであり、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの熔融性や成形性を向上させる成分である。また、LiOは、ガラスのヤング率を向上させる成分である。さらに、LiOは、アルカリ金属酸化物の中では圧縮応力値を高める効果が高い。しかし、LiOの含有率が多くなり過ぎると、液相粘度が低下して、ガラスが失透しやすくなるため、ダウンドロー法を利用した安価なガラスの大量生産が困難となる。また、ガラスの熱膨張係数が高くなり過ぎて、ガラスの耐熱衝撃性が低下し、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。さらに、ガラス基板の強化を行う工程であるイオン交換処理におけるイオン交換塩の劣化がはやくなるという不都合がある。また、低温粘度が過度に低下することで、化学強化後の加熱工程で応力緩和が発生し、圧縮応力値が低下してしまうため、十分な強度を得ることができない。したがって、LiOの含有率は0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに一層好ましく、0〜0.02%がさらに好ましく、不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0022】
(NaO)
NaOは、イオン交換成分であり、ガラスの高温粘度を低下させて、ガラスの熔融性や成形性を向上させる成分である。また、ガラスの耐失透性を改善する成分である。その含有率が6%未満ではガラスの熔融性が低下し、熔融のためのコストが高くなってしまう。また、イオン交換性能も低下してしまうため、十分な強度を得ることができない。また、熱膨張率が過度に低下し、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。さらに、ガラスが失透を起こしやすくなり、耐失透性も低下するので、オーバーフローダウンドロー法に適用不可能となるため、安価なガラスの大量生産が困難となる。他方、含有率が20%を超えると、低温粘度が低下し、熱膨張率が過剰となり、耐衝撃性が低下し、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。また、ガラスバランス悪化による耐失透性低下も生じるため、ダウンドロー法を利用した安価なガラスの大量生産が困難となる。したがって、NaOの含有率は、6〜20%であり、9〜17%が好ましく、11〜17%がより好ましく、13〜17%がさらに好ましく、13〜16%が特に好ましい。
【0023】
また、本実施形態では、NaO含有率−Al含有率が、−10〜10%であることが好ましい。NaO含有率−Al含有率が−10〜10%の範囲内であると、上述した本発明の課題を解決するだけでなく、好適な熱膨張率や耐熱性を維持しつつ、ガラスの熔融性も向上させることができる。そのため、より低い温度でガラスの熔融が可能となり、カバーガラス製造のコストをさらに低減することができる。なお、NaO含有率−Al含有率のより好ましい範囲は、−5〜10%であり、−5〜5%がさらに好ましく、−3〜5%がさらに一層好ましく、0〜3%が特に好ましい。
【0024】
(KO)
Oは、イオン交換成分であり含有することでガラスのイオン交換性能を向上させることができる成分である。また、KOはガラスの高温粘度を低下させて、ガラスの熔融性や成形性を向上させると同時に、耐失透性を改善する成分でもある。しかし、KOの含有率が多くなり過ぎると、低温粘度が低下し、熱膨張率が過剰となり、耐衝撃性が低下するため、カバーガラスとして好ましくない。また、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。また、ガラスバランス悪化による耐失透性の低下も生じるため、ダウンドロー法を利用した安価なガラスの大量生産が困難となる。したがって、KOの含有率は、0〜10%であり、0〜5.6%未満が好ましく、0超〜5.6%未満がより好ましく、0超〜4%がさらに好ましく、0.5〜4%が特に好ましい。
【0025】
本実施形態では、RO(Rは、Li、Na、Kから選択される1種以上)の含有率は6〜25%であることが好ましい。ROが6%未満ではイオン交換が十分に行われないため、強度を十分に得ることができず、カバーガラスに適用しがたくなる。他方、ROが25%を超えるとガラスバランスの悪化により失透温度が上昇し、ダウンドロー法に適用しがたくなるため、安価なガラスの大量生産が困難となる。機械的強度と耐失透性を両立し、生産性を向上させるために、ROの含有率は、10〜25%とすることがより好ましく、13〜20%とすることがさらに好ましく、15〜19%とすることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態では、B/RO(Rは、Li、Na、Kから選択される1種以上)の含有量比が、0〜0.1未満であることを要する。Bは、アルカリ金属酸化物と結合してホウ酸アルカリとして揮発しやすく、特に、イオン半径の小さいLiはガラス融液中での移動度が大きく融液表面から揮発しやすいことから、ガラス内部まで濃度勾配を形成してガラス表面に脈理を発生させやすい。つまり、Bの揮発量が増加することで、製造されるガラス基板が不均質化してしまい、当該ガラス基板にエッチング処理を施した場合には、ガラス基板の不均質化に基づくエッチングムラが生じてしまう。しかしながら、イオン交換処理により化学強化されるガラスにはアルカリ金属酸化物は必須成分である。そこで、上記B/ROの含有量比が、0〜0.1未満の範囲内であると、ガラスの不均質化やエッチングムラを効果的に改善することができる。これにより、上述した本発明の課題を解決するだけでなく、エッチング速度のムラも防止することができるので、所望の形状の強化ガラスを歩留まりよく得ることができる。なお、B/ROの含有量比のより好ましい範囲は、0〜0.07であり、0〜0.03が好ましく、0〜0.005がさらに好ましく、0が特に好ましい。また、上記したように、エッチングムラに関してもLiOの含有率は0.01%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことが最も好ましい。
【0027】
(MgO)
MgOは、ガラスの粘性を下げて、ガラスの熔解および清澄を促進する成分である。また、MgOは、アルカリ土類金属の中ではガラスの密度を上昇させる割合が小さいため、得られるガラスを軽量化しつつ熔融性を向上するためには有利な成分である。また、成形性を向上させ、ガラスの歪点やヤング率を高めたりする成分でもある。しかし、MgOの含有量が多くなり過ぎると、耐失透性の低下が生じるため、ダウンドロー法を利用した安価なガラスの大量生産が困難となる。したがって、MgOの含有率は、0〜10%であり、0〜6%が好ましく、0〜3%未満がより好ましく、1〜3%未満が特に好ましい。
【0028】
(CaO)
CaOは、ガラスの粘性を下げて、ガラスの熔解および清澄を促進する成分である。また、CaOは、アルカリ土類金属の中ではガラスの密度を上昇させる割合が小さいため、得られるガラスを軽量化しつつ熔融性を向上するためには有利な成分である。また、成形性を向上させ、ガラスの歪点やヤング率を高めたりする成分でもある。しかし、CaOの含有量が多くなり過ぎると、耐失透性の低下が生じるため、ダウンドロー法を利用した安価なガラスの大量生産が困難となる。さらに、イオン交換性能も悪化してしまうため、強度を十分に得ることができず、生産性も低下してしまう。他方、CaOを含有することで、失透温度を低下させ、耐失透性及び熔融性を向上させることができるので、CaOの含有率は2%超〜20%であり、2%超〜15%が好ましく、2%超〜10%がさらに好ましく、2%超〜6%特に好ましい。上記範囲でCaOを含有することで、上述した課題に加え、より低い温度でガラスの熔融が可能となり、カバーガラス製造のコストをさらに低減することができる。また、イオン交換性能と歪点の向上を両立できるため、高い機械的強度が求められるカバーガラスに好適となる。これは、ガラス基板表面に十分に圧縮総力層を形成することができ、熱処理を行った際にも、表面に形成された圧縮応力層の消失を防ぐことができるためである。
【0029】
(SrO)
SrOは、ガラスの粘性を下げて、ガラスの熔融および清澄を促進する成分である。また、成形性を向上させ、ガラスの歪点やヤング率を高める成分でもある。しかし、SrOの含有量が多くなり過ぎると、ガラスの密度が上昇するため、小型化及び軽量化が求められるカバーガラスなどには不適となる。また、熱膨張率が過剰となり、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。さらに、イオン交換性能も低下するため、機械的強度を得がたくなる。したがって、SrOの含有率は、0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜0.5%がさらに一層好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0030】
(BaO)
BaOは、ガラスの粘性を下げて、ガラスの熔融および清澄を促進する成分である。また、成形性を向上させ、ガラスの歪点やヤング率を高める成分でもある。しかし、BaOの含有量が多くなり過ぎると、ガラスの密度が上昇するため、小型化及び軽量化が求められるカバーガラスなどには不適となる。また、熱膨張率が過剰となり、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。さらに、イオン交換性能も低下するため、機械的強度を得がたくなる。したがって、BaOの含有率は、0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜0.5%がさらに一層好ましい。なお、BaOは環境への付加が大きいことから0.01%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0031】
本実施形態では、SrO含有率+BaO含有率は10%未満である。SrO含有率+BaO含有率が10%未満であると、効果的にガラスの密度の上昇を防ぐことができる。つまり、SrO含有率+BaO含有率を上記範囲とすることで、上記課題に加え、カバーガラスなどを軽量化することができるという効果を得ることができる。なお、SrO含有率+BaO含有率の好ましい範囲は、0〜8%であり、0〜5%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに一層好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0032】
ここで、RO(Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種以上)は、2〜20%であることが好ましい。2%未満ではガラスの粘性が高くなって熔融が困難になり、熔融のためのコストが高くなってしまう。また、歪点も低下するため耐熱性も低下し、化学強化処理時にガラスが変形してしまうこともあり、カバーガラスに適さない。他方、ROが20%を超えると化学的耐久性が低下する。したがって、ROの含有率が2〜20%の範囲内であると、化学的耐久性を維持しつつ、ガラスの熔融性及び耐熱性を向上させることができる。なお、オーバーフローダウンドロー法を適用するためには、ガラスの粘性を低下させることが好ましいことから、ROの含有率は4%超であることが好ましく、4%超〜16%とすることがより好ましく、5〜13%とすることがさらに好ましく、5〜8%がさらに一層好ましい。
【0033】
また、本実施形態では、CaO/RO(Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種以上)の含有量比が、0.3超であることを要する。図4に示すように、CaO/ROの含有量比が0.3超であると、失透温度を効果的に低下させることができ、したがって耐失透性を効果的に向上させることが可能である。また、歪点を効果的に向上させることができ、耐熱性も向上させることができる。つまり、上記課題である耐失透性を向上させつつ、さらに耐熱性も向上させることができ、化学強化処理や他の熱処理時にガラスが変形してしまうという問題も防止することができる。なお、CaO/ROの含有量比の好ましい範囲は、0.35以上であり、0.4以上が特に好ましい。また、CaO/ROの含有量比の上限は、0.95以下が好ましく、0.85以下がさらに好ましく、0.75以下が特に好ましい。より詳細には、CaO/ROの含有量比が0.35〜0.95が好ましく、0.35〜0.85がより好ましく、0.4〜0.75がさらに好ましい。
なお、上記のことからも、CaOを含有することがより好ましいといえる。
【0034】
また、本実施形態では、LiO/(RO+LiO) (Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種以上)の含有量比が、0.3未満であることが好ましい。LiO/(RO+LiO)の含有量比が0.3未満であると、失透温度を効果的に低下させることができ、したがって耐失透性を効果的に向上させることが可能である。また、歪点を効果的に向上させることができ、耐熱性も向上させることができる。つまり、上記課題である耐失透性を向上させつつ、耐熱性も向上させることができ、化学強化処理や他の熱処理時にガラスが変形してしまうという問題も防止することができる。さらに、ガラス基板の強化を行う工程であるイオン交換処理におけるイオン交換塩の劣化を抑制することもでき、強化ガラスの製造コストを低減することができる。なお、LiO/(RO+LiO)の含有量比のより好ましい範囲は、0.08以下であり、0.05以下がさらに好ましく、0.01以下がさらに一層好ましく、0が特に好ましい。
【0035】
(ZnO)
ZnOは、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力値を高くする効果が大きい成分であるとともに、ガラスの低温粘性を低下させずに高温粘性を低下させる成分である。しかし、ZnOの含有量が多くなり過ぎると、ガラスが分相し、耐失透性が低下する。また、ガラスの密度が上昇するため、小型化及び軽量化が求められるカバーガラスなどには不適となる。したがって、ZnOの含有率は、0〜6%が好ましく、0〜4%がより好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0〜0.1%がさらに一層好ましく、0.01%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0036】
(ZrO
ZrOは、イオン交換性能を顕著に向上させるとともに、ガラスの失透温度付近の粘性や歪点を高くする成分である。また、ZrOは、ガラスの耐熱性を向上させる成分でもある。しかし、ZrOの含有量が多くなり過ぎると、失透温度が上昇し、耐失透性が低下する。したがって、耐失透性の低下を防止するために、ZrOの含有率は、4.8%以下であり、4以下であることが好ましい。また、ZrOを含有することで、カバーガラスやタッチパネルディスプレイ基板において重要となる耐熱性や、ガラス基板の化学強化に重要となるイオン交換性能を効果的に向上させることができるため、ZrOの含有率は、0.1%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましく、2%以上であることが特に好ましい。より詳細には、ZrOの含有率は、0〜4.8%であることが好ましく、0.1〜4.8%であることが好ましく、0.5〜4%であることがより好ましく、1〜4%であることがさらに好ましく、2〜4%であることがさらに好ましい。つまり、ZrOの含有率を上記範囲とすることで、上記課題である耐失透性を向上させつつ、耐熱性およびイオン交換性能も向上させることができる。これにより、イオン交換時間を低減することができ、生産性を向上させることができる。また、化学強化処理や他の熱処理時にガラスが変形してしまうという問題も防止することができ、カバーガラスの歩留まりも向上させることができる。
【0037】
(TiO
TiOは、イオン交換性能を向上させる成分であるとともに、ガラスの高温粘度を低下させる成分である。しかし、TiOの含有量が多くなり過ぎると、耐失透性が低下してしまう。さらに、ガラスが着色してしまい、カバーガラスなどには好ましくない。また、ガラスが着色してしまうことから、紫外線透過率も低下してしまうので、紫外線硬化樹脂を使用した処理を行う場合に、紫外線硬化樹脂を十分に硬化することができないという不都合が生じる。したがって、TiOの含有率は、0〜5%であることが好ましく、0〜3%未満がより好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0〜0.01%がさらに一層好ましく、さらに、不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0038】
本実施形態では、(ZrO+TiO)/SiOの含有量比が、0〜0.07未満である。エッチングによりガラス基板の形状を加工する場合、エッチング処理の後にイオン交換処理を行うことがある。ここで、イオン交換処理において、イオン交換が過剰になされるとガラス基板の内部応力に伴う形状変化が発生してしまう場合がある。つまり、過剰なイオン交換は、ガラス基板の変形を引き起こしてしまうため、エッチング精度が高い場合であっても、カバーガラスやタッチパネルディスプレイ基板には好ましくない。さらに、過剰なイオン交換がされると、強化ガラスが破損した際の衝撃も大きくなるため、身体に近づけて使用する携帯端末などのカバーガラスには特に好ましくない。ここで、(ZrO+TiO)/SiOの含有量比が0〜0.07未満であると、効果的に過剰なイオン交換を抑制することができる。なお、(ZrO+TiO)/SiOの含有量比の好ましい範囲は、0.005〜0.067であり、0.01〜0.063がより好ましく、0.02〜0.060がさらに好ましく、0.03〜0.058が特に好ましい。(ZrO+TiO)/SiOの含有量比が上記の範囲内であると、過剰なイオン交換を防ぎつつ、耐失透性を向上させ、さらに耐熱性も向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、(ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiOの含有量比が、0〜0.3未満であることが好ましい。エッチングによりガラス基板の形状を加工する場合、エッチング処理の後にイオン交換処理を行うことがある。ここで、イオン交換処理において、イオン交換が過剰になされるとガラス基板の内部応力に伴う形状変化が発生してしまう場合がある。つまり、過剰なイオン交換は、ガラス基板の変形を引き起こしてしまうため、エッチング精度が高い場合であっても、カバーガラスやタッチパネルディスプレイ基板には好ましくない。さらに、過剰なイオン交換がされると、強化ガラスが破損した際の衝撃も大きくなるため、身体に近づけて使用する携帯端末などのカバーガラスには特に好ましくない。ここで、(ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiOの含有量比が0〜0.3未満であると、効果的に過剰なイオン交換を抑制することができる。なお、(ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiOの含有量比のより好ましい範囲は、0.05〜0.3未満であり、0.1〜0.3未満がさらに好ましく、0.15〜0.2未満が特に好ましい。また、(ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiOの含有量比が上記の範囲内であると、過剰なイオン交換を防ぎつつ、耐失透性を向上させ、さらに耐熱性も向上させることができる。
【0040】
(P
は、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力層の厚みを大きくする効果が大きい成分である。しかし、Pの含有量が多くなり過ぎると、ガラスが分相し、耐水性が低下する。したがって、Pの含有率は、0〜10%が好ましく、0〜4%がより好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0〜0.1%がさらに一層好ましく、0.01%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0041】
(清澄剤)
清澄剤は、ガラスの清澄のために必要な成分であり、0.001%未満ではその効果が得られず、5%を超えると失透や着色などの原因となることから、その合計含有率は0.001〜5%が好ましく、0.01〜3%がより好ましく、0.05〜1%がさらに好ましく、0.05〜0.5%が特に好ましい。
【0042】
これら清澄剤としては、環境負荷が小さく、ガラスの清澄性に優れたものであれば特に制限されないが、例えば、酸化スズ、酸化鉄、酸化セリウム、酸化テルビウム、酸化モリブデンおよび酸化タングステンといった金属酸化物から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0043】
ただし、酸化スズはガラスを失透しやすくする成分であるため、清澄性を高めつつ失透を起こさせないためには、その含有率が0.01〜0.5%であることが好ましく、0.05〜0.3%であることがより好ましく、0.1〜0.2%であることがさらに好ましい。
【0044】
また、酸化鉄はガラスを着色させる成分であるため、清澄性を高めつつ好適な透過率を得るためには、その含有率が0.05〜0.2%であることが好ましく、0.05〜0.15%であることがより好ましく、0.05〜0.10%であることがさらに好ましい。
【0045】
酸化セリウムは、その含有率が0〜1.2%であることが好ましく、0.01〜1.2%であることがより好ましく、0.05〜1.0%であることがさらに好ましく、0.3〜1.0%であることが特に好ましい。
【0046】
また、特にガラスに高い透過率を要望される場合は、清澄剤として、SOを適用することが望ましい。SOの含有率は、0.001〜5%が好ましく、0.01〜3%がより好ましく、0.05〜1%がさらに好ましく、0.05〜0.5%がさらに一層好ましく、0.05〜0.20%であることが特に好ましい。また、清澄剤としてSOを適用する場合は、SO源となる硫酸塩とカーボンとを熔融工程において共存させることで、より高い清澄効果を得ることができる。なお、上述したように、SOと上記清澄剤とを共存させることも可能である。
【0047】
また、As、SbおよびPbOは、熔融ガラス中で価数変動を伴う反応を生じ、ガラスを清澄する効果を有する物質であるが、これ等は環境負荷が大きい物質であることから、本実施形態のガラス基板においては、ガラス中にAs、SbおよびPbOを実質的に含まないように制限する。なお、本明細書において、As、SbおよびPbOを実質的に含まないとは、0.01%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことを意味する。
【0048】
NbやLa等の希土類酸化物は、ガラスのヤング率を高める成分である。しかし、含有量が多くなり過ぎると、耐失透性が悪化する。したがって、上記NbやLa等の希土類酸化物の含有率は、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましく、さらに0.1%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0049】
なお、本実施形態において、Co、Ni等のガラスを着色するような成分は、ガラス基板やイオン交換処理後の強化ガラスの透過率を低下させるため好ましくない。例えば、タッチパネルディスプレイに用いる場合、ガラス基板や強化ガラスの透過率が低下すると、タッチパネルディスプレイの視認性が損なわれるため好ましくない。したがって、Co、Ni等のガラスを着色するような遷移金属元素は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることがさらに好ましく、さらに、0.05%未満であって不純物を除き意図的に含有させないことが特に好ましい。
【0050】
次に、本実施形態のカバーガラスの製造方法について説明する。
[カバーガラスの製造方法]
本実施形態のカバーガラスの製造方法は、(x)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(y)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程と、(z)前記板状に成形されたガラス基板にイオン交換処理を施す工程を有することを特徴とする。
前記ガラス組成については、前述のカバーガラスの説明において示した通りである。
【0051】
((x)工程)
当該(x)工程は、前記のガラス組成となるように各成分を調合したガラス原料を熔融する工程である。
具体的には、前記各成分に相当するガラス原料を秤量及び調合して、耐火レンガ、白金又は白金合金製などの熔融容器に供給し、加熱・熔融した後に、清澄均質化して所望組成を有する熔融ガラスを調製する。
【0052】
((y)工程)
当該(y)工程は、前記(x)工程で調製した所望組成の熔融ガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程である。
【0053】
板状に成形する方法としては、ダウンドロー法、フロート法、リドロー法、ロールアウト法などがあるが、本発明においては、ダウンドロー法を採用する。これは、ダウンドロー法を使用して成形したガラス基板の主表面は、熱間成形された表面であり、極めて高い平滑性を有しているためである。つまり、ダウンドロー法を使用してガラスを成形すると、成形後の研磨工程が不要となり、より生産性を向上させることができる。さらに、ダウンドロー法を使用して成形することで、マイクロクラックのない表面状態を有するガラス基板を得ることができる。また、上記ガラス基板は、エッチング工程による形状加工を行う場合、ガラス基板の両主表面に形成されたレジストパターンをマスクにして、ガラス基板を両主表面からエッチングする際に、両主表面から均等にエッチングすることができる。つまり、均一な組成を有することで、エッチングの寸法精度もよくなり、カバーガラスやタッチパネルディスプレイ基板の端面の断面形状も良好となる。
【0054】
さらに、ダウンドロー法を使用して成形したガラス基板の両主表面は、均一な組成を有しており、後述のイオン交換において、主表面間でのイオン交換速度の差が無いため、組成差によるイオン交換後の反りを防止することができる。つまり、均質のカバーガラスやタッチパネルディスプレイ基板を生産することが可能となり、生産能を向上させ且つコストも低減することができる。また、フロート法など他の成形方法を用いた場合に比べ、ダウンドロー法を用いて成形したガラス基板はエッチング速度も上昇する。
【0055】
((z)工程)
当該(z)工程は、前記板状に成形されたガラス基板にイオン交換処理を施す工程である。
【0056】
本実施形態に係るカバーガラスは、上述したように(y)工程で作製された板状のガラス基板をイオン交換処理することにより製造される。より具体的には、例えば、洗浄を終えた該ガラス基板を500℃程度に保ったKNO100%の処理浴中に約5時間浸漬して、ガラス表層部のNaイオンを、前記処理浴中のKイオンとイオン交換させ、化学強化することができる。なお、イオン交換処理時の温度、時間、イオン交換溶液などは適宜変更可能である。
【0057】
当該カバーガラスの製造方法においては、前記(y)工程と(z)工程との間に、さらに(y’)工程としてエッチング工程を設けることができる。
【0058】
((y’)工程)
当該(y’)工程は、前記(y)工程と(z)工程との間に、所望により設けられるエッチング工程である。
【0059】
本実施形態では、カバーガラスの形状加工のため、イオン交換処理工程の前にエッチング処理を行う場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0060】
まず、上述したように作製した板状のガラス基板の両主表面上にレジスト材料をコーティングする。次に、所望の外形形状を有するパターンを有するフォトマスクを介してレジスト材料を露光する。上記外形としては特に限定されないが、例えば、負の曲率を持つ部分を含む外形であってもよい。
【0061】
次に、露光後のレジスト材料を現像して、ガラス基板の被エッチング領域以外の領域にレジストパターンを形成し、ガラス基板の被エッチング領域をエッチングする。このとき、エッチャントとしてウェットエッチャントを使用した場合、ガラス基板は、等方的にエッチングされる。これにより、ガラス基板の端面は、中央部が外方に向かって最も突出し、その中央部から両主表面側に向かって緩やかに湾曲した傾斜面が形成される。なお、傾斜面と主表面との境界及び傾斜面同士の境界は、丸みを帯びた形状にすることが好ましい。
【0062】
エッチング工程において用いるレジスト材料は特に限定されないが、レジストパターンをマスクにしてガラスをエッチングする際に使用するエッチャントに対して耐性を有する材料を適用することができる。例えば、ガラスは一般的にフッ酸を含む水溶液のウェットエッチングや、フッ素系ガスのドライエッチングにより腐食されるので、フッ酸耐性に優れたレジスト材料などが好適である。また、上記エッチャントとしては、フッ酸、硫酸、硝酸、塩酸、ケイフッ酸のうち少なくとも1つの酸を含む混酸などを適用することができる。エッチャントとして上記混酸水溶液を使用することにより、所望の形状に切り抜かれたカバーガラスを得ることができる。
【0063】
また、エッチングを利用して形状加工を行うことで、マスクパターンを調整するだけで、複雑な外形形状も容易に実現することができる。さらに、エッチングにより形状加工を行うことで、より生産性も向上させることができ、加工コストも低減することができる。なお、レジスト材をガラス基板から剥離するための剥離液としては、KOHやNaOHなどのアルカリ溶液を用いることができる。上記レジスト材、エッチャント、剥離液の種類は、ガラス基板の材料に応じて適宜選択することができる。
【0064】
上述したように、エッチングを利用してカバーガラスの形状を加工することで、表面粗さが高平滑性である端面を有するカバーガラスを得ることが可能となる。つまり、機械加工により形状加工された際に必ず生じるマイクロクラックの発生を防止することができ、カバーガラスの機械的強度をさらに向上させることができる。
【0065】
次に、本実施形態の化学強化ガラス基板について説明する。
[化学強化ガラス基板]
当該化学強化ガラス基板は、ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板を化学強化し、表面に圧縮応力層が形成された化学強化ガラス基板であって、該化学強化用ガラス基板は、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ことを特徴とする。
前記ガラス組成については、前述のカバーガラスの説明において示した通りである。
【0066】
次に、本実施形態の化学強化ガラス基板の製造方法について説明する。
[化学強化ガラス基板の製造方法]
当該化学強化ガラス基板の製造方法は、(x)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(y)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程と、(z)前記板状に成形されたガラスにイオン交換処理を施す工程を有することを特徴とする。
前記の(x)工程、(y)工程および(z)工程は、前述のカバーガラスの製造方法で示した通りである。
【0067】
次に、本実施形態の化学強化用ガラス基板について説明する。
[化学強化用ガラス基板]
当該化学強化用ガラス基板は、ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板であって、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ガラスからなることを特徴とする。
前記のガラス組成については、前述のカバーガラスの説明において示した通りである。
【0068】
次に、本実施形態の化学強化用ガラス基板の製造方法について説明する。
[化学強化用ガラス基板の製造方法]
当該化学強化用ガラス基板の製造方法は、(a)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(b)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程とを有することを特徴とする。
前記の(a)工程および(b)工程は、それぞれ前述のカバーガラスの製造方法における(x)工程および(y)工程と同じである。
【0069】
次に、化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスの特性について説明する。
[化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスの特性]
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、以下に示す特性を有することが好ましい。
【0070】
(密度)
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、密度が2.8g/cm以下であることが好ましく、2.7g/cm以下であることがより好ましく、2.6g/cm以下であることがさらに好ましく、2.55g/cm以下であることが特に好ましい。ガラスの密度が小さいほどガラスの軽量化が可能であり、カバーガラスやタッチパネルディスプレイ基板などに好適となる。
【0071】
(線熱膨張係数)
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、100℃から300℃までの線熱膨張係数が50×10−7〜120×10−7/℃であることが好ましく、60×10−7〜120×10−7/℃であることがより好ましく、70×10−7〜110×10−7/℃であることがさらに好ましく、80×10−7〜100×10−7/℃であることが特に好ましい。ガラスの線熱膨張係数を上記の範囲とすることで、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合しやすくなり、上記周辺部材の剥離などを防止することができる。
【0072】
(失透温度(Tl))
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、失透温度が1090℃未満であることが好ましく、1050℃以下であることがさらに好ましく、1000℃以下であることがさらに好ましく、960℃以下であることが特に好ましい。失透温度が小さいほど製板時のガラスの失透を防止することができる。つまり、失透温度が小さいほど耐失透性を向上させることが可能となり、ダウンドロー法に好適となり、より低温度での成形が可能となるためガラス製造コストも低減することができる。また、失透温度が小さいほどガラスの成形性も向上させることが可能となる。
【0073】
(Tg)
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、Tgが500℃以上であり、510℃以上であることが好ましく、530℃以上であることがより好ましく、560℃以上であることがさらに好ましく、580℃以上であることがさらに好ましく、590℃以上であることが特に好ましい。Tgを上記範囲とすることで、耐熱性の低下やイオン交換処理によりガラス基板表面に形成された強化層の消失を防止することができる。なお、熱処理時の化学強化用ガラス基板及び化学強化ガラス基板の変形も抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、『失透温度−Tg』が500℃以下であることが好ましく、450℃以下であることがより好ましく、400℃以下であることがさらに好ましく、380℃以下であることがさらに一層好ましく、370℃以下であることが特に好ましい。『失透温度−Tg』を上記範囲とすることで、成形性を向上させることができる。
【0075】
(高温粘性)
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、高温粘性(200Pa・sの温度)が1600℃以下であることが好ましく、1560℃以下であることがより好ましく、1540℃以下であることがさらに好ましく、1520℃以下であることが特に好ましい。高温粘性を上記範囲とすることで、熔融温度の上昇や熔融炉などのガラス製造設備への負担増大を防止することができる。また、ガラスの泡品質も改善することができる。これにより、安価にガラスを製造することが可能となる。
【0076】
(歪点)
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、歪点が500℃以上であることが好ましく、520℃以上であることがより好ましく、540℃以上であることがさらに好ましく、550℃以上であることがさらに一層好ましく、560℃以上であることが特に好ましい。歪点を上記範囲とすることで、耐熱性の低下やイオン交換処理によりガラス基板表面に形成された強化層の消失を防止することができる。なお、熱処理時のガラス基板及び化学強化ガラス基板の変形も抑制することができる。
【0077】
(板厚)
本実施形態の化学強化用ガラス基板、化学強化ガラスまたはカバーガラスは、板厚が3.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましく、1.0mm以下であることがさらに好ましく、0.8mm以下であることが特に好ましい。ガラス基板や化学強化ガラスの板厚が薄い程、軽量化することでき、カバーガラスやタッチパネルディスプレイ基板などに好適となる。また、イオン交換処理を施した化学強化ガラスは、板厚が薄くとも破損し難い。例えば、ダウンドロー法で成形すれば、研磨処理等を省略しても、機械的強度が高く、表面精度が良好でかつ薄いガラス基板を得ることができる。しかし、板厚が薄くなりすぎると十分に機械強度を高くすることができないため、化学強化ガラスまたはカバーガラスは、板厚が0.3〜1.5mmであることが好ましく、0.3〜1.0mmであることがより好ましく、0.4〜0.7mmであることがさらに好ましい。
【0078】
(圧縮応力値)
本実施形態の化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、圧縮応力値が300MPa以上であることが好ましく、400MPa以上であることがより好ましい。圧縮応力値を上記範囲とすることで、ガラスは、例えばディスプレイなどを保護するために十分な強度を得ることができる。なお、圧縮応力値が高いほどガラスの強度は向上するが、強化されたガラスが破損した際の衝撃も大きくなる。上記衝撃による事故を防止するために、本実施形態の化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、圧縮応力値が950MPa以下であることが好ましく、800MPa以下あることがさらに好ましい。つまり、本実施形態の化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、圧縮応力値が300MPa〜950MPaであることが好ましく、400MPa〜900MPaであることがより好ましく、550MPa〜870MPaであることがさらに好ましく、600MPa〜800MPaであることがさらに好ましい。
【0079】
(圧縮層深さ)
本実施形態の化学強化ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、圧縮層深さが15〜90μmであり、20〜80μmであることが好ましく、25〜70μmであることがより好ましく、30〜65μmであることがさらに好ましく、30〜45μmであることがさらに好ましい。
【0080】
なお、近年カバーガラスは軽量化のために薄板化の傾向にあるが、これに伴い、圧縮層深さが薄いものの、所定値以上の圧縮応力値を有することが求められている。具体的には、カバーガラスの板厚が0.3〜1.5mmであり、かつ圧縮層深さが25〜70μm、圧縮応力値が400MPa〜900MPaであることが好ましく、カバーガラスの板厚が0.3〜1.0mmであり、かつ圧縮層深さが30〜65μm、圧縮応力値が550MPa〜870MPaであることがさらに好ましく、カバーガラスの板厚が0.3〜1.0mmであり、かつ圧縮層深さが30〜45μm、圧縮応力値が600MPa〜800MPaであることがさらに好ましい。
【0081】
(液相粘度)
本実施形態の化学強化用ガラス基板またはカバーガラスを構成するガラスは、液相粘度が160kpoise以上であり、300kpoise以上であることが好ましく、400kpoise以上であることがより好ましく、500kpoise以上であることがさらに好ましい。液相粘度が160kpoise以上であると、ダウンドロー法に好適となり、製造コストも低減することが可能となる。
【0082】
なお、ダウンドロー法(特に、オーバーフローダウンドロー法)で安定して製造を行うためには、液相粘度が160kpoise以上であり、失透温度(液相温度)が1200℃以下であるとよい。失透の発生を抑制しつつ、より安定して化学強化ガラス基板やカバーガラスの製造を行うためには、液相粘度が300kpoise以上であり、かつ失透温度(液相温度)が1090℃未満であることが好ましく、液相粘度が400kpoise以上であり、かつ失透温度(液相温度)が1050℃以下であることがより好ましい。
【0083】
(エッチング速度)
本実施形態の化学強化用ガラス基板を構成するガラスは、後述する方法で計測したエッチング速度が2.4μm/min以上であることが好ましく、3μm/min以上であることがより好ましく、3.5μm/min以上であることがさらに好ましく、4μm/min以上であることが特に好ましい。エッチング速度を上記範囲とすることで、ガラスの形状加工やエッチングを利用した端面処理の速度を向上させることができ、生産能を向上させることができる。なお、エッチング速度が高いほどガラス製品の生産能は向上するが、エッチング速度が上昇するに伴って失透温度も上昇する。そこで、耐失透性とエッチング速度向上を両立するために、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、エッチング速度が10μm/min以下であることが好ましく、8μm/min以下であることがより好ましく、7μm/min以下であることがさらに好ましく、6.5μm/min以下であることが特に好ましい。より詳細には、本実施形態の化学強化用ガラス基板を構成するガラスは、後述する方法で計測したエッチング速度が、2.4〜10μm/minであることが好ましく、3〜8μm/minであることがより好ましく、3.5〜7μm/minであることがさらに好ましく、4〜6.5μm/minであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0084】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、表中の「未」の表示は、その特性が未測定であることを意味している。
【0085】
実施例1〜18及び比較例1〜12
<ガラスの作製>
まず、第1表−1および第1表−2ならびに第2表−1および第2表−2に示すガラス組成となるように、通常のガラス原料であるシリカ、アルミナ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウムを用いてガラス原料(バッチ)を調合した。調合したバッチを、白金ルツボを用いて1550℃で4時間保持して電気炉内で加熱して溶融ガラスとし、それを炉外で鉄板上に流し出し冷却してガラスブロックとした。このガラスを電気炉中、600℃で30分保持した後、炉の電源を切り、室温まで徐冷してガラス物性評価用の試料ガラスとした。
【0086】
上述したように得られた試料ガラスについて、下記の特性を評価した。
(失透温度)
試料ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させた。幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に前記ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れ、800〜1200℃の温度勾配を持った電気炉内に24時間保持した後、炉から取り出し、ガラス内部に発生した失透を40倍の光学顕微鏡にて観察し、失透が観察された最高温度を失透温度とした。
【0087】
(歪点)
歪点Psは、試料ガラスを3mm角、長さ55mmの角柱形状に切断・研削加工し、ビーム曲げ測定装置(東京工業株式会社製)を用いて測定した。ビーム曲げ法(ASTM C−598)に従い、歪点を計算により求めた。
【0088】
(熱膨張係数及びTg)
試料ガラスをφ5mm、長さ20mmの円柱状に加工し、示差熱膨張計(Thermo Plus2 TMA8310)を用いて、熱膨張係数及びガラス転移点Tgを測定した。熱膨張係数の測定結果より、100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張係数を算出した。
【0089】
(密度)
密度は、アルキメデス法によって測定した。
【0090】
(高温度粘性)
試料ガラスを1600℃で4時間溶融・泡抜し試料引き下げ式自動測定粘度測定装置を用いて高温度域粘性を測定した。より詳細には、溶融した試料ガラス中に白金球を吊るし、容器ごと試料を引き下げる時に球にかかる粘性抵抗を荷重として測定することにより、試料の粘度を求めた。第1表―2及び第2表―2にはガラスの粘度が200dPa・sの温度を記載した。
【0091】
(脈理)
上述したように得られたガラスサンプルを目視観察し、下記の判定基準で脈理(組成ムラ)を評価した。
◎: 全くスジが発生していなかったもの
○: わずかにスジが確認されたもの
×: スジの発生が確認されたもの
【0092】
(エッチング速度)
試料ガラスを50×40×0.7mmの大きさに切断・研削・研磨し、シート状サンプルを作製した。シート状サンプル洗浄後、容器に入れたHF400ml(濃度10質量% 温度22℃)に分析試料を、20分浸漬した。水洗した後に、試験前後の厚み及び質量を測定し、試料ガラスのエッチング速度を算出した。
【0093】
<化学強化処理>
次に、洗浄を終えた試料ガラスを500℃に保ったKNO100%の処理浴中に約5時間浸漬して、ガラス表層部のNaイオンを、前記処理浴中のKイオンとイオン交換させ、化学強化した。化学強化を終えたガラス基板は、洗浄槽に順次浸漬して洗浄し、乾燥した、強化ガラスを得た。
【0094】
(圧縮応力値)
上記のように得た強化ガラスについて、表面応力計(ルケオFSM−6000LE)で干渉縞の本数とその間隔を観察し、ガラス表面近傍の圧縮応力層の圧縮応力値と圧縮応力層の厚みを算出した。算出に際し、各試料の屈折率(nd)を1.52、光弾性定数を28[(nm/cm)/MPa]とした。
【0095】
上記諸特性の評価結果を第1表−3及び第2表−3に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
また、図1に、SiO含有率−1/2Al含有率とエッチング速度との関係を示すグラフを、図2に、SiO含有率−1/2Al含有率と失透温度(Tl)との関係を表すグラフを、図3に、SiO含有率−1/2Al含有率とガラス転移点(Tg)との関係を表すグラフを、図4に、CaO/RO含有量比と失透温度との関係を表すグラフを示す。
【0103】
第1表−3から明らかなように、実施例1〜18は、失透温度が1090℃未満であり、エッチング速度は2.4μm/min以上であるため、耐失透性とエッチング速度向上を両立している。そのため、カバーガラスなどの生産性も十分に向上させることができる。
【0104】
また、上記効果に加え、実施例1〜18は、歪点が505℃以上と高いため、熱処理しても、圧縮応力層の圧縮応力値が低下し難いと考えられる。さらに、実施例1〜18は、Tgが550℃以上であるため、耐熱性に優れている。なお、圧縮応力層は、350〜950MPaの範囲にあるため、破損時の衝撃を低減することができる。
【0105】
また、実施例1〜18は、平均熱膨張係数が80〜110(×10―7/℃)であるため、金属や有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数が整合しやすくなり、上記周辺部材の剥離などを防止することが可能となる。さらに、実施例1〜18の密度は、2.8g/cm以下であるため、カバーガラスなどに適用できるほど十分に軽量化することが可能である。
【0106】
<連続式による強化用ガラス基板の製造例>
実施例12に示す組成となるよう調合したガラス原料を、耐火煉瓦製の溶解槽と白金製の攪拌槽などを備えた連続溶解装置を用いて、1520℃で溶解し、1550℃で清澄、1350℃で攪拌した後にダウンドロー法により厚さ0.7mmの薄板状に加工し、化学強化用ガラス基板を得た。また、以下のような方法で、エッチング及び化学強化を行った。
【0107】
まず、試料ガラス基板の両主表面上に、メッシュスクリーン印刷法によりカバーガラス形状のフェノール系熱硬化性樹脂パターンを厚さ20μmで形成し、このフェノール系熱硬化性樹脂パターンに対して200℃で15分のベーキング処理を施した。フェノール系熱硬化樹脂パターンをマスクにして、エッチャントとしてフッ酸(15質量%)と硫酸(24質量%)の混酸水溶液(40℃)を用いて、試料ガラスを両主表面側から被エッチング領域をエッチングして所定の形状に切り抜いた。その後、NaOH溶液を用いてガラス上に残存したフェノール系熱硬化樹脂を溶解させてガラスから剥離し、リンス処理を行った。
【0108】
続いて、洗浄を終えた試料ガラスを500℃に保ったKNO100%の処理浴中に約5時間浸漬して、ガラス表層部のNaイオンを、前記処理浴中のKイオンとイオン交換させ、化学強化した。化学強化を終えたガラス基板は、洗浄槽に順次浸漬して洗浄し、乾燥した。
【0109】
その結果、品質も良好であり、エッチング速度も十分に向上した化学強化用ガラス基板及び化学強化ガラス基板を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の化学強化ガラス基板は、携帯電話、デジタルカメラ、PDA(携帯端末)、太陽電池、フラットパネルディスプレイのカバーガラスに好適に用いられ、またそれ以外にも、高い機械的強度が要求される用途、例えば、タッチパネルディスプレイの基板、窓ガラス、磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、固体撮像素子用カバーガラス、食器などへの応用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板を化学強化し、表面に圧縮応力層が形成された化学強化ガラス基板からなり、該化学強化用ガラス基板は、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ことを特徴とするカバーガラス。
【請求項2】
LiO/(RO+LiO)含有量比が0.3未満である請求項1に記載のカバーガラス。
【請求項3】
RO含有率が4%超である請求項1または2に記載のカバーガラス。
【請求項4】
(ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiO含有量比が0.3未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項5】
TiO含有率が3%未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項6】
前記化学強化用ガラス基板は、失透温度が1090℃未満である請求項1〜5のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項7】
板厚が0.3〜1.5mmであり、かつ圧縮層深さが25〜70μm、圧縮応力値が400MPa〜900MPaである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項8】
(x)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(y)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程と、(z)前記板状に成形されたガラスにイオン交換処理を施す工程を有することを特徴とするカバーガラスの製造方法。
【請求項9】
(y)工程と(z)工程との間に、さらに(y’)工程としてエッチング工程を設ける請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(x)工程におけるLiO/(RO+LiO)含有量比が0.3未満である請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
(x)工程におけるRO含有率が4%超である請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(x)工程における(ZrO+TiO+1/2B+1/2NaO)/SiO含有量比が0.3未満である請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(x)工程におけるTiO含有率が3%未満である請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板を化学強化した化学強化ガラス基板であって、表面に圧縮応力層を有し、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ガラスからなることを特徴とする化学強化ガラス基板。
【請求項15】
ダウンドロー法により製造される化学強化用ガラス基板であって、質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満である、ガラスからなることを特徴とする化学強化用ガラス基板。
【請求項16】
(a)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(b)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程とを有することを特徴とする化学強化用ガラス基板の製造方法。
【請求項17】
(x)質量%表示で、SiO 50〜70%、Al 5〜20%、NaO 6〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 2%超〜20%およびZrO 0〜4.8%を含み、かつ(1)SiO含有率−1/2Al含有率が46.5〜59%、(2)CaO/RO(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0.3超である、(3)SrO含有率+BaO含有率が10%未満である、(4)(ZrO+TiO)/SiO含有量比が0〜0.07未満である、および(5)B/RO(ただし、RはLi、NaおよびKの中から選ばれる少なくとも1種である。)含有量比が0〜0.1未満であるガラス組成となるように調合したガラス原料を熔融する工程と、(y)前記熔融工程により熔融したガラスを、ダウンドロー法により板状に成形する成形工程と、(z)前記板状に成形されたガラスにイオン交換処理を施す工程を有することを特徴とする化学強化ガラス基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−72054(P2012−72054A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186128(P2011−186128)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(598055910)AvanStrate株式会社 (81)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】