説明

カバーテープおよび電子部品用包装体

【課題】キャリアテープとのシール強度のバラツキを小さくでき、また、帯電防止性に優れたカバーテープを提供する。また、ジャンピングトラブルやチップ立ち現象等のトラブルが起こりにくい電子部品用包装体を提供する。
【解決手段】本発明のカバーテープ10は、基材11と、帯電防止剤を含有する帯電防止層12と、基材11および帯電防止層12の間に設けられ、帯電防止接着剤を含有する帯電防止接着剤層13と、帯電防止層12における帯電防止接着剤層13側と反対側に設けられたシーラント層14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープの電子部品収納部を封止するためのカバーテープに関する。また、電子部品を包装するための電子部品用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品を収納するキャリアテープから回路基板への電子部品の実装が高速化しており、それに伴って、キャリアテープからカバーテープを引き剥がす速度も高速化している。ところが、キャリアテープとカバーテープとのシール強度(剥離強度)にバラツキがある場合には、カバーテープを引き剥がす速度を速くすると、カバーテープを円滑に引き剥がせなくなることがある。カバーテープを円滑に引き剥がせないと、キャリアテープが大きく揺れるため、電子部品がキャリアテープから飛び出す「ジャンピングトラブル」や、カバーテープを引き剥がす際に発生する静電気によって微小電子部品がカバーテープに付着する「チップ立ち現象」が発生することがある。
これらの対策として、特許文献1では、カバーテープを構成するヒートシール層(シーラント層)表面に帯電防止剤を塗布したものが提案されている。
また、特許文献2では、基材フィルムとシーラント層との間に、ポリエチレンイミンを主成分として含有する帯電防止層を設けたカバーテープが提案されている。特許文献3では、カリウムアイオノマーを含むシーラント層を有するカバーテープが提案されている。
【特許文献1】特許第3425547号公報
【特許文献2】特開2002−326322号公報
【特許文献3】特開平09−175592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、シーラント層表面に帯電防止剤を塗布した場合には、シール強度のバラツキが大きくなるため、カバーテープを円滑に引き剥がすことが困難であった。しかも、帯電防止剤とキャリアテープの帯電列の違いから剥離帯電を引き起こすこともあった。
また、特許文献2,3に記載のカバーテープは帯電防止性が不充分であり、チップ立ち現象を解決できなかった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、キャリアテープとのシール強度のバラツキを小さくでき、また、帯電防止性に優れたカバーテープを提供することを目的とする。また、ジャンピングトラブルやチップ立ち現象等のトラブルが起こりにくい電子部品用包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の構成を含む。
[1] 基材と、帯電防止剤を含有する帯電防止層と、基材および帯電防止層の間に設けられ、帯電防止接着剤を含有する帯電防止接着剤層と、帯電防止層における帯電防止接着剤層側と反対側に設けられたシーラント層とを有することを特徴とするカバーテープ。
[2] 帯電防止層と帯電防止接着剤層との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層を有することを特徴とする[1]に記載のカバーテープ。
[3] 帯電防止層とシーラント層との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層を有することを特徴とする[1]に記載のカバーテープ。
[4] 帯電防止接着剤層に含まれる帯電防止接着剤が、第4級アンモニウム塩を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のカバーテープ。
[5] 帯電防止層に含まれる帯電防止剤が、カリウムアイオノマーであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のカバーテープ。
[6] 帯電防止接着剤層の厚さが0.1〜2.0μmであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のカバーテープ。
[7] 帯電防止層の厚さが1〜50μmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のカバーテープ。
[8] 基材の表面抵抗値が1×1013Ω以上であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のカバーテープ。
[9] 電子部品収納部を有するキャリアテープと、該キャリアテープの電子部品収納部を封止する[1]〜[8]のいずれかに記載のカバーテープとを備えることを特徴とする電子部品用包装体。
【発明の効果】
【0005】
本発明のカバーテープは、キャリアテープとのシール強度のバラツキを小さくでき、また、帯電防止性に優れたものである。
本発明のカバーテープにおいて、帯電防止層と帯電防止接着剤層との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層を有する場合には、帯電防止層と帯電防止接着剤層との接着強度を高くできる。
また、本発明のカバーテープにおいて、帯電防止層とシーラント層との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層を有する場合には、帯電防止層とシーラント層との接着強度を高くできる。
本発明のカバーテープでは、帯電防止接着剤層に含まれる帯電防止接着剤が、第4級アンモニウム塩を含有すれば、帯電防止性および接着性をより高くできる。
また、本発明のカバーテープでは、帯電防止層に含まれる帯電防止剤が、カリウムアイオノマーであれば、シール強度のバラツキをより小さくできる。
本発明の電子部品用包装体は、ジャンピングトラブルやチップ立ち現象等のトラブルが起こりにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(カバーテープ)
本発明のカバーテープの一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例のカバーテープを示す。このカバーテープ10は、基材11と、帯電防止層12と、基材11および帯電防止層12の間に設けられた帯電防止接着剤層13と、帯電防止層12における帯電防止接着剤層13と反対側の面に設けられたシーラント層14とを有するものである。
【0007】
[基材]
基材11としては、例えば、プラスチックフィルムが使用されるが、プラスチックフィルムの中でも、強度の点から、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド等が挙げられる。
二軸延伸フィルムの中でも、強度、耐熱性、透明性の点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0008】
基材11の表面には、帯電防止処理が施されていないことが好ましく、表面抵抗値が1×1013Ω以上であることが好ましい。基材11の表面に帯電防止剤が存在していないと、カバーテープ10をキャリアテープにヒートシールするためのヒートシールバー表面に、基材11上の帯電防止剤が付着しにくい。
【0009】
基材11の厚さは9〜50μmであることが好ましく、12〜25μmであることがより好ましい。基材11の厚さが9μm以上であれば、カバーテープ10の強度を充分に確保できる。一方、基材11の厚さが50μm以下であれば、取り扱い性が高くなる上に、ヒートシールの際の熱伝導時間を短くできるため、シール速度を高くでき、しかもキャリアテープに対するカバーテープ10の接着性を向上させることができる。
【0010】
[帯電防止層]
帯電防止層12は帯電防止剤を含有する層である。帯電防止剤としては、例えば、導電性化合物、界面活性剤、帯電防止性樹脂などが挙げられる。
【0011】
導電性化合物としては、例えば、銀、銅、アルミニウム等の金属、酸化錫、酸化インジウム、酸化鉛等の金属酸化物、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素材料などが挙げられる。
【0012】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキルアミン・アミド類、ソルビタン類等の非イオン系界面活性剤;脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジウム塩類等のカチオン系界面活性剤;脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、脂肪族アミン等のアニオン系界面活性剤;ベンダイン型、イミグゾリン誘導体、両性イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0013】
帯電防止性樹脂としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子、カリウムアイオノマー、ポリエーテルエステルアミド、ポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0014】
上記帯電防止剤の中でも、湿度による帯電防止性の変動が小さく、また、シール強度のバラツキをより小さくできることから、カリウムアイオノマーが好ましい。
ここで、カリウムアイオノマーとは、エチレン−アクリル酸共重合体におけるアクリル酸の水素イオンがカリウムイオンに置換されたものである。
【0015】
帯電防止層12中には、帯電防止剤同士を結着するバインダを含有してもよい。バインダとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0016】
帯電防止層12の厚さは1〜50μmであることが好ましい。帯電防止層12の厚さが1μm以上であれば、カバーテープ10の帯電防止性がより高くなり、50μm以下であれば、ヒートシールの際の熱伝導が極端に低下せず、キャリアテープに対するカバーテープ10の接着性低下を防止できる。
【0017】
[帯電防止接着剤層]
帯電防止接着剤層13は帯電防止接着剤を含有し、基材11と帯電防止層12とを接着する層である。帯電防止接着剤は、帯電防止性と接着性を兼ね備えたものであればよいが、帯電防止性および接着性をより高くできることから、第4級アンモニウム塩を含有するものが好ましい。第4級アンモニウム塩を含有する帯電防止接着剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩型界面活性剤と接着性樹脂とを含有する帯電防止性組成物、第4級アンモニウム塩を有する高分子などが挙げられる。
【0018】
帯電防止性組成物に含まれる第4級アンモニウム塩型界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウム塩、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のトリアルキルベンジルアンモニウム塩などが挙げられる。
接着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル共重合体などが挙げられる。
【0019】
第4級アンモニウム塩を有する高分子としては、例えば、第4級アンモニウム塩を有するアクリル単量体単位を含有するアクリル重合体などが挙げられる。
ここで、第4級アンモニウム塩を有するアクリル単量体単位とは、化学式(1)で表されるものである。
【0020】
【化1】

【0021】
化学式(1)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示す。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルキル基の中でも、カバーテープ10の帯電防止性がより高くなることから、炭素数1〜5の直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基)が好ましい。
は、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
としては、[B(OCH 、[B(OC、[B(OC、[B(OC等のホウ酸エステルアニオン;I、Cl等のハロゲンアニオン;HPO、BF、CHSO 、CSO、CHCOO、NO、SbF、PFなどが挙げられる。中でも、第4級アンモニウム塩が解離した後の電位差が大きくなることから、ホウ酸エステルアニオンが好ましい。
【0022】
第4級アンモニウム塩を有するアクリル単量体単位を含有するアクリル重合体においては、第4級アンモニウム塩を有するアクリル単量体単位が3〜10質量%含まれることが好ましい。該単量体単位が3質量%以上であれば、帯電防止性を充分に発揮でき、10質量%以下であれば、安定な帯電防止剤となる。
【0023】
帯電防止接着剤層13の厚さは0.1〜2.0μmであることが好ましい。帯電防止接着剤層13の厚さが0.1μm以上であれば、カバーテープ10の帯電防止性がより高くなり、2.0μm以下であれば、キャリアテープに対するカバーテープ10の接着性を向上させることができる。
【0024】
[シーラント層]
シーラント層14は、キャリアテープと接着できる樹脂を含む層である。シーラント層14を構成するシーラント樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、(SBS)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系重合体、これらのブレンド物;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン等のエチレン系重合体、これらのブレンド物;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
シーラント層14の厚さは1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。シーラント層の厚さが1μm以上であれば、キャリアテープとの接着強度を充分に確保でき、50μm以下であれば、キャリアテープから剥離した際のシール強度が高くなりすぎることを防止でき、キャリアテープからカバーテープ10を容易に剥離できる。
【0026】
[製造方法]
カバーテープ10の製造方法の一例について説明する。
この例の製造方法では、まず、基材11の片面に、帯電防止接着剤を含む塗布液を塗布し、乾燥して、帯電防止接着剤層13を形成する。その際の塗布方法としては、例えば、スプレー装置を用いる方法、ロールコーター、グラビアコーター等の塗布装置を用いる方法が挙げられる。
次いで、帯電防止性樹脂とシーラント樹脂とを共押出成形して、帯電防止層12とシーラント層14とを形成する。そして、帯電防止接着剤層13の表面に帯電防止層12およびシーラント層14を、帯電防止接着剤層13と帯電防止層12とが接するように積層し、これらを熱圧着して、カバーテープ用積層体を得る。そして、このカバーテープ用積層体を裁断して、カバーテープ10を得る。
【0027】
また、カバーテープ10は、上記の例以外の方法で製造してもよく、例えば、帯電防止層12およびシーラント層14を共押出成形以外の方法で形成してもよい。具体的には、帯電防止剤を含む塗布液を帯電防止接着剤層13に塗布することにより、帯電防止層12を形成してもよい。また、シーラント樹脂を含む塗布液を帯電防止層12に塗布することにより、シーラント層14を形成してもよい。
その際の塗布液の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法などが挙げられる。
ただし、帯電防止層12およびシーラント層14におけるコンタミネーションを少なくできることから、共押出成形により帯電防止層12およびシーラント層14を形成し、これらを帯電防止接着剤層13に熱圧着することが好ましい。
また、帯電防止剤を帯電防止層12またはシーラント層14にコートし、ドライラミネートにより帯電防止層12をシーラント層14に貼り合わせてもよい。
【0028】
以上説明したカバーテープ10では、帯電防止層12を有しており、シーラント層14の表面に帯電防止剤を塗布する必要がないため、キャリアテープに接着した際のシール強度のバラツキを小さくできる。
また、カバーテープ10は、帯電防止層12だけでなく、帯電防止接着剤層13によっても帯電防止性を発揮するため、帯電防止性に優れる。
さらに、このカバーテープ10は、基材11と帯電防止層12との間に帯電防止接着剤層13が設けられているため、基材11と帯電防止層12との接着強度を高くできる。特に、帯電防止層12をカリウムアイオノマーにより形成した場合には、基材11と帯電防止層12との接着強度向上の効果がとりわけ発揮される。
【0029】
なお、本発明のカバーテープは上述した実施形態例に限定されない。例えば、図2に示すように、帯電防止層12と帯電防止接着剤層13との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層15が設けられていてもよい。帯電防止層12と帯電防止接着剤層13との間に中間層15が設けられていると、帯電防止層12と帯電防止接着剤層13との接着強度を高くできる。
また、図3に示すように、帯電防止層12とシーラント層14との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層15が設けられていてもよい。帯電防止層12とシーラント層14との間に中間層15が設けられていると、帯電防止層12とシーラント層14との接着強度を高くできる。
ここで、中間層15に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、他のエチレン系重合体、これらのブレンド物、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0030】
中間層15の厚さは10〜50μmであることが好ましい。中間層15の厚さが10μm以上であれば、カバーテープ10の引き裂き強度を高くでき、50μm以下であれば、キャリアテープに対するカバーテープ10の接着性低下を防止できる。
【0031】
(電子部品用包装体)
本発明の電子部品用包装体は、電子部品収納部を有するキャリアテープと、該キャリアテープの電子部品収納部を封止する上述したカバーテープとを備えるものである。
【0032】
キャリアテープとしては、例えば、樹脂製のフィルムを電子部品等の寸法に合わせてエンボス成形されたものが挙げられる。キャリアテープを構成する樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂には、帯電防止剤や導電性フィラーがあらかじめ添加されてもよい。
また、キャリアテープのカバーテープが接する側の面には、導電性付与物質と、ウレタン系樹脂あるいはアクリル系樹脂とを含む塗布液が塗布されて、帯電防止処理が施されていることが好ましい。
【0033】
本発明の電子部品用包装体は、例えば、キャリアテープの電子部品収納部に電子部品等を収納した後、電子部品収納部が覆うようにキャリアテープにカバーテープを重ね、カバーテープの長手方向の両縁部をそれぞれ0.3〜1.0mm幅で連続的にシールし、リールに巻き取ることによって得られる。
【0034】
本発明の電子部品用包装体は、上述したカバーテープによりキャリアテープの電子部品収納部を封止するため、キャリアテープとカバーテープとのシール強度のバラツキが小さい。そのため、カバーテープを円滑に引き剥がすことができ、ジャンピングトラブルを防止できる。また、カバーテープの帯電防止性が高く、キャリアテープからカバーテープを剥がした際に発生した静電気の帯電を防止できるため、チップ立ち現象を防止できる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
基材である厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、第4級アンモニウム塩を有する単量体単位を含有するアクリル重合体(帯電防止接着剤)を含む塗布液(アルテックエーピーエス製BONDEIP)を、乾燥後の厚さが1μmになるようにグラビアコーターにより塗布し、乾燥して、帯電防止接着剤層を形成した。
次いで、帯電防止性樹脂であるカリウムアイオノマー(三井・デュポンポリケミカル社製ハイミランMK153)とエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製CMPS:V−201)とを、各々厚さ30μm、20μmになるように共押出成形して、帯電防止層とシーラント層を形成した。そして、その帯電防止層およびシーラント層を上記帯電防止接着剤層上に積層した。その際、帯電防止接着剤層に帯電防止層が接するように配置した。その後、これらを熱圧着して、カバーテープ用積層体を得た。
そして、このカバーテープ用積層体を幅13.5mmに裁断して、カバーテープを得た。
【0036】
このカバーテープの帯電防止性を以下のように評価した。また、コンタミネーションを目視により評価した。これらの評価結果を表1に示す。
帯電防止性(印加電圧の減衰時間):温度23℃、相対湿度50%の環境下にカバーテープを24時間放置し、decay meter(ets社製)を用いて、印加電圧の絶対値が5000Vから50Vまで減衰する時間(表中では、減衰時間と表記する。)を測定した。この減衰時間が短い程、帯電防止性に優れることを示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例2)
基材である厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、第4級アンモニウム塩を有する単量体単位を含有するアクリル重合体を含む塗布液を、乾燥後の厚さが2μmになるようにグラビアコーターにより塗布し、乾燥して、帯電防止接着剤層を形成した。
次いで、ポリエチレン(三井石油化学製ウルトゼックス3550A)と、上記カリウムアイオノマーと、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を、各々厚さ15μm、15μm、20μmになるように共押出成形して、中間層と帯電防止層とシーラント層を形成した。次いで、その中間層と帯電防止層とシーラント層を上記帯電防止接着剤層上に積層した。その際、帯電防止接着剤層に中間層が接し、シーラント層が露出するように配置した。その後、これらを熱圧着して、カバーテープ用積層体を得た。
そして、このカバーテープ用積層体を幅13.5mmに裁断して、カバーテープを得た。このカバーテープを実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0039】
(実施例3)
基材である厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、第4級アンモニウム塩を有する単量体単位を含有するアクリル重合体を含む塗布液を、乾燥後の厚さが1μmになるようにグラビアコーターにより塗布し、乾燥して、帯電防止接着剤層を形成した。
次いで、上記カリウムアイオノマーと、上記ポリエチレンと、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を、各々厚さ15μm、15μm、20μmになるように共押出成形して、帯電防止層と中間層とシーラント層を形成した。次いで、その帯電防止層と中間層とシーラント層を上記帯電防止接着剤層上に積層した。その際、帯電防止接着剤層に帯電防止層が接し、シーラント層が露出するように配置した。その後、これらを熱圧着して、カバーテープ用積層体を得た。
そして、このカバーテープ用積層体を幅13.5mmに裁断して、カバーテープを得た。このカバーテープを実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
基材である厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、第4級アンモニウムのホウ酸エステル塩を有するアクリル単量体単位を5質量%含有するアクリル重合体と、水とを含む塗布液を、乾燥後の厚さが0.5μmになるようにグラビアコーターにより塗布し、乾燥して、帯電防止接着剤層を形成した。
また、上記ポリエチレンと、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を、各々厚さ30μm、20μmになるように共押出成形して、中間層とシーラント層を形成した。次いで、その中間層と上記帯電防止接着剤層とをドライラミネート法により貼り合わせて、カバーテープ用積層体を得た。
そして、このカバーテープ用積層体を幅13.5mmに裁断して、カバーテープを得た。このカバーテープを実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
基材である厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ウレタン系のアンカーコート剤(東洋モートン社製EL−510)を、乾燥後の厚さが0.3μmになるようにグラビアコーターにより塗布し、乾燥して、アンカーコート層を形成した。
また、上記カリウムアイオノマー、上記ポリエチレンと、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を、各々厚さ15μm、15μm、20μmになるように共押出成形して、帯電防止層と中間層とシーラント層を形成した。次いで、その帯電防止層と中間層とシーラント層を上記アンカーコート層上に積層した。その際、アンカーコート層に帯電防止層が接し、シーラント層が露出するように配置した。その後、これらを熱圧着して、カバーテープ用積層体を得た。
そして、このカバーテープ用積層体を幅13.5mmに裁断して、カバーテープを得た。このカバーテープを実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0042】
基材の片面に帯電防止接着剤層と帯電防止層とシーラント層とが形成された実施例1〜3のカバーテープは帯電防止性に優れていた。また、実施例1のカバーテープは帯電防止層とシーラント層とを、実施例2のカバーテープは帯電防止層とシーラント層と中間層とを共押出成形により形成し、これらを帯電防止接着剤層に熱圧着したため、コンタミネーションが少なかった。
これに対し、帯電防止層を有さない比較例1のカバーテープは帯電防止性が低かった。また、比較例1では、帯電防止接着剤層と、共押出成形により形成した中間層およびシーラント層とを、ドライラミネート法により貼り合わせたため、コンタミネーションが多かった。
帯電防止性を有さない接着剤により基材と帯電防止層とを接着した比較例2のカバーテープは帯電防止性が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のカバーテープの一実施形態例を示す断面図である。
【図2】本発明のカバーテープの他の実施形態例を示す断面図である。
【図3】本発明のカバーテープの他の実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 カバーテープ
11 基材
12 帯電防止層
13 帯電防止接着剤層
14 シーラント層
15 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、帯電防止剤を含有する帯電防止層と、基材および帯電防止層の間に設けられ、帯電防止接着剤を含有する帯電防止接着剤層と、帯電防止層における帯電防止接着剤層側と反対側に設けられたシーラント層とを有することを特徴とするカバーテープ。
【請求項2】
帯電防止層と帯電防止接着剤層との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層を有することを特徴とする請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】
帯電防止層とシーラント層との間に、熱可塑性樹脂を含有する中間層を有することを特徴とする請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項4】
帯電防止接着剤層に含まれる帯電防止接着剤が、第4級アンモニウム塩を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカバーテープ。
【請求項5】
帯電防止層に含まれる帯電防止剤が、カリウムアイオノマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカバーテープ。
【請求項6】
帯電防止接着剤層の厚さが0.1〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカバーテープ。
【請求項7】
帯電防止層の厚さが1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカバーテープ。
【請求項8】
基材の表面抵抗値が1×1013Ω以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカバーテープ。
【請求項9】
電子部品収納部を有するキャリアテープと、該キャリアテープの電子部品収納部を封止する請求項1〜8のいずれかに記載のカバーテープとを備えることを特徴とする電子部品用包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−331783(P2007−331783A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164571(P2006−164571)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】