説明

カバー構造

【課題】乗員の頭と天井部のタングプレートとの干渉を未然に防止して運転室内における乗員の安全性を確保し得るカバー構造を提供する。
【解決手段】ベッド吊り下げ支持用のベルト1のバックル2を係合し得るよう運転室3の天井部4に下向きに突設されたタングプレート5の天井貫通部を被覆するカバー構造に関し、前記天井部4の一般面に対し上向きに窪む窪み形状を有し且つその窪み空間10内に前記タングプレート5が張り出すよう該タングプレート5を挿通せしめるスリット11を形成したカバー本体9を備え、該カバー本体9のスリット11から室内側に張り出すタングプレート5と直径165mm球のヘッドフォームとの干渉を避け得るよう前記カバー本体9の左右両側に前記タングプレート5より低い位置まで張り出す張出部13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長距離輸送を目的とした大型トラック等においては、その運転室内における座席の直後に仮眠用のベッドルームを備えたものがあるが、キャブ上面にFRP製のウィンドデフレクタを搭載したハイルーフ車に関し、前記ウィンドデフレクタの内部空間の後方部分を活用して前記ベッドルームを上下方向に拡張し、ここに上下二段のベッドを備えることが提案されている。
【0003】
そして、上段側のベッドの後端部をキャブのバックパネルに対し傾動自在にヒンジ連結し、不要時に前端部側を跳ね上げてバックパネルに沿うように折り畳んで収容し且つ使用時には水平状態に展開して前端部を天井部からベルトで吊り下げ支持し得るようにすることが考えられている。
【0004】
また、上段側のベッドの前端部を天井部からベルトで吊り下げ支持するに際しては、前記ベッドの前端部側にベルトを取り付け、該ベルトの先端部に設けたバックルを、運転室の天井部に設けたタングプレートに対し、シートベルトの脱着機構と略同様の形式で係合することが検討されている。
【0005】
尚、このような運転室のカバー部材の取り付けに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等があり、また、乗り物用折り畳み式ベッドに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献2等がある。
【特許文献1】特開2002−347515号公報
【特許文献2】特開平9−220968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、斯かる構造を採用した場合には、運転室の天井部にタングプレートが下向きに突設されることになり、運転室内で乗員が不用意に頭を上げてタングプレートに頭をぶつけてしまう虞れがあった。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、乗員の頭と天井部のタングプレートとの干渉を未然に防止して運転室内における乗員の安全性を確保し得るカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、運転室の天井部に連結対象物のバックルを係合し得るよう下向きに突設されたタングプレートの天井貫通部を被覆するカバー構造であって、前記天井部の一般面に対し上向きに窪む窪み形状を有し且つその窪み空間内に前記タングプレートが張り出すよう該タングプレートを挿通せしめるスリットを形成したカバー本体を備え、該カバー本体のスリットから室内側に張り出すタングプレートと直径165mm球のヘッドフォームとの干渉を避け得るよう前記カバー本体の左右両側に前記タングプレートより低い位置まで張り出す張出部を形成したことを特徴とするものである。
【0009】
而して、このようにすれば、タングプレートが天井部の一般面より上向きに窪む窪み空間内に収まるので、タングプレート及びカバー本体が天井部の一般面から大きく下方へ張り出すような配置を採らなくて済み、これらと乗員の頭が干渉する虞れが大幅に低減されることになる。
【0010】
また、万一、運転室内で乗員が不用意に頭を上げてカバー本体に当たってしまったとしても、平均的な乗員の頭部の形に相当する直径165mm球のヘッドフォームがタングプレートと干渉しないように張出部が形成されているので、乗員の頭はタングプレートより低いカバー本体の張出部に先行して当たり、この張出部に挟まれた窪み空間内のタングプレートに頭が当たることが未然に防止される。
【0011】
更に、本発明をより具体的に実施するに際しては、スリットをタングプレートの周囲に所要のクリアランスを有するように形成し、カバー本体の上面側で前記スリットを広範囲に被覆し且つ前記タングプレートの断面形状と略合致する差込口を前記スリットと対応する位置に備えた遮蔽シートを前記カバー本体の上面に対しスライド可能に設けることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、組み付けのバラツキによりカバー本体とタングプレートとの位置関係に多少のズレが生じても、そのズレをカバー本体の上面側で遮蔽シートをスライドさせて吸収し、該遮蔽シートによりスリットとタングプレートとの間の隙間を塞ぎ続けることが可能であるため、タングプレートの天井貫通部の見栄えを良好に保つことが可能である。
【0013】
また、特にルーフパネルが光透過素材で構成されているような場合には、ルーフパネルを透過した光がスリットとタングプレートとの隙間から漏れ出てしまう虞れも想定されるが、前述のように、スリットとタングプレートとの間の隙間が遮蔽シートにより確実に塞がれるようになっていれば、このような光漏れの心配も回避することが可能となる。
【0014】
更に、本発明においては、カバー本体の前後何れか一方に天井トリムを差し込んで固定し得るように構成すると共に、他方を締結具により締結して天井部に固定し得るように構成することが好ましく、このようにすれば、カバー本体の前後何れか一方に天井トリムを差し込んで固定し、他方を締結具で締結して固定するだけで簡便にカバー本体の取り付けを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のカバー構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、タングプレートを天井部の一般面より上向きに窪む窪み空間内に収めることができ、タングプレート及びカバー本体が天井部の一般面から大きく下方へ張り出すような配置を採らなくて済むので、これらと乗員の頭が干渉する虞れを大幅に低減することができ、しかも、万一、運転室内で乗員が不用意に頭を上げてカバー本体に当たってしまったとしても、乗員の頭はタングプレートより低いカバー本体の張出部に先行して当たり、この張出部に挟まれた窪み空間内のタングプレートに頭が当たることを防止することができるので、運転室内における乗員の安全性の確保を図ることができる。
【0017】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、組み付けのバラツキによりカバー本体とタングプレートとの位置関係に多少のズレが生じても、そのズレをカバー本体の上面側で遮蔽シートをスライドさせて吸収し、該遮蔽シートによりスリットとタングプレートとの間の隙間を塞ぎ続けることができるので、タングプレートの天井貫通部の見栄えを良好に保つことができ、特にルーフパネルが光透過素材で構成されているような場合には、ルーフパネルを透過した光がスリットとタングプレートとの隙間から漏れ出てしまう虞れも回避することができる。
【0018】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、カバー本体の前後何れか一方に天井トリムを差し込んで固定し、他方を締結具で締結して固定するだけで簡便にカバー本体の取り付けを行うことができるので、上向きの作業となることで負担が大きなカバー本体の取り付け作業を大幅に簡便化することができ、作業者の労力負担を著しく軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1〜図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、キャブ上面にFRP製のウィンドデフレクタを搭載したハイルーフ車に関し、座席の直後のベッドルームに備えた上下二段のベッドのうちの上段側のベッドを運転室の天井部から吊り下げ支持する機構に適用した場合を例示している。
【0021】
図1に示す如く、上段側のベッド(図示せず)の前端部から延びるベルト1のバックル2を係合し得るよう運転室3の天井部4にタングプレート5が下向きに突設されており、該タングプレート5は、ブラケット6により天井部4の天井トリム7とウィンドデフレクタ8(ルーフパネル)との間で支持されるようになっている。
【0022】
そして、タングプレート5の天井貫通部は、カバー本体9(図2及び図3参照)により被覆されるようになっており、このカバー本体9は、前記天井部4の一般面に対し上向きに窪む窪み形状を有し且つその窪み空間10(図1参照)内に前記タングプレート5が張り出すよう該タングプレート5を挿通せしめるスリット11を形成している。
【0023】
しかも、図4(図5は図1のIV−IV矢視の断面図)に示す如く、このカバー本体9のスリット11から室内側に張り出すタングプレート5と直径165mm球のヘッドフォーム12との干渉を避け得るよう前記カバー本体9の左右両側に前記タングプレート5より低い位置まで張り出す張出部13が形成されている。
【0024】
ここで、直径165mm球のヘッドフォーム12とは、一般に上部車室内構造物に対する衝撃試験等を行う場合に使用される人の頭を模擬したものであり、平均的な人の頭部の形に相当するものとして扱われているものである。
【0025】
また、本形態例においては、前記スリット11がタングプレート5の周囲に所要のクリアランスを有するように大きめに形成されており、カバー本体9の上面側で前記スリット11を広範囲に被覆し且つ前記タングプレート5の断面形状と略合致する差込口14aを前記スリット11と対応する位置に備えた遮蔽シート14が前記カバー本体9の上面に対しスライド可能に設けられている。
【0026】
即ち、図2及び図3、図5(図5は図3のV−V矢視の断面図)に示す如く、カバー本体9の上面におけるスリット11の周囲四箇所に上向きの突起15が一体的に形成されているので、該各突起15が前記遮蔽シート14の四隅の長孔16を貫通するように前記遮蔽シート14を前記カバー本体9の上面側に配置し、左右に並ぶ一対の突起15を一組として貫通させて前記遮蔽シート14の前後部を上面から押さえ得るよう抜脱防止シート17を配置し、その前後の抜脱防止シート17を前記各突起15にプッシュナット18を装着して固定している(プッシュナット18が長孔16より十分に大きい場合は抜脱防止シート17を省略しても良い)。
【0027】
更に、前記カバー本体9の上面における後部側の両側には、上向きに立ち上がってから後方に向けL字状に屈曲して延びる係合爪19が設けられており、該係合爪19とカバー本体9の上面との間に天井トリム7を差し込んで前記カバー本体9の後部を固定し得るようにしてある。
【0028】
他方、前記カバー本体9の前部側の両側には、リテーナ20(締結具)を通し得るよう締結孔21が開口されていると共に、該各締結孔21に対峙するよう前記リテーナ20の嵌合具22がブラケット23により支持されて設けられており、前記リテーナ20を窪み空間10側から締結孔21を通し前記嵌合具22に押し込んで締結することにより前記カバー本体9の前部を天井部4に固定し得るようにしてある。
【0029】
而して、このようにタングプレート5の天井貫通部を被覆するカバー構造を構成すれば、タングプレート5が天井部4の一般面より上向きに窪む窪み空間10内に収まるので、タングプレート5及びカバー本体9が天井部4の一般面から大きく下方へ張り出すような配置を採らなくて済み、これらと乗員の頭が干渉する虞れが大幅に低減されることになる。
【0030】
また、万一、運転室3内で乗員が不用意に頭を上げてカバー本体9に当たってしまったとしても、平均的な乗員の頭部の形に相当する直径165mm球のヘッドフォーム12がタングプレート5と干渉しないように張出部13が形成されているので、乗員の頭はタングプレート5より低いカバー本体9の張出部13に先行して当たり、この張出部13に挟まれた窪み空間10内のタングプレート5に頭が当たることが未然に防止される。
【0031】
更に、組み付けのバラツキによりカバー本体9とタングプレート5との位置関係に多少のズレが生じても、そのズレをカバー本体9の上面側で遮蔽シート14をスライドさせて吸収し、該遮蔽シート14によりスリット11とタングプレート5との間の隙間を塞ぎ続けることが可能であるため、タングプレート5の天井貫通部の見栄えを良好に保つことが可能である。
【0032】
また、特に本形態例のように、ルーフパネルがFRP製のウィンドデフレクタ8の如き光透過素材で構成されているような場合には、ルーフパネルを透過した光がスリット11とタングプレート5との隙間から漏れ出てしまう虞れも想定されるが、前述のように、スリット11とタングプレート5との間の隙間が遮蔽シート14により確実に塞がれるようになっていれば、このような光漏れの心配も回避することが可能となる。
【0033】
更に、本形態例においては、係合爪19とカバー本体9の上面との間に天井トリム7を差し込んで前記カバー本体9の後部を固定し、前記リテーナ20を窪み空間10側から締結孔21を通し前記嵌合具22に押し込んで締結することにより前記カバー本体9の前部を天井部4に固定するだけで簡便にカバー本体9の取り付けを行うことが可能となる。
【0034】
従って、上記形態例によれば、タングプレート5を天井部4の一般面より上向きに窪む窪み空間10内に収めることができ、タングプレート5及びカバー本体9が天井部4の一般面から大きく下方へ張り出すような配置を採らなくて済むので、これらと乗員の頭が干渉する虞れを大幅に低減することができ、しかも、万一、運転室3内で乗員が不用意に頭を上げてカバー本体9に当たってしまったとしても、乗員の頭はタングプレート5より低いカバー本体9の張出部13に先行して当たり、この張出部13に挟まれた窪み空間10内のタングプレート5に頭が当たることを防止することができるので、運転室3内における乗員の安全性の確保を図ることができる。
【0035】
また、組み付けのバラツキによりカバー本体9とタングプレート5との位置関係に多少のズレが生じても、そのズレをカバー本体9の上面側で遮蔽シート14をスライドさせて吸収し、該遮蔽シート14によりスリット11とタングプレート5との間の隙間を塞ぎ続けることができるので、タングプレート5の天井貫通部の見栄えを良好に保つことができ、ルーフパネルを成すウィンドデフレクタ8を透過した光がスリット11とタングプレート5との隙間から漏れ出てしまう虞れも回避することができる。
【0036】
更に、係合爪19とカバー本体9の上面との間に天井トリム7を差し込んで前記カバー本体9の後部を固定し、前記リテーナ20を窪み空間10側から締結孔21を通し前記嵌合具22に押し込んで締結することにより前記カバー本体9の前部を天井部4に固定するだけで簡便にカバー本体9の取り付けを行うことができるので、上向きの作業となることで負担が大きなカバー本体9の取り付け作業を大幅に簡便化することができ、作業者の労力負担を著しく軽減することができる。
【0037】
尚、本発明のカバー構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、図1〜図5の形態例においては、ハイルーフ車の座席の直後のベッドルームに備えた上下二段のベッドのうちの上段側のベッドを天井部から吊り下げ支持する機構に適用した場合を例示しているが、これ以外の様々な連結対象物のバックルを係合するためのタングプレートの天井貫通部を被覆するカバー構造として適用することが可能であること、また、遮蔽シートのスライド機構は図示例に限定されないこと、更に、締結具にはリテーナ以外にボルトやビス等を用いても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1のカバー本体の斜視図である。
【図3】図1のカバー本体の上面図である。
【図4】図1のIV−IV矢視の断面図である。
【図5】図3のV−V矢視の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ベルト(連結対象物)
2 バックル
3 運転室
4 天井部
5 タングプレート
7 天井トリム
9 カバー本体
10 窪み空間
11 スリット
12 ヘッドフォーム
13 張出部
14 遮蔽シート
20 リテーナ(締結具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室の天井部に連結対象物のバックルを係合し得るよう下向きに突設されたタングプレートの天井貫通部を被覆するカバー構造であって、前記天井部の一般面に対し上向きに窪む窪み形状を有し且つその窪み空間内に前記タングプレートが張り出すよう該タングプレートを挿通せしめるスリットを形成したカバー本体を備え、該カバー本体のスリットから室内側に張り出すタングプレートと直径165mm球のヘッドフォームとの干渉を避け得るよう前記カバー本体の左右両側に前記タングプレートより低い位置まで張り出す張出部を形成したことを特徴とするカバー構造。
【請求項2】
スリットをタングプレートの周囲に所要のクリアランスを有するように形成し、カバー本体の上面側で前記スリットを広範囲に被覆し且つ前記タングプレートの断面形状と略合致する差込口を前記スリットと対応する位置に備えた遮蔽シートを前記カバー本体の上面に対しスライド可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載のカバー構造。
【請求項3】
カバー本体の前後何れか一方に天井トリムを差し込んで固定し得るように構成すると共に、他方を締結具により締結して天井部に固定し得るように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−292267(P2009−292267A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147090(P2008−147090)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】