説明

カビ判定方法ならびにこの方法を用いた浴室暖房乾燥機

【課題】本発明は、浴室内のカビの繁殖を抑制する浴室暖房乾燥機を提供すること。
【解決手段】温度と湿度と測定時間間隔からなるカビ指標値のテーブルを用いてカビがどの程度繁殖しているかを判定するカビ判定方法を用いたカビ判定手段を備え、カビ繁殖レベルが大きくなったときカビ抑制運転を実施する。カビ抑制運転として、ミスト生成手段9によるミスト噴霧運転、または加熱循環送風運転を一定時間実施して、浴室内の空気および壁面を含む浴室内面を温度上昇し、カビを失活させることによりカビの繁殖を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内のカビの発生を防止する方法ならびにこの方法を用いた浴室暖房乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室暖房乾燥機またはミストサウナ付きの浴室暖房乾燥機として、蒸発したミストを浴室内へ供給するミストサウナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、そのミストサウナ装置について図6を参照しながら説明する。
【0004】
図6に示すように、ミストサウナ装置101は、給湯暖房機102とループ状の循環管路で接続している熱交換器103と熱交換器上に流されて加熱され、蒸発してミストとなる温水を供給する給湯配管104から構成され、給湯配管104には、給湯加熱部に入る前の位置に流水スイッチ105が設けられ、お湯流量調整弁106が設けてある。また、ミスト生成手段108によりミスト化した水の粒子を浴室内に送り込むための送風機109、凝集した水滴を排水する排水受110を設けている。また、乾燥、暖房運転を制御する手段として浴室内の温湿度を検出する手段107が設けられたものである。浴室内のカビの繁殖を防ぐものとしては、乾燥運転によって付着した水滴を除去し、その結果カビの繁殖を防ぐことができる。
【0005】
また、浴室内に繁殖するカビを抑制するために、ミストサウナ装置101内部に換気扇を設け、浴室の使用が終了すると、浴室を乾燥させるために換気扇を運転するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
一方、これらの浴室暖房乾燥機、ミストサウナ装置にカビの繁殖を推定できるプログラムを組み込むことで、浴室内の換気運転、または乾燥運転を最適化し、浴室内のカビを効果的に抑制するものは、以下の従来技術から容易に推測できる。
【0007】
これは、カビの菌糸伸長速度に経過時間を掛け合わせて積算することで、カビの生育状態を推定するものである(例えば特許文献3参照)。
【0008】
樹脂平板上に付着させ、予め設定された温度および相対湿度(以下、湿度とする)の雰囲気化でみられたカビの菌糸伸長速度を指標とし、測定環境下の温度と湿度から、カビの生育状態を推定することにより実施できる。
【特許文献1】特許第3699289号公報
【特許文献2】特開2002−126033号公報
【特許文献3】特許第2710903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来のカビ繁殖状態の推定方法において、温度と湿度からカビの繁殖レベルを推定するとき、測定時間を計測しこれを元に演算処理を行うという手法では方法が複雑になる。温度と湿度の変化を計測しながら、変化が現れるたびにそこまでの時間を求め、単位時間あたりに換算してカビの繁殖レベルを求めるという処理を常時同時に行う必要がある。そのため、同時に複数の計算が安定してできるよう、CPUを使用した演算装置が必要となるため、その結果装置が複雑化、大型化することになる。そのため、より簡易でかつ小型、安価な構成で実施できるカビ判定方法が求められている。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、予め温度と湿度と測定時間間隔に応じてカビ指標値をあらかじめ設定することで、単に記憶装置から該当するものを選択し、読み出すだけで判定できる。これにより演算処理を大幅に減らすことができ、簡便に実施することができるカビ判定方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、カビの生育状態の推定方法では、樹脂板表面のような疎水的で水分が付着し難い場所に付着させたカビの温度と湿度による生育速度を指標としているため、実際の室内に繁殖するカビのように、水分を獲得しやすい親水性表面に付着したものは繁殖しやすく、先に出現する。そのため、従来の手法では実際のカビ繁殖レベルよりも過小評価し、カビの汚染を未然に知ることができないという課題がある。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、カビ繁殖レベルを推定するための指標として、親水性表面をもつ担体上に付着したカビ指標値を用いたものであり、室内環境でもっともカビが発生しやすい条件に合わせることで、最初に出現するカビ汚染を精度よく判定することができるカビ判定方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、従来のカビ生育状態の推定方法では、カビの菌糸伸長速度を指標とし、カビの生育状態の推定を行うものであるが、カビの汚染として重大な要因の1つである汚れを判定するためには、菌糸の伸長速度のように1次元的な情報では、菌糸の分岐や胞子の形成といった状態の変化も反映することができず、カビの汚れ状態とは差異が生じてくるという課題がある。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、カビ繁殖レベルを判定するための指標として、菌体量を示す指標であるコロニーの面積、体積、密度、色の濃さ、核酸量やタンパク質量、脂質量、多糖質量、無機塩類などの菌体構成成分とすることにより、カビの汚れの原因となる胞子、菌糸などの菌体の量を直接評価することができ、カビの汚れ状態を精度よく判定することができるカビ判定方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、従来の浴室暖房乾燥機では、浴室内のカビの繁殖を抑制するためには、浴室内を乾燥させて浴室内に付着した水分を除去する工程が必要であるが、換気運転や加熱循環送風運転などによって浴室内の水分を完全に除去するためには長時間運転させなければならず、壁面の目地や床面、気流が直接あたりにくい部分などでは水分が乾燥しきらずカビの繁殖を抑制することができないという課題がある。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、浴室内を乾燥させた場合に水分が完全に除去されない場合にあっても、浴室内のカビの繁殖を抑制する浴室暖房乾燥機を提供することを目的とする。
【0017】
また、カビは浴室内のいたるところで繁殖するため、浴室内のカビを抑制する手段として、浴室内全体に対して効果的に抑制できる手法が求められている。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ミスト生成手段を備えることで、ミストによる湿り空気の熱エネルギーをカビの抑制に利用することができ、風が当たる場所以外にもミストの拡散効果によって浴室の壁面全体を比較的均一に温度上昇させることで、高い抑制効果をえることができる浴室暖房乾燥機を提供することを目的とする。
【0019】
また、浴室内にどの程度カビが繁殖しているかを推定し、現在どのような状態であるかを使用者に伝達し、浴室環境の改善へとつなげることができる手法が求められている。
【0020】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、浴室内でのカビの繁殖レベルの推定結果から、カビが増殖しやすいか、もしくはカビが繁殖しているかを表示手段によって表示することにより、使用者が浴室内のカビ汚染を未然に知ることができる浴室暖房乾燥機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のカビ判定方法は、上記目的を達成するために、温度と湿度と測定時間間隔に応じて予め設定されたカビ指標値から、測定した温度と湿度に該当するカビ指標値を決定し、決定したカビ指標値から測定雰囲気中のカビ繁殖レベルを推定することを特徴とするカビ判定方法としたものである。
【0022】
これにより、予め温度と湿度と対象期間の長さに応じて指標値を設定することで、時間の関数とした演算処理を大幅に減らすことができ、大型の演算装置を使用せず簡易なマイコン上で簡便に実施することができる。
【0023】
また、他の手段は、カビ指標値を積算し、積算したカビ指標値からカビ繁殖レベルを判定することを特徴とする請求項1に記載のカビ判定方法としたものである。
【0024】
これにより、簡易的な方法で温度および湿度が変化する空間における一定期間中のカビ繁殖レベルを判定することができる。
【0025】
また、他の手段は、親水性の担体上に付着するカビ指標値を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のカビ判定方法としたものである。
【0026】
これにより、カビ汚染が多くみられるような水滴が付着しやすい親水性の表面であっても、カビ繁殖レベルを精度よく判定することができる。
【0027】
また、他の手段は、カビ繁殖レベルを示す指標として、菌体量を示す値を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカビ判定方法としたものである。
【0028】
これにより、カビの菌体量を示す指標を用いることで、目に見えるカビの汚れ度合いと、カビ繁殖レベルとの間における感覚の差を無くすことができる。
【0029】
また、他の手段は、菌体量を示す値は、コロニーの面積または体積または密度または色の濃さを示す値と、核酸またはタンパク質または脂質または糖質による菌体構成成分量を示す値のうち、少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載のカビ判定方法としたものである。
【0030】
これにより、カビの菌体量を示す指標として、コロニー外観の面積、体積および密度、色の濃さや、核酸量、タンパク質量、脂質量、糖質量の菌体構成成分量を用いることで、カビの変化を直接求めることができ、指標値の精度を高めることができる。
【0031】
また、本発明の浴室暖房乾燥機は、上記目的を達成するために、浴室内および浴室周辺の空気の温度を検知する温度検知手段および湿度を検知する湿度検知手段を備え、前記請求項1から5のいずれかに記載されたカビ判定方法を用いて浴室内のカビ繁殖レベルを判定するカビ判定手段を備えることを特徴とする浴室暖房乾燥機としたものである。
【0032】
これにより、浴室暖房乾燥機にて温度と湿度を検知してカビの繁殖レベルを判定することで浴室内のカビの汚染を調べる機器を別途浴室内に設置することなく浴室暖房乾燥機を利用することにより省スペース化することができる。
【0033】
また、他の手段は、ミスト生成手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0034】
これにより、ミストの湿り空気の熱エネルギーをカビの抑制に利用することができ、風が当たる場所以外にもミストの拡散効果によって浴室の壁面全体を比較的均一に温度上昇させることができる。
【0035】
また、他の手段は、カビ判定手段により判定したカビ指標値に基づく表示を行う表示手段を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0036】
これにより、浴室内におけるカビ繁殖レベルの判定結果から、カビが増殖しやすいか、もしくはカビが繁殖しているかを表示手段によって表示することにより、浴室内のカビ汚染を未然に知ることができるか、カビの汚染を最小限で抑制することができる。
【0037】
また、他の手段は、浴室外のリモコンに前期表示手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0038】
これにより、浴室外、例えば脱衣室や台所のリモコン上に表示手段を設けることで、浴室に入らないときにも使用者がカビ繁殖レベルを認識しやすくすることができる。
【0039】
また、他の手段は、カビ判定手段において、判定結果があらかじめ設定したカビ繁殖レベルの範囲を超えたとき、表示手段による表示方法を変更することを特徴とする請求項8または9に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0040】
これにより、カビ判定手段によるカビ繁殖レベルを示す指標値が一定以上範囲を超え、カビの汚れが目立つようになってくる前に表示手段の表示方法を変更することで、使用者がカビ汚染の抑制対策を実施するタイミングを知ることができる。
【0041】
また、他の手段は、カビ判定手段による判定結果をもとにカビ抑制運転を開始することを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0042】
これにより、カビ判定手段によるカビ繁殖レベルを示す指標値が一定以上範囲を超えたとき、カビの汚れが目立つようになってくる前に速やかにカビ抑制運転を実施することで、カビの繁殖を防止することができる。
【0043】
また、他の手段は、カビ抑制運転終了後、表示手段における表示方法を変更することを特徴とする請求項11に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0044】
これにより、カビ抑制運転を終了した後、表示手段によるカビ繁殖レベルの表示を変更し、或いはカビ繁殖レベルであることの表示を切ることで、使用者がカビの繁殖が抑制されたことを判別しやすくすることができる。
【0045】
また、他の手段は、カビ抑制運転として、ミスト生成手段によって浴室内の壁面温度を40℃以上50℃未満かつ湿度を90%以上100%以下にせしめ、一定時間維持することを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0046】
これにより、ミスト生成手段による湿り空気の熱エネルギーにより、壁面の温度を40℃以上とすることでカビの繁殖を抑制することができ、風が直接当たらない場所においてもミストの拡散効果によって浴室の壁面全体を比較的均一に温度上昇させることができるため、高いカビ抑制効果を得ることができる。
【0047】
また、他の手段は、カビ抑制運転として、加熱循環送風運転によって浴室内の湿度を5%以上40%以下にせしめ一定時間維持することを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0048】
これにより、加熱循環送風運転によって浴室内の湿度を40%以下にし、一定時間維持することでカビの菌糸の付着水を除去し、カビの繁殖を抑制することができる。
【0049】
また、他の手段は、カビ抑制運転として、換気運転によって浴室内の湿度を5%以上60%以下にせしめることを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0050】
これにより、換気運転によって、浴室内の高湿度空気を屋外へ排出し、湿度の低い空気を浴室内に取り込んで浴室内を乾燥させ、60%以下となるようにすることで、カビの繁殖に必要な水分を獲得できなくなり、カビの繁殖を抑制することができる。
【0051】
また、他の手段は、カビ抑制運転終了後、積算したカビ繁殖レベルをクリアすることを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の浴室暖房乾燥機としたものである。
【0052】
これにより、カビ抑制運転ののち、カビ繁殖レベルを示す指標値の積算値をクリアし、初期状態にすることで、新たに発生するカビの繁殖レベルの判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、演算処理を簡略化することができるため、大型の演算装置のように複雑な構成を必要とせず、安価でかつ省スペースでカビ判定方法を実施することができるという効果が得られる。
【0054】
また、カビが繁殖するレベルの正確性を向上させることができ、清潔性の向上、カビ掃除を簡易化できるという効果が得られる。
【0055】
また、カビの繁殖レベルを示す指標として、菌体量を示す値、すなわちコロニーの面積、体積、密度、色の濃さ、核酸やタンパク質などの菌体構成成分量のうちいずれか1つ以上を用いることによって、判定精度を向上させるができ、カビの汚れが現れにくく、清潔性を高めるという効果が得られる。
【0056】
また、浴室内のカビの繁殖を知ることで、カビの抑制など住宅環境の改善へとつなげることができ、清潔性を高めるという効果が得られる。
【0057】
また、浴室内の隅々のカビを効果的に抑制することができ、清潔性を高めるという効果が得られる。
【0058】
また、使用者が浴室のカビの繁殖レベルを頻繁に確認することができ、より確実にカビの繁殖を防止することができ、清潔性を高めることができるという効果が得られる。
【0059】
また、最適な間隔でカビの抑制対策を行うことができるが、カビの繁殖を抑制する間隔が長すぎて効果が得られないことや、間隔が短すぎて過剰なエネルギーを使用することなどを防止することができ、省エネルギー化することができるという効果が得られる。
【0060】
また、カビの繁殖が進む前に直ちにカビ抑制運転を実施することで、カビの繁殖を未然に防止することができ、カビ汚れを防止し、清潔性を高めるという効果が得られる。
【0061】
また、カビ抑制運転を行った後、表示手段における表示方法を変更することによって、追加で過剰なカビ抑制エネルギーを投じることを防止することができ、省エネルギー化することができるという効果が得られる。
【0062】
また、加熱循環送風によるエネルギーが、ミストによるエネルギーよりも小さいため、より少ないエネルギーでカビを抑制でき、省エネルギー化することができるという効果が得られる。
【0063】
また、換気運転のエネルギーは加熱手段によるエネルギーよりも大幅に小さいため、外気の空気条件がカビの繁殖しない場合に、省エネルギーでカビ抑制手段を実現できるという効果が得られる。
【0064】
また、新たに発生するカビの繁殖レベルを示す指標値を過大評価し、過剰なカビ抑制運転を行うことを防止することができ、省エネルギー化することができるという効果が得られる。
【0065】
また、塩素などの防カビ剤を使用することなく、カビを抑制することができるため、環境負荷を低減することができるという効果が得られる。
【0066】
また、カビの胞子の発芽活性と菌糸の成長を停止させることで、浴室内のカビ数を著しく低減させ、防カビ運転の頻度を低減することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
本発明を実施するための最良の形態として、請求項1記載の発明は、温度と湿度と測定時間間隔に応じて予め設定されたカビ指標値から、測定した温度と湿度に該当するカビ指標値を決定し、決定したカビ指標値から測定雰囲気中のカビ繁殖レベルを判定することを特徴とするカビ判定方法としたものであり、予め温度と湿度と対象期間の長さに応じて指標値を設定することで、時間の関数とした演算処理を大幅に減らすことができるという作用を有し、マイコン上で簡便に実施することができるという作用を有し、小型化できるという作用を有する。
【0068】
また、請求項2記載の発明は、カビ指標値を積算し、積算したカビ指標値からカビ繁殖レベルを判定することを特徴とする請求項1に記載のカビ判定方法としたものであり、カビの指標値を積算した値を、合計期間のカビの繁殖レベルを示す値とすることで、温度と湿度が変化する一定期間のカビの繁殖レベルを、選定と積算という簡易的な演算処理のみで判定することができるという作用を有し、大型の演算装置を必要とせず小型化することができるという作用を有する。
【0069】
また、請求項3記載の発明は、親水性の担体上に付着するカビ指標値を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のカビ判定方法としたものであり、カビ汚染が多くみられるのは、水滴が付着しやすく、脱離しにくい親水性の表面であるため、このような箇所の繁殖レベルを判定することができるという作用を有し、カビ判定の正確性を向上させることができるという作用を有する。
【0070】
また、請求項4記載の発明は、カビ繁殖レベルを示す指標として、菌体量を示す値を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカビ判定方法としたものであり、カビの菌体量を示す指標を用いることで、目に見えるカビの汚れ度合いと、カビの繁殖レベルの判定値との間における感覚の差を無くすことができるという作用を有する。
【0071】
また、請求項5記載の発明は、菌体量を示す値は、コロニーの面積または体積または密度または色の濃さを示す値と、核酸またはタンパク質または脂質または糖質による菌体構成成分量を示す値のうち、少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載のカビ判定方法としたものであり、カビの菌体量を示す指標として、コロニー外観の面積、体積および密度、色の濃さや、核酸量、タンパク質量、脂質量、糖質量、無機塩類などの菌体構成成分量を用いることで、カビの菌体量の変化を直接求めることができるという作用を有し、指標値の精度を高めることができるという作用を有する。
【0072】
また、請求項6記載の発明は、浴室内および浴室周辺の空気の温度を検知する温度検知手段および湿度を検知する湿度検知手段を備え、前記請求項1から5のいずれかに記載されたカビ判定方法を用いて浴室内のカビ繁殖レベルを判定するカビ判定手段を備えることを特徴とする浴室暖房乾燥機としたものであり、浴室暖房乾燥機にて温度と湿度を検知してカビの繁殖レベルを判定することで、浴室内がカビによって汚染されているかを使用者が知ることができるという作用を有し、カビを調べるための機器を別途浴室内に設置することなく、浴室暖房乾燥機を利用することにより省スペース化することができるという作用を有する。
【0073】
また、請求項7記載の発明は、ミスト生成手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、ミスト生成手段による湿り空気の熱エネルギーによってカビを抑制することができるという作用を有し、風が当たる場所以外にもミストの拡散効果によって浴室の壁面全体を比較的均一に温度上昇させることができるという作用を有し、浴室内の隅々までカビを抑制することができるという作用を有する。
【0074】
また、請求項8記載の発明は、カビ判定手段により判定したカビ繁殖レベルに基づく表示を行う表示手段を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、浴室内のカビ繁殖レベルの判定結果から、カビが増殖しやすいか、もしくはカビが繁殖しているかを表示手段によって表示することにより、浴室内のカビ汚染を未然に知ることができるという作用を有し、カビの汚染を最小限で抑制できる作用を有する。
【0075】
また請求項9記載の発明は、浴室外のリモコンに前記表示手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、浴室外、例えば脱衣室や台所のリモコン上に表示手段を設けることで、浴室に入らないときにも、目にすることが多い場所に設置することで、カビ繁殖レベルを認識しやすくなるという作用を有する。
【0076】
また、請求項10記載の発明は、カビ判定手段において、判定結果があらかじめ設定したカビ繁殖レベルの範囲を超えたとき、表示手段による表示を変更することを特徴とする請求項8または9に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、カビ判定手段によるカビ繁殖レベルを示す指標値が一定以上範囲を超え、カビの汚れが目立つようになってくる前に表示手段の表示を変更することで、カビ汚染の抑制対策を実施するタイミングを知ることができるという作用を有する。
【0077】
また、請求項11記載の発明は、カビ判定手段による判定結果をもとにカビ抑制運転を開始することを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、カビ判定手段によるカビ繁殖レベルを示す指標値が一定以上範囲を超え、カビの汚れが目立つようになってくる前に速やかにカビ抑制運転を実施することで、カビの繁殖を防止することができるという作用を有する。
【0078】
また、請求項12記載の発明は、カビ抑制運転終了後、表示手段における表示を変更することを特徴とする請求項11に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、カビ抑制運転を終了した後、表示手段によるカビ繁殖レベルの表示を変更し、或いはカビ繁殖レベルであることの表示を切ることで、カビの繁殖が抑制されたことを使用者が判別しやすくなるという作用を有する。
【0079】
また、請求項13記載の発明は、カビ抑制運転は、ミスト生成手段によって浴室内の壁面温度を40℃以上50℃未満かつ湿度を90%以上100%以下にして、一定時間維持することを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、ミスト生成手段による湿り空気の熱エネルギーにより、壁面の温度を40℃以上とすることで、カビの菌糸を抑制することができるという作用を有し、カビの胞子を抑制することができるという作用を有し、風が当たる場所以外にもミストの拡散効果によって浴室の壁面全体を比較的均一に温度上昇させることができるという作用を有し、高い抑制効果が得られるという作用を有する。
【0080】
また、請求項14記載の発明は、カビ抑制運転は、加熱循環送風運転によって浴室内の湿度を5%以上40%以下にして一定時間維持することを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、加熱循環送風によって浴室内の湿度を40%以下にし、一定時間維持することでカビの菌糸の付着水を除去し、カビの繁殖を抑制することができるという作用を有する。
【0081】
また、請求項15記載の発明は、カビ抑制運転として、換気運転によって浴室内の湿度を5%以上60%以下にせしめることを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、換気運転によって、浴室内の高湿度空気を屋外へ排出し、湿度の低い空気を浴室内に取り込んで浴室内を乾燥させ、60%以下となるようにすることで、カビの抑制のための加熱エネルギーを削減できるという作用を有し、カビが繁殖に必要な水分を獲得できず、カビの繁殖を抑制することができるという作用を有する。
【0082】
また、請求項16記載の発明は、カビ抑制運転終了後、積算したカビ繁殖レベルをクリアすることを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の浴室暖房乾燥機としたものであり、カビ抑制運転の後、カビ繁殖レベルを示す指標値の積算値をクリアし、初期状態にすることで、新たに発生するカビ繁殖レベルの判定を行うことができるという作用を有する。
【0083】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0084】
(実施の形態1)カビ判定方法
表1は、本発明のカビ判定方法のカビ判定手段で用いるカビ繁殖レベルの指標値の一覧である。
【0085】
【表1】

【0086】
カビ判定方法は、測定雰囲気の温度および湿度(相対湿度)から、予め設定されたカビ繁殖レベルの指標値と比較し、測定雰囲気でのカビ繁殖レベルの判定を行う。カビ繁殖レベルとは、カビの成長度合いのレベルを示す値であり、カビ繁殖レベルが小さいとカビがあまり成長しておらず、またカビ繁殖レベルが大きい場合、カビが大きく成長し、見た目にもカビ汚染が進行している状態にあることを示す。表に示された指標値は、時定数τ1におけるカビ指標値の一覧であり、温度と湿度ごとに値が定められている。指標値は、コロニーの大きさ、色の濃さなどの外観や、核酸量、タンパク質量などの菌体構成成分の量などから設定される値であり、予め実験結果などから設定する。カビ汚れと判断される外観の大きさ、色の濃さになる閾値を設定し、その値を超えることでカビの汚染が発生したとすることとする。例えば、大きさであれば、直径2mm以上でカビと認識でき、5mm以上になると不快に感じるレベルとなるが、閾値はカビであると判別できる2mmとする。また、時定数とはこの場合測定時間間隔を示す。
【0087】
カビ判定方法をプログラム上で行う場合、時定数を用いることで、カビ繁殖レベルにかかる演算処理を省略できる。これまでの手法においては、温度と湿度ごとにカビの菌糸伸張速度からなるカビ指標値を定め、連続して測定する間の温度と湿度の変化を直ちにカビ繁殖レベルに変換処理し、その時々のカビ繁殖レベルが継続した時間から、その値を掛け合わせ、積算して合計期間のカビ繁殖レベルを求めるという方法であり、複数の演算処理を同時に行うため、CPUを含む演算装置が必要となり、浴室暖房乾燥機などの機器にそのまま組み込むことは難しい。
【0088】
時定数による方法を用いると、マイコン上のメモリなどの記憶装置に記憶させてあるカビ指標値を、時定数、温度、湿度の条件から選択し、読み出すことで実施できるため、汎用的な浴室暖房乾燥機のような機器にも搭載することができる。時定数を用いると、測定時間間隔が制限されるが、温度と湿度の変化やカビ繁殖レベルの変化は緩やかであり測定精度への影響は少ない。住環境のように急激な温度変化が見られない環境では、時定数は1時間から24時間程度の間隔がよく、好ましくは1時間から6時間であるが、省エネモードとして、時定数を延長し24時間ごととすることで、計測機器の待機電力を削減でき、測定作業を省略することもできる。
【0089】
カビ指標値は、積算して合計期間の値とすることができる。カビは温度と湿度の環境によって繁殖する速さが変化するが、カビの色は漂白剤などで脱色されない限り残存するため、長期間のカビの繁殖レベルは、その期間の間の温度と湿度の変化に応じたカビの繁殖レベルを合計した結果として表すことができる。よって、浴室内の温度と湿度が変化してもカビが生えてくるタイミングを知ることができ、カビ対策を施すことによってカビの繁殖を未然に防ぐことができる。
【0090】
カビの繁殖レベルは、カビの種類や、付着する対象物の表面の親水性、表面形状、栄養源の存在などによって異なるため、条件を厳密に設定し、指標値を求めることが必要である。カビの繁殖によって汚染される場所は、カビが発芽、増殖するための水分を獲得しやすい状態である。カビの繁殖による汚染状態を推定する場合、このような好適条件のもと再現試験を行い、指標値を設定することが望ましく、特に付着する表面の親水性が高いものを付着対象の担体として使用することが必要となる。
【0091】
カビを付着させる親水性の担体としては、セルロースやシリカゲル、またはグラスファイバーなどの基材が使用できる。これらは、主なカビの汚れが黒色などの暗色であり、これらを認識しやすくするために、無色や白色など淡色であることが好ましい。また、観察する便宜上、平面状で、好ましくは1mm以下に薄膜化されているものを使用する。用いる材料は、例えばセルロースであればろ紙、シリカゲルであれば、薄相クロマトグラフィー用のシリカゲルプレートなどが使用できる。これらは、はじめ乾燥していることが必要であるが、カビが低湿度で死滅しないよう、カビを接種する前には一定の温度および湿度で平衡化しておく作業がいる。
【0092】
試験に供するカビは、浴室内に繁殖するカビとして最も有名なクラドスポリウム属真菌(Cladosporium cladosporioides 、NBRC6348、以下クラドスポリウム)や、オーレオバシジウム(Aureobasidium puluans NBRC6353)が好ましいが、低温性、中温性、高温性、または好乾性など、様々な温湿度で生育するカビを広く使用することが重要である。
【0093】
カビを接種する前には、想定される環境に応じて栄養源を担体に含浸させておく。例えば浴室を想定した場合、カビの栄養源として、石鹸カスや、人垢、皮脂成分が考えられる。そのため、栄養源としては皮脂成分であるトリグリセライドの代用で、トリオレイン、トリリノレインや、あるいはオリーブオイルなどをn−ヘキサンなどの溶剤で希釈し、10cm平方あたり0.1から1mlとなるように含浸させる。栄養源は事前に十分に調査し、適切な量を用いて評価を行うことが重要となる。
【0094】
栄養源を含浸させた担体の表面に、カビの胞子を接種する。胞子は、一定量接種しやすいよう一定濃度になるように胞子液を調製し、試験に供する。カビは、あらかじめポテトデキストロース寒天培地(以下、PDA培地)などの培地上にて、25℃から30℃で3日から7日間前培養し、胞子を十分に形成させる。増殖したカビの表面から、白金耳で胞子を回収し、希薄なn−オクチルスルホコハク酸などの界面活性剤で分散させたのち、蒸留水に希釈、または洗浄置換して胞子液を作製する。作製した胞子液は、スライドグラスや血球計算盤に少量滴下し、顕微鏡上で観察して胞子数を計数する。
【0095】
作製した胞子液を、栄養源を含浸させた担体表面に滴下する。滴下する面積は評価方法によって異なるが、評価指標としてカビの増殖面積を使用する場合、1mm以下の極力小さい面積になるようガラスキャピラリーなどの細管を使用して接種する。接種する胞子数は10の3乗個から5乗個程度とする。
【0096】
カビを接種した担体は、速やかに調整した温度および湿度環境のチャンバー内に密閉し、培養する。一定期間培養後、チャンバーから取り出し、顕微鏡や目視で観察し、色を目安にコロニーの大きさ、色の濃さを計測し、数値化する。もしくは、菌体構成成分を指標とする場合には、担体に酵素や溶剤などの抽出試薬を反応させ、カビの菌体構成成分を抽出し、成分を測定する。核酸であれば、例えば粗抽出液に対しフェノールおよびクロロホルムの混合溶液を反応させて核酸を分離し、エタノールなどで精製したのち吸光度から濃度を求めることで、菌体量と相関するカビ指標値を求めることができる。それぞれ1日後の結果であれば、24時間で割って、1時間あたりの大きさを求める。この値をカビの指標値として用いる。
【0097】
表1は、カビの大きさをもとに数値化し、時定数τ1における指標値としたものであるが、温度が25.1℃以上30.0℃以下の場合でかつ湿度90%以上99%以下の場合、280という値が選択され、これまで累積した値に積算されることになる。閾値を800とすると、上記温度および湿度の期間がτ1の3倍続いた時累積値が840となるため、3回目の測定終了後に表示手段によってカビ汚染を示す点灯表示を実行する。
【0098】
また、カビ指標値から、空間のカビの繁殖しやすさを定性的に比較することができる。28℃で85%の空間と18℃で85%の空間におけるカビの生えやすさをカビ指標値をもとに比較すると、28℃で85%の空間はカビ指標値が90であり、18℃で85%の空間はカビ指標値が18である。28℃で85%の方が5倍カビが成長しやすいことがわかる。
【0099】
以上の方法により、温度と湿度、保持時間ごとのカビ指標値を求め、測定した温度および湿度からカビ指標値を選定し、カビ汚染の判定を行うことができる。
【0100】
(実施の形態2)ミストサウナ付き浴室暖房乾燥機の構成
図1は、本発明のミストサウナ付き浴室暖房乾燥機の構成を示す図である。
【0101】
浴室暖房乾燥機1は、浴室内の空気を排気する換気ボックス2と浴室内の乾燥、循環送風、ミストの生成、噴霧を行うミスト発生乾燥循環ボックス3と換気ボックス2内の構成部品、ミスト発生乾燥循環ボックス3内の構成部品を制御する運転制御指示回路4から構成されている。
【0102】
換気ボックス2内には、浴室に設置してあるミスト発生乾燥循環ボックス3を通過し、浴室内の空気を排気するための排気ファン5と浴室内の排気量を制御する排気ダンパー6を設けている。
【0103】
ミスト発生乾燥循環ボックス3内には、給湯暖房機7から給湯配管8を通して供給されるお湯をミスト化するためのミスト生成手段9がある。ミストサウナは、ミスト生成手段9より温水をミスト化し、エレミネータ10で水滴を除去した後、浴室内に噴霧される。これにより発生するミストの粒径は0.1μmから10μm程度の粒径をもつ。エレミネータ10で除去された水滴は、排水受11で集められ、排水される。また浴室内の空気を加熱する空気加熱手段である熱交換器12、浴室内に空気を循環送風させるための循環送風手段として送風機13を設けている。また浴室内の温度を検出する温度検知手段14と浴室内の湿度を検出する湿度検知手段15をミスト発生乾燥循環ボックス3に設けている。
【0104】
浴室内壁および断熱材の外側には浴室周囲空気温度検知手段16を設けているが、浴室内壁および断熱材の外側に面していれば、換気ボックス2またはミスト発生乾燥循環ボックス3のいずれかに設けることが好ましい。この場合、屋根裏の空気を浴室周囲空気温度として測定する。一方、浴室周囲のより温度が低い側面または床面の周囲まで配線で伸ばして設置することもできる。
【0105】
運転制御指示回路4はミスト噴霧運転、乾燥運転、循環送風運転、暖房運転、換気運転の切り替えや、調整、各種運転モードの変数の設定など浴室暖房乾燥機1の運転方法の制御を行うものである。
【0106】
ここで、ミスト噴霧運転とは、給湯暖房機7から給湯配管8を通して供給されるお湯をミスト生成手段9によりミスト化したものを循環送風手段である送風機13により浴室内に噴霧する運転であり、また乾燥運転とは、排気ファン5を運転し、開放された排気ダンパー6より浴室内の空気を浴室外へ排気する運転、または浴室内の空気を浴室外へ排気しつつ熱交換器12により加熱された空気を循環送風手段によって浴室内に循環送風させる加熱循環送風運転のことを指す。
【0107】
暖房運転とは、空気加熱手段である熱交換器12を通過した加熱空気を循環送風手段である送風機13によって、浴室内に循環送風し、浴室内を温度上昇させるための運転方法である。このとき、乾燥運転とは異なり、換気ボックス2内の排気ファン5および排気ダンパー6を使用しないため、暖められた空気は浴室外へ放出させず、効率的に浴室内を温度上昇させることができる。
【0108】
暖房運転の吹出し空気温度は加熱温度制御手段によって40℃から60℃の間になるように調整する。加熱温度制御手段は、熱交換器12に供給されるお湯の温度を調整する手段と、供給するお湯量調整弁17、吹出し空気温度を検知する手段によって構成され、吹出し空気温度が設定範囲内に入るように運転制御を行うものである。
【0109】
運転制御指示回路4は、送風機13、排気ファン5、排気ダンパー6や、給湯配管8に設けたお湯量調整弁17などの電磁弁、気流の風向を制御するための気流制御手段18、温度検知手段14、湿度検知手段15、浴室周囲空気温度検知手段16などと配線で接続されている。
【0110】
また、操作手段として、浴室内リモコン(リモートコントローラー)19及び脱衣室リモコン20を設け、運転方法や運転温度、運転時間などを使用者がボタン操作で選択、実行することができる。浴室内の温度検知手段14および浴室周囲空気温度検知手段16としては、赤外線などにより、表面温度を計測するセンサがあるが、水滴が付着すると表面温度の計測ができないことがあるため、例えば、水滴が付着しにくく、耐水性を施した熱電対センサが好ましい。
【0111】
また、表面に撥水または疎水処理を施すのも有効である。浴室内の温度検知手段14は浴室内の温度を検出するものであり、例えば実際に浴室で起こりうる温度範囲である5℃以上60℃以下を検出できるものであるのが好ましい。
【0112】
浴室内の温度検知手段14は図1に示した通り、浴室暖房乾燥機1のミスト発生乾燥循環ボックス3の内部に設けるのが好ましいが、浴室内であればこれに限定されない。しかし、浴室内の水滴が付着する部位に設置する場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を選択する必要がある。
【0113】
また、浴室内の温度検知手段14で浴室内の温度50℃以上を検知した場合は、浴室部材、浴室内テレビやラジオといった備品への悪影響を最小限に抑えるために、自動でミスト噴霧運転または乾燥運転が停止される運転制御方法を運転制御指示回路4に組み込むのが好ましい。
【0114】
浴室内の湿度検知手段15として、塩化リチウムやセラミックなどを素材とするセンサが挙げられるが、表面に付着した水滴と結合し、湿度の計測ができないことがある。素材に高分子膜を用いたこと湿度センサを利用すると水滴の付着による湿度計測阻害を最小限にすることが可能である。また、浴室内の湿度検知手段15は浴室内の湿度を検出するだけで良く、例えば、湿度検知範囲は40%から100%にするのが好ましい。
【0115】
浴室内の湿度検知手段15は図1に示した通り、浴室暖房乾燥機1の内部に設けるのが好ましいが、浴室内であればこれに限定されない。しかし、浴室内の水滴が付着する部位に設ける場合は、水滴の付着による検出阻害が起こらない手段を選択する必要がある。
【0116】
カビ判定手段は、実施の形態1のカビ判定方法によるカビ繁殖レベルを示す指標値のマトリクスを運転制御指示回路4内のマイコン上にプログラムしたものである。リモコン上には、カビ判定手段によるカビ繁殖レベルの判定結果を表示する表示手段21を設ける。
【0117】
表示手段は、発光ダイオード表示や液晶パネル表示などで行う。表示手段21は脱衣室リモコン20に設けることがよいが、これに限定されない。カビ繁殖レベルが予め設定した閾値以上となった場合、表示手段の発光表示の色を緑色から黄色、もしくは赤色へと変更し、カビの汚染が進行したことを使用者へと伝えるものとする。
【0118】
表示手段の表示が変更され、カビの汚染が進行した場合、使用者は防カビ運転制御手段によるカビ抑制運転を行う。防カビ運転制御手段とは、ミスト噴霧運転、暖房運転、循環送風運転、乾燥運転、換気運転によってカビの繁殖を抑制するために予め設定された運転モードである。防カビ運転制御手段の起動は、リモコンに起動手段22としてボタンを設置し、使用者がボタン操作で実行できるようにすることが好ましい。
【0119】
一方、表示手段21による表示とあわせ、カビ抑制運転を自動制御で開始することで、カビの進行を早期に防ぐことができるため、浴室内の防カビ効果を高めることができる。カビ抑制運転を終了した後は、表示手段21の表示を変更し、初期の表示に戻すことで、使用者は浴室内にカビの汚染が進行する前の状態であると判断することができる。
【0120】
カビ抑制運転は、状況にあわせて運転方法を選択することで高い抑制効果をえることができ、温度検知手段14、湿度検知手段15により測定された温湿度によって、運転方法を選択するよう運転制御指示回路4にプログラムしておく。
【0121】
夏期や中間期のような温度と湿度が高い場合、カビ汚染が進行しやすい空気条件にあり、浴室を換気運転により乾燥させても、浴室内がカビの繁殖しにくい25℃以下かつ75%以下の状態になることは期待されない。
【0122】
浴室内のカビ抑制運転方法として、ミスト噴霧運転による湿熱の防カビ効果が高い。高温の微細なミストを噴霧することにより、浴室内に温水のミストが充満し、拡散効果によって壁面や床面の隅など風が届きにくい場所においても効果的に昇温させることができる。ミスト噴霧運転によって、浴室内壁面の温度を40℃以上、浴室内の温湿度を40℃以上かつ90%以上にすることで、浴室内に繁殖するカビを抑制することができる。この温湿度条件を1時間以上持続させることで、浴室内のカビの8割以上を抑制することができる。またミスト噴霧運転ではなく、暖房運転によっても、長時間かかるが壁面の温度を上昇させ、維持させることで、カビの繁殖を抑制することができる。
【0123】
また、別の方法として、加熱循環送風運転によって湿度を極端に低下させ、カビの表面に付着している結合水を除去し、菌糸を乾燥させて死滅させ、カビを抑制する方法がある。この場合、浴室内の湿度を40%以下として、1時間以上維持させれば、多くのカビ菌糸を抑制することができる。
【0124】
一方、カビが繁殖し難い季節、例えば冬期や中間期の外気では、温度も湿度も低く(10℃未満、60%未満)カビの繁殖には適さないためカビの成長は少ない。このような季節の場合には、暖房運転を行わなくても、換気及び循環送風により浴室内の温度と湿度を下げることで、十分にカビの繁殖を抑制することが可能となる。このような制御を行うことで、暖房運転にかかるエネルギーを低減することができ、省エネルギーな防カビ運転制御手段とすることができる。
【0125】
また、浴室周囲の空気温度は低い(25℃未満)が、屋内を暖房するなどで浴室内の温度が高い(25℃以上)場合、浴室内の壁面付近は浴室周囲の温度と浴室内温度の温度差によって、湿度が高くなり、カビが繁殖する可能性が高まる。このような場合、浴室内を循環送風運転により壁面の湿度を低減して、更に換気運転によって湿気をもった空気を屋外へ排気することでカビの繁殖を抑制することができる。
【0126】
また、防カビ運転制御手段において、浴室内温度と浴室周囲温度の間に差が見られる場合、湿度検知手段15によって検出される湿度は、浴室内の空気の湿度であるため、実際にカビが繁殖する壁面の湿度を正確に反映していない。そのため、壁面付近がカビの繁殖下限値とされる75%に達するときの空気の湿度を、図2に示すように、空気線図から導き出すことが重要である。これによると、温度差が5℃以上有るものとして、約60%以上の場合において、壁面付近の湿度が75%以上に達するものと考えることができる。そのため、湿度検知手段15で検出される湿度は60%を判定の上限値として設定し、換気運転によってこの値以下の湿度を維持させるように制御することが好ましい。
【0127】
カビ抑制運転後は、浴室内の温度が下がり、湿度が上がったとしても、浴室内に生きたカビがほとんど存在しないため、カビの繁殖は起こりえない。そこで、カビ判定手段におけるカビ指標値の積算値をリセットし、この時点から新たなカビの汚染の検知を行う。このようにカビの汚染の進行状況を判定し、最適な間隔でカビを抑制することにより、カビ抑制運転にかかるエネルギーを最小化し、省エネルギーで浴室内の清潔性を保つことができる。
【0128】
このようにして、カビ繁殖レベルを判定し、カビの汚染が進行する前にカビ抑制運転を行うことで、浴室内のカビが繁殖して汚染が進行する前に効果的に抑制し、カビの生えない浴室を継続して維持することができる浴室暖房乾燥機となる。
【0129】
(実施の形態3)カビの繁殖抑制効果
浴室内に繁殖するカビとして最も有名なクラドスポリウム属真菌(Cladosporium cladosporioides 、NBRC6348、以下クラドスポリウム)を用いて、ヒートショックによる増殖抑制試験を行った。以下にその方法を記す。
【0130】
PDA培地により試験管で斜面培養したクラドスポリウムのコロニーを、滅菌水1mLでピペッティングして胞子を回収した。50mL容の遠沈管に胞子回収液1mLと24mLの滅菌水を加え、室温、200rpmの条件で10分間振とうし、供試液を得た。1.5mL容のマイクロチューブに供試液1mLを入れ、ブロックヒーターを用いて、ヒートショックを与えた後、シャーレに入れたPDA培地上に塗布し、25℃で4日間静地培養した。その後、目視でコロニー数をカウントし生存菌数を算出した。ヒートショック後の生存菌数をヒートショック前の生存菌数で除し、生存率を算出した。
【0131】
図3に示す通り、25℃または35℃で2時間湿熱を与えても、クラドスポリウムの生存率はほぼ100%であり、クラドスポリウムの繁殖を抑制することはできなかった。しかし、40℃のヒートショックでは1時間で約80%を抑制でき、2時間では約90%を抑制させることができた。また、45℃のヒートショックでは、0.5時間の暴露でほぼ全滅させることができた。
【0132】
このように、クラドスポリウムは水浸条件において、40℃以上のヒートショックを1時間以上与えることにより死滅させることが可能であることが分かり、浴室内において壁面が水滴や結露濡れている場合も、温度を上昇させることによって乾燥させることなく抑制することが可能であることを示している。
【0133】
同様に、クラドスポリウムを用いて、湿り空気による増殖抑制試験を行った。その方法を以下に記す。
【0134】
PDA培地により試験管で斜面培養したコロニーを滅菌水1mLでピペッティングすることにより、胞子を回収した。50mL容の遠沈管に胞子回収液1mLと24mLの滅菌水を加え、室温、200rpmで10分間振とうし、供試液を得た。25mL容の遠沈管に供試液0.1mLを入れ、約2時間かけて完全に風乾させた後、予め25、35、40または45℃かつ99%RHに設定された恒温恒湿槽に入れて、乾燥胞子に温湿度ショックを与えた。その後、遠沈管に滅菌水5mLを入れてボルテックスすることにより、乾燥胞子を滅菌水中に分散させ、シャーレに入れたPDA培地上に塗布して25℃で4日間静地培養した。そして、目視でコロニー数をカウントし生存菌数を算出した。温湿度ショック後の生存胞子数を温湿度ショック前の生存胞子数で除し、生存率を算出した。
【0135】
図4に示す通り、クラドスポリウムは40℃、99%RH条件下の湿り空気に1時間暴露させることによりほぼ全滅させることができた。
【0136】
ここで、図5に示す通り、オーレオバシジウム(Aureobasidium puluans NBRC6353)を用いた実験においても、40℃、99%RH条件下の湿り空気に1時間暴露させることにより、ほぼ全滅させることができた。カビは乾燥により完全に水分を飛ばした後に、40℃、99%RH条件に1時間暴露させることにより、ほぼ完全に死滅させることが可能であった。これは、浴室内の空気中に浮遊するカビを抑制できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0137】
温度と湿度からカビの繁殖レベルを判定することにより、浴室内のカビの繁殖を抑制することができ、浴室内を清潔に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の実施の形態2のミストサウナ付き浴室暖房乾燥機を示す側面構成図
【図2】同実施の形態2の空気線図により壁面が75%に達するときの空気湿度を求める方法を示すグラフ
【図3】本発明の実施の形態3のクラドスポリウム胞子懸濁液への湿熱による胞子発芽活性の低下を示すグラフ
【図4】湿り空気によるクラドスポリウムの繁殖抑制効果を示すグラフ
【図5】湿り空気によるオーレオバシジウムの繁殖抑制効果を示すグラフ
【図6】従来のミストサウナ装置を示す側面構成図
【符号の説明】
【0139】
1 浴室暖房乾燥機
2 換気ボックス
3 ミスト発生乾燥循環ボックス
4 運転制御指示回路
5 排気ファン
6 排気ダンパー
7 給湯暖房機
8 給湯配管
9 ミスト生成手段
10 エレミネータ
11 排水受
12 熱交換器
13 送風機
14 温度検知手段
15 湿度検知手段
16 浴室周囲空気温度検知手段
17 お湯量調整弁
18 気流制御手段
19 浴室内リモコン
20 脱衣室リモコン
21 表示手段
22 起動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度と湿度と測定時間間隔に応じて予め設定されたカビ指標値から、測定した温度と湿度に該当するカビ指標値を決定し、決定したカビ指標値から測定雰囲気中のカビ繁殖レベルを判定することを特徴とするカビ判定方法。
【請求項2】
カビ指標値を積算し、積算したカビ指標値からカビ繁殖レベルを判定することを特徴とする請求項1に記載のカビ判定方法。
【請求項3】
親水性の担体上に付着するカビ指標値を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のカビ判定方法。
【請求項4】
カビ繁殖レベルを示す指標として、菌体量を示す値を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカビ判定方法。
【請求項5】
菌体量を示す値は、コロニーの面積または体積または密度または色の濃さを示す値と、核酸またはタンパク質または脂質または糖質による菌体構成成分量を示す値のうち、少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載のカビ判定方法。
【請求項6】
浴室内および浴室周辺の空気の温度を検知する温度検知手段および湿度を検知する湿度検知手段を備え、前記請求項1から5のいずれかに記載されたカビ判定方法を用いて浴室内のカビ繁殖レベルを判定するカビ判定手段を備えることを特徴とする浴室暖房乾燥機。
【請求項7】
ミスト発生手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項8】
カビ判定手段により判定したカビ繁殖レベルに基づく表示を行う表示手段を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項9】
浴室外のリモコンに前記表示手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項10】
カビ判定手段において、判定結果があらかじめ設定したカビ繁殖レベルの範囲を超えたとき、表示手段による表示を変更することを特徴とする請求項8または9に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項11】
カビ判定手段による判定結果に基づきカビ抑制運転を開始することを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項12】
カビ抑制運転終了後、表示手段における表示を変更することを特徴とする請求項11に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項13】
カビ抑制運転は、ミスト発生手段によって浴室内の壁面温度を40℃以上50℃未満かつ浴室内の湿度を90%以上100%以下にして、この状態を一定時間維持することを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項14】
カビ抑制運転は、加熱循環送風運転によって浴室内の湿度を5%以上40%以下にして一定時間維持することを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項15】
カビ抑制運転として、換気運転によって浴室内の湿度を5%以上60%以下にせしめることを特徴とする請求項11または12に記載の浴室暖房乾燥機。
【請求項16】
カビ抑制運転終了後、積算したカビ繁殖レベルをクリアすることを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の浴室暖房乾燥機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−183590(P2009−183590A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28815(P2008−28815)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】