説明

カプサイシノイドの投与

【課題】特定の部位、たとえば、関節、腱、神経、筋肉、および他の軟部組織の炎症、神経損傷および神経障害に関連する疼痛、ならびに軟部組織または骨の腫瘍による疼痛を緩和するための組成物および方法の提供。
【解決手段】通常カプサイシンの使用に伴う副作用なしに鎮痛効果をもたらす有効濃度でカプサイシンまたはカプサイシン類似体を含む方法および組成物。カプサイシンまたはカプサイシン類似体の注射可能または埋込み可能用量の投与。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、特定の部位、たとえば、関節、腱、神経、筋肉、および他の軟部組織の炎症、神経損傷および神経障害に関連する疼痛、ならびに軟部組織または骨の腫瘍による疼痛を緩和するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナス科の植物(ホットチリペッパー)由来の刺激性物質であるカプサイシンは、疼痛のシグナルであると考えられている小径求心性神経線維C線維およびAδ線維に対する選択的作用のために、実験ツールとして長く用いられてきた。動物での研究から、カプサイシンは、カルシウムおよびナトリウム透過性のカチオンチャネルを開くことにより、C線維膜脱分極を引き起こすと考えられる。近年、カプサイシン作用の受容体の1つがクローニングされた。カプサイシンは、キダチトウガラシ(capsicum frutescens)またはトウガラシ(capsicum annum)の実をエタノール抽出することによって、容易に得ることができる。カプサイシンは、N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−8−メチルノナ−trans−6−エンアミドの化学名で知られている。カプサイシンは、水にほとんど溶けないが、アルコール、エーテル、ベンゼン、およびクロロホルムには溶けやすい。治療上、カプサイシンは、局所鎮痛剤として用いられてきた。カプサイシンは、Steve Weiss & Co.、315 East 68th Street、New York、NY 10021からCapsaicin USPとして市販され入手可能であり、公開されている方法で合成的に調製することもできる。それぞれの第2級アミンに還元されているN−ペンチルおよびN−ヘキシル3,4−ジメトキシフェニルアセトアミドを開示しているMichalska等の「Synthesis and Local Anesthetic Properties of N−substituted 3,4−Dimethoxyphenethylamine Derivatives」、Diss Pharm. Pharmacol.、Vol.24(1972)17−25頁(Chem.Abs.77:19271a)を参照されたい。
【0003】
カプサイシンは、英国、オーストラリア、ベルギー、エジプト、ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、ポーランド、ポルトガル、スペイン、およびスイスの薬局方に収載されており、以前には米国薬局方および米国医薬品規格にも収載されていた。FDAは、ヒトに使用する一般用医薬品(OTC)の鎮痛剤製品に関する研究論文を提示した。これらには、OTC外用鎮痛剤として用いるのに安全かつ有効であるとされているカプサイシンおよびカプサイシン製剤が含まれる。カプサイシンは、FDAに認められた唯一のトウガラシ(Capsicum)の化学物質である。カプサイシン(USP)は、110%以上の全カプサイシノイドを含有し、これは典型的に63%の純カプサイシンに相当する。USPカプサイシンは、trans−カプサイシン(55〜60%)であり、さらに前駆体ジヒドロカプサイシンおよびノルジヒドロカプサイシンを含む。
【0004】
カプサイシン媒介作用には、(i)末梢組織での侵害受容器の活性化、(ii)1つまたは複数の刺激様式に対する末梢侵害受容器の最終除感作、(iii)感受性Aδ線維およびC線維求心性神経の細胞変性、(iv)ニューロンプロテアーゼの活性化、(v)軸索輸送の遮断、および(vi)非侵害性線維の数に影響を及ぼすことのない侵害性線維の絶対数の減少が含まれる。
【0005】
臨床上、もっとも広く研究されてきたカプサイシンの投与形態は、カプサイシン含有クリーム(Zostrix、Zostrix−HP、およびAxsain)である。これらの製品は、変形性関節症を含む広範な疼痛状態において試験されてきた。しかしながら、関節炎に局所的に投与されたカプサイシンの有効性は、一般に限定されていることが示されている。
【0006】
従来の刊行物は、様々な状態を治療するためのカプサイシンの局所投与を記載している。たとえば、米国特許第4,997,853号(Bernstein)は、外用鎮痛剤としてカプサイシンを用いる方法および組成物を記載している。米国特許第5,063,060号(Bernstein)は、疼痛、炎症性、またはアレルギー性疾患を治療する組成物および方法を記載している。米国特許第5,178,879号(Adekunle他)は、疼痛を治療するための局所投与用のべたつきのないカプサイシンゲルを記載している。米国特許第5,296,225号(Adekunle他)は、局所カプサイシンによって口腔顔面痛を治療する間接的な方法を記載している。米国特許第5,665,378号(Davis他)は、疼痛を治療するための、カプサイシン、抗ステロイド性抗炎症剤、およびパマブロムを含む経皮治療製剤を記載している。米国特許第6,248,788号(Robbins他)は、長期持続性の足の疼痛を患っている患者に、マーカイン硬膜外注射と組み合わせて7.5%のカプサイシンクリームを投与することを記載している。米国特許第6,239,180号(Robbins)は、末梢神経障害を治療するために、カプサイシン負荷パッチを局所麻酔と組み合わせることを記載している。乳房切除後疼痛症候群(WatsonおよびEvans、Pain 51:375−79(1992))、有痛性糖尿病性神経障害(Tandan等、Diabetes Care 15:8−13(1992))、The Capsaicin Study Group、Arch Intern Med 151:2225−9(1991)、ヘルペス後神経痛(Watson等、Pain 33:333−40(1988))、Watson等、Clin.Ther.15:510−26(1993)、Bernstein等、J.Am Acad Dermatol 21:265−70(1989)、およびギランバレー症候群の疼痛(Morganlander等、Annals of Neurology 29:199(1990))など様々な状態を治療するための局所カプサイシンの使用も当分野において記載されている。カプサイシンは、変形性関節症(Deal等、Clin Ther 13:383−95(1991)、McCarthyおよびMcCarthy、J.Rheumatol 19:604−7(1992)、Altman等、Seminars in Arthritis and Rheumatism 23:25−33(1994))の治療においても用いられてきた。さらに、米国特許第4,599,342号(LaHann)は、カプサイシンまたはカプサイシン類似体とオピオイド鎮痛剤との組み合わせの経口投与および皮下または筋内投与を記載している。米国特許第4,313,958号(LaHann)は、「階段」投与様式を用いるカプサイシンの髄腔内、硬膜外、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下投与を記載している。
【0007】
ヒトは、食事由来のカプサイシン含有香辛料、および様々な医学的兆候に用いる局所用製剤に長い間、暴露されてきた。この膨大な経験は、カプサイシン暴露による著しい副作用、または持続的副作用を示していない。無髄感覚求心性神経線維に対するカプサイシンの潜在的な治療効果が最近認められ、さらなる薬剤の開発のためにこの化合物の入念な検討が必要とされている。
【0008】
末梢組織の侵害受容器を除感作するカプサイシンの能力のために、その潜在的な鎮痛作用が種々の臨床試験においても評価されてきた。しかしながら、カプサイシン自体の適用はしばしば、治療される神経障害性の疼痛とは別に、灼熱痛および痛覚過敏を引き起こすため、患者のコンプライアンスは不良であり、臨床試験中の脱落率は50パーセントを超えている。自発性灼熱痛および痛覚過敏は、カプサイシン適用部位での末梢侵害受容器の強い活性化および一時的な感作によるものであると考えられる。この活性化および感作は、除感作期の前に起こる。活性化期は、疼痛を生じるため、カプサイシン使用の障壁となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,997,853号
【特許文献2】米国特許第5,063,060号
【特許文献3】米国特許第5,178,879号
【特許文献4】米国特許第5,296,225号
【特許文献5】米国特許第5,665,378号
【特許文献6】米国特許第6,248,788号
【特許文献7】米国特許第6,239,180号
【特許文献8】米国特許第4,599,342号
【特許文献9】米国特許第4,313,958号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Synthesis and Local Anesthetic Properties of N−substituted 3,4−Dimethoxyphenethylamine Derivatives」、Diss Pharm. Pharmacol.、Vol.24(1972)17−25頁(Chem.Abs.77:19271a)
【非特許文献2】WatsonおよびEvans、Pain 51:375−79(1992)
【非特許文献3】Tandan等、Diabetes Care 15:8−13(1992)
【非特許文献4】The Capsaicin Study Group、Arch Intern Med 151:2225−9(1991)
【非特許文献5】Watson等、Pain 33:333−40(1988)
【非特許文献6】Watson等、Clin.Ther.15:510−26(1993)
【非特許文献7】Bernstein等、J.Am Acad Dermatol 21:265−70(1989)
【非特許文献8】Morganlander等、Annals of Neurology 29:199(1990)
【非特許文献9】Deal等、Clin Ther 13:383−95(1991)
【非特許文献10】McCarthyおよびMcCarthy、J.Rheumatol 19:604−7(1992)
【非特許文献11】Altman等、Seminars in Arthritis and Rheumatism 23:25−33(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、通常カプサイシンの使用に伴う副作用なしに鎮痛効果をもたらす有効濃度でカプサイシンまたはカプサイシン類似体を含む方法および組成物を提供することは有利である。
【0012】
本発明の目的は、急性または慢性疼痛、侵害受容性および神経障害性疼痛、手術前および手術後疼痛、癌性疼痛、神経伝達物質調節異常症候群および整形外科障害に伴う疼痛の治療のために、ある部位にカプサイシンまたはカプサイシン類似体の注射可能または埋込み可能用量を投与することによって、ヒトおよび動物において疼痛の緩和を提供するための組成物および方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、その特定部位での注射または埋込みにより、カプサイシノイドを投与することによって、ヒトまたは動物において特定部位の疼痛を軽減するための組成物および方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、その関節内部位または体腔に注射可能または埋込み可能単回用量のカプサイシンまたはカプサイシン類似体を投与することによって、関節内部位または体腔の疼痛を緩和するための組成物および方法を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、急性または慢性疼痛、侵害受容性および神経障害性疼痛、手術前および手術後疼痛、癌性疼痛、神経伝達物質調節異常症候群および整形外科障害に伴う疼痛の治療のために、手術部位または開放創にカプサイシンまたはカプサイシン類似体の用量を浸潤させることにより投与することによって、ヒトまたは動物において疼痛の緩和を提供するための組成物および方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、その手術部位に浸潤させることによりカプサイシノイドを投与することによって、ヒトまたは動物において手術部位の疼痛を軽減するための組成物および方法を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、その開放創に浸潤させることによりカプサイシノイドを投与することによって、ヒトまたは動物において開放創の疼痛を軽減するための組成物および方法を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、注射可能または埋込み可能カプサイシノイドを用いて、スポーツ関連損傷を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、浸潤可能カプサイシノイドを用いて、胸骨正中切開に伴う疼痛を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、浸潤可能カプサイシノイドを用いて、乳房切除に伴う疼痛を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、浸潤可能カプサイシノイドを用いて、整形外科手術手技に伴う疼痛を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、注射可能または埋込み可能カプサイシノイドを用いて、整形外科障害または損傷を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、注射可能、埋込み可能、または浸潤可能カプサイシノイドを用いて、急性外傷性疼痛を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、注射可能、埋込み可能、または浸潤可能カプサイシノイドを用いて、神経障害性疼痛を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、注射可能、埋込み可能、または浸潤可能カプサイシノイドを用いて、侵害受容性疼痛を治療するための組成物および方法を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、注射可能、埋込み可能、または浸潤可能カプサイシノイドを用いて、神経伝達物質調節異常症候群を治療するための組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述の目的および他の目的に従って、本発明は、一部には、それを必要としているヒトまたは動物においてある部位で疼痛を軽減または緩和するための方法であって、それを必要としているヒトまたは動物の特定部位、手術部位、または開放創に、その特定部位の外部で作用を引き出すことなくその特定部位を脱神経し、かつ前記部位から生ずる疼痛を軽減するのに有効な量で、単回用量のカプサイシンを注射、埋込み、または浸潤により投与することを含み、前記用量がヒトまたは動物の特定部位に注射または浸潤されるとき、その用量は、約1μgから約5,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドであり、前記用量が手術部位または開放創に浸潤されるとき、約1μgから約15,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドである方法に関する。換言すれば、「カプサイシノイド」という用語は、その薬剤がカプサイシン、カプサイシン以外のカプサイシノイド、あるいはカプサイシンと1種または複数の他のカプサイシノイドとの混合物である製剤を含むことを意味する(注射または浸潤の場合、すべてのカプサイシノイド薬剤の総量は、カプサイシン約1μgから約5,000μgの用量に治療上等価な用量に基づき、浸潤の場合、すべてのカプサイシノイド薬剤の総量は、カプサイシン約1μgから約15,000μgの用量に治療上等価な用量に基づく)。
【0028】
本発明はさらに、一部には、それを必要としているヒトまたは動物においてある部位で疼痛を軽減または緩和するための方法であって、それを必要としているヒトまたは動物の特定疼痛部位に、その特定部位の外部で作用を引き出すことなく前記特定部位を脱神経し、かつ前記部位から生ずる疼痛を軽減するのに有効な量で、単回注射可能または埋込み可能用量のカプサイシノイドを投与することを含み、前記有効用量が、約1μgから約5,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドである方法に関する。いくつかの好ましい実施形態において、注射または埋込み用のカプサイシンの用量は、約10から約3000μg、好ましくは約300から約1200μgである。他の特定の実施形態において、注射または埋込み用のカプサイシンの用量は、約10から約1000マイクログラム、好ましくは約20から約300マイクログラム、最も好ましくは約35から約200マイクログラムである。好ましい実施形態において、カプサイシノイドの用量は、注射または埋込み用の薬剤としても生理的にも許容されるビヒクル中で投与され、場合によってさらに1種または複数の薬剤賦形剤を含むことができる。いくつかの好ましい実施形態において、投与用量のカプサイシノイドの初期過剰疼痛性作用を軽減するのに有効な量および場所で、前記用量のカプサイシノイドの前またはと同時に、局所麻酔剤を投与することができる。局所麻酔剤は、たとえば、前記用量のカプサイシノイドが投与される部位に直接注射するか、あるいは近位、局所、体性、または脳脊髄軸ブロックとして投与することができる。必要であれば、全身麻酔を用いることができる。カプサイシノイドの用量は、皮下、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、仙骨、真皮内または皮内、単一神経の肋間、関節内、滑液包内、脊髄内、動脈内、または体腔に注射または埋め込むことができる。本発明の製剤の関節内投与は、たとえば、膝、肘、股関節部、胸鎖、側頭下顎、手根、足根、手首、足首、椎間円板、黄色靭帯、および疼痛のある他の任意の関節からなる群から選択された関節に行うことができる。
【0029】
本発明のいくつかの他の実施形態において、それを必要としているヒトまたは動物において手術部位または開放創の疼痛を軽減または緩和するための方法であって、それを必要としているヒトまたは動物の手術部位または開放創に、その手術部位または開放創の外部で作用を引き出すことなくその手術部位または開放創を脱神経するのに有効な量で、単回用量のカプサイシンを浸潤により投与することを含み、その用量が、約1μgから約15,000μgの範囲である方法が提供される。いくつかの好ましい実施形態において、有効用量のカプサイシノイドは、約500から約15,000μgのカプサイシン、約600から約10,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドである。いくつかの好ましい実施形態において、カプサイシノイドの用量は、約0.1から約1000mlの量の、浸潤用の薬剤として許容されるビヒクル中で投与される。いくつかの好ましい実施形態において、カプサイシノイドの用量は、約1mlから約100mlの量の、浸潤用の薬剤として許容されるビヒクル中で投与される。他の好ましい実施形態において、カプサイシノイドの用量は、約5mlから約30mlの量の、浸潤用の薬剤として許容されるビヒクル中で投与される。カプサイシノイドが手術部位または開放創に浸潤されるいくつかの好ましい実施形態において、この方法はさらに、前記用量のカプサイシノイドの前またはと同時に、局所または全身麻酔剤を投与することを含む。局所麻酔剤の用量は、たとえば、前記投与用量のカプサイシノイドの初期過剰疼痛作用を軽減するのに有効な量および場所であることができる。局所麻酔剤は、手術または創傷部位に浸潤によって投与することができる。いくつかの好ましい実施形態において、その部位でのカプサイシノイドの投与は、少なくとも約48時間、好ましくは少なくとも約1週間、手術または創傷部位近傍の疼痛の軽減を提供する。
【0030】
本発明はさらに、一部には、それを必要としているヒトまたは動物において手術部位または開放創の疼痛を軽減または緩和するための方法であって、それを必要としているヒトまたは動物の手術部位または開放創に、その手術部位または開放創の外部で作用を引き出すことなく前記手術部位または開放創を脱神経するのに有効な量で、単回浸潤可能用量のカプサイシノイドを投与することを含み、前記有効用量が、約1μgから約15,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドである方法に関する。
【0031】
手術部位または開放創に浸潤によって投与されるカプサイシノイドの用量は、その組織、筋肉、または骨に直接投与することができる。他の実施形態において、カプサイシノイドの用量は、関節内、胸骨下、滑液包内、嚢内、または体腔に投与することができる。本発明の製剤の関節内投与は、たとえば、膝、肘、股関節部、胸鎖、側頭下顎、手根、足根、手首、足首、椎間円板、黄色靭帯、および疼痛のある他の任意の関節からなる群から選択された関節に行うことができる。
【0032】
本発明はさらに、一部には、損傷に伴う急性外傷性疼痛を治療する方法であって、損傷の近傍で患者の皮膚を通して、生理的適合性ビヒクル中のカプサイシノイドを注射することを含み、前記カプサイシノイドの用量が、患者が引き続き損傷の近傍で感覚を有し、その部位の近傍でAδ線維に関連する鋭い保護疼痛を及ぼすことなく、損傷の近傍でC線維に関連する鈍くうずく痛みを軽減するのに充分であり、カプサイシノイドの用量が、約300から約1500μgの量のカプサイシンの用量と治療上等価であり、少なくとも約48時間、損傷の近傍で鈍くうずく痛みを軽減するのに有効である方法に関する。
【0033】
本発明はさらに、一部には、手術または開放創損傷に伴う急性外傷性疼痛を治療する方法であって、患者の手術部位または開放創に生理的適合性ビヒクル中のカプサイシノイドを浸潤により投与することを含み、前記カプサイシノイドの用量が、患者が引き続き手術部位または開放創の近傍で感覚を有し、手術部位または開放創の近傍でAδ線維に関連する鋭い保護疼痛を及ぼすことなく、手術部位または開放創の近傍でC線維に関連する鈍くうずく痛みを軽減するのに充分であり、カプサイシノイドの用量が、約600から約15,000μgの量のカプサイシンの用量と治療上等価であり、少なくとも約48時間、手術部位または開放創の近傍で鈍くうずく痛みを軽減するのに有効である方法に関する。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、カプサイシノイドは、カプサイシン自体である。より好ましい実施形態において、カプサイシノイドは、trans−カプサイシンを含む。もっとも好ましい実施形態において、カプサイシノイドは、少なくとも約97%trans−カプサイシンである。
【0035】
本発明に従って特定部位、手術部位、または開放創に投与されるカプサイシノイドの単回注射可能、埋込み可能、または浸潤可能用量は、好ましくは、a)特定部位から生じる疼痛を軽減または除去するために、疼痛の開始に関与する特定の限局領域でC線維および/またはAδ線維の選択的で高度に限局性の破壊または無力化を引き起こし、b)C線維および/またはAδ線維活性化の潜在的な悪影響および/または疼痛部位外部での損傷を最小限にするのに有効な量である。
【0036】
本発明はさらに、それを必要としているヒトまたは動物においてある部位で疼痛を軽減するための注射可能または埋込み可能な薬剤組成物であって、trans−カプサイシンを含む1μgから5000μgのカプサイシノイド、および注射または埋込み用の薬剤として許容されるビヒクルから本質的になる薬剤組成物に関する。いくつかの好ましい実施形態において、trans−カプサイシンの用量は、約10μgから約3000μg、約300μgから約1500μg、好ましくは約400μgから約1200μgの範囲である。
【0037】
本発明はさらに、それを必要としているヒトまたは動物において手術部位または開放創で疼痛を軽減するための浸潤可能な薬剤組成物であって、trans−カプサイシンを含む1μgから15,000μgのカプサイシノイド、および浸潤用の薬剤として許容されるビヒクルから本質的になる薬剤組成物に関する。いくつかの好ましい実施形態において、trans−カプサイシンの用量は、約600μgから約15,000μg、約600μgから約10,000μg、好ましくは約1,000μgから約10,000μgの範囲である。
【0038】
本明細書に記載の本発明がより充分に理解されるように、この開示のために以下の定義を示す。
【0039】
「注射」という用語は、ヒトまたは動物の皮膚を経る、特定部位へのカプサイシンの投与を意味する。
【0040】
「埋込み」という用語は、ヒトまたは動物の皮膚、組織、筋肉、腱、関節、または体の他の部分にカプサイシンの用量を包埋することによる、特定部位へのカプサイシンの投与を意味する。
【0041】
「浸潤」または「浸潤可能」という用語は、ヒトまたは動物の特定の手術部位または開放創への投与を意味する。
【0042】
本明細書では、「カプサイシノイド」という用語は、他に指定のない限り、カプサイシンと同じ薬理部位、たとえばVR1で作用する、カプサイシン、カプサイシンUSP、および精製カプサイシン、カプサイシン類似体、およびそれらの誘導体(本明細書および添付の請求の範囲では、まとめてカプサイシノイドと呼ぶ)を意味する。
【0043】
急性疼痛は、短い重度の経過に続いて急激な発症を示す任意の疼痛を意味し、たとえば、頭痛、ならびに骨、関節、靭帯、および腱の癌、破損、挫傷、捻挫、および脱臼に伴う疼痛である。
【0044】
慢性疼痛は、長期間続く、または頻繁な再発を特徴とする疼痛を意味し、たとえば、末期疾患、関節炎、自己免疫疾患に伴う疼痛、あるいは糖尿病もしくは脊髄変性などの変性疾患に起因する、または外傷もしくは手術後の神経リモデリングに由来する神経障害性疼痛である。
【0045】
本明細書では、「局所麻酔剤」という用語は、局所無感覚および/または無痛覚をもたらす任意の薬剤または薬剤の混合物を意味する。
【0046】
併用投与とは、カプサイシンおよび追加の治療上有効な薬剤、たとえば局所麻酔剤またはフェノール、の両方を含有する単一組成物を投与すること、あるいは有効な結果が両方の化合物を単一組成物として投与するときと同等であるような充分に短い時間内に、個別の組成物としてカプサイシンおよび追加の治療上有効な薬剤を投与することを意味する。
【0047】
以下の図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、請求の範囲によって包含される本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1に例示する変形性関節症安全試験に参加した被験者に投与したカプサイシン用量10μg、100μg、および300μgの血漿濃度を示すグラフである。
【図2】実施例1に例示する変形性関節症安全試験に参加した被験者のベースラインと比較したVASの減少率を示すグラフである。
【図3】実施例2に例示する変形性関節症安全試験に参加した被験者のNRS疼痛スコアを示すグラフである。
【図4】実施例3に例示するバニオン切除有効性試験に参加した被験者間のVAS疼痛スコアの比較を示すグラフである。
【図5】レスキュー(rescue)投薬を要する実施例3に例示するバニオン切除有効性試験に参加した被験者率の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本明細書に開示する組成物および方法は、以下まとめて「カプサイシノイド」と称する有効量のカプサイシンまたはカプサイシン類似体によって特定部位の疼痛を治療するために用いることができる。好ましい一実施形態において、この方法は、その部位の疼痛を緩和するために、ヒトまたは動物においてある部位に有効量のカプサイシノイドを投与することを含む。
【0050】
他の実施形態において、この方法は、カプサイシノイドが投与される部位に感覚消失を提供し、次いでその部位に有効量のカプサイシノイドを投与することを含む。感覚消失は、その部位に直接提供することができ、あるいはカプサイシノイドが投与される部位に感覚消失をもたらす遠隔部位に提供することができる。たとえば、硬膜外局所麻酔は、カプサイシノイドが投与される患者に、腰から下に位置する部位において提供することができる。あるいは、局所麻酔は、局所ブロック、近位ブロック、体性ブロック、脳脊髄軸ブロックとして投与することができる。麻酔剤は、脊椎ブロック、硬膜外ブロック、または神経ブロックとして、全身麻酔剤として投与することができる。好ましくは、局所麻酔剤が投与される実施形態において、局所麻酔剤は、その局所麻酔剤がカプサイシノイドで処置される領域に一過性の感覚消失を提供するように、カプサイシノイド投与前に投与される。
【0051】
用いることのできる局所麻酔剤の例には、ブピバカイン、ロピバカイン、ジブカイン、プロカイン、クロロプロカイン、プリロカイン、メピバカイン、エチドカイン、テトラカイン、リドカイン、キシロカイン、およびそれらの混合物、ならびに当分野で知られている薬剤として許容される他の任意の局所麻酔剤が含まれる。局所麻酔剤は、塩の形態、たとえば、塩酸塩、臭化物、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、または硫酸塩であることができる。より好ましくは、局所麻酔剤は、遊離塩基形態である。好ましい局所麻酔剤には、たとえばブピバカインが含まれる。ブピバカインの場合、この遊離塩基は、緩やかな初期放出を提供し、浸潤部位における局所麻酔剤の早期「ダンピング」を回避する。他の局所麻酔剤は、異なって作用する可能性がある。投与手段が全身作用ではなく、局所作用のみを生じる場合には、典型的には体系的に投与される局所麻酔剤を用いることもできる。
【0052】
局所麻酔剤の用量は、投与される麻酔剤、ならびに局所麻酔剤が投与される部位によって決まる。たとえば、局所ブロック(たとえば、くるぶしブロック)によって局所麻酔剤が投与される実施形態において、麻酔剤の用量は、0.5%溶液1mlから約30mlまでの範囲である(たとえば、ブピバカイン)。他の実施形態において、2%溶液3mg/kg用量(最大200mg)を、関節内浸潤によって投与することができる(たとえば、リドカイン)。他の実施形態において、局所麻酔剤の用量は、0.25%から5%溶液0.5mlから約60mlの範囲であり得る。
【0053】
別法として、その領域を麻酔するために局所麻酔剤の代わりに(または局所麻酔剤に加えて)、処置される手術部位または開放創にフェノールを投与することができる。フェノールは、好ましくは、カプサイシノイド投与前に投与することができ、あるいはカプサイシノイドの用量と併用投与することができる。併用投与とは、カプサイシノイドおよびフェノールの両方を含有する単一組成物を投与すること、または有効な結果が両方の化合物を単一組成物として投与するときと同等であるような充分に短い時間内に、個別の組成物としてカプサイシノイドおよびフェノールを投与することを意味する。
【0054】
本発明に先立って、たとえば米国特許第4,313,958号(LaHann)において、カプサイシンは「全身投与」(すなわち、髄腔内、硬膜外、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下)によって投与されたとき、痛覚消失をもたらすことが記載されている。動物試験は、その称するところではカプサイシンのいくらかの副作用を低減または除去するとされている「階段投与」によって行われた。ここでは、カプサイシンが紫外線照射前に最終用量25mg/kg以下で全身に送達されたとき、放射性誘発痛覚過敏を妨げたが、正常範囲より高くは痛覚閾値を上昇させなかったことが報告されている。より多用量のカプサイシン、すなわち最終用量50mg/kg以上のカプサイシンが全身に投与されたときのみ、痛覚閾値が上昇した。LaHannは、ヒトにおける臨床使用の場合、総用量0.05mg/kgから1,000mg/kgが許容され、総用量0.25mg/kgから500mg/kgが好ましいことを仮定した(例示はない)。ラットの体重は125から175グラムであり、カプサイシンの投与総用量は27mg/kgから102mg/kg(または皮下に注射された総用量はカプサイシン約3.375mgから約17.85mg)の範囲であった。
【0055】
さらに最近では、米国特許第5,962,532号(Campbell他)は、非経口投与に関して、注射体積0.1から20ml、カプサイシン濃度0.01から10%を記載しており、これは体積および濃度に基づいてカプサイシンの総用量0.01mgから2,000mgに換算される。
【0056】
対照的に本発明では、疼痛の治療および/または軽減に関与する特定限局領域、手術部位、または開放創へのマイクログラム量のカプサイシンの投与は、知覚神経機能の変性によって治療効果を生じるための全体系にわたるミリグラム量の暴露に比べて著しい利点が認められる。
【0057】
本発明では、単回用量約1μgから約5,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量の1種または複数の他のカプサイシノイドは、注射または埋込みによって投与され、その部位から生じる疼痛を除去するために、疼痛の開始に関与する特定の限局領域でC線維および/またはAδ線維の選択的で高度に限局性の破壊または無力化を引き起こし、C線維および/またはAδ線維活性化の潜在的な悪影響および/または疼痛部位外部での損傷を最小限にする。いくつかの好ましい実施形態において、約10から約3000マイクログラムのカプサイシン、または治療上等価用量の1種または複数の他のカプサイシノイドが、その部位に投与される。いくつかの好ましい実施形態において、その部位に投与されるカプサイシンの量および/または好ましくはその部位に投与されるカプサイシンの範囲は、約100から約1000マイクログラムである。換言すれば、本発明は、全身作用(たとえば、その特定限局部位を越える作用)を引き出すことなく、特定限局領域において神経線維を脱神経させるために、以前に当分野の技術者によって有用であると考えられていた用量範囲に比べて大幅に低減された量で、注射または埋込みによって、単回用量のカプサイシンまたは他のカプサイシノイドを投与することに関する。
【0058】
本発明の他の実施形態において、単回用量約1μgから約15,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量の1種または複数の他のカプサイシノイドは、浸潤によって投与され、その部位から生じる疼痛を除去するために、疼痛の開始に関与する特定の限局領域でC線維および/またはAδ線維の選択的で高度に限局性の破壊または無力化を引き起こし、C線維および/またはAδ線維活性化の潜在的な悪影響および/または疼痛部位外部での損傷を最小限にする。いくつかの好ましい実施形態において、約600から約15,000マイクログラムのカプサイシン、または治療上等価用量の1種または複数の他のカプサイシノイドが、手術部位または開放創に投与される。いくつかの好ましい実施形態において、手術部位または開放創に投与されるカプサイシンの量、および/または好ましくはカプサイシンの範囲は、約1,000から約10,000マイクログラムである。換言すれば、本発明は、全身作用(たとえば、その特定限局部位を越える作用)を引き出すことなく、特定限局領域において神経線維を麻痺させるために、以前に当分野の技術者によって有用であると考えられていた用量範囲に比べて大幅に低減された量で、浸潤によって、単回用量のカプサイシンまたは他のカプサイシノイドを投与することに関する。
【0059】
類似の生理学的特性を有する、すなわちカルシウムおよびナトリウム透過性のカチオンチャネルを開くことにより、C線維膜脱分極を引き起こすカプサイシノイド(カプサイシン類似体)が知られている。たとえば、レジニフェラトキシンは、Blumbergの米国特許第5,290,816号にカプサイシン類似体として記載されている。Brand(Procter & Gamble Co.)の米国特許第4,812,446号は、それらを調製するための他のカプサイシン類似体および方法を記載している。米国特許第4,424,205号は、カプサイシン類似体を挙げている。Ton等、Brit. J. Pharm. 10:175−182(1955)は、カプサイシンおよびその類似体の薬理作用を論じている。カプサイシン、カプサイシン類似体、および他のカプサイシノイドは、その開示を参照により本明細書の一部とする国際公開第96/40079号にも詳細に記載されている。カプサイシノイドは、その開示を参照により本明細書の一部とする欧州特許第0149545号にも記載されている。
【0060】
あるいは、カプサイシノイド(類似体)は、カプサイシンの用量の一部またはすべての代わりに、その部位に投与することができ、カプサイシン類似体は、代替されるカプサイシンの治療上等価量で投与される。カプサイシン類似体がカプサイシンの一部またはすべてと代替するために選択される場合、カプサイシン類似体は、当分野で知られているカプサイシンと類似の生理学的特性を有する化合物から選択することができる。レジニフェラトキシンは、その活性において質的にカプサイシンに似ているが、効力(すなわち、103〜104倍強力)および作用の相対スペクトルにおいて量的に異なる。レジニフェラトキシンの場合、単回適用では対象の体重1kg当たり0.1×10−3から5×10−2mg、好ましくは0.1×10−3から5×10−3mg、または多回適用ではより少ない量を投与することが推奨される。いくつかの実施形態において、レジニフェラトキシンは、対象に1×10−5mg/kgから5×10−2mg/kgの範囲で投与される。レジニフェラトキシンはさらに、いくぶん異なる作用スペクトルを示し、所与の用量において疼痛のより大きな緩和を提供する。したがって、レジニフェラトキシンの用量は、カプサイシン単独の用量より、少なくとも100倍少ないはずである。
【0061】
他の適切なカプサイシン類似体には、これに限定されるものではないが、好ましくはN−バニリルノナンアミド、N−バニリルスルホンアミド、N−バニリル尿素、N−バニリルカーバメート、N[(置換フェニル)メチル]アルキルアミド、メチレン置換N[(置換フェニル)メチル]アルカンアミド、N[(置換フェニル)メチル]−cis−1価飽和アルケンアミド、N[(置換フェニル)メチル]−2価不飽和アミド、3−ヒドロキシアセトアニリド、ヒドロキシフェニルアセトアミド、擬似カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、アナンダミド、ピペリン、ジンゲロン、ワーバーガナル(warburganal)、ポリゴジアール、アフラモジアール(aframodial)、シンナモジアール、シンアモスモライド、シンナモライド(cinnamolide)、シバムド(civamde)、ノニバミド、オルバニル、N−オレイル−ホモバニルアミジア(N−oleyl−homovanillamidia)、イソベレラル(isovelleral)、スカララジアール、アンシストロジアール(ancistrodial)、β−アカリジアール、メルリジアール(merulidial)、スクチゲラール(scutigeral)、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法に用いられるカプサイシノイドは、カプサイシン自体である。いくつかの好ましい実施形態において、カプサイシンは、カプサイシンUSPの化学精製から得られた精製形態である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の組成物および方法に用いられる精製カプサイシンは、本質的にトランス異性体からなる。カプサイシンのトランス異性体は、バニロイド受容体においてその活性を有し、本発明のこの実施形態、方法、および製剤は、VR−1機構によるバニロイド受容体の活性化によって緩和することのできる障害または疼痛の治療に特に有用である。カプサイシンUSPは、約55〜60%のみのtrans−カプサイシンを含有し、残りは前駆体ジヒドロカプサイシンおよびノルジヒドロカプサイシンを含むが、そのような実施形態において、製剤は、好ましくは本質的にtrans−カプサイシンからなり、たとえば、好ましくはtrans−カプサイシン約97%超、好ましくは約98%超、より好ましくは約99%超の純度を有する。
【0063】
トランス異性体は、好ましくは、その開示の全体を参照により本明細書の一部とする2003年4月8日出願の米国特許仮出願第60/461,164号に記載のとおり、4段階の方法でカプサイシンのトランス異性体を合成する方法に従って調製され、精製される。米国特許仮出願第60/461,164号によれば、カプサイシンのトランス異性体を合成する前記方法は、a)ハロ吉草酸および/またはハロアルカニック酸(haloalkanic acid)を用いて3−メチルブチンをアルキル化して、その8−メチル−6−ノニノイック酸(nonynoic acid)および/またはアルキノイック酸(alkynoic acid)類似体を得るステップ、b)前記8−メチル−6−ノニノイック酸を還元して、trans−8−メチル−ノネノイック酸(nonenoic acid)を得るステップ、c)8−メチル−ノネノイック酸を活性化して、酸塩化物を得るステップ、およびd)酸塩化物を用いて、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩をアシル化して、trans−カプサイシンを得るステップを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明に用いるカプサイシンを調製する方法のステップa)は、i)無水テトラヒドロフラン(THF)をヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)と混合し、その混合物を約−78℃から約−75℃に冷却するステップ、ii)ステップi)の混合物に3−メチルブチンを添加し、その後、約−78℃から約−65℃の温度で塩基を1滴ずつ添加し、第2の混合物を得るステップ、iii)第2の混合物を約−30℃まで温め、約30分間攪拌するステップ、およびiv)ハロ吉草酸の無水テトラヒドロフラン溶液を約−30℃の温度で約10から約15分間1滴ずつ添加し、次いで、徐々に室温に温め、一晩攪拌して反応混合物を得るステップを含む。
【0065】
いくつかの他の実施形態において、i)反応混合物に3Mの塩酸(HCl)を添加し、反応混合物を酢酸エチルで抽出するステップ、およびii)抽出した反応混合物をブラインで洗浄して粗生成物を得るステップをさらに含む、ステップa)の粗中間体生成物を得る方法が提供される。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明に用いるカプサイシンを調製する方法のステップb)は、i)前記8−メチル−6−ノニノイック酸を、無水テトラヒドロフランと第三級ブチルアルコール(t−BuOH)との混合物に溶解して溶液を得て、その溶液を約−55℃から約−40℃に冷却するステップ、ii)アンモニア(NH)をその溶液に凝縮して約−50℃から約−40℃とするステップ、iii)ナトリウム滴を少しずつ添加し、約−45℃から約−30℃の温度で約30分から約2時間攪拌するステップ、およびiv)塩化アンモニウム(NHCl)を添加し、室温に温め、NHを一晩蒸発させて反応混合物を得るステップを含む。ステップb)の反応のステップiii)は、リチウムを少しずつ添加し、約−65℃から約−45℃の温度で約30分から約2時間攪拌するステップをさらに含むことができる。
【0067】
いくつかの他の実施形態において、粗ステップb)中間体生成物はさらに、i)反応混合物に水を添加するステップ、ii)6NのHClを用いて反応混合物をpH約2から約3に酸性化するステップ、iii)反応混合物を酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥するステップ、およびiv)真空下で濾過し、溶媒を除去して、ステップb)の粗中間体生成物を得るステップを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明に用いるカプサイシンを調製する方法のステップc)は、i)8−メチル−ノネノイック酸に室温で約15分から約30分間、ハロゲン化チオニルを1滴ずつ添加し、溶液を形成するステップ、ii)その溶液を約50℃から約75℃で約1時間加熱するステップ、およびiii)真空下、約40℃から約45℃で過剰のハロゲン化チオニルを除去して、ステップc)の中間体生成物を得るステップを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明に用いるカプサイシンを調製する方法のステップd)は、i)4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩とジメチルホルムアミド(DMF)とを混合するステップ、ii)ステップi)の混合物に室温で5Nの水酸化ナトリウム(NaOH)を少しずつ添加し、30分間攪拌するステップ、iii)酸ハロゲン化物を約0℃から約10℃の温度で約20分から約1時間、1滴ずつ無水エーテルに添加するステップ、その後iv)混合物を徐々に室温に温め、一晩攪拌するステップを含む。いくつかの実施形態において、ステップd)はさらに、i)水を混合物に添加し、混合物を酢酸エチルで抽出して、酢酸エチル抽出物を得るステップ、ii)前記抽出物を1NのHClで洗浄し、その後、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)で洗浄するステップ、iii)その溶液をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥するステップ、およびiv)真空下で濾過し、溶媒を除去して、粗生成物を得るステップを含む。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態において、1つまたは複数のステップ(たとえば、a)、b)、c)および/またはd))後にtrans−カプサイシンまたはカプサイシン中間体を調製する方法はさらに、シリカゲルを用い、酢酸エチル/ヘキサンの混合物で溶出するカラムクロマトグラフィ、フラッシュクロマトグラフィなどによって粗生成物を精製して、粗trans−カプサイシン生成物を得るステップを含む。
【0071】
好ましくは、上述の4段階の方法によってカプサイシンを形成した後、そのtrans−カプサイシン生成物を、i)粗trans−カプサイシン生成物をエーテル/ヘキサン混合物に溶解し、その混合物を約40℃から約45℃に加熱するステップ、ii)混合物を約2時間攪拌しながら、室温に冷却するステップ、およびiii)混合物を濾過して、精製trans−カプサイシン生成物を得るステップを含む精製工程に供する。
【0072】
別法として、または上述の精製工程に加えて、カプサイシンの「セミプレップ精製」または「セミ分取精製」とも称されるさらなる精製工程にカプサイシンを供する。セミプレップ精製において、カプサイシン、または前に精製したカプサイシンを、セミ分取HPLC(高速液体クロマトグラフィ)を用いて精製し、これにより好ましくは、カプサイシン約97%超、好ましくは約98%超、より好ましくは約99%超の純度を有するtrans−カプサイシン生成物が提供される。
【0073】
いくつかの好ましい実施形態において、製剤中の活性成分は、実質的に純粋なtrans−カプサイシンを含む(たとえば、約10%以下の前駆体、またはcis−カプサイシンなどの他のカプサイシン化合物を含む)。より好ましい実施形態において、製剤は、少なくとも約95%の純粋なtrans−カプサイシンを含む。もっとも好ましい実施形態において、製剤は、少なくとも約99%の純粋なtrans−カプサイシンを含む。カプサイシンのシス異性体は、いくつかの機序により活性を有するが、VR−1はこの剤の主要な作用を含むとは考えられていない。
【0074】
VR−1受容体におけるカプサイシンのトランス異性体の全体的な活性に照らして、本発明のいくつかの実施形態において、本発明の方法および製剤に含まれるtrans−カプサイシンの量は、純度の低い形態のカプサイシン(たとえば、カプサイシンUSP)を含む製剤と比べて低減され得ることが企図される。
【0075】
本発明の他の実施形態において、本発明の製剤および方法は、本質的にcis−カプサイシンからなるカプサイシン剤の使用を企図する。
【0076】
カプサイシンは、未精製抽出形態、カプサイシンUSP、または精製カプサイシンのいずれも、in vitroおよびいくつかの動物種のin vivoでの種々の試験において包括的に研究されている。本発明の方法によるカプサイシノイドの単回用量の投与は、a)特定部位から生じる疼痛を軽減または除去するために(すなわち、抗侵害受容を生じる)、疼痛の開始に関与する特定の限局領域(たとえば、関節内関節、嚢内)でC線維および/またはAδ線維の選択的で高度に限局性の破壊または無力化を引き起こし、b)C線維および/またはAδ線維活性化の潜在的な悪影響および/または疼痛部位外部での損傷(すなわち、心臓反射[たとえば、ベツォルト−ヤーリッシュ反射]または排尿反射[たとえば、排泄衝動]などのホメオスタシス機構、あるいは中枢神経系の神経線維に対する損傷)を最小限にするために、カプサイシンの全身送達を最小限にするかつ/または妨げる。この鎮痛作用は、好ましくは、少なくとも約48時間から約120時間、好ましくは約10日から約21日、より好ましくは約4週から約5週、さらに好ましくは少なくとも約6週から約8週、もっとも好ましくは少なくとも約16週以上、疼痛の緩和を提供する。
【0077】
送達系は、カプサイシンおよびSchneider等、Anesthesiology 74:270−281(1991)に報告されているように、感覚特異的な遮断を生ずるか、または、その教示を本明細書の一部とするMasters等、Soc. Neurosci. Abstr. 18:200(1992)に報告されているように、持続放出、それに続く単回注射による遮断に関してより有用となる物理的/化学的特性を有する局所麻酔剤を投与するためにも用いることができる。送達系の例には、麻酔剤が0.1重量%から90重量%、好ましくは5重量%から75重量%の充填率でポリマーマトリクスに混合されているマイクロスフェアが含まれる。局所麻酔剤の形態(遊離塩基または塩)および製造方法に加えて、ポリマーに混合される薬剤のパーセントおよびマトリクスの形状を操作することにより、指定された充填用量およびその後の維持用量を送達するように系を調整することができる。1日当たり放出される薬剤の量は、マトリクスに混合される薬剤のパーセントに比例して増加する(たとえば、5、10から20%)。送達系の他の形態には、マイクロカプセル、スラブ、ビーズ、およびペレットが含まれ、場合によって、ペーストまたは懸濁液に製剤化することもできる。
【0078】
送達系は、もっとも好ましくは合成生分解性ポリマーの形態であるが、他の材料も送達系を製剤化するために用いることができ、これにはタンパク質、多糖類、および非生分解性合成ポリマーが含まれる。もっとも好ましくは、ポリマーは1年未満の期間にわたってin vivoで分解し、ポリマーの少なくとも50%は、6ヵ月以内に分解する。より好ましくは、ポリマーは、1ヵ月以内に著しく分解し、ポリマーの少なくとも50%は、体によって排除される非毒性残留物に分解され、カプサイシンおよび麻酔剤は100%が2週間以内に放出される。ポリマーはまた、好ましくは、放出が持続されるだけでなく、線形であるように、膨張侵食ではなく表面侵食による加水分解によって分解されるべきである。この基準を満たすポリマーには、いくつかのポリ酸無水物、乳酸とグリコール酸の重量比が4:1以下(すなわち、乳酸80重量%以下に対してグリコール酸20重量%以上)である乳酸とグリコール酸のコポリマーなどのポリ(ヒドロキシ酸)、および触媒または分解促進化合物を含有する、たとえば無水マレイン酸などの無水触媒を少なくとも1重量%含有するポリオルトエステルが含まれる。他のポリマーには、ゼラチンおよびフィブリンなどのタンパク質ポリマー、ならびにヒアルロン酸などの多糖類が含まれる。ポリ乳酸は、in vivoで分解するのに少なくとも1年かかるので有用でない。ポリマーは、生体適合性であるべきである。生体適合性は、標準的な技法を用いて、ポリマーを形成するモノマーおよび/またはポリマーを再結晶することにより改善される。
【0079】
用いることのできる他の局所用担体または放出系は、たとえばHaynes等、Anesthesiology 63、490−499(1985)のレシチン微小液滴またはリポソーム、またはDombの米国特許第5,188,837号のポリマー/リン脂質微粒子である。
【0080】
単独または局所麻酔剤と共にカプサイシンを投与するために適切な送達系の製造は、当分野の技術者に知られている。この製剤は、同時または連続的に、麻酔剤とカプサイシンの両方を送達するように設計することもできる。
【0081】
局所麻酔剤は、好ましくは、たとえば、罹患または発痛構造、あるいは損傷神経または疼痛領域に神経支配を提供する神経に局所麻酔剤を直接投与することによって、またはカプサイシンが投与される部位を含む領域に局所ブロックをもたらすために、カプサイシンまたはカプサイシン類似体が投与される部位に直接注射、埋込み、または浸潤させることによって投与することができる。
【0082】
他の実施形態において、局所麻酔剤は、好ましくは患者の腰から下に由来する疼痛の場合、脊椎に隣接する硬膜外腔に、または患者の腰から上に由来する疼痛の場合、関節に直接、麻酔剤を注射または埋め込むことによって投与することができる。近位神経ブロックの前投与は、その後のカプサイシン投与の予期される刺激性の副作用に対してC線維を充分に脱感作する。
【0083】
麻酔剤がマイクロスフェアとして投与される実施形態において、マイクロスフェアは、トロッカールを通して浸潤、注射、または埋め込むことができ、あるいはペレットまたはスラブは、手術前、または創傷の修復もしくは洗浄後に、神経に隣接して外科的に配置することができる。マイクロスフェアは、カプサイシンと局所麻酔剤の両方を含むとき、単独で投与することができ、あるいはマイクロスフェアから放出される麻酔剤による神経遮断を持続するのに有効な量でカプサイシンを含む溶液と組み合わせて投与することができる。懸濁液、ペースト、ビーズ、および微粒子は、典型的に患者に投与するための薬剤として許容される液体担体、たとえば滅菌食塩水、滅菌水、リン酸緩衝食塩水、または他の通常の担体を含む。
【0084】
カプサイシン投与の予期される副作用は、侵害受容器脱感作前の興奮期中に生じる侵害受容器の強い放電によるものであると考えられている。しかしながら、神経ブロックなど、麻酔剤を投与部位の近位または直接的に前投与することにより、そのような副作用は除去されるか、または実質的に低減される。麻酔剤にもかかわらずいくらかの「突出痛」が起こる場合、その疼痛は、非ステロイド性抗炎症剤または麻薬性鎮痛剤(すなわち、種々のアヘンアルカロイド、たとえばモルヒネ、モルヒネ塩、およびノルモルヒネなどのモルヒネ類似体など)などの鎮痛剤を投与することによって処置することができる。カプサイシンの投与は、必要であれば繰り返すことができる。
【0085】
後のカプサイシンまたはカプサイシン様化合物の投与を伴う麻酔剤の投与は、長期間その部位で疼痛を軽減する。治療が関節で行われる場合、動作の増大、および疼痛の軽減に関して、患者をモニターすることができる。この治療は、症状を制御するために、必要に応じて繰り返すことができる。
【0086】
本発明の組成物および方法は、特定の部位、手術部位、または開放創に疼痛の緩和を提供することにより、疼痛に関連する種々の状態を治療するために用いることができる。治療される状態の例には、これに限定されるものではないが、侵害受容性疼痛(無傷ニューロン経路を通って伝達される疼痛)、神経障害性疼痛(神経構造の損傷に起因する疼痛)、神経損傷による疼痛(神経腫および連続性神経腫)、神経痛の疼痛(神経の疾患および/または炎症に由来する疼痛)、筋肉痛の疼痛(筋肉の疾患および/または炎症に由来する疼痛)、発痛点に関連する疼痛、軟部組織の腫瘍による疼痛、神経伝達物質調節異常症候群に伴う疼痛(正常な神経のシグナル伝達に関連する神経伝達物質分子の量/質の崩壊)、ならびに手術を要する足、膝、股関節部、脊柱、肩、肘、手、頭、頭頸部の状態など整形外科障害に伴う疼痛が含まれる。
【0087】
疼痛の感知に関与する受容体は、有害刺激に対する侵害受容体と適切に称される。これらの侵害受容器は、皮膚の直下で終止し、皮膚痛覚を感知する自由神経終末である。侵害受容器は、体性痛を感知するために腱および関節に、内臓痛を感知するために体器官にも位置する。疼痛受容体は、皮膚に非常に多数あり、したがって皮膚において疼痛の感知は明確であり、疼痛の原因となる場所を容易に特定することができる。腱、関節、および体器官では、疼痛受容体は少数である。したがって、疼痛の原因となる場所を容易に特定できない。明らかに、侵害受容器の数は、疼痛を感じる期間にも影響を及ぼす。皮膚の疼痛は典型的に短期間であるが、新しい衝撃で再活性化される可能性があり、体性痛および内臓痛は長期間である。ほとんどすべての体組織が侵害受容器を備えていることに留意されたい。上に説明したとおり、疼痛は主要な警告機能を有するため、このことは重要な事実である。我々が疼痛を感じず、疼痛が健康な状態に影響を与えなければ、体が痛んだときに、助けを求めることはしないだろう。侵害受容性疼痛には、好ましくは、これに限定されるものではないが、手術後疼痛、群発性頭痛、歯痛、外科的疼痛、重度の熱傷による疼痛、分娩後疼痛、アンギナ、尿生殖路疼痛、スポーツによる損傷に関連する疼痛(腱炎、滑液包炎など)、ならびに関節の変性および膀胱炎に伴う疼痛が含まれる。
【0088】
神経障害性疼痛は一般に、軸索または鞘の変性など、神経自体の異常を含む。たとえば、ある種の神経障害において、ミエリン鞘の細胞および/またはシュワン細胞は、機能異常であり、変性し、死んでいる可能性があるが、軸索は非罹患のままである。あるいは、ある種の神経障害では、軸索のみが障害を受け、ある種の神経障害では、軸索ならびにミエリン鞘の細胞および/またはシュワン細胞が関連する。神経障害は、それらが起こる過程およびそれらの位置によっても区別される(たとえば、脊髄で生じ、外側に広がるか、あるいはその逆)。AIDS/HIV、帯状疱疹、梅毒、糖尿病、および種々の自己免疫疾患を含む、神経の直接の損傷ならびに多くの全身性疾患は、この状態を生じ得る。神経障害性疼痛は、しばしば焼けるようなまたはうずくような痛み、あるいは刺痛または掻痒痛と表現され、その強さは弱まることがなく、最初の損傷または疼痛を誘発した疾病過程より衰弱させる可能性がある。
【0089】
本発明の方法によって治療可能な神経障害には、感覚機能の可変障害を伴う急性上行性運動麻痺症候群、亜急性感覚運動麻痺症候群、後天性の慢性感覚運動多発性神経障害症候群、遺伝性の慢性多発性神経障害症候群、再発性または回帰性多発性神経障害症候群、および単神経障害または多発性神経障害症候群が含まれる(AdamsおよびVictor、Principles of Neurology、第4版、McGraw−Hill Information Services Company、1036頁、1989)。急性上行性運動麻痺症候群は、急性特発性多発性神経炎、ランドリーギランバレー症候群、急性免疫介在多発性神経炎、感染性単核細胞症多発性神経炎、肝炎多発性神経炎、ジフテリア性多発性神経障害、ポルフィリン症多発性神経障害(たとえば、タリウム)、急性軸索性多発性神経障害、急性全自律(panautonomic)神経障害、ワクチン性、血清性、腫瘍随伴性、多発性動脈炎(polyarteretic)、および狼瘡多発性神経障害からなる群から選択される。
【0090】
亜急性感覚運動麻痺症候群は、欠乏状態(たとえば、脚気、ペラグラ、ビタミンB12)、重金属/工業用溶媒中毒(たとえば、ヒ素、鉛)、薬物過剰摂取(たとえば、イソニアジド、ジスルフラム(disulfuram)、ビンクリスチン、タキソール、クロラムフェニコール)、尿毒症性多発性神経障害、糖尿病、サルコイドーシス、虚血性神経障害および末梢血管疾患、AIDS、および放射線(放射線療法)からなる群から選択される。慢性感覚運動症候群は、癌腫、骨髄腫、および他の悪性疾患、パラプロテイン血症、尿毒症、脚気(通常、亜急性)、糖尿病、甲状腺機能低下症/亢進症、結合組織疾患、アミロイドーシス、らい病、および敗血症からなる群から選択される。遺伝性慢性多発性神経障害は、優性断節性感覚神経障害(成人)、劣性断節性感覚神経障害(小児)、先天性無痛症、脊髄小脳変性症、ライリーデイ症候群、全身性感覚消失症候群、代謝異常を伴う多発性神経障害、および感覚運動/自律神経混合型多発性神経障害からなる群から選択される。再発性/回帰性多発性神経障害症候群は、特発性多発性神経炎、ポルフィリン症、慢性炎症性多発神経根神経障害、多発性単神経炎、脚気/薬物過剰摂取、レフサム病、およびタンジアー病からなる群から選択される。単神経障害/多発性神経障害は、圧迫性麻痺、外傷性神経障害(たとえば、照射(irradiationor)電気的損傷)、血清、ワクチン性(たとえば、狂犬病、痘瘡)、帯状疱疹、新生物浸潤、らい病、ジフテリア創感染、移動性感覚神経障害、帯状疱疹性および疱疹後神経痛からなる群から選択される。
【0091】
神経伝達物質調節異常疼痛症候群は、異常神経または損傷神経に関係せず、1つのニューロンから別のニューロンへのシグナル伝達に関連する種々の神経伝達物質分子の量および/または質が崩壊している正常神経に起因する。より詳細には、感覚伝達物質は、1つの神経細胞の求心性神経終末から放出され、別の神経細胞の求心性終末で受容体によって受け取られる。これらはシグナルを伝達する化学メッセンジャーである。グルタミン酸塩、セロトニン、ドパミン、ノルエピネフリン、ソマトスタチン、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレシストキニン、アヘン剤、およびサポニンを含む、多数の伝達物質がある。伝達物質および神経ペプチド放出の量の変化、求心性受容体の変化、伝達物質および/または神経ペプチドの再摂取の変化は、すべて神経シグナリング過程の質的変化を生じ得る。結果として、異常シグナル伝達は、疼痛として体に解釈される。本発明によって治療することのできる代表的な神経伝達物質調節異常症候群には線維筋痛症が含まれ、これは慢性全身性疼痛の病歴、および身体検査において筋肉および結合組織の定められた18ヵ所の「圧痛点」部位の少なくとも11ヵ所の徴候によって特徴づけられる一般的な状態である(Wolfe等、Arthritis Rheum 33:160−72、1990)。一般に関連する状態には、過敏性腸症候群、頭痛、過敏性膀胱症候群(間質性膀胱炎)、睡眠障害、および疲労が含まれる(Goldenberg、Current Opinion in Rheumatology 8:113−123、1996、Moldofsky等、Psychosom Med 37:341−51、1975、Wolfe等、1990、Wolfe等、J Rheum 23:3、1996、Yunus等、Semin Arthritis Rheum 11:151−71、1981)。
【0092】
線維筋痛の病因に関する有力な理論は、神経伝達物質機能の不均衡および/または調節異常は、脳または脊髄、および調節神経経路を介するCNSと筋肉および結合組織との関係において中枢神経系(CNS)内で起こる可能性があると考える(Goldenberg、1996、Russell、Rheum Dis Clin NA 15:149−167、1989、Russell等、J Rheumatol 19:104−9、1992、Vaeroy等、Pain 32:21−6、1988、Wolfe等、1996)。神経伝達物質は、他の神経細胞、ならびに筋肉および免疫細胞を含む他の細胞型の受容体と相互作用する神経細胞から放出される化学メッセンジャー、アミノ酸、生体アミン、および神経ペプチドである。疼痛経験の増大をもたらす神経伝達物質機能の不均衡は、グルタミン酸塩、セロトニン、ドパミン、ノルエピネフリン、ソマトスタチン、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレシストキニン、アヘン剤、およびサポニンなどの神経伝達物質の機能の質的および/または量的低減を含む可能性がある。線維筋痛は、セロトニン作用の相対的欠乏およびサブスタンスP作用の相対的過剰を特徴とする。この不均衡は、中枢神経系における疼痛シグナリングの増幅変調をもたらし、神経性疼痛を生じる(Matucci−Cerinic、Rheumatic Disease Clinics of North America 19:975−991、1993、Bonica、The Management of pain、Lea and Febiger、第2版、Philadelphia、95−121頁、1990)。類似の機構が作用して、関連する状態を引き起こすことがあり、たとえば、腸筋肉組織での神経伝達物質シグナリングの調節異常は、筋痙攣、下痢、および/または便秘などの過敏性腸症候群の症状をもたらす。
【0093】
神経伝達物質調節異常疼痛症候群には、以下に限定されるものではないが、全身性症候群、限局性症候群、頭蓋筋膜痛、血管疾患、直腸、会陰、および外性器痛、ならびに脚/足の局所症候群が含まれる。
【0094】
全身性症候群は、断端痛、カウザルギー、反射性交感神経ジストロフィー、線維筋痛、またはびまん性筋筋膜痛、および熱傷からなる群から選択される。限局性症候群は、三叉神経痛、急性帯状疱疹、全自律神経痛、膝神経痛(ラムジーハント症候群)、舌咽神経痛、迷走神経痛、および後頭神経痛からなる群から選択される。頭蓋筋膜痛には、側頭下顎痛が含まれる。後頭下および頸部筋骨格障害は、頚椎捻挫、頸部過伸展(むち打ち)を含む筋筋膜症候群、胸鎖乳突筋、僧帽筋、および茎突舌骨筋症候群(イーグル症候群)からなる群から選択される。血管疾患は、レイノー病、レイノー現象、凍傷、凍傷成紅斑(凍瘡)、先端チアノーゼ、および網状皮斑からなる群から選択される。直腸、会陰、および外性器痛は、腸骨下腹神経痛、腸骨鼠径神経、陰部大腿神経、および精巣痛からなる群から選択される。脚/足の局所症候群は、外側皮神経障害(感覚異常性神経痛)、閉鎖神経痛、大腿神経痛、坐骨神経痛、脚の指間神経痛(モートン中足骨痛または神経腫)、注射神経障害、および痛む脚と動く足趾症候群からなる群から選択される。
【0095】
疼痛強度評価スケールは典型的に、鎮痛剤の選択および治療効果を評価するために、当分野の技術者によって用いられている。
【0096】
視覚的アナログスケール(VAS)は、連続的な値であると考えられ、直接は容易に測定できない特性を測定する測定装置である。たとえば、患者が感じる痛みの量は、無痛から非常に強い痛みまでの連続的な範囲におよび、これはVASを用いて間接的に測定することができる。操作上、VASは通常、長さ100mm、それぞれの端に記述語、たとえば片方の端に「無痛」、もう一方の端に「非常に重度の痛み」を配した水平の線である。患者は、知覚している現在の状態を表していると感じる線上の点に印をつける。VASのスコアは、線の左端から患者が印をつけた点までをミリメートルで測定することによって求める。多目的に使用でき、使用が容易である単一次元スケールの100mm視覚的アナログスケール(VAS)は、多くの設定に採用されてきた。
【0097】
本明細書に記載のカプサイシノイド製剤および方法は、これに限定されるものではないが、急性または慢性疼痛、侵害受容性および神経障害性疼痛、手術前および手術後疼痛、癌性疼痛、神経伝達物質調節異常症候群および整形外科障害に伴う疼痛、スポーツ関連損傷、急性外傷性疼痛、侵害受容性疼痛、および神経伝達物質調節異常症候群を含む、患者の特定部位、手術部位、または開放創に注射、埋込み、浸潤によってカプサイシノイドを投与できる多くの状態を治療するために用いることができる。
【0098】
慢性ヘルニア縫縮術後疼痛の治療
好ましい実施形態において、本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、慢性ヘルニア縫縮術後疼痛を治療/軽減するために用いることができる。慢性ヘルニア縫縮術後疼痛は、患者の5〜30%で起こり、患者の約10%で社会的影響がある種の活動を限定し、患者の1〜4%は慢性疼痛診療に差し向けられる。神経損傷がおそらくはもっとも妥当性のある病因であろうが、治療の特定の原理は証拠に基づいたものではなく、無作為データの有無にかかわらず、有効性が充分な追跡研究で実証されていない通常の鎮痛剤からメッシュ除去および種々の神経切断による再手術に及ぶ。慢性ヘルニア縫縮術後に伴う疼痛を患う患者において、カプサイシノイドの用量を、手術が行われた部位、または切開部周囲の隣接領域に投与することができる。
【0099】
モートン神経腫に伴う疼痛の治療
他の好ましい実施形態において、本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、モートン神経腫に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。モートン神経腫は、中年女性の第3総指神経に強い好発性を有する、機械的に誘発された変形性神経障害であろうと考えられている。これは神経障害性疼痛の明確なモデルとみなされている。モートン神経腫の通常の内科療法には、多くの場合リドカインを用いるステロイドの局所注射が含まれる。非外科的手段が患者の症状を緩和できないとき、背側アプローチによる原因神経腫の外科的除去により、患者の約80%に劇的な症状の緩和を生じることができる。しかしながら、患者の20%は、神経腫の再発を経験し(断端または切断神経腫と称される)、これは多くの場合、元の神経腫より重度の疼痛を引き起こし、一般に治療抵抗性である。本発明によるカプサイシノイドの投与は、モートン神経腫に伴う神経障害性疼痛の治療に有用であり、断端または切断神経腫に伴う疼痛の再発を低減できる可能性がある。
【0100】
乳房切除に伴う疼痛の治療
好ましい実施形態において、本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、乳房切除に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。乳房切除は著しい疼痛をもたらし、術後に相当な用量のオピオイドを要する。したがって、オピオイドの副作用を最小にしながら、良好な疼痛制御を提供する鎮痛剤技法が非常に望ましい。乳房切除を要する患者におけるカプサイシノイドの投与は、オピオイド消費量、およびこの手技に伴う術後疼痛スコアを低減する可能性がある。乳房切除を要する患者において、カプサイシノイドの用量を、手術が行われた部位、または手術部位周囲の筋肉、組織、および骨に投与することができる。
【0101】
胸骨正中切開に伴う疼痛の治療
他の好ましい実施形態において、本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、胸骨正中切開に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。胸骨正中切開は、種々の兆候のために心臓、肺、または縦隔手術を受ける患者に行われる。この手技は、胸骨をわたる垂直正中切開によって行われる。正中筋膜および筋肉を分割した後、スターナルソー(sternal saw)またはレブシェナイフ(Lebsche knife)を用いて、胸骨切痕から剣状突起まで、胸骨をその正中で分割する。骨膜の出血端はポイント電気焼灼器によって制御する。骨髄の止血は、骨髄に押し込まれる骨蝋またはゼルフォーム/トロンビン混合物を用いて行うことができる。その後、胸骨レトラクタを配置して、胸骨端を開き、外科的露出を維持する。カプサイシノイドの用量を、胸骨端、手術部位周囲の筋肉および/または組織に直接、または骨(たとえば、胸骨)に直接投与することができる。この手技の完了後、胸骨端をステンレス鋼ワイヤで再び近接させる。残存する創傷を筋膜層で閉合する。胸骨正中切開は、胸骨不安定性、および術後の相当な用量のオピオイドだけでなく、患者が移動するために看護および理学療法の相当な時間を要する疼痛をもたらす。したがって、オピオイドの副作用を最小にしながら、良好な疼痛制御を提供する鎮痛剤技法が非常に望ましい。胸骨正中切開を要する患者におけるカプサイシノイドの投与は、オピオイド消費量、およびこの手技に伴う術後疼痛スコアを低減する可能性がある。
【0102】
整形外科障害
本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、整形外科障害に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。本発明の製剤および方法を用いて治療可能な整形外科障害には、これに限定されるものではないが、膝、肩、背、股関節部、脊柱、肘、足、手の障害、特定部位または体腔の疼痛を伴う他の障害が含まれる。これらの場所に影響を及ぼす整形外科障害には、これに限定されるものではないが、滑液包炎、腱炎、変形性関節症、および関節リウマチが含まれる。
【0103】
A.滑液包炎
滑液包炎は、滑液包の炎症である。滑液包は、摩擦が起こる組織部位(たとえば、腱または筋肉が骨性隆起の上を通る部位)に位置する、滑液を含む嚢状の腔または潜在性の腔である。滑液包は、正常な動作を容易にし、可動部間の摩擦を最小にし、さらに関節に通じている可能性もある。正常な状態では、滑液包はほとんど摩擦のない滑面を提供する。滑液包が炎症したとき、問題が生じる。滑液包は、その滑走能力を失い、動作時にますます刺激される。滑液包炎と呼ばれる状態が起こると、滑性滑液包嚢は、膨張し、炎症を起こす。膨張した滑液包によって追加された嵩が、すでに限定されている空間内により多くの摩擦を生じる。さらに、滑らかに動く滑液包は、ざらつき、粗くなる。炎症滑液包の動作は、有通性、刺激性である。滑液包炎は通常、肩(肩峰下滑液包炎または三角筋下滑液包炎)に起こる。他の部位には、肘頭(坑夫の肘)、膝蓋前(家政婦の膝)または膝蓋上、踵骨後部(アキレス)、股関節部の腸恥(腸腰)、骨盤の坐骨(仕立屋または織工の臀部)、大腿の大転子、および第1中足指頭(バニオン)が含まれる。滑液包炎は、外傷、慢性的な酷使、炎症性関節炎(たとえば、痛風、関節リウマチ)、あるいは急性または慢性感染症(たとえば、化膿性菌、特に黄色ブドウ球菌、現在では滑液包炎を起こすことはまれである結核菌)によって起こることがある。足の整形外科障害には、これに限定されるものではないが、踵骨棘、うおのめ、バニオン、モートン神経腫、槌状足指、足根関節の捻挫、足根関節または中足骨、種子骨または足指の骨折、足裏筋膜炎、およびアキレス腱の損傷が含まれる。手の整形外科障害には、これに限定されるものではないが、関節炎、手根管症候群、ガングリオン嚢胞、腱の不具合、たとえば外側上顆炎、内側上顆炎、回旋腱板の腱炎、ト゛ケルヴァン腱滑膜炎など、およびばね指が含まれる。他の整形外科障害には、これに限定されるものではないが、パジェット病、脊柱側弯症、打撲傷、捻挫、挫傷などの軟部組織損傷、長骨の骨折、その一部が膝蓋骨腱炎および腰部挫傷を含む他の種々のスポーツによる損傷が含まれる。
【0104】
非感染性急性滑液包炎の治療は、これまで主として一時的な安静または固定からなり、高用量のNSAID、場合によって麻酔性鎮痛剤が有用である可能性がある。随意運動は、疼痛が鎮静するにつれ、増加させるべきである。振子運動は、肩の関節に特に有用である。安静だけでは不充分であるとき、吸引、および1%の局所麻酔剤(たとえば、リドカイン)浸潤後、少なくとも3〜5mlの局所麻酔剤と混合した0.5から1mlのデポ型コルチコステロイド(トリアムシノロンジアセテート25または40mg/ml)を滑液包内に注射することは好ましい治療である。デポ型コルチコステロイドの用量および混合物の量は、滑液包の大きさに適応される。抵抗性の炎症には、再吸引および注射が必要とされる可能性がある。感染および痛風が除外された後、抵抗性の急性症例において、時折、全身性コルチコステロイド(プレドニゾン15から30mg/日、または等量を3日間)が必要とされることがある。慢性滑液包炎は、副子固定および安静があまり有用でないことを除いて、急性滑液包炎と同様に治療される。滑液包炎の治療に手術はまれにしか必要とされないが、通例、慣習的な治療で好転しなかった慢性の症例においてのみ行われる。必要な場合、もっとも一般的な外科治療は、切開排膿(「I and D」と称される)であり、感染性滑液包の症例にのみ用いられる。外科医は、最初に麻酔剤で皮膚を麻痺させ、次いでメスを用いて滑液包を切開する。最後に、外科医は、炎症滑液包に存在する体液を排出する。時折、滑液包全体を外科的に切除する必要のあることがある。これは、滑液包腫脹が問題を起こしている場合にのみ必要とされる。
【0105】
カプサイシノイドは、コルチコステロイドの局所注射に関して現在用いられているものと類似の場所および様式で注射によって投与することができる。たとえば、いくつかの実施形態において、カプサイシンの投与は、滑液包への関節内注射によって投与される。
【0106】
他の実施形態において、カプサイシノイドは、滑液包、および/または滑液包周囲の組織および筋肉への浸潤によって投与することができる。
【0107】
B.腱炎
本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、腱炎(腱の炎症)に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。腱が炎症すると、筋肉を引き伸ばす行為が、刺激性および有痛性となる。原因は多くの場合不明である。ほとんどの場合、腱炎は腱の血管分布が低下する中年および高年者に起こり、微小な外傷の反復が損傷を増加する可能性がある。繰り返される外傷または激しい外傷(断裂の手前)、挫傷、または過度の(慣れない)運動が、もっとも多く関与している。もっとも一般的な腱炎の原因は酷使である。一般に、個人が運動プログラムを始めるか、または運動のレベルを上げ、腱炎の症状を経験し始める。腱は新しいレベルの要求に慣れておらず、この酷使が炎症および腱炎の原因となる。腱炎により、関節付近の疼痛、圧痛、および硬直が生じ、動作によって悪化する。
【0108】
一般開業医は、通例、テニス肘を治療するために非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)を用いるが、現在まで、他の鎮痛剤と比較した試験は存在せず、ある研究はプラセボに比べて臨床上重要な利点のないことを見出している。症状の軽減は、安静または腱の固定(副子またはギプス包帯)、慢性炎症への加温または急性炎症への冷却(患者に有益なほうを用いるべきである)、局所鎮痛剤、7から10日間のNSAIDの適用によって提供される。腱障害における種々の抗炎症性薬剤の役割に関するクリティカルレビューは、短期疼痛緩和では限定的な証拠があり、中期の臨床的消炎においては有効性の証拠がないことを見出している。コルチコステロイド注射の使用は、疼痛の緩和という結果を生じることもあり、時折、使用を支持する証拠が不充分であるという結果を生じることもある。重症度および部位に応じて、等量または2倍量の1%局所麻酔剤(たとえば、リドカイン)と混合した0.5から1mlのデポ型コルチコステロイド(たとえば、酢酸デキサメタゾン、酢酸メチルプレドニソロン、または酢酸ヒドロコルチドン)を腱鞘に注射することは治療として用いられてきた。特定の炎症部位が確認できない場合、注射は盲目的に、または最大圧痛部位の近位に行われる。活動的な人間では腱を弱らせ、断裂させる可能性があるため、腱自体(抵抗が大きい)に注射しないように特に注意を払うべきである。3から4日後、炎症が軽減した部位を再検査することにより、多くの場合、特定の損傷が明らかになり、より高い精度で2回目の注射を行うことができる。腱断裂のリスクを低減するために、注射部位を安静にするのが賢明である。関節内および軟部組織ステロイド注射に伴う合併症は比較的まれであるが、合併症が起こった場合、被験者に障害を引き起こす重度の結果をもたらし得る。少数の対象は1回のみのコルチコステロイド注射に応答せず、最初に4週で改善した一部の対象は、6ヵ月までに最悪の症状を有した。したがって、意見の一致がなく、局所コルチコステロイド注射の使用を支持する良好な証拠がなく、ステロイド使用の長期副作用が未知であるため、別の治療法が求められなければならない。線維骨性トンネルの解放(ト゛ケルヴァン病)、または慢性炎症の腱鞘切除(関節リウマチ)を除いて、手術はほとんど必要とされない。
【0109】
本発明の一実施形態において、膝、肩、股関節部、骨盤、脊柱、肘、脚、および足の腱炎に伴う疼痛は、局所コルチコステロイド注射と類似の様式で行われるカプサイシノイド注射によって治療される。たとえば、肩の腱炎または滑液包炎に伴う疼痛を治療/軽減するためにカプサイシノイド製剤が用いられる実施形態において、カプサイシノイドの用量は、肩外側面の肩峰と上腕骨の間の腔に挿入された針によって肩峰下滑液包に注射することによって投与することができる。
【0110】
本発明の他の実施形態において、腱炎の治療に手術が必要とされるとき、膝、肩、股関節部、骨盤、脊柱、肘、脚、および足の腱炎および腱炎手術に伴う疼痛は、罹患した腱に直接カプサイシノイドを浸潤して投与することにより治療される。他の実施形態において、罹患した腱への投与に加えて、罹患した腱周囲の筋肉および組織への浸潤によって、カプサイシンを投与することができる。
【0111】
C.変形性関節症
本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、変形性関節症(退行性関節疾患)および変形性関節症手術に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。変形性関節症は、関節の軟骨の破壊を特徴とする。軟骨は、骨の末端を保護する関節の一部である。軟骨の破壊によって、骨が互いにこすれ、疼痛および動作の喪失がもたらされる。変形性関節症は、もっとも一般的には中高年者が罹患し、非常に軽度から非常に重度まで多岐にわたる。変形性関節症は、手、ならびに膝、股関節部、脚、および背部などの体重を支える関節を冒す。変形性関節症の原因となり得る多くの要因があり、これに限定されるものではないが、年齢、遺伝、肥満、スポーツに関連した活動、仕事に関連した活動、または事故が含まれる。変形性関節症の治療は、疼痛の低減および関節動作の改善が中心となり、以下を含むことができる。関節の柔軟性を維持し、筋肉の強度を増進するための運動。コルチコステロイドおよびNSAIDを含む、多くの異なる薬剤を用いて疼痛を制御する。NSAIDに反応しない、炎症している関節にグルココルチコイドを注射。炎症を伴わない軽度の疼痛の場合、アセトアミノフェンを用いることができる。一時的な疼痛緩和のための温熱/寒冷療法。疼痛関節への張力または圧力を防ぐための関節保護。損傷関節の慢性疼痛を緩和するための外科手術(時折)。体重を支える関節への過剰な圧力を防ぐための体重コントロール。
【0112】
重度の消耗性疾患において、損傷した関節を置換または再建するために外科治療が必要とされる。手術の選択肢には、関節形成術(劣化した関節の人工関節による全置換または部分置換)、断裂し損傷した軟骨を切り落とし、関節を洗う関節鏡下手術、骨切り術(骨の配列を変えて、骨または関節への圧力を軽減する)、および関節固定術(骨の外科的融合、通常は脊柱)が含まれる。
【0113】
変形性関節症および変形性関節症手術に伴う疼痛は、たとえば、罹患部位における関節内注射または関節内浸潤によって罹患関節に、および/または罹患関節周囲の組織および筋肉に浸潤により投与されるカプサイシノイド製剤で治療/緩和することができ、これに限定されるものではないが、膝の変形性関節障害が含まれる。
【0114】
D.関節リウマチ
本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、関節リウマチ、および関節リウマチを治療または軽減するための手術に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。関節リウマチは、主として体の複数の関節の滑膜を冒す慢性、全身性、炎症性疾患である。この疾患は全身性であるため、この疾患には多くの関節外の特徴も存在する。関節リウマチは、膝、足首、肘、および手首を含む、体の多くの関節を冒し得る。この疾患に活発に関与する関節は、通常、圧痛があり、腫れており、動作の低下を示すと考えられる。この疾患は、後天性の自己免疫疾患と考えられており、遺伝因子が関与するようである。
【0115】
進行性関節リウマチを有する患者では、適切な保存的手段にもかかわらず、関節病変が起こる可能性がある。そのような患者では、関節機能の喪失は、通常、機能的能力の喪失を引き起こす。したがって、患者に著しい機能の喪失をもたらした関節で、通常、外科手術が行われる。しかしながら、手術にはリスクがないわけではなく、したがって手術の決定は慎重に行われなければならない。関節滑膜の疾患部分を除去するために、滑膜切除が行われる。理想的には、この種の手術は、軟骨の破壊がある前に行われる。機能の喪失を引き起こす、関節を形成する骨の著しい破壊があるとき、または機能の限定された関節に著しい疼痛があるとき、関節全置換術が行われる。「全」とは、疾患部分を有する関節を含む両方の骨の末端が外科的に除去され、人工の部品(すなわち、プロテーゼ)で置き換えられることを意味する。股関節部および膝は、関節リウマチを有する患者において関節全置換術が行われる一般的な部位であり、したがって、多くの手術の合併症のある部位である。合併症には、感染、転位、プロテーゼ部品の骨からのゆるみ、プロテーゼ部品の破損、および通常は骨密度の損失に起因するプロテーゼ装置による骨折が含まれる。関節全置換が不首尾である一部の症例では、プロテーゼ部品が骨から除去される。股関節の場合、この手順(ガードルストーン切除術)は、解剖頸または頭なしに大腿を残し、結果として軟部組織が大腿と骨盤を「連結」する。一部の患者では、肩関節が非常に有痛性となり、かつ/または機械的な機能を失う。それらの患者では、肩関節全置換術が必要とされることがある。著しい疼痛によって肩関節全置換術を受けた大多数の患者は、大幅に疼痛が緩和したという証拠がある。
【0116】
種々の関節リウマチを有する患者を治療するために用いられる、いくつかの異なる種類の薬剤がある。これらの種類には、疼痛を制御する鎮痛剤、コルチコステロイド、尿酸低下剤、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症剤、および疾患修飾性抗リウマチ薬が含まれる。
【0117】
関節リウマチ、および関節リウマチ手術に伴う疼痛は、罹患関節への浸潤により投与されるカプサイシノイド製剤によって治療/緩和することができる。他の実施形態において、罹患部位への投与に加えて、罹患関節周囲の筋肉および組織への浸潤によって、カプサイシノイドを投与することができる。
【0118】
E.背痛
本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、背痛に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。米国では、医者にかかる2番目に多い理由は背痛である。腰痛の原因は数多い。いくつかの腰痛の一般的な理由は、たとえば交通事故、転落、スポーツ、または他の様式で起こる可能性のある背部への突然の損傷、子宮内膜症、月経性痙攣、類線維腫、および女性においてときに腰痛の原因となる妊娠などの婦人科の状態、腰の筋肉、神経、または靭帯への圧力である。椎間板の脱出、神経圧迫(pinched nerve)、坐骨神経痛、加齢、および感染が、他の一般的な腰痛の原因である。腰痛の治療は、背部の安静(再損傷を回避)、疼痛および筋痙攣を緩和する投薬、局所温熱適用、マッサージ、および最終的な(急性の症状発現が消散した後)腰部および腹部筋肉を強化するための回復運動からなる。椎間関節または「Z」関節としてよく知られている関節突起間関節は、椎骨が隣接する椎骨と重なる、椎骨の両側の脊柱背部(後部)に位置する。椎間関節は安定性を提供し、曲げたり、ねじれたりする能力を脊柱に付与する。椎間関節は、隣接する椎骨の2つの面からなり、それらは軟骨の薄い層で隔てられている。この関節は嚢様カプセルに包まれ、滑液(脊柱が動くときに2つの骨面の間の摩擦を低減し、さらに軟骨に栄養を与える潤滑液)で満たされている。椎間関節の不具合(炎症、刺激、腫脹、または関節炎など)は、腰痛を引き起こす可能性がある。診断学的検査は、椎間関節の異常を示すことができ、これは椎間関節が疼痛の原因であることを示唆している可能性がある。しかしながら、椎間関節が疼痛の原因であるにもかかわらず、時折、正常な検査結果が存在することがあり、異常な結果が必ずしも椎間関節の関与を示すとは限らない。
【0119】
椎間関節が本当に背痛の原因であるかどうかを判定するために、局所麻酔剤注射を(たとえば、ブロックとして)用いることができる。椎間関節への少量の麻酔剤または麻痺剤の注射が疼痛を低減または除去する場合、椎間関節が疼痛の原因である可能性を示唆する。椎間関節が疼痛の原因であると特定されたら、麻酔剤および抗炎症剤の治療的注射によって、長期間の疼痛緩和を生じることができる。そのような疼痛を軽減するために、そのような状態でカプサイシノイド製剤を投与することができる。
【0120】
椎間関節注射は、局所麻酔下、患者が覚醒しており、意思の疎通ができる間に行われる。場合によって、医療提供者はこの手順中に患者がより快適であるように薬剤を投与することができる。この注射は、通常、患者がX線透視台にうつぶせになっている間に行われる。EKG、血圧測定用カフ、および血液酸素モニター装置を、注射工程の前に取り付けることができる。適切な部位が決定されたら、医師は、麻酔剤(多くの場合、リドカインまたはブピビカイン(bupivicaine))および抗炎症剤(通常、コルチコステロイド)を注射する。その後、罹患している椎間関節の数に応じて、この工程を繰り返すことができる。
【0121】
F.踵骨棘
本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、足のある種の筋肉および軟部組織構造が踵の底部に付随している、骨の突出または成長である踵骨棘、または踵骨棘手術に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。もっとも一般的には、踵骨から足指底に伸びる幅広の靭帯様構造である足底筋膜が炎症を起こし、踵痛の症状が始まる。治療の有無にかかわらず、この炎症がある期間にわたって継続するにつれ、踵骨棘が形成されると考えられる。踵痛が早期に治療されるならば、多くの場合、保存療法が有効であり、通常、外科手術は回避される。踵痛の早期徴候は、通常、足底筋膜の炎症である足底筋膜炎によるものである。これが足病医によって見出されるもっとも一般的な踵痛の原因であろう。ランナー、運動選手、週末にスポーツを行う者、かなりの時間立つ、歩く、または持ち上げることを要する仕事を持っている者、および最近体重の増えた者など、足底筋膜炎はすべての群の人々に見られる。最初、患者は足のテーピングを受け、適応があれば、コルチゾン注射、または経口による短期間の抗炎症剤を投与される。炎症を低減する補助的な方法として、運動、夜間用副子、および理学療法が用いられる。成功すれば、特別注文の矯正靴を作製し、足底筋膜への異常な圧力および張力を制御し、症状の大部分を緩和する。一部の例では、保存療法が不首尾であり、外科手術が必要とされる。しばしば、踵の両側を2ヵ所小さく切開することにより、足底腱膜の線維の一部の放出が行われる足底筋膜切開術と称される内視鏡的手技が行われる。多くの場合、回復は2週以下であり、患者は手術の24時間後に矯正靴でのみ歩行する。足底腱膜にミコヘルニア形成(mico−herniation)(裂傷)が起こるとき、踵骨棘が発現している可能性がある。この場合も、早期に治療すれば、骨棘を有する患者であっても、パッドを詰める、固定する、注射、および靴内矯正器具などの保存療法によって症状は充分に緩和する。残念ながら、仕事またはレクリエーション活動を行うのを妨げるほど症状が重度の患者がおり、その場合、手術が必要とされる。手術には、踵の挿入部から足底筋膜の一部を放出すること、ならびに骨棘を除去することが含まれる。しばしば、この手技の間に、疼痛を増大する神経圧迫(神経腫)が発見され、摘出される。多くの場合、踵骨棘の下に、副嚢または偶発嚢と呼ばれる炎症した体液嚢が発見され、これも摘出される。術後の回復は、通常、2〜3週間のスリッパギプス包帯および最小体重負荷である。場合によって、着脱式の短いウォーキングブーツを用いるか、または膝下のギプス包帯を適用する。それらを除去した後、通常の体重負荷が可能になり、患者は理学療法によって治療される。
【0122】
カプサイシノイドが足底筋膜に用いられるとき、カプサイシノイドの用量は、好ましくは罹患領域への注射によって投与される。手術が必要とされるとき、カプサイシノイドの用量は、好ましくは外科的切開が行われた後に踵骨に、および/または踵骨周囲の組織および筋肉に浸潤させることによって投与される。
【0123】
腹腔鏡下胆嚢摘出術に伴う疼痛の治療
他の好ましい実施形態において、本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、腹腔鏡下胆嚢摘出術に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。腹腔鏡下胆嚢摘出術は、実質的に開腹胆嚢摘出術に取って代わっている。しかしながら、腹腔鏡下胆嚢摘出術を受ける患者は、依然として疼痛を有する。術後の疼痛管理には典型的に、特に術後数日以内のオピオイドの使用が含まれる。腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた患者におけるカプサイシノイドの投与は、オピオイド消費量、およびこの手技に伴う術後疼痛スコアを低減する可能性がある。腹腔鏡下胆嚢摘出術を要する患者において、カプサイシノイドの用量は、注射、浸潤、または注射および浸潤の両方で投与することができる。カプサイシノイドの用量が注射によって投与されるとき、カプサイシノイドは、切開部位に直接、または手術部位周囲の隣接領域に注射することができる。他の実施形態において、カプサイシノイドの用量は、創傷が閉じられる前に、手術が行われている部位、または手術部位周囲の筋肉、組織、および骨に投与することができる。いくつかの他の実施形態において、本明細書に開示のカプサイシノイド製剤および方法は、腹腔鏡法より侵襲性の手術を要する胆嚢摘出術に伴う疼痛を治療/軽減するために用いることができる。
【0124】
浸潤用量
本発明の好ましい実施形態において、浸潤用の投与単位に含有されるカプサイシノイドの用量は、約1μgから約15,000μgのカプサイシン、好ましくは約600μgから約15,000μgのカプサイシン、より好ましくは約600μgから約10,000μgのカプサイシン、または治療上等価量の1種または複数のカプサイシノイドである。いくつかの好ましい実施形態において、カプサイシンの用量は、約1000μgから約10,000μgのカプサイシン、または治療上等価量の1種または複数のカプサイシノイドである。好ましくは、カプサイシノイドは、注射または埋込み用の薬剤としても生理的にも許容されるビヒクル中で投与される。
【0125】
いくつかの他の実施形態において、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、神経損傷による疼痛、筋肉痛による疼痛、発痛点に関連する疼痛、軟部組織の腫瘍による疼痛、神経伝達物質調節異常症候群に伴う疼痛、および整形外科障害に伴う疼痛を治療するための浸潤用のカプサイシン/カプサイシノイドの適切な用量は、カプサイシン(trans8−メチル−N−バニリル−6−ノネアミド(noneamide))約600μgから約15,000μg、好ましくは約600から約10,000マイクログラム、より好ましくは約1000から10,000マイクログラム、もっとも好ましくは5,000μgである。
【0126】
いくつかの好ましい実施形態において、局所麻酔剤の注射は、たとえば上記および添付の実施例に記載したとおり、カプサイシノイドの投与前に、部位に近接して投与することができる。他の実施形態において、局所麻酔剤の代わりに、または局所麻酔剤に加えて、フェノールを用いることができる。
【0127】
注射可能用量
本発明の好ましい実施形態において、注射/埋込み用の投与単位に含有されるカプサイシノイドの用量は、約1μgから約5000μgのカプサイシン、好ましくは約10μgから約3000μgのカプサイシン、より好ましくは約300μgから約1500μgのカプサイシン、または治療上等価量の1種または複数のカプサイシノイドである。いくつかの好ましい実施形態において、カプサイシンの用量は、約400μgから約1200μgのカプサイシン、または治療上等価量の1種または複数のカプサイシノイドである。好ましくは、カプサイシノイドは、注射または埋込み用の薬剤としても生理的にも許容されるビヒクル中で投与される。
【0128】
いくつかの他の実施形態において、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、神経損傷による疼痛、筋肉痛による疼痛、発痛点に関連する疼痛、軟部組織の腫瘍による疼痛、神経伝達物質調節異常症候群に伴う疼痛、および整形外科障害に伴う疼痛を治療するための注射または埋込み用のカプサイシン/カプサイシノイドの適切な用量は、カプサイシン(trans8−メチル−N−バニリル−6−ノネアミド)約1μgから約3000μg、好ましくは約20から約300マイクログラム、より好ましくは約35から200マイクログラム、もっとも好ましくは100μgである。
【0129】
麻酔剤の投与、ならびにそれに続く本発明のカプサイシノイド製剤および方法による投与は、長期間、その部位で疼痛を緩和または軽減する。関節痛に関して、いくつかの好ましい実施形態において、単回単位用量のカプサイシノイド注射または埋込みは、少なくとも約1ヵ月、より好ましくは少なくとも約3ヵ月、典型的にいくつかの実施形態では約3から約6ヵ月、その部位で疼痛を軽減する。変形性関節症などの関節炎状態に伴う疼痛に関して、いくつかの好ましい実施形態において、単回単位用量のカプサイシノイド注射または埋込みは、少なくとも約3ヵ月から少なくとも約4ヵ月、その部位で疼痛を軽減する。術後疼痛に関して、いくつかの好ましい実施形態において、単回単位用量のカプサイシノイド注射または埋込みは、少なくとも約1週間、いくつかの実施形態では少なくとも約1ヵ月、その部位で疼痛を軽減する。治療が関節で行われる場合、動作の増大、および疼痛の緩和に関して、患者をモニターすることができる。この治療は、症状を制御するために、必要に応じて繰り返すことができる。
【0130】
いくつかの好ましい実施形態において、局所麻酔剤の注射は、たとえば上記および添付の実施例に記載したとおり、カプサイシノイドの投与前に、部位に近接して投与することができる。他の実施形態において、局所麻酔剤の代わりに、または局所麻酔剤に加えて、フェノールを用いることができる。
【0131】
注射可能/埋込み可能および浸潤可能製剤
カプサイシノイドが注射、埋込み、または浸潤によって投与される実施形態において、カプサイシノイドは、皮膚の外層に浸透させることによって特定部位に、あるいは針および注射器など、浸潤により薬剤を投与するために当分野の技術者に知られている器具を用いて、手術部位または開放創に点滴注入または注射することによって手術部位または開放創に投与される。
【0132】
カプサイシノイドの用量は、好ましくは、患者(たとえば、ヒトまたは動物)の手術部位または開放創に投与するために薬剤としても生理的にも許容されるビヒクルに混合することによって、注射、埋込み、または浸潤用に調製される。たとえば、カプサイシノイドは、油、プロピレングリコール、あるいは注射可能、埋込み可能、または浸潤可能溶液を調製するために通常用いられる他の溶媒に溶解することができる。薬剤として許容される適切なビヒクルには、好ましくは、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、懸濁および分散剤、乳化剤、封鎖またはキレート剤、ならびにそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。水性ビヒクルの例には、好ましくは、塩化ナトリウム注射液、静菌塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、静菌滅菌水注射液、デキストロース加乳酸リンゲル注射液、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。非水性非経口ビヒクルには、好ましくは、植物由来の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、落花生油、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。静菌または静真菌性濃縮剤の抗菌剤には、好ましくは、フェノール、クレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、エチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、およびそれらの混合物が含まれる。等張剤には、好ましくは、塩化ナトリウム、デキストロース、およびそれらの混合物が含まれる。緩衝剤には、好ましくは、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。抗酸化剤には、好ましくは、アスコルビン酸、重炭酸ナトリウム、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。懸濁および分散剤には、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。乳化剤には、好ましくは、ポリソルベート80(Tween80)が含まれる。金属イオンの封鎖またはキレート剤には、好ましくは、エチレンジアミン四酢酸が含まれる。薬剤として許容される追加のビヒクルには、好ましくは、水混和性ビヒクルとしてはエチルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、およびプロピレングリコール、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物が含まれる。
【0133】
選択された薬剤として許容されるビヒクルに応じて、カプサイシノイドの用量は、注射、埋込み、または浸潤用の水性溶液または懸濁液として投与することができる。注射または浸潤は、(i)浸潤に適した薬剤または溶液またはエマルション、(ii)緩衝剤、希釈剤、または他の添加物を含まず、適切なビヒクルの添加により、あらゆる面で浸潤の要件に適合する溶液を得る乾燥固体または液体濃縮物、(iii)1種または複数の緩衝剤、希釈剤、または他の添加物を含む(ii)に記載の製剤、(iv)適切な流体媒質に懸濁されており、静脈内または脊柱管に注射されない固体、および(v)適切なビヒクルの添加により、あらゆる面で滅菌懸濁液の要件に適合する製剤を得る乾燥固体に一般に分類される、5つの異なる種類に分けることができる(H.C.Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第4版、1985、238頁を参照)。
【0134】
いくつかの他の実施形態において、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、および/または抗菌剤として、界面活性剤または緩衝剤がカプサイシノイド投与に伴う初期の刺痛または灼熱感を防ぐように、好ましくは1種または複数の本明細書に前に記載した薬剤として許容されるビヒクルに界面活性剤を混合することができる。
【0135】
適切な界面活性剤には、これに限定されるものではないが、フマル酸ステアリルナトリウム、ジエタノールアミン硫酸セチル、ポリエチレングリコール、イソステアリン酸塩、ポリエトキシル化ヒマシ油、塩化ベンザルコニウム、ノンオキシル(nonoxyl)10、オクトキシノール9、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸(ポリソルベート20、40、60、および80)、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン)、レシチン、薬剤として許容されるそれらの塩、およびそれらの組み合わせが含まれる。1種または複数の界面活性剤が本発明の製剤に用いられるとき、それらの界面活性剤は、たとえば薬剤として許容されるビヒクルと組み合わせることができ、たとえば約0.1%から約20%、より好ましくは約0.5%から約10%の量で最終製剤に存在することができる。
【0136】
緩衝剤も、薬剤安定性を提供し、薬剤物質の治療活性をコントロールし(Ansel Howard C. 「Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms」第4版、1985)、かつ/またはカプサイシン投与に伴う初期の刺痛または灼熱感を防ぐために用いることができる。適切な緩衝剤には、これに限定されるものではないが、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、リン酸ナトリウム、薬剤として許容されるそれらの塩、およびそれらの組み合わせが含まれる。1種または複数の緩衝剤が本発明の製剤に用いられるとき、それらの緩衝剤は、たとえば薬剤として許容されるビヒクルと組み合わせることができ、たとえば約0.1%から約20%、より好ましくは約0.5%から約10%の量で最終製剤に存在することができる。
【0137】
いくつかの好ましい実施形態において、カプサイシノイドを送達するために用いられる薬剤ビヒクルは、注射用水中、ポリエチレングリコール、ヒスチジン、およびスクロースを含む。好ましい一実施形態において、薬剤ビヒクルは、注射用水中、約20%のPEG300、約10mMのヒスチジン、および約5%のスクロースを含む。
【0138】
他の好ましい実施形態において、送達系は、カプサイシノイドの単位用量を投与するために用いることができる。カプサイシノイドの用量は、好ましくは、注射可能、埋込み可能、または浸潤可能微粒子(マイクロカプセルおよびマイクロスフェア)として投与することができる。微粒子は、好ましくは浸潤に適した粒径および分布範囲である。微粒子の直径および形状は、放出特性を変更するために操作することができる。たとえば、異なる平均径を有するが、同じ組成物である微粒子に比べて、直径の大きい微粒子は、典型的に遅い放出速度および低い組織透過性を提供し、直径の小さい微粒子は、反対の作用を生じる。さらに、円筒形状などの他の粒子形状は、球状と比べて、そのような別の幾何学的形状に固有の表面積と質量との比率ために、放出速度を変更することができる。微粒子の直径は、好ましくは直径約5ミクロンから約200ミクロンの大きさである。
【0139】
より好ましい実施形態において、微粒子は、直径約20から約120ミクロンである。微粒子を製造する方法は当分野でよく知られており、溶媒蒸発、相分離、および流動層コーティングが含まれる。
【0140】
本発明の好ましい方法が、カプサイシノイド単独の単回用量の投与を提供するとき、カプサイシノイドの単回用量は、好ましくは、その部位または創傷の外部で作用を引き出すことなく、その手術部位または開放創を脱神経するのに有効な量で、特定部位、手術部位、または開放創に投与される。単回用量は、好ましくは、疼痛緩和が必要とされる部位で神経に直接、発痛構造に直接、または浸潤により疼痛領域に神経支配を提供する神経に投与される。浸潤には、これに限定されるものではないが、好ましくは、手術部位または開放創周囲の組織、筋肉、または骨への投与が含まれる。他の実施形態において、カプサイシノイドの用量は、関節内、胸骨下、滑液包内、嚢内、または体腔に投与することができる。注射可能または埋込み可能投与は、これに限定されるものではないが、好ましくは皮下(皮膚の下)、筋肉内(筋肉)、髄腔内、硬膜外、腹腔内、仙骨、真皮内または皮内(皮膚内)、単一神経の肋間、関節内(関節)、体腔、滑液包内(関節液)、髄腔内(脊柱)、動脈内(動脈)投与、および他の結合組織区分への投与が含まれる。本明細書では、「髄腔内」は、硬膜外腔、髄腔内、後根および後根神経節などの脊髄関連構造の白質または灰白質内または内部を意味する。本発明の製剤の浸潤可能投与は、たとえば、膝、肘、股関節部、胸鎖、側頭下顎、手根、足根、手首、足首、椎間円板、黄色靭帯、および疼痛のある他の任意の関節からなる群から選択された関節に行うことができる。体腔の例には、胸膜、腹膜、頭蓋、縦隔、心膜、および嚢または滑液包が含まれる。嚢の例には、肩峰、二頭筋橈骨、肘橈骨(cubitoradial)、三角筋、膝蓋下、坐骨、および疼痛を有することが当分野の技術者に知られている他の嚢が含まれる。
【0141】
カプサイシノイドの単回用量が注射により投与されるとき、カプサイシンの注射量は、投与の局所部位によって決まる。送達される適切な注射量は、治療される部位に応じて、好ましくは約0.1から約20ml、より好ましくは約0.5から約10ml、もっとも好ましくは約1.0から約5mlの範囲である。あるいは、カプサイシノイドの単回用量が浸潤により投与されるとき、投与されるカプサイシノイドの量は、手術部位、または開放創の大きさによって決まる。送達される適切な浸潤量は、治療される手術部位または開放創に応じて、好ましくは約0.1から約1000ml、より好ましくは約1mlから約100ml、もっとも好ましくは約5mlから約30mlの範囲である。
【0142】
麻酔剤の投与、ならびにそれに続くカプサイシノイド製剤の投与は、長期間、特定部位、手術部位、または開放創で疼痛を軽減する。治療が関節で行われる場合、動作の増大、および疼痛の緩和に関して、患者をモニターすることができる。この治療は、症状を制御するために、必要に応じて繰り返すことができる。
【0143】
突出痛
「突出痛」という用語は、患者が一般に有効量のたとえばカプサイシンを投与されている、または投与されたにもかかわらず、患者が経験する疼痛を意味する。本明細書に記載のカプサイシノイド製剤および方法の使用と関連して、それにもかかわらず患者が突出痛を経験することが企図される。突出痛を治療するために、当分野の技術者によって行われるそのような状態の疼痛の治療に従って、個人は有効量の鎮痛剤をさらに投与されてもよい。鎮痛剤は、アウロチオマレイン酸ナトリウムなどの金化合物、ナプロキセン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、薬剤として許容されるそれらの塩などの非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、コデイン、デキストロプロポキシフェン、ジヒドロコデイン、モルヒネ、ジアモルヒネ、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、メタドン、ペチジン、オキシコドン、レボルファノール、フェンタニル、およびアルフェンタニル、パラセタノールなどのp−アミノフェノール誘導体、薬剤として許容されるそれらの塩などのオピオイド鎮痛剤、ならびにアスピリンなどのサリチル酸塩を含む群から選択されたものなど当分野の技術者に知られている任意の鎮痛剤であることができる。
【0144】
好ましい実施形態の詳細な説明
【実施例1】
【0145】
膝の変形性関節症の安全性試験
膝の変形性関節症を有する被験者において、関節内浸潤によって投与される局所麻酔剤と共に関節内浸潤によって投与される精製カプサイシンの安全性、認容性、全身薬物動態、および有効性を評価するために、以下の臨床試験を行った。
【0146】
この試験の主要な目的は、すでに膝の置換術が予定されている膝の末期変形性関節症を有する被験者において、プラセボと比較して、関節内局所麻酔剤と併用投与されるときの関節内カプサイシンの安全性および認容性を評価することであった。
【0147】
精製カプサイシンは、500μg/mlの濃度で精製カプサイシン5mlを含有するバイアルで供給された。被験薬は、15℃から25℃の温度で保管した。注射前4時間以内に、ビヒクルを用いて、次のとおり、薬剤を精製カプサイシンの最終濃度に希釈した。
【表1】

【0148】
各バイアルは、1回の浸潤投与にのみ用い、適切にラベルを付した。精製カプサイシンの供給業者は、FormaTech, Inc.、200 Bullfinch Drive、Andover、MA 01810であった。バイアルは、そのバイアルの内容物に従って各バイアルにラベルを付され、研究センターにまとめて供給された。薬剤師/治験看護師は、注射剤を調製し、所要温度15〜25℃で鍵のかかるキャビネットに治験薬を保管した。試験の盲検(blind)は、薬剤師/治験看護師によって維持された。
【0149】
精製カプサイシンのプラセボビヒクルは、5mlを含有するバイアルで供給された。それぞれの関節内浸潤に、局所麻酔剤(リグノカイン2%)を用いた。
【0150】
この試験は、膝の全置換術を受けることが予定されている膝の変形性関節症を有する被験者において、関節内局所麻酔剤と併用投与されるとき、関節内に投与される3つの用量レベル(10μg、100μg、または300μg)の精製カプサイシンの単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量範囲探索、第1相試験であった。この試験に用いた精製カプサイシンの用量は、動物で毒性であると知られている用量をはるかに下回った(>100倍)。この試験は、16人の評価対象を含むように設計された。16人の被験者が試験に加わった。12人を超精製カプサイシンで処置し(4人がそれぞれ10、100、および300μg用量で処置)、4人をプラセボビヒクルで処置した。16人の被験者は、この試験を完了した。
【0151】
患者を無作為に4つの処置群で二重盲検方式によって処置し、各群は被験薬の関節内投与とそれに続く膝の全置換との間に漸増する間隔を有した(2、4、7、および14日)。4つの各用量群(プラセボ、カプサイシン10μg、100μg、および300μg)から1人、4人の被験者が各処置群に加わった。次の処置群を処置する前に、各処置群に関して肉眼および顕微鏡病理分析を完了した。
【0152】
各被験者は3回の試験訪問を行った。スクリーニング日(−7日から−1日)、処置日(第0日)、および処置後日(+2、+4、+7、または+14日に予定)。処置日に、被験者を無作為化し、処置前評価を行った。患者を処置室に入れ、VAS疼痛スコアを取った(0mm無痛、100mm非常に重度の痛み)。患者がカードに疼痛の印をつけた後、患者に膝カニューレ挿入の準備をした。カニューレが配置された後、患者は置換される予定の膝に2%リグノカイン3mg/kg(最大用量200mg)で関節内浸潤を受けた。この局所麻酔剤の投与後10分のうちに、プラセボ(ビヒクル)、全量5mlにビヒクルで希釈した精製カプサイシン10μg、100μg、または300μgの関節内浸潤を行った。
【0153】
投与直後ならびに膝置換術前にVAS疼痛スコアおよび口頭報告を得た。有害事象のために試験を中止した被験者はいなかった。
【0154】
カプサイシン浸潤の直後、一部の患者(プラセボ投与の4人のうち0人、10μgカプサイシン投与の4人のうち0人、100μgカプサイシン投与の4人のうち1人、300μgカプサイシン投与の4人のうち4人)が、カプサイシン注射に典型的な一過性の灼熱痛を報告した(数秒から数分内に発現し、1時間未満持続)。疼痛は軽度であったが、一部の患者では、治験責任医師は疼痛が消散するまで、処置された膝にアイスパックを当てることを選択した。具体的には、100μg用量群の被験者、および300μg用量群の2人の被験者は、灼熱性の投与後(過剰)疼痛のみを有し、300μg用量群の2人の被験者は、他の型の投与後(過剰)疼痛と共に灼熱痛を有した(被験者1人は灼熱痛と刺痛を有し、2人目の被験者は灼熱痛と歯痛様の疼痛を有した)。投与後(過剰)疼痛のエピソードはすべて、投与直後(5分以内)に開始した。これらの疼痛エピソードはすべて短時間で、疼痛持続期間は、100μg用量群の被験者で9分間、300μg用量群の被験者で17、25、25、および42分間であった。300μg用量群の被験者4人、および100μg用量群の被験者1人は、注射後(過剰)疼痛のために介入を必要とした。5人の被験者のうち1人を除く全員は、アイスパックのみの介入であった。300μg用量群の被験者1人はパラセタモールで処置し、投与後(過剰)疼痛のために静脈内モルヒネまたはグラニセトロンで処置した被験者はいなかった。この試験に用いた併用薬のほとんどは、試験前に摂取され、試験中も継続した。試験中の唯一の併用非薬剤療法は、投与後(過剰)疼痛を有する5人の被験者に用いたアイスパックであった。
【0155】
処置後日、試験評価を行い、続いてその後の検査のために行われる術中の骨および軟部組織生検を伴う予定された膝置換を行った。全体的な有効性分析のために、本出願人等は、残存するリグノカインの鎮痛作用、または実際の手技(多量の浸潤)による残留疼痛、および溶解c線維末端が排除できなかったため、投与2日後に手術を受けた患者を除外した(正常な志願者では、カプサイシン投予後2日まで軽度の「うずくような」痛みが観察される)。これにより4日、7日、および14日のコホートから、プラセボ3人および活性患者9人が残った。薬剤/プラセボ投与前および手術日(手術前)のVASスコアの検査は、プラセボ群では疼痛スコアが低減されないが(VASは7±30%のみ低下)、カプサイシン群では低減された(VASは62±14%低下)ことを示した。VASスコアの変化を、図1に示すとおりグラフで報告する。カプサイシンの3種の用量範囲による経時的な血漿濃度を図2に示す。
【0156】
その後の超精製カプサイシン血漿濃度の分析のために、被験薬投与前、被験薬注射30分、1、2、および4時間後、ならびに処置後日の術前薬の初回投与直前に10mlの血液サンプルを採取した。薬物動態パラメータCmax、Tmax、AUC(0〜t最終)、およびt1/2を評価した。
【0157】
10μg用量群では、精製カプサイシン血漿濃度は、0、1、または2つの時点でのみ測定可能であり、したがってこの用量群の被験者に関してはいずれも薬物動態パラメータが推定できなかった。薬物動態パラメータを推定できた100μgおよび300μg用量群それぞれの3人の被験者では、CmaxおよびAUC(0〜t最終)値のマグニチュード(magnitude)は2つの群で類似していた。Tmax値は、推定できたすべての被験者で0.5時間であった。最終指数関数的半減期は、100μgおよび300μg用量群の両方で同様に短かった。
【0158】
100μg用量群の被験者のAUC(0〜t最終)値(366.10、75.19、および511.21pg*時間/ml)は、300μg用量群の値(449.01、220.42、および498.83pg*時間/ml)とマグニチュードが類似していた。同様に、100μg用量群の被験者のCmax値(292.06、79.94、および538.32pg/ml)は、300μg用量群の値(207.62、251.42、および499.88pg/ml)とマグニチュードが類似していた。Tmax値は、6人すべての被験者で0.5時間であった。最終指数関数的半減期はすべての被験者で短く、値は100μg用量群で0.1498、1.1488、および0.1014時間、300μg用量群で0.3268、0.2298、および0.1663であった。
【0159】
これらの被験者において精製カプサイシン血漿濃度が測定可能であった時点の数が非常に限られていたため、薬物動態的な結論は必然的に限定されている。しかしながら、10μg用量群の精製カプサイシン血漿濃度は、100μgまたは300μg用量群のいずれに比べても明らかに低い濃度であった点で、10μgから300μgの用量範囲の薬物動態用量反応にはいくらかの証拠があった。しかしながら、100μgから300μgの用量範囲の薬物動態用量反応にはほとんど証拠がなかった。
【0160】
精製カプサイシンは、すべての用量レベルで充分に認容性であった。関節腔からの被験薬の漏出は低く、肉眼および顕微鏡病理は正常であった。注射部位において処置に関連した紅斑、浮腫、または出血の徴候はなく、組織病理学検査で軟部組織、軟骨、または骨に対する処置に関連した影響はなかった。処置に関連した全身性の副作用は見られず、検査安全性パラメータまたは生命徴候に対する処置に関連した影響はなかった。いずれの時点でも、いずれの群においても、注射した膝の固有感覚に認識できる影響はなかった。
【0161】
注射後痛覚過敏の発現率には明らかな用量反応があった。この症状は、300μg用量群の被験者4人、100μg用量群の被験者1人で起こり、10μg用量群またはプラセボの被験者では起こらなかった。1例を除く全例で、痛覚過敏は灼熱感として説明され、これは注射の5分以内に発現し、平均30分未満持続した。介入を要したすべての例で、痛覚過敏は膝へのアイスパックの適用によって容易かつ有効に制御された。
【0162】
精製カプサイシンおよび局所麻酔剤の関節内投与を受ける前、次いで膝置換術日の術前薬投与直前に再度、被験者に、左に「無痛」、右に「非常に重度の痛み」を配した視覚的アナログスケール(VAS)に疼痛レベルを位置づけるように依頼した。精製カプサイシンのいずれの用量レベル(10μg、100μg、および300μg)においても、処置に関連した明らかな有効性の兆候は見られなかった。
【0163】
局所麻酔剤の関節内浸潤、それに続くカプサイシンの関節内浸潤は、概して充分に認容性であり、3つのカプサイシン用量群のすべてで、標的である膝の疼痛に関するVASのベースラインから術前時点の減少中央値はすべて、プラセボ群のベースラインからの変化中央値より実質的に大きく、この処置方法のリスクベネフィット比率は好ましいと考えられる。変形性関節症を有する多数の被験者による、この処置のさらなる研究が正当であると考えられる。
【実施例2】
【0164】
膝の変形性関節症の有効性試験
以下の臨床試験は、膝の変形性関節症を有する被験者において、関節内浸潤によって注射される局所麻酔剤と共に関節内浸潤によって投与される精製カプサイシンの有効性を評価する。
【0165】
この試験の主要な目的は、すでに膝の置換術が予定されている(被験薬の注射の21日および42日後)、膝の末期変形性関節症を有する被験者において、プラセボと比較して、関節内局所麻酔剤と併用投与されるときの関節内カプサイシンの有効性を評価することである。
【0166】
精製カプサイシンは、500μg/mlの濃度で精製カプサイシン5mlを含有するバイアルで供給される。被験薬は、15℃から25℃の温度で保管した。注射前4時間以内に、ビヒクルを用いて、次のとおり、薬剤を精製カプサイシンの最終濃度に希釈する。
【表2】

【0167】
各バイアルは、1回の浸潤投与にのみ用い、適切にラベルを付す。精製カプサイシンの供給業者は、FormaTech, Inc.、200 Bullfinch Drive、Andover、MA 01810である。バイアルは、そのバイアルの内容物に従って各バイアルにラベルを付され、研究センターにまとめて供給される。薬剤師/治験看護師は、注射剤を調製し、所要温度15〜25℃で鍵のかかるキャビネットに治験薬を保管する。試験の盲検は、薬剤師/治験看護師によって維持された。
【0168】
精製カプサイシンのプラセボビヒクルは、5mlを含有するバイアルで供給される。それぞれの肩峰下滑液包浸潤に、局所麻酔剤(リグノカイン2%)を用いる。
【0169】
この試験は、被験薬投与の3から6週間後に膝の全置換術が予定されている膝の変形性関節症を有する被験者において、関節内局所麻酔剤と併用投与されるとき、関節内浸潤により投与されるカプサイシン(1000μg)の単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量範囲探索、第2相試験であり、主要評価項目は、被験薬投与3週間後の疼痛の減少である。
【0170】
この試験は、12人の評価対象を含むように設計される(VASで>40mmの明確な疼痛のある患者)。被験者6人はカプサイシン1000μgで処置し、被験者6人はプラセボビヒクルで処置する。患者は、無作為に、二重盲検方法で処理する。各処置群に関して肉眼および顕微鏡病理分析を完了する。各被験者は3回の試験訪問を行う。スクリーニング日(−7日から−1日)、処置日(第0日)、および処置後日(+2、+4、+7、または+14日に予定)。処置日に、被験者を無作為化し、処置前評価を行う。患者を処置室に入れ、VAS疼痛スコアを取る(0mm無痛、100mm非常に重度の痛み)。患者がカードに疼痛の印をつけた後、患者に膝カニューレ挿入の準備をする。カニューレが配置された後、患者は置換される予定の膝に2%リグノカイン3mg/kg(最大用量200mg)で関節内浸潤を受ける。この局所麻酔剤の投与後10分のうちに、プラセボ(ビヒクル)または全量5mlにビヒクルで希釈した精製カプサイシン1000μgの関節内浸潤を行う。
【0171】
投与直後ならびに膝置換術前にVAS疼痛スコアおよび口頭報告を得る。処置後日、試験評価を行い、続いてその後の検査のために行われる術中の骨および軟部組織生検を伴う予定された膝置換を行う。残存するリグノカインの鎮痛作用、または実際の手技(多量の注射)による残留疼痛、および溶解c線維末端が排除できないため、全体的な有効性分析には、浸潤2日後に手術を受ける患者を除外する。
【0172】
NRS(数値的評価スケール)疼痛スコアの変化を、投与3週間後に測定した。プラセボの最終NRSスコア=7.30(p=0.05)であり、カプサイシンの最終NRSスコア=3.97(p=0.03)である(図3を参照)。
【実施例3】
【0173】
バニオン切除有効性試験
転位骨切り術(バニオン切除)が予定されている患者において、局所麻酔剤と併用投与されるときの術中(浸潤)カプサイシンの安全性、認容性、全身薬物動態、および有効性を評価するために、以下の試験を行った。
【0174】
この試験の主要な目的は、すでに転位骨切り術(バニオン切除)が予定されている外反母趾変形を有する被験者において、プラセボと比較して、局所麻酔剤と共に関節内浸潤により併用投与されるときのカプサイシンの安全性および認容性を評価することであった。この試験の副次的な目的は、精製カプサイシンおよび術中投与後の精製カプサイシンの安全性、認容性、および全身薬物動態を評価することであった。主要有効性評価項目は、それぞれの処置群で術後最初の24時間にオピオイドによる感覚消失を要する被験者の割合であった。この割合は、コクラン−ヘンウェル検定を用いて、処理群間で比較した。副次的有効性評価項目には、i)各処置群の術後最初の36時間にオピオイドによる感覚消失を要する被験者の割合(同様に、この割合は、コクラン−ヘンウェル検定を用いて、処理群間で比較した)、ii)各処置群の術後10日間にオピオイドによる感覚消失を要する被験者の割合(同様に、この割合は、コクラン−ヘンウェル検定を用いて、処理群間で比較した)、iii)各処置群の最初にオピオイドによる感覚消失を用いるまでの時間(生存分析のアプローチを用いる。最初にオピオイドによる感覚消失を用いるまでの時間に積極限(カプラン−マイヤー)法を適用する。最初にオピオイドによる感覚消失を用いるまでの時間の中間値を両方の処置群で推定する。対比較を行い、ログランク検定とウィルコクスン検定の両方を用いて、2つの処置群間の生存曲線の同等性を検定する)、iv)各処置群の感覚消失の総使用(感覚消失の総使用は、処置およびセンターを独立変数として分散分析により比較する。処置群間で対比較を行う)、およびv)各処置群の手術部位における疼痛のVAS評価(各時点のVASスコアを、処置およびセンターを独立変数として分散分析により比較する。処置群間で対比較を行う)が含まれる。安全性評価項目には、i)検査安全性パラメータ、ii)有害事象、およびiii)精製カプサイシン血中レベルが含まれる。有効性分析は、術後10日目に得られたデータで行った。安全性分析は、6週および12週の追跡期間を含む、試験全体の安全性データに基づいて行った。有効性試験が行われた時点で、盲検性を破った。しかしながら、個々の処置の割付は、統計分析群のみ入手可能であった。治験責任医師、治験モニター、および専有スタッフを含む試験に関わる他のすべての個人は、全試験が完了するまで盲検のままであった。
【0175】
精製カプサイシンは、500μg/mlの濃度で精製カプサイシン5mlを含有するバイアルで供給された。被験薬は、15℃から25℃の温度で保管した。注射前4時間以内に、ビヒクルを用いて、次のとおり、薬剤を精製カプサイシンの最終濃度に希釈した。
【表3】

【0176】
各バイアルは、1回の浸潤投与にのみ用い、適切にラベルを付した。精製カプサイシンの供給業者は、FormaTech, Inc.、200 Bullfinch Drive、Andover、MA 01810であった。バイアルは、そのバイアルの内容物に従って各バイアルにラベルを付され、研究センターにまとめて供給された。薬剤師/治験看護師は、注射剤を調製し、所要温度15〜25℃で鍵のかかるキャビネットに治験薬を保管した。試験の盲検は、薬剤師/治験看護師によって維持された。
【0177】
精製カプサイシンのプラセボビヒクルは、5mlを含有するバイアルで供給された。それぞれの浸潤に、局所麻酔剤(リグノカイン2%)を用いた。
【0178】
この試験は、外反母趾変形を矯正するための転位第1中足骨切り術および固定を受ける被験者において、局所麻酔剤と併用投与されるときの術中カプサイシンの安全性および有効性の単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第2相試験であった。この試験に用いたカプサイシンの用量は1000μgであった。
【0179】
この試験は、40人の評価対象を含むように設計された。20人を無作為にカプサイシン処置群とし、20人をプラセボ対照群とした。各被験者は6回の試験訪問を行った。スクリーニング日(−28日から−1日)、手術日(第0日)、および4回の追跡訪問(3日、10日、6週、12週に予定)。
【0180】
処置日(第0日)に、以下を行った。a)手術前 くるぶしブロック開始前、試験組入れ/試験除外基準評価を行った。適格な被験者を無作為化し、処置前評価を行ったが、これには検査安全性評価、生命徴候の測定、標的である外反母趾における疼痛のVAS評価、精製カプサイシン濃度に関する血液サンプル測定、および併用薬の吟味が含まれる。b)手術 くるぶしブロック[リドカイン0.5%(全量20mlまで)]を治験責任医師によって開始して外科麻酔を提供し、その後、通常の慣行および手技に従って、第1中足骨の転位骨切り術±基節骨のAkin骨切り術を行った。創傷閉鎖直前に、治験責任医師は被験薬(4ml)を注射器から創傷内に滴加し、確実に一様な組織暴露を行った。その後、通常の慣行および手技に従って、創傷を閉合した。
【0181】
手術後
被験薬の投与後24時間、生命徴候(仰臥位脈拍数および血圧)を投与後1、2、4、および24時間に記録した。手術部位の疼痛のVAS評価は、投与後1、4、8、12、および24時間に行った。VAS測定が血液サンプリング手技と重なる場合、VAS評価を最初に行った。カプサイシン濃度を測定するための血液サンプルは、投与後1、2、および4時間に得た。各血液サンプルの量は10mlであった。検査安全性評価、たとえば血液学、生化学、尿検査は投与後24時間に行った。有害事象は被験者によって自発的に報告され、記録された。必要に応じて、被験者にレスキュー鎮痛薬を提供した(最初はジクロフェナク50mg、必要であれば8時間おきに繰り返した)。ジクロフェナクの疼痛緩和が不充分であると治験責任医師が判断したとき、被験者にコ−コダモール30/500(リン酸コデイン30mg+パラセタモール500mg)を提供し、必要であれば4時間おきに繰り返した。レスキュー薬または併用薬の使用はいずれも被験者のCRF(症例報告書)に記録した。被験薬投与の24時間後、被験者は退院した。
【0182】
追跡
追跡(1〜10日):退院時に、被験者に第1日〜10日用の日誌カードを与え、以下を記録するように依頼した。毎朝行う手術部位の疼痛のVAS評価、被験者が摂取したレスキュー薬の時間および量(随時)、併用薬の使用(随時)、被験者が経験した有害事象(随時)。各被験者にはさらに、手術後第3日および第10日に病院を再訪するように依頼した。これらの病院訪問で、治験責任医師は、被験者の日誌カードを吟味し、不明瞭または矛盾する記入を明らかにした。日誌カードのデータを被験者のCRFに転写した。正常な創傷治癒が起こっていることを確認するために、治験責任医師は手術部位を診察した。
【0183】
追跡(6週):被験者に、手術後第6週に病院を再訪するように依頼した。正常な創傷治癒が起こっていることを確認するために、治験責任医師は手術部位を診察した。前回の病院訪問後に経験した有害事象、および併用薬の使用について、被験者に尋ねた。
【0184】
追跡(12週):被験者に、手術後第12週に病院を再訪するように依頼した。正常な創傷治癒が起こっていることを確認するために、治験責任医師は手術部位を診察した。前回の病院訪問後に経験した有害事象、および併用薬の使用について、被験者に尋ねた。治験責任医師は、被験者を試験から解放した。
【0185】
バニオン切除試験の結果は、創傷閉合前、用量1000μgのカプサイシンの創傷への投与が、図3および4に示すとおり疼痛スコアとレスキュー使用との両方を低減したことを証明した。レスキューの使用は、ほとんどの場合、VASスコアの維持と関連した。すなわち、新しい薬剤が単純に古い薬剤を代替する(以下の表4を参照)。
【表4】

【0186】
創傷閉合前のカプサイシン1000μgの投与は、オピオイドによるレスキューを低減した。カプサイシンを投与されるように無作為化された被験者のわずか45%がレスキューを必要とし(被験者1人は1時間でレスキューを要し、2人目の被験者は4時間でレスキューを要し、3人目の被験者は5時間でレスキューを要し、4人目の被験者は8時間でレスキューを要し、5人目の被験者は12時間でレスキューを要し、6人の被験者は72時間内にレスキューを必要としなかった(n=11))、プラセボを投与されるように無作為化された被験者の80%がレスキューを必要とした(被験者1人は1時間でレスキューを要し、2人目の被験者は2時間でレスキューを要し、3人目の被験者は6時間でレスキューを要し、4人目の被験者は8時間でレスキューを要し、5人目の被験者は12時間でレスキューを要し、6人目の被験者は14時間でレスキューを要し、7人目および8人目の被験者は16時間でレスキューを要し、2人の被験者は72時間内にレスキューを必要としなかった(n=10)p<0.05)。
【実施例4】
【0187】
胸骨正中切開試験
この試験の主要な目的は、浸潤および/または注射によって精製カプサイシンを投与される患者に関して、胸骨正中切開試験後のオピオイド消費量および術後疼痛スコアを求めることである。適格な被験者は、年齢20〜70歳、任意の適応症のために心臓、肺、または縦隔手術を受ける患者である。手術は全身麻酔下で行い、施設の慣例により麻酔後治療室で注意深く観察する。すべての患者は、病棟に移されたとき、疼痛治療の要求に応じて医療標準のオピオイドを受ける。カプサイシンの用量は、胸骨縁、筋肉、組織、および/または骨に投与される。
【0188】
疼痛は、VAS100mmスケールを用いて評価する。ベースライン、患者が最初にベッドサイドの椅子についたとき(または歩いたとき)から開始して24時間の間60分毎、退院まで目を覚ましている間4時間毎。退院後2週間は患者の日誌を用いる。
【0189】
試験の主要評価項目は、術後オピオイドを最初に要求するまでの時間である。用いたオピオイドレスキューの量を最初の2週間24時間毎に記録し、患者はオピオイドに関連した症状の苦痛(SDS)の質問表に記入する。
【実施例5】
【0190】
腹腔鏡下胆嚢摘出術試験
この試験の主要な目的は、浸潤および/または注射によって精製カプサイシンを投与された患者において、腹腔鏡下胆嚢摘出術後のオピオイド消費量および術後疼痛スコアを評価することである。試験の被験者は、手術部位の近傍に精製カプサイシンの用量を投与される。
【0191】
この試験は、症候性胆石を有する年齢20〜60歳の患者40人を含む(20人は無作為にカプサイシン被験薬を投与され、20人は無作為にプラセボ被験薬を投与される)。手術は全身麻酔下で行い、被験者を24時間麻酔後治療室で注意深く観察し、病院に滞在させる(典型的に1日から5日間)。すべての患者は、退院まで疼痛治療の要求に応じて医療標準のオピオイドを受け、退院後はオピオイド(未定)を受ける。疼痛は、VAS100mmスケールを用いて評価する。ベースライン、術後2時間まで30分毎、その後の12時間の間4時間毎、24時間後、2、3、4、5、6、および7日。退院後は患者の日誌を用いる。
【0192】
試験の主要評価項目は、術後鎮痛を最初に要求するまでの時間である。オピオイドレスキューの量は最初の3日間24時間毎であり、患者はオピオイドに関連した症状の苦痛(SDS)の質問表に記入する。
【実施例6】
【0193】
膝置換試験
この試験の主要な目的は、浸潤によって精製カプサイシンを投与される患者に関して、膝置換手術後のオピオイド消費量および術後疼痛スコアを評価することである。
【0194】
この試験は、80人の患者を含む(患者20人は無作為にプラセボを投与され、20人は無作為にカプサイシン300μgを投与され、20人は無作為にカプサイシン1000μgを投与され、20人は無作為にカプサイシン2000μgを投与される)。適格な被験者は、年齢20〜70歳の、膝の置換術を受ける患者である。
【0195】
膝置換手術は全身麻酔下で行い、施設の慣例により麻酔後治療室で注意深く観察する。すべての患者は、病棟に移された後、疼痛治療の要求に応じて医療標準のオピオイドを受ける。閉合中の開放創に投与されるカプサイシンの量は、約5mlから約10mlの範囲である。
【0196】
疼痛は、VAS100mmスケールを用いて評価する。ベースライン、患者が最初に機械的屈曲/牽引についたときから開始して24時間の間60分毎、退院まで目を覚ましている間4時間毎。退院後2週間は患者の日誌を用いる。
【実施例7】
【0197】
乳房切除試験
乳房切除は著しい疼痛をもたらし、術後に相当な用量のオピオイドを要する。したがって、オピオイドの副作用を最小にしながら、良好な疼痛制御を提供する鎮痛剤技法が非常に望ましい。この試験の主要な目的は、カプサイシンを投与される患者に関して、乳房切除のオピオイド消費量および術後疼痛スコアを求めることである。
【0198】
この試験は、80人の患者を含む(患者20人は無作為にプラセボを投与され、20人は無作為にカプサイシン300μgを投与され、20人は無作為にカプサイシン1000μgを投与され、20人は無作為にカプサイシン2000μgを投与される)。適格な患者には、年齢20〜70歳の乳房切除術を受ける患者が含まれる。手術は全身麻酔下で行い、施設の慣例により麻酔後治療室で注意深く観察する。すべての患者は、病棟に移された後、疼痛治療の要求に応じて医療標準のオピオイドを受ける。
【0199】
被験薬の用量は、閉合中の創傷腔内に約5mlから約10mlの量で浸潤により投与される。
【0200】
疼痛は、VAS100mmスケールを用いて評価する。ベースライン、患者が最初に機械的屈曲/牽引についたときから開始して24時間の間60分毎、退院まで目を覚ましている間4時間毎。退院後2週間は患者の日誌を用いる。
【0201】
主要評価項目は、術後オピオイドを最初に要求するまでの時間である。オピオイドレスキューは最初の2週間24時間毎に起こり、患者はオピオイドに関連した症状の苦痛(SDS)の質問表に記入する。
【0202】
本発明を例示的に述べたが、本発明書に記載のカプサイシノイド製剤および治療方法の特定の実施形態は、限定的ではなく、説明的なものであることが理解される。上述の教示にかんがみて、本明細書に開示の方法および製剤に多くの変更および変形が可能であり、そのような明らかな変更は添付の請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としているヒトまたは動物においてある部位で疼痛を軽減する方法のための注射可能、埋込み可能、または浸潤可能な組成物を調製するためのカプサイシノイドの使用であって、前記組成物が、ある部位の外部で作用を引き出すことなくその部位を脱神経し、かつ前記部位から生ずる疼痛を軽減する有効量のカプサイシノイドの用量を含み、前記用量がヒトまたは動物の孤立性部位に注射または埋め込まれるとき、その用量は、約1μgから約5,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドであり、前記用量が手術部位または開放創に浸潤されるとき、その用量は、約1μgから約15,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドである使用。
【請求項2】
前記組成物が、その特定部位の外部で作用を引き出すことなく前記孤立性部位を脱神経し、かつ前記部位から生ずる疼痛を軽減する有効量の単回注射可能または埋込み可能用量のカプサイシノイドを含み、前記有効用量が、約1μgから約5000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記カプサイシンの用量が、約10から約3000μgである請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記カプサイシンの用量が、約300から約1500μgである請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記カプサイシンの用量が、約400から約1200μgである請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が、ある部位の外部で作用を引き出すことなく手術部位または開放創から選択されたその部位を脱神経する有効量の浸潤可能用量のカプサイシノイドを含み、前記有効用量が、約1μgから約15,000μgのカプサイシン、または治療上等価用量のカプサイシン以外のカプサイシノイドである請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記カプサイシンの用量が、約600から約15,000μgである請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記カプサイシンの用量が、約600から約10,000μgである請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記カプサイシノイドの用量が、約0.1から約1000mlの量の浸潤用の薬剤として許容されるビヒクル中で投与される請求項6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記カプサイシノイドの用量が、約1mlから約100mlの量の浸潤用の薬剤として許容されるビヒクル中で投与される請求項6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記カプサイシノイドの用量が、約5mlから約30mlの量の浸潤用の薬剤として許容されるビヒクル中で投与される請求項6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記カプサイシノイドの用量が、注射または埋込み用の薬剤として許容されるビヒクル中で投与される請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
薬剤として許容される前記ビヒクルが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース、乳酸加リンゲル注射液、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物からなる群から選択される水性ビヒクルである請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
薬剤として許容される前記ビヒクルが、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁および分散剤、乳化剤、封鎖剤、キレート剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択された剤である請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
薬剤として許容される前記ビヒクルが、注射用水中、約20%のPEG300、約10mMのヒスチジン、および約5%のスクロースを含む請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記カプサイシノイドの用量が、皮下、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、仙骨、真皮内または皮内、単一神経の肋間、関節内、滑液包内、脊髄内、動脈内、腹腔鏡手術部位、および体腔からなる群から選択された部位に注射または埋め込まれる請求項2から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記関節内投与が、膝、肘、股関節部、胸鎖、側頭下顎、手根、足根、手首、足首、椎間円板、黄色靭帯、および疼痛のある他の任意の関節からなる群から選択された関節への投与を含む請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記カプサイシノイドの用量が、マイクロカプセルおよびマイクロスフェアからなる群から選択された注射可能または埋込み可能な微粒子の形態で投与される請求項1に記載の使用。
【請求項19】
投与された前記用量のカプサイシノイドの初期過剰疼痛性作用を軽減するのに有効な量および場所で、前記用量のカプサイシノイドの前またはと同時に投与される局所麻酔剤の使用をさらに伴う請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記局所麻酔剤が、ジブカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、テトラカイン、プロカイン、クロロカイン、プリロカイン、メピバカイン、リドカイン、キシロカイン、2−クロロプロカイン、およびそれらの酸付加塩、またはそれらの混合物からなる群から選択される請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記局所麻酔剤が、前記用量のカプサイシノイドが投与される部位に、直接投与される請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記局所麻酔剤が、局所神経ブロックとして前記部位に投与される請求項19に記載の使用。
【請求項23】
投与された前記用量のカプサイシノイドの初期過剰疼痛性作用を軽減するのに有効な量および場所で、前記用量のカプサイシノイドの前またはと同時に投与されるフェノールの使用をさらに伴う請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記局所麻酔剤が、手術部位または開放創に浸潤により投与される請求項19に記載の使用。
【請求項25】
前記用量のカプサイシノイドの浸潤前に、ヒトまたは動物に全身麻酔を投与することをさらに含む請求項6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
その部位での前記カプサイシノイドの投与が、少なくとも約48時間、手術または創傷部位近傍の疼痛の軽減を提供する請求項25に記載の使用。
【請求項27】
その部位での前記カプサイシノイドの投与が、少なくとも約1週間、手術または創傷部位近傍の疼痛の軽減を提供する請求項25に記載の使用。
【請求項28】
前記部位の前記疼痛が、関節痛に伴うものであり、単回単位用量のカプサイシノイド注射または埋込みが、少なくとも約1ヵ月間、その部位で疼痛を軽減する請求項2から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記部位の前記疼痛が、関節痛に伴うものであり、単回単位用量のカプサイシノイド注射または埋込みが、少なくとも約3ヵ月間、その部位で疼痛を軽減する請求項2から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
前記部位の前記疼痛が、関節炎状態に伴うものであり、単回単位用量のカプサイシノイド注射または埋込みが、少なくとも約3ヵ月間、その部位で疼痛を軽減する請求項2から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
前記組成物が、a)特定部位から生じる疼痛を軽減または除去するために、疼痛の開始に関与する特定の限局領域でC線維および/またはAδ線維の選択的で高度に限局性の破壊または無力化を引き起こす作用、およびb)C線維および/またはAδ線維活性化の潜在的な悪影響および/または疼痛部位外部での損傷を最小限にする作用からなる群から選択された作用を提供する請求項1に記載の使用。
【請求項32】
胸骨正中切開に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、胸骨正中切開を受けているヒトまたは動物の胸骨縁部位の外部で作用を引き出すことなく前記胸骨縁を脱神経する有効量で、前記胸骨縁に投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
慢性ヘルニア縫縮術後に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、ヒトまたは動物のヘルニア手術が行われた部位の外部で作用を引き出すことなく前記部位を脱神経する有効量で、前記部位に投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
腹腔鏡下胆嚢摘出術に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、ヒトまたは動物の前記腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた部位の外部で作用を引き出すことなく前記部位を脱神経する有効量で、前記部位に投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
モートン神経腫に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、その指神経の外部で作用を引き出すことなく前記指神経を脱神経する有効量で、それを必要としているヒトまたは動物の指神経に投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
膝の変形性関節症に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、ヒトまたは動物の膝の外部で作用を引き出すことなく前記膝を脱神経する有効量で、前記膝に関節内投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
肩の腱炎または滑液包炎に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、ヒトまたは動物の肩峰下滑液包の外部で作用を引き出すことなく前記滑液包を脱神経する有効量で、前記滑液包に投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
外上顆炎に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、ヒトまたは動物の外側/内側上顆より末梢の筋肉または組織の外部で作用を引き出すことなく前記筋肉または組織を脱神経する有効量で、前記筋肉または組織に投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
バニオン切除に伴うものであり、単回注射可能または埋込み可能用量の組成物が、ヒトまたは動物のバニオン切除術手技に由来する開放創の外部で作用を引き出すことなく前記開放創を脱神経する有効量で、前記開放創に投与される請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
腱炎、滑液包炎、変形性関節症、および関節リウマチからなる群から選択された状態に伴う請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
踵骨棘、うおのめ、バニオン、モートン神経腫、槌状足指、足根関節の捻挫、足根関節または中足骨、種子骨または足指の骨折、足裏筋膜炎、およびアキレス腱の損傷からなる群から選択された足の整形外科障害に伴う請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
関節炎、手根管症候群、およびガングリオン嚢胞からなる群から選択された手の整形外科障害に伴う請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
外側上顆炎、内側上顆炎、回旋腱板の腱炎、ドケルヴァン腱滑膜炎、およびばね指からなる群から選択された障害に伴う請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
パジェット病、脊柱側弯症、打撲傷、捻挫、挫傷、腰痛、および踵骨棘からなる群から選択された障害に伴う請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項45】
骨折に伴う請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項46】
前十字靭帯の裂傷、後十字靭帯の裂傷、内側側副靭帯の裂傷、外側側副靭帯の裂傷、半月板軟骨裂傷、膝の軟骨欠損、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択された損傷に伴う請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
回旋腱板の、滑液包炎、脱臼、分離、衝撃、および裂傷、腱炎、癒着性関節包炎、肩の骨折、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択された肩の整形外科障害に伴う請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
前記創傷が、長骨の骨折である請求項1および6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
前記手術部位が、腹腔鏡術部位である請求項1および6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記手術部位が、乳房切除術部位である請求項1および6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
前記手術部位が、関節形成術部位である請求項1および6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項52】
前記カプサイシノイドの用量が、約500μgから約5000μgのカプサイシン、または治療上等価用量の別のカプサイシノイドである請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記手術部位が、癌手術に伴うものである請求項1および6から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
前記手術部位がバニオン切除部位であり、前記カプサイシノイドの用量が、約500μgから約2000μgのカプサイシン、または治療上等価用量の別のカプサイシノイドである請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項55】
癌性疼痛に伴う請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項56】
筋裂傷に伴う請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
急性外傷性疼痛に伴うものであり、カプサイシノイドが、生理的適合性ビヒクルに混合され、損傷の近傍で患者の皮膚を通して注射され、前記カプサイシノイドの用量が、患者が引き続き損傷の近傍で感覚を有し、その部位の近傍でAδ線維に関連する鋭い保護疼痛を及ぼすことなく、損傷の近傍でC線維に関連する鈍くうずく痛みを軽減するのに充分であり、カプサイシノイドの用量が、約300から約1500μgの量のカプサイシンの用量と治療上等価であり、少なくとも約48時間、損傷の近傍で鈍くうずく痛みを軽減するのに有効である請求項1および2から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
前記カプサイシノイドが、カプサイシンを含む請求項1から8および57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
前記カプサイシノイドが、レジニフェラトキシン、N−バニリルノナンアミド、N−バニリルスルホンアミド、N−バニリル尿素、N−バニリルカーバメート、N[(置換フェニル)メチル]アルキルアミド、メチレン置換N[(置換フェニル)メチル]アルカンアミド、N[(置換フェニル)メチル]−cis−1価飽和アルケンアミド、N[(置換フェニル)メチル]−2価不飽和アミド、3−ヒドロキシアセトアニリド、ヒドロキシフェニルアセトアミド、擬似カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、アナンダミド、ピペリン、ジンゲロン、ワーバーガナル(warburganal)、ポリゴジアール、アフラモジアール(aframodial)、シンナモジアール、シンアモスモライド、シンナモライド(cinnamolide)、イソベレラル(isovelleral)、スカララジアール、アンシストロジアール(ancistrodial)、β−アカリジアール、メルリジアール(merulidial)、スクチゲラール(scutigeral)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される請求項1から8および57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
前記カプサイシノイドが、レジニフェラトキシンである請求項59に記載の使用。
【請求項61】
前記カプサイシンが、本質的にtrans−カプサイシンからなる請求項58に記載の使用。
【請求項62】
前記カプサイシノイドが、少なくとも約97%trans−カプサイシンである請求項61に記載の使用。
【請求項63】
それを必要としているヒトまたは動物においてある部位で疼痛を軽減するための注射可能または埋込み可能な薬剤組成物であって、注射または埋込み用の薬剤として許容されるビヒクル中、1μgから5000μgのカプサイシン、治療上等価量の1種または複数の他のカプサイシノイド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されたカプサイシノイドから本質的になる組成物。
【請求項64】
前記カプサイシノイドが、約300μgから1500μgのカプサイシンを含む請求項63に記載の薬剤組成物。
【請求項65】
前記カプサイシノイドが、約400μgから1200μgのカプサイシンを含む請求項63に記載の薬剤組成物。
【請求項66】
前記カプサイシノイドが、約300μgから1500μgのtrans−カプサイシンを含む請求項64に記載の薬剤組成物。
【請求項67】
前記カプサイシノイドが、少なくとも約97%trans−カプサイシンである請求項65に記載の薬剤組成物。
【請求項68】
それを必要としているヒトまたは動物においてある部位で疼痛を軽減するための注射可能、埋込み可能、または浸潤可能な薬剤組成物であって、1μgから15,000μgのtrans−カプサイシン、および注射または埋込み用の薬剤として許容されるビヒクルから本質的になる薬剤組成物。
【請求項69】
薬剤として許容される前記ビヒクルが、注射用水中、有効濃度のポリエチレングリコール、ヒスチジン、およびスクロースを含む請求項68に記載の薬剤組成物。
【請求項70】
薬剤として許容される前記ビヒクルが、注射用水中、約20%のPEG300、約10mMのヒスチジン、および約5%のスクロースを含む請求項68に記載の薬剤組成物。
【請求項71】
1μgから5000μgのtrans−カプサイシン、および注射または埋込み用の薬剤として許容されるビヒクルから本質的になる請求項68に記載の注射可能な薬剤組成物。
【請求項72】
請求項1から8のいずれか1項に記載の使用に伴って起こる突出痛のための鎮痛剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280668(P2010−280668A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−156675(P2010−156675)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2005−510006(P2005−510006)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(510190576)アルシオン・セラピユーテイクス・インコーポレイテツド (1)
【Fターム(参考)】