説明

カプセル化エマルジョン及びその製造方法

エマルジョン組成物を製造する方法であって、疎水性成分を含有する水性媒体を準備し、疎水性成分と乳化剤成分とを接触させ、乳化剤の少なくとも一部は実効荷電を有し、エマルジョンとポリマー成分とを接触させ、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効荷電と反対の実効荷電を有し、及びエマルジョン/ポリマー成分を壁成分と接触させることを含むエマルジョン組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出願第60/721287号(2005年9月28日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)の優先権を享有する。
米国政府は、農務省からマサチューセッツユニバーシティへの許可番号2002−35503−12296に準じてこの発明に対する特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
オメガ−3ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)、特にEPA(エイコサペンタエン酸)及びDHA(ドコサヘキサエン酸)は、健康の維持ならびに人間の病気及び障害の防止にとって重要であることが示されていた。例えば、マグロ油は、大量のオメガ−3PUFAを含み、有用な栄養補助食品であるかもしれない。しかし、マグロ油中の長鎖PUFAは、全く飽和しておらず、従って、酸化に非常に影響されやすい。脂質酸化は、油に酸化防止剤を添加することによって又は油のマイクロカプセル化によって減少させることができる。
【0003】
酸化に影響されやすい材料のマイクロカプセル化は、酸化をかなり遅らせることが示されていた。マイクロカプセル化は、影響されやすい又は生理活性のある材料の粒子を、コーティング又は壁材料の薄膜で被覆するプロセスである。疎水性コア材料は、通常、油滴の周りで保護コーティングを形成する乳化剤(例えば、界面活性剤、リン脂質又はバイオポリマー)を含む水溶液の存在下でホモジナイズされ、次いで、壁材料が混合され、結果としてエマルジョンを生じる。その後、エマルジョンを、水をとばすために乾燥(例えば、スプレー又は凍結乾燥によって)され、壁マトリックス(一般に、炭水化物、タンパク質及び/又は極性脂質を含む)内で捕捉される乳化剤分子によって囲まれる油滴の形成をもたらす。
【0004】
安定なエマルジョンは、良好なマイクロカプセル化の必要条件であり、一般に、粒子内の油滴間で連続マトリクスを形成する壁材料が利用される。この壁材料は、通常、比較的低分子量の炭水化物(例えば、コーンシロップ固体及び/又はマルトデキストリン)を含む。コーンシロップ固体(CCS)は、エマルジョンの安定性及び流動学にあまり影響することなく、かなり高濃度(例えば、≦25重量%)で、水中油型エマルジョンに添加することができる。
【0005】
用語が含意するように、スプレードライは、粒状物質を取り囲む水のようなキャリヤ液体を蒸発させるために、乾燥媒体(通常、熱い空気又は不活性ガス)にそれをスプレーすることによって、液状から粉状(例えば、アモルファス又は結晶固体)に供給材料を変換することを含む。次いで、供給材料は、一般に、熱い乾燥媒体に混合されて、それを小さな滴に分割するノズルを通して、ポンプ圧送される。内部のキャリヤ液体は、滴表面から蒸発し、吸熱性プロセスによって、滴材料を、乾燥中比較的低温で維持することによって、熱的に敏感な成分に対するダメージを低減する。また、ドライヤー装置の滞留時間は短く、それによって熱に対するダメージの発生率を最小にする。乾燥材料は、次いで、乾燥媒体から分離され、ドライヤー装置から取り出される。
【0006】
多くの要因が、スプレードライ粉末製品の全体的な品質及び商業的な実行可能性に影響を及ぼすかもしれず、そのような因子は、限定されないが、壁材料及び全固形物含有量、製品溶解性及び分散特性、外観及び化学物質に対する感受性又は酸化的劣化を含む。スプレードライ粉末粒子中の油滴のカプセル化の概略図を図1に示す。連続相材料の適当量での水中油型エマルジョンは、適当な壁材料の存在下、乾燥され、対応する粉末粒子を形成する。
【0007】
当該分野で広く用いられている限り、スプレードライは、特定の関係及び限定がないわけではない。例えば、特定のシステムは、安定性のための壁材料に相当に高額の費用を必要とする。結果として生じる粉末は、分解作用に脆弱で、粒子の味又は匂いに悪影響を与えるかもしれない。さらに、再構成された際、いくつかの粉末は、凝集又は沈殿するかもしれず、製品の外観を損なう。
【0008】
発明の要旨
上記の観点から、本発明は、粒状、カプセル化組成物及びそれらのアセンブリ及び製造方法を提供することができ、それによって、上述したことを含む当該分野で種々の課題を解決することができる。本発明の1以上の観点は所定の目的に合致し、一方1以上の他の観点は、所定の他の目的に合致することは当業者に理解されるであろう。各目的は、本発明のその全ての観点において、あらゆる局面に等しく適用されなくてもよい。そのように、この発明のその1つの面に関しても、以下の目的は、択一的に捕らえることができる。
【0009】
本発明の目的は、対応するスプレードライ材料の経済的、物理化学的及び/又は機能的特性を改善するために、ここで述べたように設計された疎水油脂成分を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、粒子安定性のために当該分野で知られているものよりも少量で壁材料を含む組成物を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、保存及びその後の適用の間、不安定化を阻害又は防止するために、粉末粒子組成物及び/又はそれらの製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、カプセル化の前、間及び/又は後の油脂滴凝集を低減又は防止するための組成物構造設計を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の他の目的は、そのような組成物及び/又はそれらの製造方法を提供することであり、それによって再構成における分散性を改善することができる。
【0013】
さらに、本発明の目的は、上述した目的の単独又は1以上とともに、以下により詳細に説明するように改変又は調製された、食品等級材料及び現在利用可能な製造技術を用いてそのような組成物を製造することである。
【0014】
本発明の他の目的、特徴、利益及び利点が要旨及び以下の記載から明らかであり、水性及び粉末エマルジョン、関連食品及び慣例製造技術の知識を有する当業者にとって容易に理解できるであろう。そのような目的、特徴、利益及び利点は実施例、データ、図面及びこれらから引き出される全ての合理的な推論の単独またはここに組み込まれた参考文献の検討を一緒に考慮することにより明らかであろう。
【0015】
一つには、本発明は、乳化された実質的に疎水性の油脂成分の製造方法を提供する。そのような方法は、油脂成分を準備し、油脂成分を、少なくとも1部が実効電荷を有する乳化剤成分と接触させ、及び1以上の食品等級ポリマー成分と接触させ又は取り込み、それぞれの少なくとも一部は、乳化剤成分及び/又は先に接触及び/又は取り込まれた食品等級ポリマー成分とは反対の実効荷電を有することを含むことができる。前後における乳化剤又はポリマー成分の1つと壁成分との接触又は取り込みは、スプレードライ又はフリーズドライによって粉末/粒子形成のためのシステムを提供する。図2Aを参照して、粉末粒子における油脂滴の製造を説明する。例えば、多層組成物又は成分膜によって取り囲まれた油滴の水性エマルジョンは、対応する粒子材料を与えるためにスプレードライすることができる。
【0016】
従って、特定の実施形態において、そのような方法は、反対に荷電された乳化剤又は食品等級のポリマー成分の交互の接触又は取り込みを含むことができ、それぞれのそのような接触又は取り込みは、先に接触され又は取り込まれた乳化剤又は食品等級のポリマー成分との静電気相互作用を含む。そのような方法は、形成されたどのような凝集又は浮塊を破壊するために、得られた組成物の機械的振動及び/又は超音波処理を任意に含むことができる。
【0017】
上記によれば、疎水性成分は、水性又は他の媒体に少なくとも部分的に不溶とすることができ及び/又は水性又は他の媒体中でエマルジョンを形成することができる。特定の実施形態において、疎水性成分は、限定されないが、当業者に公知のいずれかの可食植物油(例えば、コーン、大豆、キャノーラ、菜種、オリーブ、ピーナツ、藻類、パーム、ココナッツ、ナッツ及び/又は植物油、魚油又はその組合せ)を含む脂肪又は油成分を含むことができる。疎水性成分は、水素化又は部分的に水素化された脂肪及び油から選択することができ、例えば、酪農脂肪を含むいずれかの乳業又は動物性脂肪又は油を含むことができる。さらに、疎水性成分は、香料、酸化防止剤、防腐剤及び/又は栄養成分(例えば、脂溶性ビタミン)をさらに含むことができる。
【0018】
本発明のより幅広い観点と一致して、疎水性成分は、限定されないが、所定の食物又は飲料エンドユーザ用途で必要かもしれない、脂肪酸(飽和又は不飽和)、グリセロール、グリセリド及びそれらの各誘導体、リン脂質及びそれらの各誘導体、糖脂質、フィトステロール及び/又はステロールエステル(例えば、コレステロールエステル、フィトステロールエステル及びそれらの誘導体)、カロテノイド、テルペン、酸化防止剤、着色剤及び/又は香料オイル(例えば、ペパーミント、柑橘類、ココナッツ又はバニラ及びその抽出物(例えば、柑橘類油からのテルペン))を含むいずれかの天然及び/又は合成脂質成分をさらに含有することができることは容易に理解されるであろう。従って、本発明は、種々の分子量の油脂及び/又は脂質成分を意図しており、炭化水素類(芳香族、飽和、不飽和)、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸性及び/又はアミン部位又は官能基を含む。
【0019】
乳化剤成分は、少なくとも部分的に水相中の疎水性成分を乳化することができる、当該分野で公知のいずれかの食物等級の界面活性成分、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を含むことができる。乳化剤成分は、小分子界面活性剤、リン脂質、タンパク質及び多糖類を含むことができる。そのような乳化剤は、限定されないが、レシチン、キトサン、ペクチン、ガム(例えば、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム等)、アルギン酸、アルギナート及びそれらの誘導体ならびにセルロース及びその誘導体の1以上を含む。タンパク質乳化剤は、酪農タンパク質、植物タンパク、食肉タンパク質、魚タンパク質、植物タンパク質、卵タンパク質、オバルブミン、糖タンパク質、ムコタンパク質、リンタンパク質、血清アルブミン、コラーゲン及びそれらの組み合わせのいずれか1つを含むことができる。成分を乳化するタンパク質は、それらのアミノ酸残基(例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)に基づいて、疎水性成分のまわりの界面膜の全実効荷電を最適化し、従って、結果として生じるエマルジョンシステムにおける疎水成分の安定性を最適化するために、選択することができる。
【0020】
実際、乳化剤成分は、例えば、モノグリセライドの酢酸エステル(ACTEM)、モノグリセリドの乳酸エステル(LACTEM)、モノグリセライドのクエン酸エステル(CITREM)、モノグリセライドのジアセチル酸エステル(DATEM)、モノグリセライドのコハク酸エステル、ポリグリセロールポリリシノール酸エステル、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸の蔗糖エステル、モノ及びジグリセリド、果物酸エステル、ステアロイルラクチラート塩、ポリソルベート、澱粉、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び/又はそれらの組合せを含む広範な乳化剤を含むことができる。
【0021】
上述したように、ポリマー成分は、吸着、相互作用及び/又は疎水性成分及び/又は関連乳化剤成分への架橋が可能ないずれもの食品等級のポリマー材料を含むことができる。従って、食品等級のポリマー成分は、限定されないが、タンパク質、イオン性又はイオン化可能な多糖類(例えば、キトサン及び/又はキトサン硫酸塩)、セルロース、ペクチン、アルギナート、核酸、グリコーゲン、アミロース、キチン、ポリヌクレオチド、アラビアゴム、アカシアガム、ガラギーナン、キサンタン、寒天、グアーゴム、ゲランガム、トラガカントゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、リグニン及び/又はそれらの組み合わせから選択されるバイオポリマー材料であってもよい。食品等級のポリマー成分は、改変ポリマー(例えば、改変デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン又はリグニンスルホン酸塩)から、代わりになるべきものとして選択することができる。
【0022】
本発明は、特定の食品に適用できる環境又は最終用途状況の下で十分に安定な油/脂肪及び/又は脂質成分を含む多層組成の形成をもたらす乳化剤及びポリマー成分のいずれかの組み合わせを意図する。従って、疎水性成分は、疎水性成分が取り入れられるエマルジョンシステム/食品のpH、イオン強度、塩濃度、温度及び処理条件によって、広範な乳化剤/ポリマー成分をカプセル化及び/又は固定化することができる。そのような乳化剤/ポリマー成分の組み合わせは、適当な壁成分の存在下、他との静電的相互作用及び対応エマルジョンの形成によってのみ制限され、それは、スプレー又は凍結乾燥するか、あるいは粉末又は粒子材料に加工することができる。そのような疎水性成分、乳化剤成分及びポリマー成分は、出願中の特許出願第11/078,216号(2005年3月11日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)で記載又は示されたものから選択することができる。
【0023】
一つには、本発明は、エマルジョン及び微粒子の形成のための代替方法を含むことができる。先のことに関して、ポリマー成分は、十分な静電的相互作用のために助けにならないpHで又は条件下で、油脂成分及び乳化成分を含む組成物を取り込むか又はそのような組成物に接触させることができる。よって、ポリマー成分との静電的相互作用を又はポリマー成分の取り込みを十分促進させ、エマルジョン、乳化油脂成分及び/又はポリマー成分の実効電荷を変化させるために、pHを変化させることができる(例えば、図2B参照)。限定されることなく、乳化成分は、他の成分との続く相互作用のために正の実効電荷を与えるために、その等電点以下のpHでタンパク質を含むことができる。
【0024】
製造方法に関係なく、エマルジョンは、極性脂質、タンパク質及び/又は炭水化物から選択される壁成分と接触することができる。種々の壁成分は、当該分野における及び本発明を認識する当業者に公知である。そのようなエマルジョンは、1以上の壁成分と共に、噴霧乾燥器からの供給材料として用いることができる。従って、対応するエマルジョンは、乳化油脂成分のまわりの壁成分を含む滴の分散液に加工することができる。分散液は、分散滴から水相の少なくとも部分的な蒸発を促進するために、加熱乾燥媒体に導入又は接触させることができ、壁成分マトリクス中の油脂、乳化剤及びポリマー成分を含む固体又は固体様粒子を与える。
【0025】
限定されることなく、以下の実施例によれば、エマルジョンは、食品等級成分及び標準的な製造方法(例えば、ジョモジナイズ及び混合)を用いて製造することができる。まず、電気的に荷電された乳化剤成分を含む一次水性エマルジョンを、油脂成分、水相及びイオン性乳化剤をホモジナイズすることによって製造することができる。任意に、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの浮塊形成を破壊させるために一次エマルジョンに適用することができ、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去するために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。二次エマルジョンは、一次エマルジョンと実効電荷ポリマー成分(又は他の適当な荷電材料、例えば、関連コロイド、ナノパーティクル又はコロイド粒子)との接触によって製造することができる。ポリマー成分は、一次エマルジョンの少なくとも一部とは反対の実効荷電を有することができる。任意に、機械的動揺又は超音波処理を、いずれかの浮塊形成を破壊させるために適用してもよく、取り込まれていない乳化剤成分のいずれかを除去するために、エマルジョンの洗浄を行うことができる。上述したように、エマルジョンの特徴は、一次エマルジョン及びポリマー成分の静電的相互作用を促進するか、強化するために、pH調整によって変化させることができる。説明のための目的にのみ、一次エマルジョンは油脂、水及びレシチンのホモジナイズによって製造することができ、油脂及び負の実効電荷を含む乳化成分組成物を提供する。二次エマルジョンは、正の実効電荷を有し、一次エマルジョンとの静電的相互作用を十分に促進する条件下で、一次エマルジョンとキトサンとの接触によって製造することができ、対応する組成物を与える。製造方法に関係なく、壁成分は、スプレードライの前に、一次又は二次エマルジョンのいずれかとともに又は連続して導入することができる。
【0026】
従って、本発明は、少なくとも一部には、実質的に疎水性油脂成分、乳化剤成分及びポリマー成分及び壁材料成分を含む組成物に関する。本発明の広範な観点に一致して、そのような組成物は、いずれかの食品等級の複数の成分層を含みことができ、乾燥において壁成分マトリクス内で、各層はそのような成分に隣接する少なくとも一部と反対の実効荷電を有する。得られた粉末又は粒状材料は水性媒体に導入して再構成エマルジョンを調製するために用いることができる。あるいは、そのような材料は、食品又は飲料製品に取り込むことができ、そのような製品は、限定されないが、ここで示した又は当業者に知られているであろういずれかのエマルジョン系食料品を含む。そのような食料品は、限定されないが、マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、ディップ、クリーム、肉汁、スプレッド、プッディング、ヨーグルト、スープ、コーヒーミルク、デザート、乳又は大豆飲料等を含む。さらに、乾燥材料は、低水分製品、例えば、クッキー、クラッカー、ビスケット、ケーキ、シリアル、ドライミックス、グラノーラ、バー、菓子製品、キャンディー、アン及びトッピング等に直接組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の種々の面は、乳化され及び/又は被覆され、ここで述べるように、乾燥され及び/又はその後の使用のための再構成されたマグロ油を含む組成物の製造、特性及び使用によって説明することができる。そのような方法及び組成物は、限定されることなく、本発明に関連する広範な観点を例示する。
【0028】
水分及び水活性
生成物を乾燥する最終的な影響は、低水分活性とともに低含水量である。スプレードライエマルジョン粉末の含水量(1〜3%)及び水分活性(0.1〜0.25)は、165〜180℃の吸気温度を増加させることによって低減したが、それ以上は減少しなかった(表1)。これらの結果は、文献と一致している。最も低温度で操作されるとき、スプレードライ生成物の含水量は最も高かった。食品業界における大部分の乾燥粉末のための最大の水分仕様は、3〜4%の間である。本発明と一致して、このレベルの含水量は、165℃(供給速度=2.2L/h)の最も低吸気温度でスプレードライを行うことによって達成できた。
【0029】
【表1】

*列において、異なる上付きの文字がついた平均値は有意に異なる(P<0.05)
**再構成エマルジョン、オリジナルのエマルジョンヒドロペルオキシド=0.86±0.13ミリモル/kg油、d3,2=0.26±0.01μm
【0030】
脂質酸化
油の酸化は、それらの劣化の大きな原因であり、酸素と不飽和脂肪酸との間の反応によって形成されるヒドロペルオキシドは、この反応の一次生成物である。異なる乾燥温度でのスプレードライ乳化マグロ油のヒドロペルオキシド濃度を表1に示す。マグロ油粉末のヒドロペルオキシドの乾燥温度の影響はなかった(P<0.05)。マグロ油エマルジョンのヒドロペルオキシド濃度は、スプレードライ粉末で、最初の液体エマルジョンの0.86±0.13mmol/kg油から2.79±0.48mmol/kg油まで増加した。処理中、マグロ油は空気、高圧及び高温にさらされ、それは脂質酸化の増加を招く。大豆油に関して、ヒドロペルオキシド濃度が5mmol/kg油未満と、低い脂質酸化程度を示すことが過去に示されている。従って、今回の新たな粉末における比較的低いヒドロペルオキシド濃度は、マグロ油がスプレードライプロセス間に、酸化に比較的安定だったことを示すようである。
【0031】
遊離油とカプセル化効率
粉末状のエマルジョンの「遊離油」の量は、通常、有機溶剤で抽出することができる油脂の部分として定義される。しかし、分析テストで測定される遊離油量は、用いた正確な抽出条件に強く依存している点に留意する必要がある。最近の研究において、粉末状のエマルジョンの「遊離油」は、ヘキサン抽出可能な油脂に相当すると考えられた(Danviriyakul, S., McClements, DJ., Decker, E.A., Nawar, W.W., & Chinachoti, P. (20)02)参照)。乳化剤及び処理条件に影響を受けるものとしてスプレードライ乳脂肪エマルジョンの物理的安定性。Journal of Food Science, 67(6), 2183-218参照。粉末中の遊離油の量(3.0〜3.5g/100g粉末)は、吸気温度に依存していないことが見い出された(表1、p<0.05)。この結果は、乾燥温度でなく、マトリクスシステムが遊離油の量に影響を及ぼしたことを示唆する。カプセル化効率(EE)は、粉末内の粒子表面上の遊離した油の存在及び壁マトリックスが浸出プロセスによって内部油の抽出を防止することができる程度を反映する。ここでは、EE値(85%〜87%)は、吸気温度に影響を受けなかった(表1)。先の研究者は、壁材料の種類及び組成、壁材料に対するコア材料の比、用いた乾燥プロセスならびにエマルジョンの安定性及び物理化学的特性によって、0%から95%のEE値を報告した。比較によれば、本発明の多層エマルジョンシステムのEE値は、先に報告されたEE値の高い方の端であった。
【0032】
粉末形態学
例えば、コア材料の保持、流れ特性、環境からのコア材料の保護等のマイクロカプセル化システムの多くの特性は、それらの内部微細構造に依存し、内部粉末構造の特徴を示唆する。乾燥温度は、走査電子顕微鏡検査に基づく粉末構造に影響を及ぼさなかった(図3)。すべての粉末サンプルは、5〜30μmの範囲の径を有するほぼ球形粉末からなる(図3A)。文献と一致し、表面に若干の欠陥又はディンプルを観察した。つまり、カゼイン酸ナトリウム及びマルトデキストリンからなるスプレードライ無水乳脂肪粉末の粒子表面の欠陥又はきずを観察した。また、粉末粒子表面における欠陥は、他の炭水化物系のマイクロカプセルでも報告されており、乾燥の初期段階で生成された滴の異なる部位での不均一な乾燥によって誘導される機械的ストレスの結果に起因し、不飽和表面乾燥期間中の水分変化に起因し、表面張力による粘着性流れの影響に起因する。粉末粒子は、クラックが全くないようであったが、若干の孔の存在が観察された。これらの孔は、材料の不均一な収縮のため、乾燥プロセスの最後の段階に生じるかもしれない。多孔性は、乾燥粒子への溶剤の浸透に影響することによる、スプレードライのミルク粉末から脂肪の抽出性への影響を示唆している。従って、上記の溶媒抽出方法を用いて測定される「遊離油」は、粉末状の粒子におけるこれらの孔の存在によるものであったかもしれない。遊離油のかなりの部分は、表面の脂肪又はマイクロカプセルの内部からの脂肪小球であると考えられる。粒子への無極性溶媒の拡散を制限するバリアとしての働きをするために壁材料にアモルファスラクトースを用いることによって多孔形成及び遊離油の濃度を減少させることが可能かもしれない。
【0033】
スプレードライマイクロカプセルの内部構造及びコア材料が乾燥マトリックス内でどのように組織されるかを研究するために、カプセルを開いた。この方法は、LR−ホワイト樹脂中に粒子を分散させ、次いで、樹脂を重合させるために紫外線下でインキュベートすることによって行った。次に、埋設された粉末を含むブロックを、ミクロトーム(Poter Blum Ultra-Microtome MT-2, Ivan Sorvall, Inc., Norwalk, CT)を使って切断した。カプセルの内部構造(図3B)は、全てのケースで、コア材料が壁マトリクスに埋め込まれた小滴の形であることを示した。滴の平均直径は0.2〜1.0μmであり、それは乾燥前の液体エマルジョンでの分散相の滴と非常に類似していた。油滴に加えて、各カプセル(「V」とラベルされた大きな円形領域)内で多くのボイドが形成され、それは、炭水化物系の壁材料を用いた他のスプレードライエマルジョンに関して文献で報告されたそれらと類似している。いずれか1つの理論又は操作方法にとらわれることがなければ、ボイドの形成は、原子化及びスプレードライ(例えば、溶解したガスの蒸発、温度上昇のための材料の膨張及び蒸気泡の形成)に関連するいくつかのメカニズムに関連しているかもしれない。
【0034】
粉末の色調
プロセス中の熱処理は、非酵素的褐変反応による糖含有食品の品質に影響を及ぼすかもしれない。粉末の色調の変化は、上述したように、三刺激コーディネート(L−(明度)、a−(赤み及び緑み)及びb−(黄み及び青み)値等)の比色測定によって定量化することができる。コーンシロップ固体(CSS)粉(DE36)を、色調対象サンプルとして用いた。スプレードライエマルジョンの色調(L、a、b値)において、乾燥温度の顕著な影響はなかった(p<0.05、表2)。しかし、粉末エマルジョンのL値は、CCS対象よりも小さく(低い明度)、b値は高く(より黄)、おそらく、スプレードライエマルジョンにおいて若干の非酵素的褐変反応生成物が発生したためである。例えば、キトサンは、小さなタンパク質画分を有することが知られており、それは、CCSにおける糖分子と反応するかもしれない。
【0035】
表2:マグロ油エマルジョンの色調における吸気温度の影響
【0036】
【表2】

*カラムにおいて、異なる上付きの文字がついた平均値は有意に異なる(P<0.05)
**CSSを対象として用いた
【0037】
エマルジョン粉末の再構成
粉末分散の速度及び効率は、特に粉末状の食物成分の使用において重要である。この理由から、スプレードライエマルジョンの分散速度及び効率についての情報を、レーザー回折技術を用いて得た。水溶液における粉末の完全な再構成の後に得られた最終的な平均滴径において、全ての乾燥温度での乾燥及び再構成後に、顕著な増加は観察されなかった(p<0.05、表1)。しかし、二峰性分布が、再構成されたエマルジョンで観察され(図4)、それは、いくらか大きな粒子(凝集又は合体滴のいずれか)の形成を示した。分散性を研究するために、エマルジョン粉末の少量の試料(〜0.3g/mLのバッファ)を、レーザー回折装置(Malvern Mastersizer Model 3.01, Malvern Instruments, Worcs., UK)の攪拌チャンバ内に含有された連続的に攪拌された緩衝液に添加した。次いで、粉末状のエマルジョンの分散性を、時間の相関関係として平均粒径の変化及びシステムの滴濃度を測定することによって評価した。滴濃度は、それが一定値に達した後、攪拌時間3分(0.016容量%)まで増加した。一方、平均粒径直径は、攪拌3分後に、最初の0.5±0.01μmから0.3±0.1μmに減少した。滴濃度及び平均粒径は、3分より長い攪拌時間で比較的一定を維持した。測定開始時に観察されたより大きな粒径及び低い滴濃度は、エマルジョン粉末の相当の凝集を示した。粒径における迅速な減少及び滴濃度における増加は、均一な懸濁液を迅速に与えるよりも、大部分が溶解した粒子であることを示す。
【0038】
再構成されたエマルジョンの安定性におけるpHの影響を試験した。一連の希釈エマルジョン(10g固体/100gエマルジョン)を、異なるpH値(3〜8)で、種々の水溶液に粉末エマルジョンを分散させることによって調製した。エマルジョンは、24時間室温に保存され、次いで、平均粒径及び電荷(ζ−電位)を測定した(図6及び図7)。
【0039】
再構成エマルジョンのζ−電位は低いpH値(<pH8)で正であったが、高い値で負になった(図7)。キトサンのカチオン基は、一般に6.3〜7周辺のpKa値を有する。Schulz, P. C, Rodriguez, M.S., Del Blanco, L.F., Pistonesi, M., & Agullo, E. (1998)参照。キトサンの乳化特性。Colloid and Polymer Science, 216, 1159-1165。よって、キトサンはこのpHのあたりで一部のその荷電を失い始める。従って、キトサン及びレシチン被覆滴間で静電吸引が弱まるかもしれず、それは、吸着されたキトサンのいくらかの放出をもたらすかもしれない。あるいは、キトサンのいくらか又は全てが、滴表面に吸着されたままだったかもしれないが、キトサンが一部のその正電荷を失ったので、滴は負に荷電するようになった。再構成エマルジョンは、pH<5.0で滴凝集に対して安定であったが、平均粒径の相当の増加から導き出されるように、高いpH値で非常に不安定であった(図4)。より高いpH値でのエマルジョンの不安定性は、おそらく、ζ−電位の大きさが比較的低かったからであろう(図5)。それは、滴間で静電反発を減少させ、広範囲な滴凝集を招いた。さらに、滴表面からのキトサン分子の部分的な脱着が、若干の架橋凝集を招いたかもしれない。
【0040】
発明の実施例
以下の非限定的な例とデータは、本発明の組成物及び方法に関する種々の観点及び特徴を示し、油脂エマルジョンの製造、ここで説明された種類の乳化剤及び高分子成分によるカプセル化及びその後の再構成又は食品への取り込みのための粉末粒子の製造におけるそれらの使用を含む。従来例と比較して、本発明の組成物及び方法は、意外で、予想外で、対照的な結果及びデータを提供する。これらの例は、説明の目的だけのために含まれ、本発明がここに記載された疎水性成分、乳化剤、ポリマー又は壁材料のいずれの特定の組合せにも限定されないと理解すべきである。相当する有用性及び利点は、この発明の範囲と一致した種々の他の成分を用いて認識することができる。
【0041】
材料
粉末キトサン(分子量、媒体、1重量%酢酸中の1重量%溶液の粘度、200〜800cps、脱アセチル化75%〜85%、最大水分量10重量%、最大アッシュ0.5重量%)をアルドリッチケミカル社(セントルイス、MO)から購入した。粉末レシチン(Ultralec P、アセトン不溶物、97%;水分量重量%)がADM−レシチン(ディケーター、IL)によって寄付された。コーンシロップ固体(DRI SWEET(登録商標)36、コード335249;デキストロース当量、36;全固形物、97.2重量%;水分量、2.8重量%;アッシュ、0.2重量%)をロケットアメリカ社(ケオカク、IA)から得た。脱ゴム化、漂白、消臭されたマグロ油を、マルハ社(宇都宮、日本)から得た。分析等級酢酸ナトリウム(CH3COONa)、塩酸(HCl)及び水酸化ナトリウム(NaOH)を、シクマケミカル社(セントルイス、MO)から購入した。蒸留、脱イオン化した水を、すべての溶液調製のために用いた。
【0042】
AW
サンプルの水分活性を、25℃にて、AquaLab Water Activity Meter(シリーズ3、Decagon Devices, Inc., Pullman WA)で測定した。
マイクロカプセル化効率の計算
マイクロカプセル化効率(EE)を、以下のように、上述した定量法から計算した。
EE=カプセル化油(g/100g粉末)×100/全油(g/100g粉末)
走査型電子顕微鏡
粉末の内部及び表面形態学を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、Hardasらの方法を用いて評価した。Hardas, N., Danviriyakul, S., Foley, J.L., Nawar, W. W., & Chinachoti, P. (2000)参照。マイクロカプセル化無水乳脂肪の改善された安定性研究。Lebensm.-Wiss. u.-Technology, 33, 506-513。画像を、3.0〜5.0kVで、走査型電子顕微鏡で観察した(JEOL 5400、JEOL、日本)。
統計
全ての実験を、新たに調製したサンプルを用いて少なくとも2回行い、結果を平均値及びそれらの測定の標準偏差として報告した。
【0043】
実施例1
溶液の調製
保存緩衝液を、水中に100mMの酢酸ナトリウムと酢酸とを分散させ、次いで、pHを3.0に調整することによって調製した。乳化剤溶液を、3.53重量%レシチンを保存緩衝液に3.53重量%で溶解することにより調製した。乳化剤溶液を、20kHzの周波数、70%の振幅及び0.5sのサイクル(Model 500, sonic disembrator, Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)で1分間超音波処理し、乳化剤を分散させた。溶液のpHを、HCl又はNaOHを用いて3.0に調整し、次いで、溶液を、乳化剤の完全に溶解させるために、約1時間攪拌した。キトサン溶液を、1.5重量%粉末キトサンを酢酸ナトリウム−酢酸緩衝液に溶解させることによって調製した。コーンシロップ固体溶液を、酢酸ナトリウム−酢酸緩衝液で50重量%コーンシロップ固体を分散させることによって調製した。
【0044】
実施例2
液状エマルジョンの調製
水中マグロ油型エマルジョンを、5重量%マグロ油、1重量%レシチン、0.2重量%キトサン及び20重量%コーンシロップ固体(DE 36)を含んで調製した。濃縮水中マグロ油型エマルジョン(15重量%油、3重量%レシチン)を、高速のブレンダー(M133/1281-0、Biospec Products社、ESGC、スイス)を用いて、15重量%マグロ油と85重量%水性乳化剤溶液(3.53重量%レシチン)とを混合することによって調製し、一段式高圧力弁ホモジナイザー(APV-Gaulin, Model Mini-Lab 8.30H, Wilmington, MA)に、5000psiで3回通した。この一次エマルジョンを、二次エマルジョン(5重量%マグロ油、1重量%レシチン及び0.2重量%キトサン)を形成するために、水性キトサン溶液で希釈した。二次エマルジョンで形成されたいずれもの浮塊を、4000psiの圧力で、高圧弁ホモジナイザーに通すことによって崩壊した。20重量%コーンシロップ固体を含有する二次エマルジョンを、最初の二次エマルジョンとコーンシロップ固体溶液とを混合することによって調製した。エマルジョンは、スプレードライ前、暗所に一晩(12〜15時間)、4℃で保存した。
【0045】
実施例3
スプレードライエマルジョンの調製
噴霧乾燥を、遠心スプレー(Nerco-Niro, Nicolas & Research Engineering Corporation, Copenhagen, Denmark)で、ニロ・スプレードラーヤを用いて、165、180及び195℃の温度にて、2.2L/hの供給速度で行った。粉末を、分析まで、−40℃にて密封シールラミネートパウチ中に、真空で保存した。
【0046】
実施例4
水分含量
約2gの粉末の2つのサンプルを、アルミニウムパンに載置し、29インチHg真空オーブン(Fisher Scientific, Fairlawn, NJ)中で、70℃にて24時間乾燥した。含水量を、重量差から計算した。
【0047】
実施例5
遊離油の抽出
15mLヘキサンを、2.5gの粉末に添加した。2分間渦式ミキサー(Fisher Vertex Genie 2, Scientific Industries, Inc, Bohemia)で、混合物を混合し、次いで、20分間8000rpmで遠心分離した(Sorvall RC-5B Refrigerated Superspeed Centrifuge, Du Pont Company, Wilminngton, Delaware)。上澄を濾過し、濾紙(Whatman, Maidstone, Kent, 英国)を、ヘキサンで2回洗浄し、ヘキサンを70℃にて回転蒸発器(RE 111 Rotavapor, Type KRvr TD 65/45, BUCHI, Switzerland)で蒸発させ、溶剤を含まない抽出物を、105℃で乾燥した。カプセル化された油量を、重量によって測定した。
【0048】
実施例6
カプセル化油の抽出
2mLの酢酸緩衝液(pH3.0)を、表面油を含まない0.5gの粉末に添加し、結果として生じた溶液を、25mLヘキサン/イソプロパノール(3:1容量比)で抽出した。試験管を、次いで、自動シェーカー(Innova 4080 Incubator Shaker, New Brunswick Scientific Co. Inc., NJ)を利用して、160rpmで15分間振盪し、さらに15分間遠心分離した。透明な有機相を採取し、水相を、溶媒混合物で再抽出した。無水Na2SO4によって濾過した後、溶媒を70℃にて回転蒸発器(RE 111 Rotavapor, Type KRvr TD 65/45, BUCHI, Switzerland)で蒸発させ、溶媒のない抽出物を105℃にて乾燥した。カプセル化油の量を、重量によって測定した。
【0049】
実施例7
総油の抽出
完全な乾燥粉末を原料として、2mL酢酸緩衝液(pH3.0)を、0.5gの粉末に添加し、1分間渦式混合した。総油を、先に述べたようにカプセル化された油の抽出と同じ方法を使用して抽出した。
【0050】
実施例8
色調の測定
スプレードライエマルジョンの反射スペクトルをUV−可視分光光度計(UV-2101PC, Shimadzu Scientific Instruments, Columbia, MD)を用いて測定した。測定の間、乾燥エマルジョンを、黒いバックプレートを有する0.5cmの経路長の測定セルに入れた。スペクトルを、380〜780nmの波長範囲で、700nm/分のスキャン速度で得た。スペクトル反射測定を、積分球アレンジメント(ISR-260, Shimadzu Scientific Instruments, Columbia, MD)を用いて行った。エマルジョンのスペクトル反射を、標準の硫酸バリウム(BaSO4)と比較して測定した。サンプルの色調を、文献で用いられたL、a、b色調システムで報告した。Chantrapornchai, W., Clydesdale, F., & McClements, DJ. (1999)参照。スペクトル反射の理論的かつ実験的な研究及び濃縮水中油型エマルジョン類の色調。Journal of Colloid and Interface Science, 218, 324-330。
【0051】
実施例9
脂質酸化の測定
脂質ヒドロペルオキシドを、0.3mLの再構成されたエマルジョン(0.3mL酢酸緩衝液中の0.1gエマルジョン粉末)を、1.5mLイソオクタン−2−プロパノール(3:1容量比)に添加し、次いでそれぞれ10秒間3回渦式混合し、3400gにて2分間遠心分離した(Centrific(登録商標) Centrifuge, Fisher Scientific, Fairlawn, NJ)抽出工程の後、改変された文献方法で測定した。Mancuso, J.R., McClements, DJ., & Decker, E. A. (1999)参照。水中サーモン油型エマルジョンの酸化に関する界面活性剤の種類、pH及びキレート化剤の影響。Journal of Agricultural and Food Chemistry, 47, 4112-4116。次に、有機相(0.015〜0.2mLの脂質抽出物を含有する0.2mL総量)を、2.8mLメタノール−ブタノール(2:1容量比)に添加し、続いて、15μLのチオシアネート溶液(3.94M)及び15μLの鉄イオン溶液(0.132MのBaCl2及び0.144MのFeSO4を酸性溶液に加えることによって調製)を添加した。溶液を、渦式混合し、510nmでの吸収を20分間後に測定した。脂質ヒドロペルオキシド濃度を、クメンヒドロペルオキシド標準カーブを用いて測定した。
【0052】
実施例10
再構成エマルジョン滴の直径
粉末を、4.5mL酢酸緩衝液(pH3.0)中に0.5g粉末を溶解することによって、10g固体/100g再構成エマルジョンに再構成した。再構成の1時間後に、エマルジョンを、静的光散乱器具(Malvern Mastersizer Model 3.01, Malvern Instruments, Worcs.,英国)を用いて、油滴径分布について分析した。多重散乱効果を防止するために、分析の前に、エマルジョンを、pH調整再蒸留水で希釈し、滴濃度を0.02重量%未満にした。
【0053】
実施例11
乾燥エマルジョンの分散性
エマルジョン粉末の少量のサンプル(〜0.3 mg/mLのバッファ)を、レーザー回折器具(Malvern Mastersizer Model 3.01, Malvern Instruments, Worcs.,英国)の攪拌チャンバ内に入れられた連続攪拌緩衝液に添加した。粉末が次第に分散したため、粉末エマルジョンの分散性を、次いで、時間の相関関係として、平均粒径及び濃度変化を判断することによって評価した。
【0054】
実施例12
媒体pHの影響
粉末(0.5g)を、所望のpH(3〜8)で、4.5mL酢酸緩衝液で溶解した。エマルジョンを、ガラスの試験管(内部の直径=15 mm、高さ=125mm)に移し、次いで、分析前に室温で保存した。エマルジョの粒径分布を、先に述べたのと同じ条件を用いたが、エマルジョンをオリジナルのエマルジョンと同じpHのpH調整水で希釈して測定した。エマルジョンの油滴の電荷(ζ−電位)を、粒子電気泳動器具(ZEM5003, Zetamaster, Malvern Instruments, Worcs.,英国)を用いて測定した。エマルジョンを、多重散乱効果を避けるために、分析前に、pH調整再蒸留水で約0.008重量%の滴濃度に希釈した。
【0055】
上述したように、高品質マイクロカプセル化されたマグロ油が、コーンシロップ固体含有水中油型エマルジョン及び多層界面膜(レシチン:キトサン)によって取り囲まれた油滴をスプレードライすることによって製造することができる。スプレードライは、炭水化物壁マトリックス内に埋設されたマグロ油の小滴(直径<1μm)を含有するスムーズ回転楕円体粉末粒子(直径=5〜30μm)からなる粉末エマルジョンを産生した。マイクロカプセル構造は、乾燥温度(165〜195℃)に影響を受けなかった。粉末は、比較的低い含水量(<3%)、高い油保持量(>85%)及び迅速な水分散性(<1分)を有していた。本発明の新たな界面エンジニアリング技術は、スプレードライカプセル化疎水性油/脂成分系を製造するために効果的であり、その代表的な非限定的な実施例は、マグロ油であった。他のそのような粉末組成物を、本発明に従って、食品添加物用途で広範囲にわたる使用を示す良好な物理化学的特性及び分散性をそなえて、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】先行技術のエマルジョン製造を表す概略図である。
【図2A】本発明の典型的な1段階混合の実施形態を示す概略図である。
【図2B】本発明の典型的な2段階混合の実施形態を示す概略図である。
【図3A】マグロ油含有カプセルの外形を示す代表的な電子顕微鏡写真である。Wは欠陥、Pは孔、Vはボイド、Rは樹脂、ODは油滴又は空気セルである。
【図3B】マグロ油含有カプセルの内部構造を示す代表的な電子顕微鏡写真である。Wは欠陥、Pは孔、Vはボイド、Rは樹脂、ODは油滴又は空気セルである。
【図4】最初の及び再構成されたマグロ油エマルジョン(5重量%油、1重量%レシチン、0.2重量%キトサン及び20重量%コーンシロップ固体)の平均滴分布である。
【図5】レーザー回折機器の攪拌セルに粉末を添加した後のエマルジョンの平均粒径及び濃度における攪拌時間の影響を示す。
【図6】スプレードライ粉末の再構成エマルジョンの平均粒径における媒体pHの影響を示す。各カラムでは、平均及びそれに続いて異なる文字は有意差が異なる(P<0.05)。
【図7】スプレードライ粉末の再構成エマルジョンのζ−電位における媒体pHの影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン組成物を製造する方法であって、
疎水性成分を含有する水性媒体を準備し、
疎水性成分と乳化剤成分とを接触させ、乳化剤の少なくとも一部は実効荷電を有し、
エマルジョンとポリマー成分とを接触させ、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効荷電と反対の実効荷電を有し、及び
エマルジョン/ポリマー成分を壁成分と接触させることを含むエマルジョン組成物の製造方法。
【請求項2】
水性媒体は、少なくとも1つのポリマー成分及び壁成分を含む請求項1の方法。
【請求項3】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項1の方法。
【請求項4】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギナート、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆植物タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項1の方法。
【請求項5】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項1の方法。
【請求項6】
壁成分は、脂質、タンパク質及び炭水化物から選択される請求項1の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの成分の実効荷電は、媒体のpHを調節することによって与えられる請求項1の方法。
【請求項8】
乳化剤成分は、タンパク質を含み、前記媒体のpHは前記タンパク質の等電点以下である請求項6の方法。
【請求項9】
ポリマー成分を、他の乳化剤成分と接触させ、該他の乳化剤成分の少なくとも一部は実効荷電が前記ポリマー成分の実効荷電と反対である請求項1の方法。
【請求項10】
水性媒体は少なくとも一部が蒸発し、粒子を与える請求項1の方法。
【請求項11】
粒子を、水性媒体で再構成させる請求項10の方法。
【請求項12】
エマルジョンを製造する方法であって、
疎水性成分、実効荷電を有する乳化剤成分、ポリマー成分及び壁成分を含有する水性媒体を準備し、
ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効荷電と反対の実効荷電を有することを含むエマルジョンの製造方法。
【請求項13】
エマルジョンを、媒体中で再構成する請求項12の方法。
【請求項14】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項12の方法。
【請求項15】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギン酸塩、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆植物タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項12の方法。
【請求項16】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項12の方法。
【請求項17】
壁成分は、脂質、タンパク質及び炭水化物から選択される請求項12の方法。
【請求項18】
水性媒体中の疎水成分のエマルジョンを含み、該エマルジョンは、実効荷電を有する乳化剤成分、ポリマー成分ならびに前記乳化剤及びポリマー成分のまわりの壁成分を含有し、ポリマー成分の少なくとも一部は乳化剤成分の実効荷電と反対の実効荷電を有するエマルジョン。
【請求項19】
疎水成分は、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油、菜種油、オリーブ油、ピーナツ油、藻油、ナッツ油、植物油、ベジタブル油、魚油、フレバー油、動物脂肪、植物脂肪及びそれらの組合せから選択される油脂成分である請求項18のエマルジョン。
【請求項20】
乳化剤成分は、レシチン、キトサン、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーゴム、アルギン酸、アルギン酸塩、セルロース改変セルロース、改変デンプン、ホエイタンパク質、カゼイン、大豆植物タンパク、魚タンパク質、食肉タンパク質、植物タンパク質、ポリソルベート、脂肪酸塩、小分子界面活性剤及びそれらの組み合わせから選択される請求項18のエマルジョン。
【請求項21】
ポリマー成分は、タンパク質、多糖類及びそれらの組み合わせから選択される請求項18のエマルジョン。
【請求項22】
壁成分は、脂質、タンパク質及び炭水化物から選択される請求項18のエマルジョン。
【請求項23】
食品及び飲料の一つに組み込まれた請求項18のエマルジョン。
【請求項24】
水性媒体は、少なくとも部分的に蒸発して粒子を与える請求項18のエマルジョン。
【請求項25】
水性媒体中で再構成される請求項18のエマルジョン。
【請求項26】
食品及び飲料の一つに組み込まれた請求項24のエマルジョン組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−510079(P2009−510079A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533572(P2008−533572)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037710
【国際公開番号】WO2007/038616
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(399093869)ユニバーシティー オブ マサチューセッツ (19)
【Fターム(参考)】