説明

カプセル化プロバイオティクスを有する穀類の懸濁液に基づく前発酵シンバイオティクスマトリクス、その製造方法及び使用方法

実際の機能性食品市場を補完すると共に、プロバイオティクス生存度が生理活性を促進するために必要最低限の値以下にまで減少することによるこれらの食品の保存寿命減少問題を解決するための、カプセル化プレバイオティクスを有する前発酵された穀類(より好ましくは、オートミール)のシンバイオティクスマトリクスを提供する。さらに、異なる水準での発酵工程条件を向上させるため、即ち、製造工程におけるエネルギー消費量を減少させるために発酵時間を短縮し、汚染リスクを減少させると共に、長期間にわたる微生物の安定性維持を促進する。前記前発酵シンバイオティクスマトリクスは、特に、乳製品に対して過敏な人々又はアレルギーを示す人々の為に設計されたものであり、医薬品産業、化粧品産業、ペットフードを含む食品産業において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレバイオティクス又はプロバイオティクスを含む前発酵させたシンバイオティクスマトリクスに関するものであり、医薬産業、化粧品産業、好ましくは、ペットフードを含む食品産業に利用することができる。前発酵させたシンバイオティクスマトリクスは、乳製品ではないか、又は乳製品を含まないため、これらの成分に対して過敏な人々や、乳製品にアレルギーを持つ全ての人々に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
最近の数十年間において、人の健康に対する食事の影響の詳細な知識は大幅に増加している。そして、世界中の人々は、いわゆる「健康食品」の必要性を意識するようになり、これは、重要な公衆衛生問題について指摘する場合と同様に、平均寿命の向上によって正しい認識であるとみなされてきている。消費者の間にプロバイオティクス製品の人気が上昇することにより、食品会社は、一定の市場要求を適切に満たすために、そのような製品の製造要請に向き合う必要がある。全ての食品は、その用語が一般的に意味する点では、成長及び維持のために必要なエネルギー及び栄養を供給する限りにおいて機能的であるといえる。そこで、食品原料成分は、これに関する従来の栄養上の効果を越えて、有効な科学的な方法で、健康に有益な影響を与えることが科学的に明らかに有効であることが示されたときに、機能的であるとされる。
【0003】
この市場は、世界水準で10〜15%に相当し、1年当たりの成長率が20〜30%という活動的かつ革新的であるという特徴がある。
【0004】
プロバイオティクスは、腸内細菌の生態系バランスを促進するように、宿主に有益な効果を与える生存可能な微生物と定義することができる。乳酸桿菌、ビフィドバクテリウム及び腸球菌等の種類の菌は、感染症への保護を宿主に提供するため、潜在的にはプロバイオティクスであると考えられる。してみれば、これらの菌は、特定の病原の攻撃、環境、応答または毒性を防御する機能を有する。これらのプロバイオティクスはまた、いくつかの形態の癌が発達するリスクを低下させる(抗発癌性活性)のと同様に下痢の制御に対して有益な効果を有する。血中コレステロールの水準低下(コレステロール低下作用)効果についても記載されている。もう一つの可能な効果(科学的に有効とされたもの)として、砂糖の消化を促進するラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)を産生することによるラクトースの消化に対する影響であり、ラクトースに対して過敏な人々に対する解決策を提供する。プロバイオティクス製品の有益な効果は、最小で10CFU/ml含まれている場合に確保され、これは一日あたりの最小治療量が10〜10個の生菌であると示唆する仮定と一致しており、1ミリリットル又は1グラム当たり10〜10個の生菌を含む製品を約100グラム摂取することで達成可能である。プロバイオティクスは、例えば、高濃度の酸素、酸環境、凍結または胃腸管の通過といった特定の工学的、機能的因子への感受性により、健康上の利益が自然に制限されてしまう。
【0005】
上述した悪影響からプロバイオティクスの生存率を上昇させるために、カプセル化する方法が適用され始めた。マイクロカプセル化は、固体、液体または気体を非常に小さなカプセル内に充填する技術であり、その内容物を制御した割合で特定の条件下に放出することを可能にする。
【0006】
いくつかのマイクロカプセル化技術は、即ちエマルションや噴霧乾燥により利用可能である。エマルションカプセル化は、微生物細胞及びポリマーを含む少量の溶液(不連続相)を大量の植物油(連続相)に添加することによる。この混合物を、その後均質化して油中水滴型エマルションを形成する。一旦得られると、水溶性ポリマーは、油相中に小さなゲル微粒子を形成するための対象物を有する食塩水によって不溶化される。カプセルの大きさは、攪拌方法及びその速度の他、食塩水添加機構によって種々に制御することができる。エマルションカプセル化工程は、容易に大規模化することができ、微生物に優れた生存率(80〜95%)をもたらすことができる。得られるカプセルは、25〜50μmの範囲の様々な大きさを示す。
【0007】
一方、噴霧乾燥方法は、生存可能な微生物細胞を有する水性カプセル化剤混合液を、噴霧器を用いて乾燥させる工程からなる。得られる乾燥物は、混合液が噴霧された後、熱気流(熱入力)に触れることで生成され、続いて真空の補助により適切な容器に集められる。この技術は、処理の低コスト化、操作容易性、熱に弱い機能性原料への利用可能性、得られるカプセルの高品質・高安定性及び、大量生産の容易性に非常に有益である。得られるカプセルは、5〜75μmの範囲の様々な大きさにすることができる。
【0008】
プレバイオティクスは、大腸内の1種又は限られた種類の細菌の成長又は活性を選択的に刺激して、宿主に肯定的な効果を与える非消化食品成分として定義される。
【0009】
シンバイオティクスという用語は、同一食品内における、生理活性を有するプレバイオティクス剤とプロバイオティクス剤とによる相乗関係を意味する。
【0010】
現在、プロバイオティクスとそのプロバイオティクスとの組合せを内包するカプセル化形態は、関連製品の長期安定性の維持及び栄養価の最適化を目的として、食品産業界により投資されている。
【0011】
カプセル化されている生理活性成分を含む食物製品の成分、その製造方法及び利用方法が記載された文献が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような成分は植物繊維からなり、オートミール、可溶性多糖類又は不溶性多糖類、ペクチン、レニン及びゴムから生じるものを含む。前記植物繊維の生理活性成分としては、プロバイオティクス微生物、プレバイオティクス、酵素、栄養、二次代謝産物、自然物若しくは合成物及び抗酸化活性物質等を挙げることができる。カプセル化された物質は、(植物由来又は微生物由来の)多糖類、乳化剤、ペプチド、タンパク質又はプレバイオティクス物質によって構成され得る。
【0012】
これらの成分を得るための工程として、カプセル化形状のマトリクスを含む環境中に、生理活性成分を導入することが予測される。前記文献には、穀類の植物繊維によって形成されたマトリクス中にカプセル化されたプロバイオティクス又はプレバイオティクスのような生理活性成分を含む穀類に基づく製品について記載されている。しかし、前発酵され、次にエマルション、流動層、又は、乾燥によって処理した後、プレバイオティクス成分を添加した水性懸濁液であるので、本発明と大きく相違している。言い換えれば、前記文献では、全ての成分(プレバイオティクス又はプロバイオティクス)が、カプセル化され、同じ状態のマトリクスに導入されている。一方、本発明では、微生物のカプセル化を通して微生物活性を保護するため、別々の状態でカプセル化を達成する工程を記載する。
【0013】
タンパク質、加水分解されたタンパク質及び、乳化脂質を含み、プロバイオティクス微生物を有さないオートミールから作られた製品及び治療用組成物が報告されている(例えば、特許文献2参照)。それに加えて、前記製品及び組成物は、β−グルカン及び植物ステロールを含んでいてもよい。前記製品及び組成物の製造工程は、オートミール画分から炭化水素を取り除くために酵素処理する工程(より好ましくは加水分解による)を介して行われる。
【0014】
β−グルカン、タンパク質、天然糖類及び天然タンパク質を含む穀類の分散液から製造される非乳製品が報告されている(例えば、特許文献3参照)。前記非乳製品は、穀類分散液に、酵素、特に、加水分解酵素や異性化酵素を用いる方法によって製造される。
【0015】
大豆及び乳を用いないオートミール懸濁液に基づく微生物培養によって発酵された製品及びその製造方法が報告されている(例えば、特許文献4参照)。これによれば、乳酸桿菌及び連鎖球菌が、オートミール懸濁液の発酵や、水性オートミール懸濁液中にリン酸水素カルシウム若しくはリン酸カルシウム、β−グルカン、マルトース、マルトデキストリン、タンパク質等のいくつかの成分を含む混在物であり、後に温置されて行われる発酵に用いられることが予測される。
【0016】
食品産業において、さらに原料として用いるために、穀類、より好ましくはオートミールにより製造される製品が報告されている(例えば、特許文献5参照)。このような製品を得るための工程には、穀類の糠、フレーク又は粉末からなる懸濁液を製造する工程を含む。次に、この懸濁液を、所定の温度及び圧力下で均一化処理することで、エマルションが得られる。その後、エマルションを乳酸桿菌又はビフィドバクテリウムのような微生物により発酵させ、とりわけ、酸化処理し、低温殺菌する(または粉末として提供する)ことができる。
【0017】
発酵用微生物が接種された穀類の粉末又は抽出液より得られたものから製造されたβ−グルカンを出発物質とするシンバイオティクス組成物が知られている(例えば、特許文献6参照)。乳酸桿菌、連鎖球菌又はビフィドバクテリウムは、α−アミラーゼで処理され、安定化剤が添加された穀類の水性懸濁液中に接種された。
【0018】
プロバイオティクス組成物(例えば、乳酸桿菌及びビフィドバクテリウム)及び、ポリマー、特に、イヌリン又はオリゴフルクトースによって構成され得るプレバイオティクスの混合物で構成される大豆又は乳製品由来の液体又は凍結形態のシンバイオティクス製品が知られている(例えば、特許文献7参照)。このような製品の製造工程では、液相中にプレバイオティクス成分とプロバイオティクス成分とを含む混合物を用い、当該混合物をpHが4.5に達するまで発酵させ、最終混合物を最終生成物へと導く。この最終段階では、まだ数%の二酸化炭素を含ませることが可能である。
【0019】
上述した6つの文献における記載内容は、遊離微生物又は酵素を添加したオートミール懸濁液を、わずか一工程で発酵させ、最終的には他の付加的な成分を包含するものであるので、本発明の内容とは実質的に相違している。一方で、本発明は、固定化微生物によって穀類の懸濁液を前発酵し、続いて、カプセル化プロバイオティクス及びカプセル化プレバイオティクス若しくは遊離のプレバイオティクスが添加されることを分析し、記載している。
【0020】
本発明の対象物であるカプセル化プロバイオティクスを有する前発酵されたシンバイオティクスマトリクスに比較する場合、遊離微生物が用いられる場合では、最終製品の保存寿命が低下し、保存期間及び胃腸管を通過する際における微生物の安定性/生存度が低下する。
【0021】
本発明における解決方法によれば、保存寿命の低下に関する問題(特許文献4〜7参照)についても解決し、長期間にわたり微生物安定性を維持することができる(遊離微生物を有する既存製品において報告されている保存寿命に比較して、40〜60%増加する)。
【0022】
表面微生物又は囲まれた微生物(surface and/or enclosed microorganisms)を有し、例えば、朝食用シリアル又は飼料として用いられる水溶性繊維源を有する乾燥加工成形穀類を開発することを目的とする報告がなされている(例えば、特許文献8参照)。これは、カプセル化プロバイオティクスと、カプセル化プレバイオティクス又は遊離プレバイオティクスとを有する前発酵された穀類、より好ましくは、オートミールのシンバイオティクスマトリクスであって、カプセル化プロバイオティクス及びプレバイオティクスを共に用いた場合、最終製品において微生物の安定作用を示し、胃腸管の通過を容易にすることが推測される穀類シンバイオティクスマトリクスを開発することを目的とする。さらに、消化できないプレバイオティクス水溶性繊維源としてのβ−グルカンに関連して、コレステロールの軽減という栄養機能表示を与えることを第2の目的とする。穀類の懸濁液(より好ましくはオートミール)は、食物連鎖の一部における必要に応じて、未乾燥状態、凍結乾燥状態又は、凍結状態で提供することができるため、食品産業で種々に適用することができる。
【0023】
κ−カラギナン又はアルギン酸ゲル球体中における酵母の固定化に関する連続工程として、例えば、スタティックスターラを用いる非水相(植物油)及び(酵母と共にκ−カラギナンが添加された)分散水相を有し、例えば、エマルション形成を介して行われるビールの生産工程が報告されている(例えば、特許文献9参照)。これは、記載されている固定化工程が、植物油及び微生物添加ポリマーからなるエマルションに関するものであるが、酵母を含んでいるのに対して、本発明では全てプロバイオティクス微生物を用いる点で、その目的を異にしている。
【0024】
穀類マトリクス中に、カプセル化されたプロバイオティクスを添加し、続いてプレバイオティクス混合物を添加し、前発酵した穀類懸濁液由来の、シンバイオティクス製品を得るために概念化された段階的な工程は、長期間の微生物安定性維持により、栄養上の観点からだけでなく、いかなる関係においても、優れた製品を導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0016220号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/002367号
【特許文献3】国際公開第2002/065855号
【特許文献4】国際公開第02/37984号
【特許文献5】国際公開第02/65930号
【特許文献6】カナダ国特許第2383021号明細書
【特許文献7】国際公開第2004/037191号
【特許文献8】欧州特許出願公開第0862863号明細書
【特許文献9】国際公開第2004/070026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、実際の機能性食品市場を補完すると共に、これらの食品の保存寿命が減少する問題を解決することにある。さらに、本発明の目的は、さらに異なる水準での発酵工程条件を向上させるため、即ち、製造工程におけるエネルギーを節約するための手段として発酵時間を短縮すること、汚染リスクを減少させること及び、長期間微生物安定性を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、カプセル化プレバイオティクスを有する前発酵された穀類(より好ましくは、オートミール)のシンバイオティクスマトリクスであることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、カプセル化プロバイオティクス及びカプセル化プレバイオティクス混合物を有する前発酵された穀類、より好ましくは、オートミールのシンバイオティクスマトリクス、特に、食品産業だけでなく医薬品産業又はその類似産業におけるいくつかの適用例における、その製造工程及びその使用方法を提供する。
【0029】
得られた製品は、従来の発酵工程によって製造されたものと同じ官能特性を有する。
【0030】
カプセル化微生物が含まれている場合、これらの製品は、長い保存寿命又は摂食後に胃腸管を通過する間の安定性/生存度が増加されるという利点もまた有する。
【0031】
マトリクスはまた、付加的な利点として、利用可能な市販製品よりも、使用期限を40〜60%延長させることができる。
【0032】
この技術を用いることで、残余の遊離微生物と、従来の前発酵製品と同じ官能特性とを有する前発酵製品を得ることができる。
【0033】
微生物細胞の固定化技術は、遊離細胞系に比較して、(i)発酵時間の50〜60%以上の低減、(ii)微生物の代謝及び安定性の増加、(iii)細菌汚染リスクの軽減、(iv)高い細胞密度、(v)例えば、プロバイオティクス活性による酸性化後リスクの減少に伴う安定した製品品質、(vi)改良基質の使用及び、(vii)一定の細胞再生による長期の細胞再利用性といった利点を与える。
【0034】
これらの製品を得る工程は、(i)固定化細胞の継続的再利用、(ii)発酵時間の減少による作業工程における省エネルギー化、(iii)細菌汚染リスクの軽減及び、(iv)微生物安定性の長期間維持等のいくつかの段階における発酵作業条件を向上させる方法を明らかにする。
【実施例】
【0035】
1.オートミール懸濁液の作製方法
1.1.
フレーク、糠、又は、粉末を、水と混合することで、5〜20%(w/w)のオートミール濃縮液を作製した。
1.2.
作製した混合物を、継続的に攪拌しながら、80〜110℃の範囲の温度で5〜20分間加熱した。
1.3.
得られた作成物を摩砕した。
1.4.
得られた懸濁液を濾過した。
1.5.
混合物を25〜48℃の範囲の温度にまで冷却した。
2.エマルションによる細胞カプセル化に伴う流動層反応器における前発酵工程
2.1.前発酵工程
前発酵工程は、以下の2.1.1.〜2.4.3.の工程で得た細胞によって固定化された微生物を有する流動層反応器内で行った。
【0036】
微生物マトリクス相互作用を引き起こすために、カプセルを、その直径より小さい孔隙率を有し、一定かつ制御された双方向窒素流を有する気圧制御された反応器の内側のカラム内に導入した。
2.1.1.細胞培養準備
2.1.1.1.
凍結培養により接種物を準備し、L−システイン−HClを0.05%(w/v)になるよう追加したMRSブロスでの2連続トランスファーにより活性化した。
2.1.1.2.
L−システイン−HClが0.05%(w/v)になるよう補足されたMRSブロス(Man Rogosa Sharpe製)1000mlに対して、微生物1〜20%(v/v)を接種し、これに続いて、例えば、アシドフィルス菌Kiを嫌気条件下において、37℃で、24時間温置し、又は、ビフィドバクテリウム アニマーリス Bo及びBb12を嫌気条件下において、37℃で、48時間温置した。
2.1.1.3.
得られた培養液を4000rpm、15分、4℃という条件で遠心分離し、続いて、沈渣を、例えば、NaCl 0.9%(w/v)溶液で洗浄し、同溶液100mlで再懸濁した。
2.2.ポリマー溶液の作製
2.2.1.
60〜80℃の範囲の温度で1〜4時間の範囲の時間、可変維持しながら継続的に攪拌し、続いて、35〜45℃の範囲の温度に冷却し、高分子溶液、例えば、1〜5%(w/v)のκ−カラギナンを作製した。
2.3.油剤の作製
2.3.1.
植物油と、Tween 80若しくはこれに限定するものではないが、保護剤としてのラウリル硫酸ナトリウムからなる化合物とを混合した。
2.4.カプセルの作製
2.4.1.
1〜20%(v/v)の細胞懸濁液(2.1.参照)と、1〜5%(w/v)の高分子溶液(2.2.参照)とを混合した。
2.4.2.
得られた混合物を、作製した油剤(2.3.参照)の75〜98%になるように添加した。得られた溶液を均質化し、油中水滴型エマルションとした。
2.4.3.
カプセル形成は、10mMのKCl溶液を添加し、例えば、4〜8℃の範囲の温度の混合物とした後に生じた。
2.5.
前発酵工程操作条件
流動層反応器で利用するための微生物を有するカプセルを形成した後、前発酵工程を、嫌気条件(循環窒素フラックス)下で攪拌しながら、20〜52℃の範囲の温度で4〜8時間の範囲の時間行い、発酵マトリクスを得た。この懸濁液を、反応器内に注ぎ、残存する食品成分の取り込みを行った。
3.エマルション又は噴霧乾燥による微生物カプセル化工程
微生物のカプセル化は、以下のカプセル化技術により行った。
3.1.エマルション(2.に記載の通り)
3.2.噴霧乾燥
3.2.1.
高分子を有する細胞懸濁液を作製した(2.2.、2.2.1.及び2.4.1.参照)。
3.2.2.
先の混合物250mlを、入り口温度が150〜175℃の範囲の温度で、出口温度が50〜85℃の範囲の温度となる一定条件下で乾燥させた。
3.2.3.
得られた粉末を、100g又は100mlのマトリクス毎に10〜1010CFUとなるように、2〜5%(w/v)の割合で前発酵オートミール懸濁液(2.5.)に加えた。
4.食品成分の取り込み
前述の工程で得たマトリクスに、特にこれに限るわけではないが、海塩を1〜3%の範囲の濃度に維持して、例えば、イヌリンを有する成分を添加した。
5.マトリクスの組成形態
カプセル化プロバイオティクスを有するオートミール懸濁液に基づく前発酵シンバイオティクスマトリクスを、未乾燥状態、凍結乾燥状態又は、凍結状態のいずれかで提供することができる。未乾燥マトリクスは、さらに、ゲル又は加工成形品の状態のいずれかで提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離又はカプセル化プロバイオティクス、遊離微生物又は他の食品成分の少なくとも1つを含むカプセル化微生物を有する穀類の懸濁液が配合されていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項2】
請求項1記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記穀類が、フレーク状、粉末状又は、糠状であることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項3】
請求項2記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記穀類が、より好ましくは、オートミールであることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項4】
請求項2記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記穀類が、より好ましくは、オートミールと、食品産業において通常用いられている他の穀類又は豆類、例えば、これに限定するものではないが、それぞれ、大麦、大豆の少なくとも1種とを組み合わせたものであることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、有機農法又は適正な取引に由来する穀類又は豆類が配合されていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項6】
請求項1記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、プレバイオティクス源として、生理活性物質のβ−グルカン水溶性繊維が配合されていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項7】
請求項6記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、追加の原料として、穀類又は豆類から抽出されたβ−グルカン水溶性繊維が同程度に配合されていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記β−グルカン水溶性繊維が、より好ましくは、穀物又は豆類から抽出されていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記β−グルカン水溶性繊維を、少なくとも0.75%(w/w)有していることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記β−グルカン水溶性繊維とは別に、例えば、これに限定するものではないが、イヌリン、フルクトオリゴサッカロイド(FOS)又はキトサンのような他のプレバイオティクス化合物を備えていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記プレバイオティクス機能とは別の他の食品成分の集合体が、甘味料、香料、果肉又は、酵素等の、感覚器官に対する機能のような他の機能のために許容され得ることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、遊離又はカプセル化形状内に、穀類又は豆類に既存するものを越えて、追加の抗酸化剤、これに限定するものではないが、ω3脂肪酸、ω6脂肪酸、脂肪酸誘導体、ビタミン及び、無機塩類が添加されていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項13】
請求項1記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記微生物が、「GRAS(安全食品認定)」である、カプセル化された、より好ましくはビフィドバクテリウム又は乳酸桿菌からなるプロバイオティクス又は非プロバイオティクスであることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項14】
請求項13記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記微生物が10〜1010CFU/g以上接種され、消費される最終製品内に10〜10CFU/gの範囲の数で含まれるように、該微生物が配合されていることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項15】
請求項13又は請求項14記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、「GRAS」である微生物が、タンパク質、多糖類、脂質又は親水コロイドからなる被覆物質の少なくとも1つでカプセル化されたプロバイオティクス又は非プロバイオティクスであることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項16】
請求項15記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスにおいて、前記カプセルが、マクロ、マイクロ又はナノの寸法であることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクス。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項記載の前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法において、前発酵工程、カプセル化工程及び、その後の食品成分の取り込み工程のような単位操作により得られることを特徴とする前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法において、前記前発酵は、タンパク質、多糖類、脂質、又は親水コロイドによって被覆されたマクロカプセル中の固定化された微生物細胞を有する反応器内に、前記穀類の懸濁液を配置することによって得ることを特徴とする前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法。
【請求項19】
請求項17記載の前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法において、前記カプセル化は、例えば、乾燥、噴霧、エマルション、又は、コアセルベーションによって達成されることを特徴とする前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法。
【請求項20】
請求項17記載の前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法において、前記食品成分の取り込みは、前記カプセル化及び前発酵段階の後に行われることを特徴とする前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項記載の前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法において、前記最終製品化処理は、前記シンバイオティクスを、未乾燥状態、凍結乾燥状態又は、凍結状態で提供することにより得られることを特徴とする前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法。
【請求項22】
請求項21記載の前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法において、前記未乾燥状態のマトリクスは、ゲル又は加工成形品の状態であることを特徴とする前発酵プレバイオティクスマトリクスの製造方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスの使用方法において、食品産業、畜産業、医薬産業又は、化粧品産業において用いることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクスの使用方法。
【請求項24】
請求項23記載の前発酵シンバイオティクスマトリクスの使用方法において、例えば、これに限るものではないが、飲料、アイスクリーム又は、栄養補助食品等の新しい食物製品の製造に用いることを特徴とする前発酵シンバイオティクスマトリクスの使用方法。


【公表番号】特表2010−505823(P2010−505823A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531338(P2009−531338)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/PT2007/000042
【国際公開番号】WO2008/041876
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509096278)エスコーラ スペリール デ ビオテクノロジア (1)
【氏名又は名称原語表記】ESCOLA SUPERIOR DE BIOTECNOLOGIA
【出願人】(509096289)
【氏名又は名称原語表記】PATRICIO DE OLIVEIRA FERNANDES INACIO, Joana Mafalda
【出願人】(509096290)
【氏名又は名称原語表記】MOREIRA DA COSTA FRANCO, Maria Isabel
【Fターム(参考)】