説明

カメラ

【課題】折り曲げ光学系の移動レンズ群を案内するガイド軸の配置方法を改良し、さらなる小型、薄型化を可能にしたカメラを提供する。
【解決手段】像面側光軸O2の移動レンズ群のガイド軸16を、屈曲光学部であるミラー6よりもカメラ後方側に配置し、物体側光軸O1に沿った方向に移動するカム筒13と直進筒15と、像面側光軸O2に沿った方向に移動する第3群レンズL3と第3レンズ枠3を、重複した移動領域である第1の重複領域31aを有するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り曲げ光学系を採用したレンズ鏡筒を備えたカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラのレンズ鏡筒は、カメラの奥行き方向の厚さを薄くするため、ミラー等の屈曲光学部を用いて、光軸を折り曲げる折り曲げ光学系を備えていた。
また、ズームレンズを使用したカメラの小型化を図るために、複数のレンズ群より構成されるズームレンズ系において、ズーミングの際に移動するレンズ群とレンズ群の間に、光軸を折り曲げるミラーを配置したズームレンズ系、レンズ鏡筒が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかし、従来の折り曲げ光学系を採用したカメラは、対物レンズ群からミラー等までの距離により、カメラの奥行き方向の寸法が拘束され、カメラの小型化には限界があった。
また、上述したように、この種のカメラは、ミラー等を備えているため、これの収納スペースが必要であり、この収納スペースがカメラのさらなる小型化を困難にしていた。
さらに、このミラー等の両側に配置された、物体側のレンズ群と像面側のレンズ群は、それらの光軸に沿った距離が大きくなるため、撮影光学系の設計は、その自由度が拘束されていた。
【特許文献1】特開2000−187159号公報
【特許文献2】特開平11−258678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、折り曲げ光学系の移動レンズ群を案内するガイド軸の配置方法を改良し、さらなる小型、薄型化を可能にしたカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、物体側の光軸である第1の光軸(O1)を、像面側の光軸である第2の光軸(O2)に折り曲げる屈曲光学部(6)と、前記第1の光軸(O1)に沿った方向に少なくとも1つの第1の移動レンズ群(L1,L2)を移動する第1の移動部(1,2,12,13,15)と、前記第2の光軸(O2)に沿った方向に少なくとも1つの第2の移動レンズ群(L3,L4,L5)を移動する第2の移動部(33,34,35)と、前記第2の移動レンズ群(L3,L4,L5)を前記第2の光軸(O2)に沿った方向に案内するガイド部(16,17)とを備え、前記第1の移動部(31)と前記第2の移動部(33)は、重複した移動領域である重複領域(31a)を有すること、前記ガイド部(16)の一部は、前記第1の移動部(31)の移動領域よりも、前記第1の光軸(O1)に沿った方向の物体側と反対方向の側に配置されていること、を特徴とするカメラである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカメラにおいて、前記ガイド部(16)の一部は、前記屈曲光学部(6)よりも、前記第1の光軸(O1)に沿った方向の物体側と反対方向の側に配置されていること、を特徴とするカメラである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のカメラにおいて、前記第1の移動部(O1)は、カメラ筐体(11)に固定された固定筒(12)を有すること、前記固定筒(12)は、その内側に前記第1の光軸(O1)の方向に沿って移動可能に支持された移動筒(13)を有すること、前記ガイド部(16)の一部(16a)は、前記移動筒(13)の内側に配置されていること、を特徴とするカメラである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明のカメラは、第1の光軸に沿った方向に移動する第1の移動部(例えば、カム筒等)と、第2の光軸に沿った方向に移動する第2の移動部(例えば、レンズ枠等)は、重複した移動領域である重複領域を有している。そして、第2の移動レンズ群を案内するガイド部(例えば、ガイド軸)の一部は、第1の移動部の移動領域よりも、第1の光軸に沿った方向の物体側と反対方向の側に配置されている。このため、沈胴式のレンズ鏡筒や、光学ズーム機構を備えたレンズ鏡筒をカメラ筐体に収納する十分なスペースを確保できる。したがって、屈曲光学部(例えば、ミラー等)の収容スペースが必要でも、カメラの第1の光軸に沿った方向(例えば、カメラの奥行き方向)の大ききを小さくすることができる。
また、第2の移動部をミラー等の近くまで移動し、レンズ鏡筒内のスペースを有効に利用することができるので、第2の光軸に沿った方向(例えば、カメラの鉛直方向)の大きさを小さくすることができる。
さらに、光軸を折り曲げるミラー等の両側に配置された、物体側の移動レンズ群と像面側の移動レンズ群の光軸に沿った距離を、小さく設定することができ、撮影光学系の設計の自由度を広げることができる。
【0008】
(2)本発明のカメラは、ガイド部の一部は、屈曲光学部よりも第1の光軸に沿った方向の物体側と反対方向の側に配置されているので、第2の移動部をミラー等のさらに近くまで移動できるので、上述した(1)のカメラをより小型にすることができる。また、撮影光学系の設計の自由度をより広げることができる。
(3)本発明のカメラは、第1の移動部は、カメラ筐体に固定された固定筒と、その内側に第1の光軸の方向に沿って移動可能な移動筒を有し、ガイド部の一部は、移動筒の内側に配置されているので、沈胴式のレンズ鏡筒を採用することによりカメラを小型にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、折り曲げ光学系を採用したレンズ鏡筒を備えたカメラを、さらに小型にするという目的を、像面側光軸の移動レンズ群のガイド軸を、屈曲光学部であるミラーよりもカメラ後方側に配置し、物体側光軸に沿った方向に移動するカム筒、直進筒と、像面側光軸に沿った方向に移動する第3群レンズと第3レンズ枠を、重複した移動領域である第1の重複領域を有するように配置することによって実現した。
【実施例】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1、図2は、本発明によるカメラの実施例を示す図であって、図1は、沈胴時(対物レンズ等をカメラ筐体内に収納した時)の状態を示す図、図2は、撮影時(対物レンズ等を物体側に繰り出した時)の状態を示す図である。
また、図1(a)は、沈胴時のカメラの縦断面を示す図、図1(b)は、カメラを正面からみたときの内部構造を模式的に示す図である。
図2(a)は、撮影時の縦断面を示す図、図2(b)は、図2(a)のB−B部矢視断面を示す図である。
なお、以下の説明においては、カメラの正位置撮影時を基準に上下、前後等を説明する。正位置撮影時とは、対物レンズの光軸を水平方向に向け、横長の画像を撮影するときの状態をいうものとし、また、カメラ本体の対物レンズ側の面を前面とし、その反対側を背面とする。
本実施例のカメラは、図1(a)に示すように、筐体11内に、折り曲げ光学系を備えた5群構成のレンズ鏡筒が収容されている。
【0011】
このレンズ鏡筒は、ミラー6と、第1固定筒12と、カム筒13と、直進筒15と、第1固定筒12と直交する方向に配置された第2固定筒14と、ガイド軸16,17等を備えている。
ミラー6は、屈曲光学部であり、撮影光学系の物体側光軸(第1の光軸)O1を、像面側光軸(第2の光軸)O2へと90°折り曲げている。本実施例のカメラは、物体側光軸O1の方向をカメラの前後方向、像面側光軸O2の方向をカメラの鉛直方向となるように、ミラー6を配置している。
第1固定筒12は、その内側に、物体側光軸O1上に、物体側から順に、第1群レンズL1(対物レンズ群)、第2群レンズL2が配置されている。また、第2固定筒14は、その内側に、像面側光軸O2上に、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5が順に配置されている。
【0012】
第1群レンズL1、第2群レンズL2は、物体側光軸O1に沿った方向に移動する移動レンズ群である。第1群レンズL1、第2群レンズL2は、第1レンズ枠1、第2レンズ枠2にそれぞれ保持されている。これらレンズ枠は、カム筒13とカム結合し、また、カム筒13の内部に配置された直進筒15に物体側光軸O1回りの回転止めをされている。このため、カム筒13が物体光軸O1回りに回転すると、第1群レンズL1、第2群レンズL2は、物体光軸O1に沿った方向に移動する。これにより、沈胴式のカメラは、第1群レンズL1、第2群レンズL2等の繰り出しを行い、光学ズーム機構を搭載したカメラは、撮影光学系の焦点距離の変更を行っている。
【0013】
カム筒13は、第1固定筒12の内側に配置され、駆動部であるズームモータ21により、ギア列21aを介して物体側光軸O1を中心として回転される。これにより、カム筒13は、その内部に収容した直進筒15と一緒に、物体側光軸O1に沿った方向に移動する。カム筒13と直進筒15は、物体側光軸O1に沿った方向に移動する移動筒である。
【0014】
このように、第1固定筒12、カム筒13、直進筒15、第1レンズ枠1、第2レンズ枠2等は、第1群レンズL1と第2群レンズL2を、物体側光軸O1の沿った方向に移動する機構を備えた移動部(第1の移動部)である。本実施例では、物体側光軸O1に沿った方向に移動可能な部材と、像面側光軸O2に沿った方向に移動可能な部材の移動スペースを問題とするので、カム筒13と直進筒15を移動部31として以下説明をする。
【0015】
第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5は、像面側光軸O2に沿った方向に移動する移動レンズ群である。第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5は、第3レンズ枠3、第4レンズ枠4、第5レンズ枠5にそれぞれ保持され、これらのレンズ枠が、第2固定筒14の内側に、移動可能に支持されている。
図2(b)に示すように、第4レンズ枠4には、像面側光軸O2と平行に、カメラ後方の範囲に通孔4aと、カメラ前方の範囲に2つのリブ4b,4cが設けられている。第4レンズ枠4は、この通孔4aに後述するガイド軸16が挿入され、また、2つのリブ4b,4cの間に後述するガイド軸17が挟まれるように配置され、これらガイド軸16,17によって、支持されている。また、第4レンズ枠4は、これらガイド軸16、17によって像面側光軸O2に垂直な面における位置決め、及び、回転止めをされている。同様に、第3レンズ枠3、第5レンズ枠5は、ガイド軸16、17によって支持され、像面側光軸O2に垂直な面における位置決め、及び、回転止めをされている。
【0016】
ガイド軸16,17は、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5を像面側光軸O2に沿った方向に、案内するガイド部である。
ガイド軸16は、ミラー6よりもカメラ後方側(第1の光軸O1に沿った方向の物体側と反対方向の側)に、像面側光軸O2と平行に配置され、第2固定筒14の内側に固定されている。ガイド軸16の一部であるカメラ上方向の先端部16aは、移動部33の移動範囲を満足するために、カメラ正面からみた位置関係では、カム筒13の内側に配置されている(図1(b)参照)。
ガイド軸17は、第2固定筒14の内側のカメラ前方に、像面側光軸O2と平行に設けられている。ガイド軸17は、カム筒13の移動範囲を確保するために、カム筒13のカメラ下方の外側に設けられている。
【0017】
そして、第3レンズ枠3、第4レンズ枠4、第5レンズ枠5は、駆動部であるステッピングモータ23,24,25によって、それぞれ像面側光軸O2に沿った方向に移動される。
【0018】
第3レンズ枠3、第4レンズ枠4、第5レンズ枠5等は、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5を、それぞれ像面側光軸O2に沿った方向に移動する機構を備えた移動部(第2の移動部)である。本実施例では、第3群レンズL3と第3レンズ枠3、第4群レンズL4と第4レンズ枠4、第5群レンズL5と第5レンズ枠5をそれぞれ移動部33,34,35とする。
【0019】
また、第2固定筒14には、第5群レンズL5よりも、像面側に、LPF(ローパスフィルタ)7、CCD(電荷結合素子)8が順に固定されている。
【0020】
フォトインタラプタPI1〜PI4は、第1群レンズL1〜第5群レンズL5のリセット位置(所定の位置)を検出する検出部である。第1群レンズL1、第2群レンズL2は、直進筒15に設けられた遮蔽羽15aが、フォトインタラプタPI1を横切ることにより、リセット位置が検出される。同様に、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5は、第3レンズ枠3、第4レンズ枠4、第5レンズ枠5の遮蔽羽が、それぞれフォトインタラプタPI2,PI3,PI4を横切ることによって、リセット位置が検出される。
【0021】
本実施例のカメラのレンズ鏡筒は、沈胴状態にするときは、第1群レンズL1、第2群レンズL2等は、筐体11の内側に収納される。第3群レンズL3、第4群レンズL4、第4群レンズL5は、ステッピングモータ23,24,25の駆動力により像面側に移動され、このとき、第3群レンズL3は、カム筒13より外側に、像面側光軸O2に沿った方向に移動する(図1参照)。
撮影状態にするときには、第1群レンズL1、第2群レンズL2等は、カメラ前方向に繰り出される。また、各レンズ群の間隔は、大きくされ、第3群レンズL3は、カム筒13の内側まで入り込んでいる(図2参照)。
【0022】
ここで、図1(a)、図2(a)を比較すると物体側光軸O1の移動部31(カム筒13と直進筒15)と、像面側光軸O2の移動部33(第3群レンズL3と第3レンズ枠3)は、重複した移動領域(以下「第1の重複領域31a」という。)を有している。
本実施例によるカメラは、撮影時の状態から沈胴させる場合、第3レンズ枠3がカム筒13に入っている状態(図2(a)の状態)で、移動部31を筐体11に収納すると、第1の重複領域31aを有しているため、移動部31が移動部33に衝突してしまう。
【0023】
図3は、移動部33(第3群レンズL3と第3レンズ枠3)、移動部34(第4群レンズL4と第4レンズ枠4)、移動部35(第5群レンズL5と第5レンズ枠5)の外形を模式的に示す図である。
図3(a)は、沈胴時、図3(b)は、撮影時の移動部33,34,35の位置をそれぞれ示している。図3(a)と図3(b)とを比較すると、隣り合う移動部である移動部33と移動部34、移動部34と移動部35は、それぞれ重複した移動領域(以下「第2の重複領域33a,34a」という。)を有している。
撮影時の状態から沈胴させるときに、移動部34より先に移動部33を移動させると、第2の重複領域33aを有するため、移動部33が移動部34に衝突してしまう。移動部34と移動部35においても、第2の重複領域34aを有するため同様である。
【0024】
そこで、本実施例のカメラは、制御部であるCPU18(中央処理演算装置)を備え、ズームモータ21、ステッピングモータ23,24,25を制御している。
図4は、本実施例によるカメラのレンズ鏡筒の各モータの制御系を示すブロック図である。
図4に示すように、電源SW18aからの入力、及び、フォトインタラプタPI1〜PI4からの検出は、信号処理回路18bで処理され、CPU18へ出力される。CPU18は、信号処理回路18bからの入力に基づき、各モータを駆動するか否か判定し、駆動回路18cへ命令する。駆動回路18cは、ズームモータ21、ステッピングモータ23,24,25へ信号を出力し、各モータを駆動する。
【0025】
また、CPU18は、以下のように判定をし、ズームモータ21、ステッピングモータ23,24,25を制御、駆動する。
図5は、本実施例によるカメラの移動部等の移動シーケンスを示す流れ図である。
図5(a)に示すように、沈胴するときは、まず、電源OFF信号が入力されると(S101)、CPU18の命令により、像面に一番近い第5群のステッピングモータ25を駆動し(S102)、移動部35を像面側に移動する。第5レンズ枠5によって、フォトインタラプタPI4の信号を検出した場合には(S103;yes)、移動部35が第2の重複領域34aに対して所定の位置にあると判定し、第4群のステッピングモータ24を駆動し(S104)、移動部34を第2の重複領域34aに、像面側に移動する。
【0026】
同様に、フォトインタラプタPI3の信号が検出された場合には(S105;yes)、移動部34が第2の重複領域33aに対して所定の位置にあると判定し、第3群のステッピングモータ23を駆動し(S106)、移動部33を第2の重複領域33aに、像面側に移動する。フォトインタラプタPI2の信号が検出されたときに(S107;yes)、移動部33が第1の重複領域31aに対して所定の位置にあると判定し、ズームモータ21を駆動して(S108)、移動部31を第1の重複領域31aに移動する。
移動部31は、物体側光軸O1に沿った方向に一緒に移動する遮蔽羽15aが、フォトインタラプタPI1の信号を切るまで移動し、フォトインタラプタPI1の信号を検出したときに(S109;yes)、沈胴状態になったと見なして、カメラの電源をオフにする(S110)。
【0027】
次に、沈胴時の状態から撮影時の状態にする場合、カム筒13を沈胴時の位置(図1(a)に示す位置)にしたまま、移動部33をミラー6側へ移動させると、第1の重複領域31aを有しているため、移動部33が移動部31に衝突してしまう。
【0028】
また、像面側光軸O2に沿った方向に移動する移動部33,34,35にあっては、沈胴するときと同様に、第2の重複領域33a,34aを有するため、隣り合う移動部が衝突してしまう(図3参照)。
そこで、本実施例のカメラは、CPU18が以下の制御を行なう。
【0029】
図5(b)に示すように、電源ON信号が入力されると(S201)、CPU18の命令によりズームモータ21を駆動し(S202)、移動部31を物体側に移動する。フォトインタラプタPI1の信号が検出されない場合には(S203;no)、移動部31が第1の重複領域31aに対して所定の位置にあると判定し、第3群のステッピングモータ23を駆動し(S204)、移動部33を第1の重複領域31aに、物体側に移動する。フォトインタラプタPI2の信号が検出されない場合には(S205;no)、移動部33が第2の重複領域33aに対して所定の位置にあると判定し、第4群のステッピングモータ24を駆動し(S206)、移動部34を第2の重複領域33aに、物体側に移動する。
【0030】
同様に、フォトインタラプタPI3の信号が検出されない場合には(S207;no)、移動部34が第2の重複領域34aに対して所定の位置にあると判定し、第5群のステッピングモータ25を駆動し(S208)、移動部35を第2の重複領域34aに、物体側に移動し、フォトインタラプタPI4の信号が検出されない場合には(S209;no)、各レンズ群の移動が終了し、撮影が可能な状態となる(S210)。
【0031】
以上説明したように、本実施例のカメラは、物体側光軸O1に沿った移動部(第1の移動部)31と、像面側光軸O2に沿った移動部(第2の移動部)33を、第1の重複領域31aを有するように備え、撮影時には、第3群レンズL3をカム筒13の内側に配置し、カム筒13等をカメラ筐体11から繰り出し、また、沈胴時には、移動部33をカム筒13の外側に配置し、カム筒13等を筐体11に収納している。このため、カメラは、ミラー6等の収納スペースを有していても、沈胴時のカメラの奥行き方向(物体側光軸O1に沿った方向)の寸法を小さくすることができる。第1群レンズL1(対物レンズ群)の径や、第3群レンズL3(像面側の最初の移動レンズ群)の径が大きい光学ズームを採用したカメラにおいても、前述した構造を採用することにより、各レンズ群の径に制約されず、カメラの小型化が可能である。
【0032】
さらに、本実施例のカメラは、沈胴時には、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5の各レンズ群間の間隔を小さくし、撮影時には、第3群レンズL3をカム筒13の内側に移動して、各レンズ群の間隔を大きくし、レンズ鏡筒の内側のスペースを有効に利用している。このため、カメラの鉛直方向(像面側光軸O2に沿った方向)の大きさを小さくすることができる。この方向の大きさにおいても、第1群レンズL1(対物レンズ群)の径が大きい場合でも、撮影時に像面側の第3群レンズL3をカム筒13の内部に深く入り込ませることにより、カメラを小型にすることができる。
【0033】
さらにまた、撮影時には、第3群レンズL3をミラー6の近くまで移動させることができるので、ミラー6の両側に配置された、像面側の第3群レンズL3と物体側の第2群レンズL2との光軸に沿った距離を小さく設定することができる。これにより、撮影光学系の設計の自由度を広げることができる。
【0034】
くわえて、移動部31と移動部33は、重複した移動領域である第1の重複領域31aを有していても、フォトインタラプタPI1(第1の検出部)、フォトインタラプタPI2(第2の検出部)により、第1の重複領域31aに対して所定の位置にあることを検出され、ズームモータ21(第1の駆動部)、ステッピングモータ23(第2の駆動部)によって移動される。そのため、本実施例のカメラは、CPU18の制御により、移動部31と移動部33を衝突させることなく移動でき、沈胴式のレンズ鏡筒を採用し、カメラを小型にすることができる。
【0035】
そのうえ、像面側光軸O2に沿った方向に移動する移動部33,34,35は、重複した移動領域である第2の重複領域33a,34aを有していても、フォトインタラプタPI2,PI3,PI4により、第2の重複領域33a,34aに対して所定の位置にあることをそれぞれ検出され、ステッピングモータ23,24,25によりそれぞれ移動される。そして、カメラを撮影状態から沈胴状態にするときは、像面側の移動部から順に移動させ、沈胴状態から撮影状態にするときは、物体側の移動部から順に移動させている。そのため、本実施例のカメラは、CPU18の制御により、移動部33,34,35を衝突させることなく移動することができる。
【0036】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)本実施例において、光軸を折り曲げる屈曲光学部にミラー6を用いた例を示したが、これに限定されない。例えば、プリズム等を用いて光軸を折り曲げてもよい。
【0037】
(2)本実施例において、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5を像面側光軸O2に沿った方向に案内するガイド部は、ガイド軸16,17である例を示したが、これに限定されない。例えば、第2固定筒14に像面側光軸O2に沿った方向にガイド孔を、第3レンズ枠3、第4レンズ枠4、第5レンズ枠5にそれぞれ係合ピンを設け、これらをガイド孔に挿入することにより、第3群レンズL3、第4群レンズL4、第5群レンズL5を像面側光軸O2に沿った方向に案内してもよい。
【0038】
(3)本実施例において、カメラは、像面側光軸O2の方向をカメラの鉛直方向としているが、これに限定されない。例えば、像面側光軸O2の方向をカメラの左右方向としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例によるカメラの沈胴時の状態を示す図である。
【図2】本実施例によるカメラの撮影時の状態を示す図である。
【図3】本実施例によるカメラの移動部33,34,35の外形を模式的に示す図である。
【図4】本実施例によるカメラの各モータの制御系を示すブロック図である。
【図5】本実施例によるカメラのレンズ鏡筒の移動シーケンスを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0040】
1 第1レンズ枠
2 第2レンズ枠
3 第3レンズ枠
4 第4レンズ枠
4a 通孔
4b,4c リブ
5 第5レンズ枠
6 ミラー
7 LPF(ローパスフィルタ)
8 CCD(電荷結合素子)
11 筐体
12 第1固定筒
13 カム筒
14 第2固定筒
15 直進筒
15a 遮蔽羽
16,17 ガイド軸
16a 先端部
18 CPU
18a 電源SW
18b 信号処理回路
18c 駆動回路
21 ズームモータ
21a ギア列
23,24,25 ステッピングモータ
31,33,34,35 移動部
31a 第1の重複領域
33a,34a 第2の重複領域
L1 第1群レンズ
L2 第2群レンズ
L3 第3群レンズ
L4 第4群レンズ
L5 第5群レンズ
PI1〜PI4 フォトインタラプタ
O1 物体側光軸(第1の光軸)
O2 像面側光軸(第2の光軸)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側の光軸である第1の光軸を、像面側の光軸である第2の光軸に折り曲げる屈曲光学部と、
前記第1の光軸に沿った方向に少なくとも1つの第1の移動レンズ群を移動する第1の移動部と、
前記第2の光軸に沿った方向に少なくとも1つの第2の移動レンズ群を移動する第2の移動部と、
前記第2の移動レンズ群を前記第2の光軸に沿った方向に案内するガイド部とを備え、
前記第1の移動部と前記第2の移動部は、重複した移動領域である重複領域を有すること、
前記ガイド部の一部は、前記第1の移動部の移動領域よりも、前記第1の光軸に沿った方向の物体側と反対方向の側に配置されていること、
を特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記ガイド部の一部は、前記屈曲光学部よりも、前記第1の光軸に沿った方向の物体側と反対方向の側に配置されていること、
を特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカメラにおいて、
前記第1の移動部は、カメラ筐体に固定された固定筒を有すること、
前記固定筒は、その内側に前記第1の光軸の方向に沿って移動可能に支持された移動筒を有すること、
前記ガイド部の一部は、前記移動筒の内側に配置されていること、
を特徴とするカメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−91371(P2006−91371A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276097(P2004−276097)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】