説明

カラーフィルタを備える固体撮像素子とその製造方法

【課題】感光性材料を含まない色素膜をパターン化することによるカラーフィルタの薄膜化を簡便に実現する。
【解決手段】カラー固体撮像素子の製造方法は、基板101上に配列された光電変換素子102と、光電変換素子102上にそれぞれ形成されたカラーフィルタ111とを備えるカラー固体撮像素子の製造方法において、カラーフィルタ111を形成する工程は、光電変換素子102が形成された基板101上に感光性樹脂層109を形成する工程と、感光性樹脂層109上に色素膜120を形成する工程と、色素膜120を通して感光性樹脂層109の露光を行なうことにより、感光性樹脂層109のうちの基板101上に残すパターン109aを確定する工程と、現像により、パターン109a以外の感光性樹脂層をその上に位置する色素膜と共に除去し、それによって、感光性樹脂層及び色素膜の積層されたカラーフィルタ111を得る工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体撮像素子及びその製造方法に関し、特に、固体撮像素子を構成するカラーフィルタの構造及び該カラーフィルタの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、デジタルカメラ及びビデオカメラ等に用いられる固体撮像素子は、撮影される画像の解像度を高めることを目的として、高画素化及び微細化が進んでいる。今後も、カメラの高解像度化への更なる要求に伴い、こうした高画素化及び微細化は更に加速されることが予想される。
【0003】
図5に、従来のカラー固体撮像素子10の構成を部分的な断面図として示す。カラー固体撮像素子10は、シリコンからなる半導体基板11を用いて形成されている。半導体基板11の表面には、入射光に応じて電荷を発生するための複数の光電変換素子12がマトリクス状に配列して設けられている。通常、一つの画素は一つの光電変換素子12を備え、図5には、カラー固体撮像素子10のほぼ画素2つに相当する範囲が示されていることなる。
【0004】
光電変換素子12を覆うように、半導体基板11上には絶縁膜13が形成されている。また、光電変換素子12上に、絶縁膜13を介して、光電変換素子12に対する入射光の反射を抑制するための反射防止膜14が形成されている。半導体基板11上における光電変換素子12の両側の領域には、各光電変換素子12からの電荷の読み出し及び電荷の転送のための電荷転送電極15が絶縁膜13を介して形成されている。更に、電荷転送電極15を覆うように、電荷転送電極に光が入射するのを遮る遮光膜16が形成されていると共に、半導体基板11における電荷転送電極15の下方には、電荷転送のための電荷転送路17が設けられている。
【0005】
更に、反射防止膜14及び遮光膜16等を覆って表面を平坦化するための透明な平坦化膜18が形成されている。更にその上には、個々の光電変換素子12に対応して個別の色のカラーフィルタ19a及びカラーフィルタ19bが形成されている。図5においては2つだけ示しているが、カラーフィルタの色の組み合わせとしては、例えば、赤、青及び緑の3色を用いる。
【0006】
また、図示はしていないが、カラーフィルタ19a及び19b等の上にはマイクロレンズが形成され、光電変換素子12に対する集光効率を向上するようになっている。
【0007】
ここで、カラー固体撮像素子10において、画素の微細化が進んだ場合、これに応じて光電変換素子12からマイクロレンズまでの厚さを小さくすることが必要である。つまり、前記の厚さが同じままで画素の微細化だけが進んだとすると、光電変換素子上に形成されている層について、光電変換素子の寸法に対するアスペクト比が高くなる。この結果、入射光をマイクロレンズによって光電変換素子に集光することが難しくなり、固体撮像素子の感度低下が生じる。そこで、このようなことを防ぐために、固体撮像素子の微細化に伴って光電変換素子上の層の厚さを薄くする必要が生じる。
【0008】
従来のカラー固体撮像素子10において、光電変換素子12上の層は平坦化層18及びカラーフィルタ19a及び19b等によって構成されており、その厚みは2μm程度となっている。このうち、カラーフィルタ19a及び19bが占める割合は20〜40%であり、光電変換素子12上の層の厚さを薄くするために、カラーフィルタ19a及び19bを薄膜化することは効果的である。
【0009】
カラーフィルタは、従来、色素を含有する感光性樹脂をフォトリソグラフィによってパターン化することにより形成していた。しかし、この手法の場合、フォトリソグラフィを行なうために、所定量の感光剤及び硬化剤が感光性樹脂に含まれている必要がある。また、感光性樹脂としての性能を維持するために、感光性樹脂中の色素の含有量は制限される。したがって、要求される分光特性を得るためには一定の厚さが必要であり、従来のカラーフィルタの薄膜化には限界がある。
【0010】
そこで、感光性を持たない色素材料を蒸着させて色素蒸着膜を形成し、この色素蒸着膜をパターン化してカラーフィルタとするという手法が提案されている。つまり、平坦化層の上に、例えば赤、青及び緑の3種類の色素が蒸着されることによって、カラーフィルタが形成されている。
【0011】
このようなカラーフィルタを形成するためには、具体的には、リフトオフ工法を用いる特許文献1の方法及び色素膜をドライエッチングによりパターン化する特許文献2の方法等が知られている。
【特許文献1】特開平4−336503号公報
【特許文献2】特開2002−305295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、色素材料の蒸着によってカラーフィルタを形成する従来の方法は、製造コストが高いという問題があった。
【0013】
例えば、特許文献1の方法は、図6(a)〜(e)に示すようなものである。
【0014】
まず、図6(a)のように、基板30上にフォトレジスト膜31を塗布する。次に、図6(b)のように、所定のパターンを有するフォトマスク32を用いて紫外線33の照射により露光を行なう。これにより、フォトレジスト膜31は、紫外線を照射されていない部分であるレジストパターン31aと、紫外線照射を受けた感光部分31bとに分かれる。次に、図6(c)のように、現像及びリンスの処理により感光部分31bが除かれ、基板30上にレジストパターン31aが残された構造となる。ここに、図6(d)のように顔料の蒸着を行なうと、レジストパターン31a上及び基板30上にそれぞれ色素膜34が形成される。この後、図6(e)のように、レジストパターン31aを剥離することにより、レジストパターン31a上の色素膜34が同時に除去され、基板30上にパターン化された色素膜34aからなるカラーフィルタを得ることができる。
【0015】
また、特許文献2の方法は、図7(a)〜(f)に示すようなものである。
【0016】
まず、図7(a)のように、基板50上に蒸着によって色素膜51を形成する。次に、図7(b)のように、色素膜51上に、フォトレジスト膜52を塗布して成膜する。次に、図7(c)のように、所定のパターンを有するフォトマスク53を用いて紫外線54の照射により露光を行なう。これにより、フォトレジスト膜52は、紫外線を照射されていない部分であるレジストパターン52aと、紫外線照射を受けた感光部分52bとに分かれる。次に、現像を行なうことにより、図7(d)に示すように、感光部分52bが除去されて、色素膜51上にレジストパターン52aが形成された構造となる。次に、レジストパターン52aをマスクとしてドライエッチングを行なうことにより、図7(e)に示すように、レジストパターン52aが形成されていない部分の色素膜51を除去する。この後、図7(f)のようにレジストパターン52aを剥離すると、基板50上にパターン化された色素膜51aからなるカラーフィルタを得ることができる。
【0017】
以上のいずれの方法についても、所定の色のカラーフィルタを順に形成する。例えば、一色目の色素材料として緑の色素材料を蒸着してパターン化し、その後、順に赤の色素材料及び青の色素材料を用いて同様の工程を繰り返し、合わせて三度の工程により、緑、赤及び青のパターンを有するカラーフィルタを形成する。
【0018】
これらの方法は、いずれも工程数が多く煩雑であることから製造コストが高くなっており、低コスト化が課題となっていた。
【0019】
このような課題に鑑み、本発明の目的は、色素材料を主成分とする色素膜を含むカラーフィルタを有する固体撮像素子及びそのような固体撮像素子の簡便な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の目的を達成するため、本発明のカラー固体撮像素子の製造方法は、基板上に配列された光電変換素子と、光電変換素子上にそれぞれ形成されたカラーフィルタとを備えるカラー固体撮像素子の製造方法において、カラーフィルタを形成する工程は、光電変換素子が形成された基板上に感光性樹脂層を形成する工程(a)と、感光性樹脂層上に色素膜を形成する工程(b)と、色素膜を通して感光性樹脂層の露光を行なうことにより、感光性樹脂層のうちの基板上に残すパターンを確定する工程(c)と、現像により、パターン以外の感光性樹脂層をその上に位置する色素膜と共に除去し、それによって、感光性樹脂層及び色素膜の積層された前記カラーフィルタを得る工程(d)とを含む。
【0021】
本発明のカラー固体撮像素子の製造方法によると、色素膜がその上に形成されている感光性樹脂層について、露光及び現像により基板上に残すパターン以外の部分を除去してパターン化を行なう。これにより、色素膜についても、感光性樹脂層のパターン以外の部分が除去され、感光性樹脂層のパターンと同様にパターン化される。このようにして、色素膜が感光性樹脂層上に積層された構造のカラーフィルタを得ることができ、該カラーフィルタを備えるカラー固体撮像素子が製造される。
【0022】
つまり、フォトリソグラフィ法と同様にしてカラーフィルタを形成することができる。これは、従来の製造方法に比べて工程数が少なく簡便であり、製造コストについても低減される。
【0023】
また、感光剤及び硬化剤等を含む材料を用いる必要がないため、色素膜の薄膜化が実現する。更に、感光性樹脂層についても、露光によるパターン化が可能な膜厚であれば良いことから、レジストマスクとして使用する場合及びリフトオフ法に使用する場合等に比べて薄膜化することができる。これらのことから、カラーフィルタを薄膜化し、カラー固体撮像素子における光電変換素子上の層の膜厚を削減することができる。この結果、画素の微細化に伴う光電変換素子上の層の厚さを削減し、感度低下を防止することができる。
【0024】
また、分光特性は良好であるにもかかわらず分散性が悪いために、フォトレジスト用途には適さない色素が存在する。しかし、本発明の場合には、色素を感光性樹脂に分散させる必要が無いことからそのような色素も使用可能である。このため、用いる色素について選択の幅が広がり、より好ましい分光特性を得るための色素の組成を容易に設計できる。
【0025】
尚、色素膜は、感光性樹脂層上に色素材料を蒸着することにより形成される色素蒸着膜であることが好ましい。
【0026】
このようにすると、色素を主要な構成材料とする(感光剤及び硬化剤等を含まない)色素膜を形成し、カラーフィルタの薄膜化を具体的に実現することができる。尚、色素のみを蒸着することによって色素蒸着膜を設けるのであってもよい。
【0027】
また、色素蒸着膜は、現像に用いる現像液に可溶な第1の色素と、該現像液に不溶な第2の色素とを共蒸着させることにより形成されることが好ましい。
【0028】
このようにすると、工程(d)の現像を行なう際、第1の色素が現像液に溶出する。このため、現像液の色素蒸着膜に対する浸透性が高まり、感光性樹脂層のパターン化をより確実に行なうことができる。尚、現像液に可溶な第1の色素に代えて、現像液に可溶な透明材料を用いることも可能である。この場合にも、色素蒸着膜に透明材料が溶出し、感光性樹脂層の現像を確実にする効果が得られる。
【0029】
前記の目的を達成するため、本発明のカラー固体撮像素子は、基板上に配列された光電変換素子と、光電変換素子上にそれぞれ形成されたカラーフィルタとを備え、カラーフィルタは、色素膜及び感光性樹脂層を含む。
【0030】
本発明のカラー固体撮像素子によると、カラーフィルタは、色素を主要な構成材料とする(感光剤及び硬化剤等を含まない等)色素膜と、露光によるパターン化が可能なだけの厚さを有する感光性樹脂層とを含む構成とすることができる。このため、色素を含有する感光性樹脂層を用いる場合に比べて、カラーフィルタの厚さを薄くすることができる。この結果、光電変換素子上の膜厚が削減されるために入射光を効率的に光電変換素子に集光することができ、画素の微細化に伴う感度低下を回避することができる。ここで、色素膜は、色素のみからなっていても良い。
【0031】
尚、カラーフィルタは、感光性樹脂層上に色素膜が形成された構造を有していることが好ましい。
【0032】
このようにすると、先に説明したように、フォトリソグラフィ法を用いて簡便に形成することができ、製造コストについても低減される。
【0033】
また、色素膜は、現像液に可溶な第1の色素と現像液に不溶な第2の色素とを共蒸着することにより形成されることが好ましい。
【0034】
このような構成とすると、現像によるカラーフィルタのパターン化を確実に行なうことができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、カラー固体撮像素子が有するカラーフィルタについて、色素を主要な構成要素とする色素膜と従来よりも薄い感光性樹脂層とを用いて薄膜化が実現し、光電変換素子上の膜厚を薄くすることができる。このため、感度の向上(又は感度低下の回避)が実現する。また、このような構成のカラーフィルタをフォトリソグラフィ法により簡便に形成することができ、製造コストの低減も可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態に係るカラー固体撮像素子100及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1に、カラー固体撮像素子100の構成を要部の断面図として示す。カラー固体撮像素子100は、シリコンからなる半導体基板101を用いて形成されている。半導体基板101の表面には、入射光に応じて電荷を発生するための複数の光電変換素子102がマトリクス状に配列して設けられている。通常、一つの画素は一つの光電変換素子102を備え、図1には、ほぼ画素2つ(画素A及び画素B)に相当する範囲が示されていることなる。
【0038】
半導体基板101上には、光電変換素子102を覆う絶縁膜103が形成されている。また、光電変換素子102上に、絶縁膜103を介して、光電変換素子102に対する入射光の反射を抑制するための反射防止膜104が形成されている。また、半導体基板101における光電変換素子102の両側の領域には、各光電変換素子102からの電荷の読み出し及び読み出した電荷を転送するための電荷転送電極105が、絶縁膜103を介して形成されている。更に、電荷転送電極105を覆うように、電荷転送電極105に対して光が入射するのを遮る遮光膜106が形成されている。半導体基板101における電荷転送電極105の下方には、電荷転送のための電荷転送路107が設けられている。電荷転送路107は、図1に関し、紙面に直交する方向に延びている。
【0039】
更に、反射防止膜104及び遮光膜106等を覆って表面を平坦化するための透明な平坦化膜108が形成され、平坦化膜108上に、カラーフィルタ111が形成されている。また、図示はしてないが、カラーフィルタ111上には画素毎にマイクロレンズが形成され、光電変換素子102に対する集光効率を向上するようになっている。
【0040】
本実施形態のカラーフィルタ111は、感光性樹脂層109と、その上に画素毎に形成された色素膜110a(色素を表す黒丸の集合体として模式的に示している)又は色素膜110b(色素を表す白抜きの丸の集合体として示している)とが積層された構成である。図1においては、画素Aに対して色素膜110a、画素Bに対して色素膜110bが対応している。
【0041】
また、色素膜110a及び110bは、個々の画素に対して所定の一色のものが用いられ、平面的に配列されている。例えば、赤(R)、青(B)及び緑(G)の3色が用いられ、図2に示すパターンの繰り返しとして平面的に配列される。他の例としては、マゼンダ、シアン、黄色及び緑の4色が用いられる場合もある。しかし、本実施形態のカラー固体撮像素子100において実現する効果は、使用する色の組み合わせ及び配列には特に関係しない。そのため、図1は、画素Aには第一色目の色素膜110aが形成され、画素Bには第2色目の色素膜110bが形成されている様子を示している。第3色目の色の色素膜を更に用いることは当然可能である。
【0042】
ここで、本実施形態における色素膜110a及び色素膜110bは、いずれも色素材料を主要な構成要素としており、感光剤及び硬化剤を含まないため、色素を含む感光性樹脂によって形成するカラーフィルタに比べて薄膜化が可能である。また、感光性樹脂層109についても、フォトリソグラフィ法によるパターン化が可能な膜厚を有していれば良いため薄膜化が可能である。この結果、カラーフィルタ111の薄膜化が実現し、光電変換素子102上の層が薄膜化されるため、画素の微細化に伴う感度低下を回避することができる。尚、色素膜110a及び110bは、色素材料のみからなっていても良い。
【0043】
また、以下に説明するように、このような構造のカラー固体撮像素子100は、フォトリソグラフィ法を用いた簡便な方法により安価に製造することができる。
【0044】
図3(a)〜(f)は、図1に構造を示した本実施形態のカラー固体撮像素子100の製造工程を説明する要部の断面図であり、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0045】
まず、図3(a)には、カラー固体撮像素子100の製造が平坦化膜108の形成まで完了した状態を示している。つまり、半導体基板101上に、光電変換素子102、絶縁膜103、反射防止膜104、電荷転送電極105、遮光膜106、電荷転送経路107及び平坦化膜108の形成まで終了した状態である。このような構造は、従来と同様にして形成すればよい。また、平坦化膜108は、PSG(Phosphorous Silicon Glass)膜又はBPSG(Boron Phosphorous Silicon Glass)膜を用いて形成する。
【0046】
次に、図3(b)に示すように、平坦化膜108上に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト層である感光性樹脂層109を形成する。フォトレジスト層としては、ネガ型及びポジ型のいずれを使用することも可能であるが、ここではポジ型のものを用いた場合として説明する。
【0047】
次に、図3(c)に示すように、感光性樹脂層109上に、第一色目のパターン化前色素膜120を形成する。パターン化前色素膜120を成膜するには、方法の一例として色素蒸着法を用いることができる。例えば、第一色目の色素材料として緑色の色素材料を蒸着し、膜厚200nm〜600nmの色素蒸着膜としてパターン化前色素膜120を形成する。
【0048】
尚、第一色目の色素材料として、現像液に可溶な第1の色素121a(図3(c)において白抜きの三角形によって表され、例えば染料である)と、該現像液に不溶な色素121b(図3(c)において黒丸によって表され、例えば顔料である)とを共に用い、これら2つの色素を共蒸着することによってパターン化前色素膜120を形成している。ここで言う現像液とは、この後に感光性樹脂層109の現像(図3(e)及び(f)に示す)を行なう際に用いる現像液のことである。このように共蒸着を行なうことの効果については、後に説明する。
【0049】
次に、図3(d)に示すように、第一色目(例えば緑色)のカラーフィルタ用のパターンを有するフォトマスク122を用い、光123を照射して、パターン化前色素膜120を通して感光性樹脂層109の露光を行なう。これにより、感光性樹脂層109は、緑色のカラーフィルタのパターンを有する現像液不溶部109a(図3(d)における画素Aの部分)と、露光により現像液に可溶となった現像液可溶部109b(図3(d)における画素Bの部分)とに分けられる。
【0050】
次に、感光性樹脂層109(現像液不溶部109a及び現像液可溶部109b)の現像を行なう。この工程を図3(e)及び(f)に示す。
【0051】
先にも説明したように、感光性樹脂層109上に形成されているパターン化前色素膜120は、該現像工程に用いる現像液に対して可溶な第1の色素121aと、同じ現像液に対して不溶な第2の色素121bとを共蒸着して形成されている。そのため、現像工程において、第1の色素121aは現像液中に溶出する。このように第1の色素121aが溶出し、第2の色素121bが残った状態が図3(e)に示されている。これにより、パターン化前色素膜120に対する現像液の浸透性が向上し、感光性樹脂層109の現像を確実に行なうことができるようになる。
【0052】
この後、図3(f)に示すように、現像液可溶部109bが現像液に溶解して除かれ、同時に、現像液可溶部109b上に位置する部分のパターン化前色素膜120も除かれる。これにより、パターン化前色素膜120は第一色目(緑色)のパターンとしてパターン化され、画素Aにおいて色素膜110aとなる。
【0053】
以上のようにして、画素Aにおけるカラーフィルタ111が、感光性樹脂層109上に色素膜110aの積層された構造として形成される。
【0054】
但し、図3(e)においては第1の色素121aが完全に除去された場合を示しているが、これには限らない。第1の色素が一部のみ溶出し、パターン化前色素膜120内に残っている場合にも、パターン化前色素膜120に対する現像液の浸透性が向上して感光性樹脂層109の現像を確実にする効果は実現する。この場合、色素膜110aは、第1の色素121aと第2の色素121bとを共に含むことになる。結果として、第1の色素121aについてもカラーフィルタ111の分光特性に寄与する。この場合、第1の色素121aを、第2の色素121bと同系統の色又は分光特性を相補する色の色素とすることより、第1の色素121aが色素膜110a中に残っていることによる分光特性に対する影響を小さくすることができる。
【0055】
更に、現像液に可溶な第1の色素に代えて、現像液に可溶な透明材料を用いることも可能である。この場合には、パターン化前色素膜120中に透明材料が残っているか否かが分光特性に与える影響が小さい。
【0056】
この後、第2色目(例えば赤色)の色素材料を用い、画素Bにおけるカラーフィルタ111を形成する。この工程は、図3(b)〜(f)と同様である。つまり、感光性樹脂層を形成し、その上に現像液に可溶な色素及び同じ現像液に不溶な色素を共蒸着して第2色目の色素膜を形成する。この際、第2色目の色素膜についても膜厚200nm〜600nmの色素蒸着膜とすればよい。更に、色素膜を通して露光・現像を行ない、第2色目のパターンを有する第2色目の色素膜を形成する。これにより、画素Bにおいて、第2色目の色素膜110bが感光性樹脂層109上に積層された構造のカラーフィルタ111を形成することができる。
【0057】
更に、更に同様にして、第3色目(本実施形態においては青色)のカラーフィルタを形成する。図1及び図3(a)〜(f)においては画素A及び画素Bの2つのみ示しているが、カラー固体撮像素子100には、図2に平面パターンを示したとおり、第3色目の画素が存在する。そのため、やはり感光性樹脂層109上に第3色目の色素膜が積層された構成のカラーフィルタ111を設ける。膜厚等は、第一色目及び第2色目と同様にすればよい。
【0058】
尚、赤(R)、青(B)及び緑(G)の3色以外の色のカラーフィルタを用いる場合も、図3(a)〜(f)に説明したのと同様の工程を必要回数(マゼンダ、シアン、黄色及び緑の4色を用いるのであれば4回等)繰り返すことによって形成することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態のカラー固体撮像素子100が有するカラーフィルタ111は、それぞれの色のパターンを、フォトリソグラフィ法により形成することができる。カラーフィルタ111は、色素材料を主要な構成要素とするために薄膜化ができる色素膜110a又は110bと、パターン化に必要なだけの膜厚でよいことから薄膜化が可能な感光性樹脂層109との積層構造であり、全体としても薄膜化が実現している。これらのことから、画素の微細化によって光電変換素子102上における層のアスペクト比が高くなることと、その結果としての感度低下とを共に回避することができるカラーフィルタ111を簡便に且つ低コストに実現できる。
【0060】
尚、本実施形態においては色素膜110a及び110bの成膜方法としては、色素蒸着法を用いた。しかし、これに限るものではなく、スパッタ法、蒸着重合法、イオンプレーティング法、光化学気相成長法及びプラズマ重合法等を用いることもできる。
【0061】
また、カラー固体撮像装置100においては、感光性樹脂層109は無色である。しかし、着色された(つまり、色素材料を含む)感光性樹脂層とすることも可能である。このような例を、図4にカラー固体撮像素子100aとして示す。これは、感光性樹脂層として、画素Aには着色感光性樹脂層109xが備えられると共に、画素Bには着色感光性樹脂層109yが備えられていることを除き、図1のカラー固体撮像素子100と同様である。
【0062】
一般に、カラーフィルタとして、必要な分光特性を得るために、複数の色素を用いて発色させる場合がある。そこで、カラー固体撮像素子100aの場合のように、色素膜110a及び110bの下に、それぞれの色素膜の色素と相補的な着色のされた着色感光性樹脂層109x及び109yが設けられている構成とすることもできる。これにより、カラーフィルタ111の膜厚の増加を抑えながら、感光性樹脂層を分光特性の調整に利用することができる。着色された感光性樹脂層のみからなるカラーフィルタの場合に比べ、薄い着色によっても色素膜の色素に対する相補的な着色の効果は得られるため、このことからも着色による膜厚の増加は抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のカラー固体撮像素子及びその製造方法によると、カラーフィルタが薄膜化されていると共に製造が簡便且つ低コストであるため、画素の微細化による低感度化を回避することができ、高画素化したデジタルカメラ及びビデオカメラ等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るカラー固体撮像装置100の要部断面を示す図である。
【図2】図2は、カラー固体撮像装置100が備えるカラーフィルタ111について、各画素における色の平面配列を例示する図である。
【図3】図3(a)〜(f)は、カラー固体撮像装置100、特にそのカラーフィルタ111の製造方法を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る他のカラー固体撮像装置100aの要部断面を示す図である。
【図5】図5は、従来のカラー固体撮像装置10の要部断面を示す図である。
【図6】図6(a)〜(e)は、従来のカラー固体撮像装置の製造方法の一例を示す図である。
【図7】図7(a)〜(f)は、従来のカラー固体撮像装置の製造方法の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
100 カラー固体撮像装置
101 半導体基板
102 光電変換素子
103 絶縁膜
104 反射防止膜
105 電荷転送電極
106 遮光膜
107 電荷転送路
108 平坦化膜
109 感光性樹脂層
109a 現像液不溶部
109b 現像液可溶部
109x、109y 着色感光性樹脂層
110a、110b 色素膜
111 カラーフィルタ
120 パターン化前色素膜
121a 第1の色素
121b 第2の色素
122 フォトマスク
123 光
A、B 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配列された光電変換素子と、前記光電変換素子上にそれぞれ形成されたカラーフィルタとを備えるカラー固体撮像素子の製造方法において、
前記カラーフィルタを形成する工程は、
前記光電変換素子が形成された前記基板上に感光性樹脂層を形成する工程(a)と、
前記感光性樹脂層上に色素膜を形成する工程(b)と、
前記色素膜を通して前記感光性樹脂層の露光を行なうことにより、前記感光性樹脂層のうちの前記基板上に残すパターンを確定する工程(c)と、
現像により、前記パターン以外の前記感光性樹脂層をその上に位置する前記色素膜と共に除去し、それによって、前記感光性樹脂層及び前記色素膜の積層された前記カラーフィルタを得る工程(d)とを含むことを特徴とするカラー固体撮像素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記色素膜は、前記感光性樹脂層上に色素材料を蒸着することにより形成される色素蒸着膜であることを特徴とするカラー固体撮像素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記色素蒸着膜は、前記現像に用いる現像液に可溶な第1の色素と、前記現像液に不溶な第2の色素とを共蒸着させることにより形成されることを特徴とするカラー固体撮像素子の製造方法。
【請求項4】
基板上に配列された光電変換素子と、前記光電変換素子上にそれぞれ形成されたカラーフィルタとを備え、
前記カラーフィルタは、色素膜及び感光性樹脂層を含むことを特徴とするカラー固体撮像素子。
【請求項5】
請求項4において、
前記カラーフィルタは、前記感光性樹脂層上に前記色素膜が形成された構造を有していることを特徴とするカラー固体撮像素子。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記色素膜は、現像液に可溶な第1の色素と前記現像液に不溶な第2の色素とを共蒸着することにより形成されることを特徴とするカラー固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−235048(P2007−235048A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57903(P2006−57903)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】