説明

カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器

【課題】インクジェット法を用いて製造された耐溶剤性および耐候性に優れたカラーフィルターを提供する。また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供する。
【解決手段】カラーフィルター1は、カラーフィルターを平面視した場合において、着色部12における、着色部と相似形であり、着色部に対する相似比が0.90であり、かつ重心が着色部と同一の点にある領域を有効領域とし、基板11と略平行な面であって、基板からの距離が、着色膜121の平均厚さと同等である面を基準面としたとき、下記式(I)の関係を満足する着色部が設けられていることを特徴とするカラーフィルター。1.1≦T/T≦1.7・・・(I)(ただし、T[μm]は、有効領域の境界線上における基準面から樹脂層表面までの距離であり、T[μm]は、有効領域内における基準面から樹脂層表面までの最短距離である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層(着色部)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色層形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
ところで、このように、インクジェット法を用いたカラーフィルターの製造方法は、生産性に優れたものではあるが、インクジェットヘッドを用いて製造されたカラーフィルターは、フォトリソグラフィー法によって製造されたカラーフィルターと比較して明度、コントラスト比が劣る問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−2815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インクジェット法を用いて製造された明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルターは、基板上に、当該基板側から順に着色膜と樹脂層とを積層した積層体で構成される着色部を複数有するカラーフィルターであって、
前記着色膜は、着色剤と、前記着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体とを含む第1のインクを液滴吐出法により吐出して形成されたものであり、
前記樹脂層は、硬化性樹脂材料と、前記硬化性樹脂材料を分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含む第2のインクを液滴吐出法により吐出して形成されたものであり、
カラーフィルターを平面視した場合において、前記着色部における、前記着色部と相似形であり、前記着色部に対する相似比が0.90であり、かつ重心が前記着色部と同一の点にある領域を有効領域とし、
前記基板と略平行な面であって、前記基板からの距離が、前記着色膜の平均厚さと同等である面を基準面としたとき、下記式(I)の関係を満足する着色部が設けられていることを特徴とする。
1.1≦T/T≦1.7・・・ (I)
(ただし、T[μm]は、前記有効領域の境界線上における前記基準面から前記樹脂層表面までの距離であり、T[μm]は、前記有効領域内における前記基準面から前記樹脂層表面までの最短距離である。)
これにより、インクジェット法を用いて製造された明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを提供することができる。
【0007】
本発明のカラーフィルターでは、前記樹脂層の前記有効領域における表面形状は、凹面をなしていることが好ましい。
これにより、画素中央における平坦性を向上させることができ、カラーフィルターは、明度およびコントラスト比が特に優れたものとなる。
本発明のカラーフィルターでは、前記着色膜の平均厚さは、1.2μm以上2.3μm以下であることが好ましい。
これにより、カラーフィルターは、明度およびコントラスト比に特に優れたものとなる。
【0008】
本発明のカラーフィルターでは、前記樹脂層の平均厚さは、0.1μm以上1.2μm以下であることが好ましい。
これにより、カラーフィルターは、明度およびコントラスト比に優れるとともに、耐溶剤性および耐候性に特に優れたものとなる。
本発明のカラーフィルターでは、前記着色部の平均厚さは、1.5μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
これにより、カラーフィルターは、明度およびコントラスト比に優れるとともに、耐溶剤性および耐候性に特に優れたものとなる。
【0009】
本発明のカラーフィルターでは、前記硬化性樹脂材料は、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、
下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、を含むことが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

これにより、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0010】
本発明のカラーフィルターでは、前記第1の液性媒体は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0011】
本発明のカラーフィルターでは、前記第2の液性媒体は、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、耐溶剤性および耐光性を特に優れたものとし、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0012】
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、表示部に、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを備えた画像表示装置を提供することができる。
本発明の画像表示装置は、液晶パネルであることが好ましい。
これにより、表示部に、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを備えた画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、表示部に、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示すカラーフィルターの着色部の短辺方向における断面図である。
【図3】図1のカラーフィルターの一部を拡大した部分の平面図(a)および、該拡大した部分の短辺方向の断面図(b)および長辺方向の断面図(c)である。
【図4】カラーフィルターの製造方法の好適な実施形態を示す断面図である。
【図5】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図6】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
《カラーフィルター》
まず、本発明のカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す平面図、図2は、図1に示すカラーフィルターの着色部の短辺方向における断面図、図3は、図1のカラーフィルターの一部を拡大した部分の平面図(a)および、該拡大した部分の短辺方向の断面図(b)および長辺方向の断面図(c)である。なお、本明細書で参照する図面は、説明の都合上、構成の一部を強調、または簡略化して示したものであり、実際の寸法等を正確に反映したものではない。
【0015】
図1、図2に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、平面視した形状が長方形の複数の着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる種類のインクを用いて形成された第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。なお、第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、第2のインクと、互いに異なる種類の第1のインクとを用いて形成されたものであればよいが、以下の説明では、各着色部は、第2のインクに加え、第1の着色部12Aがレッドインクを用いて形成され、第2の着色部12Bがグリーンインクを用いて形成され、第3の着色部12Cがブルーインクを用いて形成された場合について、中心的に説明する。
【0016】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0017】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0018】
<着色部>
着色部12は、後述するようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものであり、図1に示すように、平面視した形状が長方形をなしている。
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
また、各着色部12は、それぞれ、後述する第1のインクを用いて形成された着色膜121と第2のインクを用いて形成された樹脂膜122とを有している。
【0019】
また、カラーフィルター1は、図1に示すように、複数の画素15が着色部12の短辺方向に並んだ行と、複数の画素15が着色部12の長辺方向に並んだ列とで構成されたものである。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素15が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素15が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素15が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素15を備えたものであってもよい。
【0020】
ところで、インクジェット法を用いたカラーフィルターの製造方法は、生産性に優れたものではあるが、一般に、インクジェットヘッドを用いて製造されたカラーフィルターは、フォトリソグラフィー法によって製造されたカラーフィルターと比較して明度、コントラスト比が劣る問題があった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、着色部の形状、特に、樹脂層の形状に着目し、樹脂層の厚みについて、所定の関係を満足することで、インクジェットヘッドを用いて製造されたカラーフィルターの明度、コントラスト比を優れたものとすることができることを見出した。
【0021】
以下、詳しく説明する。図3(a)に示されたカラーフィルター1の点OPQRに囲まれた着色部12に着目する。また、着色部12の領域OPQRと相似形であり、領域OPQRに対する相似比が0.90であり、かつ、重心が着色部12と同一の点にある領域を領域O’P’Q’R’とする。本発明において、この領域O’P’Q’R’を有効領域16とし、基板11と略平行な面であって、基板11からの距離が、着色膜121の平均厚さと同等である面を基準面Sとすると、カラーフィルター1は、着色部12として、その有効領域16内において、下記式(I)の関係を満足するものが設けられている。
1.1≦T/T≦1.7・・・ (I)
(ただし、T[μm]は、有効領域16の境界線上における基準面Sから樹脂層122表面までの距離であり、T[μm]は、有効領域16内における基準面Sから樹脂層122表面までの最短距離である。)
【0022】
このような関係を満足することにより、樹脂層122の有効領域16内の平坦性を比較的高いものとすることができる。その結果、明度、コントラスト比を優れたものとすることができる。また、比較的少ない量のインク量で樹脂層122を形成することができ、コスト的にも有利である。
これに対し、T/Tが前記下限値未満だと、着色部12を透過する光の量が少ないものとなり、カラーフィルター1の明度およびコントラスト比は、優れたものとならない。また、T/Tが前記上限値を超えると、耐溶剤性および耐候性が低下してしまう。
なお、本発明において、上記T/Tは、1.1≦T/T≦1.7の関係を満足するが、1.2≦T/T≦1.5の関係を満足するのがより好ましい。
【0023】
また、前記有効領域16の外周の直線または曲線は、相似する着色部12の外周の対応する直線または曲線と平行になるように配置されたものである。言いかえると、有効領域16は、着色部12と相似しているが、着色部12から回転しているものではない。
また、カラーフィルター1は、式(I)を満足する緑色の着色部12Bが設けられていることが好ましい。一般に、インクジェット法により形成した緑色の着色部は、明度およびコントラスト比が、フォトリソグラフィー法によって形成された緑色の着色部よりも低いものとなりやすいものであった。しかしながら、緑色の着色部12Bとして、式(I)を満足するものが設けられることにより、着色部12Bは、明度およびコントラスト比に優れたものとなり、カラーフィルター1は、緑色の表示を行った際の明度およびコントラスト比が優れたものとなる。
また、前記式(I)を満足する着色部12は、カラーフィルター1中の全ての着色部12のうち、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター1は、明度およびコントラスト比が特に優れたものとなる。
【0024】
樹脂層122は、図3に示すように、有効領域16における表面形状が、凹面をなしているのが好ましい。これにより、画素中央における平坦性を向上させることができ、カラーフィルター1は、明度およびコントラスト比が特に優れたものとなる。
また、着色膜121の平均厚さは、1.2μm以上2.3μm以下であることが好ましく、1.4μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター1は、明度およびコントラスト比に特に優れたものとなる。
【0025】
また、樹脂層122の平均厚さは、0.1μm以上1.2μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.40μm以下であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター1は、明度およびコントラスト比に優れるとともに、耐溶剤性および耐候性に特に優れたものとなる。
また、着色部12の平均厚さは、1.5μm以上2.0μm以下であることが好ましく、1.6μm以上1.8μm以下であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター1は、明度およびコントラスト比に優れるとともに、耐溶剤性および耐候性に特に優れたものとなる。
【0026】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0027】
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚とほぼ同じであるのが好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができる。隔壁13の具体的な厚さは、0.1μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上3.5μm以下であるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができるとともに、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
【0028】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
なお、上述したようなカラーフィルターは、インクジェット法で製造されるものであればよく、いかなるカラーフィルター用インク、製造方法で製造されてもよいが、後述するようなカラーフィルター用インク、カラーフィルターの製造方法により、容易かつ確実に製造することができる。
【0029】
《カラーフィルター用インク》
次に、上述したような着色部を好適に形成することが可能なインクセット(カラーフィルター用インクセット)について説明する。
カラーフィルター用インクセットは、着色剤と、着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体とを含み、着色膜121の形成に用いられる第1のインクと、第1のインクと同一のセル内に吐出されることにより、樹脂膜122を形成する第2のインクとを備え、第2のインクが、硬化性樹脂材料と、当該硬化性樹脂材料を分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含み、硬化性樹脂材料が、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、を含むものである。
【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
このように、着色剤を含む第1のインクを用いて着色膜を形成し、上述したような硬化性樹脂材料を含む第2のインクを用いて樹脂膜をそれぞれ形成し、上述したような式(I)で表される関係を有する着色部を形成することで、着色部の表面の平坦性を高いものとすることができ、製造されるカラーフィルターの表示画像の明度およびコントラスト比を優れたものとし、かつ、色むら、濃度むらの発生を効果的に防止することができる。また、着色膜とは別に、樹脂膜を有することにより、製造されるカラーフィルターの耐溶剤性、耐久性、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの製造に用いるインクは、一般に、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、高沸点の液体を液性媒体として含み、高い含有率で着色剤、樹脂材料を含むものであるため、粘度が高くなりやすく、インクの液滴の安定吐出が困難であるという問題があるが、本実施形態のカラーフィルター用インクセットでは、形成すべき着色部の構成材料を2種のインクに分けて含有させることにより、インクの吐出安定性を向上させることができ、インクジェット法による高速描画が可能となるため、全体としての、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0035】
本実施形態で用いるカラーフィルター用インクセットは、少なくとも1種の第1のインクと、少なくとも1種の第2のインクを備えるものであればよいが、複数種の第1のインクと、少なくとも1種の第2のインクとを備えるものであるのが好ましい。これにより、色再現域の広いカラーフィルターの製造に好適に用いることができる。また、製造されるカラーフィルター全体としての表示画像についての明度、コントラスト比を特に優れたものとすることができ、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができる。また、製造されるカラーフィルター全体としての耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0036】
また、本実施形態のカラーフィルター用インクセットは、光の三原色を構成する3色である、赤色の第1のインク(レッドインク)と、緑色の第1のインク(グリーンインク)と、青色の第1のインク(ブルーインク)とを備えるものであるのが好ましい。これにより、色再現域の広いカラーフィルターを容易かつ効率よく製造することができる。以下の説明では、カラーフィルター用インクセットが、「レッドインク(Rインク)」、「グリーンインク(Gインク)」、「ブルーインク(Bインク)」の3種の第1のインクを備える場合について代表的に説明する。
また、カラーフィルター用インクセットは、第2のインクを少なくとも1種備えるものであればよく、複数種備えるものであってもよいが、以下の説明では、カラーフィルター用インクセットが、第2のインクを1種備え、全てのセルに当該第2のインクを用いる場合について代表的に説明する。
【0037】
《第1のインク》
カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクは、着色剤、当該着色剤が分散および/または溶解する液性媒体(第1の液性媒体)等を含むものであり、上述のようなカラーフィルター1の着色膜121の形成に用いるものである。これにより、第1のインクおよび第2のインクの粘度を低いものとすることができ、これらのインクの吐出性を優れたものとすることができる。すなわち、着色剤を含む第1のインクに含まれる樹脂材料が少ないことで、着色剤と樹脂材料との相互作用による粘度上昇を防ぐことができる。また、着色部の構成材料としての樹脂材料を後述する第2のインクに含ませることにより、第1のインクにより形成される着色膜の表面の平坦性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの表示画像の明度およびコントラスト比を優れたものとし、かつ、色むら、濃度むらの発生を効果的に防止することができる。
【0038】
<着色剤>
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色部)を有している。そして、カラーフィルター用インクセットを構成する各第1のインクは、それぞれ、形成すべき着色部の色調に応じた着色剤を含むものである。第1のインクを構成する着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができるが、第1のインクは、着色剤として顔料を含むものであるのが好ましい。これにより、製造されるカラーフィルターの耐光性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。また、従来のインクジェット法を用いて製造されたカラーフィルターでは、着色剤として顔料を含む場合に、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本実施形態においては、着色剤として顔料を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。
【0039】
(レッドインク)
レッドインクは、通常、赤色の着色剤を含むものである。
レッドインク中に含まれる着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2,3,5,17,22,23,38,81,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,52:1,53:1,57:1,63:1,112,122,144,146,149,166,170,176,177,178,179,185,202,207,209,254,101,102,105,106,108,108:1等の顔料や、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46等の染料が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
レッドインクを構成する着色剤としては、上記のようなものが挙げられるが、中でも、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254、および、これらの誘導体のうち少なくとも1種を含むレッドインクを備えるものであるのが好ましい。従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本実施形態においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。
C.I.ピグメントレッド177の誘導体、C.I.ピグメントレッド254の誘導体として、下記式(30)または下記式(31)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。
【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
また、レッドインクは、上記のような着色剤に加え、例えば、ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185等の顔料を含むものであってもよい。これにより、形成される着色部の色調をより好適に調整することができる。中でも、ピグメントイエロー138,139,150,184,185が好ましく、ピグメントイエロー150がより好ましい。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0044】
レッドインク中における着色剤の含有率は、7.0wt%以上30.0wt%以下であるのが好ましく、7.5wt%以上25.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、従来のインクジェット法を用いた製造方法においては、インク中における着色剤の含有率が上記のように比較的高い場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本実施形態では、比較的高濃度で着色剤を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0045】
(グリーンインク)
グリーンインクは、通常、緑色の着色剤を含むものである。
グリーンインク中に含まれる着色剤としては、特に限定されず、例えば、C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50、58等の顔料や、C.I.アシッドグリーン16等の染料が挙げられる。
【0046】
グリーンインクを構成する着色剤としては、上記のようなものが挙げられるが、中でも、C.I.ピグメントグリーン58を含むグリーンインクを備えるものであるのが好ましい。従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本実施形態においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。
【0047】
また、グリーンインクが、C.I.ピグメントグリーン58を含む場合、さらに、スルホン化された顔料誘導体を副顔料として含むのが好ましい。これにより、第1のインクとしてグリーンインクを用いて形成される着色部の発色性をさらに優れたものとすることができる。
グリーンインクが、C.I.ピグメントグリーン58とスルホン化された顔料誘導体とを含む場合、スルホン化された顔料誘導体として、下記式(32)で示される化合物(誘導体)を含有するのが好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
【0048】
【化11】

【0049】
グリーンインクが、C.I.ピグメントグリーン58と上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)とを含む場合、顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料):100重量部に対して、10重量部以上80重量部以下であるのが好ましく、30重量部以上70重量部以下であるのがより好ましい。これにより、製造されるカラーフィルター1の表示画像のコントラスト、明度を特に優れたものとすることができる。
また、グリーンインクは、上記のような着色剤に加え、例えば、ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185等の顔料を含むものであってもよい。これにより、形成される着色部の色調をより好適に調整することができる。中でも、ピグメントイエロー138,139,150,184,185が好ましく、ピグメントイエロー150がより好ましい。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0050】
グリーンインク中における着色剤の含有率は、8.0wt%以上25.0wt%以下であるのが好ましく、8.5wt%以上18.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、従来のインクジェット法を用いた製造方法においては、インク中における着色剤の含有率が上記のように比較的高い場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本実施形態では、比較的高濃度で着色剤を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0051】
(ブルーインク)
ブルーインクは、通常、青色の着色剤を含むものである。
ブルーインク中に含まれる着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,27,28,29,35,36,60,80等の顔料や、C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185等の染料が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
ブルーインクを構成する着色剤としては、上記のようなものが挙げられるが、中でも、C.I.ピグメントブルー15:6を含むブルーインクを備えるものであるのが好ましい。従来、上記のような着色剤(顔料)を含む場合、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生という問題がより顕著に発生していたが、本実施形態においては、上記のような着色剤(顔料)を含む場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。
また、ブルーインクが、C.I.ピグメントブルー15:6を含む場合、さらに、C.I.ピグメントバイオレット23を含むのが好ましい。これにより、第1のインクとしてブルーインクを用いて形成される着色部の発色性をさらに優れたものとすることができる。
【0053】
ブルーインク中における着色剤の含有率は、6.0wt%以上20.0wt%以下であるのが好ましく、6.5wt%以上15.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター製造用の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からの、ブルーインクの吐出性を優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができ、色再現範囲を広いものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、異なる色の着色部間における色濃度の均一性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。
【0054】
<第1の液性媒体>
第1の液性媒体(第1の液状媒質)は、上述したような着色剤を、分散および/または溶解する機能を有するものである。すなわち、第1の液性媒体は、分散媒および/または溶媒として機能するものである。そして、通常、第1の液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
【0055】
第1の液性媒体を構成する液体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、アセテート類、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。
【0056】
中でも、第1の液性媒体は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートから選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。これにより、第1のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第2のインクの付与前に、第1の液性媒体を好適に除去することができ、着色膜121を耐溶剤性に特に優れたものとすることができるため、第1のインク中に含まれる着色剤が、第2のインクによって形成される樹脂膜122中に拡散してしまうことをより確実に防止することができる。その結果、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0057】
また、第1のインクにおける第1の液性媒体の含有率は、60wt%以上91wt%以下であるのが好ましく、65wt%以上90wt%以下であるのがより好ましい。第1の液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、第1のインクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの着色膜の厚さを確実に均一にでき、各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができ、色再現範囲を広いものとすることができる。
【0058】
<重合体M>
第1のインクは、単量体成分として、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mを含むものであってもよい。
【0059】
【化12】

【0060】
【化13】

【0061】
このような重合体Mを含むことにより、基板に対する着色膜の密着性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクの長期保存性(第1のインクの寿命)が非常に優れたものとなり、大量生産した第1のインクの作り置きによる品質の低下等の問題の発生が効果的に防止され、カラーフィルターの製造に際して第1のインクの交換頻度を減らすことができるため、カラーフィルターの生産性、製造されるカラーフィルターの信頼性を優れたものとすることができる。
なお、重合体Mは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0062】
(単量体成分m1)
重合体Mは、上記式(1)で表される単量体成分m1、すなわち、ブロックされたイソシアネート基(以下、「ブロックイソシアネート基」ともいう)を有する化合物を単量体成分として含有してなるものである。なお、第1のインクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(1)で表される単量体成分m1を複数種含むものであってもよい。
【0063】
式(1)で表される単量体成分m1において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1以上8以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示す。Rはイソシアネート基のブロック剤RHの残基を示す。
における炭素数1以上8以下の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状の2価の飽和脂肪族炭化水素基(アルキレン基)が挙げられるが、エチレン、トリメチレン、プロピレン基等の炭素数2以上4以下の2価の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0064】
イソシアネート基のブロック剤RHとしては、例えば、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、ジエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック剤;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック剤;メタノール、エタノール等のアルコール系ブロック剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系ブロック剤;ブチルメルカプタン等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等の酸アミド系ブロック剤;マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン系ブロック剤;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸系ブロック剤;ジフェニルアミン、アニリン等のアミン系ブロック剤;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
イソシアネート基のブロック剤としては、オキシム系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤が好ましく、下記式(5)で表されるものがより好ましい。
【0065】
【化14】

【0066】
式(5)中のRおよびRにおける炭素数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられるが、メチル、エチル、プロピル基等の炭素数1以上4以下の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましい。RおよびRが互いに結合して隣接する炭素原子とともに結合する環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の3〜12員程度(好ましくは5または6員)のシクロアルカン環等が挙げられる。
【0067】
式(1)で表される単量体成分m1の具体例としては、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)(下記式(6)で表されるもの)、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチル(下記式(7)で表されるもの)等が挙げられる。
【0068】
【化15】

【0069】
【化16】

【0070】
重合体M中における単量体成分m1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、1wt%以上99wt%以下(例えば10wt%以上95wt%以下)であるのが好ましく、20wt%以上90wt%以下であるのがより好ましく、25wt%以上88wt%以下であるのがさらに好ましい。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m1を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m1の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m1を含有しているのが好ましい。
【0071】
(単量体成分m2)
重合体Mは、カルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2を単量体成分として含有してなるものである。なお、第1のインクを構成する重合体Mは、分子内に複数種の単量体成分m2を含むものであってもよい。
このような単量体成分m2を重合体M中に単量体成分として含有することにより、基板上への第1のインクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色膜を好適に形成することができる。また、単量体成分m2を単量体成分として含有することにより、第1のインクの長期保存性等を特に優れたものとすることができる。
【0072】
単量体成分m2としては、不飽和カルボン酸またはその酸無水物が挙げられる。単量体成分m2の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)等が挙げられ、中でも、アクリル酸、メタクリル酸(下記式(2)で表されるもの)が特に好ましい。
【0073】
【化17】

【0074】
重合体M中における単量体成分m2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、0.5wt%以上98wt%以下(例えば2.5wt%以上70wt%以下)であるのが好ましく、3wt%以上50wt%以下であるのがより好ましく、5wt%以上40wt%以下であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1や後に詳述する単量体成分m3等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分m2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分m1、m3等の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m2を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m2の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m2を含有しているのが好ましい。
【0075】
(単量体成分m3)
重合体Mは、上記式(3)で表される単量体成分m3((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものである。なお、第1のインクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(3)で表される単量体成分m3を複数種含むものであってもよい。
【0076】
このような単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、第1のインクを用いて形成される着色膜の平坦性を高いものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、第1のインクの吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、第1のインクの保存安定性(長期保存性)等を優れたものとすることができる。
【0077】
における炭素数16以上25以下の炭化水素基としては、例えば、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、ノナデシル、イコシル、ドコシル(ベヘニル)基等のアルキル基;10−シクロヘキシルデシル、12−シクロヘキシルドデシル、14−シクロヘキシルテトラデシル、16−シクロヘキシルヘキサデシル基等の脂環式炭化水素基とアルキル基とが結合した基;10−フェニルデシル、12−フェニルドデシル、14−フェニルテトラデシル、16−フェニルヘキサデシル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0078】
炭素数16以上25以下の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1以上10以下のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1以上15以下(好ましくは、炭素数1以上12以下)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
【0079】
単量体成分m3の具体例としては、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記のように、重合体Mを構成する単量体成分m3が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、16以上25以下であるが、特に、16以上22以下であるのが好ましく、16以上20以下であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。これに対し、Rの炭素数が前記下限値未満である場合、または、前記上限値を超える場合には、上述したような優れた効果が得られない。このように、重合体Mは、所定の炭素数を有する基(R)を備えた単量体成分(単量体成分m3)を含む点に大きな一つの特徴を有するものである。
【0080】
重合体M中における単量体成分m3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、0.5wt%以上98wt%以下(例えば2.5wt%以上70wt%以下)であるのが好ましく、3wt%以上50wt%以下であるのがより好ましく、5wt%以上40wt%以下であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1、m2等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分m3を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分m1、m2等の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m3を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m3の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m3を含有しているのが好ましい。
【0081】
重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m2の比率(Cm2[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm2は、2/98以上98/2以下であるのが好ましく、20/80以上95/5以下であるのがより好ましく、40/60以上95/5以下であるのがさらに好ましい。
また、重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m3の比率(Cm3[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm3は、2/98以上98/2以下であるのが好ましく、20/80以上95/5以下であるのがより好ましく、40/60以上95/5以下であるのがさらに好ましい。
重合体Mとしては、例えば、下記式(8)で表されるものがある。
【0082】
【化18】

【0083】
また、重合体Mは、上述した単量体成分m1、m2およびm3以外の成分を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。このような成分としては、例えば、以下に述べるような単量体成分m4、単量体成分m5、単量体成分m6、単量体成分m7等が挙げられる。
【0084】
(単量体成分m4)
重合体Mは、下記式(4)で表される単量体成分m4((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0085】
【化19】

【0086】
重合体Mが単量体成分m4を含むことにより、第1のインクを構成する第1の液性媒体が親水性の高い場合であっても、第1のインク中における重合体Mの溶解性を優れたものとすることができ、第1のインクを用いて形成される着色膜の透明性を優れたものとすることができる。
単量体成分m4において、Rは、炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい炭素数1以上15以下の炭化水素基を示すが、当該炭化水素基の炭素数は、1以上12以下であるのが好ましい。Rで示される炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル、ジシクロペンタニル、イソボルニル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0087】
炭素数1以上15以下の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1以上10以下のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1以上15以下(好ましくは、炭素数1以上12以下)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
【0088】
単量体成分m4の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0089】
上記のように、単量体成分m4が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、1以上15以下であるが、特に、1以上8以下であるのが好ましく、1以上4以下であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。
上記のような単量体成分m4を含む重合体Mとしては、例えば、下記式(9)で表されるものがある。
【0090】
【化20】

【0091】
(単量体成分m5)
重合体Mは、芳香族ビニル化合物である単量体成分m5を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
重合体Mが単量体成分m5を含むことにより、第1のインクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクを用いて形成される着色膜は、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が特に生じにくいものとなる。
単量体成分m5の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル等が挙げられる。
【0092】
(単量体成分m6)
重合体Mは、ヒドロキシル基含有化合物である単量体成分m6を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
単量体成分m6の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物やエチレンオキサイド、もしくはプロピレンオキサイドを開環重合したヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。
【0093】
(単量体成分m7)
重合体Mは、3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物である単量体成分m7を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
単量体成分m7(3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物)には、オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物、オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物、オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物が含まれる。
重合体Mが単量体成分m7を含むことにより、第1のインクを用いて形成される着色膜の耐溶剤性や、基板に対する密着性等の更なる向上を図ることができる。
【0094】
オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のオキシラン環(単環)を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシシクロヘキサン環等のエポキシ基含有脂環式炭素環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(メタ)アクリレート等の5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);エポキシ化ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート[3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート[2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシブチル(メタ)アクリレート、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシヘキシル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等)等が挙げられる。他のオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物として、エポキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むアリルエーテル化合物、エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物等を用いることもできる。エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物としては、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルオキシラン、4−ビニルフェネチルオキシラン等のスチレン誘導体が挙げられる。
【0095】
オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレートや、オキセタニル基を含むビニルエーテル化合物、オキセタニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0096】
オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、オキソラニル基を含むビニルエーテル化合物、オキソラニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
重合体Mが、上述したような単量体成分m7を含むものである場合、3〜5員の環状エーテル基(オキシラン環(エポキシ基)、オキセタン環(オキセタニル基)、オキソラン環(オキソラニル基))は硬化性基として作用する。3〜5員の環状エーテル基は、主に耐薬品性(耐溶剤性、耐アルカリ性等)の向上に寄与する。
【0097】
重合体Mが、単量体成分m1、m2、m3に加え、さらに、単量体成分m4、m5、m6およびm7よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含むものである場合、重合体M中における単量体成分m4、m5、m6およびm7の含有率の総和は、60wt%以下であるのが好ましく、50wt%以下であるのがより好ましく、40wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述した単量体成分m1、m2、m3を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、単量体成分m4、m5、m6、m7を含むことによる効果が発揮される。
【0098】
重合体Mの重量平均分子量は、500以上100000以下であるのが好ましく、1000以上40000以下であるのがより好ましく、2000以上30000以下であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターについてのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性(長期安定性)、吐出安定性、形成される着色膜の耐溶剤性等を優れたものとすることができる。
また、重合体Mの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
【0099】
第1のインクが重合体Mを含むものである場合、第1のインク中における重合体Mの含有率は、0.1wt%以上5.5wt%以下であるのが好ましく、0.2wt%以上4.5wt%以下であるのがより好ましい。これにより、他の成分の機能を十分に発揮させつつ、重合体Mを含むことによる効果をより効果的に発揮させることができる。
また、第1のインクは、重合体M以外の重合体成分(以下、「その他の重合体成分」という)を含むものであってもよい。その他の重合体成分を含む場合、第1のインク中に含まれるその他の重合体成分は、3.0wt%以下であるのが好ましく、2.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果を確実に発揮させることができる。
【0100】
<分散剤>
分散剤は、顔料粒子の分散性を向上させるのに寄与する成分である。第1のインクが分散剤を含むことにより、第1のインクの保存安定性、第1のインクの液滴の吐出安定性の向上を図ることができる。
特に、第1のインクは、分散剤として、所定の酸価を有する酸価分散剤と、所定のアミン価を有するアミン価分散剤とを含むものであるのが好ましい。これにより、インクの粘度を低下させる粘度低減効果を発揮する酸価分散剤による効果と、インクの粘度を安定化させるアミン価分散剤による効果とが両立され、第1のインク中における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、第1のインクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインク中に、酸価分散剤とアミン価分散剤とが、共存することにより、第1のインク中における顔料の分散安定性、第1のインクの液滴の吐出安定性を優れたものとしつつも、第1のインクから第1の液性媒体を除去して、着色膜とした後には、当該着色膜の耐溶剤性を特に優れたものとすることができ、着色膜の構成材料が第2のインクに溶出しにくいものとなり、さらに、第1のインクを用いて形成される着色膜の表面の平坦性を特に優れたものとすることができる。その結果、得られるカラーフィルターを用いて表示される画像のコントラスト等を特に優れたものとすることができる。
【0101】
[酸価分散剤]
上記のように、酸価分散剤は、所定の酸価(零を除く)を有している。
酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5KOHmg/g以上370KOHmg/g以下であるのが好ましく、20KOHmg/g以上270KOHmg/g以下であるのがより好ましく、30KOHmg/g以上135KOHmg/g以下であるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と併用することによる相乗効果がより顕著に発揮される。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
なお、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が零である。
【0102】
酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)、ヒノアクトKF−1000(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。なお、本発明に適用される酸価分散剤が、例示されたものに限定されないことは言うまでもない。
【0103】
[アミン価分散剤]
上記のように、アミン価分散剤は、所定のアミン価(零を除く)を有している。
アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5KOHmg/g以上200KOHmg/g以下であるのが好ましく、25KOHmg/g以上170KOHmg/g以下であるのがより好ましく、30KOHmg/g以上130KOHmg/g以下であるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、酸価分散剤と併用することによる相乗効果がより顕著に発揮される。分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
なお、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が零である。
【0104】
アミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。なお、本発明に適用されるアミン価分散剤が、例示されたものに限定されないことは言うまでもない。
【0105】
第1のインク中における酸価分散剤の含有率をC[wt%]、第1のインク中におけるアミン価分散剤の含有率をC[wt%]としたとき、0.1≦C/C≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦C/C≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮される。
【0106】
また、酸価分散剤の酸価をAV[KOHmg/g]、アミン価分散剤のアミン価をBV[KOHmg/g]、前記酸価分散剤の含有率をC[wt%]、前記アミン価分散剤の含有率をC[wt%]としたとき、0.01≦(AV×C)/(BV×C)≦1.9の関係を満足するのが好ましく、0.10≦(AV×C)/(BV×C)≦0.95の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮される。
【0107】
[他の分散剤]
第1のインクは、酸価分散剤、アミン価分散剤以外の分散剤を含むものであってもよい。すなわち、第1のインクは、酸価およびアミン価がいずれも零である分散剤を含むものであってもよい。
このような分散剤の具体的な例としては、ディスパービック101、ディスパービック103、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4015(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース38500、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);および、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、このような分散剤(他の分散剤)を含む場合、その含有率(複数種の「他の分散剤」を含む場合には、その総和)が、酸価分散剤の含有率、および、アミン価分散剤の含有率よりも少ないものであるのが好ましい。これにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる効果が、より確実に発揮される。
第1のインク中における分散剤の含有率は、特に限定されないが、0.5wt%以上10.2wt%以下であるのが好ましく、0.6wt%以上8.0wt%以下であるのがより好ましい。
【0108】
<その他の成分>
第1のインクは、着色剤と、第1の液性媒体とを含むものであればよいが、さらに、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、各種架橋剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、各種重合開始剤、酸架橋剤、界面活性剤、増感剤、光安定剤、各種分散剤、発光材料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、各種重合促進剤、各種光安定化剤、ガラス、ジルコニア、アルミナ、酸化チタン等のセラミックス、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を用いることができる。
【0109】
レベリング剤は、第1のインクの表面張力を低下させることにより、セル内に付与された第1のインクの表面を平滑化し、着色膜を平坦化させるものである。このため、第1のインクがレベリング剤を有することにより、セル内の第1のインクの表面を平坦なものとすることができる。このため、形成される着色膜は平坦なものとなる。
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素−ケイ素系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤等が挙げられる。このようなレベリング剤の中でも、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤を用いることが好ましい。特に、サーフィノールDF−58、LHP−95、LHP−90、LF1970から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、形成される着色膜の表面がより平坦化され、得られるカラーフィルターは、各部位での色むら、濃度むらが特に小さいものとなる。
【0110】
酸化防止剤は、第1のインクの酸化等による変質を防止するとともに、第1のインクによって形成された着色膜内において着色剤等の熱や光等による劣化を防止することができる。
酸化防止剤としては、各種リン系酸化防止剤、各種イオウ系酸化防止剤、各種ヒンダードフェノール系酸化防止剤、各種ヒンダーアミン系酸化防止剤等の各種酸化防止剤等が挙げられる。この中でも、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも一種を用いることが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることがより好ましく、TINUVIN152を用いることがさらに好ましい。このような酸化防止剤は、好適に第1のインク、着色膜の変質を効果的に防止するとともに、形成される着色膜において、色、明度、コントラスト比等の光学特性に影響しにくいものである。
【0111】
第1のインクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、4mPa・s以上12mPa・s以下であるのが好ましく、5mPa・s以上11mPa・s以下であるのがより好ましい。第1のインクの粘度が前記範囲内の値であると、インクジェット方式による液滴吐出において、吐出される第1のインクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、第1のインク(後述する第2のインクも同様)の粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0112】
《第2のインク》
次に、カラーフィルター用インクセットを構成する第2のインクについて説明する。
第2のインクは、上記式(11)で表される単量体成分x1と上記式(13)で表される単量体成分x3と上記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、上記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yとを含む硬化性樹脂材料と、当該硬化性樹脂材料を分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含むものである。このような、第2のインクを用いることで、上述した第1のインクを用いて形成される着色膜の表面に、樹脂材料で構成された樹脂膜を形成することができ、着色部の表面(樹脂膜の表面)の形状を容易に調整することができる。その結果、製造されるカラーフィルターの耐溶剤性および耐候性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの表示画像を、明度およびコントラスト比に優れ、色むら、濃度むらの発生が抑制されたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、当該カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率等を特に優れたものとすることができる。また、形成すべき着色部の構成材料を2種のインクに分けて含有させることにより、インクの吐出安定性を向上させることができ、インクジェット法による高速描画が可能となるため、全体としての、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0113】
上記のような効果は、第1のインクにより形成される着色膜中の着色剤の含有率よりも、第2のインクにより形成される樹脂膜中の着色剤の含有率を低いものとすることにより得られるものであるが、特に、第2のインクとして実質的に着色剤を含まないものを用いること、樹脂膜中に実質的に着色剤を含まないものとすることにより、より顕著に発揮される。
【0114】
<硬化性樹脂材料>
第2のインクは、硬化性樹脂材料(バインダー樹脂)を含む。
第2のインクに含まれる硬化性樹脂材料は、以下に述べるような重合体X、重合体Yを含んでいる。
【0115】
[重合体X]
重合体Xは、上記式(11)で表される単量体成分x1と上記式(13)で表される単量体成分x3と上記式(14)で表される単量体成分x4とを含むものである。重合体Xとしては、例えば、下記式(17)で表されるものがある。
【0116】
【化21】

【0117】
第2のインクがこのような重合体Xを含むことにより、形成される着色部の表面の平坦性を特に高いものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むらの発生やコントラスト、明度の低下等をより確実に防止することができる。また、第2のインクを構成する硬化性樹脂材料全体としての、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性(以下、「硬化反応のスイッチング特性」ともいう)等を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の耐溶剤性等を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)を良好なものとすることができる。また、重合体Xを含むことにより、第2のインク中における各重合体成分の親和性、相溶性(特に、後述する重合体Yとの親和性、相溶性)を十分に優れたものとすることができるため、重合体Xの特長を十分に発揮させつつ、第2のインクの吐出安定性を優れたものとし、第2のインクを用いて形成される樹脂膜の透明性を高いとすることができる。
なお、重合体Xは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Xが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分x1、x3およびx4を含有するものである。
【0118】
(単量体成分x1)
重合体Xは、上記式(11)で表される単量体成分x1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分x1を含有することにより、硬化性樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、例えば、第2のインクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜(着色部)の硬度等を優れたものとすることができる。
【0119】
重合体X中における単量体成分x1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、40wt%以上80wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分x2、x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x1を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x2、x3、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Xの高温での反応速度が低下し、十分に優れた生産性でカラーフィルターを製造するのが困難となる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x1を含有しているのが好ましい。
【0120】
(単量体成分x2)
重合体Xは、下記式(12)で表される単量体成分x2を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0121】
【化22】

【0122】
このような単量体成分x2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分x1や後に詳述する単量体成分x3とともに含有すること)により、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での硬化処理において、硬化性樹脂材料の重合反応の立ち上がりをより良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜(着色部)の硬度等を特に優れたものとすることができる。
単量体成分x2を単量体成分として含有する重合体Xとしては、例えば、下記式(19)で表されるものがある。
【0123】
【化23】

【0124】
重合体X中における単量体成分x2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1および後に詳述する単量体成分x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x3、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Xの比較的低温での反応性が増し、第2のインクの保存安定性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x2を含有しているのが好ましい。
【0125】
(単量体成分x3)
重合体Xは、上記式(13)で表される単量体成分x3を単量体成分として含有してなるものである。
重合体Xが単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部(樹脂膜)の耐薬品性、耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。これにより、硬化処理の後に、薬品塗布や洗浄等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
【0126】
また、単量体成分x3は、重合体Xにおいて、上述した単量体成分x1と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、硬化処理で施す熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
また、単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、例えば、第2のインクの長期保存性、吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0127】
重合体X中における単量体成分x3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2および後に詳述する単量体成分x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x3を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x2、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、第2のインクを用いて形成される樹脂膜が硬くなりすぎ、温度変化に伴う基板等の変形に対する追従性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x3を含有しているのが好ましい。
【0128】
(単量体成分x4)
重合体Xは、上記式(14)で表される単量体成分x4を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、着色部(樹脂膜)の形成時、第2のインクから第2の液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴って第2のインクのチキソトロピック性および粘度が上昇し、形成される着色部(樹脂膜)の表面に不本意な凹凸が生じることをより確実に防止することができる。
【0129】
また、単量体成分x4は、その末端に水酸基を有している。このような構造を有することにより、比較的低い温度(例えば、100℃以下)における反応性を十分に低いものとしつつ、硬化処理のような加熱環境下における反応性をさらに高めることができる。これにより、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。
また、単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、例えば、第2のインクの長期保存性、吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0130】
重合体X中における単量体成分x4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2、x3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x4を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x2、x3の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、第2のインクを用いて形成される樹脂膜(着色部)の硬度が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x4の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x4を含有しているのが好ましい。
なお、重合体Xは、上述した単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
【0131】
重合体Xが、その他の単量体成分(単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体X中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
重合体Xの重量平均分子量は、1000以上50000以下であるのが好ましく、1200以上10000以下であるのがより好ましく、1500以上5000以下であるのがさらに好ましい。これにより、第2のインクの経時的安定性(長期保存性)、第2のインクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、第2のインクを用いて形成される着色部(樹脂膜)の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Xの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
【0132】
[重合体Y]
重合体Yは、上記式(15)で表される単量体成分y1を含むものである。重合体Yとしては、例えば、下記式(18)で表されるものがある。
【0133】
【化24】

【0134】
このような重合体Yを含むことにより、第2のインクの吐出安定性等を優れたものとしつつ、樹脂膜の隔壁等に対する密着性、耐溶剤性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)を良好なものとすることができる。
なお、重合体Yは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Yが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分y1を含有するものである。
【0135】
(単量体成分y1)
重合体Yは、上記式(15)で表される単量体成分y1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分y1を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜の隔壁等に対する密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0136】
重合体Y中における単量体成分y1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、40wt%以上80wt%以下であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記範囲内の値であると、例えば、重合体Yが単量体成分として後に詳述する単量体成分y2を含む場合において、当該単量体成分y2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分y1を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記上限値を超えると、例えば、重合体Yが単量体成分として後に詳述する単量体成分y2を含む場合において、相対的に単量体成分y2の含有率が低下し、単量体成分y2の機能が十分に発揮されない可能性がある。また、着色部(樹脂膜)の形成時、第2のインクから第2の液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴って第2のインクの粘度が上昇する傾向が現れ、形成される着色部(樹脂膜)の表面に不本意な凹凸が生じ易くなる。なお、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分y1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y1を含有しているのが好ましい。
【0137】
(単量体成分y2)
重合体Yは、下記式(16)で表される単量体成分y2を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0138】
【化25】

【0139】
このような単量体成分y2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分y1とともに含有すること)により、第2のインクの保存時や液滴吐出時等における硬化性樹脂材料の不本意な反応(重合反応)をより確実に防止しつつ、加熱環境下で行う硬化処理においては、硬化性樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での硬化処理において、硬化性樹脂材料の重合反応の立ち上がりを良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分y2を単量体成分として含有することにより、形成される樹脂膜(着色部)の硬度等を優れたものとすることができる。
【0140】
また、重合体Yが単量体成分y2を含有することにより、前述した重合体Xとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、第2のインクが重合体Yとともに重合体Xを含む場合であっても、第2のインクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、第2のインクを用いて形成される樹脂膜は、透明性に優れ(硬化性樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、隔壁等に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。これに対し、単量体成分y2を単量体成分として含有しないと、重合体Xを含む場合に、重合体Xとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることが困難となり、第2のインクは、吐出安定性に劣ったものとなり、また、製造されるカラーフィルターは、色むら等が発生し易く、コントラストや耐久性、信頼性等を十分に優れたものとするのが困難となる可能性がある。
単量体成分y2を単量体成分として含有する重合体Yとしては、例えば、下記式(20)で表されるものがある。
【0141】
【化26】

【0142】
重合体Y中における単量体成分y2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、10wt%以上70wt%以下であるのが好ましく、20wt%以上60wt%以下であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分y1の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分y2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分y1の含有率が低下し、単量体成分y1の機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Yの比較的低温での反応性が増し、第2のインクの保存安定性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分y2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y2を含有しているのが好ましい。
なお、重合体Yは、上述した単量体成分y1、y2以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
【0143】
重合体Yが、その他の単量体成分(単量体成分y1、y2以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体Y中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
重合体Yの重量平均分子量は、1000以上50000以下であるのが好ましく、1200以上10000以下であるのがより好ましく、1500以上5000以下であるのがさらに好ましい。これにより、第2のインクの経時的安定性(長期保存性)、第2のインクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、第2のインクを用いて形成される樹脂膜の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Yの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
【0144】
第2のインク中における上述した硬化性樹脂材料の含有率は、2.0wt%以上30.0wt%以下であるのが好ましく、3.0wt%以上28.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、形成される樹脂膜の表面の平坦性をより高いものとしつつ、第2のインクの粘度上昇を抑制して、液滴吐出ヘッドからの第2のインクの吐出性を特に優れたものとすることができる。また、形成される樹脂膜の厚さを容易に調整することができる。
【0145】
また、第2のインクを構成する硬化性樹脂材料は、上述した以外の重合体を含むものであってもよい。例えば、第2のインクは、前述した第1のインクの構成成分として説明した重合体Mを含むものであってもよい。これにより、着色部(樹脂膜)の表面の平坦性をより高いものとすることができ、製造されるカラーフィルターの表示画像のコントラスト、明度等を特に優れたものとすることができる。
また、第2のインクは、硬化性樹脂材料に加え、各種熱可塑性樹脂を含むものであってもよい。
【0146】
<第2の液性媒体>
第2の液性媒体(第2の液状媒質)は、上述したような重合体Mを、分散および/または溶解する機能を有するものである。すなわち、第2の液性媒体は、分散媒および/または溶媒として機能するものである。そして、通常、第2の液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
【0147】
第2の液性媒体を構成する液体としては、特に限定されないが、例えば、上述した第1の液体で挙げたものを用いることができる。
上述した中でも、第2の液性媒体は、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、1,3−ブチレングリコールジアセテートから選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。これにより、第2のインクの液滴吐出性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクより形成された着色膜から、着色剤が第2のインク(樹脂膜)中に拡散してしまうのをより確実に防止することができる。その結果、明度、コントラスト比の低下や、色むら、濃度むらの発生をより効果的に防止することができるとともに、耐溶剤性および耐光性を特に優れたものとし、カラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率(VHR)も良好なものとすることができる。
【0148】
第2のインクにおける第2の液性媒体の含有率は、40wt%以上99wt%以下であるのが好ましく、60wt%以上95wt%以下であるのがより好ましい。第2の液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、第2のインクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとし、製造されるカラーフィルターの着色部の厚さの均一性をより高いものとすることができる。このため、得られるカラーフィルターは、各部位での濃度むら、色むらが特に効果的に抑制されたものとなり、また、画像表示装置に用いた際に、特に鮮明な画像を表示できるものとなる。
【0149】
第2の液性媒体の25℃における粘度は、特に限定されないが、1.0mPa・s以上4.0mPa・s以下であるのが好ましく、1.5mPa・s以上3.5mPa・s以下であるのがより好ましい。第2の液性媒体の25℃における粘度が前記範囲内の値であると、第2のインクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとし、製造されるカラーフィルターの着色部の厚さの均一性をより高いものとすることができる。このため、得られるカラーフィルターは、各部位での濃度むら、色むらが特に効果的に抑制されたものとなり、また、画像表示装置に用いた際に、特に鮮明な画像を表示できるものとなる。
【0150】
また、カラーフィルター用インクセットを構成する第2のインクの25℃における粘度は、いずれも、2.0mPa・s以上9.0mPa・s以下であるのが好ましく、3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出される第2のインクの液滴量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。この結果、得られるカラーフィルターは、各着色部の均一性をより高いものとすることができ、画像表示装置に用いた際に、特に鮮明な画像を表示できるものとなる。
【0151】
また、第2のインクは、上述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、第1のインクの構成成分としてのその他の成分で例示したような成分が挙げられる。また、例えば、第2のインクは、着色剤を含むものであってもよいが、含まないものであるのが好ましい。また、第2のインクが着色剤を含む場合、第2のインク中に含まれる着色剤の含有率は、0.5wt%以下であるのが好ましく、0.2wt%以下であるのがより好ましい。
【0152】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、上述したようなカラーフィルター1の製造方法について説明する。
図4は、カラーフィルターの製造方法の好適な実施形態を示す断面図、図5は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
本実施形態のカラーフィルターの製造方法は、図4に示すように、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、インクジェット方式により第1のインク21を隔壁13で囲まれた領域(セル)に付与する第1のインク付与工程(1d)と、セル内に吐出された第1のインク21から第1の液性媒体を除去する第1の液性媒体除去工程(1e)と、第1のインク21が吐出されたセル内に第2のインク22を吐出する第2のインク付与工程(1f)と、セル内に吐出された第2のインク22から第2の液性媒体を除去する第2の液性媒体除去工程(1g)とを有している。
【0153】
以下、各工程について詳細に説明する。
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0154】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。
【0155】
また、現像処理の前に、塗膜3に対して撥液化処理を行ってもよい。例えば、現像処理の前に、塗膜3に対してフッ素樹脂をスタンプ法等で付与してもよいし、フッ素をプラズマ重合処理で塗膜3(感放射線性組成物)の表面にドープしてもよい。そのような処理をすることで、バンク表面(図中の上面。内壁面を除く部位)のみ撥液化して、後の工程で形成される着色部12の表面のさらなる平坦化に寄与する。また、感放射線性組成物のなかに、表面のみに配向するように、比重の軽いフッ素樹脂を添加しておいてもよい。
【0156】
<第1のインク付与工程>
次に、インクジェット方式により、着色剤と、当該着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体とを含む第1のインク21を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色膜121に対応する複数種の第1のインク21を用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上の第1のインク21が混ざり合うことが確実に防止される。
【0157】
第1のインク21の吐出は、図5に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
図5に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、第1のインク21を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101から第1のインク21が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)をキャリッジに搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッドとは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッドのそれぞれに第1のインク21が圧縮空気によって供給される。
【0158】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、第1のインク21を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
【0159】
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッドの相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、第1のインク21を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0160】
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色膜121に対応する第1のインク21を、セル14内に付与する。上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的に第1のインク21を付与することができる。また、上述したように、第1のインク21は、優れた吐出安定性を有しており、長期間、液滴吐出を行った場合であっても、飛行曲がりや、液滴の吐出量が不安定化する等の問題が極めて発生しにくいものである。したがって、異なる色の着色膜121を形成するのに用いられる複数種の第1のインク21が混ざり合って(混色して)しまったり、本来同一の着色濃度であることが求められる複数個の着色部12の間での着色濃度のばらつきが発生する等の問題を確実に防止することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、第1のインク21を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色の第1のインク21に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
【0161】
また、上述したように、本実施形態のカラーフィルターの製造方法では、着色部の構成材料を第1のインクと第2のインクに分けて含有させることにより、第1のインクおよび第2のインクの吐出安定性を、いずれも優れたものとすることができる。このため、上記のような液滴吐出を行った場合において、各セル14に付与される第1のインク21の液滴量の不本意なばらつきが発生することを確実に防止することができる。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッドは、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッドは、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して第1のインク21を吐出する構成であってもよい。
【0162】
<第1の液性媒体除去工程>
次に、セル14内の第1のインク21から、第1の液性媒体を除去する(1e)。このように、第1のインク21から第1の液性媒体を除去することにより、第1のインク21の流動性を失わせることができる。そして、本工程において第1の液性媒体が除去されて着色膜121が形成されると、引き続く第2のインク付与工程において第2のインク22を付与した際にも、第1のインク21の構成材料が、付与された第2のインク22中に拡散してしまうことが確実に防止される。その結果、着色膜121と樹脂膜122とを有する構成の着色部12を形成することができ、上述したような効果が発揮される。特に、第1のインク21が着色剤として顔料を含むものであるため、第1の液性媒体が除去されることにより、顔料粒子が強固に凝集し、第2のインクへの拡散が確実に防止される。
【0163】
第1の液性媒体の除去は、通常、加熱により行う。
第1の液性媒体の除去を加熱により行う場合、加熱温度は、例えば、150℃以上300℃以下であることが好ましく200℃以上280℃以下であることがより好ましい。これにより、本工程において、第1の液性媒体が確実に除去され、第2のインク22中への成分の溶出が生じにくい着色膜121をより確実に形成することができる。また、基板11等への悪影響の発生を確実に防止することができる。また、着色膜121の形状をより容易に所望のものとすることができる。
【0164】
また、本工程においては、第1のインク21が付与された基板11を減圧環境下においてもよい。これにより、基板11等への悪影響の発生を防止しつつ、第1の液性媒体の除去を効率よく行うことができる。
また、本工程においては、紫外線や電子線、もしくは放射線等のエネルギー照射を行ってもよい。
また、本工程は、2以上の工程で構成されていてもよい。すなわち、プレ除去工程と本除去工程とで第1の液性媒体を除去するものであってもよい。
【0165】
<第2のインク付与工程>
次に、セル14内に第2のインク22を付与する(1e)。
上述したように、セル14内の第1のインク21からは第1の液性媒体が除去され、着色膜121が形成されている。このため、第1のインク21が付与されたセル14(着色膜121が形成されたセル14)内に第2のインク22を付与した際に、第1のインク21の成分と第2のインク22の成分とが混ざり合ってしまうことが防止され、着色膜121と樹脂膜122との積層構造をなす着色部12を確実に形成することができる。特に、第2のインク22の含まれる第2の液性媒体は、第1のインク21を構成する第1の液性媒体に比べて、低沸点を有するものである。このような第2の液性媒体を含む第2のインク22を付与することにより、セル14内の着色膜121を構成する顔料の凝集が促進されるため、第2のインク22を付与した際に、第1のインク21の成分と第2のインク22の成分とが混ざり合ってしまうことが確実に防止され、着色膜121と樹脂膜122との積層構造をなす着色部12をより確実に形成することができる。また、上述したように、着色部12の構成成分の一部を第1のインク21中に含むものとしているため、第2のインク22の液滴の吐出安定性を優れたものとすることができる。その結果、所望量の第2のインク22を目的の位置に、確実に着弾させることができるため、最終的なカラーフィルター1での各着色部12の不本意な厚さのばらつきを防止することができる。また、インクジェット法による高速描画が可能となるため、全体としての、カラーフィルター1の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0166】
第2のインク22のセル14内への付与は、インクジェット方式の液滴吐出装置により行われるものであり、上記のような液滴吐出装置100を用い、第1のインク21と同様の方法で行うことができる。
また、第2のインク22は、複数の第1のインク21が付与されるセルのうち、複数の第1のインク21のうち最も固形分の少ない第1のインク21が付与されるべきセルに対し最も多く付与されることが好ましい。これにより、容易かつ確実に着色部12の厚さを調整することができ、着色部12の厚さが特に均一なカラーフィルターを製造することができる。このため、得られるカラーフィルター1は、各部位の濃度むら、色むらが特に抑制されたものとなる。また、後述するような画像表示装置にこのようなカラーフィルター1を用いた際に、着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面側に設けられる共通電極が、各着色部12と隔壁13との段差によって、断線する等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
また、特に、複数種の第1のインク21が付与されたセル14で、付与された第1のインク21の固形分が少ないセル14ほど、第2のインク22は、多く付与されることが好ましい。これにより、形成される着色部12の厚さを特に均一にすることができる。
【0167】
<第2の液性媒体除去工程>
次に、セル14内の第2のインク22から、第2の液性媒体を除去し、樹脂膜122を形成し、着色膜121と樹脂膜122とを備えた着色部12を得る(1g)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
第2の液性媒体の除去は、例えば、加熱により行うことができる。
【0168】
第2の液性媒体の除去を加熱により行う場合、基板11の温度は、例えば、60℃以上260℃以下であることが好ましく180℃以上250℃以下であることがより好ましい。これにより、第2のインク22から効率よく第2の液性媒体を除去することができる。また、基板11等への悪影響の発生を確実に防止することができる。また、第2のインクに含まれる硬化性樹脂材料の硬化反応を確実に進行させることができ、製造されるカラーフィルター1の信頼性、耐久性を特に優れたものとすることができる。また、樹脂層122の形状をより容易に所望のものとすることができる。
【0169】
また、本工程においては、第2のインク22が付与された基板11を減圧環境下においてもよい。これにより、基板11等への悪影響の発生を防止しつつ、第1の液性媒体の除去を効率よく行うことができる。
また、本工程においては、紫外線や電子線、もしくは放射線等のエネルギー照射を行ってもよい。
【0170】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図6は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0171】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図中下側)から出射する。
【0172】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図7は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図8は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0173】
図9は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0174】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0175】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0176】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0177】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターを適用した場合、色むら、濃度むら等の問題を特に生じ易かったが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0178】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応する第1のインクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の第1のインクから第1の液性媒体を除去するもの、すなわち、第1の液性媒体除去工程を1回のみ行うものとして説明したが、第1のインク付与工程、第1の液性媒体除去工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
また、例えば、第1のインク付与工程および第2のインク付与工程は、それぞれ、複数回行われるものであってもよい。
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
【0179】
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットが、光の三原色に対応する3種(3色)の第1のインクおよび1種の第2のインクを備える場合について中心的に説明したが、カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクの数、種類(色)は、上述したものに限定されない。例えば、上述したカラーフィルター用インクセットは、4種以上の第1のインクを備えるものであってもよい。
【0180】
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットは、1種の第2のインクのみを備えるものとして説明したが、複数種の第2のインクを備えるものであってもよい。例えば、カラーフィルター用インクセットは、複数種の第1のインクにそれぞれ対応する複数種の第2のインクを備え、第2のインク毎に組成が異なるものであってもよい。特に第2のインク毎に硬化性樹脂材料の含有量を調整することにより、複数の第2のインクの吐出量を全て同じものとしつつ、第2のインク毎に付与する硬化性樹脂材料の量を異なるものとすることができる。これにより、液滴吐出時における吐出条件の設定がより簡易なものとなる。
【実施例】
【0181】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]重合体の合成
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部を入れて、80℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、単量体成分m1としてのメタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート):60重量部、単量体成分m2としてのメタクリル酸:20重量部、単量体成分m3としてのステアリルメタクリレート:20重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:30重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。一方、ラジカル開始剤(重合開始剤)としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:5重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:90重量部に溶解させた溶液を、別の滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。重合開始剤の滴下が終了した後、4時間同温度に保持(熟成)し、その後、室温まで冷却して、単量体成分m1、m2、m3を含み上記式(8)で表される重合体Mとしての重合体M1を得た。
(合成例2、3)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)および単量体成分の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、2種の重合体M(重合体M2〜M3)が得られた。
【0182】
(合成例4)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(11)で表される単量体成分(化合物)x1:180重量部、上記式(12)で表される単量体成分(化合物)x2:90重量部、上記式(13)で表される単量体成分(化合物)x3:15重量部、上記式(14)で表される単量体成分(化合物)x4:15重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分x1、x2、x3、x4を含み上記式(19)で表される重合体Xとしての重合体X1を得た。
(合成例5、6)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例9と同様の操作を行った。その結果、2種の重合体X(重合体X2〜X3)が得られた。
【0183】
(合成例7)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(15)で表される単量体成分(化合物)y1:200重量部、上記式(16)で表される単量体成分(化合物)y2:100重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分y1、y2を含み上記式(20)で表される重合体Yとしての重合体Y1を得た。
(合成例8、9)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例17と同様の操作を行った。その結果、2種の重合体Y(重合体Y2、Y3)が得られた。
【0184】
表1には、合成例1〜9で合成した各重合体を構成する各単量体成分の比率、各重合体の重量平均分子量Mwをまとめて示した。表中、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)を「m1a」で示し、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチルを「m1b」で示し、メタクリル酸を「m2a」で示し、ステアリルメタクリレートを「m3a」で示し、メタクリル酸メチルを「m4a」で示し、スチレンを「m5」で示し、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルアクリレートと3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレートの混合物を「m7」で示した。なお、上記のようにして合成した重合体は、いずれも、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1以上3以下の範囲内であった。
【0185】
【表1】

【0186】
[2]カラーフィルター用インクセットの調製
(インクセット1)
以下のようにして、3種の第1のインクと1種の第2のインクとからなるカラーフィルター用インクセットを調製した。
【0187】
<第1のインクセットの調製>
分散剤としてのディスパービック166と、重合体M1と、重合体M1を溶解する溶媒(第1のインクにおける第1の液性媒体の構成成分)として機能するジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとを、攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより、重合体M1が溶媒に溶解した重合体M溶液を得た(重合体M溶液調製工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0188】
次に、以下に述べるようにして、重合体M溶液調製工程で得られた重合体M溶液に、顔料を添加し、攪拌機(ビーズミル)を用いて、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた重合体M溶液に、顔料を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、C.I.ピグメントグリーン58の粉末と、下記式(34)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体(副顔料)の粉末と、C.I.ピグメントイエロー150との混合物を用いた。また、このとき、重合体M溶液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
【0189】
【化27】

【0190】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、得られる顔料分散体中における顔料の含有率が13wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
【0191】
次に、希釈用の液性媒体(第1の液性媒体)として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを加え、混合した(希釈工程)。本工程は、上記の各材料を内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする緑色の第1のインク(Gインク)を得た。
また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記緑色の第1のインクと同様にして、赤色の第1のインク(Rインク)、青色の第1のインク(Bインク)を調製した。
【0192】
<第2のインクの調製>
重合体M1と、重合体X1と、重合体Y1と、第2の液性媒体としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとを混合することにより、第2のインクを得た。
このようにして得られた第2のインクと、第1のインクセットを組み合わせることで、4種のインクからなるカラーフィルター用インクセットを得た。
【0193】
(インクセット2、3)
カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクの調製に用いる材料の種類・使用量を表2に示すようにした以外は、前記インクセット1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを調製した。
前記各ラーフィルター用インクセットを構成する各インクの構成成分の種類、含有量を表2に示した。なお、表中、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、上記式(34)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基が1個)で構成された粉末を「SPD1」、C.I.ピグメントレッド177と式(30)で表される顔料誘導体との混合物を「PR177D」、C.I.ピグメントレッド254と式(31)で表される顔料誘導体との混合物を「PR254D」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、C.I.ピグメントバイオレット23を「PV23」、ディスパービック166を「DA4」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S1」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「S2」、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートを「S3」、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S6」、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S7」、3−エトキシプロピオン酸エチルを「S8」で示した。
【0194】
また、インクの製造で用いた、C.I.ピグメントレッド177と式(30)で表される顔料誘導体との混合物中における式(30)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1wt%以上10wt%以下であった。また、インクの製造で用いた、C.I.ピグメントレッド254と式(31)で表される顔料誘導体との混合物中における式(31)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1wt%以上10wt%以下であった。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記カラーフィルター用インクセットを構成する第1のインクの25℃における粘度は、いずれも、5mPa・s以上11mPa・s以下の範囲内の値であった。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各カラーフィルター用インクセットを構成する第2のインクの25℃における粘度は、いずれも、1.5mPa・s以上3.5mPa・s以下の範囲内の値であった。
【0195】
【表2】

【0196】
[3]カラーフィルターの製造
(実施例1)
以下の[3.1]〜[3.7]の工程を経て、8000枚のカラーフィルターを製造した。
【0197】
[3.1]基板準備工程
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
【0198】
[3.2]隔壁形成工程
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、CFとHeガスとを1:9(体積比)で混合したガスを導入した大気圧プラズマ重合装置で、出力800W、プラズマ発生装置からテーブルまでの距離:0.5mm、処理テーブル速度:10m/sという条件で、プリベーク処理、ポストエキスポジャーベーク処理の施された塗膜の表面だけにフッ素をドーピングした。その後、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:140℃、加熱時間:10分という条件で行った。形成された隔壁の厚さは、2.0μmであった。
【0199】
[3.3]第1のインク付与工程
次に、図5に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、第1のインクを吐出した。この際、3色の第1のインクを用い、各色の第1のインクが混色しないようにした。また、第1のインクの吐出は、液滴吐出装置のピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した上で行った。
[3.4]第1の液性媒体除去工程
その後、ホットプレート上にて230℃で60分間の加熱処理を施すことにより、第1の液性媒体を除去し、3色(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の着色膜を形成した。
【0200】
[3.5]第2のインク付与工程
次に、図5に示すような液滴吐出装置を用いて、第1のインクが吐出されたセル内に、第2のインクを吐出した。この際、各セル内には、形成される着色部(着色部と樹脂膜との積層体)の平均厚さが2.0μmとなるような量の第2のインクを付与した。第2のインクの吐出は、液滴吐出装置のピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した上で行った。
[3.6]第2の液性媒体除去工程
その後、ホットプレート上にて100℃で60分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で15分間の加熱処理を施すことにより、それぞれ着色膜と樹脂膜とからなる3色の着色部が形成された。
【0201】
[3.7]洗浄工程
その後、N−メチル−2−ピロリドンおよびγ−ブチロラクトンを用いた洗浄を行い、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
また、上記と同様にして、着色剤を含むインクとして1種のみを用いて、全てのセルに同色の着色部が形成されるようにした以外は、上記と同様の方法を用いることにより、着色部として緑色の着色部のみを備えた緑色単色カラーフィルター、着色部として赤色の着色部のみを備えた赤色単色カラーフィルター、着色部として青色の着色部のみを備えた青色単色カラーフィルターを製造した。
【0202】
(実施例2〜5、比較例1、2)
表3に示すインクセットを用い、各インクの吐出量、液性媒体の除去条件等を調整することにより、着色膜、樹脂層および着色部の平均厚さ、TおよびT等の値を表3に示す値となるようにした以外は、前記実施例1と同様にカラーフィルターを製造した。
各実施例および各比較例において使用したインクの種類、得られたカラーフィルターの着色膜、樹脂層および着色部の平均厚さ、TおよびT等の値を表3に示した。
【0203】
【表3】

【0204】
[4]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各実施例および比較例のカラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[4.1]コントラスト比の評価
前記各実施例および各比較例について、上記のようにして製造した3種の単色カラーフィルター(緑色単色カラーフィルター、赤色単色カラーフィルター、青色単色カラーフィルター)に関して、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、コントラスト比(CR)を求め、下記のようにして評価を行った。
【0205】
赤色単色カラーフィルターについては、x=0.651のときのCRを、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3000以上。
B:CRが2500以上3000未満。
C:CRが2100以上2500未満。
D:CRが1800以上2100未満。
E:CRが1800未満。
【0206】
緑色単色カラーフィルターについては、y=0.600のときのCRを、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3900以上。
B:CRが3600以上3900未満。
C:CRが3300以上3600未満。
D:CRが2900以上3300未満。
E:CRが2900未満。
【0207】
青色単色カラーフィルターについては、y=0.141のときのCRを、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3200以上。
B:CRが2800以上3200未満。
C:CRが2500以上2800未満。
D:CRが2300以上2500未満。
E:CRが2300未満。
【0208】
[4.2]明度の評価
前記各実施例および各比較例のカラーフィルターのうち、それぞれ、8000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図6に示すような液晶表示装置を製造した。これらの液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置について、各色の単色表示を行い、色度計(ミノルタ社製、CM−3700d、光源としてC光源使用)を用いて、xyY表色法による三刺激値を求め、下記のようにして評価を行った。
すなわち、赤色の単色表示については、x=0.651の時のY値を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0209】
A:明度Yが21.0以上。
B:明度Yが20.5以上21.0未満。
C:明度Yが19.9以上20.5未満。
D:明度Yが18.0以上19.9未満。
E:明度Yが18.0未満。
【0210】
また、緑色の単色表示については、y=0.600の時のY値を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:明度Yが57.0以上。
B:明度Yが55.3以上57.0未満。
C:明度Yが53.3以上55.3未満。
D:明度Yが51.0以上53.3未満。
E:明度Yが51.0未満。
【0211】
また、青色の単色表示については、y=0.141の時のY値を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:明度Yが11.8以上。
B:明度Yが11.5以上11.8未満。
C:明度Yが10.8以上11.5未満。
D:明度Yが10.0以上10.8未満。
E:明度Yが10.0未満。
【0212】
[4.3]色むら、濃度むら
前記[4.2]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置について、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0213】
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0214】
[4.4]液晶層の電圧保持率
前記[4.2]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置を用意し、液晶層に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.5ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から16.5ミリ秒後の電圧保持率(VHR)を、液晶用電圧保持率測定システム(マイクロニクス社製、製品名「MZ1800」)を用いて測定し、以下の4段階の基準に従い、評価した。
【0215】
A:VHRが98%以上。
B:VHRが96%以上98%未満。
C:VHRが91%以上96%未満。
D:VHRが91%未満。
これらの結果を表4に示す。
【0216】
【表4】

【0217】
表4から明らかなように、各実施例のカラーフィルターは、明度およびコントラスト比に優れていた。また、各実施例のカラーフィルターを備えた液晶表示装置の液晶層の電圧保持率に優れていた。これに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【符号の説明】
【0218】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁 14…セル 15…画素 16…有効領域 21…第1のインク 22…第2のインク 121…着色膜 122…樹脂膜 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置(移動手段) 106…ステージ 108…第2位置制御装置(移動手段) 110…チューブ 112…制御手段 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピューター 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッターボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニター 1440…パーソナルコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、当該基板側から順に着色膜と樹脂層とを積層した積層体で構成される着色部を複数有するカラーフィルターであって、
前記着色膜は、着色剤と、前記着色剤が分散および/または溶解する第1の液性媒体とを含む第1のインクを液滴吐出法により吐出して形成されたものであり、
前記樹脂層は、硬化性樹脂材料と、前記硬化性樹脂材料を分散および/または溶解する第2の液性媒体とを含む第2のインクを液滴吐出法により吐出して形成されたものであり、
カラーフィルターを平面視した場合において、前記着色部における、前記着色部と相似形であり、前記着色部に対する相似比が0.90であり、かつ重心が前記着色部と同一の点にある領域を有効領域とし、
前記基板と略平行な面であって、前記基板からの距離が、前記着色膜の平均厚さと同等である面を基準面としたとき、下記式(I)の関係を満足する着色部が設けられていることを特徴とするカラーフィルター。
1.1≦T/T≦1.7・・・ (I)
(ただし、T[μm]は、前記有効領域の境界線上における前記基準面から前記樹脂層表面までの距離であり、T[μm]は、前記有効領域内における前記基準面から前記樹脂層表面までの最短距離である。)
【請求項2】
前記樹脂層の前記有効領域における表面形状は、凹面をなしている請求項1に記載のカラーフィルター。
【請求項3】
前記着色膜の平均厚さは、1.2μm以上2.3μm以下である請求項1または2に記載のカラーフィルター。
【請求項4】
前記樹脂層の平均厚さは、0.1μm以上1.2μm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のカラーフィルター。
【請求項5】
前記着色部の平均厚さは、1.5μm以上2.0μm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルター。
【請求項6】
前記硬化性樹脂材料は、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xと、
下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yと、を含む請求項1ないし5のいずれかに記載のカラーフィルター。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項7】
前記第1の液性媒体は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載のカラーフィルター。
【請求項8】
前記第2の液性媒体は、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、および、1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし7のいずれかに記載のカラーフィルター。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
画像表示装置は、液晶パネルである請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−159702(P2012−159702A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19520(P2011−19520)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】