説明

カルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体とその製造法

【課題】 電気特性、熱特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規なカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体又はその塩若しくは等価体を提供する。
【解決手段】 カルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体は、下記式(1)
【化1】


[式中、R1〜R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)又は(3)
【化2】


(式中、環Z1、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。m、nはそれぞれ1以上の整数を示す。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1〜R6のうち少なくとも1つは式(2)又は(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す]
で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線板(ベース材、カバー材)材料、CCL(銅張り積層板)材料、半導体デバイスや多層配線基板の層間絶縁膜材料、接着剤材料、液晶配向膜材料、塗料材料、光学材料等の原料、添加剤、航空宇宙用材料や車両用材料又はその原料などとして有用な新規なカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体又はその塩若しくは等価体、及び該アリールポリアダマンタン誘導体の製造法、並びにその合成原料となる新規なアリールポリアダマンタン誘導体及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタン誘導体は安定な炭素骨格構造を有していることから、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料の原料として用いられている。一方、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸無水物と、ビフェノール類、芳香族ジアミン、アミノフェノール類等とを反応して得られる芳香族ポリエステル、芳香族ポリイミド(アラミド)、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズイミダゾールなどは、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度などの点で優れた特性を有することから、自動車、電気電子、精密機械産業等のエンプラとして幅広く利用されている。近年、電気電子部品や精密機械部品、自動車機械部品などの分野では、小型化、精密化がいっそう進み、材料の耐熱性等の特性に関しより高い性能が要求されるようになってきている。
【0003】
米国特許第4142036号明細書には、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)アダマンタン等のカルボキシフェニルアダマンタン誘導体が開示されている。しかし、これらの化合物をモノマーとして用いて得られるポリマーは機能性材料として利用した場合、耐熱性等の点で充分でなく、より高い耐熱性及びその他の特性を有するポリマーの原料が求められている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4142036号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電気特性、熱特性、機械特性、光学特性、物理特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規なカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体又はその塩若しくは等価体と、前記アリールポリアダマンタン誘導体の効率的な製造法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記カルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体を合成する上で有用な新規なアリールポリアダマンタン誘導体とその効率のよい製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アダマンタン環が2〜4個結合したポリアダマンタン化合物から誘導される新規なカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)又は(3)
【化2】

(式中、環Z1、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。m、nはそれぞれ1以上の整数を示す。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)又は(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体又はその塩若しくは等価体を提供する。
【0008】
本発明は、また、下記式(4)
【化3】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(5)
【化4】

(式中、環Z1は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を酸化又は加水分解に付して、下記式(6)
【化5】

[式中、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bは、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化6】

(式中、環Z1は芳香環を示す。mは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bのうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4b、R6bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とするカルボキシル基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法を提供する。
【0009】
本発明は、さらに、下記式(7)
【化7】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(8)
【化8】

(式中、環Z2は芳香環を示す。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を酸化して、下記式(9)
【化9】

[式中、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bは、同一又は異なって、水素原子、下記式(3)
【化10】

(式中、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4b、R6bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とする酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法を提供する。
【0010】
本発明は、さらにまた、下記式(10)
【化11】

[式中、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cは、同一又は異なって、水素原子、下記式(11)
【化12】

(式中、環Z2は芳香環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cのうち少なくとも1つは式(11)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4c、R6cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を脱水反応に付して、下記式(12)
【化13】

[式中、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dは、同一又は異なって、水素原子、下記式(3)
【化14】

(式中、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4d、R6dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とする酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法を提供する。
【0011】
本発明は、また、下記式(12)
【化15】

[式中、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dは、同一又は異なって、水素原子、下記式(3)
【化16】

(式中、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4d、R6dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を加水分解に付して、下記式(10)
【化17】

[式中、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cは、同一又は異なって、水素原子、下記式(11)
【化18】

(式中、環Z2は芳香環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cのうち少なくとも1つは式(11)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4c、R6cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とするカルボキシル基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、下記式(13)
【化19】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(5)又は(8)
【化20】

(式中、環Z1、環Z2は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)又は(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を提供する。
【0013】
本発明は、さらにまた、下記式(14)
【化21】

[式中、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eは、同一又は異なって、水素原子、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な置換基、又はその他の置換基を示す。但し、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eのうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な置換基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4e、R6eはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物と、下記式(15)又は(16)
【化22】

(式中、環Z1、環Z2は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい)
で表される化合物とを反応させて、下記式(13)
【化23】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(5)又は(8)
【化24】

(式中、環Z1、環Z2、X1、X2、X3、m、nは前記に同じ。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)又は(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とするアリールポリアダマンタン誘導体の製造法を提供する。
【0014】
なお、本明細書において、k、m、n、pは、それぞれ括弧内の基の個数を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気特性、熱特性、機械特性、光学特性、物理特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規なカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体とその効率的な製造法が提供される。
また、本発明によれば、上記カルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体を合成する上で有用な新規なアリールポリアダマンタン誘導体とその効率のよい製造法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体は前記式(1)で表される。式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、前記式(2)又は(3)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)又は(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。なお、式(2)、(3)中、環Z1、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。m、nはそれぞれ1以上の整数を示す。mは好ましくは1〜4の整数である。nは好ましくは1又は2である。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。式(1)で表される化合物は、式(2)で表される基と式(3)で表される基の両方の基を有していてもよい。
【0017】
式(1)で表される化合物は、カルボキシル基又は酸無水物基を利用した重合又は反応により或いはカルボキシル基又は酸無水物基に重合性基を導入した重合性単量体の重合により機能性ポリマーに誘導することができる。例えば、式(2)又は(3)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物は、カルボキシル基又は酸無水物基に重合性基を導入することにより、側鎖にポリアダマンタン環を有するポリマー(ペンダント型)のモノマー原料として利用できる。また、式(2)又は(3)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物によれば、カルボキシル基又は酸無水物基と反応しうる基を有するポリマーと反応させることにより、アリール基が結合したポリアダマンタン骨格を該ポリマーの側鎖として導入することができる。一方、式(2)又は(3)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物(特に、前記芳香族環式基を両端のアダマンタン環に1つずつ有する化合物)は、カルボキシル基又は酸無水物基を利用した縮合反応により合成されるポリマー(主鎖型)のモノマー原料として使用できる。さらに、式(2)又は(3)で表される芳香族環式基を3つ以上有する化合物(特に、前記芳香族環式基を少なくとも両端のアダマンタン環に1つずつ有する化合物)は、3次元網目構造を有する高次重合体の原料等として利用できる。
【0018】
環Z1、環Z2における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環等の芳香族炭素環;ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環などの芳香族複素環などが挙げられる。芳香環には非芳香環(シクロヘキサン環等の脂環;ピペリジン環、オキソラン環、オキサン環等の非芳香族性複素環)が縮合していてもよい。
【0019】
また、前記芳香環(環Z1、環Z2)には、溶剤溶解性、耐熱性、その他の機能を付与または向上させるため、式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。このような置換基として、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ(ハロ)アルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、アリール基などが挙げられる。該置換基の数は0〜4程度である。
【0020】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1〜15程度のアルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基);トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル基などの炭素数1〜15程度のハロアルキル基(好ましくはC1-10ハロアルキル基、さらに好ましくはC1-6ハロアルキル基)などが挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基として、特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜15程度のアルコキシ基(好ましくはC1-10アルコキシ基、さらに好ましくはC1-6アルコキシ基);トリフルオロメトキシ基などの炭素数1〜15程度のハロアルコキシ基(好ましくはC1-10ハロアルコキシ基、さらに好ましくはC1-6ハロアルコキシ基)などが挙げられる。ヒドロキシ(ハロ)アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−ヒドロキシエチル基など(好ましくは、ヒドロキシ−C1-4アルキル基、ヒドロキシ−C1-4ハロアルキル基等)が挙げられる。
【0021】
前記ヒドロキシル基や、ヒドロキシ(ハロ)アルキル基におけるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル基など)等の、ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基など)など、及び、分子内にヒドロキシル基(ヒドロキシメチル基を含む)が2以上存在するときには、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(例えば、メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基など)などが例示できる。
【0022】
前記アミノ基の保護基としては、例えば、前記ヒドロキシル基の保護基として例示したアルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。前記アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。アシル基の保護基としては有機合成分野で慣用の保護基を使用できる。アシル基の保護された形態として、例えば、アセタール(ヘミアセタールを含む)などが挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0023】
前記芳香環が有していてもよい置換基のなかでも、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、アリール基などが特に好ましい。
【0024】
環Z3における環状酸無水物を構成する環としては、好ましくは5員環又は6員環(Z2が多環の場合)である。式(2)、式(3)において、カルボキシル基又は酸無水物基の置換位置は特に限定されず、用途やポリマー設計に応じて適宜選択できる。例えば芳香環がベンゼン環の場合、カルボキシル基又は酸無水物基は、オルト位、メタ位、パラ位、又は2,3位、3,4位等の何れであってもよいが、オルト位やパラ位が配向性上合成しやすく、特にパラ位又は3,4位が重合用モノマーとして有用である。また、芳香環が多環の場合には、ベンゼン環の場合に準じてカルボキシル基又は酸無水物基の置換位置を選択できる。
【0025】
式(1)に示されるアダマンタン環には、溶剤溶解性、耐熱性、その他の機能を付与または向上させるため、式(2)又は(3)で表される基以外の置換基を有していてもよい。また、置換基はアダマンタン環の橋頭位、非橋頭位の何れに結合していてもよい。
【0026】
アダマンタン環が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ(ハロ)アルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基(=O)などが挙げられる。
【0027】
ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ(ハロ)アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基やヒドロキシ(ハロ)アルキル基におけるヒドロキシル基の保護基、アミノ基の保護基、アシル基の保護基は、前記環Z1、Z2の置換基の場合と同様である。また、保護基で保護されたカルボキシル基としては、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシカルボニル基など)、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基などが挙げられる。保護基で保護されたスルホ基としては、アルコキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、ブトキシスルホニル基等のC1-6アルコキシスルホニル基など)、シクロアルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アラルキルオキシスルホニル基、トリアルキルシリルオキシスルホニル基、置換又は無置換スルファモイル基などが挙げられる。
【0028】
上記のアダマンタン環が有していてもよい置換基のなかでも、溶剤溶解性を著しく高める機能を有することから、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基などが好ましく、特に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。また、機能性を向上させるため、アダマンタン環が有していてもよい置換基として、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基なども好ましい。
【0029】
前記置換基(例えば、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基等)がアダマンタン環の橋頭位に結合する場合、アダマンタン環の橋頭位の1つに結合していてもよいが、アダマンタン環の2つの橋頭位に結合しているのが特に好ましい。また、複数のアダマンタン環の各2箇所の橋頭位すべてに該置換基を有するのも好ましい。
【0030】
式(1)で表される化合物は、分子中に酸性基又は塩基性基を有する時は塩を形成しうる。本発明にはこのような塩も含まれる。分子中にカルボキシル基やスルホ基(スルホン酸基)等の酸性基を有する場合の塩としては、例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが例示される。分子中にアミノ基等の塩基性基を有する場合の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;p−トルエンスルホン酸塩、酢酸塩等の有機酸塩が挙げられる。塩は通常の塩形成反応により製造できる。
【0031】
式(1)で表される化合物は慣用の方法によりカルボン酸の等価体に誘導できる。本発明にはこのようなカルボン酸の等価体も含まれる。カルボン酸の等価体としては、例えば、エステル、カルボン酸無水物、アミド、ヒドラジドなどが挙げられる。エステルとして、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、t−ブチルエステルなどのアルキルエステル(特にC1-6アルキルエステル等);フェニルエステルなどのアリールエステル(特にC6-15アリールエステル等);ベンジルエステルなどのアラルキルエステル(特にC6-16アラルキルエステル等);メトキシメチルエステル、テトラヒドロピラニルエステル、テトラヒドロフラニルエステル、メトキシエトキシメチルエステルなどのヘミアセタールエステル;トリメチルシリルエステルなどのシリルエステル;N−ヒドロキシスクシンイミドイルエステルなどの活性エステルなどが挙げられる。カルボン酸無水物としては、例えば、酢酸との混合酸無水物などが挙げられる。アミドとしては、例えば、N,N−ジメチルアミド、ピロリジニルアミドなどが挙げられる。ヒドラジドとしては、例えば、ヒドラジド、N−フェニルヒドラジドなどが挙げられる。カルボン酸の等価体への誘導は一般的に用いられる反応を利用することにより行うことができる。
【0032】
式(1)で表される化合物のなかでも、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)、(1f)、(1g)、(1h)、(1i)、(1j)、(1k)、(1l)で表される化合物が特に好ましい。
【化25】

【化26】

(上記式中、RA、RB、RC、RDは、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基を示す。ベンゼン環又はナフタレン環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のRC、RDはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1を示す。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよく、有していなくてもよい)
【0033】
前記ベンゼン環又はナフタレン環が有していてもよい置換基は、前記Z1、Z2が有していてもよい置換基と同様である。また、アダマンタン環が有していてもよい置換基は、前記式(1)におけるアダマンタン環が有していてもよい置換基と同様である。
【0034】
式(1a)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(4−カルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(4−カルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−3′−ヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(4−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−3′−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどの4−カルボキシフェニルビアダマンタン誘導体;3−(4−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの4−カルボキシフェニルトリアダマンタン誘導体;3−(4−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−カルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの4−カルボキシフェニルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0035】
式(1a)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのビス(4−カルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(4−カルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(4−カルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0036】
式(1b)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(2−カルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(2−カルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−3′−ヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(2−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−3′−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−3′−ヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−3′−ヒドロキシ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどの2−カルボキシフェニルビアダマンタン誘導体;3−(2−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの2−カルボキシフェニルトリアダマンタン誘導体;3−(2−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2−カルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの2−カルボキシフェニルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0037】
式(1b)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(2−カルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−カルボキシ−5−フェニルフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのビス(2−カルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(2−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2−カルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(2−カルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(2−カルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2−カルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(2−カルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0038】
式(1c)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの(3,4−ジカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの(3,4−ジカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0039】
式(1c)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの3,3′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(3,4−ジカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0040】
式(1d)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの(2,3−ジカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの(2,3−ジカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの(2,3−ジカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0041】
式(1d)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの3,3′−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(2,3−ジカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(2,3−ジカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0042】
式(1e)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの(2,5−ジカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの(2,5−ジカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの(2,5−ジカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0043】
式(1e)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの3,3′−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(2,5−ジカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(2,5−ジカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0044】
式(1f)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0045】
式(1f)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの3,3′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0046】
式(1g)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、前記式(1c)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表例に対応するカルボン酸無水物が挙げられる。式(1g)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、前記式(1c)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表例に対応するカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0047】
式(1h)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、前記式(1f)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表例に対応するカルボン酸二無水物が挙げられる。式(1h)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、前記式(1f)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表例に対応するカルボン酸四無水物が挙げられる。
【0048】
式(1i)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)ビアダマンタン誘導体;3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)トリアダマンタン誘導体;3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0049】
式(1i)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの3,3′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0050】
式(1j)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)ビアダマンタン誘導体;3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどの(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)トリアダマンタン誘導体;3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどの(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0051】
式(1j)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、3,3′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタンなどの3,3′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)ビアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)トリアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)テトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0052】
式(1k)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、前記式(1i)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表例に対応するカルボン酸無水物が挙げられる。式(1k)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、前記式(1i)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表例に対応するカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0053】
式(1l)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表的な例として、前記式(1j)で表される化合物のうちp=0である化合物の代表例に対応するカルボン酸無水物が挙げられる。式(1l)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表的な例として、前記式(1j)で表される化合物のうちp=1である化合物の代表例に対応するカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0054】
本発明のカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体及びその塩並びに等価体は、非常に安定で対称性に優れた炭素骨格であるアダマンタン骨格を2〜4個有し、しかも反応性官能基として利用できるカルボキシル基若しくは酸無水物基又はカルボキシル基の等価基を有している。そのため、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料、例えば、フレキシブル配線板(ベース材、カバー材)材料、CCL(銅張り積層板)材料、半導体デバイスや多層配線基板の層間絶縁膜材料、接着剤材料、液晶配向膜材料、塗料材料、光学材料等の原料(モノマー)、添加剤、航空宇宙用材料や車両用材料又はその原料などとして有用である。
【0055】
本発明の式(1)で表される化合物のうち、アダマンタン環に式(2)で表される基が結合している化合物は、例えば、前記式(4)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を酸化又は加水分解に付すことにより製造できる。
【0056】
式(4)中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、前記式(5)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。また、式(5)において、環Z1は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。
【0057】
式(5)における芳香環(環Z1)、該芳香環が有していてもよい置換基は式(2)と同様である。R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は式(1)の場合と同様である。
【0058】
1における酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基のうち、酸化によりカルボキシル基に変換可能な基としては、例えば、アルキル基、アルキル基の低次酸化基(アルキル基の1位の炭素原子がカルボキシル基又はその等価体にまでは酸化されていない低次の酸化基)、シクロアルキル基等の芳香環のベンジル位に炭素−水素結合を有する有機基が挙げられる。
【0059】
前記アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル基などの第1級又は第2級アルキル基が挙げられる。これらの中でも、C1-4アルキル基、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基などのC1-3アルキル基が好ましい。アルキル基の低次酸化基には、例えば、ヒドロキシアルキル基、ホルミル基、ホルミルアルキル基、オキソ基を有するアルキル基などが含まれる。前記ヒドロキシアルキル基として、例えば、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−ヒドロキシブチル基など(ヒドロキシ−C1-6アルキル基等)が挙げられる。ホルミルアルキル基として、例えば、ホルミルメチル、1−ホルミルエチル、1−ホルミルプロピル基など(ホルミル−C1-6アルキル基等)が挙げられる。オキソ基を有するアルキル基として、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル基などの脂肪族アシル基(C1-6脂肪族アシル基等)等が挙げられる。これらの中でも、C1-4アルキル基(特に、C1-3アルキル基)に対応する低次酸化基が好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。前記アルキル基やその低次酸化基、シクロアルキル基は反応を阻害しない範囲で各種の置換基を有していてもよい。
【0060】
1における酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基のうち、加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基としては、シアノ基、加水分解で脱離可能な保護基で保護されたカルボキシル基などが挙げられる。加水分解で脱離可能な保護基で保護されたカルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(特にC1-4アルコキシ−カルボニル基);フェニルオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基;メトキシメチルオキシカルボニル基、テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、メトキシエトキシメチルオキシカルボニル基;アセチルオキシカルボニル基等のアシルオキシカルボニル基など)などが挙げられる。
【0061】
前記複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに形成する環としては、例えば、シクロアルケン環(特に5〜6員のシクロアルケン環)、環状エーテル(特に5〜6員の環状エーテル;ジヒドロフラン環、ジヒドロピラン環等)を構成する環などが挙げられる。X1が芳香環上の他の置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに形成する環としては、例えば、5〜6員のラクトン環などが挙げられる。これらも、酸化及び/又は加水分解によりカルボキシル基に変換される。
【0062】
前記式(5)で表される芳香族環式基の代表的な例として、例えば、4−メチルフェニル、2−メチルフェニル、2−メチル−5−フェニルフェニル、4−エチルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−シクロペンチルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−ヒドロキシメチルフェニル、4−ホルミルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、3−エチル−4−メチルフェニル、2−エチル−5−メチルフェニル、4−エチル−3−メチルフェニル、5−エチル−2−メチルフェニル、3,4−ジエチルフェニル、3,4−ジイソプロピルフェニル、3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル、3,4−ジホルミルフェニル、2,3,5−トリメチルフェニル、2,3,6−トリメチルフェニル、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基などの、アルキル基(特にC1-4アルキル基)及び該アルキル基の低次酸化基から選択された合計1〜4個の置換基で置換されたフェニル基;5−インダニル、5−テトラリニル、6−テトラリニル基などのシクロアルカン環が縮合したフェニル基;3−フタラニル、4−イソクロマニル、5−イソクロマニル基などの環状エーテルを構成する環が縮合したフェニル基;4−フタリドイル基、3−フタリドイル基などのラクトン環が縮合したフェニル基;4−メチルナフタレン−1−イル、5−メチルナフタレン−1−イル、6−メチルナフタレン−1−イル、5−メチルナフタレン−2−イル、6−メチルナフタレン−2−イル、4,5−ジメチルナフタレン−1−イル、5,6−ジメチルナフタレン−1−イル、5,6−ジメチルナフタレン−2−イル基などの、アルキル基(特にC1-4アルキル基)及び該アルキル基の低次酸化基から選択された合計1〜4個の置換基で置換されたナフチル基;シクロアルカン環が縮合したナフチル基;環状エーテルを構成する環が縮合したナフチル基;5−メチルピリジン−2−イル、4−メチルピリジン−2−イル、2−メチルピリジン−4−イル、2−メチルピリジン−5−イル、4,5−ジメチルピリジン−2−イル、8−メチルキノリン−5−イル、2−メチルキノリン−5−イル、2−メチルキノリン−6−イル基などの、アルキル基(特にC1-4アルキル基)及び該アルキル基の低次酸化基から選択された合計1〜4個の置換基で置換された含窒素芳香族環式基、含酸素芳香族環式基又は含硫黄芳香族環式基;シクロアルカン環が縮合した含窒素芳香族環式基、含酸素芳香族環式基又は含硫黄芳香族環式基;環状エーテルを構成する環が縮合した含窒素芳香族環式基、含酸素芳香族環式基又は含硫黄芳香族環式基などが挙げられる。
【0063】
式(4)で表される化合物のなかでも下記式(17)で表される化合物が特に好ましい。
【化27】

(式中、Y1、Y2は、同一又は異なって、前記式(5)で表される基を示す。RA、RB、RC、RDは、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基を示す。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のRC、RDはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1を示す。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよく、有していなくてもよい)
【0064】
これらの化合物において、前記式(5)で表される基としては上記代表的な例として挙げた基が好ましい。また、アダマンタン環が有していてもよい置換基は、前記式(1)におけるアダマンタン環が有していてもよい置換基と同様である。それらのなかでも、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基などが好ましく、特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。
【0065】
式(4)で表される化合物のうちk=1であり且つ式(5)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−イソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−イソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−メチル−5−フェニルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,5−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3−エチル−4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2−エチル−5−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−エチル−3−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5−エチル−2−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジエチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,5−ジエチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジイソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3−フタラニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5−インダニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5−テトラリニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−シクロペンチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−シクロヘキシルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(3−フタラニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどのアリールビアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するアリール−5,7−ジメチルビアダマンタン誘導体、アリール−5′,7′−ジメチルビアダマンタン誘導体、アリール−5,5′,7,7′−テトラメチルビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0066】
式(4)で表される化合物のうちk=1であり且つ式(5)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3′−ビス(4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−イソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−イソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−メチル−5−フェニルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,5−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3−エチル−4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2−エチル−5−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−エチル−3−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5−エチル−2−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジエチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,5−ジエチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジイソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−ヒドロキシメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3−フタラニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5−インダニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5−テトラリニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−シクロペンチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−シクロヘキシルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどのジアリールビアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジアリール−5,7−ジメチルビアダマンタン誘導体、ジアリール−5,5′,7,7′−テトラメチルビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0067】
式(4)で表される化合物のうちk=2であり且つ式(5)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(4−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2,5−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのアリールトリアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するアリール−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチルトリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0068】
式(4)で表される化合物のうちk=2であり且つ式(5)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3″−ビス(4−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2,5−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのジアリールトリアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジアリール−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチルトリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0069】
式(4)で表される化合物のうちk=3であり且つ式(5)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(4−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2,5−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのアリールテトラアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するアリール−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0070】
式(4)で表される化合物のうちk=3であり且つ式(5)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3′′′−ビス(4−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2,5−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのジアリールテトラアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジアリール−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0071】
式(4)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の酸化は、酸化剤を用いた当量反応による方法、酸素源としての酸素又は有機過酸と触媒とを用いる方法等の何れであってもよい。前記酸化剤としては、一般に用いられる酸化剤、例えば、無水亜硝酸、硝酸、硫酸、次亜塩素酸ナトリウム、過硫酸カリウム、酢酸銅、酸化クロム、二酸化マンガン、過マンガン酸カリウム、フェリシアン化カリウム、重クロム酸カリウム、過酸化ニッケル、硝酸セリウムアンモニウム、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム、パラジウム、有機過酸(m−クロロ過安息香酸、過安息香酸、過酢酸、t−ブチルヒドロペルオキシドなど)、過酸化水素などが挙げられる。
【0072】
酸素又は有機過酸とともに用いる触媒として、例えば、金属化合物が挙げられる。金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されないが、周期表2〜15族の金属元素を用いる場合が多い。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素として、周期表2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(V、Nbなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mn、Tc、Reなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、銀、銅、バナジウム、モリブデン、鉄、ニッケル、コバルト、タングステン、マンガン、レニウム、ルテニウム、セリウム、チタン、ジルコニウムなどが好ましい。また、ホウ素、テルル、ビスマス、ヒ素、スズも好ましい。金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
【0073】
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0074】
金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト又はバナジウム化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。特に、コバルト化合物とマンガン化合物とを組み合わせると反応速度が著しく向上することが多い。また、価数の異なる複数の金属化合物(例えば、2価の金属化合物と3価の金属化合物)を組み合わせて用いるのも好ましい。
【0075】
また、臭素や臭化物塩等の臭素化合物と遷移金属化合物とを組み合わせた触媒系、例えば、臭素化合物(臭化水素、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化コバルト、臭化マンガン等)と、遷移金属化合物[周期表3族元素(ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zrなど)、5族元素(V、Nbなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mn、Tc、Reなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Coなど)、10族元素(Niなど)、11族元素(Cuなど)等]と、マンガン化合物(塩化マンガン、酢酸マンガン、マンガンアセチルアセトナート等)とを組み合わせた触媒系、特に、臭素化合物(なかでも臭化ナトリウム等の臭化物塩)/コバルト化合物/マンガン化合物からなる触媒系は高い触媒活性を示すため好ましい。このような触媒系を用いると、例えば、3,4−ジメチルフェニル基を有する化合物からワンポットで、環状酸無水物を構成する環を持つフェニル基を有する化合物にまで誘導できるという利点がある。
【0076】
酸化としては酸素と強塩基とを用いる方法も採用できる。強塩基として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。
【0077】
さらに、酸素を用いる酸化反応では、触媒として、N−ヒドロキシフタルイミド、N−アセトキシフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの環状イミド化合物を用いることもできる。この場合、助触媒として前記金属化合物、特にコバルト化合物及び/又はマンガン化合物を用いるのが好ましい。
【0078】
また、酸化系として、2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−N−オキシド−有機過酸反応系、四酸化オスミウム−N−メチルモルホリンオキシド反応系、アルデヒド(アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等)を用いた触媒的な酸化反応系も好ましい。
【0079】
酸化反応において触媒を用いる場合、該触媒の使用量は、触媒の種類や原料化合物の種類等によっても異なるが、通常一般の酸化反応で用いられる量を採用できる。例えば、触媒として、前記臭素化合物と遷移金属化合物(コバルト化合物等)とマンガン化合物とを組み合わせた触媒を用いる場合、臭素化合物の使用量は、式(4)で表される化合物1モルに対して、通常0.00001〜5モル、好ましくは0.0001〜1モル、さらに好ましくは0.001〜0.5モル程度であり、遷移金属化合物の使用量は、式(4)で表される化合物1モルに対して、通常0.00001〜5モル、好ましくは0.0001〜1モル、さらに好ましくは0.001〜0.5モル程度であり、マンガン化合物の使用量は、式(4)で表される化合物1モルに対して、通常0.00001〜5モル、好ましくは0.0001〜1モル、さらに好ましくは0.001〜0.5モル程度である。
【0080】
反応系には、反応を促進させるため必要に応じて、ラジカル発生剤、ラジカル反応促進剤を存在させてもよい。このような成分として、例えば、ハロゲン、過酸化物、アルデヒド、硝酸などが挙げられる。
【0081】
酸化反応は反応に不活性な溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、酸化剤の種類や原料化合物の種類等によっても異なるが、例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;これらの混合物などが挙げられる。特に触媒的な酸素酸化反応では、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸などが好ましく、特にカルボン酸溶媒が好ましい。
【0082】
酸化反応における反応温度は、酸化剤の種類や原料化合物の種類等によっても異なるが、例えば、酸素以外の酸化剤(金属を含む酸化剤等)を使用する場合には、例えば−50℃〜300℃、好ましくは−10℃〜150℃程度である。有機過酸、過酸化水素を酸化剤として用い、金属化合物を触媒として用いる反応では、例えば−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜100℃程度である。また、酸素を酸化剤として用い、触媒として臭素化合物/遷移金属化合物(コバルト化合物等)/マンガン化合物触媒系を用いる反応では、例えば0℃〜250℃、好ましくは50〜200℃程度であり、酸素を酸化剤として用い、触媒として上記以外のものを用いる反応では、例えば0℃〜200℃、好ましくは20℃〜150℃程度である。
【0083】
酸化剤として酸素を用いる場合、純粋な酸素を用いてもよく、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等)で希釈された酸素や空気を用いてもよい。酸素を系内で発生させて使用してもよい。供給する酸素含有ガス中の酸素濃度は、例えば3〜100モル%程度である。反応は酸素の存在下又は酸素の流通下の何れで行ってもよい。また、反応圧力は、常圧、減圧、加圧下の何れのあってもよい。酸化反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。
【0084】
式(4)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の加水分解としては、酸加水分解、アルカリ加水分解等の何れの方法も採用できる。酸加水分解で用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類、強酸性陽イオン交換樹脂などが挙げられる。アルカリ加水分解で用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物などのアルカリ金属含有化合物などが挙げられる。アルカリの使用量及び水の使用量は、生成させるカルボキシル基の数等により適宜選択できる。酸は触媒量用いてもよい。反応は水の存在下で行われるが、反応成分の溶解性を高めるため、反応系に有機溶媒を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類などの水溶性有機溶媒が用いられる。反応温度は、例えば20〜300℃、好ましくは50〜200℃程度である。加水分解は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。アルカリ加水分解の場合には、反応終了後、酸を用いた中和処理により、遊離のカルボキシル基を有する化合物を得ることができる。
【0085】
式(4)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の酸化又は加水分解により、対応する式(6)で表される化合物が生成する。式(6)中、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bは、同一又は異なって、水素原子、前記式(2)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bのうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4b、R6bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭部以外に有していてもよい置換基としては、前記式(1)における式(2)又は(3)で表される基以外のアダマンタン環が有していてもよい置換基と同様である。
【0086】
反応生成物[式(6)で表される化合物]は、液性調整、濃縮、濾過、洗浄、抽出、晶析、再結晶、蒸留、昇華、塩析、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。特に収率の高い場合には、液性調整、濃縮、濾過、洗浄等により目的物を分離できる。また、反応副生成物が多い場合には、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により目的物を分離できる。なお、晶析は、例えば、粗生成物を晶析溶媒(テトラヒドロフラン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、これらの混合溶媒など)に溶解(加熱溶解を含む)させ、必要に応じて濃縮した後、冷却して結晶を析出させることにより行うことができる。また、目的化合物の良溶媒と貧溶媒(例えば、メタノール、アセトン、水等)などを組み合わせて晶析や再結晶を行ってもよい。
【0087】
本発明の式(1)で表される化合物のうち、アダマンタン環に式(3)で表される基が結合している化合物は、例えば、前記式(7)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を酸化することにより製造できる。
【0088】
式(7)中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、式(8)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。なお、式(8)中、環Z2は芳香環を示す。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。
【0089】
環Z2は前記と同様である。X2、X3は前記X1のうち酸化によりカルボキシル基に変換可能な基と同様であるが、X2とX3の位置関係としては、環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な位置にある必要がある。通常、X2、X3は1,2位、又は1,3位の位置関係にある。X2、X3が互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに形成する環としては、例えば、シクロアルケン環(特に5〜6員のシクロアルケン環)、環状エーテル(特に5〜6員の環状エーテル;ジヒドロフラン環、ジヒドロピラン環等)を構成する環、5〜6員のラクトン環などが挙げられる。R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、アダマンタン環の橋頭位以外に有していてもよい置換基は前記式(4)の場合と同様である。
【0090】
前記式(8)で表される芳香族環式基の代表的な例として、例えば、3,4−ジメチルフェニル、3−エチル−4−メチルフェニル、4−エチル−3−メチルフェニル、3,4−ジエチルフェニル、3,4−ジイソプロピルフェニル、3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル、3,4−ジホルミルフェニル、2,3,5−トリメチルフェニル、2,3,6−トリメチルフェニル、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基などの、アルキル基(特にC1-4アルキル基)及び該アルキル基の低次酸化基から選択された合計2〜4個の置換基で置換されたフェニル基;5−インダニル、5−テトラリニル、6−テトラリニル基などのシクロアルカン環が縮合したフェニル基;3−フタラニル、4−イソクロマニル、5−イソクロマニル基などの環状エーテルを構成する環が縮合したフェニル基;4−フタリドイル基、3−フタリドイル基などのラクトン環が縮合したフェニル基;4,5−ジメチルナフタレン−1−イル、5,6−ジメチルナフタレン−1−イル、5,6−ジメチルナフタレン−2−イル基などの、アルキル基(特にC1-4アルキル基)及び該アルキル基の低次酸化基から選択された合計2〜4個の置換基で置換されたナフチル基;シクロアルカン環が縮合したナフチル基;環状エーテルを構成する環が縮合したナフチル基;4,5−ジメチルピリジン−2−イル基などの、アルキル基(特にC1-4アルキル基)及び該アルキル基の低次酸化基から選択された合計2〜4個の置換基で置換された含窒素芳香族環式基、含酸素芳香族環式基又は含硫黄芳香族環式基;シクロアルカン環が縮合した含窒素芳香族環式基、含酸素芳香族環式基又は含硫黄芳香族環式基;環状エーテルを構成する環が縮合した含窒素芳香族環式基、含酸素芳香族環式基又は含硫黄芳香族環式基などが挙げられる。
【0091】
式(7)で表される化合物のなかでも下記式(18)で表される化合物が特に好ましい。
【化28】

(式中、Y3、Y4は、同一又は異なって、前記式(8)で表される基を示す。RA、RB、RC、RDは、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基を示す。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のRC、RDはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1を示す。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよく、有していなくてもよい)
【0092】
前記式(8)で表される基としては上記代表的な例として挙げた基が好ましい。また、アダマンタン環が有していてもよい置換基は、前記式(1)におけるアダマンタン環が有していてもよい置換基と同様である。それらのなかでも、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基などが好ましく、特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。
【0093】
式(7)で表される化合物のうちk=1であり且つ式(8)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3−エチル−4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−エチル−3−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジエチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3,4−ジイソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3−フタラニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5−インダニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5−テトラリニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(3−フタラニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどのアリールビアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するアリール−5,7−ジメチルビアダマンタン誘導体、アリール−5′,7′−ジメチルビアダマンタン誘導体、アリール−5,5′,7,7′−テトラメチルビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0094】
式(7)で表される化合物のうちk=1であり且つ式(8)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3−エチル−4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−エチル−3−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジエチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジイソプロピルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3−フタラニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5−イソクロマニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5−インダニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5−テトラリニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどのジアリールビアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジアリール−5,7−ジメチルビアダマンタン誘導体、ジアリール−5′,7′−ジメチルビアダマンタン誘導体、ジアリール−5,5′,7,7′−テトラメチルビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0095】
式(7)で表される化合物のうちk=2であり且つ式(8)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのアリールトリアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するアリール−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチルトリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0096】
式(7)で表される化合物のうちk=2であり且つ式(8)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3″−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのジアリールトリアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジアリール−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチルトリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0097】
式(7)で表される化合物のうちk=3であり且つ式(8)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのアリールテトラアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するアリール−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0098】
式(7)で表される化合物のうちk=3であり且つ式(8)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3′′′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス[3,4−ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4,5−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(5,6−ジメチルナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのジアリールテトラアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジアリール−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0099】
式(7)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の酸化は、前記式(4)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の酸化の場合と同様にして行うことができる。この場合、反応系に無水化剤(脱水剤)を存在させて、又は無水化機(ディーンスターク等の脱水装置)により水を留去させながら反応を実施するのが好ましい。
【0100】
無水化剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水トリクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリメリット酸などのカルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、無水酢酸が特に好ましい。無水化剤の使用量は、式(7)で表される化合物1モルに対して、例えば0.1〜1000モル、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜20モル程度である。無水化剤を用いる場合の反応温度は、例えば20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度である。
【0101】
無水化機を用いて酸化反応を行う場合、反応温度は、例えば20℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上(特に200℃以上)である。反応温度の上限は、例えば300℃、好ましくは270℃程度である。なお、無水化機を用いる場合、反応を促進させるため、反応系に酸(例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等)を存在させてもよい。
【0102】
なお、前記のように、臭素や臭化物塩等の臭素化合物と遷移金属化合物とを組み合わせた触媒系、特に、臭素化合物(なかでも臭化ナトリウム等の臭化物塩)/コバルト化合物/マンガン化合物からなる触媒系を用いて、酸素により酸化する方法を採用すると、無水化剤や無水化機を使用しなくても、式(7)で表される化合物から式(9)で表される化合物をワンポットでしかも高い収率で製造することができる。
【0103】
反応により、対応する式(9)で表される酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体が生成する。式(9)中、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bは、同一又は異なって、水素原子、式(3)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4b、R6bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外に有していてもよい置換基は前記式(6)の場合と同様である。反応生成物の分離精製は、前記式(4)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の酸化の場合と同様にして行うことができる。
【0104】
本発明の式(1)で表される化合物のうち、アダマンタン環に式(3)で表される基が結合している化合物は、また、前記式(10)で表される化合物を脱水反応に付すことにより製造することもできる。
【0105】
式(10)中、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cは、同一又は異なって、水素原子、前記式(11)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cのうち少なくとも1つは式(11)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4c、R6cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。なお、式(11)中、環Z2は芳香環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。
【0106】
環Z2は前記と同様である。式(11)に示されている2つカルボキシル基の位置関係としては、環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な位置にある必要がある。通常、該2つのカルボキシル基は1,2位、又は1,3位の位置関係にある。R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外に有していてもよい置換基は、前記式(1)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6におけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外に有していてもよい置換基と同様である。
【0107】
前記式(11)で表される芳香族環式基の代表的な例として、例えば、3,4−ジカルボキシフェニル、2,3,5−トリカルボキシフェニル、2,3,6−トリカルボキシフェニル、2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル基などの2〜4個のカルボキシル基が置換したフェニル基;4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル、5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル、5,6−ジカルボキシナフタレン−2−イル基などの2〜4個のカルボキシル基が置換したナフチル基;4,5−ジカルボキシピリジン−2−イル基などの2〜4個のカルボキシル基が置換した含窒素芳香族環式基、含酸素芳香族環式基又は含硫黄芳香族環式基などが挙げられる。
【0108】
式(10)で表される化合物のなかでも下記式(19)で表される化合物が特に好ましい。
【化29】

(式中、Y5、Y6は、同一又は異なって、前記式(11)で表される基を示す。RA、RB、RC、RDは、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基を示す。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のRC、RDはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1を示す。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよく、有していなくてもよい)
【0109】
前記式(11)で表される基としては上記代表的な例として挙げた基が好ましい。また、アダマンタン環が有していてもよい置換基は、前記式(1)におけるアダマンタン環が有していてもよい置換基と同様である。それらのなかでも、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基などが好ましく、特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。
【0110】
式(10)で表される化合物のうちk=1であり且つ式(11)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ブロモ−3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3′−ヒドロキシ−3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどのジカルボキシアリールビアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジカルボキシアリール−5,7−ジメチルビアダマンタン誘導体、ジカルボキシアリール−5′,7′−ジメチルビアダマンタン誘導体、ジカルボキシアリール−5,5′,7,7′−テトラメチルビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0111】
式(10)で表される化合物のうちk=1であり且つ式(11)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどのビス(ジカルボキシアリール)ビアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するビス(ジカルボキシアリール)−5,7−ジメチルビアダマンタン誘導体、ビス(ジカルボキシアリール)−5′,7′−ジメチルビアダマンタン誘導体、ビス(ジカルボキシアリール)−5,5′,7,7′−テトラメチルビアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0112】
式(10)で表される化合物のうちk=2であり且つ式(11)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのジカルボキシアリールトリアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジカルボキシアリール−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチルトリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0113】
式(10)で表される化合物のうちk=2であり且つ式(11)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3″−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(ジカルボキシアリール)トリアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するビス(ジカルボキシアリール)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチルトリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0114】
式(10)で表される化合物のうちk=3であり且つ式(11)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物の代表例として、3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのジカルボキシアリールテトラアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するジカルボキシアリール−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0115】
式(10)で表される化合物のうちk=3であり且つ式(11)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物の代表例として、3,3′′′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(2,3,5,6−テトラカルボキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4,5−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(5,6−ジカルボキシナフタレン−1−イル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(ジカルボキシアリール)テトラアダマンタン誘導体;これらの化合物に対応するビス(ジカルボキシアリール)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチルテトラアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0116】
式(10)で表されるポリカルボキシアリールポリアダマンタン誘導体の脱水は、例えば、反応系に無水化剤(脱水剤)を存在させて、又は無水化機(ディーンスターク等の脱水装置)により水を留去させながら反応させることにより実施できる。無水化剤の種類や脱水反応条件等は、前記式(7)で表される化合物から式(9)で表される化合物を得る場合と同様である。
【0117】
反応により、対応する式(12)で表される酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体が生成する。式(12)中、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dは、同一又は異なって、水素原子、式(3)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4d、R6dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外に有していてもよい置換基は、前記式(1)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6におけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外に有していてもよい置換基と同様である。反応生成物である式(12)で表される化合物の分離精製は、前記式(7)で表される化合物から式(9)で表される化合物を得る場合と同様にして行うことができる。
【0118】
また、前記式(12)で表される化合物を加水分解に付すことにより、前記式(10)で表される化合物に変換することもできる。これは上記式(10)で表される化合物の脱水反応の逆反応である。
【0119】
加水分解の方法は、前記式(4)で表される化合物を加水分解して式(6)で表される化合物を製造する場合と同様にして行うことができる。なお、この場合には、溶媒として、特に水と水溶性有機溶媒(例えば、酢酸等)との混合溶媒を用いるのが好ましい。水と水溶性溶媒との比率は、例えば、前者/後者(重量比)=5/95〜95/5、好ましくは10/90〜50/50程度である。また、反応温度は、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃程度である。
【0120】
加水分解反応により、式(10)で表されるポリカルボキシフェニルポリアダマンタン誘導体が生成する。反応生成物の分離精製は、前記式(4)で表される化合物を加水分解して式(6)で表される化合物を製造する場合と同様にして行うことができる。
【0121】
本発明の式(1)で表されるカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体を製造する際に原料として用いる前記式(4)で表される化合物及び式(7)で表される化合物は、以下の方法により製造することができる。なお、式(13)は式(4)と式(7)とを合わせて示したものである。
【0122】
式(13)で表される化合物は、前記式(14)で表される化合物と前記式(15)又は(16)とを反応させることにより得ることができる。式(14)中、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eは、同一又は異なって、水素原子、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な置換基、又はその他の置換基を示す。但し、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eのうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な置換基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4e、R6eはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。
【0123】
脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基として、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2、ヒドリド(H)などが挙げられる。特に、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2が好ましい。
【0124】
1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は、前記式(1)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6におけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外に有していてもよい置換基と同様である。式(14)で表される好ましい化合物には、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eの少なくとも1つ(より好ましくは2以上)がハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)である化合物が含まれる。また、アダマンタン環の橋頭位以外の部位にハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)を少なくとも1つ有している化合物も好ましい。
【0125】
式(14)で表される化合物の代表的な例として、例えば、3−ブロモ−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのブロモビアダマンタン誘導体;3,3′−ジブロモ−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのジブロモビアダマンタン誘導体;3−ブロモ−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのブロモトリアダマンタン誘導体;3,3″−ジブロモ−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのジブロモトリアダマンタン誘導体;3−ブロモ−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのブロモテトラアダマンタン誘導体;3,3′′′−ジブロモ−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのジブロモテトラアダマンタン誘導体;及び3−ヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−1,1′−ビアダマンタン等の前記各ブロモアダマンタン誘導体に対応するヒドロキシアダマンタン誘導体、ニトロオキシアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0126】
なお、式(14)で表される化合物は、アダマンタン環のカップリング反応、ハロゲン化反応(アダマンタン環へのハロゲン原子の導入)、酸化反応(アダマンタン環へのヒドロキシル基の導入)、エステル化反応(アダマンタン環へのニトロオキシ基の導入)等の公知の反応を適宜組み合わせることにより製造できる。
【0127】
前記式(15)、(16)において、環Z1、環Z2は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。環Z1、環Z2、X1、X2、X3、芳香環上の置換基等は、前記式(5)、式(8)と同様である。
【0128】
式(15)で表される化合物の代表的な例として、前記式(5)で表される芳香族環式基の代表的な例として示したものに対応する化合物が挙げられる。式(16)で表される化合物の代表的な例として、前記式(8)で表される芳香族環式基の代表的な例として示したものに対応する化合物が挙げられる。
【0129】
式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体と式(15)又は(16)で表される芳香族化合物との反応は、反応に不活性な溶媒の存在下又は溶媒非存在下で行われる。前記溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;これらの混合物などが挙げられる。
【0130】
式(15)又は(16)で表される芳香族化合物の使用量は、一般に、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体1モルに対して、2〜1000モル、好ましくは10〜300モル、さらに好ましくは50〜200モル程度である。式(15)又は(16)で表される芳香族化合物を大過剰量用いてもよい。
【0131】
この方法では、反応を促進させるため、系内にプロトン酸やルイス酸、塩基を添加するのが好ましい。例えば、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基又は−ONO2基である化合物を用いる場合には、反応速度を速くするため、酸(特にプロトン酸)の存在下で反応を行うのが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、臭化水素、硝酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;ヘテロポリ酸;陽イオン交換樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、強酸、例えば、塩化水素、硫酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、ヘテロポリ酸、強酸性陽イオン交換樹脂などが好ましい。酸の使用量は、例えば、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体1モルに対して、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モル程度である。
【0132】
また、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物(ポリアダマンタンハライド誘導体)を用いる場合には、通常加熱下で反応を行う。この際、副生するハロゲン化水素を捕捉するため、反応を適宜な塩基の存在下で行ってもよい。また、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合には、ルイス酸(FeBr3、FeCl3、AlBr3、AlCl3、BF3、ZrCl2、ZrCl4など)の存在下で反応(フリーデルクラフト反応)を行ってもよい。ルイス酸を用いることにより反応温度を下げることができる。ルイス酸としては、特にFeCl3が好ましい。ルイス酸の使用量は、例えば、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.05〜5モル程度である。
【0133】
式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体と式(15)又は(16)で表される芳香族化合物との反応における反応温度は、反応成分の種類等に応じて適宜選択できる。例えば、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基である化合物(ポリアダマンタノール誘導体)等を用いる場合には、反応温度は、例えば10〜200℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜130℃程度である。また、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物等を用いる場合には、反応温度は、例えば100〜250℃、好ましくは130〜220℃程度である。なお、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合において、ルイス酸を使用する時には、反応温度は、例えば−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃、さらに好ましくは−10℃〜100℃程度である。
【0134】
なお、式(15)又は(16)で表される芳香族化合物の使用量[式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体との当量比]やその他の反応条件を調整することにより、式(14)で表されるポリアダマンタン誘導体中の脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてのハロゲン原子やヒドロキシル基等の一部を未反応のまま残して、分子内にアルキル基等を有する芳香環と共にハロゲン原子やヒドロキシ基等を有する式(13)で表される化合物を製造することができる。反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。上記の触媒や反応促進剤は、反応の初期に一括添加してもよく、反応の進行と共に逐次添加してもよい。
【0135】
上記反応(脱ハロゲン化水素反応、脱水縮合反応等)により、式(14)で表される化合物における脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基の結合部位に、式(5)又は(8)で表される基が結合した対応する式(13)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体が生成する。
【0136】
式(13)において、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、前記式(5)又は(8)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)又は(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。式(5)、(8)における環Z1、環Z2、X1、X2、X3、m、nは前記に同じ。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。
【0137】
反応終了後、反応生成物は、液性調整、濃縮、濾過、洗浄、抽出、晶析、再結晶、蒸留、昇華、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。特に収率の高い場合には、液性調整、濃縮、濾過、洗浄等により目的物を分離できる。また、反応副生成物が多い場合には、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により目的物を分離できる。なお、晶析は、例えば、粗生成物を晶析溶媒(テトラヒドロフラン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、これらの混合溶媒など)に溶解(加熱溶解を含む)させ、必要に応じて濃縮した後、冷却して結晶を析出させることにより行うことができる。また、目的化合物の良溶媒と貧溶媒(例えば、メタノール、水等)などを組み合わせて晶析や再結晶を行ってもよい。
【0138】
なお、本発明の式(1)で表されるカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体において、アダマンタン環上の各置換基、式(2)又は(3)で表される芳香族環式基の芳香環上の各置換基の導入は、該カルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体を製造するどの段階で行ってもよい。例えば、上記に示した酸化反応、加水分解反応、脱水反応、脱ハロゲン化水素反応等の各反応工程の前工程(又はその原料の製造工程)として前記置換基の導入を行ってもよく、後工程或いは最終工程として前記置換基の導入を行ってもよい。また、上記の酸化反応や加水分解反応において、反応条件を適宜調整することにより、被酸化基、被加水分解基の一部を未反応のまま残してもよい。なお、芳香環にシアノ基を有する化合物は、芳香環にハロゲン原子を有する化合物にシアン化銅(CuCN)を反応させることにより得ることができる。
【実施例】
【0139】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0140】
実施例1
窒素雰囲気下、無水塩化第二鉄(III)4.02g、キシレン600gの混合液を30℃まで昇温させた後、3,3′−ジブロモ−1,1′−ビアダマンタン20g(46.7mmol)を30分かけてゆっくりと添加した。3,3′−ジブロモ−1,1′−ビアダマンタンを添加していくと、反応液は黒色から褐色に変化した。1時間熟成し、水200mlを添加し、分液させ、上層を濃縮した。濃縮後の析出物を濾別し、アセトン400mlでリパルプし、濾過して得られた結晶を乾燥することにより、3,3′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタンを20.1g(42.0mmol、収率90%、GC測定純度98%)得た。
1H-NMR(CDCl3) δ:1.60-1.66(m, 16H), 1.77-1.87(q, 8H), 2.17(s, 4H), 2.23(s, 6H), 2.27(s, 6H), 7.0-7.2(m, 6H)
FT-IR (cm-1):2930-2850, 1506, 1448, 1344, 1026, 997, 808
GC-MS-spectrometry :478 [EI法]
【0141】
実施例2
窒素雰囲気下、濃硫酸3.3g(3.3mmol)、キシレン600g、3,3′−ジヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン20g(66.1mmol)の混合溶液を100℃で10時間加熱撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、10重量%炭酸ナトリウム水溶液200mlを添加して中和し、分液させ、上層を濃縮した。濃縮後の析出物を濾別し、アセトン400mlでリパルプし、濾過して得られた結晶を乾燥することにより、3,3′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタンを30g(62.7mmol、収率95%、GC測定純度98%)得た。
【0142】
実施例3
3,3′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン10g(20.9mmol)、臭化ナトリウム0.52g(5.1mmol)、酢酸コバルト(II)1.04g(4.2mmol)、酢酸マンガン(II)0.10g(0.4mmol)、及び酢酸200gの混合溶液を酸素存在下(1気圧;0.1MPa)、100℃で15時間反応させた。反応終了後、15℃まで冷却し、析出物を濾別した。これを酢酸40ml、アセトニトリル40mlでリパルプし、濾過して得られた結晶を乾燥することにより、下記式(20)で表される無水フタル酸骨格を2つ有するビアダマンタン誘導体[3,3′−ビス(4−無水フタル酸)−1,1′−ビアダマンタン]を5.0g(収率42%)得た。
【化30】

1H-NMR[NaOH in CD3OD(水酸化ナトリウムを重メタノールに対して1重量%溶解させた溶液中で測定)] δ:1.6-1.9(m, 24H), 2.17(br, 4H), 7.3-7.8(m, 6H)
FT-IR (cm-1):2931, 2885, 1838, 1774, 1259, 872, 735, 683
DI-MS-spectrometry :563 [M+1]
【0143】
実施例4
3,3′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン10g(20.9mmol)、臭化ナトリウム0.52g(5.1mmol)、酢酸コバルト(II)1.04g(4.2mmol)、酢酸マンガン(II)0.10g(0.4mmol)、及び酢酸200gの混合溶液を空気40気圧(=4.04MPa)の加圧下、100℃で15時間反応させた。反応終了後、15℃まで冷却し、析出物を濾別した。これを酢酸40ml、アセトニトリル40mlでリパルプし、濾過して得られた結晶を乾燥することにより、前記式(20)で表される無水フタル酸骨格を2つ有するビアダマンタン誘導体[3,3′−ビス(4−無水フタル酸)−1,1′−ビアダマンタン]を5.2g(収率45%)得た。
【0144】
実施例5
前記式(20)で表される無水フタル酸骨格を2つ有するビアダマンタン誘導体[3,3′−ビス(4−無水フタル酸)−1,1′−ビアダマンタン]10g(17.8mmol)、酢酸100g及び蒸留水25gの混合溶液を100℃で3時間反応させた。反応終了後、15℃まで冷却し、析出物を濾別した。これをアセトニトリル40mlでリパルプし、濾過して得られた結晶を乾燥することにより、3,3′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタンを9.7g(16.2mmol、収率92%)得た。
FT-IR (cm-1):2927, 2852, 1695, 1288, 885
DI-MS-spectrometry :599 [M+1]
【0145】
実施例6
窒素雰気下、3,3′−ジヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン80.0g(0.26mol)、トルエン731.1g(7.93mol)及び濃硫酸31.7g(0.31mol)の混合物を100℃で6時間加熱撹拌した。反応終了後、室温で1時間撹拌熟成して析出物を濾別し、トルエン、メタノール、飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。得られた結晶にトルエン977gを加え、70℃で1時間加熱撹拌した後、熱濾過し、メタノールで洗浄した。得られた結晶を乾燥すことにより、3,3′−ビス(4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタンを91.8g(0.2mol、収率71%、GC測定純度95%)得た。
1H-NMR(CDCl3,500MHz) δ:1.5-1.6(m, 16H), 1.7(q, 8H), 2.1(s, 4H), 2.2(s, 6H), 7.0(d, 4H), 7.1(d, 4H)
GC-MS-spectrometry :450 m/z [EI法]
【0146】
実施例7
3,3′−ビス(4−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン70.1g(155.5mmol)、酢酸コバルト(II)3.1g(12.4mmol)、酢酸マンガン(II)0.38g(1.6mmol)、及び酢酸1400gの混合溶液を、酸素雰囲気下(1atm=0.1MPa)、110℃で18時間加熱撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、析出物を濾別し、酢酸で洗浄した。得られた析出物にテトラヒドロフラン1084gを加え、60℃で1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却して析出物を濾別し、アセトンで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、3,3′−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタンを67.9g(133.0mmol、収率86%、HPLC純度94%)得た。
1H-NMR(DMSO-d6,500MHz) δ:1.61-1.65(m, 16H), 1.8(q, 8H), 2.1(s, 4H), 7.5(d, 4H), 7.8(d, 4H), 12.7(brs, 2H)
LC-MS-spectrometry :509.4 m/z [M-]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)又は(3)
【化2】

(式中、環Z1、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。m、nはそれぞれ1以上の整数を示す。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)又は(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるカルボキシル基又は酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体又はその塩若しくは等価体。
【請求項2】
下記式(4)
【化3】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(5)
【化4】

(式中、環Z1は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を酸化又は加水分解に付して、下記式(6)
【化5】

[式中、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bは、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化6】

(式中、環Z1は芳香環を示す。mは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bのうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4b、R6bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とするカルボキシル基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法。
【請求項3】
下記式(7)
【化7】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(8)
【化8】

(式中、環Z2は芳香環を示す。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を酸化して、下記式(9)
【化9】

[式中、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bは、同一又は異なって、水素原子、下記式(3)
【化10】

(式中、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4b、R6bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とする酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法。
【請求項4】
下記式(10)
【化11】

[式中、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cは、同一又は異なって、水素原子、下記式(11)
【化12】

(式中、環Z2は芳香環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cのうち少なくとも1つは式(11)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4c、R6cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を脱水反応に付して、下記式(12)
【化13】

[式中、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dは、同一又は異なって、水素原子、下記式(3)
【化14】

(式中、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4d、R6dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とする酸無水物基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法。
【請求項5】
下記式(12)
【化15】

[式中、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dは、同一又は異なって、水素原子、下記式(3)
【化16】

(式中、環Z2は芳香環を示し、環Z3は環状酸無水物を構成する環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dのうち少なくとも1つは式(3)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4d、R6dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を加水分解に付して、下記式(10)
【化17】

[式中、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cは、同一又は異なって、水素原子、下記式(11)
【化18】

(式中、環Z2は芳香環を示す。nは1以上の整数を示す。芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cのうち少なくとも1つは式(11)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4c、R6cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とするカルボキシル基を有するアリールポリアダマンタン誘導体の製造法。
【請求項6】
下記式(13)
【化19】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(5)又は(8)
【化20】

(式中、環Z1、環Z2は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)又は(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアリールポリアダマンタン誘導体。
【請求項7】
下記式(14)
【化21】

[式中、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eは、同一又は異なって、水素原子、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な置換基、又はその他の置換基を示す。但し、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6eのうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な置換基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4e、R6eはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物と、下記式(15)又は(16)
【化22】

(式中、環Z1、環Z2は芳香環を示す。X1は酸化又は加水分解によりカルボキシル基に変換可能な基を示す。mは1以上の整数を示す。mが2以上の場合、複数個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、複数個のX1が互いに結合して、環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。X2、X3は酸化により環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環状の酸無水物基を形成可能な基を示す。X2、X3は互いに結合して環Z2を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。nが2以上の場合、複数個のX2、X3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい。前記X1はこれらの置換基と結合して環Z1を構成する1又は2以上の原子とともに環を形成していてもよい)
で表される化合物とを反応させて、下記式(13)
【化23】

[式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、下記式(5)又は(8)
【化24】

(式中、環Z1、環Z2、X1、X2、X3、m、nは前記に同じ。各芳香環は式中に示される基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(5)又は(8)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とするアリールポリアダマンタン誘導体の製造法。

【公開番号】特開2006−193473(P2006−193473A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7017(P2005−7017)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】