説明

カルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤及びその製造方法並びにそれを含むゴム組成物

【課題】スコーチタイムに悪影響を及ぼすことなく、加硫速度及び加硫ゴム物性を改善するゴム加硫用配合剤の提供。
【解決手段】式(I):


(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤並びにその製造方法及びそれを含むゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物(以下、単にジスルフィドのアミン塩ということがある)を含むゴム加硫用配合剤及びその製造方法並びにそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ゴムの加硫促進剤として、チウラム系、スルフェンアミド系、メルカプトベンゾチアゾール系などが用いられている。スルフェンアミド系は遅効性促進剤であり、加硫中に熱によりN−S結合が解離し、メルカプトベンゾチアゾールとアミンを再生するとされている。再生されるメルカプトベンゾチアゾールは加硫促進剤として働き、アミンは亜鉛華に配位することで加硫系の活性化及びに加硫中間体との反応などにより加硫反応を促進する重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
これに対し、ジスルフィド系加硫剤であるジベンゾチアゾールジスルフィドは熱によりS−S結合が解離し、メルカプトベンゾチアゾールを再生するが、アミンによる加硫活性能力がないため、加硫が遅く、加硫促進能力においてスルフェンアミド類に劣っているといわれている。ジベンゾチアゾールジスルフィドの加硫促進能力を改善する目的でアミン類を併用することは考えられるが、その場合は遊離アミンの反応性が高いために、低温においても硫黄などの加硫剤と反応することでスコーチ時間に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0004】
また、特許文献1〜6には、各種のカルボン酸ジスルフィドのアミン塩が記載されているが、これらはそれぞれカルボン酸基含有ジスルフィドの4級アンモニウム塩を静電荷像現像用カラートナー用の帯電制御剤として(特許文献1)、ジスルフィド含有アミン塩を水生ボールペン用インキ組成物として(特許文献2)、ジチオジプロピオン酸またはジチオジグリコール酸のモノまたはジアミン塩をさび止め剤として(特許文献3)、カルボン酸基含有ジスルフィドの4級アンモニウム塩の製造法(特許文献4)、カルボン酸含有ジスルフィドの4級アンモニウム塩を電子写真記録用のトナーおよび現像剤用の電荷制御剤として(特許文献5)、3−メルカプトプロピオン酸ジスルフィドを水溶性の機能性流体用の水溶性添加剤として(特許文献6)用いた例が記載されているが、これらの塩化合物をゴム加硫用配合剤として配合する技術は知られていない。特に、特許文献1、4に用いられるカルボン酸基含有ジスルフィドの4級アンモニウム塩の場合は、加硫反応を促進する働きをするアミン成分が4級アミンであるために加硫反応を促進する役割は期待できない。
【0005】
更に特許文献7、8には、カルボキシル基含有ジスルフィドをゴム用加硫剤として用いることが開示されているが、これらはいずれもカルボキシル基含有ジスルフィド化合物であって、加硫反応を促進する役割をするアミン成分を含む塩化合物ではない。
【0006】
また、硫黄の数が2〜14の整数であるポリチオポリカルボン酸のアミン塩の製造法が特許文献9に記載されている。特許文献9には従来の技術として欧州特許出願公開EP-A-0,780,429(特許文献10)のジートリーおよびテトラーチオジプロピオン酸製造法が記載されており、この製造法の欠点として結合イオウの含量が狭く制限されており、約70%程度のジチオジプロピオン酸と約30%程度にすぎないトリ-およびテトラ-チオジプロピオン酸を含む混合物が生成することであるとしている。これに対して特許文献9は特に純粋なポリチオポリカルボン酸の製造法であって比較的に高含有量の結合硫黄を含む化合物の製造が可能であるとしており、特許文献9の実施例においても硫黄の平均値が4で硫黄数nが3〜11であるポリチオジプロピオン酸の製造法を開示している。
【0007】
一般的に硫黄化合物は硫黄数により、モノ(硫黄数1)、ジ(硫黄数2)、ポリ(硫黄数3以上)スルフィド化合物に区別される。それはその硫黄結合の解離エネルギーが、ジスルフィドが約70Kcal/molでトリスルフィド(硫黄数3)が45Kcal/molと硫黄数により大きく異なり、硫黄数が3以上になると硫黄結合が解離しやすくなるからである(非特許文献1参照)。従って、ポリスルフィド化合物はジスルフィド化合物より、熱安定性が劣るために低温においても硫黄などの加硫剤またはゴムなどと反応しやすくなり、混合中のゴムの焼けやスコーチ時間短縮など加工工程への悪影響を及ぼすという問題がある。
【0008】
【非特許文献1】Chapman, A.V., Porter, M.:“Sulphur Vulcanization Chemistry ”in the Natural Rubber Science and Technology Roberts, A.D. Ed., Oxford Science Publications, London(1988).
【特許文献1】特開2004-354708号公報
【特許文献2】特開2004-115684号公報
【特許文献3】特開平11-92979号公報
【特許文献4】特開平4-264063号公報
【特許文献5】特開平6-501566号公報
【特許文献6】特開昭63-284294号公報
【特許文献7】特開2002-224244号公報
【特許文献8】特開平9-262318号公報
【特許文献9】特開2001-89440号公報
【特許文献10】欧州特許出願公開EP-A-0,780,429
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明はスコーチ時間に悪影響を及ぼすことなく、加硫速度及び加硫ゴム物性の改善が可能なカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤及びその製造方法並びにそれを含むゴム組成物を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従えば、式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤が提供される。
【0013】
本発明によれば、上記式(I)において、アミン成分が1級又は2級アミンである前記式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤が提供される。
【0014】
本発明によれば、上記式(I)において、Xが芳香族基である式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤が提供される。
【0015】
本発明に従えば、また、式(II)で表わされるカルボン酸基を有するジスルフィド化合物と式(III)で表わされるアミンとを反応させて式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を製造する方法が提供される(以下の反応式(I)参照)。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
【0018】
本発明に従えば、更に、式(IV)で表わされるカルボン酸基を有するチオール化合物と式(III)で表わされるアミンとを酸化剤の存在下で反応させて、式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤を製造する方法(以下の反応式(2)参照)が提供される。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記式(I)のジスルフィドのアミン塩を用いることにより、ジエン系ゴムやハロゲン化ブチルゴムなどに対して高い加硫促進効果を有し、更にスコーチ時間に悪影響を及ぼすことなく、加硫速度及び加硫ゴム物性(例えば耐熱老化性)を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物(即ち本発明のジスルフィドのアミン塩)は、前記式(I)で表わされる化合物である。
【0023】
前記式(I)において、R1 ,R2 及びR3 は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の有機基であることができ、そのような有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ステアリル基などの鎖式炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基などの環式炭化水素基が挙げられる。それら有機基の鎖内に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい。そのような有機基の例としては、例えばメトキシプロピル基、メトキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、R1 及びR2 は、それらが結合している窒素原子と共に、複素環基、例えばイミダゾール基、トリアゾール基、ピラゾール基、アジリジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基、チオモルホリン基等の基を形成していてもよい。R1 及びR2 のそれらが結合している窒素原子と共に複素環基を形成している場合には、さらにその複素環上に置換基を有していてもよい。この置換基の例としては、例えばメチル、エチルなどのアルキル基;ブロモ、クロロなどのハロゲン基;アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基等が挙げられる。
【0024】
前記式(I)において、Xは、置換基を有していてもよい炭素数2〜20の、好ましくは炭素数2〜12の、鎖式炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基から選ばれる有機基である。この有機基の例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、チアゾール基、チアジアゾール基、ピリジレン基、ナフチレン基等が挙げられる。Xが鎖式炭化水素基又は脂環式炭化水素基である場合には、Xは、その炭素鎖内に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から成る群から選ばれるヘテロ原子を有していてもよく、メチル、エチルなどのアルキル基、ブロモ、クロロなどのハロゲン基、エーテル基、エステル基などを有してもよい。Xは炭素数2〜12の、鎖式炭化水素基、芳香族基、複素環基などの芳香族性基であることが好ましく、芳香族基であることが更に好ましい。Xが芳香族性基であると芳香族カルボン酸の方が脂肪族カルボン酸よりも酸性が高く、よりアミンとの塩形成能力が高く、生成されるアミン塩が安定であるためにゴム組成物の混合および低温加工時の焼けなどに悪影響が少なくなると考えられるので好ましい。
【0025】
前記式(III)のアミン類としては、1級、2級又は3級のアミン類が好ましく、特に1級又は2級アミン類がカルボン酸と塩を形成しやすく、亜鉛華への配位能力及びに加硫中間体との反応などにより加硫反応を促進する能力が高いと考えられるため、更に好ましい。
【0026】
本発明に係るジスルフィドのアミン塩化合物(I)は、前記反応式(1)に示すように、前記式(II)で示されるカルボン酸基を有するジスルフィド化合物(式中、Xは前記定義の通りである)と前記式(III)のアミン類(式中、R1 ,R2 及びR3は前記定義の通りである)とを反応させることにより製造することができる。この反応には酸化剤や触媒などを必要とすることなく、適当な溶媒(例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族アルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類など)中で式(II)及び式(III)の化合物を混合反応させることによって、製造することができる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、前記ジスルフィドのアミン塩化合物(I)は、前記反応式(2)に示すように、1つの分子にカルボン酸を含有するチオール化合物(IV)とアミン(III)との反応を酸化剤の存在下で反応させることによって製造することができる。
【0028】
前記反応式(1)及び(2)において、アミン(III)は、ジスルフィド化合物(II)又はチオール化合物(IV)のカルボン酸基に対して、化学量論的に過剰量(例えば1.01〜1.15当量)で反応させるのが好ましい。
【0029】
前記反応式(1)において、出発原料として用いられるカルボン酸基含有ジスルフィド化合物(II)の具体例としては、例えばジチオジグリコール酸、ジチオジプロピオン酸、ジチオサリチル酸、ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)などがあげられる。一方、反応式(2)で用いられる式(IV)で表わされるチオール化合物としてはメルカプト酢酸、2メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、チオニコチン酸などがあげられる。
【0030】
一方、上記式(III)で表されるアミンの具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン,ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、exo−2−アミノノルボルナン、2−メトキシエチルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、テトラフルフリルアミン、モルホリン、チオモルホリン、1−メチルピペラジン、2−メチルイミダゾール、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどが挙げられる。
【0031】
前記反応式(2)に使用することができる酸化剤としては、特に制限はないが、次の化合物が挙げられる。塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウムなどの塩素酸塩類;過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムなどの過塩素酸塩類;過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウムなどの無機過酸化物;亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸塩類;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどの臭素酸塩類;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩類;ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸カルシウムなどのヨウ素酸塩類;過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩類;重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウムなどの重クロム酸塩類;過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩類;メタ過ヨウ素酸などの過ヨウ素酸;無水クロム酸(三酸化クロム)などのクロム酸化物;二酸化鉛などの鉛酸化物;五酸化二ヨウ素などのヨウ素酸化物;亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸塩類;次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸塩類;三塩素化イソシアヌル酸などの塩素化イソシアヌル酸;ペルオキソ二硫酸アンモニウムなどのペルオキソ二硫酸塩類;ペルオキソホウ酸アンモニウムなどのペルオキソホウ酸塩類;過塩素酸;過酸化水素;硝酸;フッ化塩素、三フッ化臭素、五フッ化臭素、五フッ化ヨウ素、ヨウ素などのハロゲン化化合物;エチレンジアミンテトラ酢酸銅、ニトリロトリプロピオン酸銅などの銅の水溶性キレート化合物;ジメチルスルホキシドなどの有機化合物;酸素など。酸化剤として酸素を使用する場合、酸素源として空気を用いることもできる。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。これらのうち、反応が容易で効率が高い点で、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、ヨウ素、エチレンジアミンテトラ酢酸銅、ニトリロトリプロピオン酸銅及び酸素が好ましい。
【0032】
前記反応に用いることができる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)などの含室素有機溶媒などがあげられる。これらの溶媒は単独又は混合溶媒の形で使用しても良い。これらのうち、ジスルフィド類、チオール類とアミン類への溶解性が高く、反応生成物から取り除きやすい点から、脂肪族アルコール類、エーテル類、ケトン類が好ましい。
【0033】
前記反応の反応温度には特に限定はないが、0℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。0℃未満では反応時間が遅くなり、100℃を超える温度では生成物の望ましくない副反応が起こるおそれがある。この反応温度は、更に好ましくは20℃〜70℃の範囲内である。
【0034】
本発明に係るゴム加硫用配合剤に含めることのできる加硫剤の具体例としては、例えば硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム、金属酸化物、及びアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0035】
本発明に係るジスルフィドのアミン塩と併用できるゴム加硫用配合剤としては、スルフェンアミド系又はチウラム系の加硫促進剤を含むことが好ましい。スルフェンアミド系又はチウラム系の加硫促進剤を用いることにより、ゴム成分の加硫を更に促進し、また、得られる加硫ゴムの物性を更に向上させることができる。スルフェンアミド系の加硫促進剤としては、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが挙げられる。チウラム系の加硫促進剤としては、例えばテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが挙げられる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムから成る群から選ばれる未加硫ゴム成分と本発明に係るジスルフィドのアミン塩(I)を含む。このゴム組成物が含むことができる未加硫ゴム成分としてはジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムから成る群から選ばれる。ジエン系ゴムの具体例としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレンジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムが挙げられる。また、ハロゲン化ゴムの具体例としては、例えば臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム等のハロゲン化ブチルゴム、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体のハロゲン化物(例えば臭素化物)、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン、塩素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エポキシ化アクリルゴム、ハロゲン系モノマーを共重合させたアクリルゴムが挙げられる。
【0037】
本発明に係るゴム組成物において、本発明に従ったジスルフィドのアミン塩(I)は単独又は当該技術分野において未加硫ゴムの加硫剤又は加硫促進剤として一般的に使用されている加硫剤又は加硫促進剤と共にゴム加硫用配合剤として使用できる。本発明のジスルフィドのアミン塩(I)は、当該ジスルフィドのアミン塩(I)の加硫及び/又は加硫促進作用を妨げずに所望の加硫及び/又は加硫促進効果並びに耐熱老化性の向上を達成できる限り、当該ゴム加硫用配合剤に含まれる他の加硫剤及び/又は加硫促進剤の合計量に対して、任意の割合で使用することができる。しかしながら、望ましい加硫及び/又は加硫促進効果を達成するには、ジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムから成る群から選ばれる未加硫ゴム成分100重量部に対して0.1〜20重量部であるのが好ましい。前記ジスルフィドのアミン塩(I)の配合量がこの範囲内であると、実用的な強度及びゴム弾性を発現できるなどのより有利な効果が得られる。また、加硫温度は通常の140℃〜200℃が好ましい。
【0038】
本発明のゴム組成物には、上記加硫促進剤の他に、ゴム組成物に通常配合されるカーボンブラックやシリカ等の補強剤、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、ステアリン酸や酸化亜鉛及び酸化マグネシウムなどの加硫促進助剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、パラフィンオイル等の軟化剤、可塑剤、老化防止剤等の各種配合剤及び添加剤を、各種用途に応じて一般的に使用される量で一般的な配合方法によって配合してよい。かかる配合は、汎用のゴム用混練機、例えばロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練することにより配合できる。
【実施例】
【0039】
以下に示す実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術的範囲を、これらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0040】
調製例1:ジスルフィドのアミン塩化合物Aの合成
メタノール1000g中、ジチオサリチル酸306.4g(1mol)とシクロヘキシルアミン218.2g(2.2mol)を入れ、室温で30分反応させた。反応終了後、減圧下でメタノールを除いてからろ過し、アセトンで2回洗浄・乾燥後、下記式で示される白色粉末の化合物Aを499.2g(収率99%)得た。
【0041】
【化4】

【0042】
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ in ppm:1.0−1.3,1.5,1.7,1.9,2.9,7.1,7.2,7.5,7.8
元素分析値(%):C2636242
計算値:C,61.87;H,7.19;N,5.55;S,12.71
測定値:C,61.54;H,7.28;N,5.56;S,12.72
【0043】
調製例2:ジスルフィドのアミン塩化合物Bの合成
チオサリチル酸308.4g(2mol)とシクロヘキシルアミン218.2g(2.2mol)をイソプロピルアルコール1000g中、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム銅四水和物7.5g(0.8mol%)を入れ、酸素雰囲気下、50℃で3時間反応させた。反応終了後、ろ過乾燥し、下記式で示される化合物Bを479.0g(収率95%)得た。
【0044】
【化5】

【0045】
調製例3:ジスルフィドのアミン塩化合物Cの合成
3,3’−ジチオジプロピオン酸210.3g(1mol)とシクロヘキシルアミン218.2g(2.2mol)をメタノール1000g中、室温で30分反応させた。反応終了後、減圧下でメタノールを除いてからろ過し、アセトンで2回洗浄・乾燥後、下記式で示される白色粉末の化合物Cを400.4g(収率98%)得た。
【0046】
【化6】

【0047】
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ in ppm:1.1−1.2,1.5,1.7,1.9,2.3,2.8,2.9
元素分析値(%):C1836242
計算値:C,52.91;H,8.88;N,6.86;S,15.69
測定値:C,52.83;H,9.03;N,6.84;S,15.92
【0048】
調製例4:ジスルフィドのアミン塩化合物Dの合成
イソプロピルアルコール1000 g中、ジチオサリチル酸 306 .4 g (1 mol)とt-ブチルアミン160.9 g(2.2 mol)を入れ、室温で30分反応させた。反応終了後、ろ過し、アセトンで2回洗浄・乾燥後、下記式で示される白色粉末の化合物Dを445.3 g(収率98 %)得た。
【0049】
【化7】

【0050】
1H NMR(400MHz, DMSO-d6)δ in ppm : 1.3, 3.1, 7.1, 7.2, 7.5, 7.8
元素分析値(%):C22H32N2O4S2
計算値: C, 58.38; H, 7.13; N, 6.19; S, 14.17
測定値:C, 58.14; H, 7.26; N, 6.45; S, 14.58
【0051】
調製例5:ジスルフィドのアミン塩化合物Eの合成
メタノール1000 g中、ジチオサリチル酸 306 .4 g (1 mol)とジイソプロピルアミン222.6 g(2.2 mol)を入れ、室温で30分反応させた。反応終了後、減圧下でメタノールを除いてからろ過し、アセトンで2回洗浄・乾燥後、下記式で示される白色粉末の化合物1を501.2 g(収率98.5 %)得た。
【0052】
【化8】

【0053】
1H NMR(400MHz, DMSO-d6)δ in ppm : 1.3, 3.2, 7.1, 7.2, 7.5, 7.8
元素分析値(%):C26H40N2O4S2
計算値:C, 61.38; H, 7.93; N, 5.51; S, 12.61
測定値:C, 60.86; H, 8.0; N, 5.63; S, 12.44
【0054】
ゴム組成物の調製
下記表Iに示す配合成分を1.7リットルのバンバリーミキサーにより5分間混合して均一に分散させ、各実施例及び比較例のゴム組成物を得た。得られた各実施例及び比較例のゴム組成物を下記の各試験法により評価した。結果を表Iに示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表I脚注
*1:RSS#3
*2:日本ゼオン(株)Nipol 1712
*3:日本ブチル(株)Exxon Bromobutyl 2255
*4:三菱化学(株) ダイアブラックE
*5:正同化学(株)酸化亜鉛3種
*6:日本油脂(株)ビーズステアリン酸YR
*7:大内新興化学(株)ノクラック6C
*8:三井化学(株)ハイレッツG−100X
*9:昭和シェル石油(株)デゾレックス3号
*10:鶴見化学(株)金華微粉硫黄
*11:大内新興化学(株)ノクセラーCZ−G
*12:大内新興化学(株)ノクセラーDM−P
*13:前記調製例1、3、4及び5参照
*14:関東化学(株)
【0057】
試験法
ムーニースコーチ
未加硫のゴム組成物について、JISK6300−1994の規定に準じて、L形ロータを使用し、予熱時間1分、試験温度125℃の条件で、ムーニー粘度を連続的に測定した。ムーニー粘度の最低値をVとした。また、ムーニー粘度がVmから5ポイント上昇するまでのムーニースコーチ時間を(m) 測定した。結果を表IIに示す。ムーニースコーチ時間は、スコーチ(ゴム焼け)の指標であり、長い方が好ましい。
【0058】
次に得られた各ゴム組成物について、150℃で30分間加硫して、15cm×15cm×2mmの加硫シートを作成した。この加硫シートからJIS3号ダンベル形状の試験片を打ち抜き、JISK6251に従って、伸び300%時のモジュラス(M300)、破断応力(TB)及び破断時伸び(EB)を求め、さらに、JISK6257に従って、80℃で96時間老化後のM300を測定し、M300の初期値を基準として老化後のM300の値の変化率(%)を下記式:
100×[(老化後のM300)−(老化前のM300)]/(老化前のM300)に従って求めた。結果を表IIに示す。変化率の値が小さいほど、耐熱老化性が優れていることを示す。
【0059】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0060】
以上の通りに、本発明のジスルフィドのアミン塩化合物(I)を含むゴム加硫用配合剤は、ジエン系ゴム及びハロゲン化ブチルゴムなどに対して高い加硫促進効果を有し、しかも、ハロゲン化ブチルゴムに対しては、加硫剤としても作用する。さらに、本発明のジスルフィドのアミン塩化合物(I)を含むゴム加硫用配合剤を含む未加硫ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムは、従来の加硫剤及び/又は加硫促進剤を含む未加硫ゴム組成物から得られるものよりも高い耐熱老化性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤。
【請求項2】
式(I)において、アミン成分が1級又は2級アミンである請求項1に記載のゴム加硫用配合剤。
【請求項3】
式(I)において、Xが芳香族基である請求項1又は2に記載のゴム加硫用配合剤。
【請求項4】
式(II)で表わされるカルボン酸基を有するジスルフィド化合物と式(III)で表わされるアミンとを反応させて、式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤を製造する方法。
【化2】

(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
【請求項5】
式(IV)で表わされるカルボン酸基を有するチオール化合物と式(III)で表わされるアミンとを酸化剤の存在下で反応させて、式(I)で表されるカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物を含むゴム加硫用配合剤を製造する方法。
【化3】

(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
【請求項6】
カルボン酸基を有するジスルフィド化合物(II)がジチオサリチル酸である請求項4に記載のカルボン酸基含有ジスルフィドのアミン塩化合物の製造法。
【請求項7】
ジエン系ゴム及びハロゲン化ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種の未加硫ゴム成分並びに請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム加硫用配合剤を含んで成るゴム組成物。

【公開番号】特開2008−69341(P2008−69341A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204681(P2007−204681)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】