説明

カーカスバンド部材の搬送装置

【課題】筒状のカーカスバンド部材を搬送機によってタイヤ成形ドラムへ搬送する際の必要スペースを小さくすることができるカーカスバンド部材の搬送装置を提供する。
【解決手段】筒状のカーカスバンド部材Bに内挿されて、このカーカスバンド部材Bを保持する複数のアーム3を備えた自走式の搬送機2と、搬送機2をタイヤ成形ドラム11に案内する案内溝8とを備え、案内溝8がタイヤ成形ドラム11のドラム軸方向端部近傍からドラム軸方向に延び、途中の1箇所で屈曲してドラム軸方向に対して0°〜150°の開き角度Aで延設され、搬送機2が、アーム3の長手方向を案内溝8の延設方向に向けて移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを製造する際に使用するカーカスバンド部材の搬送装置に関し、さらに詳しくは、筒状のカーカスバンド部材を搬送機によってタイヤ成形ドラムへ搬送する際の必要スペースを小さくすることができるカーカスバンド部材の搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型の空気入りタイヤの製造工程では、筒状のカーカスバンド部材を搬送してタイヤ成形ドラムに外挿させるために、例えば図8に示す搬送装置13が用いられている。この従来の搬送装置13では、筒状のカーカスバンド部材Bに複数のアーム14を内挿して保持する。そして、カーカスバンド部材Bを保持したアーム14を、図9に例示するように搬送装置13の一方端部に設けた旋回軸15を中心として90°旋回させる。その後、搬送装置13を移動ガイド16に沿って、アーム14の長手方向に向かって移動させて、カーカスバンド部材Bをタイヤ成形ドラム11まで搬送する。次いで、カーカスバンド部材Bを拡径するようにアーム14を可動させてから、図10に例示するように引込機12によって、拡径したカーカスバンド部材Bをタイヤ成形ドラム11に引き込んで外挿するように配置する。そして、同様に必要枚数のカーカスバンド部材Bを積層した後、タイヤ成形ドラム11の両端部にビード部材を配置し、ビード部材を包み込むようにカーカスバンド部材Bの両端部をターンアップしてグリーンタイヤの成形を行なう。このようにカーカスバンド部材Bを搬送する方法では、アーム14を旋回させるため、搬送装置13の可動に要するスペースが広くなるという問題があった。
【0003】
また、成形部材を移動させるのではなく、タイヤ成形ドラムを移動させる発明も提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、タイヤ成形ドラムは、成形部材の搬送装置に比して、重量が重くなるので移動させるには相応のエネルギーが必要になり、効率的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−280000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、筒状のカーカスバンド部材を搬送機によってタイヤ成形ドラムへ搬送する際の必要スペースを小さくすることができるカーカスバンド部材の搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のカーカスバンド部材の搬送装置は、筒状のカーカスバンド部材に内挿されて、このカーカスバンド部材を保持する複数のアームを備えた搬送機と、この搬送機をタイヤ成形ドラムに案内する案内路とを備え、前記案内路がタイヤ成形ドラムのドラム軸方向端部近傍からドラム軸方向に延び、途中の1箇所で屈曲してドラム軸方向に対して0°〜150°の開き角度で延設され、前記搬送機が、アームの長手方向を前記案内路の延設方向に向けて移動する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筒状のカーカスバンド部材に内挿されて、このカーカスバンド部材を保持するアームの長手方向を、前記案内路の延設方向に向けて搬送機が移動するので、搬送機が移動する範囲が、案内路に沿った限られたスペースになる。それ故、カーカスバンド部材を旋回させる従来の方法に比して、カーカスバンド部材をタイヤ成形ドラムへ搬送する際の必要スペースを小さくすることが可能になる。
【0008】
また、案内路は、タイヤ成形ドラムのドラム軸方向端部近傍からドラム軸方向に延び、途中の1箇所で屈曲してドラム軸方向に対して0°〜150°の開き角度で延設されているので、案内路の成形ドラム側端部とは反対側端部に搬送機を配置しておけば、アームを筒状のカーカスバンド部材に内挿させて搬送機にセットする作業も省スペースで円滑に行なえる。
【0009】
ここで、前記案内路が案内溝であり、前記搬送機に走行用の駆動スプロケットを設けるとともに、この駆動スプロケットに噛み合うチェーンを前記案内溝の内周側側面に沿って張設した仕様にすることもできる。この仕様により、簡易な構成でありながら、搬送機を確実に案内路に沿ってその延設方向に走行させることができる。
【0010】
前記チェーンの少なくとも一方端に伸縮性部材を設けてチェーンを張設した仕様にすることもできる。この仕様では、駆動スプロケットが噛み合う際にチェーンに作用するテンションが、伸縮性部材の伸びにより低減される。そのため、チェーンに過度のテンションが生じ難くなり、チェーンの耐用期間を延ばすには有利になる。
【0011】
前記搬送機の接地車輪として、例えば、全方向に回動するフリーローラを使用する。これにより、搬送機が案内路に沿って円滑に移動し易くなる。
【0012】
前記アームの長さは、例えば3m〜4mである。アームの長さがこの範囲のように長い場合は、アームを旋回させるために必要スペースが過大になる。そのため、本発明を適用することにより、著しい省スペース効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のカーカスバンド部材の搬送装置を例示する平面概要図である。
【図2】搬送機を例示する側面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】案内溝に張設されたチェーンの端部を例示する平面図である。
【図5】開き角度が150°の案内溝を例示する平面図である。
【図6】開き角度が0°の案内溝を例示する平面図である。
【図7】搬送装置の移動範囲を平面視で例示する説明図である。
【図8】従来の搬送装置を例示する平面図である。
【図9】図8の搬送装置の旋回工程を例示する平面図である。
【図10】図9の搬送装置からタイヤ成形ドラムにカーカスバンド部材を移載する工程を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のカーカスバンド部材の搬送装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1、図2に例示するように本発明のカーカスバンド部材の搬送装置1は、自走式の搬送機2と、この搬送機2をタイヤ成形ドラム11に案内する案内溝8とを備えている。搬送機2は案内溝8に沿って移動する。
【0016】
搬送機2は、複数のアーム3を片持ち状態で有している。これらアーム3は筒状のカーカスバンド部材Bに、筒軸方向に内挿されてカーカスバンド部材Bを筒状のまま保持する。それぞれのアーム3は、カーカスバンド部材Bを拡径する方向に移動可能になっている。
【0017】
搬送機2の下部には、駆動スプロケット4、従動スプロケット5、押圧ローラ6が設けられている。また、搬送機2の自重を支持する接地車輪として、全方向に回動するフリーローラ7が設けられている。フリーローラ7は案内溝8を跨いだ適当な位置に、例えば4〜8個程度設けられる。接地車輪としては、一般的なローラを用いることもできる。
【0018】
案内溝8はタイヤ成形ドラム11のドラム軸方向端部近傍からタイヤ成形ドラム11から離れるようにドラム軸方向に延び、途中の1箇所で屈曲している。そして、屈曲した位置でドラム軸方向に対して90°の開き角度Aで延設されている。
【0019】
本発明では、開き角度Aが0°〜150°に設定される。図5、図6に例示する案内溝8はそれぞれ、150°、0°の開き角度Aで屈曲している。開き角度Aは、80°〜100°に設定するのがより好ましい。
【0020】
図3に例示するように、案内溝8の両側面8a、8bのうち、屈曲に対して内周側になる内周側側面8aにはチェーン9が沿うように張設されている。チェーン9の両端には、図4に例示するように、スプリング等の伸縮性部材10が設けられて張設されている。伸縮性部材10を設けずにチェーン9を張設することもできるが、チェーン9の少なくとも一方端に伸縮性部材10を設けるとよい。
【0021】
駆動スプロケット4および従動スプロケット5は、垂直軸に取り付けられていてチェーン9に噛み合うようになっている。駆動スプロケット4がチェーン9に噛み合って回転駆動することにより、搬送機2が自走する。
【0022】
押圧ローラ6は、外周側側面8bを常に押圧するようになっている。即ち、押圧ローラ6を回転自在に支持する支持シャフトの先端のスプリング止め6bと、搬送機2の下端から延びるブラケット6cとの間にスプリング6aを介設することにより、押圧ローラ6は常時、外周側側面8bを押圧する構成になっている。これにより、搬送機2は外周側側面8bから内周側側面8aに向かって付勢される。それ故、搬送機2が屈曲した案内溝8に沿って移動する際にも、常に、駆動スプロケット4は、内周側側面8aに沿わされているチェーン9に噛み合うことができる。
【0023】
この実施形態では、案内路として案内溝8が用いられているが、搬送機2をタイヤ成形ドラム11に案内するものであれば、別の案内路を用いることができる。
【0024】
次に、搬送装置1を用いて筒状のカーカスバンド部材Bをタイヤ成形ドラム11まで搬送する工程を説明する。
【0025】
まず、図1に例示するように、案内溝8のタイヤ成形ドラム11側端部とは反対側端部(待機位置)に搬送機2を配置しておく。この位置の搬送機2に対して、別工程から搬送してきた筒状のカーカスバンド部材Bを、アーム3が内挿されるように搬送機2に移載する。この時、それぞれのアーム3は縮径した位置でカーカスバンド部材Bを保持する。
【0026】
案内溝8は、途中の1箇所で屈曲してドラム軸方向に対して0°〜150°の開き角度Aで延設されている。そのため、別工程から搬送してきた筒状のカーカスバンド部材Bをアーム3に保持させて搬送機2にセットする際に、タイヤ成形ドラム11が邪魔になることがなく、しかも、省スペースで作業を円滑に行なえる。
【0027】
次いで、駆動スプロケット4を回転駆動させて搬送機2を自走させる。搬送機2は、アーム3の長手方向を、案内溝8の延設方向に向けて移動して、カーカスバンド部材Bをタイヤ成形ドラム11まで搬送する。
【0028】
タイヤ成形ドラム11まで搬送されたカーカスバンド部材Bは、従来どおり、拡径された状態で引込機12によって、タイヤ成形ドラム11に引き込まれて外挿される。カーカスバンド部材Bをタイヤ成形ドラム11に移載した後は、先の移動と同様にアーム3の長手方向を案内溝8の延設方向に向けて移動して、最初の待機位置に戻る。
【0029】
この搬送工程において、搬送機2が移動する範囲は、図7に例示するように案内溝8に沿った限られたスペースになる。図7では、搬送機2の移動軌跡を二点鎖線で示している。それ故、カーカスバンド部材Bを旋回させる従来の方法に比して、カーカスバンド部材Bをタイヤ成形ドラム11へ搬送する際の必要スペースを小さくすることが可能になる。
【0030】
この実施形態のように、駆動スプロケット4を、案内溝8の内周側側面8aに沿って張設したチェーン9に噛み合わせて自走させるようにすると、簡易な構成でありながら、搬送機2を確実に案内溝8に沿ってその延設方向に走行させることができる。
【0031】
また、チェーン9の端部に伸縮性部材10を設けて張設しているので、駆動スプロケット4が噛み合う際にチェーン9に作用するテンションは、伸縮性部材10が伸びることで低減する。これにより、チェーン9に過大なテンションが生じ難くなり、チェーン9の耐用期間を長くすることができる。
【0032】
この実施形態のように搬送機2の接地車輪として、全方向に回動するフリーローラ7を使用すると、搬送機2が案内溝8に沿って円滑に移動し易くなる。
【0033】
アーム3の長さは、例えば3m〜4mである。アーム3の長さがこの範囲のように大きくなると、アーム3を旋回させる場合には必要スペースが過大になる。それ故、本発明の搬送装置1を適用することにより、搬送機2によってタイヤ成形ドラム11へ搬送する際の必要スペースを著しく小さくできる
【符号の説明】
【0034】
1 搬送装置
2 搬送機
3 アーム
4 駆動スプロケット
5 従動スプロケット
6 押圧ローラ
6a スプリング
6b スプリング止め
6c ブラケット
7 フリーローラ(接地車輪)
8 案内溝(案内路)
8a 内周側側面
8b 外周側側面
9 チェーン
10 伸縮性部材
11 タイヤ成形ドラム
12 引込機
13 従来の搬送装置
14 アーム
15 旋回軸
16 移動ガイド
B カーカスバンド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のカーカスバンド部材に内挿されて、このカーカスバンド部材を保持する複数のアームを備えた搬送機と、この搬送機をタイヤ成形ドラムに案内する案内路とを備え、前記案内路がタイヤ成形ドラムのドラム軸方向端部近傍からドラム軸方向に延び、途中の1箇所で屈曲してドラム軸方向に対して0°〜150°の開き角度で延設され、前記搬送機が、アームの長手方向を前記案内路の延設方向に向けて移動する構成にしたことを特徴とするカーカスバンド部材の搬送装置。
【請求項2】
前記案内路が案内溝であり、前記搬送機に走行用の駆動スプロケットを設けるとともに、この駆動スプロケットに噛み合うチェーンを前記案内溝の内周側側面に沿って張設した請求項1に記載のカーカスバンド部材の搬送装置。
【請求項3】
前記チェーンの少なくとも一方端に伸縮性部材を設けてチェーンを張設した請求項2に記載のカーカスバンド部材の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送機の接地車輪として全方向に回動するフリーローラを設けた請求項1〜3のいずれかに記載のカーカスバンド部材の搬送装置。
【請求項5】
前記アームの長さが3m〜4mである請求項1〜4のいずれかに記載のカーカスバンド部材の搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−27997(P2013−27997A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163895(P2011−163895)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】