説明

カーテンウォール

【課題】簡易的にスパンドレル部の中空層に生じる結露を抑制することのできるカーテンウォールを提供する。
【解決手段】開口部10及びスパンドレル部20を有し、該スパンドレル部は、スパンドレル部の外枠を形成する枠体21、24、30と、枠体の内側に配置されるガラスパネル26と、ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが禁止されるように前記枠体に取り付けられる耐火パネルとを備えるカーテンウォール1であって、枠体、ガラスパネル、及び耐火パネルにより囲まれて形成される中空層Sと、中空層内の圧力が室外の圧力に対して所定の圧力差内にあるときに、中空層内に存する空気の浮力により該空気を室外に排出可能な換気手段40、50と、中空層内の圧力と室外の圧力とが所定の圧力差を超えたときに、中空層からの空気の出入りを禁止する遮断手段40、50とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に用いられるカーテンウォールに関し、詳しくはスパンドレル部に結露が発生し難いとともに耐久性にも優れるカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの外装部として、カーテンウォールが用いられることが多くなり、その要望も多岐にわたる。カーテンウォールは、工場で組み立てたカーテンウォールユニットを建物躯体に金具により取り付けるだけでよいため、施工性に優れ、外観の観点からも意匠性が高いので新築及び建て替えビルに広く採用されている。
【0003】
カーテンウォールユニットは、開口部と、該開口部の上下に配置されるスパンドレル部(「腰部」ということもある。)と、を備え、開口部は、ビルの居住空間に対応するビル外周部分に配置され、室内側と室外側とをガラスパネルにより仕切っている。
【0004】
一方、スパンドレル部は、開口部の上下に配置され、ビルの床や天井に対応するビル外周部分に具備される。図10、及び図11に、従来の例によるスパンドレル部120に注目したカーテンウォール101の断面図を示した。図10はカーテンウォール101がビルに取り付けられた姿勢における垂直断面図、図11は同水平断面図である。図10では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。図11では、紙面上が室外側、紙面下が室内側である。
【0005】
スパンドレル部120は開口部110と開口部110との間に配置され、室外に面して配置されたガラスパネル126と、該ガラスパネル126と略平行に所定の間隔を有して室内側に配置される耐火パネル127とを備えている。耐火パネル127は当該部位のビル内部を室外視から隠蔽するとともに防災上の要請から配置されるものである。特に耐火上の理由から耐火パネル127には材料としてケイ酸カルシウムが用いられている。
【0006】
また、ガラスパネル126、及び耐火パネル127の4辺には型材からなる縦枠130、及び横枠121、124が配置される。従って、スパンドレル部120は図10、図11にTで示したように、ガラスパネル126、耐火パネル127、縦枠130及び横枠121、124に囲まれた中空層Tを有している。
【0007】
スパンドレル部120のかかる構成において、従来、スパンドレル部120のガラスパネル126表面に結露を生じることが問題となっていた。この1つの理由として、室内の高温で加湿された空気が耐火パネルと枠体との間隙から中空層T内に流入し、これが冷やされて結露することが挙げられる。また、他の理由として、日射等により耐火パネル127に含まれる水分が上記中空層T内に蒸発して該中空層Tの湿度が上昇し、これが雨や日の陰り等により冷やされたときにガラスパネル126に結露することを挙げることができる。
【0008】
1つ目の理由による結露は、耐火パネルを枠体にシール材等により密閉して取り付けることにより、中空層Tと室内との空気の出入りを禁止することにより防止することができる。2つ目の理由による結露は、枠体に外気と中空層Tとを連結する換気口を設置し、外気温と中空層内の温度差を利用して換気することにより防止することができる。当該排気手段としては例えば特許文献1に排気手段を備えるカーテンウォールが開示されている。
【特許文献1】特開2003−314154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の方法、及び特許文献1のカーテンウォールでは、開口された換気口を意識的に閉鎖しない限り開口したままであり、このときに強い風があった場合、その風圧により中空層内が高圧になってしまう虞があった。スパンドレル部においては室内側が耐火パネルにより形成されているので、その強度によっては中空層内が高圧になると該耐火パネルが損傷する虞があった。
【0010】
そこで、本発明は簡易的にスパンドレル部の中空層に生じる結露を抑制することのできるカーテンウォールを提供することを課題とする。また、この際、耐火パネルを含めたスパンドレル部の構成部材の損傷を防止することができるカーテンウォールとすることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0012】
請求項1に記載の発明は、開口部(10)及びスパンドレル部(20)を有し、該スパンドレル部は、スパンドレル部の外枠を形成する枠体(21、24、30)と、枠体の内側に配置されるガラスパネル(26)と、ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが禁止されるように前記枠体に取り付けられる耐火パネル(27)とを備えるカーテンウォール(1)であって、枠体、ガラスパネル、及び耐火パネルにより囲まれて形成される中空層(S)と、中空層内の圧力が室外の圧力に対して所定の圧力差内にあるときに、中空層内に存する空気の浮力により該空気を室外に排出可能な換気手段(40、50)と、中空層内の圧力と室外の圧力とが所定の圧力差を超えたときに、中空層からの空気の出入りを禁止する遮断手段(40、50)とを備えるカーテンウォールを提供することにより前記課題を解決する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、開口部(10)及びスパンドレル部(20)を有し、該スパンドレル部は、スパンドレル部の外枠を形成する枠体(21、24、30)と、枠体の内側に配置されるガラスパネル(26)と、ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが禁止されるように枠体に取り付けられる耐火パネル(27)とを備えるカーテンウォール(1)であって、枠体、ガラスパネル、及び耐火パネルにより囲まれて形成される中空層(S)を有し、枠体が、少なくとも2箇所に中空層と、室外とを通じる流通路(B、C)を具備するとともに、流通路には流通路の遮断、開放を可能とする外気導入弁(40、50)を備え、外気導入弁により、中空層内が室外の圧力に対して所定の圧力差を有するものとなったときに流通路が遮断されることを特徴とするカーテンウォールにより前記課題を解決する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカーテンウォール(1)の一方の流通路(B)及び外気導入弁(40)が枠体のうちの下横枠(24)又は縦枠(30)に設けられ、他方の流通路(C)及び外気導入弁(50)が、一方の流通路及び外気導入弁より上方の縦枠(30)又は上横枠(21)のいずれかの位置に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構造によりスパンドレル部の中空層を換気し、結露の発生を抑制することができる。さらに強い風圧力により中空層内と、室外側との間に大きな圧力差が生じたときに中空層内への空気の出入りを遮断することができ、これにより耐火パネル等が圧力差で損傷することを防止することが可能となる。
【0016】
また、空気が出入り可能な流通路が上下に離隔して配置される。これにより、直射日光等により暖められ、密度が小さくなって上昇した空気が、より効果的に中空層内から外へ流出されるとともに冬季の乾燥した外気を中空層へ取り込むことができる。従って、中空層内の換気が一層促進され、結露の発生をさらに効率的に防止することができる。
【0017】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
図1には、カーテンウォール1の外観を示した。図1(a)はカーテンウォール1の室外視正面図、図1(b)は垂直断面図である。カーテンウォール1は、ビル内部の室内(いわゆる居住空間)の外周部に対応する位置に配置される開口部10、10、…と、天井及び床の外周部に対応する位置に配置されるスパンドレル部20、20、…とを備えている。開口部10、10、…及びスパンドレル部20、20、…は、それぞれが横方向に一列に並列され、縦方向には、該開口部10、10、…とスパンドレル部20、20、…とが交互に並べられている。また、各々の開口部10、10、…及びスパンドレル部20、20、…の縦端辺は縦枠30、30に取り付けられる。従って、開口部10、10、…とスパンドレル部20、20、…とにより、カーテンウォール1は室外側正面視で升目状を呈している。
【0020】
図2はカーテンウォール1の1つのスパンドレル部20に注目して示した該カーテンウォール1の垂直断面図である。図3は、図2にA−Aで示した線による水平断面図で、縦枠30に注目した部位である。図2では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。また、図3では紙面上が室外側、紙面下が室内側である。図1〜図3、及び適宜示す図を参照しつつカーテンウォール1についてさらに説明する。
【0021】
開口部10、10はビルの居住空間の建物外周部に対応する部分に配置され、室内側と室外側とを仕切るガラスパネル11、11を備えている。ガラスパネル11、11は、その4辺を後述する上横枠21、下横枠24、及び縦枠30により開口部10、10に固定されている。当該ガラスパネル11は透光性を有するガラス板により構成され、通常の建築物に用いられるガラスパネルを利用することができる。
【0022】
スパンドレル部20は、ガラスパネル26、耐火パネル27、枠体としての上横枠21、同下横枠24、同縦枠30、及び外気導入弁40、50を備えている。スパンドレル部20は開口部10の上下に配置され、ビルの床や天井の建物外周部に対応する部分に具備される。そして、当該ガラスパネル26、耐火パネル27、上横枠21、下横枠24、及び縦枠30に囲まれた部分により中空層Sが形成されている。以下に各構成要素について説明する。
【0023】
ガラスパネル26は、透光性を有するガラス板により構成され、通常の建築物に用いられるガラスパネルを利用することができる。当該ガラスパネル26は、室外に面して配置され、開口部10に具備されるガラスパネル11と略面一とされている。これにより建物の意匠性を高めることができ、外観に優れた建物を提供することが可能となる。
【0024】
耐火パネル27は、ガラスパネル26と略平行に該ガラスパネル26より室内側に配置される。このとき耐火パネル27と、ガラスパネル26との間には所定の間隙が設けられ、中空層Sが形成される。耐火パネル27は、建物内側を室外視から隠蔽するとともに防災上の要請から具備される。従って特に耐火上の観点から材料として、ケイ酸カルシウムが用いられることが多い。
【0025】
上横枠21は上記ガラスパネル26及び耐火パネル27の4辺のうち上の辺のそれぞれに沿って配置される長尺部材である。図4に上横枠21の部分に注目した垂直断面を示した。従って、上横枠21は図4に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。上横枠21は、図4に表されたようにその断面において開口部10側の第一上横枠22と、スパンドレル部20側の第二上横枠23とが組み合わされて形成されている。
【0026】
第二上横枠23の下部で室外側の部位は、ガラスパネル26の上端部を受け入れ可能に形成される。そして、ビード23a、23bに挟持されるようにガラスパネル26の上端がここに固定される。一方、第二上横枠23の下部で室内側の部位にはアーム23cが取り付けられ、該アーム23cが耐火パネル27の上端部を受け入れ可能に形成されている。そして耐火パネル27の上端はシール材23d、23eに挟持されるようにアーム23cに固定される。従って、ガラスパネル26の上端はビード23a、23bにより、耐火パネル27はシール材23d、23eにより、その前後で空気の出入りが遮断されている。本実施形態では、シール材23d、23eにより空気の出入りが遮断されているが、いずれか一方で空気の出入りが遮断されていてもよい。これには例えばシール材23dについては図4の紙面奥/手前方向に延在せず、断続的に数個のピースにより形成される態様を挙げることができる。また、上横枠21には、第一上横枠22、第二上横枠23の各部に適宜シール材が配置され、適切に気密水密が維持されている。ここで「シール材」は水密性、気密性を確保することができればその種類は特に限定されるものではなく、錬り状のシーリング材のみでなくガスケット等をも適用することができる。
【0027】
下横枠24は上記ガラスパネル26及び耐火パネル27の4辺のうち下の辺のそれぞれに沿って配置される長尺部材である。図5に下横枠24の部分に注目した垂直断面を示した。従って、下横枠は図5に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。
【0028】
下横枠24の上部で室外側の部位は、ガラスパネル26の下端を受け入れ可能に形成されている。そして、ビード24a、24bに挟持されるようにガラスパネル26の下端がここに固定される。一方、下横枠24の上部で室内側の部位にはアーム部24cが設けられ、該アーム部24cが耐火パネル27の下端部を受け入れ可能に形成されている。そして耐火パネル27の下端はシール材24d、24eに挟持されるようにアーム部24cに固定される。従って、ガラスパネル26の下端はビード24a、24bにより、耐火パネル27の下端はシール材24d、24eにより、その前後で空気の出入りが遮断されている。本実施形態では、シール材24d、24eにより空気の出入りが遮断されているが、いずれか一方で空気の出入りが遮断されていてもよい。これには例えばシール材24dについては図5の紙面奥/手前方向に延在せず、断続的に数個のピースにより形成される態様を挙げることができる。
【0029】
また、下横枠24には図5にBで示したように室外と中空層Sとを通じる通風路Bが設けられている。そして通風路Bの中空層S側に外気導入弁40が配設されている。外気導入弁40については後で説明する。通風路Bは、図5に表れているが、下横枠24の長手方向(紙面奥/手前方向)に沿って全長に亘って設けられてはおらず、一部に設けられているのみである。当該通風路B、及び外気導入弁40、50(図2参照)により後述するように中空層S内の空気が適切に通気され、結露を防止することが可能となる。
【0030】
次に縦枠30について図3を参照しつつ説明する。縦枠30は上記ガラスパネル26及び耐火パネル27の4辺のうち左右の辺のそれぞれに沿って配置される長尺部材である。従って、縦枠30は図3に表された断面を概ね維持して紙面奥/手前方向に延在している。また、縦枠30は、隣り合う開口部10、10及びスパンドレル部20、20の間に配置される共有部材である。そして縦枠30は、左右に並列する左縦枠31と、右縦枠32とが合わせられるように形成されている。
【0031】
縦枠30のうちガラスパネル26、26の左右端が配置される部位は、該ガラスパネル26、26の左右端を受け入れ可能に形成されている。そして、ビード31a、31b、32a、32bに挟持されるようにガラスパネル26、26の左右端がここに固定される。一方、縦枠30のうち耐火パネル27、27の左右端が配置される部位には、アーム31c、32cが設けられる。そして、該アーム部31c、32cが耐火パネル27、27の左右端を受け入れ可能に形成されている。このとき耐火パネル27、27の左右端はシール材31d、31e、32d、32eに挟持されるようにアーム31c、32cに固定される。従って、ガラスパネル26、26の左右端はビード31a、31b、32a、32bにより、耐火パネル27、27の左右端はシール材31d、31e、32d、32eにより、その前後で空気の出入りが遮断されている。本実施形態では、シール材31d、31e、32d、32eにより空気の出入りが遮断されているが、いずれか一方で空気の出入りが遮断されていてもよい。これには例えばシール材31d、32dについては図3の紙面奥/手前方向に延在せず、断続的に数個のピースにより形成される態様を挙げることができる。
【0032】
また、縦枠30には、左縦枠31、右縦枠32の各部、及びその間に適宜シール材が配置され、適切に気密水密を維持している。
【0033】
さらに、縦枠30には図3にC、Cで示したように中空層Sと室外とを通じる通風路C、Cが設けられている。そして通風路C、Cの中空層S側に外気導入弁50が配設される。外気導入弁50については後で説明する。通風路C、Cは、図3に表れているが、縦枠30の長手方向(紙面奥/手前方向)に沿って全長に亘っては設けられてはおらず、一部に設けられているのみである。当該通風路C、Cの垂直方向位置は特に限定されるものではないが、上記した通風路Bに対して出来るだけ離隔した上方が良いので、スパンドレル部20、20の上半分のいずれかの部位であることが好ましく、それが上部であることがさらに好ましい。そして、当該通風路C、C、通風路B及び外気導入弁40、50により後述するように中空層S内の空気が適切に排気され、結露を防止することが可能となる。このとき、通風路Cから流出した空気は、図3に矢印Dで示した通路や、紙面上下方向に縦枠30に沿って移動し、室外へ出ることができる。
【0034】
かかる構成の縦枠30は、左縦枠31、及び右縦枠32のそれぞれに取り付けられる連結部材33、34を介して、不図示の固定部材等により建物の基礎鉄骨2に固定される。
【0035】
本実施形態では、通風路Bは下横枠24に、通風路Cは縦枠30にそれぞれ設けられたがこれに限定されるものではない。例えば、通風路Bを縦枠30に、通風路Cを上横枠21に設けてもよい。また、通風路B、Cのいずれもが縦枠30に設けられていてもよい。このとき通風路Cは通風路Bよりも上方に配置されれば本発明の効果を奏することができる。外気導入弁40、50は、通風路B、Cの配置に伴い適宜その配置も変更される。
【0036】
次に外気導入弁40、50について説明する。上記の通り、外気導入弁40は下横枠24に設けられ、外気導入弁50は縦枠30に備えられる。当該2種類の外気導入弁40、50は、取り付けられる位置が異なるのみで、構成は同じある。従ってここでは外気導入弁40についてのみ説明する。図6は外気導入弁40の外観斜視図である。図7は外気導入弁40の断面図であり、図7(a)は図6にE−Eで示した線に沿った面による垂直断面図、図7(b)は図6にF−Fに示した線に沿った面による垂直断面図、及び図7(c)は図6にG−Gに示した線に沿った面による垂直断面図である。図6及び図7を参照しつつ外気導入弁40について説明する。
【0037】
外気導入弁40は、両端面が開口している筒状体である筒体41と、該筒体41の内側に具備される弁45と、弾性部材48、48、48、48と、を備えている。筒体41は、筒の軸に垂直な断面形状が、両端が半円で形成された略矩形とされている。また、筒体41の内壁面には内周に沿って突起41a、42aが設けられている。従って、当該突起41a、42aの部分では、筒体41の内側開口が狭くなる。突起41a、42aの配置位置は、突起41aが筒体41の軸方向略中央に、突起42aが筒体41の端部である。これら突起41a、42aを筒体41の内側に形成するための方法は特に限定されるものではない。本実施形態では、製造容易性の観点から、突起42aとなる部分を有する突起部材42を別体で筒体41の内側に挿入することにより筒体41の内側に突起42aを形成した。
【0038】
また、筒体41はその内側に該内側を横切るように、対向する内壁面を渡されて設けられた弁支持部材44、44を有している。弁支持部材44、44は、所定の間隔を有して2つ並列されている。弁支持部材44、44は筒体41の突起41aと略同じ軸方向位置に設けられている。さらに弁支持部材44、44は、その長さ方向略中央に、筒体41の軸方向に平行である貫通孔44a、44aを有している。
【0039】
弁45は、プレート46と弁支持棒47、47とを備えている。プレート46は筒体41の内側開口形状と略相似形を有する板状の部材である。当該板状である板面の外周は、筒体41の突起41a、42aの部位における筒体41の内側開口よりも大きく、突起41a、42aが具備されない部位における筒体41の内側開口よりも小さくされている。弁支持棒47、47はプレート46の一面側に備えられる立設した棒状部材で、上記弁支持部材44、44に対応する位置に具備されている。弁支持棒47、47の直径は、弁支持部材44、44の貫通孔44a、44aの直径より小さく形成されている。
【0040】
かかる構成を有する弁45は、プレート46の部分が筒体41の軸方向において突起41aと突起42aとの間に配置される。加えて弁支持棒47、47が弁支持部材44、44の貫通孔44a、44aの内側に挿入される。従って、プレート46は、突起41aと突起42aとの間を移動することができるとともに、突起41a、42aのいずれかに当接された場合には筒体41の内側開口を閉鎖することが可能となる。
【0041】
外気導入弁40、50が下横枠24、及び縦枠30に備えられる際には、突起42aが中空層Sとは反対側に向けられるように具備される。ただし当該向きは限定されるものではなく、いずれの方向に向けられてもよい。また、本実施形態において外気導入弁は、下横枠24に2つ(外気導入弁40、40)、縦枠30(31、32)に各1つ(外気導入弁50、50)設けられている。しかしこれについても限定されるものではなく、中空層Sの大きさ等により適宜変更することが可能である。
【0042】
弾性部材48、48、48、48は、その伸縮により所定の弾性力を備える部材である。これにはバネや伸縮性を有する発砲体等を挙げることができる。弾性部材48、48、48、48は、その一端を弁支持部材44、44に取り付けられ、他端をプレート46に取り付けられる。従って、弁45のプレート46の位置により弾性部材48、48、48、48は付勢される。具体的な弁の動作については後で説明する。
【0043】
以上説明したような構成により本発明のカーテンウォール1が形成される。これによれば、簡易な構成とされていることがわかる。かかる簡易な構成であるにもかかわらず中空層Sの換気を適切におこなうことができるとともに、耐火パネル27に大きな負荷がかかることを防止することが可能となる。
【0044】
次に具体的に中空層Sの換気、及び耐火パネル27の保護について説明する。はじめに外気導入弁40の動作について説明する。ここでも、外気導入弁50については、外気導入弁40の説明が該当するので説明を省略する。図8に外気導入弁40の各姿勢を説明するための断面図を示した。図8は図7(a)と同じ視点によるものである。図8(a)は外気導入弁40の前後で圧力差がない場合、外気導入弁40にいずれの方向からも風が流入していない場合における外気導入弁40の姿勢である。かかる場合に外気導入弁40の弾性部材48、48、48、48は平衡状態にあり、いずれの方向にも付勢されていない。このときプレート46は突起41aと41bとの間に位置する。従ってかかる場合には、プレート46と筒体41の内壁との間には隙間が形成され、例えば図8(a)にHで示した矢印や図7(c)にJで示した矢印のように通路を有し、外気と中空層Sとが通じることができる。
【0045】
図8(a)に示した姿勢から例えば紙面上方の圧力が低くなったり、紙面下方から風が吹いたりした場合、プレート46は紙面下から上方へ向けて力を受ける。この力が弾性部材48、48、48、48の弾性力よりも大きい場合には、プレート46は弾性部材48、48、48、48の弾性力に抗して紙面上方に移動する。そして最終的にプレート46は図8(b)に示したように突起41aに達し、プレート46の外縁部が突起41aに引っ掛かるようにして筒体41の内側を閉鎖する。
【0046】
逆に、図8(a)に示した姿勢から例えば紙面下方の圧力が低くなった場合、プレート46は紙面下方へ向けて力を受ける。この力が弾性部材48、48、48、48の弾性力よりも大きい場合には、プレート46は弾性部材48、48、48、48の弾性力に抗して紙面下方に移動する。そして最終的にプレート46は図8(c)に示したように突起42aに達し、プレート46の外縁部が突起42aに引っ掛かるようにして筒体41の内側を閉鎖する。
【0047】
かかる外気導入弁40、50を備えたカーテンウォール1により次のように中空層Sの換気、及び耐火パネル27の保護が行われる。図9に説明のための概略図を示した。図9(a)〜図9(c)の各図における左側に記載した図は図8(a)〜図8(c)に対応する図で、右側に記載した図は、カーテンウォールの垂直断面、及び空気の流れを模式的に示したものである。図9(a)に示した外気導入弁40、50の姿勢では外気の流入、流出は自由である。従って、カーテンウォール1のスパンドレル部20が直射日光等により暖められ、中空層Sが暖められるとともに耐火パネル27から発湿した場合、暖められた中空層Sの空気は外気に比べ密度が小さくなって上昇する。これにより、該空気は、該中空層Sから室外へ外気導入弁50、及び流通路C(図3参照)を介して流出する。そしてそれにともない、下横枠24に備えられた流通路B(図5参照)及び外気導入弁40を介して乾燥した外気が中空層Sに流入する。このようにして、中空層Sが換気されて結露が発生することを抑制することができる。
【0048】
図9(a)に示した姿勢から例えばビルへ強い風が吹きつけ、流通路B、Cから風が吹き込み、これが一定の強さを超えた場合には、図9(b)に示した姿勢の外気導入弁40、50が、中空層S内への空気の流入を遮断する。これにより中空層S内の圧力が所定以上となることを防止し、耐火パネル27が損傷することを防ぐことができる。どの程度の風で外気を遮断するかについては特に限定されるものではないが、室外と中空層Sとの差圧が200Pa以上となったときが好ましい。これを風速に換算すると概ね18m/sである。
【0049】
逆に、図9(a)に示した姿勢から例えばビルの外側で生じる空気渦により、ビルから離れる方向に風が起こる場合を考える。かかる場合には室外側の方が圧力が低くなり、負圧となって流通路B、Cから空気が吹き出す。これが一定の強さを超えた場合には図9(c)に示した姿勢の外気導入弁40、50が、中空層S内から空気が流出するのを遮断する。これにより耐火パネル27が当該負圧の力により損傷することを防止することができる。どの程度の負圧で外気を遮断するかについては特に限定されるものではないが、室外と中空層Sとの差圧が200Pa以上となったときが好ましい。
【0050】
以上のように、本発明のカーテンウォール1により適切に中空層Sの換気ができ、結露を防止することを可能とするとともに、中空層S内が加圧、又は減圧されることによる耐火パネル27の損傷を防止することができる。
【実施例】
【0051】
実施例として、長さ50mm(図7(a)紙面左右方向長さ)、幅14.4mm(図7(b)紙面左右方向長さ、高さ12mm(図7紙面上下方向長さ)を有する外気導入弁について相当開口面積を求める実験を行った。相当開口面積とは、換気に有効な面積を意味するものである。相当開口面積はαA(cm)で表され、次式(1)から求められる。
αA=2.78(γ/2g)1/2・Q・(Δp)(1/n−0.5) (1)
【0052】
ここで、それぞれの記号は
γ:空気の密度(kg/m
:内外差圧Δp=1mmAq(9.8Pa)の時の漏気量Q(m/h)
g:重力加速度(m/s
n:隙間特性を表す係数(層流時は1、乱流時は2の値をとる。)
を意味する。
【0053】
本発明のカーテンウォールについてQを測定したところQ=1.0946(m/h)を得た。これを式(1)に代入し(n=2)計算するとαA=0.75(cm)となる。これに対し、直径10mmの孔を開けた場合にはαA=0.50(cm)、直径13mmの孔を開けた場合にはαA=0.95(cm)である。従って本発明のカーテンウォールにより直径11〜12mmの孔を開けた場合と略同一の換気性能を得ることができ、十分な換気能力を備えることが確かめられた。
【0054】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカーテンウォールもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のカーテンウォールの室外視正面図及び垂直断面図である。
【図2】1つのスパンドレル部に注目したカーテンウォールの垂直断面図である。
【図3】1つのスパンドレル部に注目したカーテンウォールの水平断面図である。
【図4】上横枠部分に注目した垂直断面図である。
【図5】下横枠部分に注目した垂直断面図である。
【図6】外気導入弁の外観斜視図である。
【図7】外気導入弁の断面図である。
【図8】外気導入弁の動作を説明するための図である。
【図9】中空層の換気及び換気の禁止を説明するための図である。
【図10】従来のカーテンウォールにおけるスパンドレル部に注目した垂直断面図である。
【図11】従来のカーテンウォールにおけるスパンドレル部に注目した水平断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 カーテンウォール
2 基礎鉄骨
10 開口部
11 ガラスパネル
20 スパンドレル部
21 上横枠(枠体)
22 第一上横枠(枠体)
23 第二上横枠(枠体)
24 下横枠(枠体)
26 ガラスパネル
27 耐火パネル
30 縦枠(枠体)
31 左縦枠(枠体)
32 右縦枠(枠体)
33、34 連結部材
40、50 外気導入弁
41 筒体
45 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部及びスパンドレル部を有し、該スパンドレル部は、
前記スパンドレル部の外枠を形成する枠体と、
前記枠体の内側に配置されるガラスパネルと、
前記ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが禁止されるように前記枠体に取り付けられる耐火パネルと、を備えるカーテンウォールであって、
前記枠体、前記ガラスパネル、及び前記耐火パネルにより囲まれて形成される中空層と、
前記中空層内の圧力が室外の圧力に対して所定の圧力差内にあるときに、前記中空層内に存する空気の浮力により該空気を室外に排出可能な換気手段と、
前記中空層内の圧力と前記室外の圧力とが前記所定の圧力差を超えたときに、前記中空層からの空気の出入りを禁止する遮断手段と、を備えるカーテンウォール。
【請求項2】
開口部及びスパンドレル部を有し、該スパンドレル部は、
前記スパンドレル部の外枠を形成する枠体と、
前記枠体の内側に配置されるガラスパネルと、
前記ガラスパネルと所定の間隙を有して該ガラスパネルより室内側に配設されるとともに、その室内外側間で空気の出入りが禁止されるように前記枠体に取り付けられる耐火パネルと、を備えるカーテンウォールであって、
前記枠体、前記ガラスパネル、及び前記耐火パネルにより囲まれて形成される中空層を有し、前記枠体が、少なくとも2箇所に前記中空層と、室外とを通じる流通路を具備するとともに、前記流通路には該流通路の遮断、開放を可能とする外気導入弁を備え、
前記外気導入弁により、前記中空層内が前記室外の圧力に対して所定の圧力差を有するものとなったときに前記流通路が遮断されることを特徴とするカーテンウォール。
【請求項3】
一方の前記流通路及び前記外気導入弁が前記枠体のうちの下横枠又は縦枠に設けられ、他方の前記流通路及び前記外気導入弁が、前記一方の流通路及び外気導入弁より上方の縦枠又は上横枠のいずれかの位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載のカーテンウォール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−184816(P2008−184816A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19502(P2007−19502)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】