説明

カーテンエアバッグ装置

【課題】 カーテンエアバッグが膨張展開するときにセンターピラーガーニッシュとの干渉を防止し、展開特性を向上させたカーテンエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】 センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aを超えて膨張展開する膨張部4の先端部4aにエアバッグ本体部3を膨張部4に連通させて取り付ける。エアバッグ2の膨張展開時には、最初に膨張部4が膨張展開を行い、次に車内側に位置させたエアバッグ本体部3を膨張展開させるので、エアバッグ2はセンターピラーガーニッシュ16の上縁部16aに阻害されることなく、しかも、エアバッグ本体部3をカーテン状に車両の側方窓に沿って下方に膨張展開させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両側面の窓部に沿って膨張展開するエアバッグを備えたカーテンエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、車両に対する側突事故やロールオーバ等の事故において、乗員の頭部を保護する目的で、車室の側面に沿って膨張展開するカーテンエアバッグを設けた車両が、数多く使用されている。車両に対する側突事故やロールオーバ等の事故の発生が検知されると、あるいはこれらの事故の発生が予測されると、カーテンエアバッグ装置のインフレータから噴射された膨張ガスがカーテンエアバッグ内に流入して、カーテンエアバッグを膨張展開させる。
【0003】
カーテンエアバッグは、天井内の張り材(ヘッドライニング)と車体パネルとの間の空間に折畳まれた状態で、ルーフサイドレール内に収納されている。カーテンエアバッグの膨張展開に伴って、ヘッドライニングの下端部側を車内側上方に押し開き、押し開かれた開口を通ってカーテンエアバッグは、車室内で窓に沿いながら下方に向ってカーテン状に展開する。膨張展開したカーテンエアバッグによって、乗員の頭部を保護することができる。
【0004】
一般に、乗員の頭部などを保護するために用いられるカーテンエアバッグ装置は、乗員の頭部をカーテンエアバッグで受け止めたときに、カーテンエアバッグの内圧は適当な内圧状態になっており、そして、ある時間の間では内部のガスが抜けきらずに維持できるものが、衝突やロールオーバ等に対して、より好ましい保護性能を発揮する、とされている。
【0005】
また、カーテンエアバッグ装置としては、車両に対する側突事故やロールオーバ等の事故が発生したときに、車両内に乗車していた乗員が車両の窓から放り出されないように保護する機能も要求されている。乗員の頭部がカーテンエアバッグに当接したときに、窓枠の内側で膨張展開したカーテンエアバッグ自体も一緒になって窓の外側にはみ出てしまうと、乗員の頭部をキャッチングしている位置は、窓の外側に対して所定量以上よりも更に突出した位置になってしまう。
【0006】
そのため、窓枠の内側においてカーテンエアバッグが安定的に展開することが求められており、カーテンエアバッグが膨張展開したときには、乗員の頭部をキャッチングしている位置が窓の外側に対して所定量以上突出しないことが必要になっている。
【0007】
カーテンエアバッグの典型的な構成例としては、前席の側方側にある窓とその直ぐ後方の後席の側方側にある窓とを仕切り、ルーフを支えているセンターピラー(Bピラーとも呼ばれている。)を含めて、センターピラーの前後に配された二つの側方窓を覆うように構成されている。カーテンエアバッグが膨張展開することによって、センターピラーの上方のヘッドライニングをピラーガーニッシュとの接合部分から上方に離間するように構成されている。
【0008】
しかし、カーテンエアバッグの膨張展開時に、カーテンエアバッグの一部がセンターピラーガーニッシュの上縁部と干渉を起こして、カーテンエアバッグがスムーズに膨張展開しない問題が生じていた。
【0009】
この問題を解決するため、頭部保護エアバッグ袋体の配設構造(特許文献1参照)や同じ名称である頭部保護エアバッグ袋体の配設構造(特許文献2参照)などが提案されている。
【0010】
特許文献1及び2に記載された各発明では、センターピラーガーニッシュの上縁部とセンターピラーとの間の隙間をジャンプ台やガイドプレートで覆い、膨張展開するカーテンエアバッグがセンターピラーガーニッシュの上縁部と干渉しない構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−91490号公報
【特許文献2】特開2000−33845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1及び2に記載された発明では、センターピラーガーニッシュの上縁部に向かって展開する特性を有するカーテンエアバッグを、センターピラーガーニッシュの上縁部に阻害され難くなるように案内する構成になっている。しかし、センターピラーガーニッシュの上縁部を通過したカーテンエアバッグは、車内方向に通過時の進行方向に沿って膨張展開する傾向を有するため、それを再び窓に沿って乗員の側部に膨張展開するように展開方向を制御することは容易ではない。
【0013】
また、特許文献1又は特許文献2に記載された各発明におけるジャンプ台やガイドプレートは、カーテンエアバッグがセンターピラーガーニッシュの上縁部を通過するときの方向規制手段とはなる。しかし、ジャンプ台やガイドプレートは、センターピラーガーニッシュの上縁部とルーフサイドガーニッシュとの合わせ部分を早期に大きく開口させて、カーテンエアバッグを車内側に膨張展開させるときの開口を早期に大きくさせることに関しては、効果が少ない。
【0014】
従来例の構成を参考図として示す図9を用いて更に説明を加えることにする。図9には、ヘッドライニング13とレールインナーパネル17との間にカーテンエアバッグ25(26)を配設した従来例の構成を示している。
【0015】
実線で示したカーテンエアバッグ25は、レールインナーパネル17側に配設した構成例を示している。実線で示したようにカーテンエアバッグ25をレールインナーパネル17側に配設した場合、カーテンエアバッグ25の膨張展開時には、膨張展開しているカーテンエアバッグ25の一部が、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aと干渉してしまい、カーテンエアバッグ25が正常に膨張展開することができなくなる。
【0016】
そして、膨張展開しているカーテンエアバッグ25の一部と、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aとの干渉を防止するためには、上述した特許文献1、2のようにセンターピラーガーニッシュの上縁部とセンターピラーとの間の隙間をジャンプ台やガイドプレートで覆い、膨張展開するカーテンエアバッグがセンターピラーガーニッシュの上縁部と干渉しないように構成しておかなければならない。
【0017】
特許文献1、2のようなジャンプ台やガイドプレートを設けない構成で、膨張展開しているカーテンエアバッグの一部と、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aとの干渉を防止するためには、図9の二点鎖線で示すカーテンエアバッグ26のように、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aとの干渉を防止する位置までカーテンエアバッグ26を偏位させた状態で取り付けておかなければならない。
【0018】
カーテンエアバッグ26のように配設することによって、膨張展開しているカーテンエアバッグ26と、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aとが干渉するのを防止できるが、レールインナーパネル17からせり出したようにカーテンエアバッグ26を取付けておく取付構成は、複雑なものとなり、コスト高を招いてしまうことになる。
【0019】
本願発明では、エアバッグが膨張展開するときのセンターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を防止し、或いは、センターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を最小限にして、カーテンエアバッグを車内側に膨張展開させるときのセンターピラーガーニッシュの上縁部とヘッドライニングとの合わせ部分を早期に大きく開口させることができ、カーテンエアバッグを円滑で迅速に窓に沿って膨張展開可能なカーテンエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明の課題は、請求項1〜3に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明のエアバッグ装置では、カーテンエアバッグが、センターピラーガーニッシュの上縁部よりも上方であって、車両の前後方向においてセンターピラーと重なる部位に配設され、膨張展開時に車両の左右方向に対して前記センターピラーガーニッシュの上縁部以上の厚みを有する膨張部と、前記膨張部の車内側における先端部で前記膨張部に連通するとともに前記先端部に取り付けられ、車両の前後方向に延びる長さ寸法を有し、車両の側方窓を覆うエアバッグ本体部と、を備え、
前記膨張部の基部が車体に取り付けられてなり、前記膨張部にインフレータで発生した膨張ガスが導入されてなることを最も主要な特徴としている。
【0021】
また、本願発明のエアバッグ装置では、前記インフレータが、接続用パイプを介して前記膨張部に接続してなることを主要な特徴としている。
更に、本願発明のエアバッグ装置では、前記インフレータが、前記膨張部内に配設されてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本願発明に係わるエアバッグ装置では、センターピラーガーニッシュの上縁部よりも上方であってセンターピラーと重なる部位に、膨張展開時に車両の左右方向に対して前記センターピラーガーニッシュの上縁部以上の厚みを有する膨張部を備えている。しかも、エアバッグ本体部を膨張部の車内側における先端部に設けるとともに、インフレータからのガスが導入される膨張部を介してエアバッグ本体部を膨張展開させる構成になっている。
【0023】
このように構成されているので、インフレータからのガスによって最初に膨張部が膨張展開を行い、センターピラーガーニッシュの上縁部と一致して、または、上縁部を超えて車内側に膨張部の先端部を位置させることができる。そして、膨張部の先端部から垂れ下がる形でエアバッグ本体部を膨張展開することができる。
【0024】
そして、膨張部の膨張展開によってセンターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を防止し、或いは、センターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を最小限にして、エアバッグ本体部は窓に沿って膨張展開することができる。また、膨張部の膨張展開によって、センターピラーガーニッシュの上縁部とヘッドライニングとの合わせ部分を早期に大きく開口させることができるので、早期に大きく開口した部位を起点として、ヘッドライニングの下端部側を車両の前後方向に沿って車内側上方に押し開いていくことができる。
【0025】
即ち、エアバッグ本体部は裾状をなす引き出し形状となって、内装材の縁を越えて車内に引き出され、迅速に膨張展開することができる。このように、エアバッグの膨張展開に
よって、センターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を防止し、カーテンエアバッグの円滑な膨張展開を行うことができる。
【0026】
インフレータは、接続用パイプを介して膨張部に接続した構成としておくことも、膨張部内に配設した構成にしておくこともできる。
インフレータは、接続用パイプを介して膨張部に接続した構成としておくことにより、インフレータの配設部位を任意の場所とすることができ、又、インフレータの大きさも任意の大きさを利用することができる。また、インフレータを膨張部内に配設した構成にしておくことにより、コンパクトな構成としてカーテンエアバッグを構成することができる。しかも、膨張部の基部を車体に取り付けるのに、インフレータを車体に取付けるスタッドボルトを併用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】サイドカーテンエアバッグが膨張展開した状態を示す概略要部断面図である。(実施例)
【図2】カーテンエアバッグの分解組立て図である。(実施例)
【図3】膨張室とエアバッグ本体部との接合部を示す斜視図である。(実施例)
【図4】インフレータの取付構造を示す斜視図である。(実施例)
【図5】カーテンエアバッグの折り畳み状態を示す要部斜視図である。(実施例)
【図6】カーテンエアバッグの折り畳み状態を示す要部断面図である。(実施例)
【図7】カーテンエアバッグの他の構成例を示す要部斜視図である。(実施例)
【図8】インフレータの他の取付構造を示す斜視図である。(実施例)
【図9】サイドカーテンエアバッグが膨張展開した状態を示す概略要部断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるカーテンエアバッグ装置としては、以下に説明する実施例の構成に限定されるものではなく、膨張部やエアバッグ本体部の構成としては、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0029】
図1に示すように、カーテンエアバッグ装置1は、ルーフサイドレール18内のレールインナーパネル17に取付けておくことができる。カーテンエアバッグ装置1のエアバッグ2は、エアバッグ2内に配したインフレータ10と共にインフレータ10に設けたスタッドボルト11を介して、レールインナーパネル17に取付けられている。即ち、スタッドボルト11にナット12を螺合させることで、エアバッグ2とインフレータ10とをレールインナーパネル17に取付けておくことができる。
【0030】
エアバッグ2は、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aに係合したヘッドライニング13とレールインナーパネル17との間に配設されており、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aよりも上方であって、車両の前後方向においてセンターピラー15と重なる部位に配設されている。
【0031】
尚、ここでセンターピラー15とは、後述する前気室30a及び後気室30bの間の部位の側方に位置しており、車両の前後に配される端部のピラーではないピラーであって、展開したエアバッグ2によって覆われるピラーを示している。また、車両の種類によっては、片側に、例えば、4本以上のピラーを備えた構成の車両も存在するが、このような車両でも車両の前から3本目以降のピラーに関しては、本願発明では、リアピラーとして扱うことにする。
【0032】
エアバッグ2は、インフレータ10を内蔵した膨張部4と窓に沿ってカーテン状に膨張展開するエアバッグ本体部3とを有する構成になっている。図2に示すように、膨張部4は、車両の左右方向に対して所定の厚みを有し、膨張部4の先端部4aには、エアバッグ本体部3の中央上部3aが連通して取り付けられている。
【0033】
即ち、図3に示すように、膨張部4は三角柱形状に構成され、三角柱形状の稜線部にあたる膨張部4の先端部4aは、膨張部4内とエアバッグ本体部3内とが連通するように、車両の左右方向に対して所定の長さ寸法を有するエアバッグ本体部3の中央上部3aを取り付けている。
【0034】
膨張部4は、図7に示す形状に切断されたサブ基布パネル2bを、一対の辺23aと一対の辺24aとを図3で示すように縫製部8で縫着し、一対の辺24bと一対の辺22aとを図3で示すように縫製部8で縫着することによって、膨張展開時に三角柱形状に変形することができる。そして、サブ基布パネル2bの辺22bと辺23bとを図2に示したメイン基布パネル2aの辺21aと21bとにそれぞれ縫着することによって、膨張部4とエアバッグ本体部3とを連通した状態で連結することができる。
【0035】
尚、三角柱形状に構成された膨張部4の構成について説明を行ったが、膨張部4の構成としては、三角柱形状に限定されるものではなく、後述するような膨張部4としての機能を奏することができる形状であれば、四角柱形状、円柱形状等の適宜の形状に構成しておくことができる。
【0036】
図2に示すように、エアバッグ本体部3はメイン基布パネル2aを二つ折りにして周縁部等を縫製部8で縫着した構成になっており、車両の前後方向に前気室30aと後気室30bとを有する構成になっている。また、エアバッグ本体部3が膨張したときの厚さを規制するため、ステッチ7が二つ折りにしたメイン基布パネル2a間に構成されている。
【0037】
各ステッチ7のそれぞれの両端末には、円形のステッチである端末保護サークル7aが設けられている。端末保護サークル7aを設けておくことによって、膨張時のメイン基布パネル2aにおける伸びの確保と皺の発生の防止並びに応力集中に対して十分な強度を得ることができる。
【0038】
尚、必要に応じて、メイン基布パネル2a及びサブ基布パネル2bの表面には、ゴムコーティング、シリコン系樹脂のコーティング等を施して、通気性を低下させ、あるいは不通気状態となるように構成しておくこともできる。また、メイン基布パネル2a及びサブ基布パネル2bの構成材料としては、ナイロン66糸、ナイロン6糸、ポリエステル糸の織布を利用することができる。また、メイン基布パネル2a及びサブ基布パネル2bの構成材料としては、ナイロン66糸やナイロン6糸、ポリエステル糸の織布等に限定されるものではなく、エアバッグの構成材料として使用することのできる他の構成材料を用いることもできる。
【0039】
膨張部4に内蔵したインフレータ10の配置構成としては、図4に示すような配置構成としておくことができる。尚、図4では、インフレータ10及びエアバッグ2の膨張部4を、インフレータ10に設けたスタッドボルト11を介して車体に対して取付可能な取付ブラケット20に取り付ける構成例を示しているが、図1に示したように、スタッドボルト11を介してレールインナーパネル17に取り付ける構成としておくこともできる。
【0040】
図5及び図6に示しているように、折塊に折り畳まれたエアバッグ2は、ロール状に折り畳まれたエアバッグ本体部3に連続して、エアバッグ本体部3の上に中央上部3aから膨張
部4が折り畳まれた形状に構成されている。即ち、図6に示す構成例では、エアバッグ本体部3は、膨張展開したときの下端部から時計回り方向に右巻きに巻回している。そして、膨張部4はエアバッグ本体部3を上側から包み込んで覆い被せるように、膨張部4の先端部4aからエアバッグ本体部3の上にジグザグ状に折り畳まれた形状に構成されている。
【0041】
このように折塊に構成したエアバッグ2は、図2、図4に示すように膨張部4内に配設したインフレータ10のスタッドボルト11を膨張部4に形成したスタットボルト取付孔5から外部に突出させて、図4に示すように取付ブラケット20を介してレールインナーパネル17に取り付けた構成にしたり、図1に示すように直接レールインナーパネル17に取り付けた構成にすることができる。
【0042】
インフレータ10は、膨張部4内に内蔵した構成例について説明を行ったが、図8に示すように、膨張部4のガス導入部4bに接続用パイプ6を介してインフレータ10を接続する構成にしておくこともできる。このように、インフレータ10をエアバッグ2の外部に配設しておくことにより、折塊に折り畳んだエアバッグ2をコンパクトに構成することができる。また、インフレータ10を適宜の設置場所に配設することが可能となり、インフレータ10の大きさも適宜の大きさのものを使用することができる。
【0043】
このようにして、折塊に構成したエアバッグ2は図1に示すように、ヘッドライニング13とレールインナーパネル17との間に形成された空間部に配設されることになる。ヘッドライニング13の下端縁とセンターピラーガーニッシュ16及び図示せぬフロントピラーがーニッシュ及びリアピラーガーニッシュの各上端縁とは、係脱自在に係合している。
【0044】
ヘッドライニング13に対して、エアバッグ2が膨張展開を開始して前記各上端縁との係合状態を解除する方向に所定の押圧力が作用したときには、膨張部4の膨張展開によってヘッドライニング13とセンターピラーガーニッシュ16との係合状態が最初に外れることになる。そして、ヘッドライニング13は、前記押圧力によって図1の反時計回り方向に回動することになり、ヘッドライニング13とセンターピラーガーニッシュ16との間に形成される開口部から、エアバッグ2の膨張部4は、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16a以上の厚みを有しているので、膨張部4が上縁部16aを超えた状態でエアバッグ本体部3を車内側に膨張展開することができる。即ち、エアバッグ2の膨張部4の寸法としては、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aと一致する寸法、または、上縁部16aを超えることができる寸法である。
【0045】
好ましくは、エアバッグ2の膨張部4は、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aを超える厚みとして構成する。これにより、膨張展開した膨張部4によってセンターピラーガーニッシュ16の上縁部16aを確実に超えることができ、エアバッグ本体部3は車内側で膨張展開することができる。
【0046】
そして、車内側に膨張展開した膨張部4は、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aとの干渉を避けて、或いは、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aとの干渉を最小限に抑え、車内側まで膨張展開することができる。このとき、エアバッグ本体部3もヘッドライニング13とセンターピラーガーニッシュ16との間に形成される開口部から車内側に押し出され、ヘッドライニング13の下端縁とセンターピラーガーニッシュ16の上縁部16aとの開口部を更に広げ、ヘッドライニング13の下端縁と図示せぬフロントピラーガーニッシュの上縁部及びリアピラーガーニッシュの上縁部との係合状態を解除していくことになる。
【0047】
ヘッドライニング13がセンターピラーガーニッシュ16及び図示せぬフロントピラーガーニッシュ及びリアピラーガーニッシュとの係合領域から外れると、エアバッグ本体部3は
、膨張部4の先端部4aからカーテン状にぶら下った状態になり、エアバッグ本体部3は膨張部4を通してインフレータ10から供給されるガスによって、車両の前後方向に膨張展開すると共に、窓に沿って下方に膨張展開することができる。
【0048】
即ち、車両に対する側面衝突事故やロールオーバ等の事故の発生が検知されると、あるいはこれらの事故の発生が予測されると、インフレータ10が作動してガスが噴射される。インフレータ10から噴射されたガスは、膨張部4を最初に膨張展開させ、エアバッグ本体部3をセンターピラーガーニッシュ16の上縁部16aに干渉しない車内側の位置まで移動させることができる。
【0049】
そして、エアバッグ本体部3は、センターピラーガーニッシュ16の上縁部16aに干渉することなく膨張部4の先端部4aから窓に沿って下方にカーテン状に展開するとともに、車両の前後方向に向かって膨張展開することができる。そして、膨張展開したエアバッグ2によって、車両の窓部におけるサイドウィンドガラスを覆うことができ、側面衝突事故やロールオーバ等の事故に対して乗員の頭部を保護することができる。
【0050】
また、以上の説明は、前気室30aと後気室30bとの2列の座席を備えた車両に適用するカーテンエアバッグの実施例に基づいて行ったが、例えば、所謂ミニバン車における第1列(最前列)、第2列(中間列)、及び第3列(最後列)の3列席に対応するカーテンエアバッグに対しても、本願発明を好適に適用することができる。即ち、第2列と第3列との側部に展開する2つの気室を有するカーテンエアバッグに対しても、本願発明を好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明の技術思想を他のエアバッグの構成においても適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・カーテンエアバッグ装置、2・・・エアバッグ、3・・・エアバッグ本体部、3a・・・中央上部、4・・・膨張部、4a・・・先端部、6・・・接続用パイプ、10・・・インフレータ、13・・・ヘッドライニング、15・・・センターピラー、16・・・センターピラーガーニッシュ、16a・・・上縁部、17・・・レールインナーパネル、18・・・ルーフサイドレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンエアバッグが、センターピラーガーニッシュの上縁部よりも上方であって、車両の前後方向においてセンターピラーと重なる部位に配設され、膨張展開時に車両の左右方向に対して前記センターピラーガーニッシュの上縁部以上の厚みを有する膨張部と、
前記膨張部の車内側における先端部で、前記膨張部に連通するとともに前記先端部に取り付けられ、車両の前後方向に延びる長さ寸法を有し、車両の側方窓を覆うエアバッグ本体部と、を備え、
前記膨張部の基部が車体に取り付けられてなり、前記膨張部にインフレータで発生した膨張ガスが導入されてなることを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記インフレータが、接続用パイプを介して前記膨張部に接続してなることを特徴とする請求項1記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記インフレータが、前記膨張部内に配設されてなることを特徴とする請求項1記載のカーテンエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−71719(P2012−71719A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218663(P2010−218663)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】