説明

カーテンエアバッグ

【課題】容量を増大させることなく車外放出防止性能を向上させたカーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるカーテンエアバッグ100は、車両室内の側面部上方に収納されて側面部に沿って膨張展開する。カーテンエアバッグ100は、当該カーテンエアバッグ100を複数のチャンバ138a〜138gに区画する非膨張領域であるシーム部140a〜140fと、複数のチャンバの1つであって、当該カーテンエアバッグ100から略U字状に裁断され車内側に折り返されている折り返し部142を有する折り返しチャンバ138dと、折り返しチャンバ138dの折り返し部142を折り返された状態で当該カーテンエアバッグ100自体に固定する固定部150と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には高い安全性が求められている。この傾向は世界各国に共通していて、現在では車両の安全装置としてカーテンエアバッグが世界各国でほぼ標準装備されている。そして、車両開発に関係する事業者ではさらなる安全性向上が重要な開発テーマとして掲げられていて、これに伴って日々新たなカーテンエアバッグが開発されている。
【0003】
車両の安全性の評価基準は各国において異なっていて、各事業者は製造品が多国の評価基準に対応し得るよう開発を行っている。例えば世界最大の自動車保有台数をほこる米国では、NHTSA(米国高速道路交通安全局)によってFMVSS(米国連邦自動車安全基準)が制定されている。そして現在、NHTSAが今後定める予定のFMVSSの規則策定の通知(NPRM)には「側突時・ロールオーバ(横転)時において、放出緩和システムによりサイドウィンドウを通した乗員の車外放出の見込みを減少させる」という要件が提案されている(FMVSS226)。この要件は、放出緩和システムを成す車外放出軽減対策装置としてカーテンエアバッグを備えることで達成可能である。
【0004】
カーテンエアバッグは、ドア上方に設置されていて、衝撃発生時に車両のサイドウィンドウに沿って膨張展開するカーテンエアバッグである。カーテンエアバッグの膨張領域は、ガスの流れやすさ等を考慮して複数の小部屋(チャンバ)に区画されている。例えば、特許文献1には、端部側膨張部(端部チャンバ)が他のチャンバよりも車内側に膨張展開する頭部保護カーテンエアバッグ装置(カーテンエアバッグ)が開示されている。特許文献1では、車両前後方向の中央側の膨張領域から、端部チャンバの車外側を通ってフロントピラーへテンションクロスが差し渡されている。テンションクロスは、カーテンエアバッグの膨張展開時に緊張し、端部チャンバを車内側に押し出すように移動させる。特許文献1によれば、車内側へ移動した端部チャンバによって、衝撃によって乗員が車両斜め前方へ移動した場合にも的確な保護が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−6895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、カーテンエアバッグに対して、乗員の車外放出防止性能のさらなる向上が要請されている。FMVSSの対応として、カーテンエアバッグのストローク、すなわちサイドウィンドウから車内側へ膨張する幅を増大させることが有効と考えられている。ストロークが大きいほど、カーテンエアバッグはサイドウィンドウから車内側に離れた作用点で乗員を拘束する。これにより、カーテンエアバッグの車外への突出量を抑制し、車外放出防止性能を向上させることが可能である。
【0007】
特許文献1に記載のカーテンエアバッグは、乗員の頭部が車両前後方向に移動してくることを想定し、端部チャンバのみを乗員の頭部に接近させて、乗員頭部を早期に保護するものである。しかし乗員の車外放出を防止する効果を発揮するのは、とりわけ乗員の側方のチャンバである。特許文献1では乗員の側方のチャンバのストロークが増大していないため、サイドウィンドウから車内側に離れた作用点で乗員を拘束しているとは言えず、車外放出性能が特に向上しているとは言いがたい。
【0008】
チャンバのストロークを増大させるには、チャンバの容量を大きくすることも考えられる。しかしカーテンエアバッグ全体の容量が増大するため、インフレータが大型化することは避けられない。またチャンバの大型化にも限界がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、容量を増大させることなく車外放出防止性能を向上させたカーテンエアバッグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両室内の側面部上方に収納されて側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグにおいて、当該カーテンエアバッグを複数のチャンバに区画する非膨張領域と、複数のチャンバの1つであって、車内側に折り返されている折り返し部を有する折り返しチャンバと、折り返しチャンバの折り返し部を折り返された状態で当該カーテンエアバッグ自体に固定する固定部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、折り返し部を設けたことによって、折り返しチャンバは車内側に二重に膨張し、そのストロークは通常のチャンバのストロークより、チャンバ幅1つ分、増大する。ストロークの長い折り返しチャンバによってサイドウィンドウから車内側に離れた作用点で乗員を拘束可能であり、乗員の車外放出防止性能を向上させることが可能である。しかも折り返しチャンバの折り返し部は、本来、通常のチャンバの一部として膨張する部分を折り返したものである。したがって、カーテンエアバッグの容量が増大することもない。
【0012】
当該カーテンエアバッグは、折り返しチャンバと、折り返しチャンバの折り返し部が折り返されたことによって空洞化した空洞部とを跨ぐように当該カーテンエアバッグの車内側に差し渡される帯状のテンションクロスをさらに備え、テンションクロスは、当該カーテンエアバッグの折り返しチャンバ以外の部位に両端が連結されていて、当該カーテンエアバッグが膨張すると折り返しチャンバによって車内側に押されて緊張する長さを有するとよい。
【0013】
上記の構成によれば、テンションクロスのうち、折り返しチャンバを跨ぐ部分は、カーテンエアバッグが膨張すると、二重に膨張する折り返しチャンバによって、その大きなストローク分車内側に押される。この折り返しチャンバを跨ぐ部分に引っ張られて、空洞部を跨ぐ部分も、車内側に移動した位置で緊張する。これによって空洞部でもストロークを確保できる。空洞部がBピラーに重なっているような場合は、乗員が空洞部から車外放出される心配はないが、空洞部がサイドウィンドウに面して形成されているときは、車外放出の危険がある。これを、ストロークが与えられたテンションクロスによって防止可能である。
【0014】
上記の折り返しチャンバは、側面部のサイドウィンドウより車内側に突出するピラーと重なっていてよい。ピラーの位置から乗員が車外放出されることはないが、折り返しチャンバがピラーと重なることにより、折り返しチャンバのストロークは最大になる。上記のテンションクロスが設けられている場合、テンションクロスは、ストロークが最大になっている折り返しチャンバに引っ張られて、ストロークを増す。このときのテンションクロスのストローク増大量は、ピラーと重ならない折り返しチャンバに起因するストローク増大量より、当然に大きくなる。したがって、テンションクロスによる乗員の車外放出防止性能がより向上する。
【0015】
上記の折り返しチャンバの折り返し部は、車両前後いずれかの方向に折り返されていてよく、車両上下いずれかの方向に折り返されていてもよい。かかる構成によれば、折り返しチャンバをカーテンエアバッグ内の様々な場所に設置可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容量を増大させることなく車外放出防止性能を向上させたカーテンエアバッグを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。
【図2】図1(b)のカーテンエアバッグの拡大図である。
【図3】本発明の各実施形態におけるカーテンエアバッグの概略断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。
【図5】図4のカーテンエアバッグの拡大図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。
【図7】図6のカーテンエアバッグの拡大図である。
【図8】本発明の各実施形態の比較対象となる比較例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。図1(a)は第1実施形態にかかるカーテンエアバッグ100の非展開時、図1(b)はカーテンエアバッグ100の展開時をそれぞれ例示する。以下すべての実施形態を、図1のように車両102の右側面用のカーテンエアバッグとして説明するが、左側面用のカーテンエアバッグも同様の対称な構造を有する。
【0020】
図1(a)に例示するように、カーテンエアバッグ100はガス発生装置であるインフレータ104を備えている。カーテンエアバッグ100は、インフレータ104から供給されるガスの圧力により膨張して乗員を拘束する。特に当該カーテンエアバッグ100は、インフレータ104に必要な出力を抑えながら、車外放出防止性能を向上させることが可能となっている。
【0021】
カーテンエアバッグ100は、図1(a)のように巻回された状態で、または折り畳まれた状態(図示省略)で、車両室内の側面部上方のルーフサイドレール106(図中、仮想線で例示する。)に取り付けられて収納される。通常、ルーフサイドレールはルーフトリムで覆われ、車両室内からは視認不能である。カーテンエアバッグ100は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成される。
【0022】
本実施形態ではカーテンエアバッグ100が実施される車両として、2列シート(車両前方から前部座席108、後部座席110)を有する車両102を例示している。車両102の側面部には、複数のサイドウィンドウ(車両前方からサイドウィンドウ114、116)が設置されている。各サイドウィンドウの車両前後方向にはルーフ(天井)を支えるピラー(柱)が設けられている。これらは車両102の前方から、Aピラー120、Bピラー122、Cピラー124と呼ばれる。
【0023】
車両102に側面衝突時やロールオーバ(横転)等が発生すると、まず車両102に備えられたセンサ(図示省略)による衝撃の感知に起因して、インフレータ104へ発火信号が発信される。すると、インフレータ104の火薬が燃焼し、発生したガスがカーテンエアバッグ100へ供給される。カーテンエアバッグ100は、インフレータ104からのガスを受給すると、図1(b)に例示するように、車室の側面部(サイドウィンドウ114等)に沿うように下方へ膨張展開し、乗員の保護を行う。
【0024】
図2は、図1(b)のカーテンエアバッグの拡大図である。図2(a)はカーテンエアバッグ100を車内側から見た状態で例示していて、図2(b)はカーテンエアバッグ100を車外側から見た状態で例示している。図2(c)は図2(a)のB−B断面図である。
【0025】
図2(a)に例示するように、カーテンエアバッグ100の上縁にはタブ130が設けられている。タブ130はカーテンエアバッグ100を車両102に取り付ける際に用いる帯状の部材である。タブ130には、車両102への締結用のボルトを通すボルト穴132が設けられている。
【0026】
カーテンエアバッグ100は、インフレータ104からのガスが流入して膨張する膨張領域134を有する。膨張領域134は、非膨張領域であるシーム部140a〜140fによって、ガスの流通経路となるダクト部136と、乗員との接触が想定される複数のチャンバ138a〜138gとに区画されている。ダクト部136は、カーテンエアバッグ100の上縁側で車両前後方向に延びている。チャンバ138a〜138gは、車両102の側面部および座席の構成から想定される乗員との接触位置に配置されている。シーム部140a〜140fは、略上下方向に長手の膨張しない領域であり、例えばカーテンエアバッグ100の表裏の基布を接合する等により形成されている。
【0027】
(折り返しチャンバ)
チャンバ138a〜138gのうちチャンバ138dは、カーテンエアバッグ100から略U字状に裁断され車内側に折り返されている折り返し部142を有する。以下このチャンバ138dを折り返しチャンバ138dと呼ぶ。図2(a)の本実施形態の折り返し部142は、図2(b)に例示する上方に凸の略U字状のスリット144によってカーテンエアバッグ100から略U字状に裁断され、さらに折り返し位置146において車内側の下方へ折り返されているものである。折り返し部142は裁断されたときに袋状に縫われるため、スリット144周辺のチャンバと直接にはつながらなくなる。ただし折り返し位置146では連続した内部空間をガスが流通するため、折り返し部142は依然として、スリット144周辺のチャンバとも、直接ではないものの内部空間がつながっている。本発明のすべての実施形態において、折り返し部の構成は上記と同様である。この折り返しを図2(c)に矢印147で例示する。かかる折り返し部142を形成した結果、空洞化した空洞部148が生じる。
【0028】
図2(c)に例示するように、カーテンエアバッグ100は固定部150を備える。固定部150は、折り返しチャンバ138dの折り返し部142を折り返された状態でカーテンエアバッグ100自体に固定する。固定部150により、カーテンエアバッグ100が膨張しても折り返し部142は元に戻らないように固定されている。固定部150は、本実施形態では、折り返しチャンバ138dのうち折り返されていない残りの部分に折り返し部142を縫製にて固定している。ただしカーテンエアバッグ100のどこに折り返し部142を固定してもよい。
【0029】
このように折り返しチャンバ138dは、折り返し部142が折り返された状態で膨張するので、図2(c)のように、車内側に二重に膨張することとなる。カーテンエアバッグ100を車両側面部上方に収納するときは、折り返し部142が折り返された状態のカーテンエアバッグ100を、折り畳みまたは巻回して、図1(a)のように収納する。
【0030】
(テンションクロス)
図2(a)(b)に例示するように、カーテンエアバッグ100はさらに、テンションクロス152を備えている。テンションクロス152は、折り返しチャンバ138dと空洞部148とを跨ぐように、カーテンエアバッグ100の車内側に差し渡される帯状の布である。テンションクロス152の両端は、本実施形態では非膨張領域であるシーム部140b、140eに連結されている。したがって、テンションクロス152は、通常のチャンバ138c、138eをも跨いでいる。ただしテンションクロス152の両端は、折り返しチャンバ138d以外の部位であれば、カーテンエアバッグ100のどこに連結されていてもよく、通常のチャンバをいくつ跨いで差し渡されていてもよい。
【0031】
図3は本発明の各実施形態におけるカーテンエアバッグの概略断面図である。図3(a)は図2(a)のA−A断面図である。テンションクロス152は図3(a)に例示するように、カーテンエアバッグ100が膨張すると折り返しチャンバ138dによって車内側に押されて緊張する(テンションを有する)長さを有する。
【0032】
上記の構成によれば、折り返し部142を設けたことによって、図3(a)に例示するように、折り返しチャンバ138dは車内側に二重に膨張する。そのストロークS1は通常のチャンバより、チャンバ幅1つ分、増大する。このように長いストロークS1を有する折り返しチャンバ138dによってサイドウィンドウ114、116から車内側に離れた作用点で乗員を拘束可能であり、乗員の車外放出防止性能を向上させることが可能である。しかも折り返しチャンバ138dの折り返し部142は、本来、通常のチャンバの一部として膨張する部分を折り返したものである。したがって、カーテンエアバッグ100の容量が増大することもない。
【0033】
また図3(a)に例示するように、テンションクロス152のうち折り返しチャンバ138dを跨ぐ部分に引っ張られて、空洞部148を跨ぐ部分も、車内側に移動した位置で緊張する。これによって空洞部148でもある程度大きなストロークを確保できる。
【0034】
本実施形態では、空洞部148のうち、Bピラー122に重なっている部分から乗員が車外放出されることはないが、空洞部148のうちサイドウィンドウ114、116に面して形成されている部分からは、車外放出の危険がある。これを、ストロークが与えられたテンションクロス152によって防止可能である。
【0035】
本実施形態では、折り返し部142が下方へ折り返されているが、車両上方に折り返されている構成としてもよい。これにより、折り返しチャンバをカーテンエアバッグ内の様々な場所に設置可能である。
【0036】
本文の各実施形態では、帯状の、ある程度の幅を有する布をテンションクロス152として用いているが、テンションクロスはシートベルト程度に細いストラップ状としてもよい。かかるストラップ状のテンションクロスを複数差し渡すことで、乗員の車外放出を防止可能である。
【0037】
(比較例)
図8は本発明の各実施形態の比較対象となる比較例を例示する図である。図3(d)は図8のG−G断面図である。比較例のカーテンエアバッグ10は、通常のチャンバのみを含むカーテンエアバッグである。したがってそのストロークS5は、本実施形態にかかるカーテンエアバッグ100ストロークS1より小さく、車外放出防止性能が劣ることが否めない。
【0038】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。図4ではカーテンエアバッグ200の展開時を例示している。以下第2実施形態について、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0039】
図5は図4のカーテンエアバッグの拡大図である。図5(a)(b)はそれぞれ、カーテンエアバッグ200を車内側および車外側から見た状態で例示している。図5(c)は図5(a)のD−D断面図である。
【0040】
カーテンエアバッグ200は、そのチャンバ238a〜238gのうち、チャンバ238dを、折り返し部242を有する折り返しチャンバ238dとしている。図5(a)の本実施形態の折り返し部242は、図5(b)に例示する前方に凸の略U字状のスリット244によってカーテンエアバッグ200から略U字状に裁断され、さらに折り返し位置246において車内側の後方へ折り返されている。かかる折り返し部242を形成した結果、空洞化した空洞部248が生じる。折り返し部242も、第1実施形態と同様に、固定部250(図3(b))によって、折り返しチャンバ238dのうち折り返されていない残りの部分に縫製にて固定されている。
【0041】
このように折り返しチャンバ238dも、第1実施形態とは折り返し方向が異なるものの、折り返し部242が折り返された状態で膨張するので、図5(c)のように、車内側に二重に膨張することとなる。
【0042】
図5(a)(b)に例示するように、カーテンエアバッグ200はさらに、テンションクロス252を備えている。テンションクロス252は、折り返しチャンバ238dと空洞部248とを跨ぐように、カーテンエアバッグ200の車内側に差し渡されている。テンションクロス252の両端は、本実施形態では非膨張領域であるシーム部140c、140eに連結されている。したがって、テンションクロス252は、通常のチャンバ238eをも跨いでいる。
【0043】
図3(b)は図5(a)のC−C断面図である。テンションクロス252は図3(b)に例示するように、カーテンエアバッグ200が膨張すると折り返しチャンバ238dによって車内側に押されて緊張する。
【0044】
上記の構成によれば、図3(b)に例示するように、折り返しチャンバ238dは車内側に二重に膨張し、ストロークS2が得られる。このように長いストロークS2が得られるため、本実施形態においても、カーテンエアバッグ200の容量を増大させることなく、乗員の車外放出防止性能を向上させることが可能である。
【0045】
また図3(b)に例示したように、テンションクロス252のうち折り返しチャンバ238dを跨ぐ部分に引っ張られて、空洞部248を跨ぐ部分も、車内側に移動した位置で緊張する。これによって空洞部248でもある程度大きなストロークS3(テンションクロス252の場所によって差はある)を確保できる。
【0046】
本実施形態においても、空洞部248からの車外放出を、ストロークS3が与えられたテンションクロス252によって防止可能である。
【0047】
本実施形態では、折り返し部242が後方へ折り返されているが、車両前方に折り返されている構成としてもよい。これにより、折り返しチャンバをカーテンエアバッグ内の様々な場所に設置可能である。
【0048】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。図6ではカーテンエアバッグ300の展開時を例示している。以下第3実施形態について、第1および第2実施形態と異なる点のみ説明する。
【0049】
図7は図6のカーテンエアバッグの拡大図である。図7(a)(b)はそれぞれ、カーテンエアバッグ300を車内側および車外側から見た状態で例示している。図7(c)は図7(a)のD−D断面図である。
【0050】
カーテンエアバッグ300は、そのチャンバ338a〜338gのうち、2つのチャンバ338b、338dを、それぞれ折り返し部340、342を有する折り返しチャンバ338b、338dとしている。本実施形態の2つの折り返しチャンバのうち、一方の折り返しチャンバ338dの折り返し部342は、図5(a)に例示した折り返し部242と同様の構造を有する。すなわち、前方に凸の略U字状のスリット344によってカーテンエアバッグ300から略U字状に裁断され、さらに折り返し位置346において車内側の後方へ折り返されている。かかる折り返し部342を形成した結果、空洞化した空洞部348が生じている。折り返し部342も、第2実施形態と同様に、固定部350(図3(c))によって、折り返しチャンバ338dのうち折り返されていない残りの部分に縫製にて固定されている。
【0051】
本実施形態の2つの折り返しチャンバのうち、他方の折り返しチャンバ338bの折り返し部340は、図7(a)(b)に例示するように、後方に凸の略U字状のスリット364によってカーテンエアバッグ300から略U字状に裁断され、さらに折り返し位置366において車内側の後方へ折り返されている。かかる折り返し部340を形成した結果、空洞化した空洞部368が生じている。折り返し部340も、折り返し部342と同様に、固定部360(図3(c))によって、折り返しチャンバ338bのうち折り返されていない残りの部分に縫製にて固定されている。
【0052】
このように本実施形態にかかるカーテンエアバッグ300は2つの折り返しチャンバ338b、338dを備えている。これらはそれぞれ前方向、後方向という異なる方向に折り返されたものであるが、それぞれの折り返し部340、342が折り返された状態で膨張するので、図7(c)のように、車内側に二重に膨張することとなる。なお図7(c)は折り返しチャンバ338bのみを例示していて、図2の折り返しチャンバ238dと同様の構成の折り返しチャンバ338dは図示を省略している。
【0053】
図7(a)(b)に例示するように、カーテンエアバッグ300はさらに、テンションクロス352を備えている。テンションクロス352は、折り返しチャンバ338b、338dと空洞部348、368とを一括して跨ぐように、カーテンエアバッグ300の車内側に差し渡されている。テンションクロス352の両端は、本実施形態では非膨張領域であるシーム部140a、140dに連結されている。したがって、テンションクロス352は、通常のチャンバ338cをも跨いでいる。
【0054】
図3(c)は図7(a)のE−E断面図である。テンションクロス352は図3(c)に例示するように、カーテンエアバッグ300が膨張すると2つの折り返しチャンバ338b、338dによって車内側に押され、車両前後方向に略平行な状態で緊張する。
【0055】
上記の構成によれば、図3(c)に例示するように、折り返しチャンバ338b、338dは車内側に二重に膨張し、ストロークS4が得られる。このように長いストロークS4が得られるため、本実施形態においても、カーテンエアバッグ300の容量を増大させることなく、乗員の車外放出防止性能を向上させることが可能である。
【0056】
またテンションクロス352は、空洞部348、368を跨ぐ部分においても、上述のように車内側に移動した位置で車両前後方向に略平行な状態で緊張する。これによって空洞部348、368でも大きなストロークS4を確保できる。
【0057】
本実施形態においても、空洞部348、368からの車外放出を、ストロークS4が与えられたテンションクロス352によって防止可能である。
【0058】
本実施形態にかかるカーテンエアバッグ300は2つの折り返しチャンバ338b、338dを有するが、折り返しチャンバの数に制限はない。またカーテンエアバッグ300は単一のテンションクロス352を備え、これがすべての折り返し部340、342およびすべての空洞部348、368を跨いでいる。しかしテンションクロスの数にも制限はなく、折り返しチャンバごとに1つずつ備えてもよい。
【0059】
(折り返しチャンバの位置)
本発明の第1〜第3実施形態の折り返しチャンバ138d、238d、338dがそうであるように、折り返しチャンバはBピラー122と重なっていてよい。Bピラー122はサイドウィンドウ114、116より車内側に突出している。Bピラー122の位置から乗員が車外放出されることはないが、これら折り返しチャンバ138d、238d、338dがBピラー122と重なっていることにより、ストロークは最大になる。
【0060】
テンションクロス152、252、352は、上記のようにストロークが最大になっている折り返しチャンバ138d、238d、338dに引っ張られて、同様にストロークを増す。このときのテンションクロス152、252、352のストローク増大量は、Bピラー122と重ならない折り返しチャンバ(図示省略)に起因するストローク増大量より、当然に大きくなる。したがって、第1〜第3実施形態のようにBピラー122と重なる折り返しチャンバ138d、238d、338dが存在するほうが、テンションクロス152、252、352による乗員の車外放出防止性能がより向上する。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0062】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
また、上記実施形態においては本発明にかかるカーテンエアバッグを自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグに利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
100、200、300 …カーテンエアバッグ
102 …車両
104 …インフレータ
106 …ルーフサイドレール
108 …前部座席
110 …後部座席
114、116 …サイドウィンドウ
120 …Aピラー
122 …Bピラー
124 …Cピラー
130 …タブ
132 …ボルト穴
134 …膨張領域
136 …ダクト部
138d、238d、338b、338d …折り返しチャンバ
140a〜140f …シーム部
142、242、340、342 …折り返し部
144、244、344、364 …スリット
148、248、348、368 …空洞部
150、250、350、360 …固定部
152、252、352 …テンションクロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内の側面部上方に収納されて該側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグにおいて、
当該カーテンエアバッグを複数のチャンバに区画する非膨張領域と、
前記複数のチャンバの1つであって、車内側に折り返されている折り返し部を有する折り返しチャンバと、
前記折り返しチャンバの折り返し部を前記折り返された状態で当該カーテンエアバッグ自体に固定する固定部と、
を備えることを特徴とするカーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記折り返しチャンバと、該折り返しチャンバの折り返し部が折り返されたことによって空洞化した空洞部とを跨ぐように当該カーテンエアバッグの車内側に差し渡される帯状のテンションクロスをさらに備え、
前記テンションクロスは、当該カーテンエアバッグの折り返しチャンバ以外の部位に両端が連結されていて、当該カーテンエアバッグが膨張すると前記折り返しチャンバによって車内側に押されて緊張する長さを有することを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記折り返しチャンバは、前記側面部のサイドウィンドウより車内側に突出するピラーと重なっていることを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項4】
前記折り返しチャンバの折り返し部は、車両前後いずれかの方向に折り返されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項5】
前記折り返しチャンバの折り返し部は、車両上下いずれかの方向に折り返されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96628(P2012−96628A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244830(P2010−244830)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
【Fターム(参考)】