カーテンエアバッグ
【課題】
簡易な構造でありながら、展開時に、簡易な構造でありながら、膨張展開時はもちろん、膨張展開完了後にエアバッグ本体がしぼんだ場合であっても、車外方向の力に対する十分な反力を保持することができる、カーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【解決手段】
エアバッグ本体と車体がベルトによって連結される構造を有するカーテンエアバッグであって、エアバッグ本体の下縁部には、該ベルトを一定方向に送り出すための送り出し部材が設けられており、該ベルトが、エアバッグ本体の下縁部に設けられた送り出し部材を通って車体に接続されており、エアバッグの膨張展開に伴って送り出し部材−車体間のベルト長さが不可逆的に短くなることを特徴とする、カーテンエアバッグである。
簡易な構造でありながら、展開時に、簡易な構造でありながら、膨張展開時はもちろん、膨張展開完了後にエアバッグ本体がしぼんだ場合であっても、車外方向の力に対する十分な反力を保持することができる、カーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【解決手段】
エアバッグ本体と車体がベルトによって連結される構造を有するカーテンエアバッグであって、エアバッグ本体の下縁部には、該ベルトを一定方向に送り出すための送り出し部材が設けられており、該ベルトが、エアバッグ本体の下縁部に設けられた送り出し部材を通って車体に接続されており、エアバッグの膨張展開に伴って送り出し部材−車体間のベルト長さが不可逆的に短くなることを特徴とする、カーテンエアバッグである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグに関し、詳しくは、車両に搭載され、側面衝突の衝撃から乗員を保護するカーテンエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突したときの衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、エアバッグ装置が普及している。その種類については、従来の運転席や助手席用のエアバッグ装置に加えて、側面衝突の衝撃から乗員を保護するために、例えば、車内側壁と乗員との間に展開するカーテン状の側面衝突用エアバッグ装置も車両に搭載されるようになっている。
【0003】
側面衝突用エアバッグ(これを以下、カーテンエアバッグという)の課題として、車両横転時に乗員が車外に飛び出すのを抑制することがあげられる。カーテンエアバッグによって横転時の乗員の車外への飛び出しを抑制するには、カーテンエアバッグが、膨張展開時に所定の位置に保持され、かつ、車外方向の力に対して十分な反力を保持している必要がある。
【0004】
さらに、近年では、カーテンエアバッグによる乗員の車外飛び出し抑制機能をより向上させるために、膨張展開完了後にエアバッグ内の空気が抜けてエアバッグ本体の内圧が下がった状態(しぼんだ状態)であっても、カーテンエアバッグが、位置安定性および車外方向の力に対する反力を保持していることが求められている。
【0005】
上記課題を解決するために、例えば、特許文献1には、テンションベルトの一端をエアバッグの前方上部における非膨張部に縫合によって固着し、中間部をエアバッグの前方下部における非膨張部に設けた通孔(スリット)に移動可能に挿通させ、他端をフロントピラーの下部にボルト等の固定具を用いて固着されてなるカーテン状のエアバッグが開示されている。特許文献1に記載のエアバッグがカーテン状に膨張展開すると、テンションベルトに張力がかかることにより、エアバッグの前方下部に張力が発生して、乗員拘束時に各膨張部の車外側への移動が抑制される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のエアバッグは、テンションベルトがスリットに挿通された構造であるため、膨張展開後もテンションベルトがスリットを介して移動可能な状態となっている。そのため、膨張展開したエアバッグを安定した位置で固定する点では不十分であった。また、膨張展開時に前方下部に張力を発生させるには、スリット位置を、フロントピラーの下部に固着したテンションベルト他端の位置より高い位置に設定する必要がある。また、このときの張力は、スリット位置とテンションベルト他端位置を結んだ略斜め方向に発生する。そのため、前方下部には十分な張力が発生するが、エアバッグ下縁部の中央付近にかかる張力は前方下部よりも小さくなり、エアバッグ下縁部全体に十分な張力をかけることは困難であった。さらに、特許文献1に記載の構造では、エアバッグ本体がしぼんでしまうと、エアバッグに張力をかけることができなくなるため、車外方向の力に対する十分な反力を、エアバッグ本体がしぼんだ後まで、エアバッグに保持させることはできなかった。
【0007】
特許文献2には、膨張時に下方へ展開するカーテンエアバッグの下縁部が、ガイド部材により長尺状部材と接続されており、エアバッグの展開時に、互いに離間して車体に接続された2つの偏向部材が長尺状部材を案内することによって、ガイド部材を下方へと移動させて、エアバッグ下縁部に十分な張力がかかるようコントロールしつつ展開させるカーテンエアバッグが開示されている。これによれば、エアバッグ下縁部に十分な張力がかかるため、横転時の乗員の車外への飛び出しを抑制することができる。また、長尺状部材が展開時に動いた方向とは反対の方向に動かないようにする戻り止めを設定することもでき、これにより、下方へ展開したエアバッグ下縁部が、上方へと戻るのを防止することもできる。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のエアバッグは、車体に偏向部材を取り付ける作業が必要となるなど、取り付け作業が複雑化するという問題がある。また、エアバッグの展開動作をコントロールするために大掛かりな装置が必要となることから、コストおよび軽量化の点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3506066号公報
【特許文献2】特許第4340487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありながら、膨張展開時はもちろん、膨張展開完了後にエアバッグ本体がしぼんだ場合であっても、車外方向の力に対する十分な反力を保持することができる、カーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エアバッグ本体と車体がベルトによって連結される構造を有するカーテンエアバッグであって、エアバッグ本体の下縁部には、該ベルトを一定方向に送り出すための送り出し部材が設けられており、該ベルトが、エアバッグ本体の下縁部に設けられた送り出し部材を通って車体に接続されており、エアバッグの膨張展開に伴って送り出し部材−車体間のベルト長さが不可逆的に短くなることを特徴とする、カーテンエアバッグである。なお、本発明のカーテンエアバッグとは、側面衝突の衝撃から乗員を保護するために車内側壁と乗員との間に展開するカーテン状のエアバッグをいう。
膨張展開完了時、送り出し部材と車体接続部が略水平の位置関係となることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカーテンエアバッグによれば、簡易な構造でありながら、膨張展開時はもちろん、膨張展開完了後にエアバッグ本体がしぼんだ場合であっても、車外方向の力に対する十分な反力を保持することができ、横転時に乗員が車外に飛び出すのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図2】図1の一部を拡大した概略模式図
【図3】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、収納時の概略模式図
【図4】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開時の動作を表した概略模式図、およびその概略断面図(A−A断面)
【図5】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開時の送り出し部材およびベルトの動作を表した概略模式図
【図6】送り出し部材およびベルトの形態例を示す概略模式図
【図7】送り出し部材およびベルトの別の形態例を示す概略模式図
【図8】送り出し部材およびベルトのさらに別の形態例を示す概略模式図
【図9】送り出し部材およびベルトのさらに別の形態例を示す概略模式図
【図10】送り出し部材およびベルトのさらに別の形態例を示す概略模式図
【図11】本発明に係る別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図12】図11の一部を拡大した概略模式図
【図13】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図14】図13の一部を拡大した概略模式図
【図15】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図16】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図17】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るカーテンエアバッグについて、図面に沿って詳細に説明する。なお、本文中、「エアバッグ」と表記するものは、本発明に係るカーテンエアバッグを意味する。
【0015】
図1は、本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図である。また、図2は、図1の一部を拡大した概略模式図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本発明に係るカーテンエアバッグは、ベルト3の一端に送り出し部材2が設けられており、さらに、送り出し部材2が、エアバッグ本体1の前方下縁部に取り付けられている。また、ベルト3の中間部分は車体接続部材4に設けられたベルト通し孔5および送り出し部材2に通されており、他端は、固定部材6によってエアバッグ本体とともに車体に固定されている。また、送り出し部材2は、内部に通されたベルト3を一定方向へと不可逆的に送り出すための機構を有している。
【0017】
図3は、前記カーテンエアバッグの収納時の概略模式図である。膨張展開前のエアバッグは、図3のようにコンパクトに折りたたまれ、車体内部に収納されるかたちで取り付けられている。
【0018】
次に、エアバッグが膨張展開する際の動作について、図4を用いて説明する。
図4の(a)は、収納状態でのエアバッグ前方部の概略模式図と、該模式図のA−A断面の模式図を示したものである。このときの送り出し部材2は、固定部材6に近い位置にある。そして、膨張展開の開始とともに、エアバッグの折りたたみが解除され、図4の(b)のような状態となる。その後、エアバッグ本体が膨張するのに伴い、エアバッグ下縁部に接続された送り出し部材2が下方向に押し下げられ、最終的に図4の(C)のような状態となる。このように、送り出し部材2は、ベルト3を一定方向(上方向)に送り出しながら、下方向へと移動していく(図5)。
【0019】
このような展開動作を行なうことにより、送り出し部材2−車体接続部材4間におけるベルト3の見かけ長さは膨張展開とともに不可逆的に短くなっていき、送り出し部材2によってベルトが逆戻りすることがないため、短くなったベルトがゆるむことがない。したがって、エアバッグ下縁部にかかる張力を保ちながら、エアバッグを速やかに下方向へと展開させることができる。また、膨張展開完了後は、送り出し部材2およびベルト3によってエアバッグ本体1の下縁部が固定されるため、エアバッグの位置を適切に保ちつつ、エアバッグにかかる張力を維持し続けることが可能となる。さらに、エアバッグ内部の空気が抜けたとしても、送り出し部材2およびベルト3によって、エアバッグ本体が車体の窓を内側から覆う状態で固定維持されているため、エアバッグに、依然として車外方向の力に対する十分な反力を保持させることができる。
【0020】
また、送り出し部材2−車体接続部材4間のベルト3を二重にすることで、エアバッグの膨張展開時に、見かけのベルト長さの調整が容易となるほか、ベルト3にかかる応力を分散させることができる。また、エアバッグが収納状態から膨張展開完了状態へと変化する際、ベルト3の車体接続部材4と接触する部位が変化するため、応力が特定部位に集中することによって生じるベルト3の強度低下を緩和することができる。
【0021】
送り出し部材2をエアバッグ本体に取り付ける方法としては、特に限定するものではないが、例えば、縫合、接着、溶着などがあげられる。また、あらかじめエアバッグ本体に送り出し部材2を固定するための取付孔などが設けてあってもよい。
【0022】
送り出し部材2とベルト3は、それぞれを別々の部材として製造し、次いで送り出し部材とベルト3の一端とを接合してもよいし、ベルト3の一端と送り出し部材2があらかじめ一体化したものであってもよい。
【0023】
図6のように送り出し部材2とベルト3の一端が一体化したものは、部材同士を接続する部分がないため、優れた引張強度が得られやすく、また部材数を減らせる点および部材同士の接続作業が不要である点で生産性の向上が見込まれる。
【0024】
送り出し部材2とベルト3を接続する必要がある場合には、接続部分が十分な強度を有していれば、接続手段については特に限定しない。接続手段の例としては、図7に示すような縫合糸8による接続のほかに、接着、溶着などがあげられる。また、図8に示すように、金具9などを用いて接続してもよい。さらに、図9および図10のように、送り出し部材2に設けた取付孔10にベルト3の一端を通すようにして、送り出し部材2とベルト3を接続してもよい。
【0025】
図11は、本発明に係る別の実施形態例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図である。また、図12は、図11の一部を拡大した概略模式図である。
このように、本発明に係るカーテンエアバッグは、ベルト3の一端が送り出し部材2に接合されずに、エアバッグ本体部分に接合されていてもよい。ベルト3をエアバッグ本体部分に接合する手段としては、特に限定するものではなく、縫合、接着、溶着、金具などを用いた接合などから適宜選定すればよい。
【0026】
図13は、本発明に係るさらに別の実施形態例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図である。また、図14は、図13の一部を拡大した概略模式図である。
このように、本発明に係るカーテンエアバッグは、送り出し部材2−車体接続部材4の間のベルトが一重となる構造であってもよい。
【0027】
また、本発明に係るカーテンエアバッグは、図15および図16に示すように、エアバッグ本体1の前方部および後方部のそれぞれに、送り出し部材2およびベルト3が設けられている構造であってもよい。これにより、エアバッグの位置安定性をより向上させることができる。
【0028】
図17は、本発明に係るさらに別の実施形態例であるカーテンエアバッグの、膨張展開時の概略模式図である。エアバッグ本体の構造を図17のようにすると、エアバッグの下縁部が全体にわたって膨張するため、エアバッグ下縁部により張力がかかりやすくなる。
【0029】
送り出し部材2に使用する材質としては、特に限定するものではなく、例えば、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド;ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル;ポリプロピレンや超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどに代表されるフッ素樹脂;セルロース系樹脂、澱粉系樹脂、乳酸系樹脂(ポリ乳酸樹脂)、琥珀酸系樹脂、酪酸系樹脂、グリコール酸系樹脂などに代表される植物由来樹脂などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。
送り出し部材2は、上記材質からなる成型物であることが好ましい。
【0030】
ベルト3に使用する材質としても、特に限定するものではなく、例えば、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド;ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル;ポリプロピレンや超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどに代表されるフッ素樹脂;セルロース系樹脂、澱粉系樹脂、乳酸系樹脂(ポリ乳酸樹脂)、琥珀酸系樹脂、酪酸系樹脂、グリコール酸系樹脂などに代表される植物由来樹脂などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。
ベルト3は、前記材質で構成された布帛(織物、編物など)であってもよく、また、前記材質からなる成型物であってもよい。
【0031】
送り出し部材2とベルト3がいずれも成型物である場合には、成型段階で両者を一体化させることも可能である。これにより、両者があらかじめ一体化した部材を得ることができる。
【0032】
エアバッグ本体1に使用する基布の材質としては、特に限定するものではないが、なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。例えば、ナイロン6、ナイロン66などの単独またはこれらの共重合、混合により得られるポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル繊維;超高分子量ポリオレフィン系繊維;ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維;ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維;ポリアセタール系繊維;ポリサルフォン系繊維;ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS);ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK);全芳香族ポリアミド系繊維;全芳香族ポリエステル系繊維;ポリイミド系繊維;ポリエーテルイミド系繊維;ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO);ビニロン系繊維;アクリル系繊維;セルロース系繊維;炭化珪素系繊維;アルミナ系繊維;ガラス系繊維;カーボン系繊維;スチール系繊維などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。
【0033】
以上、これまで図面を参照して本発明を説明してきたが、本発明の実施形態はこれのみを指すものではなく、要旨を逸脱しない範囲での変更、改良は当然可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 エアバッグ本体
2 送り出し部材
3 ベルト
4 車体接続部材
5 ベルト通し孔
6 固定部材
7 送り出し部材−エアバッグ本体接合部分(縫合糸)
8 縫合糸
9 金具
10 取付孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグに関し、詳しくは、車両に搭載され、側面衝突の衝撃から乗員を保護するカーテンエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突したときの衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、エアバッグ装置が普及している。その種類については、従来の運転席や助手席用のエアバッグ装置に加えて、側面衝突の衝撃から乗員を保護するために、例えば、車内側壁と乗員との間に展開するカーテン状の側面衝突用エアバッグ装置も車両に搭載されるようになっている。
【0003】
側面衝突用エアバッグ(これを以下、カーテンエアバッグという)の課題として、車両横転時に乗員が車外に飛び出すのを抑制することがあげられる。カーテンエアバッグによって横転時の乗員の車外への飛び出しを抑制するには、カーテンエアバッグが、膨張展開時に所定の位置に保持され、かつ、車外方向の力に対して十分な反力を保持している必要がある。
【0004】
さらに、近年では、カーテンエアバッグによる乗員の車外飛び出し抑制機能をより向上させるために、膨張展開完了後にエアバッグ内の空気が抜けてエアバッグ本体の内圧が下がった状態(しぼんだ状態)であっても、カーテンエアバッグが、位置安定性および車外方向の力に対する反力を保持していることが求められている。
【0005】
上記課題を解決するために、例えば、特許文献1には、テンションベルトの一端をエアバッグの前方上部における非膨張部に縫合によって固着し、中間部をエアバッグの前方下部における非膨張部に設けた通孔(スリット)に移動可能に挿通させ、他端をフロントピラーの下部にボルト等の固定具を用いて固着されてなるカーテン状のエアバッグが開示されている。特許文献1に記載のエアバッグがカーテン状に膨張展開すると、テンションベルトに張力がかかることにより、エアバッグの前方下部に張力が発生して、乗員拘束時に各膨張部の車外側への移動が抑制される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のエアバッグは、テンションベルトがスリットに挿通された構造であるため、膨張展開後もテンションベルトがスリットを介して移動可能な状態となっている。そのため、膨張展開したエアバッグを安定した位置で固定する点では不十分であった。また、膨張展開時に前方下部に張力を発生させるには、スリット位置を、フロントピラーの下部に固着したテンションベルト他端の位置より高い位置に設定する必要がある。また、このときの張力は、スリット位置とテンションベルト他端位置を結んだ略斜め方向に発生する。そのため、前方下部には十分な張力が発生するが、エアバッグ下縁部の中央付近にかかる張力は前方下部よりも小さくなり、エアバッグ下縁部全体に十分な張力をかけることは困難であった。さらに、特許文献1に記載の構造では、エアバッグ本体がしぼんでしまうと、エアバッグに張力をかけることができなくなるため、車外方向の力に対する十分な反力を、エアバッグ本体がしぼんだ後まで、エアバッグに保持させることはできなかった。
【0007】
特許文献2には、膨張時に下方へ展開するカーテンエアバッグの下縁部が、ガイド部材により長尺状部材と接続されており、エアバッグの展開時に、互いに離間して車体に接続された2つの偏向部材が長尺状部材を案内することによって、ガイド部材を下方へと移動させて、エアバッグ下縁部に十分な張力がかかるようコントロールしつつ展開させるカーテンエアバッグが開示されている。これによれば、エアバッグ下縁部に十分な張力がかかるため、横転時の乗員の車外への飛び出しを抑制することができる。また、長尺状部材が展開時に動いた方向とは反対の方向に動かないようにする戻り止めを設定することもでき、これにより、下方へ展開したエアバッグ下縁部が、上方へと戻るのを防止することもできる。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のエアバッグは、車体に偏向部材を取り付ける作業が必要となるなど、取り付け作業が複雑化するという問題がある。また、エアバッグの展開動作をコントロールするために大掛かりな装置が必要となることから、コストおよび軽量化の点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3506066号公報
【特許文献2】特許第4340487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありながら、膨張展開時はもちろん、膨張展開完了後にエアバッグ本体がしぼんだ場合であっても、車外方向の力に対する十分な反力を保持することができる、カーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エアバッグ本体と車体がベルトによって連結される構造を有するカーテンエアバッグであって、エアバッグ本体の下縁部には、該ベルトを一定方向に送り出すための送り出し部材が設けられており、該ベルトが、エアバッグ本体の下縁部に設けられた送り出し部材を通って車体に接続されており、エアバッグの膨張展開に伴って送り出し部材−車体間のベルト長さが不可逆的に短くなることを特徴とする、カーテンエアバッグである。なお、本発明のカーテンエアバッグとは、側面衝突の衝撃から乗員を保護するために車内側壁と乗員との間に展開するカーテン状のエアバッグをいう。
膨張展開完了時、送り出し部材と車体接続部が略水平の位置関係となることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカーテンエアバッグによれば、簡易な構造でありながら、膨張展開時はもちろん、膨張展開完了後にエアバッグ本体がしぼんだ場合であっても、車外方向の力に対する十分な反力を保持することができ、横転時に乗員が車外に飛び出すのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図2】図1の一部を拡大した概略模式図
【図3】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、収納時の概略模式図
【図4】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開時の動作を表した概略模式図、およびその概略断面図(A−A断面)
【図5】本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開時の送り出し部材およびベルトの動作を表した概略模式図
【図6】送り出し部材およびベルトの形態例を示す概略模式図
【図7】送り出し部材およびベルトの別の形態例を示す概略模式図
【図8】送り出し部材およびベルトのさらに別の形態例を示す概略模式図
【図9】送り出し部材およびベルトのさらに別の形態例を示す概略模式図
【図10】送り出し部材およびベルトのさらに別の形態例を示す概略模式図
【図11】本発明に係る別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図12】図11の一部を拡大した概略模式図
【図13】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図14】図13の一部を拡大した概略模式図
【図15】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図16】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【図17】本発明に係るさらに別の実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るカーテンエアバッグについて、図面に沿って詳細に説明する。なお、本文中、「エアバッグ」と表記するものは、本発明に係るカーテンエアバッグを意味する。
【0015】
図1は、本発明に係る実施形態の一例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図である。また、図2は、図1の一部を拡大した概略模式図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本発明に係るカーテンエアバッグは、ベルト3の一端に送り出し部材2が設けられており、さらに、送り出し部材2が、エアバッグ本体1の前方下縁部に取り付けられている。また、ベルト3の中間部分は車体接続部材4に設けられたベルト通し孔5および送り出し部材2に通されており、他端は、固定部材6によってエアバッグ本体とともに車体に固定されている。また、送り出し部材2は、内部に通されたベルト3を一定方向へと不可逆的に送り出すための機構を有している。
【0017】
図3は、前記カーテンエアバッグの収納時の概略模式図である。膨張展開前のエアバッグは、図3のようにコンパクトに折りたたまれ、車体内部に収納されるかたちで取り付けられている。
【0018】
次に、エアバッグが膨張展開する際の動作について、図4を用いて説明する。
図4の(a)は、収納状態でのエアバッグ前方部の概略模式図と、該模式図のA−A断面の模式図を示したものである。このときの送り出し部材2は、固定部材6に近い位置にある。そして、膨張展開の開始とともに、エアバッグの折りたたみが解除され、図4の(b)のような状態となる。その後、エアバッグ本体が膨張するのに伴い、エアバッグ下縁部に接続された送り出し部材2が下方向に押し下げられ、最終的に図4の(C)のような状態となる。このように、送り出し部材2は、ベルト3を一定方向(上方向)に送り出しながら、下方向へと移動していく(図5)。
【0019】
このような展開動作を行なうことにより、送り出し部材2−車体接続部材4間におけるベルト3の見かけ長さは膨張展開とともに不可逆的に短くなっていき、送り出し部材2によってベルトが逆戻りすることがないため、短くなったベルトがゆるむことがない。したがって、エアバッグ下縁部にかかる張力を保ちながら、エアバッグを速やかに下方向へと展開させることができる。また、膨張展開完了後は、送り出し部材2およびベルト3によってエアバッグ本体1の下縁部が固定されるため、エアバッグの位置を適切に保ちつつ、エアバッグにかかる張力を維持し続けることが可能となる。さらに、エアバッグ内部の空気が抜けたとしても、送り出し部材2およびベルト3によって、エアバッグ本体が車体の窓を内側から覆う状態で固定維持されているため、エアバッグに、依然として車外方向の力に対する十分な反力を保持させることができる。
【0020】
また、送り出し部材2−車体接続部材4間のベルト3を二重にすることで、エアバッグの膨張展開時に、見かけのベルト長さの調整が容易となるほか、ベルト3にかかる応力を分散させることができる。また、エアバッグが収納状態から膨張展開完了状態へと変化する際、ベルト3の車体接続部材4と接触する部位が変化するため、応力が特定部位に集中することによって生じるベルト3の強度低下を緩和することができる。
【0021】
送り出し部材2をエアバッグ本体に取り付ける方法としては、特に限定するものではないが、例えば、縫合、接着、溶着などがあげられる。また、あらかじめエアバッグ本体に送り出し部材2を固定するための取付孔などが設けてあってもよい。
【0022】
送り出し部材2とベルト3は、それぞれを別々の部材として製造し、次いで送り出し部材とベルト3の一端とを接合してもよいし、ベルト3の一端と送り出し部材2があらかじめ一体化したものであってもよい。
【0023】
図6のように送り出し部材2とベルト3の一端が一体化したものは、部材同士を接続する部分がないため、優れた引張強度が得られやすく、また部材数を減らせる点および部材同士の接続作業が不要である点で生産性の向上が見込まれる。
【0024】
送り出し部材2とベルト3を接続する必要がある場合には、接続部分が十分な強度を有していれば、接続手段については特に限定しない。接続手段の例としては、図7に示すような縫合糸8による接続のほかに、接着、溶着などがあげられる。また、図8に示すように、金具9などを用いて接続してもよい。さらに、図9および図10のように、送り出し部材2に設けた取付孔10にベルト3の一端を通すようにして、送り出し部材2とベルト3を接続してもよい。
【0025】
図11は、本発明に係る別の実施形態例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図である。また、図12は、図11の一部を拡大した概略模式図である。
このように、本発明に係るカーテンエアバッグは、ベルト3の一端が送り出し部材2に接合されずに、エアバッグ本体部分に接合されていてもよい。ベルト3をエアバッグ本体部分に接合する手段としては、特に限定するものではなく、縫合、接着、溶着、金具などを用いた接合などから適宜選定すればよい。
【0026】
図13は、本発明に係るさらに別の実施形態例であるカーテンエアバッグの、膨張展開完了時の概略模式図である。また、図14は、図13の一部を拡大した概略模式図である。
このように、本発明に係るカーテンエアバッグは、送り出し部材2−車体接続部材4の間のベルトが一重となる構造であってもよい。
【0027】
また、本発明に係るカーテンエアバッグは、図15および図16に示すように、エアバッグ本体1の前方部および後方部のそれぞれに、送り出し部材2およびベルト3が設けられている構造であってもよい。これにより、エアバッグの位置安定性をより向上させることができる。
【0028】
図17は、本発明に係るさらに別の実施形態例であるカーテンエアバッグの、膨張展開時の概略模式図である。エアバッグ本体の構造を図17のようにすると、エアバッグの下縁部が全体にわたって膨張するため、エアバッグ下縁部により張力がかかりやすくなる。
【0029】
送り出し部材2に使用する材質としては、特に限定するものではなく、例えば、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド;ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル;ポリプロピレンや超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどに代表されるフッ素樹脂;セルロース系樹脂、澱粉系樹脂、乳酸系樹脂(ポリ乳酸樹脂)、琥珀酸系樹脂、酪酸系樹脂、グリコール酸系樹脂などに代表される植物由来樹脂などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。
送り出し部材2は、上記材質からなる成型物であることが好ましい。
【0030】
ベルト3に使用する材質としても、特に限定するものではなく、例えば、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド;ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル;ポリプロピレンや超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどに代表されるフッ素樹脂;セルロース系樹脂、澱粉系樹脂、乳酸系樹脂(ポリ乳酸樹脂)、琥珀酸系樹脂、酪酸系樹脂、グリコール酸系樹脂などに代表される植物由来樹脂などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。
ベルト3は、前記材質で構成された布帛(織物、編物など)であってもよく、また、前記材質からなる成型物であってもよい。
【0031】
送り出し部材2とベルト3がいずれも成型物である場合には、成型段階で両者を一体化させることも可能である。これにより、両者があらかじめ一体化した部材を得ることができる。
【0032】
エアバッグ本体1に使用する基布の材質としては、特に限定するものではないが、なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。例えば、ナイロン6、ナイロン66などの単独またはこれらの共重合、混合により得られるポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル繊維;超高分子量ポリオレフィン系繊維;ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維;ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維;ポリアセタール系繊維;ポリサルフォン系繊維;ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS);ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK);全芳香族ポリアミド系繊維;全芳香族ポリエステル系繊維;ポリイミド系繊維;ポリエーテルイミド系繊維;ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO);ビニロン系繊維;アクリル系繊維;セルロース系繊維;炭化珪素系繊維;アルミナ系繊維;ガラス系繊維;カーボン系繊維;スチール系繊維などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。
【0033】
以上、これまで図面を参照して本発明を説明してきたが、本発明の実施形態はこれのみを指すものではなく、要旨を逸脱しない範囲での変更、改良は当然可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 エアバッグ本体
2 送り出し部材
3 ベルト
4 車体接続部材
5 ベルト通し孔
6 固定部材
7 送り出し部材−エアバッグ本体接合部分(縫合糸)
8 縫合糸
9 金具
10 取付孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ本体と車体がベルトによって連結される構造を有するカーテンエアバッグであって、エアバッグ本体の下縁部には、該ベルトを一定方向に送り出すための送り出し部材が設けられており、該ベルトが、エアバッグ本体の下縁部に設けられた送り出し部材を通って車体に接続されており、エアバッグの膨張展開に伴って送り出し部材−車体間のベルト長さが不可逆的に短くなることを特徴とする、カーテンエアバッグ。
【請求項2】
膨張展開完了時、送り出し部材と車体接続部が略水平の位置関係となることを特徴とする、請求項1に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項1】
エアバッグ本体と車体がベルトによって連結される構造を有するカーテンエアバッグであって、エアバッグ本体の下縁部には、該ベルトを一定方向に送り出すための送り出し部材が設けられており、該ベルトが、エアバッグ本体の下縁部に設けられた送り出し部材を通って車体に接続されており、エアバッグの膨張展開に伴って送り出し部材−車体間のベルト長さが不可逆的に短くなることを特徴とする、カーテンエアバッグ。
【請求項2】
膨張展開完了時、送り出し部材と車体接続部が略水平の位置関係となることを特徴とする、請求項1に記載のカーテンエアバッグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−10404(P2013−10404A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143619(P2011−143619)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
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