説明

カーテンエアバッグ

【課題】 第1折り部と第2折り部との膨張展開によって、第3折り部を膨張展開させるためのスペースを確保したうえで、第3折り部をより理想的な形で膨張展開させることのできるカーテンエアバッグを提供する。
【解決手段】 車外側に配した第2折り部(12)を最初に膨張展開させ、第1折り部(11)と第3折り部(13)とを押圧して、ルーフライニング(4)の下端部を押し上げさせてピラーガーニッシュ(2a)との間に開口を形成する。このとき、第3折り部(13)の移動位置は、ピラーガーニッシュ(2a)の上部から外れた車内側に位置させる。第1折り部(11)の膨張展開により第3折り部(13)をサイドウィンドガラスに沿った方向に押し出す。これにより、第3折り部(13)をより理想的な形で膨張展開させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両側面の窓部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、車両に対する側突事故やロールオーバ等の事故において、乗員の頭部を保護する目的で、車室内において車両の側面に沿って膨張展開するカーテンエアバッグを設けた車両が、数多く使用されている。車両に対する側突事故やロールオーバ等の事故の発生が検知されると、あるいはこれらの事故の発生が予測されると、インフレータから噴射された膨張ガスがカーテンエアバッグ内に流入して、カーテンエアバッグを膨張展開させる。
【0003】
カーテンエアバッグは、天井内の張り材(ルーフライニング)と車体パネルとの間の空間に折り畳まれた状態で、ルーフサイドレール内に収納されている。カーテンエアバッグの膨張展開に伴って、ルーフライニングの下端部側を車内側上方に押し開き、押し開かれた開口を通ってカーテンエアバッグは、車室内で窓部に沿いながら下方に向ってカーテン状に膨張展開する。膨張展開したカーテンエアバッグによって、乗員の頭部を保護することができる。
【0004】
カーテンエアバッグの構成としては、一般的に第1折り部と第2折り部とを備え、第1折り部と第2折り部との間に位置した第3折り部を、車室内において窓部に沿った形で下方に向ってカーテン状に膨張展開させる構成が採用されている。このような構成を有するカーテンエアバッグとしては、本願出願人は既に特許文献1に記載したエアバッグ(カーテンエアバッグ)を提案している。
【0005】
特許文献1に記載されたカーテンエアバッグでは、ルーフサイドレールに沿って細長く折り畳んで配置したカーテンエアバッグに対して、カーテンエアバッグの一端部から導入した膨張ガスを他端部側まで円滑に導入できるように構成されている。そして、第1折り部と第2折り部とがそれぞれ車体側方部とルーフライニング内側との間で膨張展開を行い、その後、第3折り部の膨張展開がセンターピラー等と干渉することなく行われるように構成されている。そして、カーテンエアバッグを窓部に沿って所定の挙動で安定して膨張展開させることができる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−175792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載したカーテンエアバッグでは、ガス導入部から導入された膨張ガスが、導入初期の段階から第1折り部と第2折り部との両方に流入するように構成されている。特許文献1に記載されたカーテンエアバッグを説明するに当たって、特許文献1に記載されたカーテンエアバッグの平面形状を、本願発明におけるカーテンエアバッグの平面形状に模して描いた説明図である図9を用いて説明する。
【0008】
図9に示すように、カーテンエアバッグ50は、二枚のメイン基布パネルを重ね合わせて、重ね合わせたメイン基布パネルの外周を縫着部59により縫製した構成になっている。カ
ーテンエアバッグ50は、ロール状に折り畳まれた第3折り部53に第2折り部52が連続し、第2折り部52に第1折り部51が連続する構成になっている。そして、第3折り部53の中央上部から左右に第2折り部52と第1折り部51とが順次折り畳まれた形状に構成されている。そして、所謂ロールオーバ折りの形でカーテンエアバッグ50が折り畳まれている。
【0009】
図示せぬインフレータからの膨張ガスは、ガス導入管57を介してガス導入部56に導入することができ、ガス導入部56に導入された膨張ガスは、ガス流通部55から第1折り部51と第2折り部52との両方に流入することになる。このように構成されているため、第1折り部51と第2折り部52との膨張展開によって、第3折り部53を膨張展開させるためのスペースを確保することが可能になっている。
【0010】
しかし、第3折り部53が膨張展開するときの挙動方向は、同時に膨張展開を開始した第1折り部51と第2折り部52の膨張展開によって方向付けられることになる。そのため、第1折り部51と第2折り部52とが膨張展開を行って第3折り部53を押圧する方向が、第3折り部53の理想的な膨張展開する方向と必ずしも一致するという訳にはなかなか行かなかった。そのため、第3折り部53の膨張展開方向を理想的な形で行わせるためには、更なる改良を加えることが求められることになる。
【0011】
本願発明は、特許文献1に記載したカーテンエアバッグに更なる改良を加えたものであり、第1折り部と第2折り部との膨張展開によって、第3折り部を膨張展開させるためのスペースを確保したうえで、第3折り部をより理想的な形で膨張展開させることのできるカーテンエアバッグの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の課題は、請求項1〜5に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明は、折り畳まれて車両のルーフサイド部に収納され、膨張ガスの導入により車両側方の窓部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグであって、
インフレータからの膨張ガスが導入されるガス導入部と、車内側に位置して膨張展開する第1折り部と、車外側に位置して膨張展開する第2折り部と、前記第1折り部と前記第2折り部との間に位置し、車室内において前記窓部に沿いながら下方に向ってカーテン状に膨張展開する第3折り部とを有し、
前記第2折り部は、前記ガス導入部に直通したガス流通部を内在し、前記第1折り部には、最初に前記ガス流通部から分岐した膨張ガスが導入され、膨張ガスの導入により前記第2折り部が膨張展開を開始した後に、前記第1折り部の膨張展開、そして前記第3折り部の膨張展開の順に前記各折り部が順次膨張展開することを最も主要な特徴としている。
【0013】
また、本願発明のカーテンエアバッグでは、前記ガス流通部と前記第1折り部との境界部に連通孔が形成され、前記連通孔を通った膨張ガスが前記第1折り部に導入されてなることを主要な特徴としている。
更に、本願発明では、前記第3折り部が、ロール状に折り畳まれた折り部であることを主要な特徴としている。
【0014】
更にまた、本願発明では、前記第3折り部が、蛇腹状に折り畳まれた折り部であることを主要な特徴としている。
また、本願発明では、前記ガス導入部が、前記ガス流通部における長手方向の中間部に直通されてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明に係わるカーテンエアバッグでは、車外側に位置して配された第2折り部を最初に膨張展開させ、第2折り部に供給する膨張ガスの一部が車内側に位置して配した第1
折り部に対して最初に供給される構成になっている。この構成によって、第1折り部と第2折り部とは同時に膨張展開を開始せずに、最初に第2折り部を第1折り部に先行させて膨張展開させることができる。
【0016】
そして、第2折り部が第1折り部に先行して膨張展開を開始すると、第2折り部の膨張展開によって第1折り部及び第3折り部を車内側に向けて押圧することができ、カーテンエアバッグを収納していたルーフライニングの下端部側を車内側上方に押し開いて開口を形成することができる。しかも、センターピラーガーニッシュの上縁部との干渉を防止した位置に、第3折り部を移動させることができる。
【0017】
第2折り部の膨張展開に続いて第1折り部が膨張展開すると、前記開口を更に押し開かせるとともに、第1折り部の膨張展開によって第3折り部を押圧することができる。そして、第3折り部を押圧する方向が、前記開口を通って第3折り部が膨張展開したときに車両側方の窓部に沿った方向となるようにすることができる。
これにより、第3折り部は、理想的な形で車両側方の窓部に沿って膨張展開を行うことができる。
【0018】
本願発明では、第1折り部に最初に供給する膨張ガスとして、第2折り部に供給する膨張ガスの一部を使用している。第1折り部に膨張ガスを供給する構成としては、第2折り部に内在させたガス流通部と第1折り部との境界部に連通孔を形成した構成にすることができる。連通孔の構成により、連通孔の形成個数や連通孔の孔径を調整することができ、連通孔を通って第1折り部に供給する膨張ガスの流量を調整することができる。
【0019】
そして、連通孔を通って第1折り部に供給する膨張ガスの流量を調整することにより、第2折り部の膨張展開の開始からどれだけの時間差を持たせて第1折り部を膨張展開させるように設定するのかなど、それぞれの開始タイミングを調整することができる。また、カーテンエアバッグを収納していたルーフライニングにおける収納形状と第1折り部及び第2折り部の膨張容積を調整することにより、第1折り部の膨張展開により第1折り部及び第3折り部を押圧する押圧方向、第1折り部の膨張展開により第3折り部を押圧する押圧方向を調整することができる。
【0020】
本願発明における第3折り部の構成としては、ロール状に折り畳まれた折り部として構成しておくことも、蛇腹状に折り畳まれた折り部として構成しておくこともできる。このように第3折り部を構成しておくことにより、第3折り部を車両側方の窓部に沿って迅速に膨張展開させることができる。
【0021】
本願発明では、ガス流通部に直通するガス導入部を、カーテンエアバッグの端部側に形成しておくことも、ガス流通部における長手方向の中間部に直通した構成にしておくこともできる。ガス導入部をガス流通部の中間部に連通させた構成のときには、ガス流通部の中間部からガス流通部の前後方向に膨張ガスを流通させることができるようにするため、前後方向に開口した端部開口を有するインナーチューブを備えた構成にしておくことができる。インナーチューブを構成する代わりに、カーテンエアバッグを構成する基布パネルによって、ガス流通部の中間部にガス導入口を形成しておくこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】カーテンエアバッグをルーフサイド部に収納した状態を示す概略正面図である。(実施例)
【図2】カーテンエアバッグを展開状態にした正面図及び格納状態にした縦断面図である。(実施例1)
【図3】折り畳まれたカーテンエアバッグの斜視図である。(実施例1)
【図4】ルーフサイド部内での収納状態を示すカーテンエアバッグの縦断面図である。(実施例1)
【図5】第1折り部及び第2折り部の膨張展開状態を示す要部断面図である。(実施例1)
【図6】カーテンエアバッグを展開状態にした正面図及び格納状態にした縦断面図である。(実施例1)
【図7】カーテンエアバッグを展開状態にした正面図である。(実施例2)
【図8】折り畳まれたカーテンエアバッグの正面図である。(実施例3)
【図9】カーテンエアバッグを展開状態にした正面図及び格納状態にした縦断面図である。(説明図)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるカーテンエアバッグとしては、以下に説明する実施例の構成に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0024】
図1に示すように、カーテンエアバッグ装置40は、折り畳まれたカーテンエアバッグ10と、膨張ガスを発生するインフレータ6と、インフレータ6をカーテンエアバッグ10に接続するガス導入管7とを備えた構成になっている。カーテンエアバッグ10は、取付部14を介してルーフサイドレール3に取付けておくことができる。
【0025】
即ち、図4に示すように、カーテンエアバッグ10は、センターピラー2の車室内側を装飾するピラーガーニッシュ2aの上縁部に係合したルーフライニング4とルーフサイドレール3との間に配設されており、ルーフライニング4内においてブラケット9を介してルーフサイドレール3に取付けられている。
【0026】
尚、ここでセンターピラー2とは、後述するカーテンエアバッグ10の前気室18a及び後気室18bの間の部位の側方に位置しており、車両の前後に配される所謂AピラーやCピラーではないBピラーであって、展開したカーテンエアバッグ10によって覆われるピラーを示している。また、車両の種類によっては、片側に、例えば、4本以上のピラーを備えた構成の車両も存在する。このような車両でも車両の前から、例えば3本目のピラーに関してもカーテンエアバッグで覆うことができるが、説明を簡単にするため、車両の前から3本目以降のピラーは、リアピラーであるCピラーとして取り扱うことにする。
【0027】
車両1に対する側面衝突事故やロールオーバ等の事故の発生が検知されると、あるいはこれらの事故の発生が予測されると、カーテンエアバッグ装置40のインフレータ6から噴射された膨張ガスがカーテンエアバッグ10内に流入して、カーテンエアバッグ10が膨張展開する。
【0028】
カーテンエアバッグ10の膨張展開に伴って、図5(a)に示すように、ピラーガーニッシュ2aの上端部に係合していたルーフライニング4の下端部側を車室内側の上方に押し開くことができる。そして、押し開かれた開口を通ってカーテンエアバッグ10は、ピラーガーニッシュ2aに干渉することなく下方へ向ってカーテン状に展開する。このように、膨張展開したカーテンエアバッグ10によって、前席側のサイドウィンドガラス5a(図1参照)と後席側のサイドウィンドガラス5b(図1参照)とを覆い、乗員の頭部を保護することができる。
【0029】
カーテンエアバッグ10を展開状態にしたときの正面図を示している図2(a)に示すように、カーテンエアバッグ10は、例えば315デニールのナイロン66糸を用いた目付200g/
2の二枚のメイン基布パネルを重ね合わせ、重ね合わせたメイン基布パネルの外周を縫着部19により接合して構成することができる。あるいは、一枚のメイン基布パネルを折り合わせて、折り合わせたメイン基布パネルの外周を縫着部19により接合して構成することもできる。
【0030】
尚、カーテンエアバッグ10の形態、材質や構造及びインフレータ6の形態や構造などは従来と格別に変わるところはない。従って、本発明は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0031】
そして、折塊に折り畳まれたカーテンエアバッグ10の縦断面図を示している図2(b)、図3に示しているように、カーテンエアバッグ10は、ロール状に折り畳まれた第3折り部13に連続して、第3折り部13の中央上部から左右に第2折り部12と第1折り部11とが順次折り畳まれた形状に構成されている。第3折り部13は、第1折り部11と第2折り部12との間に位置することになる。即ち、第1折り部11と第2折り部12とによって、所謂ロールオーバ折りが構成されている。
【0032】
尚、図2(b)における第1折り部11の折り返し点Aは、図2(a)では、点線Aで示しており、図2(b)における第2折り部12の折り返し点Bは、図2(a)では、点線Bで示している。また、第3折り部13としてロール状に折り畳んだ折り畳み形状を示しているが、第3折り部13の構成として蛇腹状にジグザグに折り畳んだ折り畳み形状に構成しておくこともできる。
【0033】
図4に示すように、第1折り部11を車内側に位置させ、第2折り部12を車外側に位置させた状態で、カーテンエアバッグ10をルーフサイドレール3に取付けることができる。
図2(b)、図3に示す構成例では、車両1の前方側から第3折り部13の折り形状を見ると、膨張展開したときの下端部から時計回り方向で右巻きに巻回されて形成されている。そして、第2折り部12は第3折り部13に連続して構成され、第3折り部13の中央上方から右側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれている。第1折り部11は第2折り部12に連続して構成され、第3折り部13の中央上方から左側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれている。
【0034】
尚、車両1の前方側から第3折り部13の折り形状を見たときに、膨張展開したときの下端部から反時計回り方向で左巻きに巻回させた形状に第3折り部13を形成しておくことができる。この場合には、第3折り部13に連続して構成される第2折り部12は、第3折り部13の中央上方から左側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれることになり、第2折り部12に連続して構成される第1折り部11は、第3折り部13の中央上方から右側を包み込んで覆い被せるように折り畳まれることになる。
【0035】
そして、車両1の前方側から第3折り部13の折り形状を見たときに、時計回り方向の右巻きに巻回されたカーテンエアバッグ10は、右ハンドルの車両1において助手席側に配されるカーテンエアバッグ10となり、反時計回り方向の左巻きに巻回されたカーテンエアバッグ10は、運転席側のカーテンエアバッグ10として配設しておくことができる。
【0036】
即ち、図2(b)において、第1折り部11は、矢印のIN側に配され、第2折り部12は、矢印のOUT側に配されることになる。また、図2(a)の矢印F方向は、車両の前進方向を示して折り、矢印U方向は、車両の上方向を示している。
【0037】
図2(a)に示されるように、インフレータで発生した膨張ガスは、ガス導入管7を介してガス導入部16に導かれる。ガス導入部16に導かれた膨張ガスは、ガス導入部16に直通したガス流通部15内に供給される。ガス流通部15は、第2折り部12内に構成されており、
ガス流通部15に膨張ガスが供給されることにより、第2折り部12は膨張展開を開始する。
【0038】
ガス流通部15は、連通孔21を介して第1折り部11に連通しており、インフレータからガス流通部15内に供給された膨張ガスの一部は、連通孔21を通って第1折り部11内に供給されることになる。連通孔21は、第2折り部12内に形成したガス流通部15と第1折り部11との境界部に形成されており、境界部を接合部20で所定間隔ごとに縫着することにより形成されている。
【0039】
第2折り部12が膨張展開を開始すると、遅れて第1折り部11も膨張展開を開始することになる。しかし、膨張展開するスピードは、第2折り部12の方が第1折り部11よりも早くなる。そのため、図4、図5(a)に示すように、第2折り部12の膨張展開によって、第1折り部11及び第3折り部13はルーフサイドレール3から離間する矢印方向に押圧されて、ルーフライニング4の下端部をピラーガーニッシュ2aとの係合状態を解除させる。そして、ルーフライニング4の下端部を上方に押し開いて、ピラーガーニッシュ2aとの間に開口を形成する。
【0040】
このとき、第3折り部13は、ピラーガーニッシュ2aの上方を外れた室内側に移動した位置にある。引き続いて、第1折り部11が第2折り部12の膨張展開に続いて膨張展開を開始すると、ピラーガーニッシュ2aの上方を外れた室内側に位置する第3折り部13をサイドウィンドガラス5a、5b(図1参照)に沿った下方向に押圧することになる。そして、第3折り部13は、サイドウィンドガラス5a、5b(図1参照)に沿った下方向に膨張展開を行うことができる。これにより、第3折り部13をより理想的な展開方向で膨張展開させることができる。
【0041】
図5(a)では、連通孔21を形成するために、第1折り部11とガス流通部15との境界部を縫着した接合部20が、存在している状態を示している。そのため、第1折り部11と第2折り部12との間が狭く構成されているが、接合部20を縫着している縫製糸の強度を調整することにより、第1折り部11内の内圧が所定の内圧以上に上昇したときには、図5(a)に示す接合部20の縫製糸が破断して連通孔の開口面積を増大させる構成にすることができる。
【0042】
また、縫製糸の破断により連通孔21の開口面積を増大させる構成の代わりに、図6(a)に示すように、接合部20としてシール剤22を用いた構成にしておくことができる。シール剤22は、第1折り部11内の内圧が所定の内圧以上に上昇したときにシール剤22による接着が剥がれて、シール剤22が剥がれた箇所に連通孔21が形成される。そして、連通孔21を通って、ガス流通部15内を流れる膨張ガスの一部が第1折り部11内に流入することになる。
【0043】
カーテンエアバッグ10の長さ方向に亘って、所望の間隔を空けながらシール剤22を用いれば、最初から連通孔21を形成しておくこともできる。また、シール剤22を用いる量をカーテンエアバッグ10の長さ方向に亘って、所望の間隔ごとに異ならせることによって、ガス流通部15と第1折り部11との間での接合強度に強弱を持たせることができる。そして、接合強度の弱いところの接着を最初に剥がし、連通孔21を構成することもできる。
【0044】
このように構成することにより、図5(b)に示すように、第1折り部11と第2折り部12とが膨張展開すると、膨張展開した第1折り部11と第2折り部12とは一つになって、第3折り部13の上方に袋状の膨張部として形成することができる。図5(b)に示す場合であっても、第1折り部11が膨張展開を開始すると、図5(a)に示したと同様に、第1折り部11と第3折り部13とをルーフサイドレール3から離間する矢印方向に押圧することができる。
【0045】
そして、このとき第3折り部13はピラーガーニッシュ2aの上方から室内側に外れた場所に位置することになる。次に、第1折り部11が膨張展開を行うことで、第3折り部13をサイドウィンドガラス5a、5b(図1参照)に沿った下方向に押圧することになる。そして、第3折り部13の膨張展開時には、サイドウィンドガラス5a、5b(図1参照)に沿った下方向に膨張展開を行うことができる。これにより、第3折り部13をより理想的な形で膨張展開させることができる。
【実施例2】
【0046】
実施例2は、実施例1と同様に第1折り部11と第2折り部12との間に第3折り部13が配された構成であるが、ガス導入部28がガス流通部15の中間部に構成されている。他の構成は、実施例1と同様の構成を備えており、実施例1における構成と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。実施例2について、図7を用いてその説明をする。
【0047】
カーテンエアバッグ26の第2折り部12(図2(b)参照)にはガス流通部15が形成されており、ガス導入部28は、ガス流通部15の中間部に形成されている。そして、図示せぬインフレータに接続したガス導入管7を介して、膨張ガスをガス流通部15に供給することができる。ガス導入管7には、インナーチューブ27が接続しており、インナーチューブ27内に流入した膨張ガスをガス流通部15の中間部から車両の前後方向に分配することができる。
【0048】
ガス流通部15と第1折り部11(図2(b)参照)との間は、接合部20で縫着されており、隣接する接合部20間には、連通孔21が形成されている。接合部20は、図5(a)で説明したように、ガス流通部15と第1折り部11(図2(b)参照)との間を縫着させた構成にしておくことも、所定の引張り力で破断する縫製糸を用いてガス流通部15と第1折り部11(図2(b)参照)との間を縫着させた構成にしておくこともできる。
【0049】
また、図6で説明したように、接合部20の構成としてシール剤22を用いた構成しておくこともできる。シール剤22に所定の引張り力が作用したときに、シール剤22の接合状態が剥離する構成にしておくこともできる。
このように構成することにより、インフレータの配設位置に自由度を持たせることができる。
【0050】
図7では、インナーチューブ27を用いた構成について説明を行ったが、インナーチューブ27をカーテンエアバッグ26のメイン基布パネルとは別体の基布パネルで構成する代わりに、カーテンエアバッグ26のメイン基布パネルで、ガス流通部15の中間部にガス導入口を形成しておくこともできる。
【実施例3】
【0051】
実施例3は、実施例2と同様にガス導入部38がガス流通部15の中間部に構成されている。実施例1、2では、所謂ロールオーバ折りにより第1折り部11と第2折り部12とが形成されているが、実施例3では、カーテンエアバッグ30が所謂パラソル折りにより第1折り部31と第2折り部32とが形成されている。また、パラソル折りの第1折り部31と第2折り部32とに膨張ガスを供給するため、ガス導入部38にはインナーチューブ34が配設されている。
【0052】
インナーチューブ34の膨張ガス流出用の両端部における開口面積としては、第1折り部31に連通した開口面積が、第2折り部32に連通した開口面積よりも狭い開口面積となるように構成されている。即ち、インナーチューブ34の流出側の両端部における開口面積を異
ならせて構成することにより、実施例1、2における連通孔21と同様の機能を奏させている。他の構成は、実施例1、2と同様の構成を備えており、実施例1、2における構成と同様の構成については、実施例1、2で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。実施例3について、図8を用いてその説明を行う。
【0053】
図8に示すように、第3折り部33は、パラソル折りした第1折り部31と第2折り部32とによって、上方から包み込んで覆い被せるように折り畳まれている。図示せぬインフレータからの膨張ガスは、ガス導入管7を介してインナーチューブ34内に導入される。インナーチューブ34内に導入された膨張ガスは、インナーチューブ34によって第1折り部31と第2折り部32とに分配される。
【0054】
インナーチューブ34の下方側の側縁を、第1折り部31と第2折り部32との境界部に縫着した構成にしておくことも、第2折り部32が所定容量以上に膨張したときには、第2折り部32と第1折り部31とがインナーチューブ34の下方側で連通する構成にしておくこともできる。
【0055】
インナーチューブ34の下方側の側縁を、第1折り部31と第2折り部32との境界部に縫着した構成にしたときには、第2折り部32と第1折り部31との膨張によって、第3折り部33の上方には図5(a)で示すような形状を有する二つの袋部を有する膨張部を形成することができる。また、第2折り部32が所定容量以上に膨張したときには、第2折り部32と第1折り部31とがインナーチューブ34の下方側で連通する構成にしたときには、第3折り部33の上方には図5(b)で示すような形状を有する一つの袋部からなる膨張部を形成することができる。
【0056】
第2折り部32に流入する膨張ガスの流量が、第1折り部31に流入する膨張ガスの流量よりも多い流量が供給されるように、インナーチューブ34の両端部の開口面積が設定されている。このように構成されているので、車外側に配した第2折り部32が最初に膨張展開を開始し、続いて車内側に配した第1折り部31が膨張展開を開始する。
【0057】
第2折り部32が膨張展開を行うことにより、第1折り部31と第3折り部33とを車内側に押圧することができる。第2折り部32による第1折り部31と第3折り部33の押圧及び押圧方向は、実施例1、2において説明したと同様に行われる。
第2折り部32の膨張展開に続いて第1折り部31が膨張展開することにより、第3折り部33を理想的な展開方向に押圧することができる。
【0058】
尚、実施例3では、ガス導入部38をガス流通部15の中間部に形成した構成について説明を行ったが、ガス導入部38を実施例1と同様にカーテンエアバッグ30の前後方向における端部側に構成することもできる。ガス導入部38をカーテンエアバッグ30の前後方向における端部側に構成した場合でも、ガス導入管7に連通したインナーチューブ34を用いて、カーテンエアバッグ30内に導入された膨張ガスの大部分が最初に第2折り部32に供給され、膨張ガスの一部が第1折り部31に供給される構成にしておくことが必要である。
【0059】
そして、第2折り部32の膨張展開により第1折り部31と第3折り部33とを車内側に移動させ、引き続いて第1折り部31の膨張展開により、第3折り部33をサイドウィンドガラス5a、5b(図1参照)に沿った下方向に押圧させるように構成しておくことができる。
【0060】
これにより、第3折り部33をより理想的な形で膨張展開させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明の技術思想を他のエアバッグの構成においても適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・車両、
2a・・・ピラーガーニッシュ、
4・・・ルーフライニング、
6・・・インフレータ、
7・・・ガス導入管、
10・・・カーテンエアバッグ、
11・・・第1折り部、
12・・・第2折り部、
13・・・第3折り部、
15・・・ガス流通部、
16・・・ガス導入部、
20・・・接合部、
21・・・連通孔、
22・・・シール剤、
26・・・カーテンエアバッグ、
27・・・インナーチューブ、
28・・・ガス導入部、
30・・・カーテンエアバッグ、
31・・・第1折り部、
32・・・第2折り部、
33・・・第3折り部、
34・・・インナーチューブ、
40・・・カーテンエアバッグ装置、
50・・・カーテンエアバッグ、
51・・・第1折り部、
52・・・第2折り部、
53・・・第3折り部、
55・・・ガス流通部、
56・・・ガス導入部、
F・・・前方、
U・・・上方、
IN・・・車室内側、
OUT・・・車外側。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれて車両のルーフサイド部に収納され、膨張ガスの導入により車両側方の窓部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグであって、
インフレータからの膨張ガスが導入されるガス導入部と、車内側に位置して膨張展開する第1折り部と、車外側に位置して膨張展開する第2折り部と、前記第1折り部と前記第2折り部との間に位置し、車室内において前記窓部に沿いながら下方に向ってカーテン状に膨張展開する第3折り部とを有し、
前記第2折り部は、前記ガス導入部に直通したガス流通部を内在し、
前記第1折り部には、最初に前記ガス流通部から分岐した膨張ガスが導入され、
膨張ガスの導入により前記第2折り部が膨張展開を開始した後に、前記第1折り部の膨張展開、そして前記第3折り部の膨張展開の順に前記各折り部が順次膨張展開することを特徴とするカーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記ガス流通部と前記第1折り部との境界部に連通孔が形成され、前記連通孔を通った膨張ガスが前記第1折り部に導入されてなることを特徴とする請求項1記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記第3折り部が、ロール状に折り畳まれた折り部であることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項4】
前記第3折り部が、蛇腹状に折り畳まれた折り部であることを特徴とする請求項1または2に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項5】
前記ガス導入部が、前記ガス流通部における長手方向の中間部に直通されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカーテンエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−49392(P2013−49392A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189589(P2011−189589)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】