説明

カード挿入口付き電子機器

【課題】シャッタの不正こじ開けに対する防御性の向上を図る。
【解決手段】上ケース2と下ケース3と表パネル4とを有する機器本体1と、表パネル4に設けられたカード挿入口5と、表パネル4に沿って左右方向スライド自在に設けられたカード挿入口のシャッタ6と、シャッタの上部を覆うように上ケースの前端に延設された庇部2aと、庇部の下面側に形成され、シャッタの上端係合縁部6bが係合されることで、シャッタのスライド動作を案内しながら、シャッタの外れを防止するレール溝2cと、庇部の下面に突設され、庇部に上向き力が加えられた際に、表パネルの裏面に当たることで、庇部の上方への持ち上がりを防止する補強リブ2eと、を有する。補強リブが、表パネルの上端4bの挿入孔4eに挿入されることで、レール溝の一方の側壁部を構成する庇部の前端下垂壁2bと補強リブとの間にシャッタの上端係合縁部6bと表パネル4の上端4bとが挟まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるデジタルタコグラフ等のカード挿入口付きの電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、デジタルタコグラフや自動料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)車載器などの車載電子機器の中は、機器本体の前面パネル(外装パネル)に、情報記憶媒体であるメモリカードやICカード等の情報記憶媒体カードを挿入するためのカード挿入口を有したものがある。
【0003】
このようなカード挿入口付きの電子機器として、特許文献1に記載されたデジタルタコグラフが知られており、図3は同文献に記載された従来のデジタルタコグラフ100の外観を示している。
【0004】
このデジタルタコグラフ100は、本体ケース101の前面に各種スイッチ類を装備した前面パネル102を有し、前面パネル102に、情報記憶媒体カードCを挿入するためのカード挿入口103を有している。
【0005】
カード挿入口103にカードCを挿入すると、スライドボタン104がバネ(図示略)の力によりカード挿入口103の一部を覆い、取り出しボタン105を操作しても、カードCが取り出せない構成となっている。そして、カードCへの情報の書き込みは、終了ボタン106の操作に応じて開始される。
【0006】
また、カードCの取り出しの際は、カード挿入口103にかからないようにスライドボタン104を前面パネル102の左側にずらして保持しながら、取り出しボタン105を押圧することで、カードCを挿入口103から排出させることができる。
【0007】
ところで、このデジタルタコグラフ100では、前面パネル102に設けたカード挿入口103が常時外部に露出しているので、カード挿入口103から機器内部に埃などが入りやすい上、スライドボタン104だけでカードCの抜き取りを防止しているので、タコグラフの誤操作に対する防御性が弱いという問題があった。このような問題は、デジタルタコグラフ以外の機器でも同様に起こり得る。
【特許文献1】特開2004−103446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、このような問題を解消するものとして、本発明者らは、図4に示すように、機器本体110の前面パネル111の前側に、カード挿入口112を開閉するスライド式のシャッタ113を設け、カードCの挿入や取り出し以外の時は、シャッタ113でカード挿入口112を遮蔽するようにしたデジタルタコグラフの案を出して検討した(未公開)。
【0009】
図4に示すものでは、シャッタ113のスライド方向は矢印Aで示す左右方向になっており、カードCの挿入や取り出し以外の時は、図4(a)に示すように、シャッタ113が左側にスライドしてカード挿入口112を覆い、カードCの挿入時や取り出し時は、図4(b)に示すように、シャッタ113が右側にスライドして、カード挿入口112を開放するようになっている。
【0010】
この場合、シャッタ113が脱落したり不正に取り外されたりしないように、シャッタ113の上下端縁を機器本体110側に設けたレール(図示略)に係合させることで、シャッタ113をスライド自在に組み付けることを考え出して検討した。
【0011】
ところが、その検討の過程で、特にシャッタ113の上側の係合部分が弱点になりやすく、痕跡を残さずにドライバ等で本体ケース101がこじ開けられてシャッタ113が取り外されてしまうと、カードCが不正に改竄されてしまいかねないことに気付いた。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮し、カード挿入口の遮蔽用のシャッタの不正な取り外しに対する防御性を高めたカード挿入口付き電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明のカード挿入口付き電子機器は、上ケースと下ケースとこれら両ケースを組み合わせることでできる前面開口を塞ぐ前面パネルとを有する機器本体と、前記前面パネルに設けられ、前記機器本体の内部に情報記憶媒体カードを挿入するためのカード挿入口と、前記前面パネルの前面に該前面パネルに沿って左右方向スライド自在に設けられることで、前記カード挿入口を開閉するスライド式のシャッタと、該シャッタの上部を覆うように前記上ケースの前端に延設された庇部と、該庇部の下面側に形成され、前記シャッタの上端係合縁部が係合されることで、シャッタのスライド動作を案内しながら、シャッタの外れを防止するレール溝と、前記庇部の下面に突設され、該庇部に上向き力が加えられた際に、前記前面パネルの裏面に当たることで、前記庇部の上方への持ち上がりを防止する補強用のリブと、を具備することを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカード挿入口付き電子機器であって、前記レール溝の一方の側壁部を構成する前記庇部の前端下垂壁と前記リブとの間に、前記シャッタの上端係合縁部と前記前面パネルの上端とが挟まれていることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のカード挿入口付き電子機器であって、前記前面パネルの上端に形成された挿入孔に前記リブが挿入されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載のカード挿入口付き電子機器であって、前記リブが、前記上ケースの前後方向に長い断面形状を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、機器本体を構成する上ケースに庇部を設けてシャッタの上部を覆い、庇部の下面側にシャッタの上端係合縁部の係合するレール溝を設けたので、シャッタの不正な取り外しに対する防御性を高めることができる。しかもそれだけではなく、上ケースの庇部の下面に補強用のリブを突設して、庇部に上向き力が加えられた際に、そのリブが前面パネルの裏面に当たることで、庇部の上方への持ち上がりを防止するようにしたので、外部からの力に対して庇部が変形しにくなり、庇部のこじ開けを有効に防止することができる。
【0018】
従って、シャッタの外れを防ぐことができて、シャッタを閉じているはずの状態でのカードの不正抜き取りを確実に防御することができる。即ち、例えば、カードを抜き取って改竄するためには、簡単なこじ開けでは済まなくなり、機器本体に大きな痕跡を残さざるを得なくなるため、改竄があった場合でも、その発見が容易になるし、こじ開け途中でリブが見えることにより、こじ開けの断念を期待することができ、改竄の防止を図ることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、リブと庇部の前端下垂壁との間にシャッタの上端係合縁部と前面パネルの上端とを挟んでいるので、庇部にこじ開け力が加わってリブが前面パネルの裏面に当たった際に、前面パネルとシャッタの2枚の壁がリブからの力を受け止める。従って、確実にリブを押さえ込むことができて、簡単な組み付け構造により、庇部の持ち上がりを確実に防ぐことができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、リブが前面パネルの挿入孔に嵌まっていることにより、上ケースの前端と前面パネルの上端の係合が強まり、その結果、前面パネルおよび上ケースの外れを防止することができて、シャッタがより外れにくくなる。
【0021】
請求項4の発明によれば、リブが縦長断面になることで撓みにくくなり、それにより、庇部がより一層こじ開けられにくくなって、シャッタが外れにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は実施形態のデジタルタコグラフの構成図で、図1(a)は前部を上側から見た部分分解斜視図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib矢視断面図である。また、図2は比較例の構成を示す図で、図2(a)は図1(a)と同じ部分を示す部分分解斜視図、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb矢視断面図、図2(c)はドライバで庇部がこじ開けられている様子を示す図2(b)と同じ部分の断面図である。
【0024】
図1(a)に示すように、このデジタルタコグラフの機器本体1は、デジタルタコグラフの回路等を収納する樹脂製の上ケース2および下ケース3と、上ケース2および下ケース3を組み合わせることでできる前面開口を覆う樹脂製の表パネル(前面パネル)4と、を備えている。表パネル4には、ICカード(情報記憶媒体カード)Cを機器本体1の内部に挿入するためのカード挿入口5が設けられ、表パネル4の前面に、カード挿入口5を開閉するシャッタ6が、表パネル4に沿って左右方向スライド自在に設けられている。
【0025】
シャッタ6は、正面板6aの上端と下端に係合縁部6b(上端側のみ図示)を有しており、これら係合縁部6bを、図1(b)に示すように、上ケース2の庇部2aの前端下面に設けたレール溝2cと、下ケース3の前端下面に設けたレール溝(図示せず)にそれぞれ係合させることにより、レール溝2cに案内されながら左右方向にスライドできるよう装備され、組み立てた状態でレール溝2cから抜けないようになっている。
【0026】
庇部2aは、シャッタ6の上部を覆うように上ケース2の前端に延設され、その下面に、前端下垂壁2bと奥側の凸部2dを両側壁部とすることでレール溝2cが形成されている。
【0027】
また、凸部2dのすぐ後側の位置には、上ケース2の前後方向に長い断面形状を有した板状の補強リブ2eが突設されている。この補強リブ2eは、庇部2aに上向き力が加えられた際に、表パネル4の裏面に当たることで、庇部2aの上方への持ち上がりを防止するものであり、上ケース2の左右方向の適当な位置に間隔的に複数配置されている。そして、各補強リブ2eが、表パネル4の上端4bの上板4cに形成された挿入孔4eに挿入されていることで、レール溝2cの一方の側壁部を構成する庇部2aの前端下垂壁2bとリブ2eとの間に、シャッタ6の上端係合縁部6bと表パネル4の上端4bとが挟まれている。
【0028】
次に図2の比較例と比べながら上記構成による作用を説明する。
【0029】
図2の比較例は、同図(a)、(b)に示すように、図1(a)、(b)における補強リブ2eと挿入孔4eのないものである。
【0030】
この比較例の場合、図2(b)に示すように、機器本体1を構成する上ケース2に庇部2aを設けてシャッタ6の上部を覆い、庇部2aの下面にシャッタ6の上端係合縁部6bの係合するレール溝2cを設けているので、シャッタ6の不正な取り外しに対する防御性がある程度は確保されていると思われるが、図2(c)に示すように、庇部2aの前端にドライバ50の先端を差し込んで、庇部2aを上にこじ開けようとした場合、割合と簡単に庇部2aが撓んで、シャッタ6が取り外せてしまう可能性がある。
【0031】
これに対し、図1に示す本発明の実施形態の場合は、上ケース2の庇部2aの下面に、縦長断面(上ケース2の前後方向に長い断面形状)の板状の補強リブ2eを突設して、庇部2aに上向き力が加えられた際に、その補強リブ2eが表パネル4の裏面に当たることで、庇部2aの上方への持ち上がりを防止するようにしている。従って、外部からの力に対して庇部2aが変形しにくなり、庇部2aのこじ開けを有効に防止することができる。そのため、シャッタ6の外れを有効に防ぐことができ、シャッタ6を閉じているはずの状態でのカードの不正抜き取りを確実に防御することができる。
【0032】
即ち、例えば、カードを抜き取って改竄するためには、簡単なこじ開けでは済まなくなり、機器本体1に大きな痕跡を残さざるを得なくなるため、改竄があった場合でも、その発見が容易になるし、こじ開け途中で補強リブ2eが見えることにより、こじ開けの断念を期待することができ、改竄の防止を図ることができる。
【0033】
また、補強リブ2eと庇部2aの前端下垂壁2bとの間にシャッタ6の上端係合縁部6bと表パネル4の上端4bとを挟んでいるので、庇部2aにこじ開け力が加わって、補強リブ2eが表パネル4の裏面に当たった際にも、表パネル4とシャッタ6の2枚の壁が補強リブ2eからの力を受け止めることになる。従って、確実に補強リブ2eを押さえ込むことができ、簡単な組み付け構造により、庇部2aの持ち上がりを確実に防ぐことができるようになる。
【0034】
特に、補強リブ2eは表パネル4の上端4bに設けた挿入孔4eにそれぞれ嵌まっているので、上ケース2の前端と表パネル4の上端4bの係合が強まり、その結果、表パネル4および上ケース2の外れを防止することができて、シャッタ6がより外れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態のデジタルタコグラフの構成図で、(a)は前部を上側から見た部分分解斜視図、(b)は(a)のIb−Ib矢視断面図である。
【図2】本発明と比べるための比較例の構成を示す図で、(a)は図1(a)と同じ部分を示す部分分解斜視図、(b)は(a)のIIb−IIb矢視断面図、(c)はドライバで庇部がこじ開けられている様子を示す(b)と同じ部分の断面図である。
【図3】従来のデジタルタコグラフの一例を示す外観斜視図である。
【図4】本発明に至る前に検討したスライド式のシャッタを有するデジタルタコグラフの一例を示す外観斜視図で、(a)はシャッタを閉じた状態、(b)はシャッタを開いた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 機器本体
2 上ケース
2a 庇部
2b 前端下垂壁
2c レール溝
2e リブ
3 下ケース
4 表パネル(前面パネル)
4b 上端部
4e 挿入孔
5 カード挿入口
6 シャッタ
6b 係合縁部(上端係合縁部)
C ICカード(情報記憶媒体カード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケースと下ケースとこれら両ケースを組み合わせることでできる前面開口を塞ぐ前面パネルとを有する機器本体と、前記前面パネルに設けられ、前記機器本体の内部に情報記憶媒体カードを挿入するためのカード挿入口と、前記前面パネルの前面に該前面パネルに沿って左右方向スライド自在に設けられることで、前記カード挿入口を開閉するスライド式のシャッタと、該シャッタの上部を覆うように前記上ケースの前端に延設された庇部と、該庇部の下面側に形成され、前記シャッタの上端係合縁部が係合されることで、シャッタのスライド動作を案内しながら、シャッタの外れを防止するレール溝と、前記庇部の下面に突設され、該庇部に上向き力が加えられた際に、前記前面パネルの裏面に当たることで、前記庇部の上方への持ち上がりを防止する補強用のリブと、を具備することを特徴とするカード挿入口付き電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載のカード挿入口付き電子機器であって、
前記レール溝の一方の側壁部を構成する前記庇部の前端下垂壁と前記リブとの間に、前記シャッタの上端係合縁部と前記前面パネルの上端とが挟まれていることを特徴とするカード挿入口付き電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカード挿入口付き電子機器であって、
前記前面パネルの上端に形成された挿入孔に前記リブが挿入されていることを特徴とするカード挿入口付き電子機器。
【請求項4】
請求項1または2に記載のカード挿入口付き電子機器であって、
前記リブが、前記上ケースの前後方向に長い断面形状を有していることを特徴とするカード挿入口付き電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−273470(P2008−273470A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122216(P2007−122216)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】