説明

カード用コネクタ装置

【課題】装置の奥行き方向の寸法を小さくすること。
【解決手段】カードA又はこのカードAよりも長さ方向及び幅方向の寸法が短いカードBを装着可能なカード装着空間が形成されるハウジング2と、カード装着空間に装着されるカードA、Bと共にスライド移動可能なスライド部材6と、スライド部材6におけるカード挿入口4側の一部に回動可能に支持される回動部材7とを備える。回動部材7は、カードAの挿入に伴って回動してカードAの挿入経路から退避する一方、カードBの挿入時に回動することなくカードBの挿入経路に位置し、カードBの前端部及び上面部と接触した状態でスライド部材6と共に挿入方向の前方側に移動してカードBの装着位置にガイドすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタ装置に関し、特に、寸法の異なる2種類のカードを選択的に装着可能なカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方のカードの寸法が他方のカードの寸法に包含される2種類のカードを選択的に装着可能とするカード用コネクタ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このカード用コネクタ装置においては、一方のカードを装着位置に案内可能な挿入口の近傍に、他方のカードを装着位置に案内可能な案内部材を配置することで、2種類のカードの装着に対応するものである。
【特許文献1】特開2005−135629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1記載のカード用コネクタ装置においては、長さ寸法の長いカードを挿入する際、その前端部で案内部材を挿入方向に移動させることから、装置の奥行き方向の寸法が大きくなるという問題がある。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、装置の奥行き方向の寸法を小さくすることができるカード用コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカード用コネクタ装置は、第1カード又はこの第1カードよりも長さ方向及び幅方向の寸法が短い第2カードを装着可能なカード装着空間が形成されるハウジングと、前記カード装着空間に装着される前記第1カード又は第2カードと共にスライド移動可能なスライド部材と、前記ハウジングに設けられ、前記第1カードの接触部に接触する第1コンタクト端子及びこの第1コンタクト端子よりもカード挿入口側で前記第2カードの接触部と接触する第2コンタクト端子と、前記スライド部材における前記カード挿入口側の一部に回動可能に支持される回動部材とを備え、前記回動部材は、前記第1カードの挿入に伴って回動して前記第1カードの挿入経路から退避する一方、前記第2カードの挿入時には回動することなく前記第2カードの挿入経路に位置し、前記第2カードの前端部及び上面部と接触した状態で前記スライド部材と共に挿入方向の前方側に移動して前記第2カードを前記第2カードの装着位置にガイドすることを特徴とする。
【0006】
上記カード用コネクタ装置によれば、回動部材が、第2カードの挿入に伴ってスライド部材と共に移動して第2カードを装着位置にガイドする一方、第2カードよりも寸法が長い第1カードの挿入に伴って回動してその挿入を許容することから、第1カードの挿入に伴う回動部材の奥行き方向の移動のための空間を設ける必要がないので、装置の奥行き方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0007】
特に、上記カード用コネクタ装置において、前記回動部材は、前記第2カードの挿入時に、前記第2カードの側面部と接触して第2カードの側方側への移動を規制することが好ましい。この場合には、回動部材が、挿入された第2カードの側面部に接触して第2カードの幅方向の移動を規制することができるので、より正確に第2カードの装着位置にガイドすることが可能となる。
【0008】
また、上記カード用コネクタ装置において、前記回動部材は、前記第1カードの挿入に伴って回動する際、前記第2コンタクト端子に接触し、前記第2コンタクト端子を前記第1カードの挿入経路から退避させることが好ましい。この場合には、回動部材の回動に伴って第2コンタクト端子を第1カードの挿入経路から離れる方向に移動させることができるので、第1カードと第2コンタクト端子との接触による第2コンタクト端子の損傷を防止することが可能となる。
【0009】
なお、上記カード用コネクタ装置においては、前記ハウジングに回動可能に支持され、前記第2コンタクト端子を保護する保護板を更に具備し、前記保護板は、前記回動部材の回動に伴って回動して前記第2コンタクト端子を前記第1カードの挿入経路から離れる方向に移動させるようにしても良い。この場合には、第1カードの挿入に伴う第2コンタクト端子の損傷を防止することができると共に、カードが挿入されていない状態においても、保護部材で第2コンタクト端子を保護することが可能となる。
【0010】
例えば、上記カード用コネクタ装置において、前記回動部材は、前記第2カードの前端部と当接する当接片と、前記第2カードの上面と接触する接触面とを備える。この場合には、当接片及び接触面という簡単な構成を用いて、第2カードの前端部と当接してスライド部材と共に挿入方向の前方側に移動すると共に、第2カードの装着位置にガイドすることが可能となる。
【0011】
上記カード用コネクタ装置において、前記回動部材は、前記当接片の下面で前記保護板と接触し、前記保護板を回動させることが好ましい。この場合には、第2カードと当接する当接片を用いて保護部材を回動させることができるので、当接片に2つの機能を持たせることができ、回動部材の構造を簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回動部材が、第2カードの挿入に伴ってスライド部材と共に移動して第2カードを装着位置にガイドする一方、第2カードよりも寸法が長い第1カードの挿入に伴って回動してその挿入を許容することから、第1カードの挿入に伴う回動部材の奥行き方向の移動のための空間を設ける必要がないので、装置の奥行き方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態に係るカード用コネクタ装置(以下、単に「コネクタ」という)1は、2種類のカードを選択的に装着可能とするものであり、具体的には、第1カードとしてのカードAと、このカードAより挿入方向に沿った長さ方向の寸法が短く、幅方向の寸法も短い第2カードとしてのカードBとを選択的に装着可能とする。なお、カードA、Bは、いずれもコネクタ1に対する挿入方向の前方部下面に、信号を送受信するために使用される複数の接触パッドが設けられている。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係るコネクタ1の外観を示す斜視図である。なお、以下においては、適宜、図1に示す紙面上方側を「コネクタ1の前方側」又は単に「前方側」と呼び、同図に示す紙面下方側を「コネクタ1の後方側」又は単に「後方側」と呼ぶものとする。また、図1に示す紙面右方側を「コネクタ1の右方側」又は単に「右方側」と呼び、同図に示す紙面左方側を「コネクタ1の左方側」又は単に「左方側」と呼ぶものとする。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成型して形成されるハウジング2と、金属薄板材料に打ち抜き加工及び折り曲げ加工などを施して形成されるカバー部材3とを備えている。ハウジング2は、概して偏平な直方体形状を有しており、主にその上方側及び前方側に開口した空間を有している。カバー部材3は、ハウジング2の上方側の開口部に対応する形状を有しており、ハウジング2の上方側から被せられる。これらを組み合わせることにより、コネクタ1は、前方側に開口した形状となり、この開口部でカード挿入口4が構成される。なお、カバー部材3は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成型して形成しても良い。
【0016】
カバー部材3の上面には、一対の付勢片301が形成されている。これらの付勢片301は、僅かに下方側に折り曲げられている。これらの付勢片301は、カードAが挿入されていない状態で後述するシャッタ部材5の一部を収容すると共に、カードAが挿入された状態でその上面を付勢する。このようなカバー部材3は、例えば、カバー部材3の所定位置に開口部を形成する一方、この開口部に係合する係合片をハウジング2に設け、これらを係合させることでハウジング2に取り付けられる。
【0017】
以下、本実施の形態に係るコネクタ1の内部の構成について説明する。図2及び図3は、それぞれ本実施の形態に係るコネクタ1の内部の構成を説明するための斜視図及び上面図である。図4は、図2及び図3に示すコネクタ1を前方側から示す図である。なお、図2〜図4においては、図1に示す状態のコネクタ1からカバー部材3を取り除いた場合について示している。
【0018】
図2及び図3に示すように、ハウジング2の内部には一定の空間が形成されており、この空間の一部で2種類のカードが装着可能な空間(以下、適宜「カード装着空間」という)が構成される。このカード装着空間には、2種類のカードに対応するコンタクト端子(以下、「コンタクト」という)、カード装着空間におけるカードAの挿入経路を遮蔽すると共に、カードBの挿入経路を規定するシャッタ部材5、双方のカードと共にスライド移動可能なスライド部材6、挿入されたカードに応じて回動する回動部材7、並びに、カードB用のコンタクトを保護するための保護部材8が配設されている。
【0019】
ハウジング2内のカード装着空間において、シャッタ部材5は、カード挿入口4の僅かに内部側(前方側)の位置に配設されている。また、スライド部材6は、このシャッタ部材5よりも更に内部側(前方側)の位置に配設されている。そして、回動部材7は、このスライド部材6の後方側の端部近傍に回動可能に取り付けられている。2種類のカードに対応するコンタクトは、ハウジング2におけるカード挿入口4からのカードの挿入経路上に適宜配設されている。保護部材8は、カードB用のコンタクトの近傍に配設されている。
【0020】
ハウジング2は、コネクタ1の底面部を構成するベース部201と、コネクタ1の側端部において、このベース部201から上方側に垂直に立設された側壁部202とを有している。ベース部201には、詳細について後述するように、2種類のカードに対応するコンタクトが設けられると共に、上述した保護部材8が一定範囲内で回動可能に取り付けられている。
【0021】
側壁部202における後方側の端部近傍の位置には、後述するシャッタ部材5の軸501を支持する孔203が形成されている。また、側壁部202の後方側端部の内側面は、カード挿入口4の一部を規定するものであり、カードAの挿入をガイドする第1ガイド部204と、カードBの挿入をガイドする第2ガイド部205とが形成されている。
【0022】
図4に示すように、第1ガイド部204は、側壁部202の後方側端部の内側面における上方側の2/3程度の範囲に形成されており、挿入時におけるカードAの側面及び下面をガイドするように構成されている。なお、挿入時におけるカードAの上面は、カバー部材3の下面でガイドされる。一方、第2ガイド部205は、第1ガイド部204よりも下方側であって、ハウジング2のベース部201の一部と共に形成され、挿入時におけるカードBの側面及び下面をガイドするように構成されている。
【0023】
側壁部202における後方側端部の近傍には、僅かに内側に延出する一対の規制壁206が設けられている。この規制壁206は、スライド部材6の後方側への移動を規制するものである。左方側の規制壁206の上端部には、後述するスライド部材6の停止位置を決めるための係止部材9の一端を係止する係止穴206aが形成されている。この係止穴206aは、係止部材9の一端が上方側から差し込まれるように構成されている。
【0024】
シャッタ部材5は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成型して形成される。シャッタ部材5は、コネクタ1の左右方向の略全域に亘って延在し、図4に示すように、カード挿入口4の上方側の領域に臨む位置に配設されている。シャッタ部材5には、コネクタ1の側方側に延出する軸501が形成されている。この軸501をハウジング2の孔203に挿通することで、シャッタ部材5は、ハウジング2に回動可能に支持されている。そして、この軸501を回動支点として、上方側部分がコネクタ1の後方側に倒れるようにして回動し、カードAの挿入経路を開放する。この軸501には、シャッタ部材5を図2〜図4に示す初期位置に復帰させる付勢力を付与する不図示のコイルばねが取り付けられている。シャッタ部材5は、カードAの挿入に伴い、このコイルばねの付勢力に抗して回動するように構成されている。なお、初期状態におけるシャッタ部材5の下面には、カードBの挿入経路を規定する凹部502が形成されている。
【0025】
スライド部材6は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成型して形成される。スライド部材6は、コネクタ1の前方側に配置され、コネクタ1の左右方向に延在する当接部601と、この当接部601の側端部から後方側に延出する一対の腕部602、603とを有している。これらの当接部601と、腕部602、603とにより、概してコネクタ1の後方側に開口したコ字形状を有し、この開口した部分にコネクタ1に挿入されたカードAが入り込むように構成されている。スライド部材6は、このようにカードAを受け入れた状態で前方側に移動してカードAをその装着位置にガイドする役割を果たす。なお、スライド部材6は、一端がハウジング2に固定された不図示の付勢ばねの他端により前方側に付勢された状態となっている。
【0026】
当接部601の後方側の面には、コネクタ1に挿入されたカードAの前端部が当接する。腕部602、603の下端部は、当接部601の下端部よりも下方側に延出しており、ハウジング2のベース部201に接触している。カードA、Bの挿入に伴い、スライド部材6は、腕部602、603の下端部をベース部201に摺接させながらスライド移動可能となっている。なお、腕部602、603の下方側には、回動部材7を収容する空間が形成されている。
【0027】
左方側の腕部602の後端部近傍における上面には、スライド部材6の停止位置を決めるための係止部材9の一端が係合するガイド溝604が形成されている。ガイド溝604は、図3に示すように、概してハート形状を有するハート形カムの左方側に配置される第1ガイド溝604a、右方側に配置される第2ガイド溝604b、並びに、第1及び第2ガイド溝604a、bに連結され、係止部材9の一端を係止する係止部を有する凹み溝604cで構成される。このガイド溝604における係止部材9の位置に応じてスライド部材6の位置が決定される。なお、腕部602、603の後端部の下端部近傍には、後述する回動部材7の軸704を支持する孔(不図示)が形成されている。
【0028】
回動部材7は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成型して形成され、コネクタ1の左右方向に延在するガイド部701と、このガイド部701から後方側に延出する一対の腕部702、703とを有している。ガイド部701は、コネクタ1に挿入されたカードBの前端部と当接すると共に、その上面に接触することで当該カードBの位置を規制する。腕部702、703の後方側の端部近傍には、コネクタ1の側方側に延出する軸704が設けられている。この軸704をスライド部材6の孔に挿通することで、回動部材7は、腕部702、703の下方側の空間内でスライド部材6に回動可能に支持されている。回動部材7は、カードBの挿入時において、スライド部材6と共に移動してカードBをその装着位置に案内する役割を果たす。なお、この回動部材7の構成については後述する。
【0029】
図5及び図6は、それぞれ本実施の形態に係るコネクタ1の内部の構成を説明するための斜視図及び上面図である。なお、図5及び図6においては、図2及び図3に示す状態のコネクタ1からシャッタ部材5、スライド部材6、回動部材7及び係止部材9を取り除いた場合について示している。
【0030】
図5に示すように、ハウジング2のベース部201の中央近傍には、矩形状の開口部207が形成されている。この開口部207の前方側及び後方側の端面に、コネクタ1の左右方向に整列して複数のカードB用のコンタクト(以下、「カードB用コンタクト」という)208、209が設けられている。カードB用コンタクト208は、基端部がベース部201に固定される一方、先端部がコネクタ1の前方側であって僅かに上方側に延在し、一定範囲で上下方向に揺動可能となっている。同様に、カードB用コンタクト209は、基端部がベース部201に固定される一方、先端部がコネクタ1の後方側であって僅かに上方側に延在し、一定範囲で上下方向に揺動可能となっている。これらのカードB用コンタクト208、209の先端部は、下方側に折り曲げられており、その折曲部近傍で装着されたカードBの接触パッドと接触するように構成されている。
【0031】
保護部材8は、カードB用コンタクト208、209を上方側に露出させた状態で開口部207に配置されている。保護部材8は、後方側の端部近傍で側方側に延出する不図示の軸を有し、この軸を開口部207の後端部近傍の側方側の端面に形成された穴に挿入することでベース部201に取り付けられる。保護部材8は、この軸を回動支点として、その前方側の端部が一定範囲で回動可能に構成されている。また、保護部材8は、不図示のコイルばねにより上方側に付勢され、初期状態においてカードBの挿入経路上に浮上した状態となっている。保護部材8の所定位置には、複数の開口部210が形成されている。カードB用コンタクト208、209は、この開口部210を介してその先端部を上方側に露出可能となっている。
【0032】
開口部207の前方側には、ベース部201からせり上がり、コネクタ1に挿入されたカードAの前方部の下面をガイドするガイド部211が設けられている。このガイド部211の側方側端部には、挿入されたカードAの側面をガイドするガイド壁211a、bが設けられている。また、ガイド211の前方側端部には、複数のカードA用のコンタクト(以下、「カードA用コンタクト」という)212を保持する保持壁部213が設けられている。なお、この保持壁部213は、ハウジング2の前面部の一部を構成する。
【0033】
カードA用コンタクト212は、基端部が保持壁部213に固定される一方、先端部がコネクタ1の後方側であって僅かに上方側に延在し、一定範囲で上下方向に揺動可能となっている。カードA用コンタクト212の先端部は、カードB用コンタクト208、209と同様に、下方側に折り曲げられており、その折曲部近傍でカードAの接触パッドと接触するように構成されている。なお、カードA用コンタクト212の前方側の一端は、保持壁部213の前方側に導出されている。
【0034】
保持壁部213には、コネクタ1の後方側に延出する保護板部214が設けられている。保護板部214の後方側端部は、カードA用コンタクト212の先端よりも後方側に延出している。この保護板部214は、カードAと異なるカードの誤挿入に伴うカードA用コンタクト212の破損を防止するためのものである。保護板部214の所定位置には、カードA用コンタクト212に対応する位置に複数のスリット215が形成されている。カードA用コンタクト212は、このスリット215を介して上方側に露出できるように構成されている。
【0035】
図7は、本実施の形態に係るコネクタ1の断面図である。図7においては、図3に示す一点鎖線Aから左方側の断面を示している。なお、図7においては、コネクタ1にカードA、Bのいずれも挿入されていない状態、所謂、初期状態について示している。また、図7においては、同図に示す右方側がコネクタ1の前方側に相当し、同図に示す左方側がコネクタ1の後方側に相当する。
【0036】
図7に示すように、カードB用コンタクト208、209は、ベース部201の中央近傍に形成された開口部207の端面に設けられ、それぞれ前方側、後方側に延出している。保護部材8は、これらのカードB用コンタクト208、209の近傍で、その前方側部分を上方側に延出した状態でその後端部近傍がベース部201に取り付けられている。回動部材7は、その前方側部分を上方側に延出した状態でその後端部近傍がスライド部材6に取り付けられている。回動部材7の前端部は、保護部材8の中央近傍の上方側に配置されており、後述するように、カードAの挿入に伴って保護部材8を下方側に押圧可能に構成されている。
【0037】
一方、ガイド部211は、開口部207の前方側に設けられている。保持壁部213は、ガイド部211の前方側端部近傍に立設されており、その上端部近傍でカードA用コンタクト212を保持している。カードA用コンタクト212は、その先端部を後方側に延出した状態で保持されており、その前方側の端部は、コネクタ1の前面部から外側に導出されている。保護板部214は、カードA用コンタクト212の先端部よりも僅かに後方側の位置まで延出しており、その先端部にカードA用コンタクト212の先端部の傾斜面に対応するテーパ面214aが形成されている。
【0038】
ここで、本実施の形態に係るコネクタ1が有する回動部材7の構成について説明する。図8は、コネクタ1が有する回動部材7の上面図(a)及び下面図(b)である。図9は、コネクタ1が有する回動部材7の側面図(a)及び側断面図(b)である。なお、図8及び図9においては、同図に示す上方側がコネクタ1の前方側に相当し、同図に示す下方側がコネクタ1の後方側に相当する。また、図9(b)においては、図8(a)に示す一点鎖線Bから左方側の断面について示している。
【0039】
図8(a)、(b)に示すように、回動部材7においては、コネクタ1の左右方向に延在するガイド部701の側端部から一対の腕部702、703が後方側に延出している。腕部702と、腕部703との間は、カードBの幅方向の寸法と略同一の長さに設定されており、後述するように、カードBの挿入時にカードBの前方部を受け入れ、その側面部をガイドする。
【0040】
腕部702、703の上面における側方側端部には、コネクタ1に挿入されたカードAの側端部をガイドするガイド壁702a、703aが立設されている。これらのガイド壁702a、703aの上面は、カードBが挿入された場合にスライド部材6の腕部602、603の下面と当接して回動部材7の回動を規制する。
【0041】
また、腕部702には、左方側に突出する係止片702bが設けられている。この係止片702bは、左方側の軸704に取り付けられた捻りコイルばね10の一端を係止する。なお、この捻りコイルばね10は、他端をスライド部材7に係止される。この捻りコイルばね10の付勢力により、回動部材7が上方側に押し上げられている。
【0042】
図8(b)に示すように、ガイド部701の下面の所定位置には、一対の当接片701a、bが設けられている。これらの当接片701a、bは、図9(a)、(b)に示すように、ガイド部701の下面から下方側に僅かに突出するように設けられている。これらの当接片701a、bは、その後方側端部に、コネクタ1に挿入されるカードBの前端部が当接するように構成されている。また、当接片701a、bは、コネクタ1に対するカードAの挿入に伴って、その下面で保護部材8を下方側に押圧するように構成されている。
【0043】
また、図8(b)に示すように、ガイド部701の下面の後方側端部には、接触面としてのガイド面701cが設けられている。ガイド面701cは、コネクタ1に挿入されるカードBの上面と接触し、上方側への移動を規制するためのものである。ガイド面701cは、図9(b)に示すように、その後方側がガイド部701の下面から僅かに上方側に傾斜している。このガイド面701cの表面がカードBの上面と接触することで、カードBの上方側への移動が規制されることとなる。
【0044】
次に、本実施の形態に係るコネクタ1に対して各カードを装着する際の動作について説明する。図10〜図15は、コネクタ1に対してカードAを装着する際の動作を説明するための図である。図16〜図21は、コネクタ1に対してカードBを装着する際の動作を説明するための図である。なお、図10〜図21においては、説明の便宜上、カバー部材3を省略している。
【0045】
まず、コネクタ1に対してカードAを装着する際の動作について説明する。図10は、本実施の形態に係るコネクタ1に対してカードAを挿入した場合の上面図である。図11は、図10に示す状態のコネクタ1の断面図である。なお、カードAの挿入前においては、コネクタ1は、図3及び図7に示す状態となっている。
【0046】
コネクタ1に対してカードAを装着する場合には、ハウジング2に設けられた第1ガイド部204にカードAの側面及び下面を合わせた状態でコネクタ1の内部にカードAを押し込む(図2参照)。このようにコネクタ1の内部に押し込む過程で、カードAの前端部がシャッタ部材5に当接する。これにより、シャッタ部材501が後方側に倒れるように回動する。
【0047】
この状態からカードAを押し込み、図10及び図11に示すように、その前端部が回動部材7に到達すると、カードAが回動部材7を押し下げる。このとき、回動部材7のガイド部701の下面がカードB用コンタクト208に接触すると共に、当接片701a、bが保護部材8に接触する。そして、カードAを更に押し込むと、回動部材7がガイド部701でカードB用コンタクト208を押し下げると共に、当接片701a、bで保護部材8を押し下げながら、前方側に移動する。保護部材8が一定位置以上に押し下げられると、その下面でカードB用コンタクト209も押し下げられる。
【0048】
このように本実施の形態に係るコネクタ1においては、カードAの挿入に伴って回動部材7が回動する際、回動部材7の下面をカードB用コンタクト208に接触させ、カードB用コンタクト208をカードAの挿入経路から離れる方向に移動させている。また、回動部材7の回動に伴って保護部材8を回動させ、この回動によりカードB用コンタクト209をカードAの挿入経路から離れる方向に移動させている。これにより、カードAとカードB用コンタクト208、209とが接触することによるカードB用コンタクト208、209の損傷を防止することが可能となっている。
【0049】
図10及び図11に示す状態からカードAを更に押し込み、図12及び図13に示すように、その先端部がスライド部材6の当接部601に到達すると、カードAの前端部が当接部601に当接する。なお、この場合において、回動部材7は、カードAの挿入経路から下方側に退避した状態となっている。また、カードB用コンタクト208、209は、保護部材8により下方側に押圧され、カードAの下面に接触しない位置に配置されている。
【0050】
図12及び図13に示す状態からカードAを更に押し込むと、不図示の付勢ばねの付勢力に抗して、スライド部材6がカードAと共に前方側に移動する。このカードAの移動に伴い、図15に示すように、その前方部がカードA用コンタクト212に対応する位置に到達し、接触パッドにカードA用コンタクト212が接触した状態となる。なお、このスライド部材6の移動に応じて係止部材9の前端部が、ガイド溝604の第1ガイド溝604a内を摺動する。そして、その前端部が、第1ガイド溝604aの後端部まで到達した後、ユーザがカードAを押し込む手を離すと、図14に示すように、係止部材9の前端部が凹み溝604cの係止部に入り込んでロック状態となる。
【0051】
なお、図14及び図15に示すロック状態から、カードAを抜き取る場合には、カードAを更に押し込むことにより、係止部材9の前端部を凹み溝604cの係止部から出し、第2ガイド溝604bに移動させる。これにより、ロック状態が解除される。ロック状態が解除されると、不図示の付勢ばねの付勢力に応じてスライド部材6が後方側に押し出され、図12に示す位置に配置される。ユーザは、この状態のカードAを後方側に引っ張ることにより、コネクタ1からカードAを抜き取ることが可能となる。このようにしてコネクタ1にカードAを装着する際の動作と、抜き取る際の動作が行われる。
【0052】
次に、本実施の形態に係るコネクタ1に対してカードBを装着する際の動作について説明する。図16は、本実施の形態に係るコネクタ1に対してカードBを挿入した場合の上面図である。図17は、図16に示す状態のコネクタ1の断面図である。なお、カードBの挿入前において、コネクタ1は、図3及び図7に示す状態となっている。
【0053】
コネクタ1に対してカードBを装着する場合には、ハウジング2に設けられた第2ガイド部205にカードBの側面及び下面を合わせた状態でコネクタ1の内部にカードBを押し込む(図2参照)。このようにコネクタ1の内部に押し込む過程で、カードBは、図16及び図17に示すように、その前方部がシャッタ部材5の下方側を通過する。具体的には、シャッタ部材5の下端部に設けられた凹部502を通過する。なお、この場合において、カードBが接触することなく通過するため、シャッタ部材5が回動することはない。
【0054】
図16及び図17に示す状態からカードBを押し込むと、その前方部が回動部材7の下方側に入り込む。そして、図18及び図19に示すように、回動部材7の当接片701a、bに到達すると、カードBの前端部が当接片701a、bに当接する。このとき、カードBの前方部は、図18に示すように、回動部材7の腕部702、703の間に入り込み、側方側への移動を規制された状態となっている。また、回動部材7のガイド部701のガイド面701cは、カードBの上面に接触している。一方、回動部材7の腕部702、703のガイド壁702a、703aの上面は、スライド部材6の腕部602、603の下面に当接し、回動部材7の回動が規制された状態となっている。このため、ガイド面701cにより、カードBの上方側への移動が規制され、適切にカードBの装着位置にガイドされることとなる。
【0055】
図18及び図19に示す状態からカードBを更に押し込むと、不図示の付勢ばねの付勢力に抗して、カードBと共に回動部材7が前方側に移動する。そして、この回動部材7が取り付けられているスライド部材6も一緒に前方側に移動する。このとき、カードBは、その下面で保護部材8を押し下げながら、前方側に移動している。このカードBの移動に伴い、図21に示すように、その前方部がカードB用コンタクト208、209に対応する位置に到達し、接触パッドにカードB用コンタクト208、209が接触した状態となる。なお、カードAの場合と同様に、スライド部材6の移動に応じて係止部材9の前端部が、ガイド溝604の第1ガイド溝604a内を摺動する。そして、その前端部が、第1ガイド溝604aの後端部まで到達した後、ユーザがカードBを押し込む手を離すと、図20に示すように、係止部材9の前端部が凹み溝604cの係止部に入り込んでロック状態となる。
【0056】
なお、図20及び図21に示すロック状態から、カードBを抜き取る場合には、カードBを更に押し込むことにより、係止部材9の前端部を凹み溝604cの係止部から出し、第2ガイド溝604bに移動させる。これにより、ロック状態が解除される。ロック状態が解除されると、不図示のコイルばねの付勢力に応じてスライド部材6が後方側に押し出され、図18に示す位置に配置される。ユーザは、この状態のカードBを後方側に引っ張ることにより、コネクタ1からカードBを抜き取ることが可能となる。このようにしてコネクタ1にカードBを装着する際の動作と、抜き取る際の動作が行われる。
【0057】
このように本実施の形態に係るコネクタ1によれば、スライド部材6に支持される回動部材7が、カードBの挿入に伴ってスライド部材6と共に移動してカードBを装着位置にガイドする一方、カードBよりも長さ方向の寸法が長いカードAの挿入に伴って回動してその挿入を許容することから、カードAの挿入に伴う回動部材7の奥行き方向の移動のための空間を設ける必要がないので、装置の奥行き方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態に係るコネクタ1においては、回動部材7が、カードBの挿入時に、カードBの前端部及び上面部と接触した状態でスライド部材6と共に前方側に移動してカードBの装着位置にガイドすることから、カードBを上方側に移動させることなく、適切に装着位置に配置することが可能となる。特に、本実施の形態に係るコネクタ1においては、カードBの側面部と接触してカードBの側方側への移動を規制している。これにより、より正確にカードBをその装着位置に配置することが可能となる。
【0059】
さらに、本実施の形態に係るコネクタ1においては、回動部材7が、カードBの前端部と当接する当接片701a、bと、カードBの上面と接触するガイド面701cとを備えている。これにより、当接片701a、b及びガイド面701cという簡単な構成を用いて、カードBの前端部と当接してスライド部材6と共に挿入方向の前方側に移動すると共に、カードBの装着位置にガイドすることが可能となる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態においては、カードBをその装着位置にガイドする際、コネクタ1に挿入されたカードBの前端部に回動部材7の当接片701a、bを当接させ、カードBの上面にガイド面701cを接触させる場合について示している。しかし、カードBと、回動部材7との接触の態様については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。カードBを所定の装着位置に適切にガイドすることができれば、いかなる構成を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコネクタの外観を示す斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るコネクタの内部の構成を説明するための斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るコネクタの内部の構成を説明するための上面図である。
【図4】図2及び図3に示すカード用コネクタを前方側から示す図である。
【図5】上記実施の形態に係るコネクタの内部の構成を説明するための斜視図である。
【図6】上記実施の形態に係るコネクタの内部の構成を説明するための上面図である。
【図7】上記実施の形態に係るコネクタの断面図である。
【図8】上記実施の形態に係るコネクタが有する回動部材の上面図(a)及び下面図(b)である。
【図9】上記実施の形態に係るコネクタが有する回動部材の側面図(a)及び側断面図(b)である。
【図10】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードAを装着する際の動作を説明するための図である。
【図11】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードAを装着する際の動作を説明するための図である。
【図12】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードAを装着する際の動作を説明するための図である。
【図13】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードAを装着する際の動作を説明するための図である。
【図14】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードAを装着する際の動作を説明するための図である。
【図15】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードAを装着する際の動作を説明するための図である。
【図16】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードBを装着する際の動作を説明するための図である。
【図17】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードBを装着する際の動作を説明するための図である。
【図18】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードBを装着する際の動作を説明するための図である。
【図19】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードBを装着する際の動作を説明するための図である。
【図20】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードBを装着する際の動作を説明するための図である。
【図21】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードBを装着する際の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1 カード用コネクタ装置(コネクタ)
2 ハウジング
201 ベース部
202 側壁部
203 孔
204 第1ガイド部
205 第2ガイド部
206 規制壁
207 開口部
208、209 カードB用コンタクト
210 開口部
211 ガイド部
212 カードA用コンタクト
213 保持壁部
214 保護板部
215 スリット
3 カバー部材
301 付勢片
4 カード挿入口
5 シャッタ部材
501 軸
502 凹部
6 スライド部材
601 当接部
602、603 腕部
603 開口部
604 ガイド溝
7 回動部材
701 ガイド部
701a、b 当接片
701c ガイド面
702、703 腕部
704 軸
8 保護部材
9 係止部材
10 捻りコイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カード又はこの第1カードよりも長さ方向及び幅方向の寸法が短い第2カードを選択的に装着可能なカード装着空間が形成されるハウジングと、前記カード装着空間に装着される前記第1カード又は第2カードと共にスライド移動可能なスライド部材と、前記ハウジングに設けられ、前記第1カードの接触部に接触する第1コンタクト端子及びこの第1コンタクト端子よりもカード挿入口側で前記第2カードの接触部と接触する第2コンタクト端子と、前記スライド部材における前記カード挿入口側の一部に回動可能に支持される回動部材とを備え、
前記回動部材は、前記第1カードの挿入に伴って回動して前記第1カードの挿入経路から退避する一方、前記第2カードの挿入時には回動することなく前記第2カードの挿入経路に位置し、前記第2カードの前端部及び上面部と接触した状態で前記スライド部材と共に挿入方向の前方側に移動して前記第2カードを前記第2カードの装着位置にガイドすることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
前記回動部材は、前記第2カードの挿入時に、前記第2カードの側面部と接触して第2カードの側方側への移動を規制することを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ装置。
【請求項3】
前記回動部材は、前記第1カードの挿入に伴って回動する際、前記第2コンタクト端子に接触し、前記第2コンタクト端子を前記第1カードの挿入経路から離れる方向に移動させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のカード用コネクタ装置。
【請求項4】
前記ハウジングに回動可能に支持され、前記第2コンタクト端子を保護する保護板を更に具備し、前記保護板は、前記回動部材の回動に伴って回動して前記第2コンタクト端子を前記第1カードの挿入経路から離れる方向に移動させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ装置。
【請求項5】
前記回動部材は、前記第2カードの前端部と当接する当接片と、前記第2カードの上面と接触する接触面とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカード用コネクタ装置。
【請求項6】
前記回動部材は、前記当接片の下面で前記保護板と接触し、前記保護板を回動させることを特徴とする請求項5記載のカード用コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−181902(P2009−181902A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21693(P2008−21693)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】