説明

カード用コネクタ

【課題】端子の基端部から先端部に亘(わた)る範囲において特性インピーダンスを適切にコントロールすることができ、信号伝送路全体における特性インピーダンスを整合させることができ、高速信号伝送に使用してもクロストークが生じることがなく、低背化することができ、構造を簡素化し、コストを低減することができるようにする。
【解決手段】接続端子は、ハウジングに保持される基端部と、基端部から延出する可撓(とう)部分と、可撓部分の先端に接続された先端部とを備え、可撓部分は、基端部側の幅が広く、先端部側の幅が狭い形状を備え、ハウジングは、少なくとも可撓部分の範囲に対応するグランド板を備え、カードがハウジングに収容され、先端部がカードの端子部材と接触すると、可撓部分は、その先端に行くに従ってグランド板との間隔が短くなるように変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant:個人用携帯情報端末)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等の電子機器においては、SIM(Subscriber Identity Module)カード、MMC(Multi Media Card)(R)、SD(Secure Digital)(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(xD−Picture card)(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flashメモリカード、マイクロSD(R)カード等の各種メモリカードを利用するために、カード用コネクタを備えている。
【0003】
近年ではメモリカードの記憶容量の増加に伴い、電子機器とメモリカードとの間でのデータの伝送速度の高速化が必要とされるので、カード用コネクタにおける特性インピーダンスを整合させ、クロストークを低減させるためにグランド板を配設する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図9は従来のカード用コネクタを示す図である。
【0005】
図において、811は、カード用コネクタのハウジングであり、絶縁性材料から成り、プリント基板891の表面に取付けられている。また、851は、前記ハウジング811に装填(てん)された複数のピン端子であり、下端がプリント基板891に形成されたスルーホール893に挿入され、はんだ付によって接続される。さらに、901はメモリカードであり、前記ハウジング811の凹溝812内に挿入される。前記メモリカード901は複数の端子収容孔(こう)951を備え、各端子収容孔951に対応するピン端子851の先端が収容されることによって、電気的に接続される。
【0006】
また、861は金属製のグランド板であり、ハウジング811から露出するピン端子851のはんだ付部分を覆うようにハウジング811に取付けられる。そして、グランド板861のフランジ部862が、ハウジング811及びプリント基板891を貫通するボルト863によって固定される。なお、該ボルト863の下端はプリント基板891のグランドパターン892に電気的に接続される。
【0007】
これにより、ピン端子851の露出部分がグランドパターン892に接続されたグランド板861によって覆われるので、特性インピーダンスを整合させることができる。
【特許文献1】特開平5−189625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のカード用コネクタは、ピン端子851の露出部分であるはんだ付部分のみをグランド板861で覆うようになっているので、特性インピーダンスを整合させることができない。近年の広く普及しているメモリカードは、前記端子収容孔951を有しておらず、一面にコンタクトパッドが並列に配設された平板状のカードである。そして、カード用コネクタの端子は、細長い板から成るカンチレバー状の部材であり、その基端部がハウジングに固定され、先端部が端子自体のばね性によってカードのコンタクトパッドに押付けられるようになっている。この場合、カードの寸法公差を許容する必要があるので、端子の基端部から先端部までの長さをある程度長くする必要がある。そのため、端子の基端部から先端部に亘(わた)る範囲の特性インピーダンスをコントロールしないとカード用コネクタにおける特性インピーダンスを整合させることができない。
【0009】
本発明は、前記従来のカード用コネクタの問題点を解決して、接続端子の可撓(とう)部分を、基端部側の幅が広く、先端部側の幅が狭い形状とし、可撓部分に少なくとも対応する大きさのグランド板を配設し、カードが接続端子と接触すると、先端ほどグランド板との間隔が短くなるように可撓部分を変形させることによって、端子の基端部から先端部に亘る範囲において特性インピーダンスを適切にコントロールすることができ、信号伝送路全体における特性インピーダンスを整合させることができ、高速信号伝送に使用してもクロストークが生じることがなく、低背化することができ、構造が簡素でコストが低いカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明のカード用コネクタにおいては、端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子とを有するカード用コネクタであって、前記接続端子は、前記ハウジングに保持される基端部と、該基端部から延出する可撓部分と、該可撓部分の先端に接続された先端部とを備え、前記可撓部分は、基端部側の幅が広く、先端部側の幅が狭い形状を備え、前記ハウジングは、少なくとも前記可撓部分の範囲に対応するグランド板を備え、前記カードがハウジングに収容され、前記先端部が前記カードの端子部材と接触すると、前記可撓部分は、その先端に行くに従ってグランド板との間隔が短くなるように変形する。
【0011】
本発明の他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記可撓部分とグランド板との間隔は、前記接続端子を信号ラインとし、前記グランド板をグランドラインとする信号の伝送路の特性インピーダンスが一定となるように、前記可撓部分の幅に応じて変化する。
【0012】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記接続端子とグランド板とは、マイクロストリップライン構造を形成する。
【0013】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記接続端子のうちの互いに隣接する一対の接続端子とグランド板とは、差動信号を伝送するマイクロストリップライン構造を形成する。
【0014】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記接続端子は、前記ハウジングの底壁部の上面側に配設され、前記グランド板は前記底壁部の下面に配設される。
【0015】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記ハウジングの上側にはカバー部材が取付けられ、前記接続端子は前記カバー部材の天板部に近接する位置に配設され、前記天板部が前記グランド板として機能する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カード用コネクタは、接続端子の可撓部分を、基端部側の幅が広く、先端部側の幅が狭い形状とし、可撓部分に少なくとも対応する大きさのグランド板を配設し、カードが接続端子と接触すると、先端ほどグランド板との間隔が短くなるように可撓部分を変形させるようになっている。これにより、端子の基端部から先端部に亘る範囲において特性インピーダンスを適切にコントロールすることができ、信号伝送路全体における特性インピーダンスを整合させることができ、高速信号伝送に使用してもクロストークが生じることがなく、低背化することができ、構造を簡素化し、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの分解図、図2は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの下面図、図3は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタのハウジングの上面図、図4は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの端子の上面図である。
【0019】
図において、1は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、図示されない電子機器に取付けられる。そして、前記カード用コネクタ1の内部には後述されるカード101が挿入され、前記カード用コネクタ1を介して、前記電子機器にカード101が装着される。なお、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
【0020】
また、カード101は、例えば、SIMカード、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、T−Flash(Trans−Flash)メモリカード、マイクロSD(R)カード等のICカードであり、いかなる種類のカードであってもよいが、本実施の形態においては、マイクロSD(R)カードであるものとして説明する。
【0021】
なお、本実施の形態において、カード用コネクタ1の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ1又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ1又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0022】
ここで、前記カード用コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、金属等の導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11の上側に取付けられたカバー部材としてのシェル61とを有する。該シェル61は、ハウジング11及び該ハウジング11に収容されたカード101の少なくとも一部の上方を覆うようになっている。そして、前記カード用コネクタ1は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器に取付けられ、前方(図1における左下方)からカード101が挿入される。
【0023】
図に示されるように、ハウジング11は、カード101の挿入方向に関して手前側となる前縁側(図3における下側)が略U字状又は略コ字状に切取られた形状を備える底壁部11b、及び、該底壁部11bの奥部において奥側(図3における上側)の縁に沿って延在し、底壁部11bから立設する奥壁部11aを有する。ここで、底壁部11bの上面には、接続端子としての端子51が収容される端子収容溝11eが、前後方向(図3における上下方向)に延在するように、複数本形成されている。なお、各端子収容溝11eの前縁側の部分には、端子51を保持する端子保持部11fが形成されている。
【0024】
そして、各端子51は、金属等の導電性及び弾性を備える材料の板材から一体的に形成され、前記端子保持部11fに保持される基端部51aと、該基端部51aから奥壁部11aに向けて、すなわち、後方(図1における右上方)に延出する可撓部分としてのアーム部51dと、該アーム部51dの先端に接続された先端部としての接触部51bと、前記基端部51aから前方に延出するソルダーテール部51cとを備える。
【0025】
前記アーム部51dは、図4に示されるように、先端に行くに従って幅が狭くなる先細形状の平面形状を備え、基端部51a側の部分が最も幅の広い幅広部51eであり、接触部51b側の部分が最も幅の狭い幅狭部51fである。換言すると、前記アーム部51dの平面形状は、テーパ形状である。なお、図4に示される例において、前記アーム部51dの両側縁は、直線状に形成されているが、曲線状に形成されていてもよい。つまり、前記アーム部51dの平面形状は、幅広部51eから幅狭部51fまでの間に幅が単調減少するような形状であれば、いかなる形状であってもよい。なお、前記アーム部51dの厚さ寸法、すなわち、板厚は幅広部51eから幅狭部51fまでの間で均一である。
【0026】
また、前記アーム部51dは基端部51aに対して斜めに接続されており、端子51がハウジング11に装填された状態では、端子保持部11fに保持された基端部51aが底壁部11bの下面に対してほぼ平行となるのに対し、前記アーム部51dは、底壁部11bの下面に対して、先端に近付くに従って上昇するように傾斜する。
【0027】
そして、前記接触部51bは、アーム部51dの先端から上方に向けて突出するように湾曲した側面形状を備える。そのため、端子51がハウジング11に装填された状態で、かつ、カード101が挿入されていない状態では、基端部51aが底壁部11bの上面より下方に位置するのに対し、接触部51bの少なくとも一部は、底壁部11bの上面より上方に突出する。なお、端子51がハウジング11に装填された状態では、上から観ると、基端部51a、アーム部51d及び接触部51bは、すべて端子収容溝11e内に収容される。また、前記接触部51bは、図4に示されるように、その先端を除き、幅が幅狭部51fと同等で、ほぼ均一な平面形状を備える。
【0028】
一方、前記ソルダーテール部51cは、底壁部11bの手前側の縁から前方に、かつ、下面方向に延出し、前記電子機器における後述される配線基板91に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。
【0029】
また、ハウジング11は、底壁部11bの一方の側縁に沿って前後方向に延在する断面L字状の側壁としての第1側壁部11c、及び、底壁部11bの他方の側縁に沿って前後方向に延在する側壁としての第2側壁部11dを有する。該第2側壁部11dの内側にはカード案内機構収容部11gが形成され、該カード案内機構収容部11g内にはカード用コネクタ1内に挿入されたカード101を案内するためのカード案内機構のスライド部材21が前後方向にスライド可能に取付けられている。
【0030】
ここで、スライド部材21は、カード101を保持するためのカード保持部と、移動カム部材としてのスライドカム部とを備える。そして、前記カード保持部がカード101の側面と係合することによって、スライド部材21は、カード101を保持し、該カード101とともに前後方向に移動する。また、前記スライド部材21は、コイルスプリングから成る付勢部材81の付勢力を受け、カード101の挿入方向と反対の方向、すなわち、カード101の排出方向に付勢される。
【0031】
そして、前記カード用コネクタ1は、該カード用コネクタ1内にカード101を挿入する際にも、カード用コネクタ1内からカード101を取出す際にも、カード101を押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものである。このような動作は、押しボタンスイッチの分野におけるオルタネイト動作(位置保持型、プッシュオン・プッシュオフ型)と同様のものである。そして、前記スライド部材21のスライドカム部は、プッシュ/プッシュタイプの動作を行うためのハート状カムのカム機構におけるスライドカムとして機能する。
【0032】
そのため、スライドカム部の上面には、カム溝23が形成され、該カム溝23には固定カム部材としての細長いピン部材71の自由端が係合している。また、該ピン部材71の他端は、固定端として、ハウジング11に掛止され、ピボット結合されている。そして、前記ピン部材71とカム溝23とが協働することによって、カード101とともに移動するスライド部材21にプッシュ/プッシュタイプの動作を行わせるようになっている。これにより、前記カード案内機構は、カード101を挿入方向に押込むプッシュ動作によってカード101が挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材81の付勢力により、前記カード101を終端点から挿入方向と反対の方向に移動させて排出することができる。
【0033】
前記ピン部材71は、シェル61の板ばね66によって上から下方向に付勢されることにより保持されている。前記板ばね66は、シェル61の一部をハウジング11の底壁部11bの方向に押圧可能に折曲げ加工することによって形成されており、ピン部材71は、前記板ばね66とスライド部材21又はハウジング11との間に位置し、スライド部材21又はハウジング11から離脱しないように保持されている。
【0034】
また、カード101の端子部材としてのコンタクトパッドと端子51とが接触していることを検出して、カード101がカード用コネクタ1に装填されていることを検出するカード検出スイッチの第1接点部材52が第1側壁部11cに取付けられ、前記カード検出スイッチの第2接点部材53が奥壁部11aに取付けられている。そして、カード101が挿入されていない状態においては、第1接点部材52と第2接点部材53とは非接触であり、カード検出スイッチは非導通状態、すなわち、オフ(OFF)になっている。また、カード101が挿入されると、第1接点部材52と第2接点部材53とが接触し、カード検出スイッチは導通状態、すなわち、オン(ON)になる。
【0035】
さらに、シェル61は、概略矩(く)形の天板部62と、該天板部62の側縁の複数箇所から立設する複数の側板部64とを有する。該側板部64には、複数の掛止開口63が形成され、シェル61をハウジング11の上側に取付けると、該ハウジング11の奥壁部11a、第1側壁部11c及び第2側壁部11dの外側面に形成された掛止突起13に前記掛止開口63が掛止され、これにより、シェル61がハウジング11に固定される。また、一部の側板部64の下端には、掛止用突片65が形成され、シェル61をハウジング11の上側に取付けると、底壁部11bの下面に前記掛止用突片65が掛止し、これにより、シェル61がハウジング11によって確実に固定される。
【0036】
また、該ハウジング11はグランド板としての金属底板56を備える。該金属底板56は、底壁部11bの下面に取付けられ、図2に示されるように矩形の形状を備える。そして、金属底板56の前後方向(図2における上下方向)の寸法は、端子51のアーム部51dの全長以上であり、図に示される例においては、基端部51aの中間から接触部51bの先端までの寸法以上である。また、金属底板56の幅方向(図2における左右方向)の寸法は、図に示される例においては、幅方向に並んでハウジング11装填された端子51の列における左端に位置する端子51の左側縁から右端に位置する端子51の右側縁までの寸法にほぼ等しい。そして、金属底板56の幅方向の両側からは、取付用帯部57が延出し、該取付用帯部57の先端には掛止突部58が形成されている。該掛止突部58はハウジング11の掛止突起13とともにシェル61の掛止開口63に掛止し、これにより、金属底板56は、ハウジング11に固定されるとともに、シェル61と電気的に接続し、該シェル61と同電位となる。
【0037】
また、前記金属底板56は、底壁部11bの下面に当接するとともに、上又は下から観て、基端部51aの中間から接触部51bの先端までの範囲、及び、端子51の列における左端に位置する端子51の左側縁から右端に位置する端子51の右側縁までの範囲に対応するように配設される。これにより、すべての端子51における基端部51aの中間から接触部51bの先端までの部分の直下に、極めて近接して金属底板56が位置することとなり、すべての端子51についてマイクロストリップライン構造が形成される。
【0038】
なお、すべての端子51についてマイクロストリップライン構造を形成する必要がなく、いくつかの端子51のみを対象としてマイクロストリップライン構造を形成する場合には、金属底板56の幅方向の寸法を短く設定し、かつ、上又は下から観て、対象となる端子51の列における左端に位置する端子51の左側縁から右端に位置する端子51の右側縁までの範囲に対応するように前記金属底板56を配設する。
【0039】
また、端子51の長手方向に関して金属底板56が対応する範囲は、少なくともアーム部51dの全範囲であればよいので、金属底板56の前後方向の寸法を短く設定し、かつ、上又は下から観て、アーム部51dの幅広部51eから幅狭部51fまでの範囲に対応するように前記金属底板56を配設することもできる。
【0040】
なお、前記金属底板56は、必ずしも、ハウジング11と別個に形成された部材である必要はなく、ハウジング11の底壁部11bの下面にめっき、塗布等の方法によって付着形成された金属被膜であってもよい。
【0041】
次に、前記構成のカード用コネクタ1にカード101を挿入した場合の端子51と金属底板56との関係について説明する。
【0042】
図5は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入した状態を示す斜視図、図6は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入した状態の断面図であり図5のA−A矢視断面図である。
【0043】
ここでは、図5及び6に示されるように、カード用コネクタ1は配線基板91の表面に実装されている。この場合、端子51のソルダーテール部51cの下面は、配線基板91の表面に露出する信号線、コンタクトパッド、端子等の相手側端子部材の上面に当接し、はんだ付等によって電気的に接続されている。また、シェル61の掛止用突片65の下面は、配線基板91の表面に露出するグランド線、接地トパッド等の相手側グランド部材92の上面に当接し、はんだ付等によって電気的に接続されている。
【0044】
まず、利用者は、手指等によってカード101をカード用コネクタ1の前方(図5における左下方、図6における左方)から挿入する。なお、カード101は、前端101aがハウジング11の奥壁部11aの方を向き、図示されないコンタクトパッドが配設された面が底壁部11bと対向し、コンタクトパッドが配設されていない面がシェル61の天板部62と対向するような姿勢で挿入される。
【0045】
続いて、利用者がカード101をプッシュして更に押込むと、スライド部材21のカード保持部と係合し、前記カード101は、スライド部材21とともに、奥壁部11aに向けて移動する。この際、前記スライド部材21がコイルスプリングから成る付勢部材81を圧縮する。そして、スライド部材21及びカード101は、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。
【0046】
続いて、利用者がカード101をプッシュする動作を止め、カード101に対する押圧力を解除すると、付勢部材81の反発力によって、スライド部材21及びカード101は奥壁部11aから離脱する向きに移動させられる。そして、スライド部材21のカム溝23と係合しているピン部材71の自由端が、カム溝23の一部に掛止されてスライド部材21の動きを停止させることによって、スライド部材21及びカード101は、図5及び6に示されるように、ロック位置で停止する。これにより、カード101はハウジング11に確実に収容された状態となる。
【0047】
このように、カード101は、ロック位置に保持されることによって、カード用コネクタ1が実装された基板を備える電子機器の演算手段等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード101がロック位置に保持されている場合、カード検出スイッチの第1接点部材52がカード101によって押されて変位し、第2接点部材53と接触しているので、カード検出スイッチはオンになっている。また、カード101の各コンタクトパッドは、対応する端子51の接触部51bと接触して導通している。
【0048】
この場合、図6に示されるように、端子51の接触部51bがカード101のコンタクトパッドによって上から押されるので、端子51は弾性的に変形し、これにより、ばね力を発揮して接触部51bをコンタクトパッドに押圧する。したがって、コンタクトパッドと端子51との接触が確実に維持される。
【0049】
ここで、図6に示されるような端子51の変形状態を微細に観察すると、基端部51a、接触部51b及びソルダーテール部51cは実質的に変形することがなく、主として、平板状のカンチレバーのようなアーム部51dのみが変形していることが見て取れる。しかも、該アーム部51dは、その一部のみが変形するのではなく、幅広部51eから幅狭部51fまでの全体がほぼ均一に変形していることが分かる。これは、前述のように、アーム部51dが、板厚は均一であるが、先端に行くに従って幅が狭くなる先細形状の平面形状、すなわち、幅広部51eから幅狭部51fまでの間に幅が単調減少するような形状を備えているからである。
【0050】
仮に、アーム部51dの全体に亘って幅が均一であると、カード101のコンタクトパッドによって押されることにより生じる曲げモーメントが基端部51a側の部分で最大となるので、該基端部51a側の部分は、大きな曲げ応力を受けて破断する可能性がある。また、破断を回避するためには、アーム部51d又は端子51全体の板厚を厚くする必要があり、コストが上昇するだけでなく、カード用コネクタ1全体の高さが高くなり、該カード用コネクタ1を小型化することができなくなってしまう。
【0051】
これに対し、本実施の形態におけるアーム部51dは、幅広部51eから幅狭部51fまでの間に幅が単調減少するような形状を備えているので、曲げモーメントが大きい部分で幅が広く、曲げモーメントが小さい部分で幅が狭くなるので、アーム部51dの全体に亘って曲げ応力が均一になる。したがって、アーム部51dは、その一部のみが変形するのではなく、幅広部51eから幅狭部51fまでの全体がほぼ均一に変形する。これにより、アーム部51dの一部が大きな曲げ応力を受けて破断することがないので、アーム部51d又は端子51全体の板厚を薄くすることができ、その結果、コストを低減することができ、かつ、カード用コネクタ1を低背化及び小型化することができる。
【0052】
さらに、図6に示されるような端子51の変形状態を微細に観察すると、アーム部51dは、先端に行くに従って低くなるように傾斜し、その結果、先端に行くに従って金属底板56に近付いていることが見て取れる。すなわち、アーム部51dは、幅広部51eから幅狭部51fまでの間に幅が単調減少するに従って金属底板56との間隔が短くなるように変形している。これにより、端子51を信号ラインとし、金属底板56をグランドラインとする信号の伝送路における特性インピーダンスを適切にコントロールすることができる。換言すると、端子51と金属底板56とによって形成されるマイクロストリップライン構造における特性インピーダンスを適切にコントロールして一定にすることができる。
【0053】
次に、マイクロストリップライン構造における特性インピーダンスのコントロールについて説明する。
【0054】
図7は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにおけるマイクロストリップライン構造を説明する第1の図、図8は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにおけるマイクロストリップライン構造を説明する第2の図である。
【0055】
図7には、いずれか1つの端子51とグランド板として機能する金属底板56とから形成されるシングルモードのマイクロストリップライン構造の模式図が示されている。図において、30は端子51と金属底板56との間に介在する誘電体であり、ハウジング11の底壁部11b及び/又は空気層から成る。また、Wは端子51の幅であり、tは端子51の板厚であり、hは誘電体30の厚さ、すなわち、端子51と金属底板56との距離であり、εr は誘電体30の誘電率である。
【0056】
そして、図7に示されるようなシングルモードのマイクロストリップライン構造の特性インピーダンスZ0 は、次の式(1)で表される。
【0057】
【数1】

【0058】
前記式(1)から、特性インピーダンスZ0 を一定にしようとすると、端子51の幅Wが変化する場合には、端子51と金属底板56との距離hを変化させなければならないことが分かる。例えば、誘電体30の誘電率εr =3.8、端子51の板厚t=0.2であるとすると、特性インピーダンスZ0 を50〔Ω〕で一定にするためには、端子51の幅W及び端子51と金属底板56との距離hは、次の式(1−1)〜(1−3)のように変化させる必要がある。
W=0.8:h=0.45 ・・・式(1−1)
W=0.5:h=0.29 ・・・式(1−2)
W=0.3:h=0.19 ・・・式(1−3)
また、隣接する一対の端子51のうちの一方を正の信号の信号ラインとし、他方を負の信号の信号ラインとするように差動信号を伝送するマイクロストリップライン構造を端子51と金属底板56とが形成する場合、図8に示されるような構造となる。図において、Sは隣接する端子51間の空間の幅であり、Pは端子51のピッチである。すなわち、S=P−Wである。
【0059】
そして、図8に示されるような差動信号のマイクロストリップライン構造の特性インピーダンスZdiffは、次の式(2)で表される。
【0060】
【数2】

【0061】
前記式(2)から、特性インピーダンスZdiffを一定にしようとすると、端子51の幅Wが変化する場合には、端子51のピッチPが固定されていれば、端子51間の空間の幅Sが変化するので、端子51と金属底板56との距離hを変化させなければならないことが分かる。例えば、誘電体30の誘電率εr =3.8、端子51の板厚t=0.2であるとすると、特性インピーダンスZdiffを50〔Ω〕で一定にするためには、端子51の幅W及び端子51と金属底板56との距離hは、次の式(2−1)〜(2−3)のように変化させる必要がある。
W=0.8:h=1.05 ・・・式(2−1)
W=0.5:h=0.34 ・・・式(2−2)
W=0.3:h=0.19 ・・・式(2−3)
差動信号のマイクロストリップライン構造の場合には、端子51のピッチPが固定されると、端子51の幅Wを広くした際にはカップリングが強くなるので、金属底板56を端子51からより遠ざける必要がある。
【0062】
なお、本実施の形態においては、カード用コネクタ1が、コンタクトパッドが配設された面が底壁部11bと対向し、コンタクトパッドが配設されていない面がシェル61の天板部62と対向するような姿勢でカード101が挿入されるタイプのものである場合についてのみ説明したが、前記カード用コネクタ1は、コンタクトパッドが配設された面がシェル61の天板部62と対向し、コンタクトパッドが配設されていない面が底壁部11bと対向するような姿勢でカード101が挿入されるタイプのものであってもよい。この場合、端子51は、底壁部11bの上面に取付けられるのではなく、例えば、特開2006−313459号公報に開示されているように、シェル61の天板部62に近接するように、すなわち、挿入されたカード101とシェル61の天板部62との間に位置するように配設される。そのため、シェル61の天板部62を、少なくとも、上又は下から観て、基端部51aの中間から接触部51bの先端までの範囲に対応するように形成すれば、前記天板部62がグランド板である金属底板56の機能を果たし、前記端子51と天板部62とで前述したようなマイクロストリップライン構造を形成することができる。
【0063】
このように、本実施の形態において、カード用コネクタ1は、コンタクトパッドを備えるカード101を収容するハウジング11と、ハウジング11に取付けられ、カード101のコンタクトパッドと接触する端子51とを有し、端子51は、ハウジング11に保持される基端部51aと、基端部51aから延出するアーム部51dと、アーム部51dの先端に接続された接触部51bとを備え、アーム部51dは、基端部51a側の幅が広く、接触部51b側の幅が狭い形状を備え、ハウジング11は、少なくともアーム部51dの範囲に対応する金属底板56を備え、カード101がハウジング11に収容され、接触部51bがカード101のコンタクトパッドと接触すると、アーム部51dは、その先端に行くに従って金属底板56との間隔が短くなるように変形する。
【0064】
これにより、端子51の基端部51aから接触部51bに亘る範囲において特性インピーダンスを適切にコントロールすることができ、信号伝送路全体における特性インピーダンスを整合させることができ、カード用コネクタ1を信号の高速伝送に使用してもクロストークが生じることがない。また、カード用コネクタ1を低背化することができ、さらに、コストを低減することができる。
【0065】
また、アーム部51dと金属底板56との間隔は、端子51を信号ラインとし、金属底板56をグランドラインとする信号の伝送路の特性インピーダンスが一定となるように、アーム部51dの幅に応じて変化する。これにより、特性インピーダンスを整合させることができ、信号伝送路における信号の反射、減衰、共振、放射等の損失を低減することができる。
【0066】
さらに、端子51は、ハウジング11の底壁部11bの上面側に配設され、金属底板56は底壁部11bの下面に配設される。これにより、金属底板56の大きさ及び位置を変化させ、任意の端子51の任意の部分に対応するマイクロストリップライン構造を形成することができる。
【0067】
さらに、ハウジング11の上側にはシェル61が取付けられ、端子51はシェル61の天板部62に近接する位置に配設され、天板部62が金属底板56として機能するようにしてもよい。この場合、コンタクトパッドが配設された面がシェル61の天板部62と対向し、コンタクトパッドが配設されていない面が底壁部11bと対向するような姿勢でカード101が挿入されるタイプのカード用コネクタ1を得ることができる。
【0068】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの分解図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの下面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタのハウジングの上面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの端子の上面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入した状態の断面図であり図5のA−A矢視断面図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにおけるマイクロストリップライン構造を説明する第1の図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにおけるマイクロストリップライン構造を説明する第2の図である。
【図9】従来のカード用コネクタを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 カード用コネクタ
11、811 ハウジング
11a 奥壁部
11b 底壁部
11c 第1側壁部
11d 第2側壁部
11e 端子収容溝
11f 端子保持部
11g カード案内機構収容部
13 掛止突起
21 スライド部材
23 カム溝
30 誘電体
51 端子
51a 基端部
51b 接触部
51c ソルダーテール部
51d アーム部
51e 幅広部
51f 幅狭部
52 第1接点部材
53 第2接点部材
56 金属底板
57 取付用帯部
58 掛止突部
61 シェル
62 天板部
63 掛止開口
64 側板部
65 掛止用突片
66 板ばね
71 ピン部材
81 付勢部材
91 配線基板
92 相手側グランド部材
101 カード
101a 前端
812 凹溝
851 ピン端子
861 グランド板
862 フランジ部
863 ボルト
891 プリント基板
892 グランドパターン
893 スルーホール
901 メモリカード
951 端子収容孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)端子部材を備えるカード(101)を収容するハウジング(11)と、
(b)該ハウジング(11)に取付けられ、前記カード(101)の端子部材と接触する接続端子(51)とを有するカード用コネクタ(1)であって、
(c)前記接続端子(51)は、前記ハウジング(11)に保持される基端部(51a)と、該基端部(51a)から延出する可撓部分(51d)と、該可撓部分(51d)の先端に接続された先端部(51b)とを備え、
(d)前記可撓部分(51d)は、基端部(51a)側の幅が広く、先端部(51b)側の幅が狭い形状を備え、
(e)前記ハウジング(11)は、少なくとも前記可撓部分(51d)の範囲に対応するグランド板(56)を備え、
(f)前記カード(101)がハウジング(11)に収容され、前記先端部(51b)が前記カード(101)の端子部材と接触すると、前記可撓部分(51d)は、その先端に行くに従ってグランド板(56)との間隔が短くなるように変形することを特徴とするカード用コネクタ(1)。
【請求項2】
前記可撓部分(51d)とグランド板(56)との間隔は、前記接続端子(51)を信号ラインとし、前記グランド板(56)をグランドラインとする信号の伝送路の特性インピーダンスが一定となるように、前記可撓部分(51d)の幅に応じて変化する請求項1に記載のカード用コネクタ(1)。
【請求項3】
前記接続端子(51)とグランド板(56)とは、マイクロストリップライン構造を形成する請求項1又は2に記載のカード用コネクタ(1)。
【請求項4】
前記接続端子(51)のうちの互いに隣接する一対の接続端子(51)とグランド板(56)とは、差動信号を伝送するマイクロストリップライン構造を形成する請求項1又は2に記載のカード用コネクタ(1)。
【請求項5】
前記接続端子(51)は、前記ハウジング(11)の底壁部(11b)の上面側に配設され、前記グランド板(56)は前記底壁部(11b)の下面に配設される請求項1〜4のいずれか1項に記載のカード用コネクタ(1)。
【請求項6】
前記ハウジング(11)の上側にはカバー部材(61)が取付けられ、前記接続端子(51)は前記カバー部材(61)の天板部(62)に近接する位置に配設され、前記天板部(62)が前記グランド板(56)として機能する請求項1〜4のいずれか1項に記載のカード用コネクタ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−129173(P2010−129173A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298957(P2008−298957)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】