説明

カード用コネクタ

【課題】複数のカードの同時装着を防止すると共に、カードに対して不適合な挿入口へカードの誤挿入を防止することができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】大型カード71に対応した第1の挿入口11および大型カード71よりも幅狭板薄の小型カード75に対応した第2の挿入口12が形成されたハウジングと、第1の挿入口11を開閉するシャッター部材5と、大型カード71の第1の挿入口11への非挿入時には、シャッター部材5を閉状態にロックし、大型カード71の第1の挿入口11への挿入時には、大型カード71に駆動されてシャッター部材5のロックを解除すると共に、小型カード75の第2の挿入口12への挿入を規制するロック部材7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、規格の異なる複数のカードの同時装着防止構造を備えたカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、規格の異なる複数のカードの同時装着防止構造を備えたカード用コネクタとして、幅広板厚の第1のカードと幅狭板薄の第2のカードとのいずれか一方を装着した場合に、いずれか他方の挿入を規制するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このカード用コネクタは、ハウジングに第1のカードに対応した第1の挿入口および第2のカードに対応した第2の挿入口が上下2段に形成されており、第1の挿入口と第2の挿入口との仕切り部分には挿入規制部材が上下方向に回動可能に設けられている。挿入規制部材は、軸心から半径方向に延びる2つの規制板を有しており、2つの規制板が略90°に直交するように形成されている。
【0003】
このカード用コネクタにおいて、第1の挿入口内に第1のカードが挿入されると、一方の規制板に第1のカードの先端が当接されて挿入規制部材が下方に回動し、他方の規制板が第2の挿入口内に移動される。この状態では、第1のカードによって挿入規制部材の上方への戻りが規制されるため、第2の挿入口への第2のカードの挿入が防止される。逆に、第2の挿入口内に第2のカードが挿入されると、挿入規制部材が上方に回動し、一方の規制板により第1の挿入口への第1のカードの挿入が規制される。このように、挿入規制部材の上下方向の回動により第1のカードおよび第2のカードのいずれか一方が装着されると、いずれか他方の挿入が規制され、カードの同時装着が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3094348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来のカード用コネクタにおいては、第1のカードおよび第2のカードの同時装着が防止されるものの、カードの誤挿入を防止することができないという問題があった。すなわち、第2のカードは、第1のカードに対して幅狭板薄に形成されており、第1のカードに対応した第1の挿入口にも挿入可能な大きさであるため、第1の挿入口に誤挿入されるおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、複数のカードの同時装着を防止すると共に、カードに対して不適合な挿入口へカードの誤挿入を防止することができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカード用コネクタは、第1のカードに対応した第1の挿入口および前記第1のカードよりも幅狭板薄の第2のカードに対応した第2の挿入口が形成されたハウジングと、前記第1の挿入口を開閉するシャッター部材と、前記第1のカードの前記第1の挿入口への非挿入時には、前記シャッター部材を閉状態にロックし、前記第1のカードの前記第1の挿入口への挿入時には、前記第1のカードに駆動されて前記シャッター部材のロックを解除すると共に、前記第2のカードの前記第2の挿入口への挿入を規制するロック部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、先に第1のカードが第1の挿入口に挿入された場合に、ロック部材により第2のカードの第2の挿入口への挿入が規制されるため、カードの同時装着を防止することができる。また、第1のカードの非挿入時に、シャッター部材が第1の挿入口を閉じた閉状態でロックされるため、第2のカードが第1の挿入口に挿入可能な大きさであっても、第2のカードの第1の挿入口への誤挿入を防止することができる。
【0009】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ロック部材は、前記第2のカードの前記第2の挿入口への挿入時に、前記シャッター部材のロック解除を規制することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、先に第2のカードが第2の挿入口に挿入された場合に、ロック部材によるシャッター部材のロック解除が規制されるため、第1のカードの第1の挿入口への挿入が規制され、カードの同時装着を防止することができる。
【0011】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ロック部材は、前記シャッター部材の先端部に係合してロック解除を規制する係合突起と、閉状態で前記シャッター部材の先端部を前記係合突起から離間したロック解除可能位置と前記係合突起に係合するロック解除規制位置との間で揺動可能に保持する保持部とを有し、前記シャッター部材の先端部は、前記第2のカードの前記第2の挿入口への非挿入時に、前記第1の挿入口から前記第2の挿入口側にはみ出した状態で前記ロック解除可能位置に位置し、前記第2のカードの前記第2の挿入口への挿入時に、前記第2のカードに当接して前記ロック解除規制位置に揺動すると共に、前記第2のカードの挿入を許容するように前記第1の挿入口側に退避することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第2のカードの第2の挿入口への非挿入時には、シャッター部材の先端部がロック解除可能位置に位置するため、第1のカードの第1の挿入口への挿入によりロックが解除され、第2のカードの第2の挿入口への挿入時には、第2の挿入口側にはみ出したシャッター部材の先端部が第2のカードに押されて係合突起に係合してロック解除が規制される。したがって、先に第2のカードが第2の挿入口に挿入された場合に、ロック部材によるシャッター部材のロック解除が規制されるため、第1のカードの第1の挿入口への挿入が規制され、カードの同時装着を防止することができる。
【0013】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記第1の挿入口および前記第2の挿入口は厚み方向に隣接されており、前記ロック部材は、前記第2の挿入口の幅方向外側に設けられたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ハウジングにおいて第1の挿入口および第2の挿入口の幅寸法の違いから生じる余剰スペースにロック部材を配置して、装置サイズを小型化することができる。
【0015】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ロック部材は、前記第2のカードの幅よりも離間して一対設けられることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2のカードにより一対のロック部材が同時に駆動されることがないため、第2のカードによるシャッター部材のロック解除を防止して、第2のカードの第1の挿入口への誤挿入を確実に防止することができる。
【0017】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、閉状態で前記シャッター部材は、挿入方向に向かって前記第2の挿入口側に傾斜して前記ロック部材にロックされることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第2のカードがシャッター部材に当接した場合に、第2のカードを第2の挿入口にガイドすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のカードの同時装着を防止すると共に、カードに対して不適合な挿入口へカードの誤挿入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの蓋体を外した斜視図である。
【図3】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、図1のA面における断面の部分拡大図である。
【図4】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの大型カードの挿入時の説明図である。
【図5】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの小型カードの挿入時の説明図である。
【図6】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの大型カードの排出構造の説明図である。
【図7】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの小型カードの排出構造の説明図である。
【図8】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、大型カードの斜視図である。
【図9】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、小型カードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明を大型カードおよび小型カードの2種類のカードを挿入可能としたコンバイン型のカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0022】
まず、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となる大型カードおよび小型カードについて説明する。図8は、本発明の実施の形態に係る大型カードの斜視図である。図9は、本発明の実施の形態に係る小型カードの斜視図である。
【0023】
図8に示すように、大型カード71は、一定の幅(約42.8mm)で挿入方向に一定の厚み(約3.3mm)で形成されたいわゆるCFカードであり、上面視略矩形状に形成されている。また、大型カード71の両側壁には、一端から他端側の途中部分にかけて溝部72が形成されている。溝部72は、大型カード71の挿入方向を識別するのに用いられ、この溝部72が形成されている一端側が挿入方向における前端側とされ、他端側が挿入方向における後端側とされる。大型カード71の前端部には、カード用コネクタ1の複数のピン端子15に接続される図示しない複数のソケット部が幅方向に上下2列に配列形成されている。
【0024】
図9に示すように、小型カード75は、大型カード71よりも幅狭(約24.0mm)で大型カード71よりも薄い(約2.1mm)厚みで形成されたいわゆるSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。小型カード75の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面76が形成されている。傾斜面76は、小型カード75の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面76が形成されている側が挿入方向における前端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。また、小型カード75の傾斜面76が形成された先端側には、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子17に接続される図示しない複数のパッドが幅方向に一列に設けられている。
【0025】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの蓋体を外した斜視図である。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカードの装着空間を形成する蓋体3とを備え、コネクタ本体2および蓋体3が組み合わされて前面を開口した箱状体をなしている。また、カード用コネクタ1には、前面の開口の略上半部分を開閉するシャッター部材5が設けられており、このシャッター部材5により前面の開口に上下2つの挿入口11、12が形成される。
【0027】
カード用コネクタ1の前面上側の挿入口は、大型カード71用の第1の挿入口11であり、シャッター部材5により開閉される。カード用コネクタ1の前面下側の挿入口は、小型カード75用の第2の挿入口12であり、常時開口されている。また、カード用コネクタ1内には、底面に対して水平に仕切板6が設けられており、仕切板6により装着空間が上下2つに仕切られている。この場合、装着空間の上側が第1の挿入口11に連なる大型カード用の第1の装着空間、下側が第2の挿入口12に連なる小型カード用の第2の装着空間となるように仕切られている。
【0028】
コネクタ本体2の奥壁14の前面部分には、第1の装着空間側に位置して複数のピン端子15が幅方向に上下2列に設けられている。複数のピン端子15は、奥壁14の前面部分から第1の挿入口11側に向かって延在している。コネクタ本体2の底壁16の中央部分には、第2の装着空間側に位置して複数のコンタクト端子17が幅方向に1列に設けられている(図7参照)。複数のコンタクト端子17は、底壁16の中央部分から奥壁14側に向かって延在している。
【0029】
また、コネクタ本体2の底壁16には、挿入方向に沿って小型カード75をガイドする一対のガイド壁21が形成されている。一対のガイド壁21の外方には、第2の挿入口12側に一対の収容部22が設けられ、この一対の収容部22のそれぞれにシャッター部材5の先端部を両側からロックする一対のロック部材7が設けられている。一対のロック部材7は、大型カード71の第1の挿入口11への非挿入時にシャッター部材5を閉状態にロックし、大型カード71の第1の挿入口11への挿入時にシャッター部材5のロックを解除するように駆動する。なお、ロック部材7の詳細構成については後述する。
【0030】
コネクタ本体2の一対の側壁23は、前側が切り欠かれて形成されている。コネクタ本体2の一対の側壁23の内面には、大型カード71の挿入をガイドするガイド突部24が内向きに突出しており、ガイド突部24は側壁23の途中部分から奥壁14に向かって延在している。ガイド突部24は、大型カード71の前端側の溝部72に係合し、正挿入時にのみ大型カード71の装着を許容する。この場合、ガイド突部24の延在長は、ピン端子15の延在長よりも長めに形成されており、大型カード71が前後逆に挿入されたときのピン端子15との接触を防止している。
【0031】
蓋体3は、金属性の板材を折り曲げて形成されており、コネクタ本体2の一対の側壁23の切り欠かれた部分を補填する一対の側板31を有している。一対の側板31には、大型カード71の側面を内向きに付勢する片持バネ32と、大型カード71の上面を下方に付勢する両持バネ33とが形成されている。片持バネ32および両持バネ33により、大型カード71の挿入時のガタツキが抑制される。
【0032】
蓋体3の上板34の前側には、幅方向両端側においてシャッター部材5を支持する一対の支持板35が設けられている。シャッター部材5は、基端側の幅方向両端において一対の支持板35に回動可能に支持される。このように、シャッター部材5は、上側で回動可能に軸支されて上開きするように構成されている。
【0033】
コネクタ本体2の一の側壁23および蓋体3の一の側板31には、押しボタン39を有する操作ユニット8が設けられている。操作ユニット8は、詳細構成については説明しないが、コネクタ本体2の奥壁14の上面に設けられた排出機構9に連結し、排出機構9を排出動作させる。排出機構9は、操作ユニット8の駆動に連動する主動アーム41と、主動アーム41の駆動に従動する従動アーム42とを有している。主動アーム41および従動アーム42は、それぞれ蓋体3の上板34に形成された支持部36、37にそれぞれ回動可能に支持され、支持部36、37を中心に前後に回動される。
【0034】
そして、大型カード71または小型カード75が装着されると、主動アーム41および従動アーム42が後方に回動して、操作ユニット8の押しボタン39が前方に押し出される。この装着状態から押しボタン39が押されると、主動アーム41および従動アーム42が前方に回動して、大型カード71または小型カード75が排出される。
【0035】
図3を参照して、シャッター部材およびロック部材の詳細構成について説明する。図3は、図1のA面における断面の部分拡大図である。
【0036】
図3に示すように、シャッター部材5は、蓋体3に設けられた支持板35に上開き可能に支持されている。支持板35に挿通支持されたシャッター部材5の軸部51には、巻きバネ52が挿通されている。巻きバネ52は、一端が蓋体3の上板34の内面に当接し、他端がシャッター部材5の背面に当接して、シャッター部材5を前方に付勢している。シャッター部材5の先端部53は、挿入方向に沿って下方に屈曲しており、第1の挿入口11から僅かに第2の挿入口12側にはみ出ている。
【0037】
ロック部材7は、シャッター部材5を閉状態にロックするものであり、コネクタ本体2の収容部22に上下方向に回動可能に支持されている。ロック部材7の収容部22に挿通支持される軸部61には、巻きバネ62が挿通されている。巻きバネ62は、一端が収容部22の下面に当接し、他端がロック部材7の底面に当接して、ロック部材7を上方に付勢している。
【0038】
ロック部材7の前側は、大型カード71に当接する当接部63となっており、当接部63は前方に向かって下るように傾斜面64が形成されている。当接部63は、大型カード71に当接されると、軸部61を中心としてロック部材7を下方に回動させて、シャッター部材5のロックを解除する。ロック部材7の当接部63の後方には、閉状態でシャッター部材5の先端部53を保持する保持部65が形成されている。保持部65は、凹状に形成されており、閉状態において前後一対の対向面でシャッター部材5の回動範囲を規制している。
【0039】
保持部65の対向面のうち後方に位置する面には、前方に向けて係合突起66が突出している。係合突起66は、シャッター部材5の屈曲した先端部53に係合することで、ロック部材7の下方への回動を規制している。すなわち、保持部65は、シャッター部材5の先端部53が前面に接している状態では、シャッター部材5のロックを解除可能とし、シャッター部材5の先端部53が係合突起66に係合している状態では、シャッター部材5のロックの解除を規制している。このように、保持部65は、係合突起66から離間したロック解除可能位置と係合突起66に係合されるロック解除規制位置との間でシャッター部材5を保持している。
【0040】
ロック部材7の保持部65の後方部分には、装着空間に向かって挿入阻止部67が突出している。挿入阻止部67は、ロック部材7が上方に位置している場合に第1の挿入口11に位置し、ロック部材7が大型カード71に押し下げられた場合に、コネクタ本体2のガイド壁21に形成された逃げ溝68に侵入して第2の挿入口12に移動する。第2の挿入口12に移動された挿入阻止部67は、小型カード75の第2の挿入口12への挿入を阻止する。
【0041】
図4および図5を参照して、カード用コネクタによる同時装着防止構造および誤装着防止構造について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの大型カードの挿入時の説明図であり、(a)は挿入前の初期状態、(b)は挿入開始状態、(c)は挿入完了状態をそれぞれ示している。図5は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの小型カードの挿入時の説明図であり、(a)は挿入前の初期状態、(b)は挿入開始状態、(c)は挿入完了状態をそれぞれ示している。
【0042】
最初に、図4を参照して、大型カード71の同時装着防止構造および誤装着防止構造について説明する。図4(a)に示すように、初期状態において、巻きバネ62の付勢力により一対のロック部材7が上方に押し上げられており、シャッター部材5が閉状態でロックされている。このとき、シャッター部材5は、巻きバネ52により前方に付勢されて、先端部53が保持部65のロック解除可能位置に押し付けられている。この状態では、第2の挿入口12の大きさが大型カード71に対して小さいため、第2の挿入口12に大型カード71が誤挿入されることはない。
【0043】
この初期状態から、図4(b)に示すように、第1の挿入口11に大型カード71が挿入されると、大型カード71の前端部に一対のロック部材7の傾斜面64が当接する。大型カード71の前端部により一対のロック部材7の傾斜面64が押圧されると、巻きバネ62の付勢力に抗してロック部材7が押し下げられ、シャッター部材5の先端部53がロック部材7の保持部65から外れてロックが解除される。このとき、ロック部材7の押し下げにより、挿入阻止部67が第1の挿入口11から第2の挿入口12に移動する。
【0044】
さらに大型カード71が第1の挿入口11内に挿入されると、大型カード71の前端部がシャッター部材5に当接される。大型カード71の前端部によりシャッター部材5が押圧されると、巻きバネ52の付勢力に抗してシャッター部材5が後方に上開きされ、第1の挿入口11が開口される。
【0045】
この状態から、さらに大型カード71が第1の挿入口11内に挿入されると、図4(c)に示すように、大型カード71のソケット部がピン端子15に係合して大型カード71がカード用コネクタ1に装着される。このとき、一対のロック部材7の挿入阻止部67は、第2の挿入口12に位置するため、小型カード75の第2の挿入口12への挿入が阻止される。このように、大型カード71が先に装着された場合に、ロック部材7の挿入阻止部67により小型カード75の同時装着が防止される。
【0046】
次に、図5を参照して、小型カード75の同時装着防止構造および誤装着防止構造について説明する。図5(a)に示すように、初期状態において、巻きバネ62の付勢力により一対のロック部材7が上方に押し上げられており、シャッター部材5が閉状態でロックされている。このとき、シャッター部材5は、巻きバネ52により前方に付勢されて、先端部53が保持部65のロック解除可能位置に押し付けられている。また、シャッター部材5の先端部53が僅かに第1の挿入口11から第2の挿入口12側にはみ出している。
【0047】
この初期状態では、第1の挿入口11の大きさが小型カード75に対して十分に大きいが、シャッター部材5が閉状態でロックされているため、第1の挿入口11に小型カード75が誤挿入されることがない。この場合、一対のロック部材7は、小型カード75の幅寸法よりも離間した第2の挿入口12の外側に設けられているため、小型カード75で一対のロック部材7を同時に駆動させることはできない。したがって、小型カード75の第1の挿入口11への誤挿入が確実に防止される。
【0048】
また、この初期状態では、シャッター部材5は、挿入方向に向かって下方に傾斜するようにロック部材7に保持されている。この場合、第1の挿入口11に小型カード75を挿入させようとした場合、小型カード75がシャッター部材5に当接され、シャッター部材5の傾きにより第2の挿入口12にガイドされる。
【0049】
この初期状態から、図5(b)に示すように、第2の挿入口12に小型カード75が挿入されると、小型カード75の前端部に第2の挿入口12側にはみ出したシャッター部材5の先端部53が当接する。小型カード75の前端部によりシャッター部材5の先端部53が押圧されると、巻きバネ52の付勢力に抗してシャッター部材5の先端部53が保持部65のロック解除規制位置に移動される。そして、シャッター部材5の先端部53がロック解除規制位置において係合突起66に係合されて、ロック部材7の押し下げが規制される。
【0050】
この状態から、さらに小型カード75が第2の挿入口12内に挿入されると、図5(c)に示すように、小型カード75のパッドがコンタクト端子17に接触して小型カード75がカード用コネクタ1に装着される。このとき、シャッター部材5の先端部53とロック部材7の係合突起66との係合により、大型カード71がロック部材7の当接部63に当接した場合であっても、ロック解除が規制される。このように、小型カード75が先に装着された場合に、シャッター部材5は大型カード71の第1の挿入口11への挿入に関わらず閉状態を維持し続けて、大型カード71の同時装着が防止される。
【0051】
このように、カード用コネクタ1は、大型カード71および小型カード75の同時装着を防止すると共に、大型カード71用の第1の挿入口11に小型カード75が誤挿入されるのを防止している。また、シャッター部材5がカード用コネクタ1の前面において第1の挿入口11を閉状態としているため、小型カード75が誤挿入されそうになった場合に、第1の挿入口11の内部に挿入させることなく小型カード75の挿入を防止することができる。この構成により、ユーザに対し誤挿入を明確に認識させることが可能となる。さらに、ロック部材7に挿入阻止部67が設けられているため、ロック部材7の駆動に連動させて第2の挿入口12への小型カード75の挿入を阻止させることが可能となる。
【0052】
図6および図7を参照して、カード用コネクタによるカードの排出構造について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの大型カードの排出構造の説明図である。図7は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの小型カードの排出構造の説明図であり、(a)は上面図、(b)は背面図をそれぞれ示している。なお、図6および図7(a)は、説明の便宜上、蓋体の輪郭を破線で示している。
【0053】
最初に、図6を参照して、大型カード71の排出構造について説明する。図6に示すように、排出機構9は、蓋体3の支持部36、37に回動可能に支持された主動アーム41および従動アーム42を有し、従動アーム42は爪片45を介して主動アーム41に連動するように構成されている。また、主動アーム41および従動アーム42には大型カード71に当接する当接片46、47が設けられており、当接片46、47は、第1の装着空間から第2の装着空間に向かって下方に延在している。
【0054】
カード用コネクタ1に大型カード71が装着されると、大型カード71により当接片46、47を介して主動アーム41および従動アーム42が後方に回動される。この大型カード71が装着された状態から、操作ユニット8の押しボタン39を図示矢印方向に押し込むと、主動アーム41が前方に回動すると共に、従動アーム42が前方に回動する。この主動アーム41および従動アーム42の前方への回動により、当接片46、47により大型カード71が排出方向に押し出されて排出される。
【0055】
次に、図7を参照して、小型カード75の排出構造について説明する。図7(a)、(b)に示すように、排出機構9は、主動アーム41および従動アーム42と連動して駆動する排出プレート48を有している。排出プレート48は、幅方向に延在し、コネクタ本体2の底面側にスライド可能に配置されている。排出プレート48の延在方向における中間部分には、小型カード75に当接する一対の当接片49が設けられている。また、排出プレート48は、後方において主動アーム41および従動アーム42の当接片46、47に当接されている。
【0056】
カード用コネクタ1に小型カード75が装着されると、小型カード75により排出プレート48を介して主動アーム41および従動アーム42が後方に回動される。この小型カード75が装着された状態から、操作ユニット8の押しボタン39を図示矢印方向に押し込むと、主動アーム41が前方に回動すると共に、従動アーム42が前方に回動する。この主動アーム41および従動アーム42の前方への回動により、排出プレート48が当接片46、47により排出方向に押し出される。排出プレート48が押しだされると、一対の当接片49により小型カード75が排出方向に押し出されて排出される。
【0057】
このように、本実施の形態における排出機構9は、大型カード71用の排出機構および小型カード75用の排出機構を兼ねており、排出機構9の駆動により大型カード71に対する排出動作および小型カード75に対する排出動作が同時に行われる。したがって、万が一、大型カード71および小型カード75が同時に装着された場合には、大型カード71および小型カード75が同時に排出されるという不具合が生じる。本発明に係るカード用コネクタ1においては、大型カード71および小型カード75の一方だけしか装着させることができないため、同時排出の不具合が起こることがない。このように、本発明は、特に、2種類のカードを同時排出する排出機構を備えたカード用コネクタに有効である。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1によれば、先に大型カード71が第1の挿入口11に挿入された場合に、ロック部材7の挿入阻止部67により小型カード75の第2の挿入口12への挿入が規制されるため、大型カード71および小型カード75の同時装着を防止することが可能となる。また、先に小型カード75が第2の挿入口12に挿入された場合に、ロック部材7のシャッター部材5対するロック解除が規制されて大型カード71の第1の挿入口11への挿入が規制されるため、大型カード71および小型カード75の同時装着を防止することが可能となる。また、大型カード71の非挿入時に、シャッター部材5が第1の挿入口11を閉じた閉状態でロックされるため、第1の挿入口11への小型カード75の誤挿入を防止することが可能となる。
【0059】
なお、上記した実施の形態においては、大型カードをCFカード、小型カードをSDカードとして説明したが、この構成に限定されるものではない。本発明は、一方のカードに対して他方のカードが幅狭板薄である異なる規格のカードに対応可能である。
【0060】
また、上記した実施の形態においては、一対のロック部材においてシャッター部材を2箇所でロックする構成としたが、この構成に限定されるものではない。シャッター部材をロック可能であればよく、一つのロック部材によりシャッター部材をロックする構成としてもよいし、3つ以上のロック部材によりシャッター部材をロックする構成としてもよい。
【0061】
また、上記した実施の形態においては、シャッター部材を板状に形成したが、この構成に限定されるものではない。小型カードの第1の挿入口への挿入を防止可能であればよく、例えば、小型カードが挿通不能なスリットが形成されたものや枠状に形成されたものであってもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態においては、シャッター部材の先端部とロック部材の係合突起との係合によりロック部材のロック解除を規制する構成としたが、この構成に限定されるものではない。小型カードの第2の挿入口への挿入時にロック部材のロック解除を規制可能な構成であればよく、例えば、ロック部材とは別にシャッター部材のロック解除を規制する部材を設ける構成としてもよい。
【0063】
また、上記した実施の形態においては、上段側に大型カード用の挿入口を形成し、下段側に小型カード用の挿入口を形成するとしたが、この構成に限定されるものではない。上段側に小型カード用の挿入口を形成し、下段側に大型カード用の挿入口を形成する構成としてもよい。なお、この場合には、シャッター部材を下開き可能な構成とすると共に、ロック部材を大型カードの挿入に応じて上動するような構成にする。
【0064】
また、上記した実施の形態においては、シャッター部材の先端部が第1の挿入口から第2の挿入口にはみ出す構成としたが、このはみ出し量は、シャッター部材がロック解除規制位置に移動されたときに、小型カードの第2の挿入口への挿入を許容する程度であればよい。また、シャッター部材の先端部の延在方向の全てがはみ出す必要はなく、少なくとも一部がはみ出していればよい。
【0065】
また、上記した実施の形態においては、シャッター部材が挿入方向に沿って下方に傾斜してロック部材に保持される構成としたが、この構成に限定されるものではない。シャッター部材を閉状態にロックしている状態で、小型カードの第2の挿入口へのガイドが不要であれば傾斜させる必要はない。
【0066】
また、上記した実施の形態においては、本発明を押しボタン式の排出構造を備えたカード用コネクタに適用して説明したが、この構成に限定されるものではない。異なるサイズの複数のカードを選択的に装着可能なカード用コネクタであればよく、例えば、本発明をプッシュ−プッシュ式の排出構造を備えたカード用コネクタに適用してもよい。
【0067】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、複数のカードの同時装着を防止すると共に、カードに対して不適合な挿入口へカードの誤挿入を防止することができるという効果を有し、特に、規格の異なる複数のカードの同時装着防止構造を備えたカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 カード用コネクタ
2 コネクタ本体(ハウジング)
3 蓋体(ハウジング)
5 シャッター部材
7 ロック部材
11 第1の挿入口
12 第2の挿入口
15 ピン端子
17 コンタクト端子
21 ガイド壁
22 収容部
31 側板
35 支持板
36、37 支持部
41 主動アーム
42 従動アーム
48 排出プレート
53 先端部
63 当接部
64 傾斜面
65 保持部
66 係合突起
67 挿入阻止部
71 大型カード(第1のカード)
75 小型カード(第2のカード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカードに対応した第1の挿入口および前記第1のカードよりも幅狭板薄の第2のカードに対応した第2の挿入口が形成されたハウジングと、
前記第1の挿入口を開閉するシャッター部材と、
前記第1のカードの前記第1の挿入口への非挿入時には、前記シャッター部材を閉状態にロックし、前記第1のカードの前記第1の挿入口への挿入時には、前記第1のカードに駆動されて前記シャッター部材のロックを解除すると共に、前記第2のカードの前記第2の挿入口への挿入を規制するロック部材とを備えたことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記第2のカードの前記第2の挿入口への挿入時に、前記シャッター部材のロック解除を規制することを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記シャッター部材の先端部に係合してロック解除を規制する係合突起と、閉状態で前記シャッター部材の先端部を前記係合突起から離間したロック解除可能位置と前記係合突起に係合するロック解除規制位置との間で揺動可能に保持する保持部とを有し、
前記シャッター部材の先端部は、前記第2のカードの前記第2の挿入口への非挿入時に、前記第1の挿入口から前記第2の挿入口側にはみ出した状態で前記ロック解除可能位置に位置し、前記第2のカードの前記第2の挿入口への挿入時に、前記第2のカードに当接して前記ロック解除規制位置に揺動すると共に、前記第2のカードの挿入を許容するように前記第1の挿入口側に退避することを特徴とする請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記第1の挿入口および前記第2の挿入口は厚み方向に隣接されており、
前記ロック部材は、前記第2の挿入口の幅方向外側に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記第2のカードの幅よりも離間して一対設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項6】
前記シャッター部材は、閉状態で挿入方向に向かって前記第2の挿入口側に傾斜して前記ロック部材にロックされることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−251088(P2010−251088A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98668(P2009−98668)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】