説明

カード

【課題】 耐衝撃性、耐熱性、剛性に優れ、生分解性を有するカードを提供する。【解決手段】 ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%、並びに熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体であり、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなるカード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなるカードに関するものであり、さらに詳細にはポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%、並びに熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる耐衝撃性改良材(b)1〜99重量%からなる耐衝撃性、耐熱性、剛性に優れ、生分解性を有するカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、植物を原料として得られることから、環境負荷の少ない材料として近年注目を集めている。しかしながら、これらポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は剛性には優れるものの、ポリ乳酸には脆い、耐熱性が低いという課題があり、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体には脆いという課題があり、これらをカードとする際にはこれら課題を解決することが必要であった。
【0003】
そして、ポリ乳酸の耐衝撃性を改良する方法として、ポリカプロラクトンやポリブチレンサクシネート系樹脂を混合する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、ポリ乳酸にポリ3−ヒドロキシブチレート系樹脂を混合する方法が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の耐衝撃性を改良する方法として、3−ヒドロキシバリレートを共重合する方法や該共重合体にポリカプロラクトンを混合する方法(例えば特許文献3参照。)が提案されている。また、該共重合体にポリ乳酸とポリブチレンサクシネート系樹脂を混合する方法(例えば特許文献4参照。)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−055498号公報
【特許文献2】特開2003−334913号公報
【特許文献3】特開平09−123358号公報
【特許文献4】特開平10−157041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に提案された該異種ポリマーを混合する方法においては、その耐衝撃性は十分なものではなく、耐熱性、剛性も低いものであり、特許文献2に提案された方法においては、耐熱性は改良されるものの耐衝撃性については課題が解決されたものではなく、特許文献3,4に提案された方法においては、耐熱性が損なわれるという新たな課題をもたらすものであり、耐衝撃性、耐熱性、剛性に優れ、生分解性を有するカードとして用いることができないものであった。
【0007】
そこで、本発明は、耐衝撃性、耐熱性、剛性に優れ、生分解性を有するカードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)及び特定の耐衝撃性改良材(b)からなるカードが優れた耐衝撃性、耐熱性、剛性とともに生分解性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%、並びに熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体であり、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなるカードに関するものである。
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のカードを構成するポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)(以下、PHB系重合体(a)と記す。)としては、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートとの共重合体、等が挙げられ、PHB系重合体が共重合体である場合の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートとしては、例えば3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、4−ヒドロキシブチレート、ヒドロキシラウリレートが挙げられる。また、該共重合体としては、特にカードとする際の生産性に優れることから、該3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートが25モル%以下共重合されたものであることが好ましい。
【0012】
そして、本発明に用いるPHB系重合体(a)としては、特にポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート/4−ヒドロキシブチレート共重合体が、容易に入手できることから好ましい。
【0013】
また、PHB系重合体(a)としては、カードとして成形する際の加工性に優れることからから、微生物体内で生産されたものであることが好ましい。このようなPHB系重合体は市販品として入手することが可能である。また、その製造方法としては、例えば米国特許4477654号公報、国際公開特許94/11519号公報、米国特許5502273号公報に開示されている方法等により入手することも可能である。
【0014】
本発明のカードを構成する耐衝撃性改良材(b)は、熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体であり、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐衝撃性改良材であり、本発明のカードは該耐衝撃性改良材(b)を含んでなることにより、耐衝撃性に優れるカードとなる。
【0015】
該熱可塑性ポリウレタン(b1)としては、熱可塑性ポリウレタンの範疇に属するものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能であり、例えばアジピン酸系熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン、ポリカプロラクトン系熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン、アクリル系熱可塑性ポリウレタン、フェノール系熱可塑性ポリウレタン、エポキシ系熱可塑性ポリウレタン、ポリブタジエン系熱可塑性ポリウレタン等を挙げることができ、その中でも耐衝撃性に優れるカードとなることからソフトセグメントにアジピン酸エステルを用いたアジピン酸系熱可塑性ポリウレタン、又はポリエーテル用いたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン、ポリカプロラクタムを用いたポリカプロラクタム系熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンが好ましく、特に、ソフトセグメントのアジピン酸エステルに、エチレングリコール及び/またはブチレングリコールを用いたアジピン酸熱可塑性ポリウレタンがさらに好ましい。
【0016】
該熱可塑性ポリウレタンとしては、例えば(商品名)ミラクトランE190(日本ミラクトラン(株)製)、(商品名)ミラクトランE385(日本ミラクトラン(株)製)、(商品名)ミラクトランE585(日本ミラクトラン(株)製)等を市販品として入手することも可能である。
【0017】
さらに該熱可塑性ポリウレタンを用い本発明のカードとする際には、優れた耐熱性を示すことから、PHB系重合体(a)が連続相、熱可塑性ポリウレタン(b1)が分散相の海−島構造を形成していることが好ましい。さらに、優れた耐衝撃性を示すことから、分散相の平均粒径が0.1〜3μmであることが好ましい。
【0018】
該コア−シェル型ラテックスゴム(b2)は、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴムである。本発明のカードは、係る成分からなるコア−シェル型ラテックスゴムよりなることにより、耐熱性及び耐衝撃性に優れたものとなる。
【0019】
コア−シェル型ラテックスゴム(b2)の製造方法に特に限定はなく、例えば一般的なコア−シェル型ラテックスゴムの製造方法として知られている多段式乳化重合又は多段式シード重合を行うことで製造することができる。なお、その際には特に耐衝撃性に優れるカードが得られることから、コア成分の平均粒子径が0.05〜1μmであることが好ましい。また、コア−シェル型ラテックスゴム(b2)は市販品、例えば(商品名)メタブレンS−2001(三菱レイヨン(株)製)、(商品名)メタブレンW−450A(三菱レイヨン(株)製)等、を入手して用いることも可能である。
【0020】
該セルロース(b3)としては、セルロースの範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばセルロース、セルロースの水酸基をエステル置換及び/又はエーテル置換したセルロース誘導体を挙げることができる。その際のエステル置換セルロース誘導体としては、例えばニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等を挙げることができ、エーテル置換セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロース、ベンジルセルロース等を挙げることができ、その中でも特に耐熱性、耐衝撃性に優れたカードとなることから、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートであることが好ましい。
【0021】
該セルロース(b3)としては、(商品名)キャブロイド(太平化学製品(株)製)(セルロースアセテートブチレート)、(商品名)酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製)(アセチルセルロース)等の市販品として入手することができる。
【0022】
本発明のカードは、該PHB系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%よりなるものであり、好ましくは該PHB系重合体(a)30〜95重量%及び該耐衝撃性改良材(b)70〜5重量%であり、特に該PHB系重合体(a)50〜90重量%及び該耐衝撃性改良材(b)50〜10重量%からなることが好ましい。ここで、PHB系重合体が99重量%を越える場合、カードは耐衝撃性に劣るものとなる。一方、1重量%未満である場合、カードは耐熱性、剛性に劣るものとなる。
【0023】
本発明のカードは、PHB系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなる層よりなる単層構造又は該層を少なくとも1層以上有する積層構造のいずれをとっていてもよく、積層構造とする際には、各層間の接着強度が向上し層間剥離の発生しにくいカードとなることから、PHB系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%の合計量100重量部に対し、ポリカプロラクトン1〜30重量部を配合してなることが好ましい。該カプロラクトンとしては、例えば(商品名)プラクセルH−7(ダイセル化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0024】
本発明のカードは、カードとする際の成形加工性に優れることから、PHB系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%の合計量100重量部に対して、さらにフタル酸系可塑剤及び/又はアクリル系加工助剤0.1〜30重量部を含んでなることが好ましい。なお、フタル酸系可塑剤としては、PHB系重合体の結晶融点を3℃以上低下させるものが好ましい。該フタル酸系可塑剤としては特に限定はなく、例えばフタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジメチルシクロヘキシルなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いてもよい。また、アクリル系加工助剤としては、例えば(商品名)メタブレンP−1000(三菱レイヨン(株)製)等を挙げることができる。
【0025】
さらに、本発明のカードは、特に剛性に優れたものとなることからPHB系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%の合計量100重量部に対して、さらに無機充填剤0.1〜50重量部を添加してなることが好ましい。該無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、タルク、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフェライト、ベントナイト、セリサナイト、ゼオライト、ネフェリンシナイト、アタパルジャイト、ウォラストナイト、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスファイバー、石英、石英ガラス、モンモリロナイトなどが挙げられ、これらの2種以上の混合物であってもよい。その中でもクレー、タルク、炭酸カルシウムは結晶化速度を速める効果も有することから特に好ましい。また、該無機充填剤としては、分散性を高めるために、表面改質された二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレーを用いることが可能であり、特に隠蔽性、剛性、耐衝撃性に優れたカードとなることから、二酸化チタンを含んでなることが好ましく、その際の添加量としては、PHB系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%の合計量100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましい。
【0026】
本発明のカードを製造する際には、PHB系重合体(a)及び耐衝撃性改良材(b)、任意にポリカプロラクトン、可塑剤、無機充填剤等を混合しそのままカードとする方法;PHB系重合体(a)及び耐衝撃性改良材(b)、任意にポリカプロラクトン、可塑剤、無機充填剤等を混合し樹脂組成物とし、該樹脂組成物をカードとする方法等の製造方法を行うことができ、混合を行う際の装置、方法としては、混合を行うことが可能であれば如何なる方法、装置を用いてもよく、その中でも、押出機のダイから吐出する溶融樹脂の温度が160℃以上185℃以下になるように温度設定した混練機を用いて製造することが好ましく、該混練機としては、例えば同方向二軸押出機、コニカル二軸押出機などの異方向二軸押出機、バンバリーミキサーや加圧ニーダーなどのバッチ式混合機、ロール混練機が例示される。また、その際には、PHB系重合体(a)及び耐衝撃性改良材(b)、必要に応じてポリカプロラクトン、可塑剤、無機充填剤等は、予め乾燥しておくことが望ましく、その際の乾燥条件は任意であり、例えば40〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。また、樹脂組成物についても、予め乾燥しておくことが望ましく、その際の乾燥条件は任意であり、例えば40〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。
【0027】
本発明のカードの製造方法としては、カードを製造することが可能であれば如何なる方法を用いてもよく、単層構造のカードである場合には、例えば押出シート成形法、インフレーション成形法、Tダイキャスト成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等により成形することが可能である。また、積層構造のカードである場合には、上記方法等により得られた単層構造の表面に表面層を、例えばサンドウィッチラミネート法、ドライラミネート法、サーマルラミネート法、プレス法等により積層・接着し成形する方法;上記方法等により得られた単層構造の表面に押出ラミネート法、共押出ラミネート法により直接表面層を成形する方法、等を挙げることができる。
【0028】
本発明のカードは、200〜800μmの厚さを有するものであることが好ましく、多層構造を有するものである場合、その表面層の厚さは60〜120μmであることが好ましい。
【0029】
また、本発明のカードは、耐候性、耐傷付性、意匠性等にも優れたカードとなることから、PHB系重合体(a)1〜99重量%及び耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなる中間層、並びにセルロース、ポリフッ化ビニリデンからなる表面層よりなるカードであることが好ましい。この際のセルロースとしては上記したセルロースでよく、ポリフッ化ビニリデンとしては、例えばポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートを共押し出しした多層フィルムを挙げることができ、具体的には(商品名)クレハKFCフィルム((株)クレハ製)を挙げることができる。
【0030】
本発明のカードは、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を配合していてもよい。さらに、本発明のカードは、例えば澱粉、セルロース繊維やケナフなどの各種植物繊維;木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品などの有機充填材を配合していてもよく、また、脂肪酸、脂肪族エステル、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩を配合することも可能である。
【0031】
さらに、本発明のカードには、必要に応じカルボジイミドに代表される加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、耐光安定剤、耐候性安定剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤等を含んでいても良い。さらに、他の熱可塑性樹脂やゴム、特に生分解性樹脂と称される熱可塑性樹脂がブレンドされていてもよい。
【0032】
本発明のカードは、生分解性という優れた特性に加えて、耐衝撃性、耐熱性、剛性にも優れることから、広範囲な用途に適応可能であり、例えばプリペイドカード、テレフォンカード、クレジットカード、キャッシュカード、ICチップ内蔵型カード等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のカードは、生分解性という優れた特性に加えて、耐衝撃性、耐熱性、剛性に優れるという特性をも有するものである。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、これらは例示的なものであって、本発明
はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例及び比較例中の各種測定を以下に示す。
【0036】
(耐衝撃性の評価)
実施例及び比較例より得られた試験片により、JISK 7110に従いアイゾット衝撃強度を測定した。
【0037】
(耐熱性の評価)
実施例及び比較例より得られた試験片により、JISK 7191−1に従い、最大表面応力1.8MPaの条件下における熱変性温度を測定した。
【0038】
(剛性の評価)
実施例及び比較例より得られた試験片により、JISK 7171に従い曲げ弾性率を測定した。
【0039】
実施例1
あらかじめオーブン中で80℃、4時間の予備乾燥を行ったポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a−1)(PHB Industrial S/A社製、商品名Biocycle1000)70重量%及びセルロースアセテートブチレート(b3−1)(太平化学製品(株)製、商品名キャブロイドCAB)30重量%の合計量100重量部に対し、二酸化チタン(堺化学工業(株)製、商品名ルチル型R−11P)10重量部を配合し、円形ダイを装着した異方向二軸押出機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボブラストミル;樹脂温度178℃、回転数100rpm、強混練タイプのスクリューを使用)にて溶融押出混合を行い、押出ストランドを60℃に設定した温浴槽で固化し、ストランドカッターにてペレタイズすることによりペレット形状の樹脂組成物を得た。
【0040】
185℃に設定したプレス成形機(神藤金属工業(株)製)に得られた樹脂組成物を供給し、以下に示すプレス成形条件でプレス成形を行うことにより、厚み4mmのシート及び厚み5mmのシートを成形した。
予熱条件:185℃、10分、プレス圧力1MPa
加圧条件:185℃、3分、プレス圧力7MPa
冷却条件:40℃、5分、プレス圧力7MPa
得られた厚み4mmのシートより耐衝撃性評価用試験片及び剛性評価用試験片を調製し、厚み5mmのシートより耐熱性評価用試験片を調製し、それぞれの評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0041】
また、得られたペレット形状の樹脂組成物を180℃に設定したシート成形機(田辺プラスチック機械(株)製)に供し、厚み0.56mmのシートを得、該シートをJIS X6301に例示された寸法(幅85mm、高さ54mm)に裁断し、厚み0.56mmのカードを得た。
【0042】
得られたカードは、耐熱性、剛性、耐衝撃性に優れるものであった。
【0043】
実施例2
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a−1)70重量%の代わりに60重量%、セルロースアセテートブチレート(b3−1)30重量%の代わりに40重量%とした以外は、実施例1と同様の方法によりシート、試験片、カードを作成し、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0044】
得られたカードは、耐熱性、剛性、耐衝撃性に優れるものであった。
【0045】
実施例3
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a−1)70重量%の代わりに30重量%、セルロースアセテートブチレート(b3−1)30重量%の代わりに70重量%とした以外は、実施例1と同様の方法によりシート、試験片、カードを作成し、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0046】
得られたカードは、耐熱性、剛性、耐衝撃性に優れるものであった。
【0047】
実施例4
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a−1)49重量%、セルロースアセテートブチレート(b3−1)21重量%、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(b1−1)(日本ミラクトン(株)製、商品名ミラクトンE190)30重量%の合計量100重量部に対し、二酸化チタン10重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりシート、試験片、カードを作成し、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0048】
得られたカードは、耐熱性、剛性、耐衝撃性に優れるものであった。
【0049】
実施例5
セルロースアセテートブチレート(b3−1)の代わりにシェル成分がポリメチルメタクリレート、コア成分がシリコン・アクリルゴムであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2−1)(三菱レイヨン(株)製、商品名メタブレンS−2001)とした以外は、実施例1と同様の方法によりシート、試験片、カードを作成し、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
得られたカードは、耐熱性、剛性、耐衝撃性に優れるものであった。
【0051】
実施例6
ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(b1−1)の代わりにコア−シェル型ラテックスゴム(b2−1)を用いた以外は、実施例4と同様の方法によりシート、試験片、カードを作成し、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
得られたカードは、耐熱性、剛性、耐衝撃性に優れるものであった。
【0053】
実施例7
あらかじめオーブン中で80℃、4時間の予備乾燥を行ったポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a−1)(PHB Industrial S/A社製、商品名Biocycle1000)70重量%及びセルロースアセテートブチレート(b3−1)(太平化学製品(株)製、商品名キャブロイドCAB)30重量%の合計量100重量部に対し、二酸化チタン(堺化学工業(株)製、商品名ルチル型R−11P)10重量部、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製、商品名プラクセルH−7)10重量部を配合し、円形ダイを装着した異方向二軸押出機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボブラストミル;樹脂温度178℃、回転数100rpm、強混練タイプのスクリューを使用)にて溶融押出混合を行い、押出ストランドを60℃に設定した温浴槽で固化し、ストランドカッターにてペレタイズすることによりペレット形状の樹脂組成物を得た。
【0054】
得られたペレット形状の樹脂組成物を180℃に設定したシート成形機(田辺プラスチック機械(株)製)に供し、厚み0.28mmのシートを得、該シートを2枚重ね状態に積層し、140℃に設定したプレス成形機(神藤金属工業(株)製)に供し、1MPa、10分間プレス成形を行い、厚み0.58mmの積層シートを得た。
【0055】
該積層シートの接着強度を180度T型剥離試験にて測定したところ、接着界面は材料破壊を示し、強固な接着強度を有することを確認した。
【0056】
該積層シートをJIS X6301に例示された寸法(幅85mm、高さ54mm)に裁断し、厚み0.56mmのカードを得た。
【0057】
得られたカードは、接着界面が強固な接着強度を有するものであった。
【0058】
実施例8
実施例2により得られたペレット形状の樹脂組成物を180℃に設定したシート成形機(田辺プラスチック機械(株)製)に供し、厚み0.56mmのシートを得た。
【0059】
別途160℃に設定したプレス成形機(田辺プラスチック機械(株)製)を用いて厚み100μmのセルロースアセテートブチレートフィルムを成形し、得られたシートを中間層としその両面に同じく180℃に設定したプレス成形機を用いて積層・接着することにより多層シートとした。
【0060】
該多層シートをJIS X6301に例示された寸法(幅85mm、高さ54mm)に裁断し、厚み0.76mmのカードを得た。
【0061】
得られたカードは、剛性、強度が良好であり、かつ表面光沢を有するものであった。
【0062】
実施例9
実施例5により得られたペレット形状の樹脂組成物を180℃に設定したシート成形機(田辺プラスチック機械(株)製)に供し、厚み0.56mmのシートを得た。
【0063】
得られたシートを中間層としその両面に(商品名)KFCフィルム((株)クレハ製)を同じく180℃に設定したプレス成形機を用いて積層・接着することにより多層シートとした。
【0064】
該多層シートをJIS X6301に例示された寸法(幅85mm、高さ54mm)に裁断し、厚み0.76mmのカードを得た。
【0065】
得られたカードは、剛性、強度が良好であり、かつ表面光沢を有するものであった。
【0066】
比較例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a−1)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりシート、試験片、カードを作成し、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
得られたカードは、耐衝撃性に劣るものであった。
【0068】
比較例2
セルロースアセテートブチレート(b3−1)30重量%の代わりにポリブチレンサクシネート(昭和高分子製、商品名PBS)30重量%とした以外は、実施例1と同様の方法によりシート、試験片、カードを作成し、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
得られたカードは、耐衝撃性に劣るものであった。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%、並びに熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体であり、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなることを特徴とするカード。
【請求項2】
熱可塑性ポリウレタン(b1)が、アジピン酸系熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン、ポリカプロラクトン系熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンからなる群より選ばれる1種以上の熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項1に記載のカード。
【請求項3】
セルロース(b3)が、セルロースアセテートプロピオネート及び/又はセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカード。
【請求項4】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%、並びに熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体であり、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなる合計量100重量部に対し、さらにポリカプロラクトン1〜30重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカード。
【請求項5】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%、並びに熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体であり、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなる層を少なくとも1層以上有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカード。
【請求項6】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体(a)1〜99重量%、並びに熱可塑性ポリウレタン(b1)、コア成分がアクリルゴム及び/又はシリコン・アクリルゴム共重合体であり、シェル成分がポリメチルメタクリレートであるコア−シェル型ラテックスゴム(b2)、セルロース(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐衝撃性改良材(b)99〜1重量%からなる中間層、及びセルロース、ポリフッ化ビニリデンからなる表面層よりなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカード。
【請求項7】
セルロース/ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体からなる表面層であることを特徴とする請求項6に記載のカード。
【請求項8】
ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートからなる表面層であることを特徴とする請求項6に記載のカード。
【請求項9】
生分解性カードであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカード。

【公開番号】特開2007−302776(P2007−302776A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132126(P2006−132126)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】