説明

カーペットの再生方法と再生用カーペット、及び再生用カーペットのリサイクルシステム

【解決手段】バッキング層5と表層1とが同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成され、これらバッキング層5と表層1が熱溶融性接着剤4で接着されたカーペットを再利用するカーペットの再生方法である。使用済みカーペットのバッキング層5から古い表層1を剥離する剥離工程と、表層1が剥離された古いバッキング層5の上に新しい表層1を接着する接着工程とを有する。分離した古いバッキング層5と古い表層1とを破砕する破砕処理工程と、新しいバッキング層5及び表層1を再生する再生工程と、これらを接着する接着工程とを有する。
【効果】使用済みのカーペットを無駄なく再利用することが可能になる。製造から販売、レンタル、回収までのシステム全てをサポートすることで廃棄物を極力少なくすることができる。消費社会での省資源化を実現することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーペットのリサイクルに係るもので、使い捨てが顕著になっている消費社会において省資源化を実現することができるカーペットの再生方法と再生用カーペット、及び再生用カーペットのリサイクルシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、環境問題がクローズアップされ、各種分野における廃棄物の処理方法に苦慮しているのが現状である。
【0003】使用済みカーペットにおいて、廃棄時の焼却処分の際に、塩素、NOx、SOxの発生のない素材が好適である。そこで、表層を形成しているパイル糸及び基布材、或いは各種不織布等の材質は、例えば炭素、水素のみから構成されているオレフィン系の高分子材料を選択して用いるのが環境衛生上望ましい。
【0004】ところが従来では、この表層の材質として、各種繊維の価格、風合い、色彩、性能等、用途にあった種々の特徴を生かすために、アクリル、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維を中心にした材質が単体で、或いは、天然繊維を含めた多くの材質を混用して使用されており、環境衛生上の観点から材質は選択されていない。
【0005】また、バッキング層を構成する材質も、表層と同様に焼却時の有毒ガスの発生の抑制、焼却炉の寿命、又は再生処理の困難性等の観点から、オレフィン系の高分子材料であるポリプロピレンやプロピレンとエチレンとの共重合ポリマーを炭酸カルシウムのような無機物フィラーと混合し溶融練り込みしたもの、単位分子が炭素、水素、酸素で構成されているメタクリル樹脂をジオクチルフタレートのような可塑剤との組み合わせで得られるアクリル樹脂系のゾル等でバッキング層を形成したものが環境上望ましい。ところが従来では、価格、加工性、性能の優位性から主として塩化ビニール樹脂と無機物フィラー、可塑剤との混合材料の使用が一般的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来のカーペットは、表層とバッキング層とが廃棄処理時の環境衛生上望ましい材質で構成されることは極めて少ない。しかも、表層とバッキング層とは異なる材質で構成されることも多い。このようにカーペットの表層とバッキング層とが異なる材質で構成された場合には、環境問題に対処したケミカル再生、或いはサーマル再生のための熱化学分解回収による油性化においても、又、機械的に粉砕しバッキング層の樹脂を選別してマテリアル再生を行う場合においても、表層の繊維分と、バッキング層の樹脂分とを分離分別しがたく、粉砕や分別工程を何回も通す必要がある等、分別処理に多くの手間がかかる問題がある。
【0007】従来の一般的なカーペットの構造を図2に示している。例えば、図示の基布3に不織布や平織布等を用い、フィラメントや紡績糸等のパイル糸2をタフティングした表層1と、塩化ビニールと炭酸カルシウムを主体とするバッキング層5で構成されるのが一般的であり、各部で使用する材質が異なっている。このカーペットは、その搬送性、現場搬入性、部分交換の容易性等に加えて、色柄の組み合わせの自在性等の利点が買われ、オフィスや店舗向けを中心に著しく市場需要を伸ばしている。しかし、これらカーペットを廃棄処分する場合は、前述の理由からカーペットを構成する材質及び構造物の分離が困難であり、全部を埋め立て又は焼却処分しているのが消費社会の現状である。
【0008】このような状況の中では、埋め立て、焼却等の廃棄処理方法のみならず、再生方法も積極的に行う必要があり、廃棄する場合にはまず再生の行える状態でなくてはならない。
【0009】本発明は、このような観点から開発されたもので、使用済みのカーペットを無駄なく再利用することが可能になり、しかも、製造から販売、レンタル、回収までのシステム全てをサポートすることで、廃棄物を極力少なくすると共に、消費社会での省資源化を実現することができるカーペットの再生方法と再生用カーペット、及び再生用カーペットのリサイクルシステムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解消すべく本発明の第1の手段における再生方法は、バッキング層5と表層1とが同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成され、これらバッキング層5と表層1とが熱溶融性接着剤4で接着されたカーペットを再利用するカーペットの再生方法において、使用済みカーペットのバッキング層5から古い表層1を剥離する剥離工程と、表層1が剥離された古いバッキング層5の上に新しい同一又は同質の表層1を接着する接着工程とを有することにある。
【0011】第2の手段における再生方法は、バッキング層5と表層1とが同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成され、これらバッキング層5と表層1とが熱溶融性接着剤4で接着されたカーペットを再利用するカーペットの再生方法において、使用済みカーペットのバッキング層5と表層1とを剥離する剥離工程と、分離した古いバッキング層5と古い表層1とを破砕する破砕処理工程と、破砕されたバッキング層5及び表層1から異物を除去する異物分離工程と、破砕された各素材から新しいバッキング層5及び表層1を再生する再生工程と、再生されたバッキング層5と表層1とを熱溶融性接着剤4で接着する接着工程とから成る。
【0012】第3の手段は、使用済みのカーペットを再利用できるようにした再生用カーペットであって、バッキング層5と、パイル糸及び基布からなる表層1とを同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成し、これらバッキング層5と表層1とを熱溶融性接着剤4で接着した再生用カーペットにある。
【0013】第4の手段における再生用カーペットは、熱溶融性接着剤4に、60〜100℃で溶融するウレタン樹脂系の熱溶融性接着剤4を使用したものである。
【0014】第5の手段におけるリサイクルシステムは、バッキング層5と表層1とが同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成され、これらバッキング層5と表層1とが熱溶融性接着剤4で接着された再生用カーペットを再生するカーペットのリサイクルシステムにおいて、販売又はレンタルしたカーペットを客先の要望により回収し、カーペットを洗浄して再使用する整備工場10と、使用済み再生用カーペットのバッキング層5から古い表層1を剥離して新しい同一又は同質の表層1を接着し、古いバッキング層5を再利用して新しい再生用カーペットを再生し、又は分離した古いバッキング層5と古い表層1とを破砕して新しいバッキング層5及び表層1を再生し、これらを接着して新しい再生用カーペットを再生する再生工場20と、再生用カーペットを収容管理する製品倉庫とにコンピュータネットワークを介して情報交換し、顧客からの要望に応えて再生用カーペットの販売、レンタル、使用中の維持管理、及び回収を受任する管理センターを備えたことにある。
【0015】第6の手段のリサイクルシステムは、管理センターにおいて、サイクル用カーペットを顧客希望の配色に設定するように、前記整備工場又は前記再生工場に指示することを課題解消のための手段とする。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明により製造されるカーペットを図面に基づき詳細に説明する。図1は表層1とバッキング層5とを熱溶融性接着剤4で接着固定したカーペットの側面を示した図である。同図において、符号2はパイル糸、3は基布である。
【0017】表層1は、パイル糸2をループ又はカット状に基布3にタフティングしたものである。このほか、表層1の構成は、機械織パイル織物、不織布そのまま又は不織布を折り畳み基布3に接着固定したもの等がある。
【0018】基布3はメルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布等が用いられる。バッキング層5はシート状に成形したものを用いる。
【0019】パイル糸2、基布3、バッキング層5は、再生を行う際の分離分別において、完全に素材ごとに分離できない場合を考慮し、全て同一又は同質の熱可塑性樹脂を使用する。同質の熱可塑性樹脂の組み合わせ例として、たとえば、表層1のパイル糸2、基布3にポリプロピレンを使用し、バッキング層5にポリプロピレン系エラストマーを使用するといった組み合わせなどがある。
【0020】熱溶融性接着剤4は、熱を加えることにより、溶融して接着力が低下し、表層1とバッキング層5を分離することを目的とするもので、ウレタン樹脂系、オレフィン系等の熱溶融性接着剤4を単独又は併用して、初期接着性、再湿接着性、加熱することにより接着力が低下する度合いや時間を考慮し調整したものが用いられる。
【0021】熱溶融性接着剤4に、ウレタン樹脂系の熱溶融性接着剤4を使用した際の結果は次の通りである。この熱溶融性接着剤4を使用した場合、表層1及びバッキング層5の接着面に塗布し、それに含まれる溶剤を揮発させ、且つ接着に適する粘度となるよう80℃の乾燥室を経由する。その乾燥室を経由する時間は1分ほどである。この接着剤の接着強度は現在市販されているタイルカーペットのバッキング層5剥離強度と同等の剥離強度を有しており、且つ60〜100℃の温水に浸漬させた場合、表層1とバッキング層5を容易に剥離することができるまで接着力が低下する(この接着剤において、温水に浸漬させたときの時間経過による剥離強度を示したものが図3である)。加えて、上記のように温水で熱溶融性接着剤4が溶融し接着力が低下した後、再度表層1から圧力をかけ、その状態でカーペットが冷却されると、再度熱溶融性接着剤4が硬化し、元と同じ接着強度を有する。
【0022】接着剤としてオレフィン樹脂系の熱溶融性接着剤4を使用した際の結果は次の通りである。この熱溶融性接着剤4を使用した場合、表層1及びバッキング層5の接着面に塗布し、それに含まれる溶剤を揮発させ、且つ接着に適する粘度となるよう120℃の乾燥室を経由する。その乾燥室を経由する時間は3分ほどである。このオレフィン樹脂系熱溶融性接着剤4の接着強度は上記のウレタン樹脂系熱溶融性接着剤4と比較し、1/3程度の接着強度を有しており、且つ60〜100℃の温水に浸漬させた場合、表層1とバッキング層5とを容易に剥離することができるまで接着力が低下する。
【0023】熱溶融性接着剤4としてアクリル系粘着剤を使用した際の結果は次の通りである。このアクリル系粘着剤を使用した場合、表層1及びバッキング層5の接着面に塗布し、それに含まれる溶剤を揮発させるため、80℃の乾燥室を経由する。その乾燥室を経由する時間は1分ほどである。このアクリル系粘着剤の接着強度はウレタン樹脂系熱溶融性接着剤4と比較し、半分程度の接着強度を有しており、且つ60〜100℃の温水に浸漬させた場合、表層1とバッキング層5とを容易に剥離することができるまで接着力が低下する。
【0024】上記の結果比較より、好ましくは剥離強度の大きいウレタン樹脂系熱溶融性接着剤を使用する。
【0025】次に、熱溶融性接着剤4の物性を図3に示す。この物性の計測には、現在市販されているタイルカーペットのバッキング層の層剥離強度を測定し、この強度を基準値 5とし、これに対するウレタン樹脂系熱溶融性接着剤4の剥離強度を数値化したものである。また同図では、加熱した際の時間経過による剥離強度の変化を表したものである。同図によると、各水温とも時間の経過とともに指数的に剥離強度が減少し、また水温が上昇するに従い、その減少が著しいことが確認できる。
【0026】本発明で行うカーペットの再生においては、表層1とバッキング層5を機械的に分離分別するが、これを可能とするため表層1とバッキング層5の接着強度は1.5以下にすることが予備試験にて確認されている。従って、これを実現するためには60℃以上の温水中に1〜3分ほど浸漬する必要があることが図3より確認することができる。
【0027】一方、カーペットの使用時においては飲み物をこぼす可能性がある。この場合例えば茶、コーヒーなど湯を使用した飲み物をこぼした場合、その温度は通常50〜60℃であるため、低い温度で接着力の低下する接着剤を使用すると、表層1とバッキング層5が剥離を起こしてしまい、カーペットとしての使用には耐えられないことが考えられる。ところが本発明で使用する熱溶融性接着剤4は、仮に沸騰した湯をこぼした場合においても、直ちにカーペット表層1を拭くことにより高温にさらされる時間が短くなるため、剥離することなく、また表層1から圧力をかけた状態でカーペットが冷却されると再度接着剤が硬化し、表層1とバッキング層5が接着される。
【0028】次に本発明でのカーペット再生フローを図4R>4に示す。使用されたカーペットは一度洗浄整備が行われ汚れの度合いにより再使用に耐えるものはそのまま再使用し、それ以外のものについては、表層1とバッキング層5とを分離する。分離の方法の詳細については後述する。
【0029】分離された表層1は、内部に残る砂、小石等の異物の除去を容易にするため細かく破砕される。異物を除去したものは原糸原料となり、紡績工程を経てパイル糸、不織布等に代表される基布3として再生され、タフティング等の工程を経て再び表層1として再生される。この工程は、例えば、原糸は押出し機、タフティングはタフト機などの現存する技術を選択して行う。
【0030】上記の表層1の再生は、現在市販されているカーペットでは仮に本発明の熱溶融性接着剤4を使用し分離ができたと仮定しても、表層1とバッキング層5とが異なる材質で構成されているため、表層1にバッキング層5の材質が幾分混入してしまい、原糸製造工程において細い糸として再生することができない。この例として、異種材質の場合、溶融温度が異なるため一体化せずこのため糸が切れてしまう、或いは、バッキング層5に含まれる砂状の無機物フィラーがノズルを詰まらせる等の不都合がある。本発明では表層1及びバッキング層5を同一若しくは同質の熱可塑性樹脂を使用するため、バッキング層5が多少混入しても表層1材を用いた原糸製造工程において支障無く、糸を製造することが可能となる。
【0031】一方のバッキング層5は、表層1と異なり使用時の消耗、汚れ等が少なく、バッキング層5としての通常の使用に耐えられるため、そのまま再利用される。ただし破損などにより明らかに使用に耐えられないものについては、バッキングに付着した砂、小石などの異物を容易に除去するため、且つ、再原料として利用しやすくするために破砕される。異物を除去したものはバッキング層5の原料となり、専用の機器を経てバッキング層5として再生される。この破砕工程は、例えば、押出し機を使用するなどの現在存在する技術を選択して行う。
【0032】上記で再生された表層1及びバッキング層5は、熱溶融性接着剤4を用い、図1に示す構造のように表層1とバッキング層5とを接着し、再度カーペットとして再生される。
【0033】上記の再生工程において行われる表層1とバッキング層5との剥離工程のフローを図5に示す。使用後、洗浄整備を行い使用に耐えられないと判別さたカーペットは60〜100℃に調整された温水中に1〜3分ほど浸漬される。これにより熱溶融性接着剤4は溶融し接着力が低下する。
【0034】加熱したカーペットは直ちに剥離装置にかけられる。この剥離工程は種々あるが、例えば速度の異なる上下1対のローラを有し、この速度差により、表層1とバッキング層5とを分離するもの等である。これにより分離された表層1とバッキング層5とはそれぞれ個別に回収し、次工程で再生される。
【0035】次に、表層1とバッキング層5の接着工程のフローを図6に示す。それぞれ独自に再生された表層1及びバッキング層5は、接着面を上にした状態で接着設備にかけられる。ここではまず、熱溶融性接着剤4を刷毛塗り、ローラー塗り、噴霧等により表層1及びバッキング層5の接着面にそれぞれ付着する。付着された熱溶融性接着剤4は、それに含まれる溶剤を揮発させるため、かつ熱溶融性接着剤4が接着に適する粘度になるよう80〜120℃に調整された乾燥室を経由する。この乾燥室を経由する時間は1〜3分程度である。熱溶融性接着剤4が接着に適した状態になった後、裏返されて接着面が下を向いた状態の表層1をバッキング層5に乗せ、1分ほど圧着する。このとき逆に、表層1に、裏返され接着面が下を向いた状態のバッキング層5を乗せて同様に圧着しても問題ない。この後熱溶融性接着剤4は、常温に下がるに連れて次第に硬化し、表層1とバッキング層5が接着される。ただし接着強度を向上させるためこの後1日ほど放置し、規定寸法である1辺が500mmになる様、端部のバリを切断し、再生カーペットが完成する。
【0036】図7に、本発明リサイクルシステムのフローを示している。同図において、販売又はレンタルしたカーペットを客先の要望により回収し、カーペットを洗浄して再使用する整備工場10を備えている。
【0037】また、使用済み再生用カーペットのバッキング層5から古い表層1を剥離して新しい同一又は同質の表層1を接着し、古いバッキング層5を再利用して新しい再生用カーペットを再生し、又は分離した古いバッキング層5と古い表層1とを破砕して新しいバッキング層5及び表層1を再生し、これらを接着して新しい再生用カーペットを再生する再生工場20と、再生用カーペットを収容管理する製品倉庫30とが備えられている。
【0038】更にこれらの整備工場10、再生工場20、製品倉庫30にコンピュータを介して情報交換し、顧客からの要望に応えて再生用カーペットの販売、レンタル、使用中の維持管理、及び回収を受任する管理センター40を備えたものである。
【0039】図8は、管理センター40におけるコンピューター通信を示すブロック図である。同図に示すように、管理センター40は、インターネットを介して顧客のニーズを把握できるように設定している。また整備工場10の整備品管理部や、再生工場20の再生工場管理部、あるいは製品倉庫30の製品管理部や配送管理部に、中央演算装置を介してデータ交換するものである。更に、絨毯配置ソフト、顧客対応ソフト、情報管理ソフト等の処理ソフトで管理体制をサポートすることも可能である。
【0040】管理センター40では、再生用カーペットを顧客希望の配色に設定するように前記整備工場10又は前記再生工場20に指示する業務も行なうものである。管理センター40に備えた絨毯配置ソフトでは、標準の絨毯色配置を提供し、顧客の要望に従う配置情報を受け、インターネット等で情報確認を行う。例えば、図9R>9に示す絨毯模様換え画面において、顧客が、碁盤状を成した各マス目の色を、色テーブルから選択した希望の色に指定することで着色イメージを作成し、この着色イメージを送信すると、管理センター40から再生工場20にデータが送られて、再生用カーペットが顧客の着色イメージ通りの配色に設定されるものである。
【0041】
【発明の効果】本発明は上述の如く構成したことにより当初の目的を達成する。すなわち、請求項1の再生方法により、使用済みカーペットのバッキング層5から古い表層1を剥離する剥離工程と、表層1が剥離された古いバッキング層5の上に新しい表層1を接着する接着工程とを有するので、使用済みのカーペットから、まだ使用可能なバッキング層5を繰り返し再利用することが可能になった。
【0042】また、請求項2により、表層1とバッキング層5とを夫々破砕して各素材から新しいバッキング層5及び表層1を再生できるので、使用済みのカーペットを無駄なくほとんど全ての素材を再利用することができる。
【0043】更に、請求項3及び請求項4に記載の再生用カーペットでは、表層1とバッキング層5とが60〜100℃で溶融し接着力が低下する熱溶融性接着剤4で接着されているため、加熱する事により熱溶融性接着剤4の接着力が低下し、表層1とバッキング層5とが容易に剥離されて分離分別できるので、各部材ごとに廃棄する際に、それぞれにあった再生の方法で再利用することができ、またカーペットとして再生することができる効果がある。
【0044】更に請求項5に記載のリサイクルシステムにより、製造から販売、レンタル、回収までのシステム全てをサポートするシステムが構築されたので、廃棄物を極力少なくすると共に、消費社会での省資源化を実現することができる。しかも、再生用カーペットを使用した顧客には、使用済みカーペットを廃棄する面倒な処理負担をかけることもない。
【0045】また、請求項6によるリサイクルシステムによって、顧客の希望に沿った配色の再生カーペットを極めて容易に提供することができる。
【0046】このように本発明によると、使用済みのカーペットを無駄なく再利用することが可能になり、しかも、製造から販売、レンタル、回収までのシステム全てをサポートすることで、廃棄物を極力少なくすると共に、消費社会での省資源化を実現することができるなどといった産業上有益な種々の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーペットの側面図である。
【図2】従来技術のカーペットの側面図である。
【図3】本発明で使用する熱溶融性接着剤の温水浸漬時のカーペット剥離強度を示す図である。
【図4】本発明のカーペット再生フローである。
【図5】表層とバッキング層を剥離する剥離工程のフロー図である。
【図6】再生された表層とバッキング層を接着する接着工程のフロー図である。
【図7】本発明のリサイクルシステムを示すフロー図である。
【図8】本発明の管理センターにおけるコンピューター通信を示すブロック図である。
【図9】本発明の管理センターにおける絨毯模様換え画面を示す図である。
【符号の説明】
1 表層
2 パイル糸
3 基布
4 熱溶融性接着剤
5 バッキング層
10 整備工場
20 再生工場
30 製品倉庫
40 管理センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 バッキング層と表層とが同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成され、これらバッキング層と表層とが熱溶融性接着剤で接着されたカーペットを再利用するカーペットの再生方法において、使用済みカーペットのバッキング層から古い表層を剥離する剥離工程と、表層が剥離された古いバッキング層の上に新しい同一又は同質の表層を接着する接着工程とを有することを特徴とするカーペットの再生方法。
【請求項2】 バッキング層と表層とが同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成され、これらバッキング層と表層とが熱溶融性接着剤で接着されたカーペットを再利用するカーペットの再生方法において、使用済みカーペットのバッキング層と表層を剥離する剥離工程と、分離した古いバッキング層と古い表層とを破砕する破砕処理工程と、破砕されたバッキング層及び表層から異物を除去する異物分離工程と、破砕された各素材から新しいバッキング層及び表層を再生する再生工程と、再生されたバッキング層と表層とを熱溶融性接着剤で接着する接着工程とから成ることを特徴とするカーペットの再生方法。
【請求項3】 使用済みのカーペットを再利用できるようにした再生用カーペットであって、バッキング層と、パイル糸及び基布からなる表層とを同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成し、これらバッキング層と表層とを熱溶融性接着剤で接着したことを特徴とする再生用カーペット。
【請求項4】 前記熱溶融性接着剤は、60〜100℃で溶融するウレタン樹脂系の熱溶融性接着剤を使用する請求項3記載の再生用カーペット。
【請求項5】 バッキング層と表層とが同一又は同質の熱可塑性樹脂材で形成され、これらバッキング層と表層とが熱溶融性接着剤で接着された再生用カーペットをリサイクルする再生用カーペットのリサイクルシステムにおいて、販売又はレンタルしたカーペットを客先の要望により回収し、カーペットを洗浄して再使用する整備工場と、使用済み再生用カーペットのバッキング層から古い表層を剥離して新しい同一又は同質の表層を接着し、古いバッキング層を再利用して新しい再生用カーペットを再生し、又は分離した古いバッキング層と古い表層とを破砕して新しいバッキング層及び表層を再生し、これらを接着して新しい再生用カーペットを再生する再生工場と、再生用カーペットを収容管理する製品倉庫とを備え、これら整備工場、再生工場、製品倉庫にコンピュータネットワークを介して情報交換し、顧客からの要望に応えて、再生用カーペットの販売、レンタル、使用中の維持管理、及び回収を受任する管理センターを備えたことを特徴とする再生用カーペットのリサイクルシステム。
【請求項6】 前記管理センターにおいて、再生用カーペットを顧客希望の配色に設定するように、前記整備工場又は前記再生工場に指示する請求項5記載の再生用カーペットのリサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2002−10901(P2002−10901A)
【公開日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−197740(P2000−197740)
【出願日】平成12年6月30日(2000.6.30)
【出願人】(591170647)三協フロンテア株式会社 (3)
【Fターム(参考)】