説明

カーボンナノチューブの加工方法及び加工装置

【課題】基板表面に対して略垂直に近い状態で高密度に配向したカーボンナノチューブに対し、極力ダメージを与えることなくエッチングして、長さが均一に揃ったカーボンナノチューブに加工する方法及び装置の提供。
【解決手段】カーボンナノチューブが形成されたウエハWをエッチング装置100の処理容器1内のステージ3上に載置する。シャワーリング57から処理容器1内にプラズマ生成ガスを導入するとともに、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を、平面アンテナ33に導き、透過板39を介して処理容器1内に導入する。プラズマが着火したタイミングで酸化性ガス(例えばOガス)又は還元性ガス(例えばHガスやNHガス)を処理容器1内に導入し、プラズマ化する。このように形成される低電子温度のプラズマを、ウエハW上のカーボンナノチューブに作用させることにより、その先端側から基端部側へ向けて長尺方向にエッチングが進行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの加工方法及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは優れた電気伝導性(低電気抵抗)、熱伝導性(高放熱性)、高い電流密度耐性(高エレクトロマイグレーション耐性)という特徴を持つことから、現在主流になっているCu配線に代わる次世代半導体装置の配線材料として期待されている。カーボンナノチューブを配線材料として用いるには、チューブの長さがある程度長く、かつ多数のチューブが一定の配向性を有して配列していることが必要とされている。また、カーボンナノチューブを例えば電界電子放出(フィールドエミッション)を利用した電子放出素子などの用途に利用するためには、ある程度長さが揃ったカーボンナノチューブを束状に高密度に配列させて使用する必要がある。しかし、カーボンナノチューブの成長の過程では、1本1本の長さにばらつきが生じることが避けられないため、目的に応じて適切な長さに加工する必要がある。
【0003】
カーボンナノチューブの加工法としては、主にCMP(化学機械研磨)やFIB(集束イオンビーム)が利用されてきた。例えばCMPによる加工の場合、カーボンナノチューブに直接研磨を行うとカーボンナノチューブの脱落や剥離を生じるため、カーボンナノチューブの束をシリカ系の固化材料によって固めた状態で研磨を行う必要があった。この場合、配向したカーボンナノチューブの間に固化材料が混入し、電気抵抗値を上昇させる原因になるなどの弊害があった。
【0004】
また、カーボンナノチューブをドライプロセスで加工する技術として、例えば特許文献1では、カーボンナノチューブにイオンを照射する工程と、酸化する工程とを含む加工方法が提案されている。ここで、イオンの照射や酸化にはプラズマを利用してもよいと記載されている。また、特許文献2では、カーボンナノチューブに、エネルギーが120[keV]より低い電子線を照射する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−180920号公報
【特許文献2】特開2003−159700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2のようにイオンや電子線の照射による方法では、カーボンナノチューブの先端部のみを切断(又はエッチング)することは困難であり、細長いカーボンナノチューブの途中で切断や損傷が生じることにより、変形、変質や、カーボンナノチューブの長さにバラツキが生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板表面に対して略垂直に近い状態で高密度に配向したカーボンナノチューブに対し、極力ダメージを与えることなくエッチングして、長さが均一に揃ったカーボンナノチューブに加工する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカーボンナノチューブの加工方法は、基板表面に対して略垂直に配向した束状のカーボンナノチューブを有する基板を処理容器内に配置する工程と、複数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナにより前記処理容器内にマイクロ波を導入してエッチングガスのプラズマを生成させ、該プラズマにより前記束状のカーボンナノチューブを先端側からエッチングする工程と、を備えている。
【0009】
本発明のカーボンナノチューブの加工方法は、前記平面アンテナがラジアル・ライン・スロット・アンテナであってもよい。
【0010】
本発明のカーボンナノチューブの加工方法は、前記エッチングガスが、酸化性のガスであってもよい。この場合、酸化性のガスが、Oガス、Oガス、HOガス、Hガス及びNOガスよりなる群から選ばれる1種以上のガスであることが好ましい。
【0011】
本発明のカーボンナノチューブの加工方法は、前記エッチングガスが、還元性のガスであってもよい。この場合、還元性のガスが、Hガス及びNHガスよりなる群から選ばれる1種以上のガスであることが好ましい。
【0012】
本発明のカーボンナノチューブの加工装置は、基板を処理する上部が開口した処理容器と、前記処理容器内で、前記基板の表面に対して略垂直に配向した束状のカーボンナノチューブを有する基板を載置する載置台と、前記処理容器の前記開口部を塞ぐ誘電体板と、前記誘電体板の外側に設けられて前記処理容器内にマイクロ波を導入する、多数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナと、前記処理容器内に処理ガスを導入する第1のガス導入部と、前記処理容器内に処理ガスを導入する第2のガス導入部と、前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続される排気口と、を備えている。このカーボンナノチューブの加工装置において、前記第1のガス導入部は、前記誘電体板と前記第2のガス導入部との間に設けられており、前記第2のガス導入部は、前記第1のガス導入部と前記載置台との間に設けられ、前記載置台上に載置された基板表面のカーボンナノチューブに対向してガスを吐出する複数のガス放出孔を有しており、前記第1のガス導入部及び前記第2のガス導入部の片方又は両方から、エッチングガスを前記処理容器内に導入してカーボンナノチューブのエッチングを行う。この場合、前記誘電体板の下面から、前記載置台の上面までの距離が140mm〜200mmの範囲内であり、かつ第2のガス導入部の下端から前記載置台の上面までの距離が80mm以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカーボンナノチューブの加工方法によれば、基板表面に対して略垂直に配向した束状のカーボンナノチューブを先端側からエッチングして、長さが一様に揃った束状のカーボンナノチューブに加工することが可能である。本発明のカーボンナノチューブの加工方法では、複数の孔を有する平面アンテナにより処理容器内にマイクロ波を導入して生成させたエッチングガスのプラズマを利用するため、カーボンナノチューブの側部や基端部にプラズマダメージをほとんど与えることなく加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に用いるエッチング装置の構成例を示す断面図である。
【図2】図1のエッチング装置における平面アンテナの構成例を示す図面である。
【図3】図1のエッチング装置におけるシャワープレートの構成例を示す下面図である。
【図4】図1のエッチング装置の制御部の構成例を説明する図面である。
【図5A】処理対象となるカーボンナノチューブが形成された基板の表面を模式的に説明する図面である。
【図5B】図5Aのカーボンナノチューブをエッチングした状態を模式的に説明する図面である。
【図6A】実施例1〜3におけるエッチング前のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6B】実施例1におけるOプラズマエッチング後のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6C】実施例2におけるNHプラズマエッチング後のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6D】実施例3におけるHプラズマエッチング後のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】実施例1〜3におけるエッチング前後のカーボンナノチューブの結晶性をラマン散乱分光法により測定した結果を示すチャートである。
【図8A】実施例4におけるHプラズマエッチング後のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8B】実施例5におけるH/Oプラズマエッチング後のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9A】実施例6におけるエッチング前のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9B】実施例6におけるHOプラズマエッチング後のカーボンナノチューブの状態を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10】カーボンナノチューブ照明装置の概略構成を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
[エッチング装置]
図1は、本発明の一実施の形態に係るカーボンナノチューブの加工方法に使用可能なエッチング装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すエッチング装置100は、マイクロ波を平面アンテナの多数のマイクロ波放射孔から放射させて処理容器内に均質なマイクロ波プラズマを形成できるRLSA(ラジアル・ライン・スロット・アンテナ;Radial Line Slot Antenna)方式のマイクロ波プラズマ処理装置として構成されている。エッチング装置100で利用するマイクロ波プラズマは、ラジカルを主体とする低電子温度のプラズマであるため、カーボンナノチューブのエッチング処理に適している。
【0017】
このエッチング装置100は、主要な構成として、略円筒状の処理容器1と、処理容器1内に設けられ、被処理体である、カーボンナノチューブが形成された半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wを載置するステージ3と、処理容器1内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入部5と、処理容器1内にガスを導くガス供給部7と、処理容器1内を排気する排気部11と、エッチング装置100の各構成部を制御する制御部13と、を有している。
【0018】
(処理容器)
処理容器1の底壁1aの略中央部には円形の開口部15が形成されており、底壁1aにはこの開口部15と連通し、下方に向けて突出する排気室17が設けられている。また、処理容器1の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口19と、この搬入出口19を開閉するゲートバルブGとが設けられている。
【0019】
(ステージ)
ステージ3は、例えばAlN等のセラミックスから構成されている。ステージ3は、排気室17の底部中央から上方に延びる円筒状のセラミックス製の支持部材23により支持されている。ステージ3の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング25が設けられている。また、ステージ3の内部には、ウエハWを昇降するための昇降ピン(図示せず)がステージ3の上面に対して突没可能に設けられている。
【0020】
また、ステージ3の内部には抵抗加熱型のヒータ27が埋め込まれている。このヒータ27にヒータ電源29から給電することによりステージ3を介してその上のウエハWを加熱することができる。また、ステージ3には、熱電対(図示せず)が挿入されており、ウエハWの加熱温度を50〜650℃の範囲で制御可能となっている。なお、ウエハWの温度は、特に断りのない限り、ヒータ27の設定温度ではなく、熱電対により計測された温度を意味する。また、ステージ3内のヒータ27の上方には、ウエハWと同程度の大きさの電極31が埋設されている。この電極31は接地されている。
【0021】
(マイクロ波導入部)
マイクロ波導入部5は、処理容器1の上部に設けられ、多数のマイクロ波放射孔33aが形成された平面アンテナ33と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部35と、誘電体板としての透過板39と、処理容器1の上部に設けられた枠状部材41と、マイクロ波の波長を調節する誘電体からなる遅波板43と、平面アンテナ33及び遅波板43を覆うカバー部材45と、を有している。また、マイクロ波導入部5は、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を平面アンテナ33に導く導波管47及び同軸導波管49と、導波管47と同軸導波管49との間に設けられたモード変換器51とを有している。
【0022】
マイクロ波を透過させる透過板39は、誘電体、例えば石英やA1、AlN等のセラミックス等の材質で構成されている。透過板39は、枠状部材41に支持されている。この透過板39と枠状部材41との間は、Oリング等のシール部材(図示せず)により気密にシールされている。したがって、処理容器1内は気密に保持される。
【0023】
平面アンテナ33は、例えば円板状をなしており、表面が金または銀メッキされた銅板、アルミニウム板、ニッケル板およびそれらの合金などの導電性部材で構成されている。平面アンテナ33は、透過板39の上方(処理容器1の外側)において、ステージ3の上面(ウエハWを載置する面)とほぼ平行に設けられている。平面アンテナ33は、枠状部材41の上端に係止されている。平面アンテナ33は、マイクロ波を放射する多数の長方形状(スロット状)のマイクロ波放射孔33aを有している。マイクロ波放射孔33aは、所定のパターンで平面アンテナ33を貫通して形成されている。典型的には、図2に示したように、隣接するマイクロ波放射孔33aが所定の形状(例えばT字状)に組み合わされて対をなし、さらにそれが全体として例えば同心円状に配置されている。マイクロ波放射孔33aの長さや配列間隔は、同軸導波管49内のマイクロ波の波長(λg)に応じて決定される。例えば、マイクロ波放射孔33aの間隔は、λg/4〜λgとなるように配置される。図2においては、同心円状に形成された隣接するマイクロ波放射孔33aどうしの間隔をΔrで示している。なお、マイクロ波放射孔33aの形状は、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、マイクロ波放射孔33aの配置形態は特に限定されず、同心円状のほか、例えば、螺旋状、放射状等に配置することもできる。
【0024】
平面アンテナ33の上面には、真空よりも大きい誘電率を有する遅波板43が設けられている。この遅波板43は、真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する機能を有している。遅波板43の材質としては、例えば石英、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0025】
これら平面アンテナ33および遅波材43を覆うように、カバー部材45が設けられている。カバー部材45は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料によって形成されている。カバー部材45の上壁(天井部)の中央には、同軸導波管49が接続されている。同軸導波管49は、平面アンテナ33の中心から上方に伸びる内導体49aとその周囲に設けられた外導体49bとを有している。同軸導波管49の他端側には、モード変換器51が設けられ、このモード変換器51は、導波管47によりマイクロ波発生部35に接続されている。導波管47は、水平方向に延びる矩形導波管であり、モード変換器51は、導波管47内をTEモードで伝播するマイクロ波をTEMモードに変換する機能を有している。以上のような構成のマイクロ波導入部5により、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波が同軸導波管49を介して平面アンテナ33へ伝送され、さらに透過板39を介して処理容器1内に導入されるようになっている。なお、マイクロ波の周波数としては、例えば2.45GHzが好ましく用いられ、他に8.35GHz、1.98GHz等を用いることもできる。以下、特に明記しない限り、周波数2.45GHzのマイクロ波を用いることとする。
【0026】
(ガス供給部)
ガス供給部7は、処理容器1の内壁に沿ってリング状に設けられた第1のガス導入部としてのシャワーリング57と、このシャワーリング57の下方において、処理容器1内の空間を上下に仕切るように設けられた第2のガス導入部としてのシャワープレート59と、を有している。
【0027】
シャワーリング57は、処理容器1内空間へガスを導入する環状に配置された多数のガス放出孔57aと、このガス放出孔57aに連通するガス流路57bとを有しており、該ガス流路57bは、ガス供給配管71を介して第1ガス供給部7Aに接続されている。第1ガス供給部7Aは、ガス供給配管71から分岐した3本の分岐管71a、71b、71cを有している。分岐管71aは、プラズマ生成ガス(例えばArガス)を供給するプラズマ生成ガス供給源73に接続されている。分岐管71bは、エッチングガスを供給するエッチングガス供給源75に接続されている。分岐管71cは、不活性ガス(例えばNガス)を供給する不活性ガス供給源77に接続されている。なお、分岐管71a、71b、71cには、図示しない流量制御装置やバルブが設けられている。プラズマ生成ガスとしては、例えば希ガスなどを用いることができる。希ガスとしては、例えばAr、Ne、Kr、Xe、Heなどを用いることができる。これらの中でも、プラズマを安定に生成できるArを用いることが特に好ましい。エッチングガスとしては、例えば酸化性ガス又は還元性ガスを用いることができる。酸化性ガスとしては、例えば、O、O、HO、H、NO等を用いることができる。エッチングガスとして酸化性ガスを用いるメリットは、後記実施例に示したように高いエッチングレートが得られることにある。酸化性ガスは、特に、カーボンナノチューブの下地層がガラス、金属酸化物などの材料で構成されている場合に好ましく使用できる。還元性ガスとしては、例えばH、NH等を用いることができる。カーボンナノチューブの下地層に例えば金属、窒化物、有機物などを使用している場合、酸化性のエッチングガスを用いると、これらの下地層の材料が酸化され、導電性が低下したり、分解、劣化したりする可能性がある。このような場合に、エッチングガスとして還元性ガスを用いるメリットがある。後記実施例に示すように、エッチング装置100では、還元性のガスを使用しても実用上十分なエッチングレートで低ダメージのエッチングが可能である。また、還元性ガス(例えばHガス)に対して、好ましくは0.001〜3体積%程度、より好ましくは0.005〜1体積%程度の微量の酸化性ガス(例えばO)を添加することにより、エッチングレートを向上させることができる。すなわち、カーボンナノチューブにダメージを与えにくい還元性ガスを主体とし、そこに反応性の高い酸化性ガスを微量に添加することで、カーボンナノチューブへのダメージを抑制しながらエッチングレートを高めることができる。不活性ガスとしては、例えば、Nなどを用いることができる。不活性ガス供給源77からの不活性ガスは、例えば、パージガス、圧力調整用ガス等の用途で使用される。
【0028】
処理容器1内のステージ3とマイクロ波導入部5との間には、エッチングのための処理ガスを導入するためのシャワープレート59が水平に設けられている。シャワープレート59は、例えばアルミニウム等の材質からなる平面視格子状に形成されたガス分配部材61を有している。このガス分配部材61は、その格子状の本体部分の内部に形成されたガス流路63と、ガス流路63に連通して形成され、ステージ3に対向するように開口する多数のガス放出孔65とを有しており、さらに、格子状のガス流路63の間は、多数の貫通開口67が設けられている。図3に示すように、ガス流路63は、格子状流路63aと、この格子状流路63aに連通してこれを囲むように設けられたリング状流路63bと、を有している。シャワープレート59のガス流路63には処理容器1の壁に達するガス供給路69が接続されており、このガス供給路69はガス供給配管79を介して第2ガス供給部7Bに接続されている。
【0029】
第2ガス供給部7Bは、ガス供給配管79から分岐した2本の分岐管79a、79bを有している。分岐管79aは、エッチングガスを供給するエッチングガス供給源81に接続されている。分岐管79bは、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源83に接続されている。なお、分岐管79a、79bには、図示しない流量制御装置やバルブが設けられている。エッチングガスとしては、上記と同様に、酸化性ガス又は還元性ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、例えば、Nなどを用いることができる。不活性ガス供給源83からの不活性ガスは、例えばパージガス、キャリアガス等の用途で使用される。
【0030】
上記のとおり、エッチングガスは、第1ガス供給部7Aからシャワーリング57を介して処理容器1内に導入してもよいし、第2ガス供給部7Bからシャワープレート59を介して処理容器1内に導入してもよいが、ステージ3により近いシャワープレート59を介して導入することが好ましい。反応性ガスであるエッチングガスをシャワープレート59から処理容器1内へ導入することにより、プラズマによるエッチングガスの過剰な分解を抑制することができる。そして、強いエネルギーを持つイオンによるイオン性エッチングではなく、反応性の高いラジカルによる低ダメージなエッチングが実現できる。また、強い酸化作用や還元作用が得られ、高いエッチングレートが得られる。なお、図示は省略するが、第1ガス供給部7A、第2ガス供給部7Bは、上記以外に、例えば処理容器1内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給源などの他のガス供給源を備えていてもよい。
【0031】
(排気部)
排気部11は、排気室17と、この排気室17の側面に設けられた排気管97と、この排気管97に接続された排気装置99とを有している。排気装置99は、図示は省略するが、例えば真空ポンプや圧力制御バルブ等を有している。
【0032】
(制御部)
制御部13は、エッチング装置100の各構成部を制御するモジュールコントローラである。制御部13は、典型的にはコンピュータであり、例えば図4に示したように、CPUを備えたコントローラ101と、このコントローラ101に接続されたユーザーインターフェース103および記憶部105を備えている。コントローラ101は、エッチング装置100において、例えば温度、圧力、ガス流量、マイクロ波出力などのプロセス条件に関係する各構成部(例えば、ヒータ電源29、第1ガス供給部7A、第2ガス供給部7B、マイクロ波発生部35、排気装置99など)を制御する制御手段である。
【0033】
ユーザーインターフェース103は、工程管理者がエッチング装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、エッチング装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。また、記憶部105には、エッチング装置100で実行される各種処理をコントローラ101の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピなどが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース103からの指示等にて任意のレシピを記憶部105から呼び出してコントローラ101に実行させることで、コントローラ101の制御によりエッチング装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。また、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体107に格納された状態のものを利用できる。そのような記録媒体107としては、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどを用いることができる。さらに、前記レシピを他の装置から例えば専用回線を介して伝送させて利用することも可能である。
【0034】
[カーボンナノチューブの加工方法]
次に、エッチング装置100において行われるカーボンナノチューブの加工方法について説明する。図5A及び図5Bは、カーボンナノチューブの加工方法の主要な工程を説明するウエハWの表面付近の縦断面図である。
【0035】
まず、カーボンナノチューブが形成されたウエハWを準備し、エッチング装置100のゲートバルブGを開放して、このウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3上に載置する。このウエハWとしては、例えば図5Aに示すように、シリコン基板301の表層付近に、長さLの多数のカーボンナノチューブ303Aが高密度に束状に形成され、かつ該シリコン基板301の表面に対して略垂直に配向したものを用いる。なお、半導体基板であるウエハWの代わりに、基板として、例えばガラス基板、プラスチック(高分子)基板などを用いることもできる。
【0036】
シャワーリング57から処理容器1内にプラズマ生成ガス(例えばArガス)を導入するとともに、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を、導波管47及び同軸導波管49を介して所定のモードで平面アンテナ33に導き、平面アンテナ33のマイクロ波放射孔33a、透過板39を介して処理容器1内に導入する。このマイクロ波により、プラズマ生成ガス(例えばArガス)をプラズマ化する。ここで、エッチングガスとして酸化性ガス(例えばOガス)を使用する場合は、プラズマが着火したタイミングでシャワーリング57のガス放出孔57a又はシャワープレート59のガス放出孔65から酸化性ガス(例えばOガス)を導入し、プラズマ化することができる。また、エッチングガスとして還元性ガス(例えばHガスやNHガス)を用いる場合は、プラズマが着火したタイミングでシャワーリング57のガス放出孔57a又はシャワープレート59のガス放出孔65を介して還元性ガス(例えばHガスやNHガス)を処理容器1内に導入し、プラズマ化することができる。このように形成されるプラズマは、マイクロ波が平面アンテナ33の多数のマイクロ波放射孔33aから放射されることにより、略1×1010〜5×1013/cm程度の高密度のプラズマであり、かつウエハW近傍では略1.5[eV]以下の低電子温度プラズマとなる。
【0037】
[プラズマエッチングの条件]
(処理圧力)
プラズマエッチングにおける処理容器1内の圧力は、プラズマを安定して維持するため、例えば66.7〜400Pa(0.5〜3Torr)とすることが好ましく、66.7〜266Pa(0.5〜2Torr)がより好ましい。
【0038】
(ガス流量)
エッチングガスとして、酸化性ガス、例えばOガスを用いる場合、その流量は、プラズマ中で活性種を効率的に生成させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、100〜500mL/min(sccm)がより好ましい。また、酸化性ガスとしてHOガスを用いる場合、その流量は、プラズマ中で活性種を効率的に生成させる観点から、例えば0.01〜10mL/min(sccm)とすることが好ましく、0.01〜3mL/min(sccm)がより好ましい。
【0039】
エッチングガスとして、還元性ガス、例えばHガスもしくはNHガスを用いる場合、その流量は、プラズマ中で活性種を効率的に生成させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、100〜500mL/min(sccm)がより好ましい。
【0040】
また、プラズマ生成ガスとしてArガスを用いる場合、その流量は、処理容器1内でプラズマを安定して生成させるとともに、プラズマ中での活性種の生成効率を高める観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)がより好ましい。
【0041】
(マイクロ波パワー)
マイクロ波パワーは、プラズマ中で活性種を効率よく生成させる観点から、例えば500W〜4000Wとすることが好ましく、500W〜2000Wがより好ましい。また、マイクロ波のパワー密度は、プラズマ中で活性種を効率よく生成させる観点から、0.3W/cm以上3.2W/cm以下の範囲内とすることが好ましく、0.3W/cm以上1.6W/cm以下の範囲内がより好ましい。なお、マイクロ波のパワー密度は、透過板39の面積1cmあたりに供給されるマイクロ波パワーを意味する(以下、同様である)。
【0042】
また、処理容器1における透過板39の下面から、ウエハWを載置するステージ3の上面までの間隔(ギャップ)Gは、プラズマの電子温度をウエハW近傍で十分に下げてカーボンナノチューブへのダメージを抑制する観点から、140mm〜200mmの範囲内とすることが好ましく、160mm〜185mmの範囲内とすることがより好ましい。この場合において、シャワープレート59の下端(ガス放出孔65の開口位置)から、ウエハWを載置するステージ3の上面までの間隔Gは、ウエハW表面のカーボンナノチューブへのイオン照射を抑制し、ラジカル主体の低ダメージなエッチングを可能にする観点から、80mm以上とすることが好ましく、100mm以上とすることがより好ましい。
【0043】
また、プラズマエッチング処理における処理温度は、例えばウエハWの温度を20℃以上500℃以下の範囲内になるように設定することが好ましく、20℃以上250℃以下の範囲内になるように設定することがより好ましい。エッチングレートを高めるためには、ウエハWの温度を100℃以上に加熱することが好ましい。
【0044】
処理時間は、目的とするエッチング量に応じて適宜設定できるため、特に限定する意味ではないが、例えば5〜30分とすることが好ましい。
【0045】
エッチング後、まずマイクロ波の供給を停止し、さらにプラズマ生成ガス及びエッチングガス(酸化性ガス又は還元性ガス)の供給を停止し、処理容器1内の圧力を調整した後に、ゲートバルブGを開放してウエハWを搬出する。
【0046】
以上のように生成させた酸化性ガスのプラズマ又は還元性ガスのプラズマをウエハW上のカーボンナノチューブ303Aに作用させることにより、カーボンナノチューブ303Aの先端側から基端部側へ向けて配向方向(つまり、カーボンナノチューブ303Aの長尺方向)にエッチングが進行し、図5Bに示したように、長さLからLに短縮されたカーボンナノチューブ303Bに加工できる。エッチング装置100では、処理容器1内でほぼ均一にプラズマを生成できるため、ウエハWの面内(面方向)において均一な速度でカーボンナノチューブ303Aのエッチングが進み、エッチング後には、カーボンナノチューブ303Bの先端が略同一平面に位置するように均等に加工される。また、RLSA方式のエッチング装置100では、低電子温度のマイルドなプラズマを利用するため、カーボンナノチューブ303Bの側部や基端部、さらに下地層にもダメージを与えるおそれが少ない。
【0047】
なお、図5A及び図5Bでは、シリコン基板301の全面にカーボンナノチューブ303A,303Bが形成されている態様を例に挙げて説明したが、所定のパターン状に形成されたカーボンナノチューブ303A,303Bをエッチング対象としてもよい。また、本実施の形態の加工方法では、カーボンナノチューブ303A(又は303B)に対し、適切なエッチングマスクを使用して部分的に長さがゼロになるまでエッチングすることにより、カーボンナノチューブ303A(又は303B)のパターニングを行うこともできる。
【0048】
本実施の形態の方法により加工されたカーボンナノチューブ303Bは、その先端位置が略同一平面上になるように揃った状態に加工されており、例えば電子放出素子やカーボンナノチューブ照明装置に利用できるほか、例えば半導体装置のビア配線などの用途にも利用できる。特に、カーボンナノチューブ303Bの先端から電子を一定方向へ向けて放出する電子放出素子への適用において、長さが均一で高い配向性を保ち、かつ側部や基端部に損傷が少ないカーボンナノチューブ303Bは利用価値が高いものである。
【0049】
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制約されるものではない。なお、実験でエッチング対象としたカーボンナノチューブは、以下の条件で触媒活性化処理、パージ処理、成長処理を行って形成したものである。
【0050】
<触媒活性化処理の条件>
処理圧力:66.7Pa(0.5Torr)
処理ガス:
ガス 462mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:1kW
処理温度:470℃
処理時間:5分間
【0051】
活性化処理とカーボンナノチューブの形成処理の間にNガスによりパージ処理を行った。<パージ処理の条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
処理温度:470℃
処理時間:2分間
【0052】
<カーボンナノチューブ形成条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 30mL/min(sccm)
ガス 1109mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:1kW
処理温度:470℃
処理時間:30分間
【0053】
また、以下の実施例では、図1のエッチング装置100と同様の構成のエッチング装置を使用してカーボンナノチューブのエッチングを行った。この装置の透過板39の下面から、ウエハWを載置するステージ3の上面までの間隔(ギャップ)Gは、170mmであり、シャワープレート59の下端(ガス放出孔65の開口位置)から、ウエハWを載置するステージ3の上面までの間隔Gは109mmに設定した。
【0054】
[実施例1〜3]
図5Aと同様の構成のカーボンナノチューブに対して、下記の表1に示す条件で、Oプラズマ(実施例1)、NHプラズマ(実施例2)、又はHプラズマ(実施例3)によりエッチングを実施した。この実験では、エッチングガスとしてのOガスはシャワーリング57から導入し、NHガス及びHガスはシャワープレート59から導入した。エッチング後のカーボンナノチューブのダメージの有無は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により確認した。エッチングレート及びエッチングダメージの有無に関する評価結果を併せて表1に示した。また、SEMによるエッチング前の観察結果を図6Aに、実施例1のOプラズマによるエッチング後の観察結果を図6Bに、実施例2のNHプラズマによるエッチング後の観察結果を図6Cに、実施例3のHプラズマによるエッチング後の観察結果を図6Dに、それぞれ示した。表1より、エッチングレートが最も高いのはOプラズマによるエッチング(実施例1)であったが、NHプラズマ、Hプラズマでも実用上十分なエッチングレートが得られた。
【0055】
【表1】

【0056】
また、実施例1〜3のエッチング後のカーボンナノチューブの結晶性について、ラマン散乱分光法によって評価した。ラマンスペクトルのチャートを図7に示した。図7から、1350cm−1前後に現れるDバンドのピークが、エッチング前後で変化しておらず、G/D比に変化がないことから、エッチング前の結晶性がエッチング後も維持されており、加工によるダメージがないことが確認された。なお、G/D比は、エッチング前が1.07、実施例1のOプラズマによるエッチング後が1.05、実施例2のNHプラズマによるエッチング後が0.97、実施例3のHプラズマによるエッチング後が1.05であった。
【0057】
[実施例4及び5]
図5Aと同様の構成のカーボンナノチューブに対して、下記の表2に示す条件で、Hプラズマ(実施例4)、又は、H/Oプラズマ(実施例5)によりエッチングを実施した。この実験では、エッチングガスとしてのOガスはシャワーリング57から導入し、Hガスはシャワープレート59から導入した。SEMによる実施例4のHプラズマによるエッチング後の観察結果を図8Aに、実施例5のH/Oプラズマによるエッチング後の観察結果を図8Bに、それぞれ示した。表2に示した実施例4と実施例5の比較から、Hガスに微量の酸素を添加することによって、カーボンナノチューブのダメージを抑制しながら、カーボンナノチューブのエッチングレートを大幅に向上させることが可能であった。
【0058】
【表2】

【0059】
[実施例6]
図5Aと同様の構成のカーボンナノチューブに対して、下記の条件で、HOプラズマによりエッチングを実施した。なお、エッチングガスとしてのHOガスは、アルゴンガスとともにシャワープレート59から導入した。
【0060】
<エッチング条件>
処理圧力;133.3[Pa]
Arガス流量;100[mL/min(sccm)]
Oガス流量;0.03[mL/min(sccm)]
マイクロ波パワー;1[kW]
温度[℃];470℃
時間[分];5分間
【0061】
SEMによるエッチング前の観察結果を図9Aに、実施例6のHOプラズマによるエッチング後の観察結果を図9Bにそれぞれ示した。図9Aに示したカーボンナノチューブの初期長さLは3.2[μm]、図9Bに示したエッチング後のカーボンナノチューブの長さLは2.6[μm]であり、エッチングレートは120[nm/min]であった。
【0062】
以上の実験結果から、マイクロ波プラズマを利用するRLSA方式のエッチング装置100を用いることにより、基板表面に対して略垂直に近い状態で高密度に配向したカーボンナノチューブを、極力ダメージを与えることなくエッチングし、長さが一様に揃ったカーボンナノチューブに加工できることが確認された。
【0063】
[電子放出素子及びカーボンナノチューブ照明装置への適用例]
次に、本実施の形態の加工方法によって加工されたカーボンナノチューブを電子放出素子及びカーボンナノチューブ照明装置に適用した例について説明する。図10は、カーボンナノチューブを電子放出素子として用いたカーボンナノチューブ照明400の概略構成を示している。カーボンナノチューブ照明400は、カソード基板401、カソード電極402、及び束状のカーボンナノチューブ403を有するエミッタ部410と、蛍光層(白色)411、アノード電極412及びアノード基板413を有する発光部420と、前記カソード電極402と前記アノード電極412との間に電圧を印加する外部電源430と、を備えている。ここで、エミッタ部410のカソード電極402とカーボンナノチューブ403は、電気的に接続されている。また、カソード電極402とカーボンナノチューブ403は、電子放出素子を構成している。
【0064】
(エミッタ部)
エミッタ部410は、カソード基板401、カソード電極402、及び上記加工方法により加工された束状のカーボンナノチューブ403を積層した構造を有している。図示は省略するが、カソード電極402とカーボンナノチューブ403との間には、例えば鉄、ニッケル、コバルトなどの金属や、その金属酸化物、金属窒化物などからなる触媒金属層を有していてもよい。この触媒金属層は、カーボンナノチューブ403を成長させる際に利用されたものであり、カソード電極402の一部分として存在していてもよい。カソード基板401としては、例えば100℃〜350℃程度の加熱に耐えうるものであれば良く、例えばシリコン基板、ガラス基板、合成樹脂(高分子)基板を用いることができる。また、カソード電極402を構成する材料としては、導電性材料であれば特に限定されず、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、鋼、ステンレス等を用いることができるが、紫外光・可視光・赤外光で反射率が高く安価なアルミニウムが最も好ましい。カソード電極402の厚さは、例えば1〜10μm程度が好ましい。
【0065】
(発光部)
発光部420は、蛍光層(白色)411、アノード電極412、及びアノード基板413を積層させた構造を有しており、アノード基板413の表面を発光面とする。蛍光層411は、カーボンナノチューブ403に対向して、アノード電極412に積層して設けられ、電子放出素子から放出された電子を受けて発光する部位である。蛍光層411に用いる蛍光体は、発光する波長や用途に応じ、適宜選択することができる。蛍光体としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどの微粒子を用いることができる。蛍光層411は、例えば、塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法などにより形成することができる。アノード電極412は、カソード電極402及びカーボンナノチューブ403を含む電子放出素子と対向して配置される。アノード電極412は、透明導電性材料膜であればよく、その材質として、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、グラフェン、酸化亜鉛、酸化スズ等を用いることができる。アノード電極412は、例えばスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、スプレー法、ディップ法などの方法でアノード基板413上に形成できる。アノード基板413は、透光性を示す材料であればよく、例えばガラス基板のほか、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂(高分子)基板を用いることができる。
【0066】
カーボンナノチューブ照明400では、少なくともカソード電極402とアノード電極412との間を真空に保持できるように、例えば真空排気された容器(図示せず)中に設置される。
【0067】
以上のような構成のカーボンナノチューブ照明400では、エミッタ部410のカソード電極402と、発光部420のアノード電極412との間に外部電源430により電圧を印加する。これにより、電界放出効果によってカーボンナノチューブ403の先端部から電子eが放出されて蛍光層411に入射し、発光が生じる。この光はアノード電極412及びアノード基板413を透過してアノード基板413の表面から外部に照射される。
【0068】
図10に例示したカーボンナノチューブ照明400及び電子放出素子の製造は、例えばカソード基板401、カソード電極402及び束状のカーボンナノチューブ403を有する積層体をエッチング装置100内のステージ3上に配置する工程と、複数のマイクロ波放射孔33aを有する平面アンテナ33により処理容器1内にマイクロ波を導入してエッチングガス(酸化性ガス又は還元性ガス)のプラズマを生成させ、該プラズマにより束状のカーボンナノチューブを先端側からエッチングする工程と、を含むことができる。
【0069】
カーボンナノチューブ照明400では、カソード電極402及びアノード電極412に対して略垂直に、かつ高密度に配向し、長さが均等で先端の位置が揃っており、ダメージもほとんどない束状のカーボンナノチューブ403を備えているため、均一かつ高効率の電界放出が可能である。従って、高い電界放出効果により低電圧化、低消費電力、低発熱の照明装置を作製できる。カーボンナノチューブ照明400の具体的な用途としては、例えば屋内・屋外の一般照明;野菜工場などの工場などにおける大規模照明設備;液晶バックライト、LEDディスプレイ光源等のディスプレイ用途;赤外線センサ光源、産業用光センサ光源などのセンシング用途;交通信号灯、非常灯などのシグナル用途;内視鏡などの医療用光源を例示することができる。また、本実施の形態の加工方法によって加工されたカーボンナノチューブを備えた電子放出素子は、強電界によって電子を放出する電界放射型の電子放出素子として、上記照明装置に限らず、例えば、光プリンタ、電子顕微鏡、電子ビーム露光装置などの電子発生源や、電子銃、平面ディスプレイを構成するアレイ状のフィールドエミッタアレイの電子源などの各種用途にも利用可能である。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の改変が可能である。例えば、上記実施の形態では、本発明のカーボンナノチューブの加工方法を、カーボンナノチューブ照明及び電子放出素子の製造に適用した例を挙げたが、本発明のカーボンナノチューブの加工方法は、例えば半導体装置のビア配線としてのカーボンナノチューブの加工にも適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1…処理容器、3…ステージ、5…マイクロ波導入部、7…ガス供給部、7A…第1ガス供給部、7B…第2ガス供給部、11…排気部、13…制御部、15…開口部、17…排気室、19…搬入出口、23…支持部材、25…ガイドリング、27…ヒータ、29…ヒータ電源、31…電極、33…平面アンテナ、33a…マイクロ波放射孔、35…マイクロ波発生部、39…透過板、41…枠状部材、43…遅波板、45…カバー部材、47…導波管、49…同軸導波管、57…シャワーリング、57a…ガス放出孔、57b…ガス流路、59…シャワープレート、63…ガス流路、63a…格子状流路、63b…リング状流路、69…ガス供給路、71…ガス供給配管、71a,71b,71c…分岐管、79…ガス供給配管、99…排気装置、100…エッチング装置、G…ゲートバルブ、W…半導体ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に対して略垂直に配向した束状のカーボンナノチューブを有する基板を処理容器内に配置する工程と、
複数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナにより前記処理容器内にマイクロ波を導入してエッチングガスのプラズマを生成させ、該プラズマにより前記束状のカーボンナノチューブを先端側からエッチングする工程と、
を備えているカーボンナノチューブの加工方法。
【請求項2】
前記平面アンテナがラジアル・ライン・スロット・アンテナである請求項1に記載のカーボンナノチューブの加工方法。
【請求項3】
前記エッチングガスが、酸化性のガスである請求項1に記載のカーボンナノチューブの加工方法。
【請求項4】
前記酸化性のガスが、Oガス、Oガス、HOガス、Hガス及びNOガスよりなる群から選ばれる1種以上のガスである請求項3に記載のカーボンナノチューブの加工方法。
【請求項5】
前記エッチングガスが、還元性のガスである請求項1に記載のカーボンナノチューブの加工方法。
【請求項6】
前記還元性のガスが、Hガス及びNHガスよりなる群から選ばれる1種以上のガスである請求項5に記載のカーボンナノチューブの加工方法。
【請求項7】
基板を処理する上部が開口した処理容器と、
前記処理容器内で、前記基板の表面に対して略垂直に配向した束状のカーボンナノチューブを有する基板を載置する載置台と、
前記処理容器の前記開口部を塞ぐ誘電体板と、
前記誘電体板の外側に設けられて前記処理容器内にマイクロ波を導入する、多数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナと、
前記処理容器内に処理ガスを導入する第1のガス導入部と、
前記処理容器内に処理ガスを導入する第2のガス導入部と、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続される排気口と、
を備え、
前記第1のガス導入部は、前記誘電体板と前記第2のガス導入部との間に設けられており、
前記第2のガス導入部は、前記第1のガス導入部と前記載置台との間に設けられ、前記載置台上に載置された基板表面のカーボンナノチューブに対向してガスを吐出する複数のガス放出孔を有しており、
前記第1のガス導入部及び前記第2のガス導入部の片方又は両方から、エッチングガスを前記処理容器内に導入してカーボンナノチューブのエッチングを行うカーボンナノチューブ加工装置。
【請求項8】
前記誘電体板の下面から、前記載置台の上面までの距離が140mm〜200mmの範囲内であり、かつ第2のガス導入部の下端から前記載置台の上面までの距離が80mm以上である請求項7に記載のカーボンナノチューブ加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図7】
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【図10】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2013−40061(P2013−40061A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176580(P2011−176580)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】