説明

カーボンナノチューブフィルムの製造方法、カーボンナノチューブフィルム、およびカーボンナノチューブ素子

【課題】高導電率と高透明性を有するカーボンナノチューブフィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、透明導電性カーボンナノチューブフィルムの製造方法、前記方法により製造されるカーボンナノチューブフィルム、および該カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ素子を提供する。通常の濾過法により得られたカーボンナノチューブフィルムに比べ、本発明の方法で得られたカーボンナノチューブフィルムは透明性が高く、シート抵抗が著しく低くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)フィルムの製造方法に関し、詳しくは透明導電性カーボンナノチューブフィルムの製造方法、前記方法により製造されるCNTフィルム、さらに製造される該カーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一次元ナノ材料として、カーボンナノチューブ(CNT)は幅広い領域にて研究の焦点となってきて、その独特の物理的と化学的性質および実際応用の見込みのおかげで、基礎科学と新技術に新たなチャンスを多くもたらしている。CNTは強度と柔軟性とを兼ね備えているため、柔軟性電子部品に極めて適用できる。最近、CNTで製造される柔軟で透明な導電性薄膜は脚光を浴び、時下の興味の注目点となっている。これは、ある程度では、電発光、光導電体、および光起電力素子に応用できることによるものである。
【0003】
光学透明で高導電性のインジウム・錫酸化物(ITO)はすでに広範に光電導応用に活用されているとはいえ、ITO固有の脆さにより、そのフィルムの柔軟性は厳しく制限されている。これに対して、CNT薄膜は、繰り返して曲げられても破砕することはない、というような特性があるため、ITOの代替品として適切である。低シート抵抗を有するCNT薄膜は可視光と赤外線領域においても透明である。それに、低コストおよび調整可能な電子特性のおかげで、CNT薄膜はさらに優位になっている。
【0004】
カーボンナノチューブフィルムの実際応用において、カーボンナノチューブフィルムの透明性と導電性を同時に考える必要がある。カーボンナノチューブフィルムの厚さを厚くすると、フィルムの導電性が向上するが、透明性が低下する場合がある。反対に、薄くすると、フィルムの透明性が向上するが、導電性が低下する場合がある。
【0005】
従来、カーボンナノチューブフィルムの製造には濾過法(Wu,Z,et al.,A.G.Science 2004,305,1273参照)または噴射法(Geng,H.−Z et al.,J.Am.Chem.Soc.2007,129,7758)が使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wu,Z,et al.,A.G.Science 2004,305,1273
【非特許文献2】Geng,H.−Z et al.,J.Am.Chem.Soc.2007,129,7758
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化学気相蒸着(CVD)やアーク放電などの方法でカーボンナノチューブを製造してから、カーボンナノチューブを溶剤に分散させ、ろ過によりカーボンナノチューブフィルムを製造するのは一般的である。しかしながら、前記ろ過によりカーボンナノチューブを製造する方法には、大量の界面活性剤が必要であるうえ、フィルムフィルターも必要である。それに、フィルムフィルターの除去にはかなりの時間がかかり、且つ浸漬過程において大量の「洗浄剤」(例えば、アセトン)が使わなければならない。前記フィルムフィルターを完全に除去できない場合、CNTフィルムのシート抵抗が増え、透明性が低下することになる。
【0008】
噴射法でカーボンナノチューブフィルムを製造する過程においても、同様に界面活性剤でカーボンナノチューブを小束に分散させる必要がある。
【0009】
さらに、超音波でカーボンナノチューブを分散させる場合、超音波によって、カーボンナノチューブの側壁が損なわれることになる。また、カーボンナノチューブ上に残留した界面活性剤は、ランダムにカーボンナノチューブ上に吸着することで安定に分散し、さらにカーボンナノチューブをオーバーしたり、カーボンナノチューブを変性させたりする場合がある。
【0010】
よって、高導電率と高透明性を有するカーボンナノチューブフィルムを製造する方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の構成は、
(a)基板上に均一な触媒層を製造する工程と、
(b)化学気相蒸着(CVD)法で(a)工程により得られた均一な触媒層上に透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させる工程と、
を有することを特徴とする透明導電性カーボンナノチューブフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の第一の構成の一態様において、(a)工程には、溶剤を使用し触媒溶液を調製すること、基板上で均一な触媒溶液膜を形成させること、および得られた均一な触媒溶液膜を乾燥することにより前記均一な触媒層を形成させることを含んでもよい。該実施形態では、前記均一な触媒溶液膜のウェット膜の厚さは11〜33μmであることが好ましい。前記溶剤としては、アルコール溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤からなる群より選ばれるのが好ましく、メタノール、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、及びグリセリンからなる群より選ばれるのがさらに好ましい。
【0013】
本発明の第一構成の一態様において、前記CVD法が触媒層中の触媒を還元することを含んでもよい。該実施形態では、前記CVD法がさらに炭素源とキャリヤーガスで透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させることも含んでもよい。
【0014】
本発明の第一構成の一態様において、前記CVD法には、600℃〜1200℃の温度で、好ましくは900℃〜1000℃の温度で、透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させる。
【0015】
本発明の第一構成の一態様において、前記CVD法には、600℃〜1200℃の温度で、好ましくは900℃〜1000℃の温度で触媒を還元する。
【0016】
本発明の第一構成の一態様において、20〜2000sccmの水素ガスで触媒を還元する。
【0017】
本発明の第一構成の一態様において、触媒を還元する時間が5〜200分であり、好ましくは10〜40分である。
【0018】
本発明の第一構成の一態様において、CVD法には炭素源とキャリヤーガスの流速比が1:8〜3:4である。
【0019】
本発明の第一構成の一態様において、触媒として、遷移金属、遷移金属塩、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる。本発明の第一構成の別の態様において、前記触媒として、鉄塩、銅塩、コバルト塩、モリブデン塩、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる。
【0020】
本発明の第一構成の一態様において、前記触媒として、FeCl3、CuCl2、及びCo/Mo触媒からなる群より選ばれる。本発明の第一構成の該実施形態では、触媒溶液が使用される場合、好ましくは前記触媒がFeCl3またはCuCl2である場合、触媒溶液の濃度が0.03wt%〜2wt%であり、前記触媒がCo/Mo触媒である場合、触媒溶液の濃度が0.001wt%〜2wt%である。
【0021】
本発明の第一構成の一態様において、用いられる基板としては、石英基板、シリコン基板、ガラス基板であってもよい。本発明では、透明な石英基板が好ましい。
【0022】
本発明の第二構成は、本発明の第一構成にかかる方法により得られたカーボンナノチューブフィルムを提供することを目的とする。
【0023】
本発明の第三構成は、本発明の第二構成にかかるカーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブ素子を提供することを目的とする。本発明の第三構成の一態様において、カーボンナノチューブ素子としては、カーボンナノチューブ導電膜、電界放出電子源、トランジスター、リード線、ナノエレクトロメカニカルシステム、スピン導電装置、ナノ片持ち梁、量子計算装置、発光ダイオード、太陽電池、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ、光学フィルター、薬物伝送システム、熱伝導材料、ナノノズル、エネルギー貯蔵システム、スペースエレベーター、燃料電池、センサー、および触媒担体からなる群より選ばれるのが好ましい。
【0024】
本発明のいずれの構成においても、カーボンナノチューブフィルムとしては、単層カーボンナノチユーブフィルムが好ましい。
【0025】
以下、詳細な説明により、本発明のその他の目的と発明を明らかにするが、詳細な説明および具体的な実施例は本発明の好ましい実施形態を示しているものの、本発明の実施態様の一例に過ぎず、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変形したり改良したりして実施することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、界面活性剤および/またはフィルムフィルターを使わずにカーボンナノチューブフィルムを直接基板上に成長させることができ、界面活性剤および/またはフィルムフィルターを利用した従来技術によりフィルム特性にもたらした悪影響を解消でき、高導電率と高透明性を有するカーボンナノチューブフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に用いられるCVDシステムを示した模式図である。
【図2】本発明の一態様での、均一な触媒溶液膜を製造することを示した模式図である。
【図3】実施例1で製造されたカーボンナノチューブフィルムのSEM図である。図3(a)、(b)、(c)の拡大率はそれぞれ2000、8000と18000である。
【図4】実施例1で製造されたカーボンナノチューブフィルムの備えた基板と、カーボンナノチューブフィルムの備えていない基板との透明性を比較した光学写真である。
【図5】実施例1で製造されたカーボンナノチューブフィルムのAFM図である。
【図6】実施例1で製造されたフィルムが異なった5箇所でのRamanスペクトルである。
【図7】実施例1〜3で得られたカーボンナノチューブフィルム、およびHipco試料、P3試料、レーザー試料から通常の濾過法により得られたカーボンナノチューブフィルムの、透明性とシート抵抗との関係を示した図である。
【図8】15kvの加速電圧下で、実施例2のカーボンナノチューブフィルム(図8(a))と比較例1のカーボンナノチューブフィルム(図8(b))のSEM図を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者らは、CVD法により、界面活性剤および/またはフィルムフィルターを使わずにカーボンナノチューブフィルムを直接基板上に成長させることができることを見出した。従って、界面活性剤および/またはフィルムフィルターを利用した従来技術によりフィルム特性にもたらした悪影響を、本発明の方法で解消できる。
本発明の第一構成
【0029】
本発明の第一構成は、
(a)基板上に均一な触媒層を製造する工程と、
(b)化学気相蒸着(CVD)法で(a)工程により得られた均一な触媒層上に透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させる工程と、
を有することを特徴とする透明導電性カーボンナノチューブフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0030】
本発明者らは、カーボンナノチューブフィルムを直接基板上に成長させるために、より具体的に、基板上に直接且つ広範囲に準二次元単層カーボンナノチューブフィルムを成長させるために、基板上で均一な触媒層を得なければならないことを見出した。実施例のSEM図に示されるように、基板上の触媒層が不均一な場合、均質のカーボンナノチューブフィルムを得ることができない。この点、カーボンナノチューブフィルムを備えた基板(例えば石英)の導電性から証明される。均質のカーボンナノチューブフィルム(導電層)が存在しなければ、15kvの加速電圧で絶縁の石英基板からSEM画像を見られないからである。
【0031】
本発明では、均一な触媒層を得る方法に特に制限はなく、均一な触媒層が得られる方法であれば、任意に採用することができる。
【0032】
例えば、本発明の一態様は、前記製造方法における(a)工程において、溶剤で触媒溶液を調製すること、基板上で均一な触媒溶液膜を形成させること、および得られた均一な触媒溶液膜を乾燥することにより前記均一な触媒層を形成させる。
【0033】
具体的に、本発明にかかる製造方法において、まず溶剤を用いて触媒との溶液を調製して、均一な触媒溶液層を得て、次いで、触媒溶液層を乾燥することで、均一な触媒層を得ることができる。
【0034】
本発明の方法に用いられる基板として特に制限がなく、本分野に慣用の基板を使えばよいが、一般的に、石英基板、シリコン基板、ガラス基板のような透明基板を採用するのが好ましい。CVD法の温度を考慮すると、石英基板とシリコン基板が好ましい。
【0035】
なお、触媒溶液を基板(例えば石英基板)上に滴下して自然に空気乾燥することにより得られた触媒層は均質のものではないと、本発明者らは見出した。該触媒層からカーボンナノチューブフィルムを形成することができるが、15kvの加速電圧下で絶縁の石英基板からSEM画像を得ることはできない。すなわち、該フィルムは導電性を有しない。これによって、該カーボンナノチューブフィルムは均質のものではないということは実証される。具体的な理論に制限されていないが、触媒溶液の流動性の限界性のせいか、触媒溶液を基板上に滴下し流させて得られた触媒溶液層は均質のものではないと考えられている。そこで、本発明に記載された「均一な触媒層」とは、触媒が基板上に均一に分布しているため、連続したカーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブフィルムを得ることができるとともに、15kv下で鮮明なSEM画像を得ることもできることをいう。
【0036】
触媒溶液によって均一な触媒溶液層を得て、さらに均一な触媒層を得るために、望まれていない場所でのカーボンナノチューブの成長を防ぐために、溶液が基板の外に流れないように、触媒溶液を適量に基板上に滴下し流させてから、もう一つの基板を前記触媒溶液上にオーバーして、クリップで保持する(図2参照);適切な温度下で真空中に所定の時間乾燥する;次いで、取り出してから二つの基板を引き離して、均一の触媒層を備えた二つの基板を得る、
というような方法が用いられる。当業者であれば了解されるように、上記の方法で均一な触媒膜を形成する際、触媒溶液量は用いられた基板のサイズによるものである。上層基板でオーバーしクリップで保持すると、溶液が基板の外部に流れずに基板の表面全体に広がるように、触媒の溶液量を適切に選択したらよい。溶液量が少なすぎると、完全に広がらないうちに溶液が揮発し切る恐れがある。一方、溶液量が多すぎると、溶液は基板の外部に流れてしまい、望まれていない場所でもカーボンナノチューブが成長することになる。原則として、少量の溶液を使うことができる。こうすると、溶液が基板の外部までに流れないと同時に、浸漬湿潤効果とキャピラリティー効果で溶液が基板の表面全体に広がることが保証されるからである。通常、1.5cm×3cmの大きさの石英基板に対し、触媒溶液が5〜15μl、好ましくは10μlを用いる。
【0037】
触媒溶液の乾燥について、実際の乾燥時間と乾燥温度が関連していると、当業者であれば分かる。したがって、実際の乾燥温度によって乾燥時間を選択することができる。たとえば、乾燥温度は50〜100℃でもよく、好ましくは60〜80度である。乾燥時間は30分〜2時間、たとえば1時間であってもよい。たとえば、1.5cm×3cmの石英基板と10μlの触媒溶液を用いる場合、形成された触媒溶液層のウェット膜の厚さは約22μm(10μl/(1.5cm×3cm)=22)である。一般に、ウェット膜の厚さは11〜33μmであってもよい。
【0038】
なお、本発明は、用いられる触媒には特に制限がないが、CVD法でカーボンナノチューブを成長させることのできる既知の触媒が任意に使用できる。一態様において、触媒として、遷移金属、遷移金属塩、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる。例えば、本発明の一態様において、前記触媒として、鉄塩、銅塩、コバルト塩、モリブデン塩、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる。本発明の触媒として、市販の鉄塩、銅塩、コバルト塩、モリブデン塩、及びこれらの組合せを使うことができ、FeCl3、CuCl2、及びCo/Mo触媒からなる群より選ばれるのが好ましい。
【0039】
本発明は、触媒溶液を調製するために使用される溶液には特に制限がないが、当業者であれば了解されるように、実際使用された触媒によって具体的に溶剤を選択することがよい。本発明の一態様として、アルコール溶剤、エーテル溶剤、およびケトン溶剤が使用することができる。メタノール、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、及びグリセリンからなる群より選ばれるのが好ましい実施形態である。
【0040】
また、均一なカーボンナノチューブフィルムを成長させるために、触媒溶液における触媒の濃度を調整すべきであると本発明者らは見出した。一つの例として、前記触媒がFeCl3またはCuCl2である場合、触媒溶液の濃度が0.03wt%〜2wt%であってもよく、0.05〜1wt%であるのが好ましい。例えば、0.1wt%である。そして、前記触媒がCo/Mo触媒である場合、触媒溶液の濃度が0.001wt%〜2wt%であってもよいが、0.01〜1wt%であるのが好ましい。例えば、0.02wt%である。前記濃度範囲内で、均一なカーボンナノチューブフィルムが得られる。
【0041】
本発明は、触媒溶液の調製方法には特に制限がない。触媒溶液を調製するには、適当に撹拌してもよいし、また超音波分散で触媒の溶剤への溶解を加速してもよい。
【0042】
例えば、FeCl3またはCuCl2を触媒として触媒溶液を調製するには、市販の塩化鉄と塩化銅を用い、適当な溶剤で触媒溶液を調製する。Co/Mo触媒溶液としては、参考例として、「Direct synthesis of high−quality single−walled carbon nanotubes on silicon and quartz substrates」(Chemical Physics Letters 377(2003),49−54)でYoichi Murakamiらに使われた方法によって調製することができる。
【0043】
Co/Mo触媒溶液の調製方法として、各金属の濃度がそれぞれ、例えば0.01wt%であるように、酢酸モリブデン((CH3COOH)2Mo)と酢酸コバルト((CH3COOH)2Co・4H2O)を適当な溶剤(例えばエタノール)に溶かすことが挙げられる。
【0044】
本発明の(b)工程で用いられるCVD法は下記の通りである。
本発明では、慣用のCVDシステムを用い、均一な触媒層上に透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させることができる。例えば、図1に示されるような、電気炉1、温度調節器2、石英管3、流量計4、および石英管に置かれてもよい基板5からなるCVDシステムを用いることができる。
【0045】
本発明においては、CVD法で、均一な触媒層上に透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させる。本発明の第一構成の一態様としては、前記CVD法に、触媒層中の触媒を還元することを含んでもよい。該実施形態では、上記CVD法にさらに炭素源とキャリヤーガスで透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させることを含んでもよい。
【0046】
本発明において、CVD法で均一な触媒層上に透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させる一般的なプロセスは下記の通りである。
【0047】
CVDシステムにおいて、石英管が反応室として電気炉に置かれる。均一な触媒層を備えた基板5を反応室に入れる。該システムを10Paまで真空吸引してから代わりにアルゴンガスを導入する。このようなサイクルを、蒸着システム内部に不活性ガス雰囲気を十分に付与するために、三回繰り返す。次に、活性化(還元)に必要な温度になるまでシステム中心域を加熱する。システムに水素ガスを導入し、基板上における触媒を適切な時間で活性化(水素ガスによる還元)処理を施す。そして、適切な反応温度下で、キャリヤーガスと炭素源を流量計を経由して反応室に入らせる。炭素源が触媒層上において分解、拡散、析出を経て、カーボンナノチューブに成長し、カーボンナノチューブフィルムを形成する。そして、電気炉を止め、システムの温度が室温に下がるまで不活性ガスを引き続き導入する。
【0048】
通常、触媒金属が炭素と炭化物を形成するとき、その自由エネルギーの変化はゼロに近い。すなわち、炭素原子がこれらの金属原子と結合または解離するとき、そのエネルギーの変化は非常に小さい。したがって、カーボンナノチューブの気相成長中に、触媒粒子の内部からの炭素の析出に必要なエネルギー変化は非常に小さいため、カーボンナノチューブの気相成長に有利な基本的な動力学的条件が提供される(Zhang Ronghui, et al., "The Growing Mechanism of Vapor Grown Carbon Fibers Obtained on Catalysts", Carbon, China Academic Journal Electronic Publishing House, No. 2, pp. 18 - 21, 1996)。
【0049】
本発明のCVD法に用いられる炭素源とキャリヤーガスについては特に制限がない。炭素源として、例えばメタンのような炭化水素化合物が使われる。キャリヤーガスとして、通常水素ガスが使われる。
【0050】
均質のカーボンナノチューブフィルムを得るために、CVD法でのカーボンナノチューブの成長条件を適切に調整することが好ましい。本発明では、CVD法に用いられた活性化(還元)温度は通常600〜1200℃、好ましくは900〜1000℃である。本発明でのCVD法に使用した反応温度(カーボンナノチューブフィルムを成長させるためのシステム温度)は通常600〜1200℃、好ましくは900〜1000℃である。触媒層中の触媒を水素ガスで活性化(還元)するのは一般的である。触媒を還元するに使われる水素ガスの流速は通常20〜2000sccm、好ましくは100〜500sccm、より好ましくは200sccmである。水素ガスで触媒を還元する時間は5〜200分であればよいが、好ましくは10〜40分、より好ましくは25分である。カーボンナノチューブフィルムを成長させる際に、炭素源とキャリヤーガスとの流速比は1:8〜3:4でもよいが、好ましくは1:4〜1:2、より好ましくは3:8である。
【0051】
本文に使う術語「カーボンナノチューブ」は、当業者に公知されている各種のカーボンナノチューブを含む。チューブ壁を構成する炭素原子の層数によって、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せを含んでもよい。また、その電気特性によって、金属性カーボンナノチューブ、半導体性カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せを含んでもよい。
【0052】
本発明の第一構成で製造されたカーボンナノチューブフィルムが単層カーボンナノチューブのフィルムであることが好ましい。該単層カーボンナノチューブは、金属性単層カーボンナノチューブ(M−SWNT)、半導体性単層カーボンナノチューブ(S−SWNT)、およびこれらの組合せを含む。
【0053】
本発明の第一構成におけるカーボンナノチューブフィルムの製造方法として、界面活性剤とフィルムフィルターを使用せずに、カーボンナノチューブフィルムを直接基板上に成長させることができるため、界面活性剤とフィルムフィルターを除去する必要がなくなる。また、フィルムフィルターと界面活性剤の、シート抵抗と透明性への影響が解消されたため、本発明の方法により製造されたカーボンナノチューブフィルムは透明性が99%までも高くなり、シート抵抗が10000Ω/□以下までも低くなることが可能になる。これに対し、従来の濾過法によれば、上記のような高い透明性と低いシート抵抗が得られないのである。
本発明の第二構成
【0054】
本発明の第二構成は、第一構成にかかる方法により得られたカーボンナノチューブフィルムを提供することを目的とする。
【0055】
通常の濾過法により得られたカーボンナノチューブフィルムと比べ、本発明の第一構成にかかる方法により得られたカーボンナノチューブフィルムは透明性が高くて、シート抵抗が著しく低くなる。
【0056】
したがって、本発明の第二構成のカーボンナノチューブフィルムは、従来技術におけるCNTフィルムより優れている。
本発明の第三構成
【0057】
本発明の第三構成は、本発明の第二構成にかかるCNTフィルムを含むカーボンナノチューブ素子を提供することを目的とする。
【0058】
具体的に、該カーボンナノチューブ素子として、CNT導電膜、電界放出電子源、トランジスター、リード線(conductive wire)、ナノエレクトロメカニカルシステム(nano−electro−mechanic system)(NEMS)、スピン導電装置(spin conduction device)、ナノ片持ち梁(nano cantilever)、量子計算装置、発光ダイオード、太陽電池、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ、光学フィルター、薬物伝送システム、熱伝導材料、ナノノズル、エネルギー貯蔵システム、スペースエレベーター(space elevator)、燃料電池、センサー、および触媒担体からなる群より選ばれる。
【0059】
本発明の第一乃至第三構成において、カーボンナノチューブとして、好ましくは単層カーボンナノチューブである。
【0060】
実施例
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。特に限定されないかぎり、本発明で使用される各種の原料と試薬は、工業的に入手できるもの、または本分野に慣用の技術により得られるものである。
【0061】
主要な原料は下記の通りである:
CuCl2・2H2O、天津津科精細化工研究所で入手、分析純(Analytical reagent);
FeCl3、国薬グループ化学試剤有限公司で入手、化学純(Chemical pure);
酢酸モリブデン((CH3COOH)2Mo)と酢酸コバルト((CH3COOH)2Co・4H2O)、Wako Pure Chemical Industries,Ltd.で入手;
エタノール、北京化工場で入手、分析純;
HiPCOナノチューブ、Carbon Nanotechnology Inc.で入手;
P3カーボンナノチューブ(アーク放電ナノチューブ)、Carbon Solutions Inc.で入手;
【0062】
Laserナノチューブ(L−CNT)、既存技術での既知方法により製造される(Thess,A,ら、Science,vol.273,p483,1996;およびShiraishi,M.ら、Chemical Physics Letters,vol.358,p213,2002参照)。まとめると、Ni/Co触媒を使い、レーザーアブレーションで1200℃下、L−CNTを製造し、H22、HCl、およびNaOH溶液で精製して、650℃下、0.01Paの圧力で1時間加熱する、という方法である。
【0063】
評価方法
カーボンナノチューブフィルムについて、以下の評価方法で解析することができる:
ラマンスペクトル:LabRAM HR−800 Raman Spectrometric Analyzerを使用した;
走査電子顕微鏡:Hitachi S−4300Fを使用した;
AFM:Multimode Nanoscope controller (Veeco Inc.)を使用した。作動モードはtappingモードであった。
4探針式Loresta−EP MCP−T360を使用し、カーボンナノチューブフィルムのシート抵抗を測定した。
UV−vis−NIR分光光度計(JASCO V−570)で、カーボンナノチューブフィルムの透明性を測定した。
【0064】
ラマンスペクトルはカーボンナノチューブを調べるためのもっとも有力な手段の一つである。試料の秩序程度を示すことで試料の純度を反映できるに加え、カーボンナノチューブの直径分布も示される。成長完成したカーボンナノチューブフィルムに対して、直接にラマンスペクトルで調べた。
【0065】
ラマンスペクトルには、注意される領域またはピークとしては、ラジアルブリージングモード(Radial−Breathing Mode,RBM)(約100〜300cm-1)、Dバンド(〜1350cm-1)、およびGバンド(〜1570cm-1)の三つがある(M.S.Dresselhaus,et al.,Raman Spectroscopy of Carbon Nanotubes in 1997 and 2007, J.Phys.Chem.C,111(48),2007,17887−17893)。RBMピークは、カーボンナノチューブに対応する特徴的な散乱モードの一つであり、単層カーボンナノチューブ特有のものであり、且つカーボンナノチューブの直径と関連する。(Araujo,P.T.,et al.,Third and fourth optical transitions in semiconducting carbon nanotubes.Phys.Rev.Lett.,98,2007,067401を参照)ωRBM=A/dt+B(式中、A=217.8±0.3 cm-1 nm、B=15.7±0.3 cm-1, ωRBMは単位がcm-1であるRBMピークの波数を表し、dtは単位がnmであるカーボンナノチューブの直径を表す)より、カーボンナノチューブの直径分布を明らかにすることができる。DバンドとGバンドは、それぞれ無定形炭素と石墨化された炭素に対応する。GバンドとDバンドの強度比(G/D)によってカーボンナノチューブの純度を推定することができる。G/Dが大きいほど、石墨化された炭素が多くなり、不純物あるいは欠陥が少なくなるため、純度が高くなる。
【0066】
実施例1
工程1.次の方法によってCo/Mo触媒で均一な触媒層を製造する工程
【0067】
酢酸モリブデン((CH3COOH)2Mo)と酢酸コバルト((CH3COOH)2Co・4H2O)を、各金属の濃度がMoおよびCoとしてそれぞれ0.01wt%になるように、エタノールに溶解させ、触媒溶液を得た。次に、触媒溶液10μlを石英シートに滴下し流させてから、もう一枚の石英シートを該触媒溶液上にオーバーして、図2に示されるように、クリップで保持させた。この際に、溶液が基板以外へ流れてしまうことがなかった。そして、これをを真空オーブンに入れて70℃で2時間乾燥してから、石英シートを取り出して、二枚の石英シートを引き離して、触媒層を備えた石英シートが2枚得られた。
【0068】
工程2.前記製造された触媒層を使用しカーボンナノチューブフィルムを成長させる工程。
【0069】
前記均一な触媒層を備えた石英シートを図1に示されるCVDシステムに置いておき、該システムを10Paまで真空吸引してから代わりにアルゴンガスを導入した。蒸着システム内部に不活性ガス雰囲気を十分に付与するために、上記サイクルを三回繰り返した。次に、システム中心域を900℃まで加熱する。CVDシステムに水素ガス200sccmを導入し、20分間還元してから、また970℃に温度を上げ、水素ガス32sccmとメタン12sccmを導入して30分間反応させた。最後に電気炉を止め、システムの温度が室温に下がるまで不活性ガスを引き続き導入した。
【0070】
実施例2
工程1において、FeCl3で、Feとしての濃度が0.1wt%であるエタノール溶液を調製し触媒溶液とした以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブフィルムを製造した。
【0071】
実施例3
工程1において、CuCl2・2H2Oで、Cuとしての濃度が0.1wt%であるエタノール溶液を調製し触媒溶液とした以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブフィルムを製造した。
【0072】
比較例1
工程1において、FeCl3で、Feとしての濃度が0.1wt%であるエタノール溶液を調製し触媒溶液とし、さらに、触媒溶液10μlを石英シートに滴下し流させてから、室温下、空気中に乾燥することで触媒層を備えた石英シートを得た以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブフィルムを製造した。
【0073】
実施例1で得られたカーボンナノチューブフィルムについてSEM測定をした結果は、図3に示される。ここで、図3(a)、(b)、(c)の拡大率はそれぞれ2000、8000と18000である。図3(a)から、実施例1で製造されたカーボンナノチューブフィルムは広い面積にわたって非常に平らで均一であることが分かった。図3(b)において、画像領域(該画像のサイズは10μm×20μm)にはカーボンナノチューブの端部がほとんど見られない。これは、該フィルムにおけるほとんどのカーボンナノチューブは20μmより長いということが示唆される。図3(c)より無定形炭素と触媒粒子が見られないことから、フィルムにおけるカーボンナノチューブは非常に均一しており、カーボンナノチューブの合成中にほとんど無定形炭素を生成していなく、しかもほとんどの触媒粒子はカーボンナノチューブの合成の活性端として、最終的にカーボンナノチューブの一部になったことが明らかになった。
【0074】
実施例1で得られたカーボンナノチューブフィルムの備えた石英シートを「ICCAS」と書いてある基材上に置いておき、同時にカーボンナノチューブフィルムを製造するための石英シートと同様な石英シート(カーボンナノチューブフィルムを備えていない)を前記石英シートと同列に並べておいた。二枚の石英シートの置いてある基材に対して、SONY cyber−shotで撮影し、得られた写真は図4に示す。図4より、カーボンナノチューブフィルムの透明性が非常に高く、カーボンナノチューブフィルムを備えた石英シートと、カーボンナノチューブフィルムを備えていない同様な石英シートとは透明性が大体同じであることは明らかになった。
【0075】
実施例1で得られたカーボンナノチューブフィルムについて、AFM試験を行った。その結果は図5に示す。その中に、図5(a)は得られたAFM全体画像であり、図5(b)は全体画像の高度スケールを示し、図5(c)は数値化された高度図で、図5(a)に示したカーボンナノチューブと対応するのである。図5から見ると、ほとんどのカーボンナノチューブは、直径が1.2〜2.4nmである一本一本の形で存在することが明らかになった。例えば、図5(a)において、三角で標記されたところの高度は1.85nmであり、これは、当該場所にあるカーボンナノチューブの直径が1.85nmであることを表す。図5にはいくつかのカーボンナノチューブ束も示されているが、これらのカーボンナノチューブ束の高度がほとんど5nmより低い。図5(a)における長方形スケールは500nmを表す。
【0076】
実施例で製造されたカーボンナノチューブフィルムの均一性を実証するために、実施例1で製造されたカーボンナノチューブフィルムにおいてランダムに場所を選び、スポット直径が1μmである励起レーザーでラマンスペクトル測定を行った結果、実施例1で製造されたフィルム上のいずれの場所においてもラマン信号が得られることがわかった。図6は、実施例1のカーボンナノチューブフィルム上にランダムに選んだ5箇所で得られたラマンスペクトルを示す。励起レーザーのスポット直径が1μmであるため、実施例1のカーボンナノチューブフィルムはほとんど単層であり、ラマン信号の検出できたカーボンナノチューブは一つのところに、ただ少数の何本かしか見られなかった。図6のRBM領域から、ほとんどのカーボンナノチューブは一本として存在し、しかもカーボンナノチューブは半導体性カーボンナノチューブと金属性カーボンナノチューブとの混合物であり、直径が1.2〜2.3nmであることがわかった。さらに図6のRBM領域から、製造されたカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブであることもわかった。該カーボンナノチューブフィルムのDバンドは非常に小さい(図6、上から下への2、3つ目の曲線)またはほとんど消えた(図6、上から下への1、4、5つ目の曲線)。
【0077】
図7には、実施例1、2および3で得られたカーボンナノチューブフィルムの透明性とシート抵抗との関係が示されている。また、図7には従来の濾過法でHiPCOナノチューブ、P3カーボンナノチューブおよびレーザーカーボンナノチューブから製造された薄膜の透明性とシート抵抗との関係も示されている。
【0078】
従来の濾過法でカーボンナノチューブフィルムを製造する方法として、Wuら(Wu,Z.C.;Chen,Z.H.;Du,X.;Logan,J.M.;Sippel,J.;Nikolou,M.;Kamaras,K.;Reynolds,J.R.;Tanner,D.B.;Hebard,A.F.;Rinzler,A.G.Science 2004,305,1273)に提出された濾過法のプロセスに基づいてカーボンナノチューブフィルムを製造した。
【0079】
濾過法に基づいたカーボンナノチューブフィルムの慣用の製造方法では、透明性が99%より大きいカーボンナノチューブフィルムを製造し難いこと、また透明性が98%より大きい場合、濾過法に基づいいたHiPCOナノチューブ、P3カーボンナノチューブおよびレーザーカーボンナノチューブから製造された薄膜のシート抵抗はいずれも28000Ω/□を超えたことは、図7より明らかになった。
【0080】
慣用の方法で製造されたカーボンナノチューブフィルムと比べ、本願の方法で製造されたカーボンナノチューブフィルムは透明性も導電率も高められている。実施例1〜3のカーボンナノチューブフィルムの透明性はいずれも99%を超えた。下記の表1では、実施例1〜3のカーボンナノチューブフィルムの平均シート抵抗が示される。表1から、実施例1の平均シート抵抗は8056Ω/□ほど低く、従来の濾過法で得られたフィルムのシート抵抗より遥かに低いことはわかった。また、触媒としてCuCl2を使用し製造されたフィルムの導電性は、FeCl3を触媒として製造されたフィルムの導電性より優れていることも表1からわかった。
【0081】
【表1】

【0082】
図8は、実施例2と比較例1で製造されたカーボンナノチューブフィルムの15kvの加速電圧でのSEM画像を示している。図8(a)は実施例2で製造されたカーボンナノチューブフィルムの15kvの加速電圧でのSEM画像を示している。図8(a)の画像は鮮明で安定しており、各カーボンナノチューブ同士は連続的に分布していることは、均一に導電できるような連続したカーボンナノチューブフィルムを得られたことを表す。図8(b)は比較例1で製造されたカーボンナノチューブフィルムの15kvの加速電圧でのSEM画像を示している。図8(b)から、カーボンナノチューブが離れているのが見られ、これは、カーボンナノチューブフィルムが不均一且つ不連続であることを示す。この場合に、石英基板が導電しないため、カーボンナノチューブが不連続でありながら石英基板上に導電通路も形成することができないため、電荷が瞬間に累積し、一部または領域全体が一瞬に光って画像をはっきりと撮影できなくなり、代表的な不導電基板のSEM画像が示される。
【0083】
本発明ではいくつかの理論が挙げられ、さらにこれらの理論中の一部に基づき本発明について説明したが、本発明はこれらの理論に制限されていないことは、当業者に理解されるはずである。
【0084】
本発明の方法における(a)、(b)のような連続した番号は、ただお互いに区別するために用いられるものであり、これらの工程以外に他の工程が存在することを否定しない。例えば、工程(a)と(b)および/または(b)と(c)の間にはその他の工程もある。前記その他の工程は、本発明の効果を損なわない限り、乾燥や洗浄などの本分野での通常の工程であってもよい。
【0085】
本発明に使われる「……てもよい」という表現は、その前にある事または事項(例えば処理の工程)は存在してもよいし、存在しなくてもよい、ということを表す。また、本発明は、該事または事項が存在する、および存在しない、との二つの状況を含む。
【0086】
ここで引用した文献のすべてを本発明に取り込む。
具体的な実施形態を参考にして本発明を説明してきたが、その変化が多種あることは明らかである。その変化は本発明の精神と範囲を逸脱していないうえ、当業者にとって自明なあらゆる変化も本発明の範囲にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に均一な触媒層を製造する工程と、
(b)化学気相蒸着(CVD)法によって、(a)工程で得られた均一な触媒層上に透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させる工程と、
を有することを特徴とする透明導電性カーボンナノチューブフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記(a)工程において、溶剤を用い触媒溶液を調製して、前記触媒溶液を使用し基板上で均一な触媒溶液膜を形成させて、そして得られた均一な触媒溶液膜を乾燥することにより前記均一な触媒層を形成させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒は、遷移金属、遷移金属塩、及びこれらの組合せから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒は、鉄塩、銅塩、コバルト塩、モリブデン塩、及びこれらの組合せから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒は、FeCl3、CuCl2、及びCo/Mo触媒から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒がFeCl3またはCuCl2である場合、触媒溶液の濃度は0.03wt%〜2wt%であり、前記触媒がCo/Mo触媒である場合、触媒溶液の濃度は0.001wt%〜2wt%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記CVD法は、触媒層中における触媒を還元することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記CVD法は、さらに炭素源とキャリヤーガスで透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させることを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記CVD法において、600℃〜1200℃の温度で透明導電性カーボンナノチューブフィルムを成長させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CVD法において、600℃〜1200℃の温度で触媒を還元することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
20〜2000sccmの水素ガスで触媒を還元することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
触媒を還元する時間は5〜200分であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
炭素源とキャリヤーガスの流速比は1:8〜3:4であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記溶剤は、アルコール溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記溶剤は、メタノール、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、及びグリセリンから選ばれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記均一な触媒溶液膜のウェット膜の厚さは11〜33μmであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項17】
カーボンナノチユーブフィルムは、単層カーボンナノチユーブフィルムであることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法により得られたカーボンナノチューブを含むことを特徴とするカーボンナノチューブ素子。
【請求項19】
前記カーボンナノチューブ素子が、カーボンナノチューブ導電膜、電界放出電子源、トランジスター、リード線、ナノエレクトロメカニカルシステム、スピン導電装置、ナノ片持ち梁、量子計算装置、発光ダイオード、太陽電池、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ、光学フィルター、薬物伝送システム、熱伝導材料、ナノノズル、エネルギー貯蔵システム、スペースエレベーター、燃料電池、センサー、および触媒担体からなる群より選ばれることを特徴とする請求項18に記載のカーボンナノチューブ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−138064(P2010−138064A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279064(P2009−279064)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】