説明

カール防止剤、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびフィルム基材

【目的】薄膜のプラスチック基材への塗工に於いても、硬度、耐擦傷性等を低下させることなく、低硬化収縮、カールの少ない硬化膜を形成することができる。
【解決手段】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、エポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が5,000〜100,000、ガラス転移温度が30℃以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル系共重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させてなる反応生成物であって(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqである反応性ポリマーを添加することで、表面硬度、耐久性を維持しつつ硬化収縮によるカールを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カール防止剤、当該カール防止剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物および当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される保護コート層を有するフィルム基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセチル化セルロース樹脂などを用いて製造されるプラスチックフィルムは、工業用途で多用されている。これらフィルムは、例えば、ディスプレイの保護フィルムや自動車ウィンド用のソーラーフィルム等において用いられているが、これらのフィルムには、高い耐擦傷性が求められている。
【0003】
耐擦傷性を高める方法としては、種々の方法が検討されているが、有機溶剤を使用しない等の環境上の優位性の点から、近年、フィルム上に架橋密度の高い多官能アクリレートを主体としたハードコート剤を塗布し、紫外線(UV)や電子線(EB)等の活性エネルギー線で硬化させハードコート層を形成する方法が実施されるようになってきている。
【0004】
しかし、硬度を高めるために多官能アクリル化合物を主体としたUV樹脂では、硬化反応の際に体積収縮が生じ基材フィルムがカールする場合があった。カールが発生すると、例えば、基材フィルムに100μ以下の膜厚の薄いフィルムを利用する場合には、後工程における作業性が低下するという問題があった。
【0005】
カールを抑える方法としては、たとえば、(1)架橋度を低くして硬化収縮率を低くする方法、(2)非反応性のポリマーを配合して硬化時の収縮を緩和する方法、(3)有機または無機フィラーを配合し、硬化収縮を緩和する方法などが行われている。しかしながら、(1)の場合には、得られる硬化塗膜の耐傷付き性が低下する場合があり、(2)の場合には、得られる硬化塗膜の耐傷付き性が低下したり、ブロッキング性が低下したり、相溶性の不足による白化やブリードが生じたりすることがあり(3)の場合には、透明塗膜を得ることが難しく、光沢も低くなるという問題があった。
【0006】
ところで、本出願人は先に、特定の(メタ)アクリル当量、水酸基価、重量平均分子量を有するポリマーと多官能イソシアネートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の熱架橋反応生成物からなる表面保護シートを提案している(特許文献1参照)が、ハードコート用のカール防止についての開示はされていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平9−290491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に添加することで、活性エネルギー線硬化させる際の基材フィルムのカールを防止し、高度の耐久性(耐磨耗性および耐熱性)を有する硬化物を与えることができるカール防止剤、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびフィルム基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、特定のエポキシ当量、重量平均分子量、ガラス転移温度を有するエポキシ基含有(メタ)アクリル系共重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させた特定の(メタ)アクリル当量を有する反応性ポリマーや、当該反応性ポリマーに反応性二重結合とイソシアナート基を含有する化合物を反応させた反応性ポリマーを添加することにより前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、
1.エポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が5,000〜100,000およびガラス転移温度が30℃以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させてなる(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqである反応性ポリマー(A)を含有するカール防止剤。
2.エポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が5,000〜100,000およびガラス転移温度が30℃以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させてなる(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqである反応性ポリマー(A)に、反応性二重結合とイソシアナート基を含有する化合物(c)を反応させてなる反応性ポリマー(B)を含有するカール防止剤。
3.エポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体が、分子中にエポキシ基およびビニル基を有する化合物(a)30〜100部および(a)成分以外の1つの重合性二重結合を持った化合物(b)0〜70部を重合させて得られる請求項1または2に記載のカール防止剤。
4.請求項1から3に記載のカール防止剤を10%〜80重量%含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
5. 請求項4に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される保護コート層を有するフィルム基材。
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各種フィルムの保護コート層を活性エネルギー線硬化させる際に基材フィルムがカールせず、また該層を活性エネルギー線硬化させた後の表面硬度が高く、耐傷付き性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のカール防止剤は、エポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が5,000〜100,000およびガラス転移温度が30℃以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させてなる(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqである反応性ポリマー(A)(以下、(A)成分という)またはエポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が5,000〜100,000およびガラス転移温度が30℃以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させてなる(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqである反応性ポリマー(A)に、反応性二重結合とイソシアナート基を含有する化合物(c)(以下、(c)成分という)を反応させてなる反応性ポリマー(B)(以下、(B)成分という)を含有するものである。
【0013】
本発明に用いられる(A)成分は、エポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させて得られるものであり、(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqのものでなければならない。なお、本発明において(メタ)アクリル当量とは、(メタ)アクリロイル基1モル当たりの分子量であり、組成物においては、(メタ)アクリロイル基濃度(mol/g)の逆数で表される値である。(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqの範囲外となる場合には、200未満は合成上困難であり、600を超える場合はハードコート性、すなわち耐摩耗性や鉛筆硬度が低下するため好ましくない。当該(メタ)アクリル当量は、170〜500g/eqとすることが、耐摩耗性の点でより好ましい。
【0014】
本発明の(A)成分の製造に用いられるエポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体は、エポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が5,000〜100,000およびガラス転移温度が30℃以上のものでなければならない。エポキシ当量が、500g/eqを超える場合には、(A)成分の(メタ)アクリル当量が600g/eqを超え、活性エネルギー線照射後の耐磨耗性が不十分となる。また、120g/eq未満のものは合成が困難となる。重量平均分子量が5,000〜100,000の範囲外となる場合には、カール抑制能が低下する、ゲル化する恐れが高くなる等の理由から好ましくない。ガラス転移温度が30℃未満の場合には、活性エネルギー線照射後の耐磨耗性、耐ブロッキング性が低下するため好ましくない。なお、エポキシ当量は、140〜400g/eqとすることが、目的の(メタ)アクリル当量を得る点で好ましく、重量平均分子量は、10,000〜50,000とすることが、合成が容易で作業性が良好となる点で好ましく、ガラス転移温度を30〜100℃とすることが、合成が容易になるため好ましい。なお、本発明においてエポキシ当量とは、JIS−K−7236にて定義される値であり、重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィーを用いて測定されたポリスチレン換算値によるものであり、ガラス転移温度(Tg)は、ポリマーを構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度の文献値からFOX式:1/Tg=Σ(Wx/Tx)(式中、Tg:共重合体のガラス転移温度、Wx:モノマーxの重量分率、Tx:モノマーxのホモポリマーのガラス転移温度を表す。)を用いて算出した値である。例えば、a、b、cの3成分からなる場合には、1/Tg=Wa/Ta+Wb/Tb+Wc/Tcにより導き出される。
【0015】
エポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体であれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、分子中にエポキシ基およびビニル基を有する化合物(a)(以下、(a)成分という)および必要に応じ(a)成分以外の1つの重合性二重結合を持った化合物(b)(以下、(b)成分という)を共重合させることにより得られる。
【0016】
(a)成分としては、分子中にエポキシ基およびビニル基を有するものであれば特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルモノアクリレート、脂環式エポキシ樹脂のアクリレートなどが挙げられる。これらの中では、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0017】
(b)成分としては、(a)成分以外の1つの重合性二重結合を持った化合物であれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族系モノマー、カチオン性モノマーなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル類とは、分子中に芳香族系官能基、アニオン性官能基およびカチオン性官能基を有しないものであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。芳香族系モノマーとしては分子中にアニオン性官能基およびカチオン性官能基を用いない芳香族性官能基を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸ベンジル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カチオン性モノマーとしては、分子中にカチオン性官能基を有し、アニオン性官能基を有しないものであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、これらのモノマーの他に、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなども使用することができる。これらの中では、合成が容易である点から(メタ)アクリル酸アルキル、芳香族性モノマーを用いることが好ましい。
【0018】
エポキシ基含有(メタ)アクリル系共重合体は、前記(a)成分を必須成分とし、必要に応じ(b)成分を用いて重合することにより得られる。(a)成分の使用量は通常30〜100重量部好ましくは、50〜100重量部である。(b)成分は、任意成分であり、その使用量は通常0〜70重量部、好ましくは、0〜50重量部であるが、(b)成分を使用する場合には5〜70重量部とすることが特に好ましい。(a)成分の使用量が前記範囲にない場合には、ハードコート性が低下する場合がある。
【0019】
重合は公知のラジカル重合法によればよく、例えば、必要に応じて重合開始剤を用いて重合すれば良い。重合開始剤としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、重合時には必要に応じて公知の連鎖移動剤を用いてもよい。具体的には、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン等が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の(A)成分を製造する際に用いられるα,β−不飽和モノカルボン酸としては、カルボキシル基を一つ有し、重合性二重結合を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、などが挙げられる。
【0022】
エポキシ基含有(メタ)アクリル系共重合体とα,β−不飽和モノカルボン酸の反応は、通常、両成分を混合し、80〜120℃程度に加熱することにより行われる。エポキシ基含有(メタ)アクリル系共重合体とα,β−不飽和モノカルボン酸の使用量は、得られる(A)成分の(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqになるものであれば特に限定されないが、通常、エポキシ基1モルに対してα,β−不飽和モノカルボン酸を0.9〜1.1モル程度とすることが好ましい。
【0023】
本発明のカール防止剤の他の態様は、前記(B)成分を含有するカール防止剤に関する。(B)成分は前述の方法により得られた(A)成分に(c)成分を反応させることにより得られる。本発明の(B)成分の製造に用いられる(c)成分としては、反応性二重結合およびイソシアナート基を含有するものであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、一般式(1):
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、Rは、C2〜4のアルキレン基、nは1〜5の整数を表す。)で表される化合物、すなわち、カレンズAOI、カレンズBEI(商品名、昭和電工(株)製)の他、ジイソシアネート化合物とヒドロキシアクリレートとの反応付加物等が例示できる。ここで、ジイソシアネート化合物としては、公知のものを特に限定されず使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ヒドロキシアクリレートとしては、水酸基および(メタ)アクリル基を有する化合物であれば特に限定されず、公知のものを使用することができるが、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリンジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0026】
(A)成分と(c)成分の反応としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、(A)成分と(c)成分を混合して、50〜120℃程度より好ましくは、70〜90℃に加熱すれば良い。なお、(A)成分と(c)成分の使用量は特に限定されないが、通常、(A)成分の水酸基(モル):(c)成分のイソシアネート基(モル)=1:0.1〜1:1.0程度であり、好ましくは、1:0.1〜1:0.5である。使用量を当該範囲にすることで、組成物の安定性を高めることができる。
【0027】
前記方法により得られた、(A)成分および(B)成分はカール防止剤として、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂に添加して用いることができる。
【0028】
本発明の活性エネルギー硬化性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレートに前記(A)成分および/または(B)成分を添加することにより得られる。
【0029】
本発明の活性エネルギー硬化性樹脂組成物に用いられる多官能(メタ)アクリレートとしては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の他、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーと1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等も挙げられる。これら多官能(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を混合して使用できる。これらの中では、硬化膜硬度、耐擦傷性の観点から、3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂には、さらに、表面調整剤、消泡剤等を添加してもよく、光学特性、物理的特性向上のため、反応性または非反応性の無機フィラー、反応性または非反応性の有機フィラーを配合してもよい。また、紫外線照射にて硬化する場合には、さらに光重合開始剤、光増感剤等を添加し、調整することが好ましい。
【0031】
光重合開始剤としては、紫外線により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであれば、特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる各成分の配合量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中、(A)成分または(B)成分が5〜90重量%程度含有させることが好ましい。なお、光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤を0.5〜10重量%程度となるように用いればよい。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種基材に公知の方法で塗布、乾燥後、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることで保護コート層を有する基材とすることができる。フィルムを用いる場合を例にあげると、例えば、各種フィルム基材上に、乾燥後の重量が0.1〜30g/m、好ましくは1〜20g/mになるように塗布し、乾燥後活性エネルギー線を照射させて硬化膜を形成させることにより保護コート層を有するフィルム基材が得られる。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種公知の基材にもちいることができる。具体的には、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)等が挙げられる。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を採用することができ、例えばバーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0036】
照射する活性エネルギー線としては、例えば、紫外線や電子線が挙げられる。紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整されるが、高圧水銀灯を使用する場合、通常80〜160W/cmの光量を有したランプ1灯に対して搬送速度5〜50m/分で硬化させるのが好ましい。一方、電子線により硬化させる場合、通常10〜300kVの加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5〜50m/分で硬化させるのが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお以下「部」及び「%」は、特記しない限りいずれも質量基準である。
なお、(メタ)アクリル当量、エポキシ当量、重量平均分子量は下記の方法で測定した。
(メタ)アクリル当量:(メタ)アクリロイル基1モルが含有される活性エネルギー線硬化樹脂の重量の計算値(g/eq)である。
エポキシ当量:JIS−K−7236に準拠して測定。
重量平均分子量:ゲルパーメーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、商品名「HLC−8220」、カラム:東ソー(株)製、商品名「SuperHZ−M」×3)により測定
【0038】
[カール防止剤の合成]
合成例1
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタアクリレート(以下、GMAという)250部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1000部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を、約2時間を要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却、共重合体A1の溶液を得た。A1のエポキシ当量は、固形分換算で142g/eq。重量平均分子量は、20,000。ガラス転移温度は、46℃(計算値)であった。
続いて、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸(以下、AAという)507部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、反応性ポリマーB1の溶液を得た。反応性ポリマーB1のアクリル当量は、固形分換算で214g/eq、重量平均分子量 40,000(GPCによるポリスチレン換算による)であった。
【0039】
合成例2
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA 250部、酢酸ブチル1000部及びAIBN 5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750部及びAIBN 15部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間を要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN 10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却、共重合体A1の溶液を得た。A2のエポキシ当量は、固形分換算で142g/eq。重量平均分子量は、30,000。ガラス転移温度は、46℃(計算値)であった。
続いて、窒素導入管を空気導入管につけ替え、AA 507部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、反応性ポリマーB1の溶液を得た。反応性ポリマーB1のアクリル当量は、固形分換算で214g/eq、重量平均分子量 60,000(GPCによるポリスチレン換算による)であった。
【0040】
合成例3
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA 187.5部、メチルメタクリレート((以下、MMAという)62.5部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1000部及びAIBN 7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA562.5部、MMA187.5部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間を要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却、共重合体A3の溶液を得た。A3のエポキシ当量は、固形分換算で190g/eq。重量平均分子量は、18,500。ガラス転移温度は、59℃(計算値)であった。
続いて、窒素導入管を空気導入管につけ替え、AA 380.3部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、反応性ポリマーB3の溶液を得た。反応性ポリマーB3のアクリル当量は、固形分換算で262g/eq、重量平均分子量 36,500(GPCによるポリスチレン換算による)であった。
【0041】
合成例4
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA 125部、MMA 62.5部、エチルアクリレート(以下、EAという)62.5部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1000部及びAIBN 7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA 375部、MMA 187.5部、EA 187.5部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間を要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却、共重合体A4の溶液を得た。A4のエポキシ当量は、固形分換算で284g/eq。重量平均分子量は、18,500。ガラス転移温度は、36℃(計算値)であった。
続いて、窒素導入管を空気導入管につけ替え、AA 380.3部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、反応性ポリマーB4の溶液を得た。反応性ポリマーB4のアクリル当量は、固形分換算で262g/eq、重量平均分子量 37,000(GPCによるポリスチレン換算による)であった。
【0042】
合成例5
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA 250部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1000部及びAIBN 7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約120℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN 22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間を要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN 10部を仕込み、3時間保温した。その後、60℃まで冷却、共重合体A5の溶液を得た。A5のエポキシ当量は、固形分換算で142g/eq。重量平均分子量は、5,000。ガラス転移温度は、46℃(計算値)であった。
続いて、窒素導入管を空気導入管につけ替え、AA 507部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、反応性ポリマーB5の溶液を得た。反応性ポリマーB5のアクリル当量は、固形分換算で214g/eq、重量平均分子量 9,000(GPCによるポリスチレン換算による)であった。
【0043】
合成例6
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA 50部、MMA 200部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1000部及びAIBN 7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA150部、MMA600部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を、約2時間で系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却、共重合体A6の溶液を得た。A6のエポキシ当量は、固形分換算で711g/eq。重量平均分子量は、19,000。ガラス転移温度は、92℃(計算値)であった。
続いて、窒素導入管を空気導入管につけ替え、AA101.4部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、反応性ポリマーB6の溶液を得た。反応性ポリマーB6のアクリル当量は、固形分換算で783g/eq、重量平均分子量 29,000(GPCによるスチレン換算による)であった。
【0044】
合成例7
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、GMA 187.5部、EA62.5部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1000部及びAIBN 7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA562.5部、EA187.5部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を、約2時間で系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却、共重合体A7の溶液を得た。A7のエポキシ当量は、固形分換算で190g/eq。重量平均分子量は、21,000、ガラス転移温度は、25℃(計算値)であった。
続いて、窒素導入管を空気導入管につけ替え、AA380.3部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、反応性ポリマーB7の溶液を得た。反応性ポリマーB7は、のアクリル当量は、固形分換算で262g/eq、重量平均分子量 37,500(GPCによるスチレン換算による)であった。
【0045】
[試験片の調製]
合成例1〜7で得られた活性エネルギー線硬化樹脂、多官能アクリレートおよび光重合開始剤を表1に示した割合で配合した活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物を硬化させることにより得られる硬化膜について、以下の項目につき性能を評価した。性能評価結果を表1に併せて示す。
【0046】
(1)耐擦傷性
表1に記載の活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物を、75μm膜厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に#40バーコーターで塗布し(計算値:膜厚20μm)、80℃で1分乾燥させ、空気下で高圧水銀灯を用いて600mJ/cm2の照射量で通過させて硬化させた。この硬化膜を600gのおもりの底に10mm×10mmの範囲に付けたスチールウールで30回擦り、外観を観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:変化無し。△:細かいキズ有り。×:大きなキズ有
【0047】
(2)鉛筆硬度
上記試験片の硬化塗膜部をJIS K 5600に従い荷重500gの鉛筆引っかき試験によって評価した。結果を表1に示す。
【0048】
(3)塗工フィルムのカール
活性エネルギー線硬化型樹脂塗工後の基材フィルムを10cm×10cmに切り出した際のフィルム四隅の反り高さを測定した。結果を表1に示す。
【0049】
(4)透明性
上記試験片を目視観察しまったく濁りがない場合○、やや濁り・曇りがある場合△、白濁している場合×とした。結果を表1に示す。
【0050】
なお、表1中、PE3Aは多官能ポリエステルアクリレート(商品名:ビスコート300、大阪有機化学(株)製)、HCPKは光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:イルガキュアー184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、MEKは、メチルエチルケトンである。また、アクリル樹脂は、日本油脂(株)製 商品名:ブレンマーCP−50M、シリカフィラーは、東ソーシリカ(株)製 商品名:Nipsil E−220Aである。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が5,000〜100,000およびガラス転移温度が30℃以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させてなる(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqである反応性ポリマー(A)を含有するカール防止剤。
【請求項2】
エポキシ当量が120〜500g/eq、重量平均分子量が10,000〜100,000およびガラス転移温度が30℃以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体にα,β−不飽和モノカルボン酸を付加反応させてなる(メタ)アクリル当量が200〜600g/eqである反応性ポリマー(A)に、反応性二重結合とイソシアナート基を含有する化合物(c)を反応させてなる反応性ポリマー(B)を含有するカール防止剤。
【請求項3】
エポキシ基含有(メタ)アクリル系重合体が、分子中にエポキシ基およびビニル基を有する化合物(a)30〜100重量部および(a)成分以外の1つの重合性二重結合を持った化合物(b)0〜70重量部を重合させて得られる請求項1または2に記載のカール防止剤。
【請求項4】
請求項1から3に記載のカール防止剤を10〜80重量%含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成される保護コート層を有するフィルム基材。


【公開番号】特開2008−69303(P2008−69303A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250726(P2006−250726)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】