説明

ガイド装置、ガイドワイヤ留置カテーテルおよびガイドワイヤカテーテルシステム

【課題】外径寸法を小さく抑えつつ、画質の良好な画像の取得と十分に太いガイドワイヤの使用とを可能にする。
【解決手段】半径方向に微小隙間をあけてガイドワイヤ留置カテーテル1を挿入可能な貫通孔6を有する筒状のシース部材5を備え、貫通孔6の内面に、該貫通孔6に挿入された状態のガイドワイヤ留置カテーテル1との間にガイドワイヤ3の直径よりも大きな隙間を形成する溝9が長手方向に沿って形成されているガイド装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド装置、ガイドワイヤおよびガイドワイヤカテーテルシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体内埋め込み型除細動装置の電極を心臓内または心臓の静脈内に設置したり、カテーテル等を用いて心臓を処置したりする際に、予めガイドワイヤを心臓または静脈の目的とする位置まで挿入し、ガイドワイヤに沿って上記の医療用デバイスを導入する方法が用いられている。ガイドワイヤは、X線透視画像で位置を確認しながら体内に挿入されるが、3次元方向に湾曲したり分岐したりする血管内など形状が複雑な組織内の場合には、2次元のX線透視画像を頼りにして位置を正確に操作することが難しい。これを解決するために、超音波画像または赤外線画像で体内のガイドワイヤを観察しながら案内する装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3553923号公報
【特許文献2】国際公開第2008/021436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用デバイスをガイドワイヤに沿って挿入する際、ガイドワイヤの剛性が高い方が操作が容易であるため、ガイドワイヤは適度な太さを有すること望ましい。一方で、ガイドワイヤを案内する装置は、患者の身体への侵襲を低減したり、血管内などの比較的狭い体腔内での使用を可能にしたりするために、外径寸法の小さなものが望まれる。
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の装置の場合、カテーテル内から前方にガイドワイヤを出没させる構成となっている。したがって、装置の外径寸法を小さく維持したまま、ガイドワイヤを挿入するチャネルや孔の寸法を広げてより太いガイドワイヤを用いようとすると、装置の先端部の外径寸法に対して超音波探触子や赤外線を照射するプローブを小型化しなければならない。その結果、超音波画像または赤外線画像の画質が低下し、ガイドワイヤを精度良く操作するために必要な画質の画像を得ることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、外径寸法を小さく抑えつつ、画質の良好な画像の取得と十分に太いガイドワイヤの使用とを可能にすることができるガイド装置、ガイドワイヤ留置カテーテルおよびガイドワイヤカテーテルシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、半径方向に微小隙間をあけてガイドワイヤ留置カテーテルを挿入可能な貫通孔を有する筒状のシース部材を備え、前記貫通孔の内面に、該貫通孔に挿入された状態の前記ガイドワイヤ留置カテーテルとの間にガイドワイヤの直径よりも大きな隙間を形成する溝が長手方向に沿って形成されているガイド装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、シース部材を体内に挿入し、先端部に撮像手段を備えたガイドワイヤ留置カテーテルをシース部材の貫通孔内に挿入し、溝に沿ってガイドワイヤを挿入することにより、ガイドワイヤ留置カテーテルより前方に配置されたガイドワイヤの先端部を撮像手段で撮像しながら所望の位置まで案内することができる。また、その後に、ガイドワイヤを留置したままガイドワイヤ留置カテーテルを抜き去り、ガイドワイヤを溝内から貫通孔内へ移動させることにより、ガイドワイヤに沿わせながら貫通孔内を介して目的とする医療用デバイスを所望の位置まで案内することができる。
【0009】
この場合に、ガイドシースの内面とガイドワイヤ留置カテーテルの外面との間に形成される微小隙間を有効に利用しながら、ガイドワイヤを挿入する空間が径方向に十分に確保される。これにより、太く剛性の高いガイドワイヤの使用を可能にしつつ、溝の深さ寸法を小さく抑えてシース部材の壁厚を薄くし、外径寸法を低減して、患者の体内への挿入容易性を向上することができる。
【0010】
また、ガイドワイヤ留置カテーテルにはガイドワイヤを挿入するための溝等を形成する必要がないので、その先端部の空間を十分に活用して撮像手段を設け、画質の良好な画像を得ることができる。また、ガイドワイヤは、溝によってシース部材に対する位置が制限され、シース部材の先端の所定の位置から出没させられる。これにより、ガイドワイヤの操作を容易にすることができる。
【0011】
上記発明においては、前記シース部材が、先端部と、基端部と、前記先端部と前記基端部との間に配置された湾曲可能な湾曲部と、前記先端部に接続された操作ワイヤとを備え、前記基端部および前記湾曲部の周方向の一部に、他の部分より肉厚に形成された肉厚部が設けられ、該肉厚部に、前記操作ワイヤを移動可能に貫通させるワイヤ用孔と前記溝とが、長手方向に沿って設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、先端部の方向を湾曲可能な構成のシース部材において、肉厚部を有効に利用して溝の深さ寸法をより大きく確保することができる。
【0012】
また、本発明は、筒状のシース部材の貫通孔内に、該貫通孔の内面と半径方向に微小隙間をあけて挿入可能な挿入部と、該挿入部の先端部に設けられ体内を撮像する撮像手段とを備え、前記挿入部の外面に、前記貫通孔内に挿入された状態において前記貫通孔の内面との間にガイドワイヤの直径よりも大きな隙間を形成する溝が長手方向に沿って形成されているガイドワイヤ留置カテーテルを提供する。
【0013】
本発明によれば、体内に挿入されたシース部材の貫通孔内に挿入部を挿入した状態で、溝に沿ってガイドワイヤを挿入することにより、撮像手段によりガイドワイヤの先端部を撮像して所望の位置に配置することができるとともに、その後に挿入部を貫通孔内から抜き去ることによりガイドワイヤを所望の位置に留置することができる。
【0014】
この場合に、溝の深さ寸法が小さく抑えられるので、先端部内の空間を十分に活用して撮像手段を設け、画質の良好な画像を得ることができるとともに、挿入部および使用するガイドシースの外径寸法を小さく抑えることができる。また、十分に太いガイドワイヤを使用することができる。また、ガイドワイヤの位置が挿入部に対して制限されるので、撮像手段の画像内の所定の位置からガイドワイヤが出没させられる。これにより、ガイドワイヤの操作を容易にすることができる。
【0015】
上記発明においては、前記撮像手段が、超音波を送信するとともに体内で反射された超音波を受信する超音波探触子を備えることとしてもよい。
このようにすることで、血管内など視野内に血液が存在する部位であっても、体内の組織形状が鮮明に写された画像を得ることができるともに、ガイドワイヤ留置カテーテルを比較的安価に製造することができる。
【0016】
また、本発明は、長手方向に沿って貫通孔が形成された筒状のシース部材と、前記貫通孔内に、該貫通孔の内面と半径方向に微小隙間をあけて挿入可能な挿入部と、該挿入部の先端部に設けられ体内を撮像する撮像手段とを備えるガイドワイヤ留置カテーテルとを備え、前記貫通孔の内面および前記挿入部の外面に、前記貫通孔内に前記挿入部が挿入された状態の前記貫通孔の内面と前記挿入部の外面との間にガイドワイヤを挿入可能な隙間を形成する溝が長手方向に沿って形成されているガイドワイヤカテーテルシステムを提供する。
【0017】
本発明によれば、体内に挿入されたシース部材内にガイドワイヤ留置カテーテルを挿入し、シース部材と挿入部の各溝の内面の間に形成された空間内にガイドワイヤを挿入することにより、ガイドワイヤを所望の位置に案内することができる。また、その後に挿入部を抜き去ることにより、ガイドワイヤに沿って他の医療用デバイスを所望の位置に案内することができる。
【0018】
この場合に、シース部材の外径寸法を小さく抑えつつ、撮像手段により画質の良好な画像の取得しながら十分に太いガイドワイヤを用いることができる。また、各溝の間にガイドワイヤを挿入した状態において、シース部材および挿入部は、周方向の相対位置が互いに制限される。これにより、シース部材に対して画像を所定の方向に制限し、ガイドワイヤ留置カテーテルの操作を容易にすることができる。
【0019】
上記発明においては、前記貫通孔内に前記挿入部が挿入された状態において、前記シース部材と前記挿入部との周方向の相対位置を所定の位置に合わせる位置決め手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、各溝の間にガイドワイヤが挿入されていない状態において、シース部材と挿入部との周方向の相対位置を容易に所定の位置に合わせることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外径寸法を小さく抑えつつ、画質の良好な画像の取得と十分に太いガイドワイヤの使用とを可能にするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るガイドワイヤ留置カテーテルおよびガイド装置を備えたガイドワイヤカテーテルシステムの全体構成図である。
【図2】図1のガイド装置が備えるガイドシースの正面図である。
【図3】図2のガイドシースの変形例を示す図である。
【図4】図2のガイドシースのもう1つの変形例を示す図である。
【図5】図1のガイドワイヤカテーテルシステムが備える位置決め手段の一例を示す図である。
【図6】図1のガイドワイヤ留置カテーテルの変形例を示す図である。
【図7】図6のガイドワイヤ留置カテーテルを備えるガイドワイヤカテーテルシステムを示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るガイドワイヤ留置カテーテル1、ガイド装置2およびガイドワイヤカテーテルシステム100について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るガイドワイヤカテーテルシステム100は、図1に示されるように、体内に挿入可能なガイドワイヤ留置カテーテル1と、該ガイドワイヤ留置カテーテル1およびガイドワイヤ3を案内するガイド装置2とを備えている。
【0023】
ガイドワイヤ留置カテーテル1は、心臓内や血管内に挿入可能な細径の細長い挿入部1aと、体内を撮像する撮像手段4が設けられた先端部1bと、挿入部1aの基端側に設けられ操作者が把持する操作部1cとを備えている。挿入部1aは、体内の組織形状に沿って湾曲可能な可撓性を有している。
【0024】
撮像手段4は、前方の視野を撮像する。撮像手段4としては、超音波探触子、近赤外光用ファイバ、光コヒーレントトモグラフィまたはMRI用アンテナ等が用いられる。ガイドワイヤ留置カテーテル1を血管内等の血液が存在する部位で使用する場合には、血液が存在していても組織形状を鮮明に映し出し比較的安価に製造可能な超音波探触子を用いることが好ましい。ガイドワイヤ留置カテーテル1は基端側において図示しないモニタに接続され、撮像手段4により撮像された像はモニタに表示されるようになっている。
【0025】
ガイド装置2は、ガイドワイヤ留置カテーテル1およびガイドワイヤ3が挿入可能な筒状のガイドシース(シース部材)5を備えている。ガイドシース5は、先端部5aと、基端部5bと、先端部5aと基端部5bとの間に配置された湾曲部5cとを一体的に備えている。先端部5a、基端部5bおよび湾曲部5cには、これらを貫通する貫通孔6が長手方向に沿って設けられている。貫通孔6は、図2に示されるように、ガイドワイヤ留置カテーテル1が挿入された状態において、該ガイドワイヤ留置カテーテル1の外面と半径方向に微小隙間を形成する内径寸法を有している。
【0026】
また、ガイドシース5は、周方向の一部の側壁が他の部分の側壁より肉厚に形成された肉厚部5dを有している。該肉厚部5cには、長手方向に貫通する操作ワイヤ用孔(ワイヤ用孔)7が形成され、該操作ワイヤ用孔7内には操作ワイヤ8が挿入されている。操作ワイヤ8は、その先端がガイドシース5の先端部5aに固定され、基端側がガイドシース5の基端から外部に延び、操作ワイヤ用孔7内で長手方向に移動可能に設けられている。これにより、操作者が操作ワイヤ8の基端側を引っ張ると湾曲部5aが湾曲させられ、ガイドシース5の先端面の方向が変更されるようになっている。
【0027】
また、ガイドシース5の肉厚部5dには、貫通孔6の内面に、長手方向に全長にわたって溝9が形成されている。溝9は、ガイドワイヤ留置カテーテル1が貫通孔6内に挿入された状態において、ガイドワイヤ留置カテーテル1との間にガイドワイヤ3の外径寸法より大きな幅の隙間を形成する深さ寸法を有している。
【0028】
このように構成されたガイドワイヤカテーテルシステム100の使用方法および作用について以下に説明する。
本実施形態に係るガイドワイヤカテーテルシステム100は、体内を処理する医療用デバイスおよび該医療用デバイスを案内するガイドワイヤ3を目的とする位置まで案内するために使用される。まず、ガイドシース5を案内するシース用ガイドワイヤ(図示略)を、X線透視画像を観察しながら体内のガイドシース5を留置すべき位置まで挿入する。次に、シース用ガイドワイヤに沿って目的とする位置までガイドシース5を挿入し、ガイドシース5を留置したままシース用ガイドワイヤを抜去する。
【0029】
続いて、ガイドシース5の貫通孔6内に沿ってガイドワイヤ留置カテーテル1を挿入し、モニタの画像を観察しながら、ガイドワイヤ留置カテーテル1の先端部1aがガイドシース5の先端から出没するまでガイドワイヤ留置カテーテル1を前進させる。次に、ガイドワイヤ3を溝9に沿ってガイドワイヤ留置カテーテル1の先端面より前方まで挿入すると、ガイドワイヤ3の先端部がモニタの画像内に出現する。
【0030】
そして、ガイドワイヤ3の先端部を画像で確認しながらガイドワイヤ3およびガイドワイヤ留置カテーテル1を操作し、ガイドワイヤ3を視野内の所望の位置に配置させた後に貫通孔6に沿ってガイドワイヤ留置カテーテル1を抜去する。次に、ガイドワイヤ3を溝9内から貫通孔6内に移動させることにより、医療用デバイスを貫通孔6内を介してガイドワイヤ3に沿わせながら所望の位置まで案内することができる。
【0031】
この場合に、本実施形態によれば、ガイドシース5の内面に溝9を形成することにより、ガイドワイヤ留置カテーテル1をガイドシース5内に挿入したときにガイドシース5の内面とガイドワイヤ留置カテーテル1の外面と間に生じる隙間を有効に利用しながらガイドワイヤ3を挿入する空間が確保される。また、肉厚部5dに溝9を形成することにより、ガイドシース5の外径寸法を大きくすることなく、溝9の深さ寸法が十分に確保される。これにより、ガイドシース5の外径寸法を小さく抑えて体内への挿入性の向上および患者の身体への侵襲の低減を図ることができるとともに、十分に太く剛性の高いガイドワイヤ3を使用して医療用デバイスを挿入する操作を容易にし、作業の効率化を図ることができるという利点がある。
【0032】
また、ガイドワイヤ留置カテーテル1に別途溝や貫通孔等を設ける必要がないので、例えば、撮像手段4として超音波探触子を用いる場合にはその開口径を先端部1aの径寸法に対して十分に大きくするなど、先端部1aの寸法を有効に利用して撮像手段4が構成される。これにより、画質の良好な画像を得ることができるとともに、ガイドワイヤ3や医療用デバイスの位置を決めるときなど、画像を観察しながら行う操作の精度を向上することができるという利点がある。
【0033】
また、ガイドシース5に溝9を設けることにより、貫通孔6内でガイドワイヤ留置カテーテル1を周方向に回転させてもガイドワイヤ3のガイドシース5に対する位置が固定される。これにより、操作者によるガイドワイヤ3の位置の把握が容易になり、ガイドワイヤ3の操作をより容易にすることができるという利点がある。
【0034】
上記実施形態においては、ガイドワイヤ3を挿入する溝9を、ガイドシース5の内面に設けることとしたが、これに代えて、ガイドワイヤ留置カテーテル1の外面に設けることとしてもよい。この場合、図3に示されるように、ガイドワイヤ留置カテーテル1のみに溝9aを設けてもよく、図4に示されるように、ガイドシース5とガイドワイヤ留置カテーテル1の両方に溝9a,9bを設けてもよい。
【0035】
ガイドシース5の外径寸法をより小さくするためには、湾曲部5bを有さずに側壁全体の肉厚をより薄く形成することが望まれる。このような場合でも、ガイドワイヤ留置カテーテル1の外面に溝9aを形成することにより、ガイドシース5の内面とガイドワイヤ留置カテーテル1の外面との間に生じる隙間を有効に利用し、上記実施形態と同様に、画像の画質の維持と剛性の高いガイドワイヤ3の使用とを同時に実現することができる。
【0036】
また、ガイドワイヤ留置カテーテル1のみに溝9aを形成する場合には、ガイドワイヤ3の位置がガイドワイヤ留置カテーテル1に対して固定される。すなわち、画像内に所定の方向からガイドワイヤ3を出現させることができる。これは、撮像手段4として、ガイドワイヤ留置カテーテル1の長手方向を含む2次元断層画像を取得する超音波探触子を用いる構成においては、ガイドシース5内でガイドワイヤ留置カテーテル1を周方向に回転させながら体内を観察する必要があるため、特に有用である。
【0037】
また、ガイドシース5とガイドワイヤ留置カテーテル1との両方に溝9a,9bを形成する場合には、溝9a,9b内にガイドワイヤ3を挿入した状態において、ガイドシース5とガイドワイヤ留置カテーテル1との周方向の相対位置が制限される。これは、撮像手段4として、近赤外光用を含む光学カメラや光を伝送するファイバ等の光学系を用いる場合に、光学系の途中位置が捩じれて像が歪んだりする不都合を防止することができるとともに、ガイドシース5の周方向に対して画像の上下左右方向が一定に保持されるので操作者による操作を容易にすることができ、特に有用である。
【0038】
また、上記実施形態においては、ガイドシース5とガイドワイヤ留置カテーテル1との周方向の相対位置を所定の位置に合わせる位置決め手段10を備えることとしてもよい。
位置決め手段10は、例えば、図5に示されるように、ガイドシース5の内面の一部に、半径方向内方に突出して設けられた係止部(位置決め手段)10aと、ガイドワイヤ留置カテーテル1の外面の一部に、半径方向外方に突出して設けられた凸部(位置決め手段)10bとを備える。
【0039】
これにより、貫通孔6内に挿入されたガイドワイヤ留置カテーテル1をガイドシース5に対して周方向に回転させると、凸部10bが係止部10aによって係止される位置で回転が制限され、体内においてもガイドシース5とガイドワイヤ留置カテーテル1との周方向の相対位置が容易に所定の位置に合わせられる。このようにすることで、ガイドシース5とガイドワイヤ留置カテーテル1との周方向の位置合わせをしてからガイドワイヤ3を溝9内に挿入することにより、画像内に所定の方向からガイドワイヤ3を出現させてガイドワイヤ3の操作をより容易にすることができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、ガイドワイヤ留置カテーテル1が、図6に示されるように、長手方向の一部に、他の部分より径寸法が小さい細径部2dを有することとしてもよい。細径部2dは、挿入部1aの途中位置に設けられる。細径部2dは、ガイドワイヤ留置カテーテル1が、先端部1bの一部をガイドシース5の先端から突出させて貫通孔6内に挿入された状態において、湾曲部5cと隣接する位置に設けられていることが好ましい。
【0041】
また、挿入部1aは、操作者によって操作部1cが周方向に回転させられたときにその回転力が効率良く先端部1bまで伝達されるように、基端側に向かうほど太く、また、剛性が高くなるように構成されていることが好ましい。先端部1bは、貫通孔6内で周方向に回転可能な径寸法を有しつつ、湾曲部5cを湾曲させたときにその湾曲に応答良く追従するように、貫通孔6の径寸法に対して十分に大きな径寸法を有することが好ましい。例えば、貫通孔6の内径が8.5Fとすると、ガイドワイヤ留置カテーテル1の先端部1bおよび挿入部1aの基端側の外径が8F、細径部2dの外径が7F程度が好ましい。ここで、Fとは、カテーテル等の外接円の円周長(mm)で定義されるものである。
【0042】
従来、貫通孔6内にガイドワイヤ留置カテーテル1を挿入した状態で湾曲部5cを湾曲させると、ガイドワイヤ留置カテーテル1が湾曲部5cの内面と接触または湾曲部5cの内面から押圧された状態となる。この状態で、操作部1cを周方向に回転させても、湾曲部5cにおいて生じる摩擦力や押圧力が回転力に抗し、湾曲部5cの湾曲の角度が大きくなるほど、先端部1bを回転させることが難しくなるという問題があった。
【0043】
しかしながら、細径部1dを設けることにより、湾曲部5cにおいてその内面と挿入部1aの外面との間の空間に余裕が生じ、図7に示されるように、貫通孔6内にガイドワイヤ留置カテーテル1を挿入した状態で湾曲部5cを湾曲させても、挿入部1aがガイドシース5との接触や押圧から解放された状態となる。これにより、操作部1cの回転力が先端部1bまで容易に伝達され、ガイドワイヤ留置カテーテル1の操作性を向上することができるという利点がある。特に、撮像手段4に超音波探触子を用いる場合には、湾曲部5cの湾曲角度が比較的大きい状態でも、ガイドワイヤ留置カテーテル1を容易に周方向に回転させて画像の位置を簡便に調節することが可能となり有用である。
【0044】
この場合に、ガイドワイヤ留置カテーテル1は、挿入部1aにガイドワイヤ3を挿入可能なガイドワイヤ用孔11を有することが好ましい。また、先端部1bの外面に溝9aが形成されていることとしてもよい。例えば、ガイドワイヤ用孔11は、操作部1cから先端部1b近傍まで形成され、該先端部1b近傍において開口している。溝9aは、ガイドワイヤ用孔11の開口と同一の側に形成される。このようにすることで、貫通孔6の内面と細径部1dの外面との間の空間が広くなることにより、ガイドワイヤ3の挿入経路が定まらずガイドワイヤ3を所望の方向に操作することが難しくなるという不都合を解消し、ガイドワイヤ3の操作を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ガイドワイヤ留置カテーテル
1a 挿入部
1b 先端部
1c 操作部
2 ガイド装置
3 ガイドワイヤ
4 撮像手段
5 ガイドシース(シース部材)
5a 先端部
5b 基端部
5c 湾曲部
5d 肉厚部
6 貫通孔
7 操作ワイヤ用孔(ワイヤ用孔)
8 操作ワイヤ
9,9a,9b 溝
10 位置決め手段
10a 係止部
10b 凸部
11 ガイドワイヤ用孔
100 ガイドワイヤカテーテルシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向に微小隙間をあけてガイドワイヤ留置カテーテルを挿入可能な貫通孔を有する筒状のシース部材を備え、
前記貫通孔の内面に、該貫通孔に挿入された状態の前記ガイドワイヤ留置カテーテルとの間にガイドワイヤの直径よりも大きな隙間を形成する溝が長手方向に沿って形成されているガイド装置。
【請求項2】
前記シース部材が、先端部と、基端部と、前記先端部と前記基端部との間に配置された湾曲可能な湾曲部と、前記先端部に接続された操作ワイヤとを備え、
前記基端部および前記湾曲部の周方向の一部に、他の部分より肉厚に形成された肉厚部が設けられ、
該肉厚部に、前記操作ワイヤを移動可能に貫通させるワイヤ用孔と前記溝とが、長手方向に沿って設けられている請求項1に記載のガイド装置。
【請求項3】
筒状のシース部材の貫通孔内に、該貫通孔の内面と半径方向に微小隙間をあけて挿入可能な挿入部と、
該挿入部の先端部に設けられ体内を撮像する撮像手段とを備え、
前記挿入部の外面に、前記貫通孔内に挿入された状態において前記貫通孔の内面との間にガイドワイヤの直径よりも大きな隙間を形成する溝が長手方向に沿って形成されているガイドワイヤ留置カテーテル。
【請求項4】
前記撮像手段が、超音波を送信するとともに体内で反射された超音波を受信する超音波探触子を備える請求項3に記載のガイドワイヤ留置カテーテル。
【請求項5】
長手方向に沿って貫通孔が形成された筒状のシース部材と、
前記貫通孔内に、該貫通孔の内面と半径方向に微小隙間をあけて挿入可能な挿入部と、該挿入部の先端部に設けられ体内を撮像する撮像手段とを備えるガイドワイヤ留置カテーテルとを備え、
前記貫通孔の内面および前記挿入部の外面に、前記貫通孔内に前記挿入部が挿入された状態の前記貫通孔の内面と前記挿入部の外面との間にガイドワイヤを挿入可能な隙間を形成する溝が長手方向に沿って形成されているガイドワイヤカテーテルシステム。
【請求項6】
前記貫通孔内に前記挿入部が挿入された状態において、前記シース部材と前記挿入部との周方向の相対位置を所定の位置に合わせる位置決め手段を備える請求項5に記載のガイドワイヤカテーテルシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−177418(P2011−177418A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46567(P2010−46567)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】