説明

ガスワイピング装置

【課題】蛇行やねじれが発生しても、帯板における幅方向のめっき付着量を均一にすることができるガスワイピング装置を提供する。
【解決手段】溶融金属のめっき浴11から連続して引き上げられる帯鋼Sに対し、ワイピングノズル51からワイピングガスを吹き付けることにより、帯鋼Sの表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、帯鋼Sを所定のめっき付着量に制御するガスワイピング装置であって、ワイピングノズル51を帯鋼Sに対して、このワイピングノズル51における幅方向の中心位置Opが帯鋼Sにおける幅方向の中心位置Osに追随するように、帯鋼Sの幅方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送される帯鋼に対し、ワイピングガスを吹き付けることにより、その表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、帯鋼を所定のめっき付着量に制御するガスワイピング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛やアルミニウム等をはじめとする溶融金属のめっき方法は、古くから実用化されている。特に、これらの溶融金属でめっきした溶融金属めっき鋼板は、自動車用、家電用、建材用の防錆鋼板として、その需要が増加している。そして、自動車、家電、建材等の最終製品の品質向上に伴い、これらを構成する溶融金属めっき鋼板においても、そのめっき付着量の均一化や表面欠陥の抑制等、更に高品質な製品が求められている。
【0003】
現在、連続した帯鋼(帯板)に対して溶融金属をめっきする方法としては、例えば、ガスワイピング法が一般的である。このガスワイピング法では、溶融金属のめっき浴中に連続的に浸漬させた帯鋼をめっき浴から上方に引き上げて、この上昇過程の帯鋼に対して、ワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けるようにしている。これにより、帯鋼の表面に余剰に付着した溶融金属が除去されて、帯鋼は所定のめっき付着量に調整される。このような、従来のガスワイピング装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3533775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ライン張力や各種サポートロールによる拘束力等の諸条件によって、帯鋼には蛇行やねじれが発生する場合がある。しかしながら、従来のガスワイピング装置では、このような蛇行やねじれが発生した帯鋼に対して、単にワイピングガスを吹き付けることになるため、帯鋼における幅方向のめっき付着量を均一にすることができないおそれがある。
【0006】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、蛇行やねじれが発生しても、帯板における幅方向のめっき付着量を均一にすることができるガスワイピング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係るガスワイピング装置は、
溶融金属めっき浴から連続して引き上げられる帯板に対し、ワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けることにより、帯板の表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、帯板を所定のめっき付着量に制御するガスワイピング装置であって、
前記ワイピングノズルを帯板に対し、前記ワイピングノズルの幅方向中心位置が帯板の幅方向中心位置に追随するように、帯板の幅方向に移動させる追随手段を備える
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係るガスワイピング装置は、
第1の発明に係るガスワイピング装置において、
前記追随手段は、前記ワイピングノズルを回転させる回転手段を有し、
前記ワイピングノズルの回転軸は、前記ワイピングノズルの幅方向中心位置に配置される
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係るガスワイピング装置は、
第1の発明に係るガスワイピング装置において、
帯板までの距離に応じた吸引力を該帯板に付与して帯板の板形状や振動を抑制する矯正制振手段を備え、
前記追随手段は、前記矯正制振手段を帯板に対し、前記矯正制振手段の幅方向中心位置が帯板の幅方向中心位置に追随するように、帯板の幅方向に移動させる
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係るガスワイピング装置は、
第3の発明に係るガスワイピング装置において、
前記追随手段は、帯板の蛇行量及びねじれ角度に応じて、前記ワイピングノズル及び前記矯正制振手段を帯板に追随させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従って、本発明に係るガスワイピング装置によれば、ワイピングノズルを帯板に対し、ワイピングノズルの幅方向中心位置が帯板の幅方向中心位置に追随するように、帯板の幅方向に移動させることにより、蛇行やねじれが発生しても、帯板における幅方向のめっき付着量を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るガスワイピング装置を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係るガスワイピング装置を備えた溶融金属めっき設備の概略図、図2は本発明の一実施例に係るガスワイピング装置の前面図、図3は本発明に一実施例に係るガスワイピング装置の後面図、図4は図2のA−A矢視断面図、図5は図2のB−B矢視断面図、図6は図2のC−C矢視断面図、図7は図3のD−D矢視断面図、図8はワイピングノズルにおけるスリットのギャップ量を示した図、図9は帯鋼に蛇行が発生していないときのガスワイピング装置の動作を示した図、図10は帯鋼に操作側への蛇行が発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図、図11は帯鋼に駆動側への蛇行が発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図、図12は帯鋼にねじれが発生していないときのガスワイピング装置の動作を示した図、図13は帯鋼にねじれが発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図、図14は帯鋼にねじれが発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図である。
【0013】
図1に示す溶融金属めっき設備1は、溶融金属めっき鋼板を製造する図示しない溶融金属めっき鋼板製造ラインに設けられるものであって、連続的に搬送される帯鋼(帯板)Sに対して、例えば、亜鉛やアルミニウム等の溶融金属をめっきするものである。
【0014】
図1に示すように、溶融金属めっき設備1の下方には、高温に保持された溶融金属が貯溜されるめっき浴11が配置されている。めっき浴11内には、浸漬された帯鋼Sを巻き掛けて略鉛直上方に方向転換させるシンクロール12と、このシンクロール12から搬送される帯鋼Sを挟むように配置される一対のサポートロール13,14とが、回転可能に支持されている。サポートロール13,14は、水平方向及び鉛直方向に移動可能となっており、これらの位置を調整することにより、帯鋼Sに対する押圧力が調整され、その反り(板形状)が矯正される。
【0015】
めっき浴11の浴面上には、ガスワイピング装置15が設けられている。ガスワイピング装置15は、帯鋼Sに対してその板厚方向から挟むように対向配置される一対の本体15a,15bから構成されており、溶融金属が付着した帯鋼Sに対して、例えば、空気や窒素等からなるワイピングガスを吹き付けることにより、その表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、帯鋼Sを所定のめっき付着量に調整するものである。
【0016】
ガスワイピング装置15の上方には、めっきされた帯鋼Sを巻き掛けて略水平方向に方向転換させるデフレクタロール16が回転可能に支持されている。また、デフレクタロール16の上方には、帯鋼Sのめっき付着量を検出するめっき付着量検出センサ17が帯鋼Sの幅方向に移動可能に設けられている。
【0017】
次に、図2乃至図8を用いてガスワイピング装置15の構成について説明する。なお、ガスワイピング装置15の本体15a,15bは同じ構成をなしており、この本体15a,15bを構成する各部材は帯鋼Sに対して対称となるように配置されている。また、本体15a,15bにおいては、帯鋼Sの板厚方向では、帯鋼Sと面する側を前面側とし、その反対側を後面側とする一方、帯鋼Sの幅方向では、一方を操作側とし、他方を駆動側とする。
【0018】
図2乃至図7に示すように、ガスワイピング装置15の本体15a,15bの上部には、水平方向に延在するメインフレーム31が帯鋼Sの搬送方向に移動可能に架設されている。メインフレーム31にはロッド支持部32が形成されており、このロッド支持部32内には帯鋼Sの板厚方向に延在するガイドロッド33が支持されている。そして、ガイドロッド33にはハンガー34が摺動可能に支持されている。
【0019】
メインフレーム31の下方には、矩形な枠状をなす可動ケーシング41が配置されており、更に、この可動ケーシング41の枠内には、ステー42が配置されている。可動ケーシング41の上部材41aの下面には、帯鋼Sの幅方向に延在するガイドレール43が設けられる一方、ステー42の端部42aの上面には、摺動部材44が設けられている。そして、これらガイドレール43と摺動部材44とは摺動可能に係合されている。また、ハンガー34の下端は、可動ケーシング41の上部材41aを跨ぐように二股状に形成され、ステー42の端部42aの上面に支持されている。
【0020】
更に、可動ケーシング41の下部材41bの上面にはモータ91が設けられており、このモータ91の出力軸はカップリング92を介してカム軸93と接続されている。カム軸93は、軸受94を介して下部材41bの上面に支持され、その軸心に対して偏心したカム95を有している。そして、駆動側のステー42の端部42aの下部には、2枚の板状をなすサイドガイド42bが設けられており、このサイドガイド42bの内壁間には、カム95が帯鋼Sの幅方向に摺動可能に収納されている。
【0021】
可動ケーシング41及びステー42には、帯鋼Sの搬送方向に延在する円柱状のピボット45が設けられている。ピボット45はステー42を貫通するように配置されており、その上端及び下端は可動ケーシング41の上部材41a及び下部材41bに嵌合されている。そして、ピボット45の軸心(後述する回転軸Op)は、可動ケーシング41及びステー42(ガスワイピング装置15の本体15a,15b)の幅方向(長手方向)中心位置に配置されている。
【0022】
ステー42には、ラックガイド46を介して、帯鋼Sの幅方向に延在するラック47が支持されている。ラック47は、ラックガイド46にその軸方向に摺動可能に支持されると共に、ピボット45の軸方向中心位置に嵌合されている。また、可動ケーシング41の枠内には、図示しない駆動装置に接続されるピニオン48が配置されており、このピニオン48のギヤ部はラック47のギヤ部と噛み合っている。
【0023】
可動ケーシング41の下方には、搬送される帯鋼Sに対してワイピングガスを吹き付けるワイピングノズル51が設けられている。なお、ワイピングノズル51の幅方向(長手方向)中心位置は、帯鋼Sの幅方向において、ピボット45の軸心と同じ位置に配置されている。
【0024】
ワイピングノズル51の先端には、帯鋼Sの搬送方向と直交するように開口されるスリット51bが形成されており、このスリット51bはワイピングノズル51内に形成されるチャンバ51aと連通している。そして、ワイピングノズル51の両側には、チャンバ51aと連通するパイプ部材52が接続されており、このパイプ部材52はパイプ支持部材53を介して可動ケーシング41の下部材41bの下面に支持されている。更に、駆動側のパイプ部材52には、ホース54を介してワイピングガス供給装置55が接続されている。
【0025】
ワイピングガス供給装置55は、ワイピングガスをワイピングノズル51のチャンバ51aに供給して、そのスリット51bからワイピングガスを噴射させるものである。このとき、噴射するワイピングガスのガス量及びガス圧は、ワイピングガス供給装置55により制御される。
【0026】
また、ワイピングノズル51は、そのスリット51bのギャップ量を制御するギャップ量制御装置56を備えている。図8に示すように、ワイピングノズル51のスリット51bの開口部は、幅方向中央部分のギャップと幅方向外側部分のギャップとから形成されている。そして、スリット51bの幅方向中央部分のギャップは、そのギャップ量が一定となっている。一方、スリット51bの幅方向外側部分のギャップは、幅方向中央部分のギャップのギャップ量よりも常に大きくなるように、そのギャップ量がギャップ量制御装置56により制御される。
【0027】
つまり、帯鋼Sの幅方向両側部、即ち、エッジ部と対向するスリット51bの幅方向外側部分のギャップ量を、その幅方向中央部分のギャップ量よりも大きくすることで、帯鋼Sのエッジ部へのワイピングガス噴射量を多くしている。これにより、帯鋼Sのエッジ部に過剰の溶融金属が付着するエッジオーバーコートと称される現象が抑制される。
【0028】
可動ケーシング41の前面には、制振装置(矯正制振手段)61が設けられている。なお、制振装置61の幅方向(長手方向)中心位置は、帯鋼Sの幅方向において、ピボット45の軸心と同じ位置に配置されている。
【0029】
対向する制振装置61には、帯鋼Sに対してその板厚方向から挟むように対向配置される一対の板形状検出センサ62及び電磁石63が帯鋼Sの幅方向に所定間隔で設けられている。電磁石63は上段及び下段に帯鋼Sの板幅に応じて配置され、板形状検出センサ62はその上段及び下段の電磁石63間における中央部に配置されており、これら板形状検出センサ62及び電磁石63の先端は、帯鋼Sの板厚方向において、ワイピングノズル51(スリット51b)の先端と同じ位置に配置されている。即ち、板形状検出センサ62とこの上下に配置され2個の電磁石63とを1組としたものが、帯鋼Sの幅方向において所定間隔で7組配置されており、この1組ごとに後述する制御が行われる。
【0030】
板形状検出センサ62は、渦電流式のセンサであって、この板形状検出センサ62から帯鋼Sまでの距離を検出するものである。電磁石63は、その電磁力により帯鋼Sの反りを矯正し、且つ、帯鋼Sを制振するものである。そして、詳細は後述するが、各板形状検出センサ62により帯鋼Sまでの距離を常時検出しながら、この検出した距離に応じて各電磁石63に励磁電流を流して、その電磁力によって、帯鋼Sの反り及びワイピングノズル51間における帯鋼Sのパス位置を矯正し、且つ、帯鋼Sを制振するようになっている。
【0031】
本体15a側のメインフレーム31の上部には、帯鋼Sの幅方向において、蛇行量検出センサ71が帯鋼Sの板幅に応じてエッジ部に対向するように設けられている。蛇行量検出センサ71は、2次元走査型レーザーを用いたセンサ、あるいは、カメラや画像処理装置等からなるものであって、帯鋼Sの幅方向におけるそのエッジ部の位置や、この蛇行量検出センサ71から帯鋼Sのエッジ部までの距離を検出するものである。
【0032】
対向するワイピングノズル51間には、帯鋼Sに対してその幅方向から挟むように対向配置される一対のバッフルプレート81が設けられている。バッフルプレート81は、帯鋼Sの幅方向及び板厚方向に移動可能に支持されており、その先端が搬送される帯鋼Sの端面に対向するように、帯鋼Sに対して追随するようになっている。これにより、対向するワイピングノズル51のスリット51bから噴射されるワイピングガス同士の衝突が防止されて、帯鋼Sのエッジ部におけるエッジオーバーコートが抑制される。
【0033】
なお、可動ケーシング41、ステー42、ガイドレール43、摺動部材44、ピボット45、ラック47、ピニオン48、モータ91、及び、カム95等は、追随手段を構成するものであり、この中でも、ステー42のサイドガイド42b、ピボット45、モータ91、カップリング92、カム軸93、軸受94、及び、カム95等は、回転手段を構成するものである。
【0034】
従って、ハンガー34をガイドロッド33上において同じ移動量で移動させることにより、可動ケーシング41及びステー42をメインフレーム31に対して帯鋼Sの板厚方向に移動させることができる。これにより、対向するワイピングノズル51及び制振装置61を帯鋼Sに対して、その板厚方向において接近離間するように移動させることができる。
【0035】
また、モータ91を正転または逆転してカム95を回転させ、この偏心したカム95のカム面をステー42のサイドガイド42bの内壁に押圧させることにより、可動ケーシング41をステー42に対して、ピボット45を中心に帯鋼Sの搬送方向と直交する平面内において回転させることができる。これにより、対向するワイピングノズル51及び制振装置61を帯鋼Sに対して、その平面内において回転させることができる。このとき、ハンガー34に支持されたステー42に対して可動ケーシング41が回転することになるが、ハンガー34の二股状の下端がケーシング41の上部材41aを跨ぐようにして、ステー42の端部42aに支持されているので、可動ケーシング41の回転は許容されることになる。
【0036】
更に、ピニオン48を正転または逆転させて、ラック47を噛み合い移動させることにより、可動ケーシング41をステー42に対して帯鋼Sの幅方向に移動させることができる。これにより、対向するワイピングノズル51及び制振装置61を帯鋼Sに対して、その幅方向において移動させることができる。このとき、可動ケーシング41のガイドレール43とステー42の摺動部材44とが摺動可能に係合されているので、可動ケーシング41の移動はスムーズに行われる。
【0037】
従って、上述した構成をなすことにより、めっき浴11内に連続的に浸漬された帯鋼Sは、シンクロール12により略鉛直上方に方向転換されて、サポートロール13,14を介して、めっき浴11の浴面上方に引き上げられる。このとき、各板形状検出センサ62により対応する帯鋼Sの各部位までの距離が常時検出されており、この距離に応じてサポートロール13,14が水平方向及び鉛直方向に移動して、帯鋼Sの反りが矯正される。
【0038】
次いで、引き上げられた帯鋼Sがガスワイピング装置15の本体15a,15b間に搬送されると、この帯鋼Sに対して、ワイピングノズル51のスリット51bからワイピングガスが吹き付けられる。これにより、帯鋼Sの表面に余剰に付着した溶融金属がそぎ落とされ、帯鋼Sの表面に所定量の膜厚のめっきが施される。
【0039】
上述したガスワイピング時においては、メインフレーム31は鉛直方向に移動可能となっており、ガスワイピング装置15全体は所定の高さに配置されている。
【0040】
このとき、ワイピングノズル51においては、ワイピングガス供給装置55により、そのスリット51bから噴射されるワイピングガスが所定のガス量及びガス圧に調整される。これと同時に、そのスリット51bにおいては、帯鋼Sの板幅に応じて、その幅方向外側部分のギャップが帯鋼Sのエッジ部と対向するように、ギャップ量制御装置56によりそのギャップ量が調整される。
【0041】
また、制振装置61内においては、各板形状検出センサ62により対応する帯鋼Sの各部位までの距離を常時検出し、この検出した帯鋼Sの各部位までの距離を制御目標値と比較する。そして、その各距離が制御目標値に達するように各電磁石63の励磁電流を調整し、その電磁力によって、帯鋼Sにおける幅方向のめっき付着量が均一となるように、帯鋼Sを所定の反り量及びパス位置に矯正し、且つ、帯鋼Sの振動を抑制する。
【0042】
更に、板形状検出センサ62により検出された帯鋼Sの各部位までの距離、及び、蛇行量検出センサ71により検出された帯鋼Sの幅方向におけるそのエッジ部の位置や、そのエッジ部までの距離に基づいて、帯鋼Sの蛇行量及びねじれ角度が常時計測されている。そして、これら帯鋼Sの蛇行量及びねじれ角度に応じて、ワイピングノズル51、制振装置61、及び、バッフルプレート81が帯鋼Sに追随するようになっている。
【0043】
次いで、溶融金属のめっきが施された帯鋼Sがデフレクタロール16により略水平方向に方向転換されて搬送されると、めっき付着量検出センサ17により帯鋼Sにおける幅方向のめっき付着量が検出される。ここで、検出しためっき付着量が所定のめっき付着量になっていない場合には、ワイピングガス供給装置55によるワイピングガスのガス量やガス圧、及び、ギャップ量制御装置56によるワイピングノズル51のスリット51bのギャップ量を再調整して、帯鋼Sにおける幅方向のめっき付着量が所定の範囲内になるように補正される。
【0044】
次に、図9乃至図14を用いて帯鋼Sの蛇行時及びねじれ時におけるガスワイピング装置15の動作について説明する。
【0045】
先ず、図9乃至図11は、帯鋼Sの蛇行時におけるガスワイピング装置15の動作を示している。
【0046】
ここで、ガスワイピング装置15内における帯鋼Sの幅方向中心位置は、帯鋼Sの搬送中心位置となっている。そして、この搬送中心位置をOwと示し、帯鋼Sの幅方向中心位置をOsと示すと、通常、蛇行していない帯鋼Sは、中心Osがその幅方向において搬送中心Owと同じ位置になるように搬送される。一方、蛇行する帯鋼Sは、中心Osがその幅方向において搬送中心Owからずれて搬送されることになり、このずれ量が蛇行量となる。
【0047】
図9に示すように、蛇行量が0であると計測された場合には、ピニオン48を回転駆動させることにより、ラック47を介して、可動ケーシング41のピボット45を移動させる。これにより、ピボット45が帯鋼に対して、回転軸Opが帯鋼Sの幅方向において中心Osと同じ位置になるように、追随することになるので、可動ケーシング41のワイピングノズル51及び制振装置61は、その帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持するように配置される。また、これと同時に、バッフルプレート81もその帯鋼Sに追随する。
【0048】
図10に示すように、操作側への蛇行量Xが計測された場合には、ピニオン48を回転駆動させることにより、ラック47を介して、可動ケーシング41のピボット45を操作側へ蛇行量Xと同じ距離の分だけ移動させる。これにより、ピボット45が帯鋼に対して、回転軸Opが帯鋼Sの幅方向において中心Osと同じ位置になるように、追随することになるので、操作側へ移動した可動ケーシング41のワイピングノズル51及び制振装置61は、その帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持するように配置される。また、これと同時に、バッフルプレート81も操作側への蛇行量Xに応じてその帯鋼Sに追随する。
【0049】
図11に示すように、駆動側への蛇行量Xが計測された場合には、ピニオン48を回転駆動させることにより、ラック47を介して、可動ケーシング41のピボット45を駆動側へ蛇行量Xと同じ距離の分だけ移動させる。これにより、ピボット45が帯鋼に対して、回転軸Opが帯鋼Sの幅方向において中心Osと同じ位置になるように、追随することになるので、駆動側へ移動した可動ケーシング41のワイピングノズル51及び制振装置61は、その帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持するように配置される。また、これと同時に、バッフルプレート81も駆動側への蛇行量Xに応じてその帯鋼Sに追随する。
【0050】
次いで、図12乃至図14は、帯鋼Sのねじれ時におけるガスワイピング装置15の動作を示している。なお、図12乃至図14に示す帯鋼Sは蛇行していないものとする。
【0051】
図12に示すように、ねじれ角度が0度と計測された場合には、モータ91を駆動してカム95を回転させことにより、この偏心したカム95のカム面をステー42のサイドガイド42bの内壁に押圧させる。これにより、可動ケーシング41がステー42に対して、ピボット45を中心に帯鋼Sの搬送方向と直交する平面内において回転することになるので、対向するワイピングノズル51及び制振装置61も帯鋼Sに対して、その平面内において回転することになる。この結果、ピボット45が帯鋼に対して、回転軸Opが帯鋼Sの幅方向において中心Osと同じ位置になるように、追随することになるので、可動ケーシング41のワイピングノズル51及び制振装置61は、その帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持するように配置される。また、これと同時に、バッフルプレート81もその帯鋼Sに追随する。
【0052】
図13に示すように、帯鋼Sにおける駆動側のエッジ部が本体15a側に回転するようなねじれ角度θが計測された場合には、次のような動作となる。
【0053】
本体15aにおいては、モータ91を駆動してカム95を回転させることにより、この偏心したカム95のカム面を後面側のサイドガイド42bの内壁に押圧させる。これにより、可動ケーシング41をステー42に対して、ピボット45を中心に帯鋼Sの搬送方向と直交する平面内において回転させ、対向するワイピングノズル51及び制振装置61を帯鋼Sに対して、その平面内においてねじれ角度θの分だけ回転させる。これと同時に、ピニオン48を回転駆動させることにより、ピボット45を操作側へ移動させる。
【0054】
一方、本体15bにおいては、モータ91を駆動してカム95を回転させることにより、この偏心したカム95のカム面を内面側のサイドガイド42bの内壁に押圧させる。これにより、可動ケーシング41をステー42に対して、ピボット45を中心に帯鋼Sの搬送方向と直交する平面内において回転させ、対向するワイピングノズル51及び制振装置61を帯鋼Sに対して、その平面内において回転させる。これと同時に、ピニオン48を回転駆動させることにより、ピボット45を駆動側へ移動させる。
【0055】
この結果、ピボット45が帯鋼に対して、回転軸Opがねじれた帯鋼Sの幅方向において中心Osと同じ位置になるように、追随することになるので、可動ケーシング41のワイピングノズル51及び制振装置61は、そのねじれた帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持するように配置される。また、これと同時に、バッフルプレート81もねじれ角度θに応じてその帯鋼Sに追随する。
【0056】
図14に示すように、帯鋼Sにおける駆動側のエッジ部が本体15b側に回転するようなねじれ角度θが計測された場合には、次のような動作となる。
【0057】
本体15aにおいては、モータ91を駆動してカム95を回転させることにより、この偏心したカム95のカム面を内面側のサイドガイド42bの内壁に押圧させる。これにより、可動ケーシング41をステー42に対して、ピボット45を中心に帯鋼Sの搬送方向と直交する平面内において回転させ、対向するワイピングノズル51及び制振装置61を帯鋼Sに対して、その平面内においてねじれ角度θの分だけ回転させる。これと同時に、ピニオン48を回転駆動させることにより、ピボット45を駆動側へ移動させる。
【0058】
一方、本体15bにおいては、モータ91を駆動してカム95を回転させることにより、この偏心したカム95のカム面を後面側のサイドガイド42bの内壁に押圧させる。これにより、可動ケーシング41をステー42に対して、ピボット45を中心に帯鋼Sの搬送方向と直交する平面内において回転させ、対向するワイピングノズル51及び制振装置61を帯鋼Sに対して、その平面内において回転させる。これと同時に、ピニオン48を回転駆動させることにより、ピボット45を操作側へ移動させる。
【0059】
この結果、ピボット45が帯鋼に対して、回転軸Opがねじれた帯鋼Sの幅方向において中心Osと同じ位置になるように、追随することになるので、可動ケーシング41のワイピングノズル51及び制振装置61は、そのねじれた帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持するように配置される。また、これと同時に、バッフルプレート81もねじれ角度θに応じてその帯鋼Sに追随する。
【0060】
なお、搬送される帯鋼Sが蛇行及びねじれを有する場合には、上述したガスワイピング装置15の蛇行時及びねじれ時における動作を組み合わせることにより対応可能となる。
【0061】
従って、本発明に係るガスワイピング装置によれば、可動ケーシング41のピボット45を帯鋼Sに対して、回転軸Opが帯鋼Sの幅方向において中心Osと同じ位置になるように、追随させることにより、可動ケーシング41のワイピングノズル51及び制振装置61をその帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持するように配置させることができる。これにより、帯鋼Sに蛇行やねじれが発生しても、ワイピングノズル51をエッジオーバーコートが抑制できる位置に配置することができると共に、制振装置61を電磁石63の電磁力が効果的に作用する位置に配置することができるので、帯鋼Sにおける幅方向の反り及び帯鋼Sの振動を抑制し、且つ、帯鋼Sにおける幅方向のめっき付着量を均一にすることができる。この結果、帯鋼Sのめっき付着量が安定するため、ラインの高速化を図ることができるので、生産性の向上を図ることができる。従って、全長に亘って反りが十分に抑制され、且つ、めっき付着量が均一な溶融金属めっき鋼板を製造することができる。
【0062】
また、常に、ワイピングノズル51及び制振装置61は、その帯鋼Sの幅方向中央部において帯鋼Sを保持することができるので、ワイピングノズル51及び制振装置61の幅方向の長さを短くすることができる。これにより、ワイピングガスの消費量を低減させることができると共に、装置の小型化を図ることができる。しかも、ワイピングノズル51のスリット51bにおけるギャップ可変量を左右対称とすることができるので、ギャップ量制御を簡素に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、搬送する帯鋼に追随するバッフルプレートの追随機構に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例に係るガスワイピング装置を備えた溶融金属めっき設備の概略図である。
【図2】本発明の一実施例に係るガスワイピング装置の前面図である。
【図3】本発明に一実施例に係るガスワイピング装置の後面図である。
【図4】図2のA−A矢視断面図である。
【図5】図2のB−B矢視断面図である。
【図6】図2のC−C矢視断面図である。
【図7】図3のD−D矢視断面図である。
【図8】ワイピングノズルにおけるスリットのギャップ量を示した図である。
【図9】帯鋼に蛇行が発生していないときのガスワイピング装置の動作を示した図であって、(a)はその前面図、(b)はその後面図である。
【図10】帯鋼に操作側への蛇行が発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図であって、(a)はその前面図、(b)はその後面図である。
【図11】帯鋼に駆動側への蛇行が発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図であって、(a)はその前面図、(b)はその後面図である。
【図12】帯鋼にねじれが発生していないときのガスワイピング装置の動作を示した図である。
【図13】帯鋼にねじれが発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図である。
【図14】帯鋼にねじれが発生したときのガスワイピング装置の動作を示した図である。
【符号の説明】
【0065】
1 溶融金属めっき設備
11 めっき浴
12 シンクロール
13,14 サポートロール
15 ガスワイピング装置
16 デフレクタロール
17 めっき付着量検出センサ
31 メインフレーム
32 ロッド支持部
33 ガイドロッド
34 ハンガー
41 可動ケーシング
42 ステー
43 ガイドレール
44 摺動部材
45 ピボット
46 ラックガイド
47 ラック
48 ピニオン
51 ワイピングノズル
51a チャンバ
51b スリット
52 パイプ部材
53 パイプ支持部材
54 ホース
55 ワイピングガス供給装置
56 ギャップ量制御装置
61 制振装置
62 板形状検出センサ
63 電磁石
71 蛇行量検出センサ
81 バッフルプレート
91 モータ
92 カップリング
93 カム軸
94 軸受
95 カム
S 帯鋼
Os 帯鋼の板幅中心
Op ピニオンの回転軸
Ow 帯鋼の搬送中心
X 蛇行量
θ ねじれ角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属めっき浴から連続して引き上げられる帯板に対し、ワイピングノズルからワイピングガスを吹き付けることにより、帯板の表面に余剰に付着した溶融金属を除去して、帯板を所定のめっき付着量に制御するガスワイピング装置であって、
前記ワイピングノズルを帯板に対し、前記ワイピングノズルの幅方向中心位置が帯板の幅方向中心位置に追随するように、帯板の幅方向に移動させる追随手段を備える
ことを特徴とするガスワイピング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスワイピング装置において、
前記追随手段は、前記ワイピングノズルを回転させる回転手段を有し、
前記ワイピングノズルの回転軸は、前記ワイピングノズルの幅方向中心位置に配置される
ことを特徴とするガスワイピング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガスワイピング装置において、
帯板までの距離に応じた吸引力を該帯板に付与して帯板の板形状や振動を抑制する矯正制振手段を備え、
前記追随手段は、前記矯正制振手段を帯板に対し、前記矯正制振手段の幅方向中心位置が帯板の幅方向中心位置に追随するように、帯板の幅方向に移動させる
ことを特徴とするガスワイピング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガスワイピング装置において、
前記追随手段は、帯板の蛇行量及びねじれ角度に応じて、前記ワイピングノズル及び前記矯正制振手段を帯板に追随させる
ことを特徴とするガスワイピング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−114533(P2009−114533A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291651(P2007−291651)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】