ガス供給システム
【課題】ガス流路における不具合の有無の検出および不具合箇所の特定が容易なガス供給システムを提供する。
【解決手段】ガス供給源2と、ガス供給源2からのガスを放出するノズル3と、ガス供給源2とノズル3とを接続するガス流路4と、ガス流路4に設けられた第1の遮断弁9とを備え、ノズル3をガス供給対象TA側の供給口に接続した状態にてノズル3からガスを放出してガス供給対象TAへガスを充填するガス供給システム1において、ノズル3から放出されたガスを受け入れるガス受入部21を備える。ガス受入部21には、ノズル3が接続されるレセプタクル22と、第1の遮断弁9との間にノズル3及びレセプタクル22を含む閉空間を形成可能な第2の遮断弁23が設けられている。
【解決手段】ガス供給源2と、ガス供給源2からのガスを放出するノズル3と、ガス供給源2とノズル3とを接続するガス流路4と、ガス流路4に設けられた第1の遮断弁9とを備え、ノズル3をガス供給対象TA側の供給口に接続した状態にてノズル3からガスを放出してガス供給対象TAへガスを充填するガス供給システム1において、ノズル3から放出されたガスを受け入れるガス受入部21を備える。ガス受入部21には、ノズル3が接続されるレセプタクル22と、第1の遮断弁9との間にノズル3及びレセプタクル22を含む閉空間を形成可能な第2の遮断弁23が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給対象に所定のガスを供給するガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス供給システムとして、車両に燃料として供給するCNG等のガスを所定圧力に圧縮してこの加圧されたガスを生成する圧力発生ユニットと、圧力発生ユニットにより圧縮されたガスを燃料タンクに供給するディスペンサユニットと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このディスペンサユニットは、ガス供給開閉弁と、1次圧力伝送器と、流量計と、圧力制御弁と、2次圧力伝送器と、脱圧開閉弁と、着脱カプラとを有している。そして、圧力発生ユニットにより生成された高圧ガスは、ディスペンサユニット側の着脱カプラを車両に搭載されている燃料タンクに通ずる着脱カプラに接続することにより、燃料タンクに充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−68495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなガス供給システムでは、ガス供給開閉弁が開くことにより、着脱カプラの上流側からのガスを車両側の燃料タンクへ充填する。このため、燃料タンクへガスを充填する際には、着脱カプラの上流側が高圧となる。
したがって、燃料タンクへのガスの充填前に、高圧となる着脱カプラの上流側でのガス漏れの有無を検査することが要求されている。
【0006】
しかしながら、ガス供給開閉弁が上記特許文献1に記載されているような電磁式の遮断弁である場合には、ガス供給開閉弁の上流側のガス流路を所定のガス漏れ検査圧力まで昇圧させることによって、ガス漏れ検査を行なうことが可能であるが、ガス供給開閉弁から車両側の着脱カプラに至るまでのガス流路については、ガス漏れ検査圧力まで昇圧させることができないので、ガス漏れ検査の実施が困難である。
【0007】
また、上記のようなガス供給システムでは、ガス充填開始前に異物の混入や水分の凍結によるガス流路の閉塞などの不具合の有無を予め検査することができるようになっていることが好ましく、かかる閉塞検査は、例えばガス流量に基づいて行なうことが可能である。
【0008】
しかしながら、ディスペンサユニット側のカプラを車両側のカプラへ接続して車両へガスを充填しながらでなければ、ガス流量を検出することができず、かかる状態下で不具合のあることを検出できたとしても、不具合がガス供給システム側にあるのか車両側にあるのかを判断することは困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガス流路における不具合の有無の検出および不具合箇所の特定が容易なガス供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のガス供給システムは、ガス供給源と、前記ガス供給源からのガスをガス供給対象へと放出するノズルと、前記ガス供給源と前記ノズルとを接続するガス流路と、前記ガス流路に設けられた第1の遮断弁とを備え、前記ノズルを前記ガス供給対象側の供給口に接続した状態にて前記ノズルからガスを放出して前記ガス供給対象へガスを充填するガス供給システムであって、前記ノズルから放出されたガスを受け入れるガス受入部を備え、前記ガス受入部には、前記ノズルが接続されるレセプタクルと、前記第1の遮断弁との間に前記ノズル及び前記レセプタクルを含む閉空間を形成することが可能な第2の遮断弁とが設けられている。
【0011】
かかる構成のガス供給システムによれば、ノズルをレセプタクルへ接続した状態にてノズルからガス受入部へガスを放出すると、ノズルと該ノズルが接続されるレセプタクルを含む第1の遮断弁と第2の遮断弁との間のガス流路の圧力が上昇する。したがって、このガス流路内の圧力状態から、ノズルの先端に至るガス流路の隅々までガス漏れの有無を検査することができる。
【0012】
このガス漏れ検査の有無は、例えば、前記第1の遮断弁と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた圧力センサと、前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記第1の遮断弁と前記第2の遮断弁との間のガス流路を所定のガス漏れ検査圧力まで昇圧された閉空間とし、前記圧力センサの検出圧力に基づいて前記閉空間におけるガス漏れの有無を判定するガス漏れ判定部と、を備えることによって可能である。
【0013】
本発明のガス供給システムにおいては、前記ガス供給源と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた流量計と、前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給し、前記流量計の検出流量に基づいて前記ガス流路における閉塞の有無を判定する閉塞判定部と、を備えてもよい。
【0014】
かかる構成のガス供給システムによれば、ガス受入部へのガス放出時のガス流量に基づいて、当該ガス供給システム側におけるガス流路の閉塞の有無を検査することが可能となる。
【0015】
本発明のガス供給システムにおいては、前記ガス供給源からのガスを冷却する冷却部と、前記冷却部と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた温度センサとを備え、前記ガス供給対象へのガス充填開始前は、前記温度センサの検出温度が所定の予冷温度閾値以下となるまで、前記冷却部によって予冷された前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給してもよい。
【0016】
かかる構成のガス供給システムによれば、前回のガス充填後に冷却部とノズルとの間にて外気温によって暖められた残留ガスを次のガス充填前に冷却部によって十分に冷却されたガスに置換することができる。
【0017】
本発明のガス供給システムにおいて、前記ガス供給対象側から送信される情報に基づいて前記ガス供給対象の圧力を表示する表示部を備えていても良い。
【0018】
また、この本発明のガス供給システムにおいて、前記表示部は、前記ガス供給対象の圧力とともに、前記ノズルから放出するガスの圧力を表示しても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス供給システムによれば、ガス流路における不具合の有無の検出および不具合箇所の特定が容易なガス供給システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ガスステーションの概略を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。
【図3】ガス充填時におけるガス供給システムの構成図である。
【図4】ガス供給システムの他の構成を説明する構成図である。
【図5】充填時間に対する蓄圧器の圧力、ディスペンサ圧力及び車両のタンクのタンク圧力の変化を示すグラフである。
【図6】充填時間に対する蓄圧器の圧力、ディスペンサ圧力及び車両のタンクのタンク圧力の変化を示すグラフである。
【図7】ガス供給システムの変形例を説明する構成図である。
【図8】ディスペンサ部の表示部を示す図である。
【図9】ディスペンサ部の表示部を示す図である。
【図10】ディスペンサ部の表示部を示す図である。
【図11】ディスペンサ部の表示部に設けられるメータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るガス供給システムについて説明する。このガス供給システムは、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池が搭載された燃料電池車両(ガス供給対象)に対して燃料ガスである水素ガスを供給する水素ガスステーションに適用されるものである。
【0022】
図1及び図2に示すように、ガス供給システム1は、ガス供給対象である車両Sに搭載されているガス貯蔵タンクに水素ガスを供給するガスステーション10内に設けられており、水素を貯蔵する水素カードル2(ガス供給源)と、水素ガスを供給対象である車両Sに搭載されている貯蔵タンクである車載水素容器に向け放出して充填するノズル3と、これらを結ぶガス流路4とを有している。
【0023】
ガス流路4には、水素カードル2側(上流側)から順に、水素カードル2からの水素ガスを圧縮して吐出する圧縮機5と、圧縮機5によって所定圧力まで昇圧された水素ガスを蓄えておく蓄圧器6と、ガス流路4を流れる水素ガスの流量を測定する流量計7と、ガス流路4を流れる水素ガスを予備冷却するプレクーラ(冷却部)8と、ガス流路4を開閉する遮断弁9(第1の遮断弁)とが設けられている。
【0024】
ガス供給システム1は、ディスペンサ部11を備えており、このディスペンサ部11内に上記遮断弁9が配置されている。
そして、ノズル3に設けられているトリガーレバー(不図示)を充填作業者が引くと、かかる動作を充填開始指令として後述の制御部41が検知し、制御部41からの開指令によって遮断弁9が開く。
【0025】
これにより、それまで遮断状態にあった、蓄圧器6から遮断弁9までのガス流路4と、遮断弁9からノズル3までのガス流路4とが相互に連通し、ノズル3からは水素ガスが放出可能となる。
【0026】
ここで、ノズル3内には、ガス供給方向上流側(蓄圧器6側)から下流側(車両S側)への流通は許可するが、その逆方向の流通は禁止する逆止弁からなる開閉弁(図示略)が設けられているが、この開閉弁の作動圧は、遮断弁9が開いたときに当該開閉弁の上流側と下流側との間に生ずる差圧よりも低い圧力に設定されているので、遮断弁9が開くと、車両Sに搭載されたタンクTA(ガス供給対象)内への水素ガス充填が開始される。
【0027】
なお、ノズル3内に設ける開閉弁として、上記構成の逆止弁に代えて、電磁式の遮断弁を採用することも可能である。かかる場合には、ノズル3に設けられているトリガーレバーが充填作業者によって操作されたことや、かかる操作に連動して遮断弁9が開いたことを制御部41が検知したときに、ノズル3内に設けられた電磁式の遮断弁が開き、これにより、車両Sに搭載されたタンクTA内への水素ガス充填が開始される。
【0028】
なお、この遮断弁9からノズル3までのガス流路4には、大気開放されている放出ライン14が接続されており、この放出ラインには、遮断弁12及びフレームアレスタや水封装置等の逆火防止装置13が設けられている。充填終了後はノズル3内の開閉弁と遮断弁9との間が残留水素ガスによって高圧区間となっているが、この放出ライン14から高圧水素ガスを放出することにより、上記高圧区間を減圧することが可能になっている。
【0029】
上記構成からなる通常のガス供給ラインの他に、本実施形態に係るガス供給システム1には、検査ライン(ガス受入部)21が設けられている。
この検査ライン21は、その一端側(ノズル3側)から順に、ノズル3が接続されるレセプタクル22と、遮断弁9との間にノズル3及びレセプタクル22を含む閉区間を形成可能な遮断弁23(第2の遮断弁)とを備えており、他端は圧縮機5の上流側に接続されている。
【0030】
この検査ライン21のレセプタクル22は、例えばノズル3を収容保持するためにディスペンサ部11に付設されているノズルホルダ(図示略)に設けられている。そして、このノズルホルダにノズル3を収容すると、ノズル3が検査ライン21のレセプタクル22に接続箇所Aを介して接続されて、水素カードル2からノズル3までのガス供給ラインと検査ライン21とが相互連通するようになっている。
【0031】
この検査ライン21の少なくとも遮断弁23までのガス流路の有効断面積Saは、蓄圧器6よりも下流側のガス流路4の有効断面積Sbよりも大きく、例えば、有効断面積Saは有効断面積Sbの10倍以上に設定されている。
【0032】
ガス流路4における遮断弁9とノズル3との間の流路4aには、圧力センサP1及び温度センサT1が設けられている。また、検査ライン21には、レセプタクル22の先端側におけるノズル3との接続箇所Aよりも下流側の流路21aに圧力センサP2が設けられている。さらに、検査ライン21には、レセプタクル22と遮断弁23との間の流路21bに、圧力センサP3が設けられている。
【0033】
制御部41は、ガス供給システム1を統括的に制御するものであり、例えば圧縮機5やプレクーラ8の駆動状態や遮断弁9,12,23の開閉状態等を制御する。また、制御部41は、例えば上記ノズル3からのレバー操作検知信号の他、圧力センサP1,P2,P3及び温度センサT1からの検出信号を受信し、受信した検出信号に基づき各部の動作を制御する。
【0034】
図3に示すように、上記のガス供給システム1によって車両Sに搭載されたタンクTAへ水素ガスを充填する場合は、ディスペンサ部11のノズルホルダからノズル3を取り出し、ノズル3を車両Sの水素ガス充填口(供給口)に設けられたレセプタクル31に接続する。
【0035】
この状態にて、ノズル3のトリガーレバーを引いてディスペンサ部11を作動させると、遮断弁9が開き、水素カードル2から圧縮機5で圧縮されて蓄圧器6に溜められていた水素ガスが、プレクーラ8によって予冷されてノズル3側へ送り出される。すると、ノズル3内に設けられている逆止弁からなる開閉弁(図示略)が開き、車両Sに搭載されているタンクTA内への水素ガス充填が開始される。
【0036】
なお、開閉弁として電磁式の遮断弁がノズル3内に設けられている場合は、この遮断弁を開くことにより、車両Sに搭載されているタンクTA内への水素ガス充填が開始される。
【0037】
そして、タンクTAに所定量(所定圧力)の水素ガスが充填されると、制御部41はディスペンサ部11の遮断弁9を閉じ、これにより水素ガス充填は終了する。
タンクTAへの水素ガス充填終了後は、車両Sのレセプタクル31に接続されたノズル3が当該レセプタクル31から取り外され、ディスペンサ部11のノズルホルダへ収容される。
【0038】
この水素ガス充填終了直後は、ノズル3と遮断弁9との間の流路4aが高圧状態のままであるため、減圧処理が行なわれる。具体的には、制御部41からの開弁指令により、放出ライン14に設けられている遮断弁12が開く。これにより、遮断弁9とノズル3との間の残留水素ガスが逆火防止装置13を介して外部へ放出され、これにより、ノズル3と遮断弁9との間の流路4aが大気圧になるまで減圧される。
【0039】
以上が車両Sに搭載されているタンクTAへの水素ガス充填作業の内容であるが、本実施形態に係るガス供給システム1では、上記水素ガス充填作業を行う前に、ガス流路4におけるガス漏れ検査、ガス流路4における閉塞などの不具合の有無の検査、および遮断弁9からノズル3側の接続箇所Aまでの流路の予冷水素ガスによる置換処理を実施する。
【0040】
まず、ガス流路4におけるガス漏れ検査について説明する。
本実施形態のガス漏れ検査は、ノズル3がディスペンサ部11のノズルホルダに収容されることにより、ノズル3が検査ライン21のレセプタクル22に接続された状態にて行われる。
【0041】
制御部41は、ノズル3が検査ライン21のレセプタクル22に接続されると、遮断弁12,23を閉じ、遮断弁9を開く。すると、蓄圧器6に溜められていた水素ガスが、プレクーラ8を介してノズル3側へ送り込まれる。なお、ノズル3内の開閉弁として電磁式の遮断弁がノズル3内に設けられている場合は、制御部41はこの遮断弁も開くことになる。
【0042】
遮断弁9が開いてノズル3側へ水素ガスが送り込まれ、圧力センサP1の検出値が所定のガス漏れ検査圧力に達すると、制御部41は遮断弁9を閉じる。すると、遮断弁9と遮断弁23との間の流路が、ノズル3及びレセプタクル22を内包する気密及び液密な閉空間となる。つまり、この閉空間へのガス流路4の上流側(遮断弁9の上流側)からのガス流入および当該閉空間から検査ライン21の下流側(遮断弁23)へのガス流出が遮断された状態となる。
【0043】
これにより、遮断弁9からノズル3内の開閉弁までの流路4a、ノズル3内の開閉弁からレセプタクル22との接続箇所Aまでの流路4b、ノズル3との接続箇所Aからレセプタクル22までの流路21a及びレセプタクル22から遮断弁23までの流路21bがガス漏れ検査圧力に維持される。
【0044】
この状態のまま、制御部41は、所定のガス漏れ検査時間が経過するまで待ち、当該ガス漏れ検査時間経過後の圧力センサP1,P2,P3の検出値と、遮断弁9を閉じたときの圧力センサP1,P2,P3の検出値とを比較する。
【0045】
つまり、ガス漏れ検査時間経過後の圧力センサP1,P2,P3の検出値と、遮断弁9を閉じたときの圧力センサP1,P2,P3の検出値との偏差が、所定の漏れ判定閾値よりも大きい場合、つまり、それぞれの流路4a,4b,21a,21bにおける内圧の減少幅が所定の漏れ判定閾値以上である場合には、流路4a,21a,21bのうちの圧力が減少した箇所にてガスの漏出があると判定することができる。
【0046】
以上のガス漏れ検査が終了すると、制御部41は遮断弁23を開く。これにより、遮断弁9よりも下流側、つまり、流路4a,21a,21bに充填されていたガス漏れ検査用の高圧水素ガスは、検査ライン21を介して圧縮機5の上流側へ戻され、圧縮機5によって再び圧縮されて蓄圧器6へ送り込まれる。
以上のとおり、制御部41は、本発明のガス漏れ判定部としても機能する。
【0047】
次に、ガス流路4における閉塞検査について説明する。
制御部41は、この閉塞検査を行なうべくノズル3側へ水素ガスを送り込む際に、流量計7からの検出信号に基づいて、水素ガスの流量が所定の正常流量閾値以上に保たれているか否かを監視する。この正常流量閾値は、例えばタンクTAの満充填圧力、蓄圧器6の出口圧力、ガス流路4の配管長や配管系等の設備仕様等から、適宜の値に設定されるものである。
【0048】
そして、水素ガスの流量が当該正常流量閾値に満たない場合は、ガス流路4に閉塞などの不具合が生じていると判定する。
なお、制御部41は、この閉塞検査の結果、ガス流路4に不具合がないと判定したにもかかわらず、車両SのタンクTAへのガス充填時に、水素ガスの流量が上記の正常流量閾値に満たないことを検知した場合には、車両S側におけるノズル3との接続箇所AからタンクTAまでの流路に閉塞等の不具合が生じていると判定する。
【0049】
ここで、水素ガスの流量はガス流路の有効断面積に比例し、このガス流路の有効断面積は各ガス流路の有効断面積の二乗の逆数の総和から求められるものである。
本実施形態に係る検査ライン21は、その有効断面積Saが蓄圧器6の下流側のガス流路4の有効断面積Sbよりも、十分に大きな数値(例えば、10倍以上)に設定されている。
【0050】
したがって、閉塞検査時におけるガス供給ライン側での水素ガスの流量は、十分に大きな有効断面積Saを有する検査ライン21の影響をほとんど受けることはない。例えば、検査ライン21の有効断面積Saが蓄圧器6の下流側のガス流路4の最小有効断面積Sbの10倍であると、全体の有効断面積をSとした場合に、次式が成立する。
【0051】
1/S2=1/Sa2+1/Sb2=1/100Sb2+1/Sb2
【0052】
上式のように、検査ライン21の有効断面積Saが蓄圧器6の下流側のガス流路4の最小有効断面積Sbの10倍であると、検査ライン21の有効断面積Saを含む部分は結果的に1/100の影響しか受けないことなる。
つまり、ガス流路4の有効断面積Sbよりも十分に大きな有効断面積Saを有する検査ライン21は、閉塞検査時に流れる水素ガスの流量にほとんど影響しないこととなる。
【0053】
よって、このように、検査ライン21の有効断面積Saを、閉塞検査の対象区間である蓄圧器6よりも下流側におけるガス流路4の有効断面積Sbよりも十分大きく設定しておけば、実際にノズル3を車両S側に接続しなくても、ガス供給システム1単独で、流量計7に基づくガス流路4の閉塞検査を行うことができる。
以上のとおり、制御部41は、本発明の閉塞判定部としても機能する。
【0054】
次に、遮断弁9からノズル3側の接続箇所Aまでのガス流路の予冷水素ガスによる置換処理について説明する。
この予冷水素ガスによる置換処理は、例えば上記のガス漏れ検査及び閉塞検査後に行なわれるものであり、制御部41は、温度センサT1からの検出信号に基づいて、流路4a内の水素ガスの温度が予め設定されている所定の予冷温度閾値以下であるか否かを判定する。
【0055】
この予冷温度閾値の値は、ノズル3から車両SのタンクTAへ水素ガスを円滑に高速充填できる温度であり、流路4aの径及び長さ、ガス供給システム1の設置場所あるいは季節などに応じて設定される。例えば、プレクーラ8での設定冷却温度が−20℃である場合は、−15℃程度に設定される。
【0056】
この温度判定の結果、水素ガスの温度Tが予冷温度閾値以下であると判定された場合には、例えばディスペンサ部11の表示部などに車両SのタンクTAへの水素ガス充填が可能であることを表示し、充填前処理の全てが完了したことを充填作業者へ知らせる。
【0057】
これに対して、温度判定の結果、車両S側に供給される水素ガスの温度が予冷温度閾値以下でないと判定された場合には、制御部41は遮断弁9,23を開き、温度センサT1での水素ガスの検出温度が予冷温度閾値以下になるまで、蓄圧器6からプレクーラ8を介してノズル3側へ予冷水素ガスを供給し、更にこの予冷水素ガスを検査ライン21へと送り出す。
【0058】
なお、予冷水素ガスによる置換処理は、流路4aでの検出温度による制御に代えて、ノズル3側へ送り込む水素ガスの流量あるいは送り込む時間の経過時間によって制御しても良い。ノズル3側へ送り込む水素ガスの流量は流量計7により測定可能であり、また、ノズル3側へ送り込む経過時間は、例えば制御部41内に設けられているタイマによって計時可能である。
【0059】
以上に述べた実施形態に係るガス供給システム1によれば、ノズル3をレセプタクル22へ接続した状態にてノズル3から検査ライン21へ水素ガスを放出すると、ノズル3と車両S側との接続箇所Aに至るガス流路4内の全ての部分の圧力が上昇する。したがって、このガス流路4内の圧力状態からガス漏れの有無を検査することができる。
【0060】
特に、ノズル3の内部に設けられている開閉弁が逆止弁であっても、あるいは電磁式の遮断弁であっても、タンクTAへの水素ガス充填開始前は昇圧が困難であった当該開閉弁よりも下流側の流路4b、つまり、ノズル3内の開閉弁からノズル3の先端側におけるレセプタクル22との接続箇所Aまでの流路4bについても、ガス漏れ検査可能な圧力にまで昇圧可能となり、従来検査できなかった区間までもガス漏れ検査を実施することができる。
【0061】
また、本実施形態のガス供給システム1によれば、通常のガス供給ラインから検査ライン21へのガス放出時にガス流量を測定し、このガス流量に基づいてガス供給システム1側のガス流路4における閉塞などの不具合の有無を検査することができる。
この閉塞検査の結果、ガス供給システム1側に閉塞などの不具合が無いことを確認でき、その後車両Sに搭載されたタンクTAへの水素ガス充填時にガス流量の減少を検出した際には、車両S側の流路に不具合が存在することも容易に判定することができる。
【0062】
さらに、本実施形態のガス供給システム1によれば、タンクTAへのガス充填に先だって検査ライン21へガスを放出することが可能になるので、前回のガス充填によってプレクーラ8とノズル3との間に残留したまま外気温によって暖められてしまった水素ガスを、プレクーラ8によって十分に冷却された水素ガスに置換することができる。
【0063】
これにより、充填開始時からプレクーラ8によって十分に予冷された水素ガスをガス供給対象である車両S側のタンクTAへ充填することが可能になるので、プレクーラ8の下流側にて外気温によって暖まった水素ガスを車両SのタンクTAへ充填することによる充填時間短縮化に対する悪影響を極力抑えることができる。
【0064】
このように、上記実施形態に係るガス供給システム1によれば、タンクTAへの水素ガス充填に先立って、ガス流路4におけるガス漏れや閉塞などの不具合の有無及び箇所を確認し、ガス流路4に残留する水素ガスを予冷された水素ガスによって置換する、といった充填開始前処理を容易に行うことができる。
【0065】
なお、上記ガス供給システム1では、検査ライン21の終端を圧縮機5の上流側におけるガス流路4につないだが、この検査ライン21の終端を水素カードル2に接続し、回収する水素ガスを水素カードル2へ戻すようにしても良い。
【0066】
また、図4に示すように、検査ライン21は、フレームアレスタや水封装置等の逆火防止装置43を備えることにより、終端が大気開放された構成であっても良い。
この場合、ガス漏れ検査、閉塞検査及び置換処理時に流される水素ガスは、逆火防止装置43を通過した後に大気に放出される。
【0067】
次に、ガス供給システム1のディスペンサ部11での表示について説明する。
【0068】
一般に、ガス供給システム1では、ディスペンサ部11の表示部に、ガス流路4におけるノズル3よりも上流側の圧力であるディスペンサ圧力が圧力センサP1に基づいて表示される。また、このディスペンサ圧力とともに、流量計7に基づくタンクTAへの充填量が表示される。これにより、水素ガスの充填作業者あるいは制御部41は、車両SのタンクTAへの規定量の水素ガスの充填が完了したか否かを把握する。
【0069】
ここで、図5及び図6は充填時間に対する蓄圧器6の圧力Pc(一点鎖線)、ディスペンサ圧力Pd(破線)及び車両SのタンクTAのタンク圧力Pt(実線)の変化を示している。
【0070】
図5に示すように、タンクTAへの水素ガスの充填を開始すると、ディスペンサ圧力Pdが上昇し、これに追従してタンク圧力Ptも上昇する。これに対して、蓄圧器6の圧力Pcは、水素ガスの放出に伴って下降する。
【0071】
その後、充填源である蓄圧器6の圧力Pcとディスペンサ圧力Pdとの差圧が小さくなると、それまで使用していた蓄圧器6を他の高圧の蓄圧器6に切り替える。これにより、蓄圧器6の圧力Pcとディスペンサ圧力Pdとの差圧が大きくなり、ディスペンサ圧力Pdが更に上昇し、これに追従してタンク圧力Ptも上昇する。その後も必要に応じてこのような蓄圧器6の切り替えを繰り返すことにより、タンクTAへの水素ガス充填が行なわれる。
【0072】
ところで、水素ガスの充填にかかる時間は極力短縮することが望まれているが、充填時間を短縮するために水素ガス供給量を増大させると、これに伴いノズル3の下流側での圧力損失の影響も大きくなり、ディスペンサ圧力Pdの圧力変動が大きくなる。すると、図6に示すように、タンク圧力Ptの追従に遅れが生じ、ディスペンサ圧力Pdに対してタンク圧力Ptが大きく乖離してしまう。
【0073】
このように、充填時間の短縮化を図るべく水素ガス供給量を増大させると、ディスペンサ部11に表示されるディスペンサ圧力Pdとタンク圧力Ptとの間に食い違いが生じるばかりか、その食い違いも大きくなり、制御部41あるいは充填作業者による充填状況の正確な把握が困難となる。
【0074】
また、充填時間を短縮すると、蓄圧器6の切り替え時におけるディスペンサ圧力Pdもより一層急激に変化するので、充填中に蓄圧器6が切り替わることを特別意識していない充填作業者は、蓄圧器6の切り替え時にディスペンサ部11に表示されるディスペンサ圧力Pdの数値が急激に変化する瞬間を目の当たりにすることになり、戸惑いを感じる虞がある。
【0075】
一方、ガス供給システム1のガスステーション10側と車両Sとは、例えば、赤外線通信等の通信手段(不図示)によって、車両Sに搭載されているタンクTAの圧力情報や温度情報などのタンク情報を送受信しており、ガスステーション10側のガス供給システム1では、車両Sから受信したタンク情報に基づいて制御部41が水素ガスの供給制御を行う。
【0076】
つまり、図7に示すように、ガスステーション10にて車両Sに水素ガスを充填する際には、車両Sのタンク圧力Ptを検出する圧力センサP4の検出信号が、通信手段によってガスステーション10側の制御部41へ送信されるようになっている。
【0077】
そして、本実施形態に係るガス供給システム1では、制御部41へ送信される車両S側の圧力センサP4の検出信号に基づいて、図8に示すように、ディスペンサ部11の表示部51に、水素ガスの充填量とともに車両Sのタンク圧力Ptが表示される。
【0078】
このガス供給システム1によれば、水素ガスが充填される車両Sの実際のタンク圧力Ptが表示されるので、充填作業者は、このタンク圧力Ptの表示を確認しながら充填作業を行なうことにより、蓄圧器6の切り替え時にも何ら戸惑うことなく、車両SのタンクTAへの水素ガスの充填状況を正確に把握することができる。
【0079】
また、上記の例では、ディスペンサ部11の表示部51に、水素ガスの充填量とともに車両Sのタンク圧力Ptを表示したが、図9に示すように、ディスペンサ圧力Pdをさらに表示しても良い。
【0080】
このようにすると、充填作業者は、車両SのタンクTAへの水素ガスの充填状況を正確に把握することができるだけでなく、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの差圧を容易に確認することができる。そして、充填量が減少した際には、充填作業者は、その充填量の減少原因がガスステーション10側あるいは車両S側のいずれに存在するかを容易に把握することができる。
【0081】
例えば、充填量が少ない場合に、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの差圧が小さければ、ガスステーション10側に原因があり、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの差圧が大きければ、車両S側に原因があると判定することができる。
【0082】
また、車両S側の圧力センサP4に不具合が生じたとしても、充填作業者は、ディスペンサ圧力Pdの表示から水素ガスの充填状況を把握することができるので、タンク圧力Ptのみが表示されてディスペンサ圧力Pdが全く表示されない場合よりも信頼性を高めることができる。
【0083】
なお、ディスペンサ部11の表示部51での表示の仕方としては、数値によるデジタル表示に限らない。例えば図10に示すように、各圧力を、指針52を有するメータ53によるアナログ表示としても良い。
【0084】
また、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの判別を容易にするために、例えば、タンク圧力Ptの表示部に色をつける、あるいはタンク圧力Ptの表示をディスペンサ圧力Pdの表示よりも大きくする等、タンク圧力Ptの表示部をディスペンサ圧力Pdの表示部よりも目立つようにしても良い。
【0085】
また、圧力表示がアナログ表示の場合には、例えば図11に示すように、タンク圧力Ptの指針52aとディスペンサ圧力Pdの指針52bとを備えた一つのメータ52を用い、この一つのメータ52によって各圧力を表示しても良い。この場合、各圧力の判別を容易にするために、それぞれの指針52a,52bの形状、大きさあるいは色を異ならせるのが好ましい。
【符号の説明】
【0086】
1…ガス供給システム、2…水素カードル(ガス供給源)、3…ノズル、7…流量計、8…プレクーラ(冷却部)、9…遮断弁(第1の遮断弁)、21…検査ライン(ガス受入部)、22,31…レセプタクル、23…遮断弁(第2の遮断弁)、41…制御部(ガス漏れ判定部、閉塞判定部)51…表示部、P1…圧力センサ、S…車両、T1…温度センサ、TA…タンク(ガス供給対象)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給対象に所定のガスを供給するガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス供給システムとして、車両に燃料として供給するCNG等のガスを所定圧力に圧縮してこの加圧されたガスを生成する圧力発生ユニットと、圧力発生ユニットにより圧縮されたガスを燃料タンクに供給するディスペンサユニットと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このディスペンサユニットは、ガス供給開閉弁と、1次圧力伝送器と、流量計と、圧力制御弁と、2次圧力伝送器と、脱圧開閉弁と、着脱カプラとを有している。そして、圧力発生ユニットにより生成された高圧ガスは、ディスペンサユニット側の着脱カプラを車両に搭載されている燃料タンクに通ずる着脱カプラに接続することにより、燃料タンクに充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−68495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなガス供給システムでは、ガス供給開閉弁が開くことにより、着脱カプラの上流側からのガスを車両側の燃料タンクへ充填する。このため、燃料タンクへガスを充填する際には、着脱カプラの上流側が高圧となる。
したがって、燃料タンクへのガスの充填前に、高圧となる着脱カプラの上流側でのガス漏れの有無を検査することが要求されている。
【0006】
しかしながら、ガス供給開閉弁が上記特許文献1に記載されているような電磁式の遮断弁である場合には、ガス供給開閉弁の上流側のガス流路を所定のガス漏れ検査圧力まで昇圧させることによって、ガス漏れ検査を行なうことが可能であるが、ガス供給開閉弁から車両側の着脱カプラに至るまでのガス流路については、ガス漏れ検査圧力まで昇圧させることができないので、ガス漏れ検査の実施が困難である。
【0007】
また、上記のようなガス供給システムでは、ガス充填開始前に異物の混入や水分の凍結によるガス流路の閉塞などの不具合の有無を予め検査することができるようになっていることが好ましく、かかる閉塞検査は、例えばガス流量に基づいて行なうことが可能である。
【0008】
しかしながら、ディスペンサユニット側のカプラを車両側のカプラへ接続して車両へガスを充填しながらでなければ、ガス流量を検出することができず、かかる状態下で不具合のあることを検出できたとしても、不具合がガス供給システム側にあるのか車両側にあるのかを判断することは困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガス流路における不具合の有無の検出および不具合箇所の特定が容易なガス供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のガス供給システムは、ガス供給源と、前記ガス供給源からのガスをガス供給対象へと放出するノズルと、前記ガス供給源と前記ノズルとを接続するガス流路と、前記ガス流路に設けられた第1の遮断弁とを備え、前記ノズルを前記ガス供給対象側の供給口に接続した状態にて前記ノズルからガスを放出して前記ガス供給対象へガスを充填するガス供給システムであって、前記ノズルから放出されたガスを受け入れるガス受入部を備え、前記ガス受入部には、前記ノズルが接続されるレセプタクルと、前記第1の遮断弁との間に前記ノズル及び前記レセプタクルを含む閉空間を形成することが可能な第2の遮断弁とが設けられている。
【0011】
かかる構成のガス供給システムによれば、ノズルをレセプタクルへ接続した状態にてノズルからガス受入部へガスを放出すると、ノズルと該ノズルが接続されるレセプタクルを含む第1の遮断弁と第2の遮断弁との間のガス流路の圧力が上昇する。したがって、このガス流路内の圧力状態から、ノズルの先端に至るガス流路の隅々までガス漏れの有無を検査することができる。
【0012】
このガス漏れ検査の有無は、例えば、前記第1の遮断弁と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた圧力センサと、前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記第1の遮断弁と前記第2の遮断弁との間のガス流路を所定のガス漏れ検査圧力まで昇圧された閉空間とし、前記圧力センサの検出圧力に基づいて前記閉空間におけるガス漏れの有無を判定するガス漏れ判定部と、を備えることによって可能である。
【0013】
本発明のガス供給システムにおいては、前記ガス供給源と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた流量計と、前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給し、前記流量計の検出流量に基づいて前記ガス流路における閉塞の有無を判定する閉塞判定部と、を備えてもよい。
【0014】
かかる構成のガス供給システムによれば、ガス受入部へのガス放出時のガス流量に基づいて、当該ガス供給システム側におけるガス流路の閉塞の有無を検査することが可能となる。
【0015】
本発明のガス供給システムにおいては、前記ガス供給源からのガスを冷却する冷却部と、前記冷却部と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた温度センサとを備え、前記ガス供給対象へのガス充填開始前は、前記温度センサの検出温度が所定の予冷温度閾値以下となるまで、前記冷却部によって予冷された前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給してもよい。
【0016】
かかる構成のガス供給システムによれば、前回のガス充填後に冷却部とノズルとの間にて外気温によって暖められた残留ガスを次のガス充填前に冷却部によって十分に冷却されたガスに置換することができる。
【0017】
本発明のガス供給システムにおいて、前記ガス供給対象側から送信される情報に基づいて前記ガス供給対象の圧力を表示する表示部を備えていても良い。
【0018】
また、この本発明のガス供給システムにおいて、前記表示部は、前記ガス供給対象の圧力とともに、前記ノズルから放出するガスの圧力を表示しても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス供給システムによれば、ガス流路における不具合の有無の検出および不具合箇所の特定が容易なガス供給システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ガスステーションの概略を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。
【図3】ガス充填時におけるガス供給システムの構成図である。
【図4】ガス供給システムの他の構成を説明する構成図である。
【図5】充填時間に対する蓄圧器の圧力、ディスペンサ圧力及び車両のタンクのタンク圧力の変化を示すグラフである。
【図6】充填時間に対する蓄圧器の圧力、ディスペンサ圧力及び車両のタンクのタンク圧力の変化を示すグラフである。
【図7】ガス供給システムの変形例を説明する構成図である。
【図8】ディスペンサ部の表示部を示す図である。
【図9】ディスペンサ部の表示部を示す図である。
【図10】ディスペンサ部の表示部を示す図である。
【図11】ディスペンサ部の表示部に設けられるメータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るガス供給システムについて説明する。このガス供給システムは、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池が搭載された燃料電池車両(ガス供給対象)に対して燃料ガスである水素ガスを供給する水素ガスステーションに適用されるものである。
【0022】
図1及び図2に示すように、ガス供給システム1は、ガス供給対象である車両Sに搭載されているガス貯蔵タンクに水素ガスを供給するガスステーション10内に設けられており、水素を貯蔵する水素カードル2(ガス供給源)と、水素ガスを供給対象である車両Sに搭載されている貯蔵タンクである車載水素容器に向け放出して充填するノズル3と、これらを結ぶガス流路4とを有している。
【0023】
ガス流路4には、水素カードル2側(上流側)から順に、水素カードル2からの水素ガスを圧縮して吐出する圧縮機5と、圧縮機5によって所定圧力まで昇圧された水素ガスを蓄えておく蓄圧器6と、ガス流路4を流れる水素ガスの流量を測定する流量計7と、ガス流路4を流れる水素ガスを予備冷却するプレクーラ(冷却部)8と、ガス流路4を開閉する遮断弁9(第1の遮断弁)とが設けられている。
【0024】
ガス供給システム1は、ディスペンサ部11を備えており、このディスペンサ部11内に上記遮断弁9が配置されている。
そして、ノズル3に設けられているトリガーレバー(不図示)を充填作業者が引くと、かかる動作を充填開始指令として後述の制御部41が検知し、制御部41からの開指令によって遮断弁9が開く。
【0025】
これにより、それまで遮断状態にあった、蓄圧器6から遮断弁9までのガス流路4と、遮断弁9からノズル3までのガス流路4とが相互に連通し、ノズル3からは水素ガスが放出可能となる。
【0026】
ここで、ノズル3内には、ガス供給方向上流側(蓄圧器6側)から下流側(車両S側)への流通は許可するが、その逆方向の流通は禁止する逆止弁からなる開閉弁(図示略)が設けられているが、この開閉弁の作動圧は、遮断弁9が開いたときに当該開閉弁の上流側と下流側との間に生ずる差圧よりも低い圧力に設定されているので、遮断弁9が開くと、車両Sに搭載されたタンクTA(ガス供給対象)内への水素ガス充填が開始される。
【0027】
なお、ノズル3内に設ける開閉弁として、上記構成の逆止弁に代えて、電磁式の遮断弁を採用することも可能である。かかる場合には、ノズル3に設けられているトリガーレバーが充填作業者によって操作されたことや、かかる操作に連動して遮断弁9が開いたことを制御部41が検知したときに、ノズル3内に設けられた電磁式の遮断弁が開き、これにより、車両Sに搭載されたタンクTA内への水素ガス充填が開始される。
【0028】
なお、この遮断弁9からノズル3までのガス流路4には、大気開放されている放出ライン14が接続されており、この放出ラインには、遮断弁12及びフレームアレスタや水封装置等の逆火防止装置13が設けられている。充填終了後はノズル3内の開閉弁と遮断弁9との間が残留水素ガスによって高圧区間となっているが、この放出ライン14から高圧水素ガスを放出することにより、上記高圧区間を減圧することが可能になっている。
【0029】
上記構成からなる通常のガス供給ラインの他に、本実施形態に係るガス供給システム1には、検査ライン(ガス受入部)21が設けられている。
この検査ライン21は、その一端側(ノズル3側)から順に、ノズル3が接続されるレセプタクル22と、遮断弁9との間にノズル3及びレセプタクル22を含む閉区間を形成可能な遮断弁23(第2の遮断弁)とを備えており、他端は圧縮機5の上流側に接続されている。
【0030】
この検査ライン21のレセプタクル22は、例えばノズル3を収容保持するためにディスペンサ部11に付設されているノズルホルダ(図示略)に設けられている。そして、このノズルホルダにノズル3を収容すると、ノズル3が検査ライン21のレセプタクル22に接続箇所Aを介して接続されて、水素カードル2からノズル3までのガス供給ラインと検査ライン21とが相互連通するようになっている。
【0031】
この検査ライン21の少なくとも遮断弁23までのガス流路の有効断面積Saは、蓄圧器6よりも下流側のガス流路4の有効断面積Sbよりも大きく、例えば、有効断面積Saは有効断面積Sbの10倍以上に設定されている。
【0032】
ガス流路4における遮断弁9とノズル3との間の流路4aには、圧力センサP1及び温度センサT1が設けられている。また、検査ライン21には、レセプタクル22の先端側におけるノズル3との接続箇所Aよりも下流側の流路21aに圧力センサP2が設けられている。さらに、検査ライン21には、レセプタクル22と遮断弁23との間の流路21bに、圧力センサP3が設けられている。
【0033】
制御部41は、ガス供給システム1を統括的に制御するものであり、例えば圧縮機5やプレクーラ8の駆動状態や遮断弁9,12,23の開閉状態等を制御する。また、制御部41は、例えば上記ノズル3からのレバー操作検知信号の他、圧力センサP1,P2,P3及び温度センサT1からの検出信号を受信し、受信した検出信号に基づき各部の動作を制御する。
【0034】
図3に示すように、上記のガス供給システム1によって車両Sに搭載されたタンクTAへ水素ガスを充填する場合は、ディスペンサ部11のノズルホルダからノズル3を取り出し、ノズル3を車両Sの水素ガス充填口(供給口)に設けられたレセプタクル31に接続する。
【0035】
この状態にて、ノズル3のトリガーレバーを引いてディスペンサ部11を作動させると、遮断弁9が開き、水素カードル2から圧縮機5で圧縮されて蓄圧器6に溜められていた水素ガスが、プレクーラ8によって予冷されてノズル3側へ送り出される。すると、ノズル3内に設けられている逆止弁からなる開閉弁(図示略)が開き、車両Sに搭載されているタンクTA内への水素ガス充填が開始される。
【0036】
なお、開閉弁として電磁式の遮断弁がノズル3内に設けられている場合は、この遮断弁を開くことにより、車両Sに搭載されているタンクTA内への水素ガス充填が開始される。
【0037】
そして、タンクTAに所定量(所定圧力)の水素ガスが充填されると、制御部41はディスペンサ部11の遮断弁9を閉じ、これにより水素ガス充填は終了する。
タンクTAへの水素ガス充填終了後は、車両Sのレセプタクル31に接続されたノズル3が当該レセプタクル31から取り外され、ディスペンサ部11のノズルホルダへ収容される。
【0038】
この水素ガス充填終了直後は、ノズル3と遮断弁9との間の流路4aが高圧状態のままであるため、減圧処理が行なわれる。具体的には、制御部41からの開弁指令により、放出ライン14に設けられている遮断弁12が開く。これにより、遮断弁9とノズル3との間の残留水素ガスが逆火防止装置13を介して外部へ放出され、これにより、ノズル3と遮断弁9との間の流路4aが大気圧になるまで減圧される。
【0039】
以上が車両Sに搭載されているタンクTAへの水素ガス充填作業の内容であるが、本実施形態に係るガス供給システム1では、上記水素ガス充填作業を行う前に、ガス流路4におけるガス漏れ検査、ガス流路4における閉塞などの不具合の有無の検査、および遮断弁9からノズル3側の接続箇所Aまでの流路の予冷水素ガスによる置換処理を実施する。
【0040】
まず、ガス流路4におけるガス漏れ検査について説明する。
本実施形態のガス漏れ検査は、ノズル3がディスペンサ部11のノズルホルダに収容されることにより、ノズル3が検査ライン21のレセプタクル22に接続された状態にて行われる。
【0041】
制御部41は、ノズル3が検査ライン21のレセプタクル22に接続されると、遮断弁12,23を閉じ、遮断弁9を開く。すると、蓄圧器6に溜められていた水素ガスが、プレクーラ8を介してノズル3側へ送り込まれる。なお、ノズル3内の開閉弁として電磁式の遮断弁がノズル3内に設けられている場合は、制御部41はこの遮断弁も開くことになる。
【0042】
遮断弁9が開いてノズル3側へ水素ガスが送り込まれ、圧力センサP1の検出値が所定のガス漏れ検査圧力に達すると、制御部41は遮断弁9を閉じる。すると、遮断弁9と遮断弁23との間の流路が、ノズル3及びレセプタクル22を内包する気密及び液密な閉空間となる。つまり、この閉空間へのガス流路4の上流側(遮断弁9の上流側)からのガス流入および当該閉空間から検査ライン21の下流側(遮断弁23)へのガス流出が遮断された状態となる。
【0043】
これにより、遮断弁9からノズル3内の開閉弁までの流路4a、ノズル3内の開閉弁からレセプタクル22との接続箇所Aまでの流路4b、ノズル3との接続箇所Aからレセプタクル22までの流路21a及びレセプタクル22から遮断弁23までの流路21bがガス漏れ検査圧力に維持される。
【0044】
この状態のまま、制御部41は、所定のガス漏れ検査時間が経過するまで待ち、当該ガス漏れ検査時間経過後の圧力センサP1,P2,P3の検出値と、遮断弁9を閉じたときの圧力センサP1,P2,P3の検出値とを比較する。
【0045】
つまり、ガス漏れ検査時間経過後の圧力センサP1,P2,P3の検出値と、遮断弁9を閉じたときの圧力センサP1,P2,P3の検出値との偏差が、所定の漏れ判定閾値よりも大きい場合、つまり、それぞれの流路4a,4b,21a,21bにおける内圧の減少幅が所定の漏れ判定閾値以上である場合には、流路4a,21a,21bのうちの圧力が減少した箇所にてガスの漏出があると判定することができる。
【0046】
以上のガス漏れ検査が終了すると、制御部41は遮断弁23を開く。これにより、遮断弁9よりも下流側、つまり、流路4a,21a,21bに充填されていたガス漏れ検査用の高圧水素ガスは、検査ライン21を介して圧縮機5の上流側へ戻され、圧縮機5によって再び圧縮されて蓄圧器6へ送り込まれる。
以上のとおり、制御部41は、本発明のガス漏れ判定部としても機能する。
【0047】
次に、ガス流路4における閉塞検査について説明する。
制御部41は、この閉塞検査を行なうべくノズル3側へ水素ガスを送り込む際に、流量計7からの検出信号に基づいて、水素ガスの流量が所定の正常流量閾値以上に保たれているか否かを監視する。この正常流量閾値は、例えばタンクTAの満充填圧力、蓄圧器6の出口圧力、ガス流路4の配管長や配管系等の設備仕様等から、適宜の値に設定されるものである。
【0048】
そして、水素ガスの流量が当該正常流量閾値に満たない場合は、ガス流路4に閉塞などの不具合が生じていると判定する。
なお、制御部41は、この閉塞検査の結果、ガス流路4に不具合がないと判定したにもかかわらず、車両SのタンクTAへのガス充填時に、水素ガスの流量が上記の正常流量閾値に満たないことを検知した場合には、車両S側におけるノズル3との接続箇所AからタンクTAまでの流路に閉塞等の不具合が生じていると判定する。
【0049】
ここで、水素ガスの流量はガス流路の有効断面積に比例し、このガス流路の有効断面積は各ガス流路の有効断面積の二乗の逆数の総和から求められるものである。
本実施形態に係る検査ライン21は、その有効断面積Saが蓄圧器6の下流側のガス流路4の有効断面積Sbよりも、十分に大きな数値(例えば、10倍以上)に設定されている。
【0050】
したがって、閉塞検査時におけるガス供給ライン側での水素ガスの流量は、十分に大きな有効断面積Saを有する検査ライン21の影響をほとんど受けることはない。例えば、検査ライン21の有効断面積Saが蓄圧器6の下流側のガス流路4の最小有効断面積Sbの10倍であると、全体の有効断面積をSとした場合に、次式が成立する。
【0051】
1/S2=1/Sa2+1/Sb2=1/100Sb2+1/Sb2
【0052】
上式のように、検査ライン21の有効断面積Saが蓄圧器6の下流側のガス流路4の最小有効断面積Sbの10倍であると、検査ライン21の有効断面積Saを含む部分は結果的に1/100の影響しか受けないことなる。
つまり、ガス流路4の有効断面積Sbよりも十分に大きな有効断面積Saを有する検査ライン21は、閉塞検査時に流れる水素ガスの流量にほとんど影響しないこととなる。
【0053】
よって、このように、検査ライン21の有効断面積Saを、閉塞検査の対象区間である蓄圧器6よりも下流側におけるガス流路4の有効断面積Sbよりも十分大きく設定しておけば、実際にノズル3を車両S側に接続しなくても、ガス供給システム1単独で、流量計7に基づくガス流路4の閉塞検査を行うことができる。
以上のとおり、制御部41は、本発明の閉塞判定部としても機能する。
【0054】
次に、遮断弁9からノズル3側の接続箇所Aまでのガス流路の予冷水素ガスによる置換処理について説明する。
この予冷水素ガスによる置換処理は、例えば上記のガス漏れ検査及び閉塞検査後に行なわれるものであり、制御部41は、温度センサT1からの検出信号に基づいて、流路4a内の水素ガスの温度が予め設定されている所定の予冷温度閾値以下であるか否かを判定する。
【0055】
この予冷温度閾値の値は、ノズル3から車両SのタンクTAへ水素ガスを円滑に高速充填できる温度であり、流路4aの径及び長さ、ガス供給システム1の設置場所あるいは季節などに応じて設定される。例えば、プレクーラ8での設定冷却温度が−20℃である場合は、−15℃程度に設定される。
【0056】
この温度判定の結果、水素ガスの温度Tが予冷温度閾値以下であると判定された場合には、例えばディスペンサ部11の表示部などに車両SのタンクTAへの水素ガス充填が可能であることを表示し、充填前処理の全てが完了したことを充填作業者へ知らせる。
【0057】
これに対して、温度判定の結果、車両S側に供給される水素ガスの温度が予冷温度閾値以下でないと判定された場合には、制御部41は遮断弁9,23を開き、温度センサT1での水素ガスの検出温度が予冷温度閾値以下になるまで、蓄圧器6からプレクーラ8を介してノズル3側へ予冷水素ガスを供給し、更にこの予冷水素ガスを検査ライン21へと送り出す。
【0058】
なお、予冷水素ガスによる置換処理は、流路4aでの検出温度による制御に代えて、ノズル3側へ送り込む水素ガスの流量あるいは送り込む時間の経過時間によって制御しても良い。ノズル3側へ送り込む水素ガスの流量は流量計7により測定可能であり、また、ノズル3側へ送り込む経過時間は、例えば制御部41内に設けられているタイマによって計時可能である。
【0059】
以上に述べた実施形態に係るガス供給システム1によれば、ノズル3をレセプタクル22へ接続した状態にてノズル3から検査ライン21へ水素ガスを放出すると、ノズル3と車両S側との接続箇所Aに至るガス流路4内の全ての部分の圧力が上昇する。したがって、このガス流路4内の圧力状態からガス漏れの有無を検査することができる。
【0060】
特に、ノズル3の内部に設けられている開閉弁が逆止弁であっても、あるいは電磁式の遮断弁であっても、タンクTAへの水素ガス充填開始前は昇圧が困難であった当該開閉弁よりも下流側の流路4b、つまり、ノズル3内の開閉弁からノズル3の先端側におけるレセプタクル22との接続箇所Aまでの流路4bについても、ガス漏れ検査可能な圧力にまで昇圧可能となり、従来検査できなかった区間までもガス漏れ検査を実施することができる。
【0061】
また、本実施形態のガス供給システム1によれば、通常のガス供給ラインから検査ライン21へのガス放出時にガス流量を測定し、このガス流量に基づいてガス供給システム1側のガス流路4における閉塞などの不具合の有無を検査することができる。
この閉塞検査の結果、ガス供給システム1側に閉塞などの不具合が無いことを確認でき、その後車両Sに搭載されたタンクTAへの水素ガス充填時にガス流量の減少を検出した際には、車両S側の流路に不具合が存在することも容易に判定することができる。
【0062】
さらに、本実施形態のガス供給システム1によれば、タンクTAへのガス充填に先だって検査ライン21へガスを放出することが可能になるので、前回のガス充填によってプレクーラ8とノズル3との間に残留したまま外気温によって暖められてしまった水素ガスを、プレクーラ8によって十分に冷却された水素ガスに置換することができる。
【0063】
これにより、充填開始時からプレクーラ8によって十分に予冷された水素ガスをガス供給対象である車両S側のタンクTAへ充填することが可能になるので、プレクーラ8の下流側にて外気温によって暖まった水素ガスを車両SのタンクTAへ充填することによる充填時間短縮化に対する悪影響を極力抑えることができる。
【0064】
このように、上記実施形態に係るガス供給システム1によれば、タンクTAへの水素ガス充填に先立って、ガス流路4におけるガス漏れや閉塞などの不具合の有無及び箇所を確認し、ガス流路4に残留する水素ガスを予冷された水素ガスによって置換する、といった充填開始前処理を容易に行うことができる。
【0065】
なお、上記ガス供給システム1では、検査ライン21の終端を圧縮機5の上流側におけるガス流路4につないだが、この検査ライン21の終端を水素カードル2に接続し、回収する水素ガスを水素カードル2へ戻すようにしても良い。
【0066】
また、図4に示すように、検査ライン21は、フレームアレスタや水封装置等の逆火防止装置43を備えることにより、終端が大気開放された構成であっても良い。
この場合、ガス漏れ検査、閉塞検査及び置換処理時に流される水素ガスは、逆火防止装置43を通過した後に大気に放出される。
【0067】
次に、ガス供給システム1のディスペンサ部11での表示について説明する。
【0068】
一般に、ガス供給システム1では、ディスペンサ部11の表示部に、ガス流路4におけるノズル3よりも上流側の圧力であるディスペンサ圧力が圧力センサP1に基づいて表示される。また、このディスペンサ圧力とともに、流量計7に基づくタンクTAへの充填量が表示される。これにより、水素ガスの充填作業者あるいは制御部41は、車両SのタンクTAへの規定量の水素ガスの充填が完了したか否かを把握する。
【0069】
ここで、図5及び図6は充填時間に対する蓄圧器6の圧力Pc(一点鎖線)、ディスペンサ圧力Pd(破線)及び車両SのタンクTAのタンク圧力Pt(実線)の変化を示している。
【0070】
図5に示すように、タンクTAへの水素ガスの充填を開始すると、ディスペンサ圧力Pdが上昇し、これに追従してタンク圧力Ptも上昇する。これに対して、蓄圧器6の圧力Pcは、水素ガスの放出に伴って下降する。
【0071】
その後、充填源である蓄圧器6の圧力Pcとディスペンサ圧力Pdとの差圧が小さくなると、それまで使用していた蓄圧器6を他の高圧の蓄圧器6に切り替える。これにより、蓄圧器6の圧力Pcとディスペンサ圧力Pdとの差圧が大きくなり、ディスペンサ圧力Pdが更に上昇し、これに追従してタンク圧力Ptも上昇する。その後も必要に応じてこのような蓄圧器6の切り替えを繰り返すことにより、タンクTAへの水素ガス充填が行なわれる。
【0072】
ところで、水素ガスの充填にかかる時間は極力短縮することが望まれているが、充填時間を短縮するために水素ガス供給量を増大させると、これに伴いノズル3の下流側での圧力損失の影響も大きくなり、ディスペンサ圧力Pdの圧力変動が大きくなる。すると、図6に示すように、タンク圧力Ptの追従に遅れが生じ、ディスペンサ圧力Pdに対してタンク圧力Ptが大きく乖離してしまう。
【0073】
このように、充填時間の短縮化を図るべく水素ガス供給量を増大させると、ディスペンサ部11に表示されるディスペンサ圧力Pdとタンク圧力Ptとの間に食い違いが生じるばかりか、その食い違いも大きくなり、制御部41あるいは充填作業者による充填状況の正確な把握が困難となる。
【0074】
また、充填時間を短縮すると、蓄圧器6の切り替え時におけるディスペンサ圧力Pdもより一層急激に変化するので、充填中に蓄圧器6が切り替わることを特別意識していない充填作業者は、蓄圧器6の切り替え時にディスペンサ部11に表示されるディスペンサ圧力Pdの数値が急激に変化する瞬間を目の当たりにすることになり、戸惑いを感じる虞がある。
【0075】
一方、ガス供給システム1のガスステーション10側と車両Sとは、例えば、赤外線通信等の通信手段(不図示)によって、車両Sに搭載されているタンクTAの圧力情報や温度情報などのタンク情報を送受信しており、ガスステーション10側のガス供給システム1では、車両Sから受信したタンク情報に基づいて制御部41が水素ガスの供給制御を行う。
【0076】
つまり、図7に示すように、ガスステーション10にて車両Sに水素ガスを充填する際には、車両Sのタンク圧力Ptを検出する圧力センサP4の検出信号が、通信手段によってガスステーション10側の制御部41へ送信されるようになっている。
【0077】
そして、本実施形態に係るガス供給システム1では、制御部41へ送信される車両S側の圧力センサP4の検出信号に基づいて、図8に示すように、ディスペンサ部11の表示部51に、水素ガスの充填量とともに車両Sのタンク圧力Ptが表示される。
【0078】
このガス供給システム1によれば、水素ガスが充填される車両Sの実際のタンク圧力Ptが表示されるので、充填作業者は、このタンク圧力Ptの表示を確認しながら充填作業を行なうことにより、蓄圧器6の切り替え時にも何ら戸惑うことなく、車両SのタンクTAへの水素ガスの充填状況を正確に把握することができる。
【0079】
また、上記の例では、ディスペンサ部11の表示部51に、水素ガスの充填量とともに車両Sのタンク圧力Ptを表示したが、図9に示すように、ディスペンサ圧力Pdをさらに表示しても良い。
【0080】
このようにすると、充填作業者は、車両SのタンクTAへの水素ガスの充填状況を正確に把握することができるだけでなく、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの差圧を容易に確認することができる。そして、充填量が減少した際には、充填作業者は、その充填量の減少原因がガスステーション10側あるいは車両S側のいずれに存在するかを容易に把握することができる。
【0081】
例えば、充填量が少ない場合に、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの差圧が小さければ、ガスステーション10側に原因があり、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの差圧が大きければ、車両S側に原因があると判定することができる。
【0082】
また、車両S側の圧力センサP4に不具合が生じたとしても、充填作業者は、ディスペンサ圧力Pdの表示から水素ガスの充填状況を把握することができるので、タンク圧力Ptのみが表示されてディスペンサ圧力Pdが全く表示されない場合よりも信頼性を高めることができる。
【0083】
なお、ディスペンサ部11の表示部51での表示の仕方としては、数値によるデジタル表示に限らない。例えば図10に示すように、各圧力を、指針52を有するメータ53によるアナログ表示としても良い。
【0084】
また、タンク圧力Ptとディスペンサ圧力Pdとの判別を容易にするために、例えば、タンク圧力Ptの表示部に色をつける、あるいはタンク圧力Ptの表示をディスペンサ圧力Pdの表示よりも大きくする等、タンク圧力Ptの表示部をディスペンサ圧力Pdの表示部よりも目立つようにしても良い。
【0085】
また、圧力表示がアナログ表示の場合には、例えば図11に示すように、タンク圧力Ptの指針52aとディスペンサ圧力Pdの指針52bとを備えた一つのメータ52を用い、この一つのメータ52によって各圧力を表示しても良い。この場合、各圧力の判別を容易にするために、それぞれの指針52a,52bの形状、大きさあるいは色を異ならせるのが好ましい。
【符号の説明】
【0086】
1…ガス供給システム、2…水素カードル(ガス供給源)、3…ノズル、7…流量計、8…プレクーラ(冷却部)、9…遮断弁(第1の遮断弁)、21…検査ライン(ガス受入部)、22,31…レセプタクル、23…遮断弁(第2の遮断弁)、41…制御部(ガス漏れ判定部、閉塞判定部)51…表示部、P1…圧力センサ、S…車両、T1…温度センサ、TA…タンク(ガス供給対象)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源と、前記ガス供給源からのガスをガス供給対象へと放出するノズルと、前記ガス供給源と前記ノズルとを接続するガス流路と、前記ガス流路に設けられた第1の遮断弁とを備え、前記ノズルを前記ガス供給対象側の供給口に接続した状態にて前記ノズルからガスを放出して前記ガス供給対象へガスを充填するガス供給システムであって、
前記ノズルから放出されたガスを受け入れるガス受入部を備え、
前記ガス受入部には、前記ノズルが接続されるレセプタクルと、前記第1の遮断弁との間に前記ノズル及び前記レセプタクルを含む閉空間を形成することが可能な第2の遮断弁とが設けられているガス供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記第1の遮断弁と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた圧力センサと、
前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記第1の遮断弁と前記第2の遮断弁との間のガス流路を所定のガス漏れ検査圧力まで昇圧された閉空間とし、前記圧力センサの検出圧力に基づいて前記閉空間におけるガス漏れの有無を判定するガス漏れ判定部と、を備えるガス供給システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス供給システムであって、
前記ガス供給源と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた流量計と、
前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給し、前記流量計の検出流量に基づいて前記ガス流路における閉塞の有無を判定する閉塞判定部と、を備えるガス供給システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のガス供給システムであって、
前記ガス供給源からのガスを冷却する冷却部と、前記冷却部と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた温度センサとを備え、
前記ガス供給対象へのガス充填開始前は、前記温度センサの検出温度が所定の予冷温度閾値以下となるまで、前記冷却部によって予冷された前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給するガス供給システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のガス供給システムであって、
前記ガス供給対象側から送信される情報に基づいて前記ガス供給対象の圧力を表示する表示部を備えているガス供給システム。
【請求項6】
請求項5に記載のガス供給システムであって、
前記表示部は、前記ガス供給対象の圧力とともに、前記ノズルから放出するガスの圧力を表示するガス供給システム。
【請求項1】
ガス供給源と、前記ガス供給源からのガスをガス供給対象へと放出するノズルと、前記ガス供給源と前記ノズルとを接続するガス流路と、前記ガス流路に設けられた第1の遮断弁とを備え、前記ノズルを前記ガス供給対象側の供給口に接続した状態にて前記ノズルからガスを放出して前記ガス供給対象へガスを充填するガス供給システムであって、
前記ノズルから放出されたガスを受け入れるガス受入部を備え、
前記ガス受入部には、前記ノズルが接続されるレセプタクルと、前記第1の遮断弁との間に前記ノズル及び前記レセプタクルを含む閉空間を形成することが可能な第2の遮断弁とが設けられているガス供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給システムであって、
前記第1の遮断弁と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた圧力センサと、
前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記第1の遮断弁と前記第2の遮断弁との間のガス流路を所定のガス漏れ検査圧力まで昇圧された閉空間とし、前記圧力センサの検出圧力に基づいて前記閉空間におけるガス漏れの有無を判定するガス漏れ判定部と、を備えるガス供給システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス供給システムであって、
前記ガス供給源と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた流量計と、
前記ガス供給対象へのガス充填開始前に、前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給し、前記流量計の検出流量に基づいて前記ガス流路における閉塞の有無を判定する閉塞判定部と、を備えるガス供給システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のガス供給システムであって、
前記ガス供給源からのガスを冷却する冷却部と、前記冷却部と前記ノズルとの間のガス流路に設けられた温度センサとを備え、
前記ガス供給対象へのガス充填開始前は、前記温度センサの検出温度が所定の予冷温度閾値以下となるまで、前記冷却部によって予冷された前記ガス供給源からのガスを前記ガス受入部に供給するガス供給システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のガス供給システムであって、
前記ガス供給対象側から送信される情報に基づいて前記ガス供給対象の圧力を表示する表示部を備えているガス供給システム。
【請求項6】
請求項5に記載のガス供給システムであって、
前記表示部は、前記ガス供給対象の圧力とともに、前記ノズルから放出するガスの圧力を表示するガス供給システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−266023(P2010−266023A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118983(P2009−118983)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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