説明

ガス供給管、ハードコートフィルムおよびその製造方法

【課題】ガスの供給を比較的低い総供給量で行っても、軸方向において均一な風速でガスを供給できるガス供給管及び樹脂フィルム幅方向での硬化バラツキが抑制されたハードコートフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】管内に導入されたガスを、軸方向Kに並列してn列(nは1以上の自然数)で設けられた複数の供給口2より管外に供給するためのガス供給管1であって、供給口1つ当たりの開口面積sが0.7/n〜1.7/n(mm)であり、供給口のピッチをp(mm)としたときの開口度s・n/pが0.05〜0.20であるガス供給管。前記ガス供給管を用いて不活性ガスを、活性エネルギー線が照射される活性エネルギー線硬化性樹脂層の表面に供給するハードコートフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給管、表面にハードコート層を有するハードコートフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルムなどの光学用途に使用される樹脂フィルムでは、様々な機能を持たせるために幾つかの機能性薄膜層が塗設されている。機能性薄膜としては、例えば、帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層、膜付き性を向上させるための下引き層、カールを防止するためのアンチカール層、或いは防眩層、反射防止層などである。この中で特にハードコート層と反射防止層は重要である。
【0003】
上記樹脂フィルムにハードコート層を形成するに際しては通常、樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた後、活性エネルギー線硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し硬化する。このとき、酸素による硬化阻害が起こり、十分な表面硬度が得られないという問題があり、この改善が求められていた。
【0004】
酸素による硬化阻害を防止する方法として、紫外線照射室内の酸素濃度を1000ppm以下に保って紫外線により硬化させる硬化塗膜の製造方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、酸素による硬化阻害を十分に防止することはできなかった。
【0005】
そこで、樹脂フィルム上の樹脂層に向けて窒素ガスを噴射させるに際し、樹脂フィルム幅方向の中央部の窒素ガス噴射量よりも、両端部付近へ行くに従い窒素ガス噴射量を多くすることにより、表面硬化のバラツキを防止する技術が提案されている(特許文献2)。しかしながら、樹脂フィルムの幅方向において端部で窒素ガス供給口が密に形成され、窒素ガス噴射流の風速にバラツキが生じるため、樹脂層表面において樹脂フィルム幅方向で酸素濃度を均一にすることは困難であった。その結果、得られるハードコートフィルムの幅方向において硬化バラツキが起こった。たとえ樹脂フィルム幅方向で酸素濃度を均一にできたとしても、窒素ガス供給を比較的高い総供給量で行う必要があった。
【特許文献1】特開平11−104562号公報
【特許文献2】特開2004−244474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ガスの供給を比較的低い総供給量で行っても、軸方向において均一な風速でガスを供給できるガス供給管を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、樹脂フィルム幅方向での硬化バラツキが抑制されたハードコートフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本明細書中、硬化性樹脂層は活性エネルギーにより硬化可能であって、未硬化の樹脂層を意味するものとする。
硬化樹脂層は活性エネルギーにより硬化された樹脂層を意味するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、 管内に導入されたガスを、軸方向に並列してn列(nは1以上の自然数)で設けられた複数の供給口より管外に供給するためのガス供給管であって、
供給口1つ当たりの開口面積sが0.7/n〜1.7/n(mm)であり、供給口のピッチをp(mm)としたときの開口度s・n/pが0.05〜0.20であることを特徴とするガス供給管に関する。
【0010】
本発明はまた、樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂層を設けた後、該樹脂フィルムを搬送しながら、活性エネルギー線硬化性樹脂層に光源から活性エネルギー線を照射して硬化を行うハードコートフィルムの製造方法であって、
軸方向が樹脂フィルムの幅方向と平行になるように設置された上記ガス供給管を用いて、不活性ガスを、活性エネルギー線が照射される活性エネルギー線硬化性樹脂層の表面に供給するハードコートフィルムの製造方法に関する。
【0011】
本発明はまた、上記ハードコートフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするハードコートフィルムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るガス供給管によれば、ガスの供給を比較的低い総供給量で行っても、ガスを軸方向において均一な風速で供給できる。
そのようなガス供給管をハードコートフィルムの製造方法において不活性ガスの供給のために、軸方向が樹脂フィルムの幅方向と平行になるように用いると、活性エネルギー線硬化性樹脂層表面において樹脂フィルム幅方向で酸素濃度を有効に均一にできる。その結果として、樹脂フィルム幅方向での硬化バラツキが抑制されたハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(ガス供給管)
本発明に係るガス供給管は、管内に導入されたガスを、軸方向に並列してn列で設けられた複数の供給口より管外に噴射・供給するものである。以下、本発明に係るガス供給管の一例の概略見取り図を示す図1〜3を用いて本発明を詳しく説明する。図1、図2および図3(A)および(B)はいずれも本発明に係るガス供給管の一例を示す概略見取り図である。
【0014】
軸方向に並列して複数の供給口を設けるとは、複数の供給口2が軸方向Kに全体として直線状に列をなすように、個々の供給口2を間隔をあけて並ばせて設けることを意味する。本発明においてはそのような供給口2の列は図1〜2に示すように1列であってもよいし、または図3(A)および(B)に示すように2列以上であってもよい。nはガス供給管に設けられた供給口2の列の数であり、1以上の自然数、特に1〜3の自然数、好ましくは1〜2の自然数である。
【0015】
図1〜3において、ガス供給管1に設けられた供給口は2で示され、供給口1つ当たりの開口面積sは0.7/n〜1.7/n(mm)、好ましくは0.7/n〜1.3/n(mm)であり、供給口のピッチ(間隔)をp(mm)としたときの開口度s・n/pは0.05〜0.20(mm)、好ましくは0.10〜0.18(mm)である。nは前記した供給口2の列の数である。
【0016】
開口面積sは供給口1つあたりの開口面積を意味するもので、ガス供給管1が有する供給口の列の数nに基づいて規定される。換言すると、供給口2は図1〜2に示すように1列で形成されても、または図3(A)および(B)に示すようにk列(kは2以上の自然数)で形成されてもよく、k列で形成されるときは、供給口1つあたりの開口面積sが、1列で形成されるときの供給口1つあたりの規定の開口面積sをk個に等分割した面積になるように供給口を形成する。
【0017】
開口度s・n/pは供給口2の軸方向Kのピッチ(間隔)をp(mm)としたときの開口の程度を示すひとつの尺度である。詳しくは開口度s・n/pは、供給口2が1列で形成されるときであっても、またはk列で形成されるときであっても、供給口2の代わりに、実際に形成された供給口の総開口面積に等しいスリットを形成したものと仮定したときのスリット間隙距離(mm)を示すものである。スリットとはガス供給管の軸方向Kに長手方向を有する長方形状の隙間であり、その隙間における短い方の長さがスリット間隙距離(mm)である。供給口が2列以上の複数列で設けられる場合、全列のピッチの平均ピッチを開口度の算出に用いればよい。
【0018】
具体的には、例えば図1〜2に示すようにn=1のとき、供給口1つ当たりの開口面積sは0.7〜1.7mm、好ましくは0.7〜1.3mmであり、開口度はs/pであって、0.05〜0.20mm、好ましくは0.10〜0.18mmである。
また例えば、図3(A)および(B)に示すようにn=2のとき、供給口1つ当たりの開口面積sは0.35〜0.85mm、好ましくは0.35〜0.65mmであり、開口度は2s/pであって、0.05〜0.20mm、好ましくは0.10〜0.18mmである。
また例えば、n=3のとき、供給口1つ当たりの開口面積sは0.23〜0.57mm、好ましくは0.23〜0.43mmであり、開口度は3s/pであって、0.05〜0.20mm、好ましくは0.10〜0.18mmである。
【0019】
本発明においてはそのような開口面積および開口度を達成することによって、ガスの供給を比較的低い総供給量で行っても、ガスを軸方向において比較的均一な風速で供給できる。開口面積が大きすぎると、噴射されるガスの風速について軸方向でバラツキが生じる。開口面積が小さすぎると、風速が強すぎ、異物の懸念が生じてくる。開口度が大きすぎると、噴射されるガスの風速について軸方向でバラツキが生じる。開口度が小さすぎると、ガスの供給量が不足する。
【0020】
供給口2の形状は特に制限されるものではなく、例えば、図1に示すような略円形状であってもよいし、または図2に示すような略四角形状等の多角形状であってもよい。
【0021】
ピッチpは、nの値にかかわらず、軸方向における均一な風速を達成する観点から、6〜18mm、特に6〜10mmであることが好ましい。供給口が図3(A)および(B)に示すように二列以上の複数列で設けられる場合、各列のピッチpは独立して選択されてよいが、等しいことが好ましい。この場合、列間距離tは通常、2.0〜5.0mmであり、好ましくは2.0〜3.5mmである。
【0022】
1列あたりの供給口2の数は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、ガス供給管の軸方向長さが1650〜1850mmのとき、通常は150〜300個であり、220〜250個が好ましい。
【0023】
ガス供給管の軸方向の長さおよび内径は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、軸方向の長さは1400〜2500mm、特に1650〜1750mmが好ましく、内径は10〜16mm、特に10〜12mmが好ましい。
【0024】
ガス供給管はラビリンス構造を有することが好ましい。ラビリンス構造とは、図4に示すように、ガス流路の一部を閉塞する突起状の邪魔板5が管内で間隔をおいて交互に形成された構造である。これによって、軸方向において、より一層均一な風速を達成できる。図4は、本発明に係るガス供給管の一例の概略断面図を示す。
【0025】
ラビリンスのピッチq、すなわち邪魔板5のピッチは、風速均一化の観点から、50〜150mm、特に75〜125mmが好ましい。
【0026】
ガス供給管は、ガスを一端から他端に向けて導入されてもよいし、または両端から同時に導入されてもよい。風速均一化の観点からは、両端から同時に導入されたほうがよい。ガスを一端から導入される場合、他端は通常、封止される。
【0027】
ガス供給管の材質は特に制限されず、例えば、鉄、ステンレス等が使用できる。
【0028】
ガス供給管内に導入されるガスとしては特に制限されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが挙げられる。
【0029】
本発明のガス供給管によれば、ガスの供給を比較的低い総供給量で行っても、ガスを軸方向において均一な風速で供給できる。例えば、軸方向長さ1750mmのガス供給管において供給口からの総供給量を400〜700、特に400〜500とした場合でも、軸方向で風速の差を0.3m/s以下、特に0.2〜0.3m/sに抑えることができる。
【0030】
本発明においてガス供給管における供給口の開口面積sおよびピッチpはガス供給管の外周表面を観察することによって容易に測定可能である。特に開口面積sは、ガス供給管の外周表面を光学顕微鏡によって、例えば倍率100倍で観察し、得られた画像より、容易に算出可能である。開口面積sは任意の50個の供給口についての平均値であってよい。ピッチpは任意の50ヶ所のピッチについての平均値であってよい。
【0031】
本発明のガス供給管は、不活性ガス供給用として用いることにより、活性エネルギー線硬化樹脂層の製造の際に、酸素による硬化阻害を防止するのに有用である。詳しくは、本発明のガス供給管は、以下に示すハードコートフィルムの製造方法に好適に使用される。
【0032】
(ハードコートフィルムの製造方法)
本発明に係るハードコートフィルムの製造方法は、樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂層を設けた後、該樹脂フィルムを搬送しながら、活性エネルギー線硬化性樹脂層に光源から活性エネルギー線を照射して硬化を行うものであり、軸方向が樹脂フィルムの幅方向と平行になるように設置された前記ガス供給管を用いて不活性ガスを、活性エネルギー線が照射される活性エネルギー線硬化性樹脂層の表面に供給することを特徴とする。これによって、不活性ガスを樹脂フィルム幅方向において均一な風速で供給できるので、活性エネルギー線硬化性樹脂層表面において樹脂フィルム幅方向で酸素濃度を有効に均一にできる。その結果として、樹脂フィルム幅方向での硬化バラツキが抑制されたハードコートフィルムを得ることができる。
【0033】
本発明に係るハードコートフィルムの製造方法および当該方法に用いる装置について図をもって説明する。
【0034】
図5は本発明のハードコートフィルムの製造方法において使用される活性エネルギー線照射設備の一例の概略構成図である。図5中、搬送される樹脂フィルム10は矢印方向に連続搬送されており、該樹脂フィルム10の外側表面には塗布装置(不図示)により活性エネルギー線硬化性樹脂層が既に塗布されている。塗布物中に溶剤が含有される場合は乾燥工程(不図示)を経た後、樹脂フィルム10はバックアップロール11にて背面を支持されて搬送されながら、照射装置20から活性エネルギー線を照射され、活性エネルギー線硬化性樹脂層が硬化される。照射装置20は、パージボックス15を有し、その中にはガス供給管1、活性エネルギー線を発生する光源12および反射板13を内蔵し、光源12および反射板13により活性エネルギー線を照射しながら、ガス供給管1により不活性ガスを供給する。ガス供給管1は、供給口を樹脂フィルム10上の活性エネルギー線硬化性樹脂層に向けて設置され、好ましくはバックアップロール11の軸に向けて配置される。
【0035】
ガス供給管1は、バックアップロール11の軸から光源12の軸を結んだ線分方向Lを基準にしてバックアップロール回転方向に対して逆方向xを正の値で、該回転方向と同方向yを負の値で示すとき、線分方向Lと、バックアップロール11の軸からガス供給管1の軸を結んだ線分方向M1とのなす角度αが+15°〜+30°、好ましくは+20°〜+25°となるように配置される。
またガス供給管1は、ガス供給管1の軸からバックアップロール11の軸を結んだ線分方向M2と、ガス供給管1の軸からバックアップロール11に対して引いたバックアップロール回転方向上流側の接線方向Nとのなす角度βが30〜60°、好ましくは45〜60°となるように配置される。
【0036】
ガス供給管1とバックアップロール11との距離z1は通常、光源12とバックアップロール11との距離z2よりも短く設定される。z1は通常、50〜100mm、特に50〜75mmであり、z2は通常、220〜150mm、特に180〜150mmである。
【0037】
ガス供給管1から供給される不活性ガスの風速は特に制限されるものではないが、酸素による硬化阻害を防止する観点からは、4.0〜2.0m/s、特に3.5〜2.5m/sが好ましい。
【0038】
ガス供給管1から供給される不活性ガスの温度は、塗膜表面温度制御の観点から、15〜30℃、特に15〜25℃が好ましい。
【0039】
光源12は、電子線、X線、放射線、可視光線、紫外線等の活性エネルギー線を発生させることができれば特に制限されず、特に紫外線を発生させ得る光源が好ましく用いられる。紫外線を使用する場合、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。そのような紫外線光源の出力は、硬化に十分な照射量を提供できれば特に制限されず、例えば、80〜240W/cmのものが使用される。光源は通常、棒形状を有し、バックアップロールの軸方向に対して平行に配置される。
【0040】
反射板13は特に制限されず、例えば、一般の集光型および拡散型が使用可能である。好ましくは集光型を用いる。反射板の材料としては、活性エネルギー線の透過率が低い若しくは活性エネルギー線を透過しない材料であればどのようなものでも良く、例えば、金属板、不透明樹脂板や紙等種々の材料を用いることが出来る。反射板は、耐久性、遮蔽性の観点から、好ましく金属板であり、鉄、銅、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、鉛、或いはこれらの何れかを主成分とする合金等が挙げられるが、ステンレス板或いはアルミニウム板が好ましく、特に活性エネルギー線光源側は鏡面加工がほどこしてあることが好ましい。また、活性線光源側に熱線を吸収して紫外線を反射する皮膜、例えばTiO等の酸化金属蒸着膜を被着したコールドミラーで構成しても良い。
【0041】
パージボックス15は、ガス供給管1から供給された不活性ガスをパージするためのものであり、図5中、バックアップロール11と対向する右側面のみが開口している。パージボックス15の材質としては、例えば、ステンレス(SUS)、鉄等が使用可能である。
【0042】
活性エネルギー線を照射する際には、樹脂フィルム10の搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックアップロール11上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。
【0043】
図5においては光源12を1つだけ使用した場合の活性エネルギー線照射設備を示しているが、光源12を2以上使用してもよい。その場合、少なくともバックアップロール回転方向で最上流の光源の近傍に前記ガス供給管を設ければよい。光源12を2つ使用し、最上流の活性エネルギー線照射装置20のみにガス供給管1を設けた活性エネルギー線照射設備の一例を図6に示す。図6においてガス供給管1を設けなかった活性エネルギー線照射装置を30で示す。図6は、最上流の活性エネルギー線照射装置20のみにガス供給管1を設け、ガス供給管を設けない活性エネルギー線照射装置30を新たに設けたこと以外、図5と同様であるため、説明を省略する。図6における図5と同じ符号は図5と同じ意味内容を示すものである。
【0044】
本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂層について説明する。活性エネルギー線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂(以下、単に硬化性樹脂ということがある)としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性エネルギー線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0045】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
【0046】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0047】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種若しくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0048】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、テトラメチルウラムモノサルファイド、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化性樹脂とともに用いられる光反応開始剤また光増感剤は硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
【0049】
活性エネルギー線硬化性樹脂層には、表示装置パネルの表面に防眩性を与えるために、また他の物質との密着性を防ぐために、或いは耐擦り傷性付与のために、無機或いは有機の微粒子を加えることも出来る。例えば、無機粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることが出来、また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を加えることが出来る。これらの粒子粉末の平均粒径としては、0.01μm〜10μmであり、硬化性樹脂と微粒子粉末との割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部となるように配合することが望ましい。防眩効果を付与するには、平均粒径0.1〜3μm、硬化性樹脂100質量部に対して1〜15質量部が好適である。
【0050】
ブロッキング防止機能を果たすものとして、或いは微細な凹凸を形成するため上述したものと同じ成分で、体積平均粒径0.005〜0.1μmの粒子を硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部、併せて用いることも出来る。
【0051】
活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗布液には有機溶媒が好ましく用いられる。このとき、樹脂フィルムを溶解若しくは膨潤させる性質を有する溶媒を用いることが塗設された層と樹脂フィルムとの密着性に優れるため好ましい。なお、有機溶媒は紫外線照射前に蒸発させるため、乾燥工程を設けることが好ましい。
【0052】
塗布液に使用出来る有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素類その他の溶媒などが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
【0053】
塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
【0054】
塗布液を塗布・乾燥した後、紫外線等の活性線を照射するが、照射の条件は前述した通りである。
【0055】
本発明のハードコートフィルムの製造方法により製造された活性エネルギー線硬化樹脂層(ハードコート層)上には高屈折率層或いは低屈折率層などの反射防止層を塗設し、光学フィルムを形成することが出来る。
【0056】
本発明の製造方法により得られるハードコートフィルムの層構成としては、下記の例が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
樹脂フィルム/(クリア)ハードコート層;
バックコート層/樹脂フィルム/(クリア)ハードコート層;
バックコート層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/高屈折率層/低屈折率層;
バックコート層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層;
帯電防止層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層;
バックコート層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層;
バックコート層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層;
帯電防止層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層。
【0057】
これらの層のうち、(クリア)ハードコート層および防眩性ハードコート層は、塗布・乾燥の後、前記したガス供給管で不活性ガスを供給しながら、活性エネルギー線を照射し、硬化して得ることができる。バックコート層、高屈折率層、低屈折率層、中屈折率層のうち少なくとも1層もまた、塗布・乾燥の後、前記したガス供給管で不活性ガスを供給しながら、活性エネルギー線を照射し、硬化して得ることができる。高屈折率層、低屈折率層、中屈折率層はTiやSiなどの金属アルコキシドを用いたゾルゲル法で形成してもよく、さらにその上にZr、Zn、Ti、Si、Sn、In等の金属酸化物微粒子とバインダーを含む層を塗設してもよい。
【0058】
本発明によって得られたハードコートフィルムは、表面の硬化バラツキが抑制されるため、特に液晶表示装置、或いは有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイの前面に用いられる反射防止フィルム或いは防眩フィルム、クリアハードコートフィルム等の光学フィルムとして有用であり、優れた視認性を提供することが出来る。
【0059】
以下、本発明で用いられる樹脂フィルムについて詳しく説明する。
樹脂フィルムには特に限定はなく、例えば、透明樹脂フィルムとしてポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート或いはセルロース誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム或いはポリアリレート系フィルム等を挙げることが出来る。
【0060】
本発明では特に幅広の樹脂フィルムに対して優れた効果を発揮し、特に幅1.4〜4mの樹脂フィルムに対して好ましく適用される。また、特に樹脂フィルムがセルロースエステルを含有するフィルムに対して優れた効果を発揮する。セルロースエステルフィルムとしては、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート(TAC)などが挙げられる。
樹脂フィルムの膜厚は特に制限されず、例えば10〜60μmである。
【0061】
セルロースエステルフィルムの製膜法について述べる。セルロースエステルフィルムは一般的に、セルロースエステルフレーク原料及び可塑剤をメチレンクロライドに溶解して粘稠液とし、これに可塑剤を溶解してドープとなし、エクストルーダーダイスから、エンドレスに回転するステンレス等の金属ベルト(バンドともいう)上に流延して、乾燥させ、生乾きの状態でベルトから剥離し、ロール等の搬送装置により、両面から乾燥させて巻き取り、作られる。本発明のハードコートフィルムの製造に用いられるセルロースエステルフィルムは、乾燥過程でテンター等の装置によってフィルムの端部を把持され、幅方向に張力を付与して幅保持若しくは延伸されたものであることがより高い平面性が得られるために好ましい。
【0062】
本発明のハードコートフィルムの製造に用いられるセルロースエステルフィルムのセルロースエステル樹脂としては、セルロースの低級脂肪酸エステル樹脂であることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸が好ましく、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの特に好ましい例として挙げられる。
【0063】
また、上記以外にも、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、最も好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルとしてはセルローストリアセテート(以下、TACという)、セルロースアセテートプロピオネートである。
【0064】
本発明に係るセルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0065】
本発明で用いられるセルロースエステルとしては、アセチル基及び/またはプロピオニル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をX、またプロピオニル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが特に好ましい。
(I)2.5≦X+Y≦3.0
(II)0≦Y≦1.2
【0066】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0067】
セルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独或いは任意の比率で混合して用いることが出来る。ベルトやドラムからの剥離性が若しくは問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用すれば生産性が高く好ましい。木材パルプから合成されたセルロースエステルを混合して用いた場合、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上が更に好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
【0068】
ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来る溶媒であれば何でも良く、また単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解出来るものであれば使用することが出来る。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0069】
このほか使用出来る良溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0070】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0071】
本発明で用いることの出来る可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを用いることが出来る。
【0072】
リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等或いはトリメチロールプロパントリベンゾエート等を好ましく用いることが出来る。ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることが出来る。
【0073】
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロースエステルとの相溶性の点から好ましい。
【0074】
また、200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、更に好ましくは1〜133Paの化合物である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、上記ポリエステル可塑剤等が挙げられる。
これらの可塑剤は単独或いは2種以上併用して用いることが出来る。
【0075】
可塑剤の使用量は寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステルに対して、1〜40質量%添加させることが出来、3〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、更に好ましくは4〜15質量%である。3質量%未満の場合は、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることが出来ず、切り屑の発生が多くなる。
【0076】
本発明のセルロースエステルフィルムには酸化防止剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。
【0077】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0078】
また、この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
【0079】
本発明のセルロースエステルフィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板または液晶表示用部材等に使用されるが、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0080】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
【0081】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。また、特開平6−148430号、特開2002−47357号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。或いは特開平10−152568号に記載されている紫外線吸収剤を用いることも出来る。
【0082】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
【0083】
【化1】

【0084】
式中、R、R、R、R及びRは同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、RとRは閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していて良い。
【0085】
以下に本発明に係る紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0086】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
【0087】
以下にベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
【0088】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムでは、フィルムに滑り性を付与し、ロール状フィルムのブロッキングを防止するために微粒子を添加することが好ましい。
【0089】
本発明に係る微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0090】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減出来るので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0091】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
【0092】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
【0093】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0094】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用出来る。
【0095】
微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを好ましく使用することが出来る。
【0096】
《調製方法A》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0097】
《調製方法B》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。ここで添加するセルロースエステルとして、本発明の固形物を添加することが特に好ましい。
【0098】
これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0099】
《調製方法C》
溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0100】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0101】
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0102】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0103】
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0104】
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
【0105】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0106】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0107】
また、これらの微粒子はフィルムの厚味方向で均一に分布していてもよいが、より好ましくは主に表面近傍に存在するように分布していることが好ましく、例えば、共流延法により、2種以上のドープを用いて、微粒子を主に表層側に配置されたドープに添加することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。好ましくは3種のドープを使用して表層側の少なくとも1つのドープ若しくは表層側の2つのドープに主に微粒子を添加することが望ましく、中心層を形成するドープには微粒子がほとんど含まれないか、まったく含まれないことが好ましい。可塑剤或いは紫外線吸収剤などでブリードアウトの恐れがある添加剤は主に中心層を形成するドープに添加し、表層側の2つのドープには中心層を形成するドープへの添加量に対して80質量%未満の添加量とすることが好ましく、より好ましくは50質量%未満とすることであり、ほとんど添加しないかまったく添加しないことが、工程汚染を防止する点でより好ましい。
【0108】
この様な製膜工程で得られたセルロースエステルフィルムを一度巻き取った後、或いは巻き取ることなく連続的に、前記した本発明のハードコートフィルムの製造方法によって、活性エネルギー線硬化樹脂層(ハードコート層)を設けることが出来る。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0110】
<実験例1;ガス供給管の評価>
(実施例/比較例)
《ガス供給管の作製》
表1に示す条件のガス供給管を作製した。特に供給口はSUSにより形成した。
【0111】
【表1】

【0112】
《風速の測定1》
実施例1,2および比較例1のガス供給管に窒素ガスを導入し、供給口から噴出した風速を測定した。
風速の測定方法は以下の方法に従った。ガス供給管の一端から他端に向けて500L/分で窒素ガスを導入した。このとき他端は封止されていた。ガス供給管の軸方向について160mm間隔で10点の測定ポイントを設定した。当該測定ポイントはガス供給管からの距離が10mmのポイントとし、風速計で測定した。
【0113】
測定結果を図7に示した。図7において測定位置1はガス供給管において窒素ガスが導入された端部に最も近い測定ポイントであり、測定位置10はガス供給管において封止された端部に最も近い測定ポイントである。
実施例1,2では全測定ポイントにおける測定値についての最大値と最小値との差が0.3m/s以下であり、均一な風速が達成された。
比較例1では全測定ポイントにおける測定値についての最大値と最小値との差が0.3m/sを超えており、均一な風速は達成されなかった。
窒素ガスの総供給量は、実施例1で500L/min、実施例2で500L/min、比較例1で500L/minであった。
【0114】
《風速の測定2》
実施例1のガス供給管に窒素ガスを400L/分で導入したこと以外、風速の測定1の方法と同様の方法により、風速を測定した。
【0115】
測定結果を図8に示した。図8において測定位置1はガス供給管において窒素ガスが導入された端部に最も近い測定ポイントであり、測定位置10はガス供給管において封止された端部に最も近い測定ポイントである。
実施例1では全測定ポイントにおける測定値についての最大値と最小値との差が0.2m/s以下であり、窒素ガスの導入量が少なくても、均一な風速が達成された。
窒素ガスの総供給量は、実施例1で400L/minであった。
【0116】
《風速の測定3》
実施例3のガス供給管を用いたこと以外、風速の測定1の方法と同様の方法により、風速を測定した。
【0117】
測定結果を図9に示した。図9において測定位置1はガス供給管において窒素ガスが導入された端部に最も近い測定ポイントであり、測定位置10はガス供給管において封止された端部に最も近い測定ポイントである。
実施例3では全測定ポイントにおける測定値についての最大値と最小値との差が0.2m/s以下であり、ラビリンス構造によって、より一層均一な風速が達成された。
窒素ガスの総供給量は、実施例3で400L/minであった。
【0118】
<実験例2;ハードコートフィルムの評価>
《透明樹脂フィルムの作製》
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.88) 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1質量部
酸化珪素微粒子(アエロジル200V) 0.1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解した。
【0119】
次に、このドープ組成物を濾過、冷却して33℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離後、テンターによって幅把持しながら乾燥させ、幅手方向で1.1倍となるように延伸し、更に多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚40μm、幅1.5mの透明樹脂フィルムを得た。
【0120】
《クリアハードコート層(CHC層)の形成》
(クリアハードコート層(CHC層)塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 50質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 5質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解した。
【0121】
透明樹脂フィルムの上に、上記クリアーハードコード層(CHC層)塗布組成物を押し出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した。その後、下記条件にて、図6に示す紫外線照射設備を使用して紫外線の照射および不活性ガスの供給を行い、膜厚7μmのハードコート層(CHC層)を形成した。
【0122】
ガス供給管1は実施例1および比較例1で製造したガス供給管を用い、角度αが+20°、角度βが45°、z1が75mmとなるように配置した。ガス供給管の一端から他端に向けて500L/分で窒素ガスを導入した。
光源12は出力3kWの紫外線ランプ(アイグラフィック(株)社製高圧水銀タイプ)を用い、z2が180mmとなるように配置した。
樹脂フィルムの搬送速度は25m/分であった。
半径300mmのバックアップロール11を使用し、表面の温度が25℃となるように設定した。
反射板13は集光型を用いた。
窒素ガスの総供給量は、実施例1で500L/min、比較例1で500L/minであった。
【0123】
《評価》
(接触角)
得られたハードコートフィルムの両端部および中央部から試料を切り出し、純水に対する接触角を接触角計(協和界面科学株式会社製)により測定した。
実施例1のガス供給管を用いて得られたハードコートフィルムの接触角は、一端部−中央部−他端部の順で89°−90°−89°であり、均一な硬化が達成されていた。接触角の差は小さいほど好ましく、差が3.0°以下であれば実用上問題のない範囲内である。
比較例1のガス供給管を用いて得られたハードコートフィルムの接触角は、一端部−中央部−他端部の順で70°−80°−73°であり、均一な硬化が達成されなかった。接触角の差は小さいほど好ましく、差が3.0°以下であれば実用上問題のない範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係るガス供給管の一例を示す概略見取り図である。
【図2】本発明に係るガス供給管の一例を示す概略見取り図である。
【図3】(A)および(B)はともに本発明に係るガス供給管の一例を示す概略見取り図である。
【図4】本発明に係るガス供給管の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のハードコートフィルムの製造方法において使用される活性エネルギー線照射設備の一例の概略構成図を示す。
【図6】本発明のハードコートフィルムの製造方法において使用される活性エネルギー線照射設備の一例の概略構成図を示す。
【図7】実験例1で行った測定結果を示すグラフである。
【図8】実験例1で行った測定結果を示すグラフである。
【図9】実験例1で行った測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0125】
1:ガス供給管、2:供給口、5:邪魔板、10:樹脂フィルム、11:バックアップロール、12:光源、13:反射板、15:パージボックス、20:30:活性エネルギー線照射装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に導入されたガスを、軸方向に並列してn列(nは1以上の自然数)で設けられた複数の供給口より管外に供給するためのガス供給管であって、
供給口1つ当たりの開口面積sが0.7/n〜1.7/n(mm)であり、供給口のピッチをp(mm)としたときの開口度s・n/pが0.05〜0.20(mm)であることを特徴とするガス供給管。
【請求項2】
供給口のピッチpが6〜18mmである請求項1に記載のガス供給管。
【請求項3】
ラビリンス構造を有する請求項1または2に記載のガス供給管。
【請求項4】
ラビリンスのピッチqが50〜150mmである請求項1〜3のいずれかに記載のガス供給管。
【請求項5】
ガスが、一端から他端に向けて導入されるか、または両端から導入される請求項1〜4のいずれかに記載のガス供給管。
【請求項6】
ガスが不活性ガスであり、活性エネルギー線硬化樹脂層の製造の際に、酸素による硬化阻害を防止するために使用される請求項1〜5のいずれかに記載のガス供給管。
【請求項7】
樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂層を設けた後、該樹脂フィルムを搬送しながら、活性エネルギー線硬化性樹脂層に光源から活性エネルギー線を照射して硬化を行うハードコートフィルムの製造方法であって、
軸方向が樹脂フィルムの幅方向と平行になるように設置された請求項1〜6のいずれかに記載のガス供給管を用いて、不活性ガスを、活性エネルギー線が照射される活性エネルギー線硬化性樹脂層の表面に供給するハードコートフィルムの製造方法。
【請求項8】
樹脂フィルムをその背面でバックアップロールにて支持・搬送しながら、活性エネルギー線の照射および不活性ガスの供給を行う請求項7に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、
バックアップロールの軸から光源の軸を結んだ線分方向Lを基準にしてバックアップロール回転方向に対して逆方向xを正の値で、該回転方向と同方向yを負の値で示すとき、線分方向Lと、バックアップロールの軸からガス供給管の軸を結んだ線分方向M1とのなす角度αが+15°〜+30°であり、
ガス供給管の軸からバックアップロールの軸を結んだ線分方向M2と、ガス供給管の軸からバックアップロールに対して引いたバックアップロール回転方向上流側の接線方向Nとのなす角度βが30〜60°であるハードコートフィルムの製造方法。
【請求項9】
光源を2つ用い、少なくともバックアップロール回転方向で最上流の光源の近傍に前記ガス供給管を設けた請求項7または8に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂フィルムがセルロースエステルフィルムであり、かつ膜厚が10〜60μmの範囲であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするハードコートフィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−240921(P2009−240921A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90337(P2008−90337)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】