説明

ガス供給装置

【課題】多量のガス供給のために多量の温風が必要な場合でも、筐体からの多量の排気を抑える。
【解決手段】ガス供給装置100は、液化ガスが充填されたガスシリンダー2と、そのガスシリンダー2から排出されたガスを供給するためのガス供給流路11と、導風ガイド3と、温風循環流路4とを備えている。温風循環流路4には、途上に設けられた温風発生器により生成された温風が循環する。導風ガイド3は、ガスシリンダー2を覆う筒状の遮蔽板であり、温風循環流路4の吐出口4aからの温風が流入するガイド吸引口と、温風循環流路4の吸引口4bに吸引されるように温風を排出するガイド吐出口とが設けられ、ガイド吸引口から流入した温風が、ガスシリンダー2との間の空隙を流れて、ガイド吐出口から排出されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給装置に関し、特に、温風により熱を供給して液化ガスの気化を促進するタイプのガス供給装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場等においては、その製造工程で、特有のガス(例えば、毒性を有するガス)を使用しており、通常、そのガスは液化されてシリンダー等の容器に充填されている。また、その液化ガス充填容器は、そのガスが漏洩した場合に備えてシリンダーキャビネットに収納されている。そして、そのガスは、ステンレス鋼製配管等により半導体製造装置に送られ、使用される。
【0003】
上記液化ガス充填容器内に充填された液化ガスは、通常、液相部と、内圧に応じて生じた気相部とに分離しており、ガスはその気相部から供給される。そのように気相部からガスが供給されると、そのガス供給により消費した気相部を補うため、液相から新たに気化が生じる。その際、気化潜熱により熱を奪われて、液化ガス充填容器内の液化ガスの液温が低下する。そして、この液温の低下に伴って、液化ガスの蒸気圧の低下、すなわち液化ガスの供給圧力が低下するという現象が生じることが知られている。
【0004】
ここで、液化ガス充填容器内の液化ガスの液温の低下は、「外部からの入熱量」と「気化潜熱分の熱量損失」との比較において後者が大きいときに生じてしまう。このため、液化ガス充填容器内からのガス供給量が多いほど、気化潜熱による熱量損失が大きくなり、液温低下や供給圧力低下が著しくなる。したがって、液化ガス充填容器内からのガス供給圧力を一定に保持しながら多くのガスを供給し続けるためには、「気化潜熱分の熱量損失」を補うことが必要であり、「外部からの入熱量」を増加させることが重要である。
【0005】
ところで、「外部からの入熱量」を増加させる方法として、加熱源として温水又は温風等を液化ガス容器外面に接触させ、入熱量を増加させる方法が一般に行なわれている(例えば、特許文献1参照)。ここで、交換頻度が高い液化ガス充填容器の場合に、温水による加温システムを使用すると、温水ジャケットの取り付け及び取り外しの労力が多大となるので、温風による加温が一般的であった。
【0006】
図5は、温風により容器に対して外部から熱を供給する構成を有する従来のガス供給装置の一例を示す全体構成図である。同図において、従来のガス供給装置100Pは、その外枠がガスシリンダーキャビネット(ガス供給装置筐体)1Pで構成されている。また、ガス供給装置100Pの内部は、それぞれがガスシリンダーキャビネット1Pを外枠とする第1の空間SP1と、第2の空間SP2とで構成されている。
【0007】
第1の空間SP1には、所定の液化ガスが充填されている第1乃至第4ガスシリンダー(液化ガス充填容器)2−1〜2−4と、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々から排出された各ガスのいずれかが供給可能なように合流経路をなしているガス供給流路11と、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4に対応してガス供給経路11の分岐部分に介在し、各ガスシリンダー2−1〜2−4からのガスの流量を調整するための第1乃至第4弁10−1〜10−4と、第2の空間SP2から延設され、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に対して分岐して温風を供給するための温風供給流路4Pの一部と、が配設されている。また、ガスシリンダーキャビネット1Pの、第1の空間SP1を画定する所定の位置には、外部から換気用空気(環境大気)EAを取り入れるための吸気口(環境大気取込口)1Paと、内部の空気(筐体排気)CEを外部へ排出するための排気口(筐体排気口)1Pbと、が設けられている。
【0008】
第2の空間SP2には、上述のようにその一部が第1の空間SP1に延設される温風供給流路4Pと、温風供給流路4Pの途上に介在し、温風を発生させる温風発生器(加温装置)5と、温風供給流路4P上の温風発生器5の上流に設けられ、温風発生器5で発生した温風を温風供給流路4Pに流すためのファン6とが配設されている。また、ガスシリンダーキャビネット1Pの、第2の空間SP2を画定する所定の位置には、外部から温風供給用空気(温風用環境大気)EAHを取り入れるための吸気口(環境大気取込口)1Pcが設けられている。
【0009】
温風供給流路4Pの、第2の空間SP2内の一端は、吸気口(環境大気取込口)1Pcから取り込まれる温風供給用空気EAHを、ファン6により温風供給流路4P内に吸引できるような位置に配設されている。一方、温風供給流路4Pの、第1の空間SP1内の他端は、前述のように第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に対応して分岐し、排出される温風が各ガスシリンダー2−1〜2−4に吹き付けられるような位置に配設されている。
【0010】
次に、上述のような構成のガス供給装置100Pの動作を簡単に説明する。
前述のように、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に充填されたガスは、対応する第1乃至第4弁10−1〜10−4の開閉による流量制御のもとで、ガス供給流路11を経て、半導体製造装置等に供される。
【0011】
一方、前述のように、各ガスシリンダー2−1〜2−4内において、液化ガスが気化する過程で熱量が奪われて温度が低下し、ひいてはガス供給圧力の低下を引き起こしてしまう。そこで、各ガスシリンダー2−1〜2−4を外部から加熱して内部圧力を保持すべく、前述のように、ファン6による吸引力により、吸気口(環境大気取込口)1Pcからの温風供給用空気EAHが、温風供給流路4P内に取り込まれて、温風発生器5に送られる。温風発生器5に送られた温風供給用空気EAHは、そこで加熱され温風として温風供給流路4Pの下流に送られる。そしてその温風は、温風供給流路4Pの上記他端の各々から排出されて各ガスシリンダー2−1〜2−4に吹き付けられる。それによりガスシリンダー2−1〜2−4は暖められ、その内部は昇圧する。
【0012】
第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に吹き付けられた温風は、その後、排気口(筐体排気口)1Pbから排気される。一方、各ガスシリンダー2−1〜2−4に充填されたガスが第1の空間SP1内に漏れてしまうこともあるため、吸気口(環境大気取込口)1Paという構成を加えられて、第1の空間SP1内の空気の換気を行っている。従って、排気口(筐体排気口1Pb)から排出される総量は、理論上、吸気口(環境大気取込口)1Paから流入する空気EAの量と、吸気口(環境大気取込口)1Pcからの温風供給用空気EAHの量の和である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−338594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、温風を利用した各ガスシリンダー(液化ガス充填容器)2−1〜2−4の加熱方法では、温風発生器5により発生させた温風を当該各ガスシリンダー2−1〜2−4に接触させることによって熱交換を行っており、吹き付け後の温風は、概ね排気口(筐体排気口)1Pbから排気される。これはガスシリンダーキャビネット1P内の内圧を負圧に保つためである。
【0015】
ここで、基本的には、温風温度を上昇させることにより、液化ガス容器への入熱量を増加することが可能であり、結果として所定の供給圧力を維持したまま、より多くの供給流量を払い出すことが可能になるが、高圧ガス保安法の観点から、通常、温風温度は40℃以下に設定される。従って、それに対応した風量が必要となる。
【0016】
また、ガス供給装置によっては、多量の温風、すなわちより多くの「外部からの入熱量」を必要とする場合やときがある。例えば、トータルに多量のガスが必要で、上述のように複数のガスシリンダーや、大型のガスシリンダーを備えた場合、また、短時間に多量のガスが送出される場合である。また、一時的には、ガスシリンダー内の液化ガスが比較的減少した場合(加熱源との接触熱交換面積が減少している)である。
【0017】
従って、これらの場合、温風、言い換えれば外部から温風供給用空気、の量に比例して、筐体排気量も大きくなり、後段の工場設備ブロワー排気量負担を増加させてしまう。
【0018】
ここで、半導体工場の設備(全体もしくは1区画)の排気を請け負うスクラバー(あるいはブロワーを併せたもの)が賄うことができるトータル排気能力には限りがあり、本来は初期設置時に各設備の排気風量バランスを考慮して所定の排気量が与えられる。従って、ガス供給装置の排気風量のみを大幅に増加させることは他設備の排気風量低下を招くため、排気風量変更には工場内他設備の排気風量調節が必要であり、多くの労力が必要とされる。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温風により熱を与えつつ液化ガスを気化して供給するガス供給装置において、多量のガス供給のために多量の温風が必要な場合でも、筐体からの多量の排気を抑えて、ブロワー排気量負担を増加させることがなく、経済性に富んだガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、液化ガスが充填された液化ガス充填容器と、
その液化ガス充填容器から排出されたガスを供給するためのガス供給流路と、
途上に設けられた温風発生器により生成された温風を、前記液化ガス充填容器に吹き付けるための吐出口をその上流端部に有し、前記液化ガス充填容器に吹き付けられ、前記液化ガス充填容器により熱量を奪われた後の温風を、吸い込むための吸引口をその下流端部に有して、前記温風が循環する温風循環流路と、を備えることを特徴とするガス供給装置である。
【0021】
請求項2にかかる発明は、前記液化ガス充填容器を覆う筒状の遮蔽板であり、前記温風循環流路の吐出口からの温風が流入するガイド吸引口と、前記温風循環流路の吸引口に吸引されるように温風を排出するガイド吐出口とが設けられ、前記ガイド吸引口から流入した温風が、前記液化ガス充填容器との間の空隙を流れて、前記ガイド吐出口から排出されるように構成されている導風ガイドを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のガス供給装置である。
【0022】
請求項3にかかる発明は、前記ガイド吸引口が、前記導風ガイドの下端側に設けられ、前記ガイド吐出口は、前記導風ガイドの下端側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のガス供給装置である。
【0023】
請求項4にかかる発明は、前記温風循環流路に混入した漏洩ガスを検出するためのガス漏洩検知手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガス供給装置である。
【0024】
請求項5にかかる発明は、前記温風循環流路上の前記ガス漏洩検知手段の下流に設けられ、前記温風の下流への流れを遮断するためのダンパーを更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のガス供給装置である。
【0025】
請求項6にかかる発明は、前記温風循環流路上の前記温風発生器の上流に設けられ、前記漏洩ガスを吸着除害する除害剤が充填された除害塔を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス供給装置である。
【0026】
請求項7にかかる発明は、外部から換気用空気を取り入れるための吸気口と、内部の空気を外部へ排出するための排気口とを有するガス供給装置筐体を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガス供給装置である。
【0027】
請求項8にかかる発明は、前記ガス供給装置筐体の内部が、隔壁により2つの空間に画定され、前記液化ガス充填容器、前記吸気口、及び前記排気口が、一方の空間に配設され、前記温風発生器は、他方の空間に配設されていることを特徴とする請求項7に記載のガス供給装置である。
【0028】
請求項9にかかる発明は、前記液化ガス充填容器を複数備え、前記温風循環流路は、前記複数の液化ガス充填容器に対応して、前記上流端部及び前記下流端部が分岐していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガス供給装置である。
【0029】
請求項10にかかる発明は、前記液化ガス充填容器を複数備えると共に、その複数の液化ガス充填容器に対応して前記導風ガイドを複数備え、前記温風循環流路は、前記複数の導風ガイドに対応して、前記上流端部及び前記下流端部が分岐していることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか一項に記載のガス供給装置である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のガス供給装置によれば、温風循環流路を備えることにより、多量のガス供給のために多量の温風が必要な場合でも、筐体からの多量の排気を抑え、ブロワー排気量負担を増加させることがなく、経済性を高めることができる。
【0031】
また、導風ガイドを設けることにより、温風により効率的に液化ガス充填容器に熱量を与えることができる。そのとき、ガイド吸引口を下部に設け、ガイド吐出口を上部に設けることにより、その効果が更に顕著となる。
【0032】
また、温風循環流路上にガス漏洩検知手段を設ければ、温風循環流路に混入した漏洩ガスを検出することができる。また、ガス漏洩検知手段に加えて、ダンパーを設ければ、漏洩ガスの検出に応じて、温風循環流路を遮断し、漏洩ガスが温風発生器に到達することを防止して、火災発生を未然に防ぎ、また、腐食も防止できる。更に、除害塔を設ければ、ガス漏洩検知手段による漏洩ガスの検出までに温風循環流路に混入してしまった、漏洩ガスを吸着除害することができる。
【0033】
また、ガス供給装置筐体に、外部から換気用空気を取り入れるための吸気口と、内部の空気を外部へ排出するための排気口とを設ければ、基本的に漏洩ガスを排出できる。
【0034】
また、ガス供給装置筐体の内部を、隔壁により2つの空間に画定し、液化ガス充填容器、吸気口、及び排気口を、一方の空間に配設し、温風発生器を、他方の空間に配設することにより、液化ガス充填容器から漏れたガスが、容易には温風発生器に到達しない。
【0035】
また、複数の液化ガス充填容器及び複数の導風ガイドを設ける場合にも対処でき、複数の液化ガス充填容器を暖める大量の熱量が必要な場合でも、排気を多量としないという効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明を適用した一実施形態であるガス供給装置の全体構成図である。
【図2】図2は、ガス供給装置の第1の空間部分の斜視図である。
【図3】図3は、ガス供給装置の第1の空間部分の側面図である。
【図4】図4は、ガス供給装置の第1の空間部分の平面図である。
【図5】図5は、温風により容器に対して外部から熱を供給する構成を有する従来のガス供給装置の一例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を適用した一実施形態であるガス供給装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態におけるガス供給装置100の全体構成図である。図2は、ガス供給装置100の第1の空間SP1部分の斜視図である。図3は、ガス供給装置100の第1の空間SP1部分の側面図である。図4は、ガス供給装置100の第1の空間SP1部分のである。但し、図2乃至図4においては、図1に示したものとは異なり、ガスシリンダーを2本に省略して示している。これらの数の相違は、本発明の本質に影響を与えない。
【0039】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るガス供給装置100は、その外枠(筐体)がガスシリンダーキャビネット(ガス供給装置筐体)1で構成されている。また、ガス供給装置100の内部は、それぞれがガスシリンダーキャビネット1を外枠とする第1の空間SP1と、第2の空間SP2とで構成されている。
【0040】
第1の空間SP1には、所定の液化ガスが充填されている第1乃至第4ガスシリンダー(液化ガス充填容器)2−1〜2−4と、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々から排出された各ガスのいずれかが供給可能なように合流経路をなしているガス供給流路11と、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4に対応してガス供給経路11の分岐部分に介在し、各ガスシリンダー2−1〜2−4からのガスの流量を調整するための第1乃至第4弁10−1〜10−4と、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に対応して設けられた第1乃至第4導風ガイド3−1〜3−4と、第2の空間SP2に跨る温風循環流路4の一部とが配設されている。なお、本実施形態のガス供給装置100に適用する弁10として、減圧弁、流量調整弁、エアー弁等の流量調整可能な機器を用いてもよい。
【0041】
ここで、第1乃至第4導風ガイド3−1〜3−4の各々は、対応したガスシリンダー2−1〜2−4の下部から胴部を概ね覆う筒状の遮蔽板であり、その下端側に、温風が流入する吸引口が設けられ、その上端側に、温風を排出する吐出口が設けられ、その吸引口から流入した温風が、当該ガイドと対応するガスシリンダー2との間を流れて、吐出口から排出されるような構成になっている。
【0042】
また、第1の空間SP1内の温風循環流路4は、その下流端部と上流端部の部分であり、その中央部分は、後述のように、第2の空間SP2に属している。上記下流端部は、各ガスシリンダー2−1〜2−4に対応して分岐しており、それぞれの先端の吐出口4a−1〜4a−4は、その各々から排出される温風が、上述の導風ガイド3−1〜3−4の吸引口に流入するような位置に配置されている。一方、上記上流端部は、上述の導風ガイド3−1〜3−4の吐出口から排出された温風が流入するように配置された吸引口4b−1〜4b−4をその先端に有する各分岐路と、それらが合流して形成される合流路とで構成されている。
【0043】
なお、各導風ガイド3−1〜3−4の吸引口と、温風循環流路4の吐出口4a−1〜4a−4は、各ガスシリンダー2−1〜2−4の底部の中心に形成され、また位置付けされることが好ましい。また、温風循環流路4の吸引口4b−1〜4b−4は、対応する導風ガイド3−1〜3−4の上端部の側面に位置付けされてもよいし、その上端部の上方に位置付けられてもよい。また、基本的には、温風循環流路4の吐出口4a−1〜4a−4から吐出される温風の量と、吸引口4b−1〜4b−4から吸引される温風の量は、等しい。
【0044】
また、ガスシリンダーキャビネット1の、第1の空間SP1を画定する所定の位置には、外部から換気用空気(環境大気)EAを取り入れるための吸気口(環境大気取込口)1aと、内部の空気(筐体排気)CEを外部へ排出するための排気口(筐体排気口)1bと、が設けられている。
【0045】
一方、第2の空間SP2には、温風循環流路4の中央部分と、温風循環流路4の途上に介在し、温風を発生させる温風発生器(加温装置)5と、温風循環流路4上の温風発生器5の上流に設けられ、温風発生器5で発生した温風を温風循環流路4に流すためのファン6と、温風循環流路4に流入した漏洩ガスを検出するためのガス漏洩検知器7と、温風循環流路4上のガス漏洩検知器7の下流に設けられ、温風の下流への流れを遮断するためのダンパー8と、温風循環流路4上のファン6の上流に設けられ、対象ガスを吸着除害する除害剤が充填された除害塔9と、が配設されている。
【0046】
次に、上述のような構成のガス供給装置100の動作を説明する。
前述のように、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に充填されたガスは、対応する第1乃至第4弁10−1〜10−4の開閉による流量制御のもとで、ガス供給流路11を経て、半導体製造装置等に供される。なお、かかるガスの供給は、予めプログラムされた過程に沿うように自動制御により実現可能である。
【0047】
一方、前述のように、各ガスシリンダー2−1〜2−4内において、液化ガスが気化する過程で熱量が奪われて温度が低下し、ひいてはガス供給圧力の低下を引き起こしてしまう。そこで、各ガスシリンダー2−1〜2−4を外部から加熱して内部圧力を保持すべく、前述のように、温風発生器5で発生した温風を、ファン6により各ガスシリンダー2−1〜2−4に吹き付ける。詳細には、温風発生器5で発生した温風は、温風循環流路4を下流に流れ、各吐出口4a−1〜4a−4から排出される。各吐出口4a−1〜4a−4から排出された温風は、各導風ガイド3−1〜3−4の吸引口から流入し、各ガスシリンダー2−1〜2−4の下部に吹き付けられる。
【0048】
第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に吹き付けられた温風は、その後、各ガスシリンダー2−1〜2−4と、対応する各導風ガイド3−1〜3−4の間を上昇し、その上昇の過程で、各ガスシリンダー2−1〜2−4を暖める。つまり、導風ガイド3−1〜3−4は、ガスシリンダー2−1〜2−4を効率よく暖める機能を果たしている。各ガスシリンダー2−1〜2−4が暖められると、その内部は昇圧し、液化ガスの気化が促進される。
【0049】
各ガスシリンダー2−1〜2−4と、各導風ガイド3−1〜3−4の間を上昇しきって熱量が奪われた温風は、各導風ガイド3−1〜3−4の上端にある吐出口から流出し、温風循環流路4の上流端の各吸引口4b−1〜4b−4から吸引される。各吸引口4b−1〜4b−4から吸引された温風は、ファン6の機能により、再び温風発生器5に送られ、そこで再び昇温され、循環を繰り返す。
【0050】
なお、換気用空気(環境大気)EAは、第1乃至第4導風ガイド3−1〜3−4のそれぞれの間を上昇する。
【0051】
本発明の一実施形態のかかる構成によれば、第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4の各々に吹き付けられた後の温風を、排気口(筐体排気口)1bから排出させることなく、循環させて利用しているので、多量のガス供給のために多量の温風が必要な場合でも、筐体からの多量の排気を抑えて、ブロワー排気量負担を増加させることがない。因みに、この場合、排気口(筐体排気口)1bから排出される排気CEは、理論的には、温風循環流路4を循環する温風の量に関わらず、吸気口(環境大気取込口)1aから流入させる換気用空気(環境大気)EAの量に等しいことになる。
【0052】
加えて、外気を吸引して加熱するよりも、少ない熱量で温風を調整することができるので、温風発生器5が消費する電力を抑えることが可能となる。
【0053】
ところで、各ガスシリンダー2−1〜2−4に充填されたガスが第1の空間SP1内に漏れてしまうこともあるため、従来と同様、吸気口1aという構成を加えて、第1の空間SP1内の空気の換気を行っている。また、その漏れたガスが温風発生器5に容易に到達しないように2つの空間SP1及びSP2を設けて、温風発生器5を第2の空間SP2に配設している。
【0054】
しかしながら、上述のように温風循環流路4を構成すると、少量にしても、かかる漏れたガスが各吸引口4b−1〜4b−4から流入して温風循環流路4内の温風に混入してしまう可能性がある。このとき、供給ガスが可燃性ガスであるときに、温風発生器5が着火源となり火災発生のリスクが生じる。また、供給ガスが腐食性ガスの場合には設備腐食するリスクもある。従って、本発明では、前述のように、以下の構成を備えるようにした。
【0055】
すなわち、温風循環流路4の第2の空間SP2内の最上流に設けられたガス漏洩検知器7が、温風循環流路4に流入した漏洩ガスがあれば、それを検出する。ガス漏洩検知器7により温風循環流路4内に漏洩ガスが検出された場合には、その漏洩ガスが、温風発生器5に達するのを阻止すべく、ダンパー8により、温風の循環を遮断する。あるいは、又は併せて、温風発生器5を停止させる。
【0056】
また、ガス漏洩検知の際には、筐体排気風量を調整しエネルギー効率を上昇させていた筐体排気風量調整用ダンパー12を全開にする機能も持たせることで、漏洩ガスを速やかに筐体外へと排気させることが可能である。つまり、筐体排気風量調整用ダンパー12の調整により、温風循環流路4に回収する温風と、換気用空気(環境大気)EAの吸引量とに比率が調整可能となっている。
【0057】
一方、一般的なガス漏洩検知器7による漏洩検知においては、検出にある程度(およそ30〜60秒)の時間を要する。従って、検出と判定された時点においては、既に下流に流れて温風発生器5に到達している危険性もある。そこで、ガス漏洩検知器7の検出時間のおよそ2倍以上を許容する量の除害剤を充填した除害塔9を温風発生器5の直前に設置することにより、ガス漏洩検知器7がガス漏洩検知結果出力に要する時間に、その漏洩可燃性ガスが温風発生器5(着火源)と接触するリスクを低減させる。
【0058】
なお、上述の一実施形態のガス供給装置においては、温風循環流路4からの温風が、一律に第1乃至第4ガスシリンダー2−1〜2−4に吹き付けられる構成となっているが、温風循環流路4の下流端部の分岐部分の各々に弁を設けて、例えばガス供給プログラムによる弁10−1〜10−4の制御に同期させて、必要なガスシリンダーのみに温風を供給するような構成としてもよい。
【0059】
また、図2乃至図4に示した、ガスシリンダーキャビネット1内の各ガスシリンダー2の配置は、一例であり、これに限定されることはない。ただ、交換作業を考慮すると、キャビネットに設けられた図示略の開口部から、各シリンダーが目視できるように、直列に配置することが好ましい。加えて、ガスシリンダー2と導風ガイド3との間の流路(温風の流路)と、導風ガイド3のそれぞれの間の流路(換気用空気の流路)とのバランスを考慮して、配置することが好ましい。
【0060】
更に、温風循環流路4を温風が流れる際の熱量損失を軽減するため、その上流端部及び下流端部に断熱材を巻くことが好適である。
【0061】
<実施例1>
以下の具体的データのもとで、上述の一実施形態たるガス供給装置を実際に検証した。すなわち、ガスシリンダーキャビネット1の容量を1mとし、温風発生器5から発生させる温風の設定温度を35℃とし、その温風を、1m/minで各ガスシリンダー2−1〜2−4の下部に吹き付けて接触熱交換させる。
【0062】
また、従来と同様、ガスシリンダーキャビネット内の圧力が負となるように、少なくとも換気率を10回/hr(筐体体積×10回/1時間)とし、吸気口(環境大気取込口)1aから流入させる換気用空気(環境大気)EAの量を、0.2m/minに設定した。
【0063】
そこで、従来においては、1m/minの環境大気(およそ20℃)を、温風発生器5により35℃まで加熱して吐出し、およそ1.2m/minの筐体排気を行っていたが、本発明の実施形態において上述の条件を設定すると、温風発生時に温風発生器5に戻される循環温風は27〜29℃であり、35℃の温風を発生させるために温風発生器5が加えなければならない熱量は大幅に減少した。その結果、全体の電力消費量としておよそ30%の削減がなされた。
【0064】
以上のように、本発明のガス供給装置の一実施形態によれば、温風により熱を与えつつ液化ガスを気化して供給するガス供給装置100において、多量のガス供給のために多量の温風が必要な場合でも、筐体からの多量の排気を抑えて、ブロワー排気量負担を増加させることがなく、それにより経済性が増す。
【0065】
また、温風を温風循環流路4によりガスシリンダーキャビネット1内で循環させることによる漏洩ガスの循環という事態に対処すべく、ガス漏洩検知器7、ダンパー8、及び除害塔9を設けたので、火災発生や設備腐食等のリスクを抑えている。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のガス供給装置は、温風によりガスシリンダーに熱を与えて液化ガスの気化を促進するタイプのガス供給装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
100・・・ガス供給装置
1・・・ガスシリンダーキャビネット(ガス供給装置筐体)
1a・・・吸気口(環境大気取込口)
1b・・・筐体排気口
2・・・ガスシリンダー(液化ガス充填容器)
3・・・導風ガイド
4・・・温風循環流路
5・・・温風発生器
6・・・ファン
7・・・ガス漏洩検知器
8,12・・・ダンパー
9・・・除害塔
10・・・弁
11・・・ガス供給流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスが充填された液化ガス充填容器と、
その液化ガス充填容器から排出されたガスを供給するためのガス供給流路と、
途上に設けられた温風発生器により生成された温風を、前記液化ガス充填容器に吹き付けるための吐出口をその上流端部に有し、前記液化ガス充填容器に吹き付けられ、前記液化ガス充填容器により熱量を奪われた後の温風を、吸い込むための吸引口をその下流端部に有して、前記温風が循環する温風循環流路と、を備えることを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
前記液化ガス充填容器を覆う筒状の遮蔽板であり、前記温風循環流路の吐出口からの温風が流入するガイド吸引口と、前記温風循環流路の吸引口に吸引されるように温風を排出するガイド吐出口とが設けられ、前記ガイド吸引口から流入した温風が、前記液化ガス充填容器との間の空隙を流れて、前記ガイド吐出口から排出されるように構成されている導風ガイドを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記ガイド吸引口は、前記導風ガイドの下端側に設けられ、前記ガイド吐出口は、前記導風ガイドの下端側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記温風循環流路に混入した漏洩ガスを検出するためのガス漏洩検知手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記温風循環流路上の前記ガス漏洩検知手段の下流に設けられ、前記温風の下流への流れを遮断するためのダンパーを更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のガス供給装置。
【請求項6】
前記温風循環流路上の前記温風発生器の上流に設けられ、前記漏洩ガスを吸着除害する除害剤が充填された除害塔を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項7】
外部から換気用空気を取り入れるための吸気口と、内部の空気を外部へ排出するための排気口とを有するガス供給装置筐体を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項8】
前記ガス供給装置筐体の内部は、隔壁により2つの空間に画定され、前記液化ガス充填容器、前記吸気口、及び前記排気口は、一方の空間に配設され、前記温風発生器は、他方の空間に配設されていることを特徴とする請求項7に記載のガス供給装置。
【請求項9】
前記液化ガス充填容器を複数備え、前記温風循環流路は、前記複数の液化ガス充填容器に対応して、前記上流端部及び前記下流端部が分岐していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項10】
前記液化ガス充填容器を複数備えると共に、その複数の液化ガス充填容器に対応して前記導風ガイドを複数備え、前記温風循環流路は、前記複数の導風ガイドに対応して、前記上流端部及び前記下流端部が分岐していることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか一項に記載のガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96456(P2013−96456A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237825(P2011−237825)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】