説明

ガス分析装置

【課題】測定対象物質に当たると透過率が減衰する所定波長(例えば赤外領域)の測定光と、減衰のない別波長のリファレンス光とを、測定対象物質を含んだサンプルガスに照射し、前記リファレンス光との比較における測定光の減衰量からサンプルガス内の測定対象物質濃度を測定することができるように構成したガス分析装置において、インラインでのガス分析に適した構造とし、周囲温度の変化にも測定精度を担保でき、コンパクト化を可能とする。
【解決手段】光源2を収容保持する光源保持構造体6と、その光源保持構造体6とはセル1を挟んで別体で設けられ、光検出器41、42を収容保持する光検出器保持構造体7と、前記光源保持構造体7の単独での温度調節が可能な光源側温度調節機構8とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一光源から測定対象物質に当たると透過率が減衰する所定波長(例えば赤外領域)の測定光と、減衰のない別波長のリファレンス光とを、測定対象物質を含んだサンプルガスに照射し、前記リファレンス光との比較における測定光の減衰量からサンプルガス内の測定対象物質濃度を測定することができるように構成したガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非分散型赤外線分析計などに代表されるこの種の光学式分析装置では、例えばフィラメントを用いた白熱光源を利用してバンド幅の広い光を発生し、その光をサンプルガスに照射している。そしてサンプルガスを透過した光を光学フィルタによって測定光とリファレンス光に分離し、分離した各光をそれぞれ一対の光検出器に導いてその光量を測定するようにしている。
【0003】
ところで、この種の光学式分析装置での測定誤差の要因として周囲温度変化の影響が大きいことから、従来は、セル、光源、光検出器等の構成機器のほぼ全部をケーシングで覆い、ケーシング内温度を一定に保つことで周囲温度の影響をキャンセルするようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
また周囲温度変化の影響は、光検出器側で顕著であるとして、光検出器側のみの温度調整を可能にした構成のものも知られている。
【0005】
しかしながら、前者のものであると、プロセス中の流通しているガスを直接インラインで分析するといった要求に対しては、セルをフロータイプのものにして外部ガス配管に接続するといったことが必要になり、前記構成機器をケーシングで覆って温調するという構造を実現することが非常に困難となる。またケーシング内全体を温調することは消費電力や装置サイズを大きくしてしまう要因ともなる。
【0006】
また、後者のものであると、確かに構造上、インライン分析には適したものにできるが、Sなど、所定の吸収波長を有したガスの測定を、ある条件で行うと測定結果が不安定になって大きな誤差を生じる場合がある。
【0007】
【特許文献1】特開2003−270144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、前述した測定結果の誤差原因を、鋭意検討の結果明らかにして初めてなされたものであって、インラインでのガス分析に適した構造を有し、周囲温度の変化による測定誤差が非常に小さく、さらにコンパクト化が可能なガス分析装置を提供することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、この種のガス分析装置において、光源の温度が例えば周囲温度により変動すると、発光スペクトルが非相似的に変化し、光源から射出された時点でのリファレンス光と測定光との比率が変わって測定誤差や不安定性の要因となる。特に、例えば測定対象物質の吸収波長域近傍に吸収波長域を有する別の物質があるなどのことから、リファレンス光と測定光との波長域を大きく離さなければならない場合、前記比率の変化が大きくなって、測定誤差が顕著となる。
【0010】
本発明者は、測定誤差の原因の1つがが上述した点にあることを、初めて明らかにしたものであり、このことに基づいて完成された本発明にかかるガス分析装置は、測定対象物質を含んだサンプルガスを収容するセルと、前記セルに設けた光導入窓及び光導出窓と、前記測定対象物質に照射されると減衰する測定光及び前記測定対象物質に照射されても実質的に減衰しないリファレンス光を、前記光導入窓を介してセル内に照射する光源と、セル内を通って前記光導出窓から導出された測定光及びリファレンス光を分離する分離手段と、分離された測定光及びリファレンス光をそれぞれ受光する光検出器と、を備え、前記光検出器によるリファレンス光の出力値との比較における前記測定光の出力値の減衰量をパラメータとして、前記測定対象物質の濃度を測定するようにしたものであって、前記光源を収容保持する光源保持構造体と、その光源保持体とはセルを挟んで別体で設けられ、前記光検出器を収容保持する光検出器保持構造体と、前記光源保持構造体側に設けられ、光源の周囲温度調節を光検出器側とは切り離して別個に行うことが可能な光源側温度調節機構と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、光源保持構造体と光検出器保持構造体とを分離させながらも、光源側温度調節機構によって光源の周囲温度を単独で安定に保つことができるため、測定誤差を小さくして高精度かつ安定な測定をすることが可能になる。また、構成機器全体を収容するようなケーシングを不要にして、コンパクトでなおかつインラインでのガス分析用途に適した構造を実現できる。さらに、従来のようにケーシング全体を温度調節するよりも、光源保持構造体のみの温度調節は、熱容量が小さくなる分、容易かつ短時間ででき、例えば、測定開始前の温度安定までのアップ時間を短縮できる。
【0012】
この種のガス分析装置では、光源からの光を周期的にON/OFF(光源変調)し、ON時とOFF時とのそれぞれにおける光検出器の出力値の差をもって、光量測定値とすることがしばしば行われる。しかして、インラインでのガス分析では、メンテナンスフリーや安定性などが重視されるため、この光源変調方式として、振動などの外乱影響が少ない光源電圧変調方式、すなわち光源供給電力のON/OFF制御によって光を周期的にON/OFFするようにしたものが好ましい。
【0013】
ところで、この光源電圧変調方式を採用した場合には、光源側の周囲温度が変動すると、測定光の波長によっては、OFF時における光検出器の出力値がその変動影響を受け、測定誤差がさらに大きくなるおそれがある。しかし本発明によれば、光源側温度調節機構によってそういった現象が解消され、好適な測定を行える。
【0014】
一方、光検出器の周囲温度も測定誤差の原因となり得るため、前記光検出器保持構造体側に設けられ、光検出器の周囲温度調節を光源側とは切り離して別個に行うことが可能な光検出器側温度調節機構をさらに備えていれば、より高精度で安定した測定が可能になる。
【0015】
具体的な実施態様としては、前記光源側温度調整機構が、ヒータと、そのヒータの出力を制御する制御部とからなるものを挙げることができる。
【0016】
ヒータの好ましい取付態様としては、前記光源保持構造体が、光源を収容するブロック状の光源保持本体と、その光源保持本体に付随する付随部材とを備えており、前記ヒータを、前記光源保持本体の外壁面に貼り付けているものを挙げることができる。
【0017】
制御部は、光源の周囲温度がある一定値となるようにヒータ出力を制御してもよいし、光検出器によるリファレンス光の出力が一定となるようにヒータの出力を制御するようにしてもよい。
【0018】
セルは、インライン測定では必然的にフロータイプのものとなり、サンプルガスの流入温度による温度影響を少なからず受ける場合がある。そこで、前記光源保持構造体を、第1の断熱材を介してセルに取り付けるようにしておけば、セルの温度変化の影響を抑制して、さらに精度の良い測定が可能になる。同様に、前記光検出器保持構造体を、第2の断熱材を介してセルに取り付けておけばなお良い。
【0019】
光路の温度変動をも抑制するには、前記第1の断熱材に設けた貫通孔によって、前記光源保持構造体から光導入窓に至るまでの光路を形成し、また前記第2の断熱材に設けた貫通孔によって、前記光導出窓から光検出器保持構造体に至るまでの光路を形成しておくことが好ましい。
【0020】
本発明の効果が特に顕著となるのは、前記測定光及びリファレンス光が赤外光の場合である。
【発明の効果】
【0021】
以上に説明したように、本発明によれば、インラインでのガス分析に適した構造を有し、周囲温度の変化による測定誤差が非常に小さく、さらにコンパクト化が可能なガス分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態に係るガス分析装置100は、所定波長の赤外線(測定光L1)をサンプルガスに照射し、その減衰率(透過率)からサンプルガス中に含まれる測定対象物質の濃度を算出する、いわゆる非分散型赤外線ガス分析装置と称されるものであり、例えば図示しない半導体成膜装置の一部として、成膜室内のクリーニング工程の終了時点管理に用いている。
【0024】
すなわち、前記クリーニング工程では、クリーニングガス(例えばFやCF)を成膜室内に導入し、その内壁に残存するシリコン系物質と反応させてこれらを排気除去するが、クリーニングが完了するとその反応により生成される物質(例えばS)の濃度がほぼ0になる。そこで、このガス分析装置100を成膜室からのクリーニングガス排気経路上にインラインで設け、その排気クリーニングガス中に含まれるSの濃度をリアルタイムでモニタすることによって、その濃度が実質的に0になった時点を検出し、クリーニングガスの供給を停止してクリーニング工程を終了するようにしている。
【0025】
かかるガス分析装置100は、図1に詳細構成を、図2に基本機能構成を示すように、セル1、光源2、光学フィルタ3、一対の光検出器41、42、情報処理機構5等を備えている。
【0026】
セル1は、両端を開口させた円筒状をなすフロータイプのものであり、測定対象物質であるSを含んだサンプルガス(クリーニングガス)を一端開口部から導入し、他端開口部から導出して、サンプルガスがこのセル1内を軸方向に流れていくように構成してある。このセル1は、非透明金属で形成してあり、側周面には図示しないヒータが取り付けられて一定の温度となるように調節されている。また、壁体の対向する部位には、ガラスなどで封止した光導入窓11及び光導出窓12がそれぞれ設けてあり、これら窓11、12を介して軸方向(ガスの流れ方向)と直交する方向に、セル外部から光を透過させ得るように構成してある。
【0027】
光源2は、例えばフィラメントを熱して発光させる白熱タイプのものである。光源2は単一であり、測定対象物質であるSに照射されると減衰する測定光L1及び前記測定対象物質に照射されても実質的に減衰しないリファレンス光L2を含むブロードな帯域の光を照射する。なお、ここでの測定光L1は波長約10μm、リファレンス光L2は、波長約4μmの赤外線である。このように測定光とリファレンス光との波長域を、大きく異ならせているのは、前記排気クリーニングガス中に、測定対象物質であるSの吸収波長域に近い吸収波長域を有したガスが存在し、このガスによるリファレンス光L2の吸収を防止するためである。
【0028】
分離手段である光学フィルタ3は、薄板状をなすもので、その半分の領域を占め前記測定光L1のみを通過させる第1フィルタ31(図2に示す)と、残りの領域を占め前記リファレンス光L2のみを透過させる第2フィルタ32(図2に示す)とからなる。
【0029】
一対の光検出器41、42にはパイロセンサを用いている。一方の光検出器41は前記第1フィルタ31に、また他方の光検出器42は前記第2フィルタ32に臨んで設けられており、各フィルタ31、32を通過した測定光L1及びリファレンス光L2を、各光検出器41、42がそれぞれ受光して、その受光光量に応じた値の電気信号を出力する。
【0030】
情報処理機構5は、前記光検出器41、42からの信号を受信してその出力値からSの濃度を算出するとともに、光源2などの電気制御可能な機器を制御するものである。この情報処理機構5は、コンピュータやアナログ−デジタル変換回路などの電気回路で構成されるもので、互いに通信接続した複数の機器からなる。図1ではその一部を示しており、他の部分は図示していない。なお、この情報処理機構5は、他のコンピュータと通信可能に接続することもできるし、物理的に一体に構成しても構わない。また、コンピュータを用いずにディスクリート回路で構成してもよい。
【0031】
次に、このように構成したガス分析装置100による測定対象物質(S)の濃度測定の手順概要を説明する。
【0032】
前提として、サンプルガスはマスフローコントローラなどにより、一定流量で流れているものとする。
【0033】
まず、情報処理機構5が、光源2への供給電圧を周期的にON/OFF制御する。ここでの周期は約1Hzである。次にON時、OFF時それぞれでの各光検出器41、42の出力値を取得し、ON時とOFF時との出力値の差をそれぞれ算出する。このようにして算出された、測定光L1用の光検出器41の出力値差が、測定光L1の実測光量を表し、リファレンス光L2用の光検出器42の出力値差が、リファレンス光L2の実測光量を表す。なお、光源電圧をOFFにしても、残存熱等による赤外光が光源2から発せられるため、各光検出器41、42の出力は、相応の値を有する。
【0034】
次に、情報処理機構5は、リファレンス光L2の前記実測光量が、予め測定しておいたリファレンス光L2の基準光量と比べどの程度変化しているのかを示す変化比を算出する。そして、その変化比をもって、測定光L1の実測光量を補正する。これは、光検出器41、42で測定される光量が、光路途中の窓の汚れなどによって経時変化する影響をキャンセルするためである。
【0035】
最後に情報処理機構5は、このようにして算出した測定光L1の光量補正値と、予め濃度0のゼロガスで測定しておいた光量測定値とから、測定光L1の減衰率を算出し、その減衰率に基づいて、サンプルガス中のSの濃度を算出する。
【0036】
しかして、この実施形態に係るガス分析装置100は、前記光源2を収容保持する光源保持構造体6と、その光源保持構造体6とはセル1を挟んで熱的にほぼ切り離されて別体で設けられ、前記光検出器41、42を収容保持する光検出器保持構造体7と、光源2の周囲温度調節を行うことが可能な光源側温度調節機構8と、光検出器41、42の周囲温度調節を行うことが可能な光検出器側温度調節機構9とをさらに備えていることを特徴とする。
【0037】
光源保持構造体6は、図1、図3に示すように、第1の断熱材P1を介してセル1の光導入窓11側の側面に取り付けられており、光源2を収容する光源保持本体61と、その付随部材、例えばこの光源保持本体61を、第1の断熱材P1に取り付けるための取付板62や光源保持本体61をほぼ気密に覆うカバー体63など、を備えてなる。
【0038】
光源保持本体61は、厚肉円筒形をなすブロック状のものであり、より具体的には、段付き円柱体の中心軸に沿って挿通孔61aを設けてなる形状をなす。光源2は、その挿通孔61aの外方端側開口部から円筒状スペーサ64を介在させて嵌め込まれており、この状態で、光源2を搭載する配線基板21が、前記挿通孔61aの外方端側開口部を閉塞する。一方、前記挿通孔61aの内方端側開口部には、ガラス等の透光板65が嵌め込まれており、この透光板65と配線基板21とによって、光源2はこの挿通孔61a内に、ほぼ気密状態で収容される。
【0039】
第1の断熱材P1は、概略直方体ブロック形状をなすものであり、その内側面をセル1に取り付けられ、その外側面には前記光源保持構造体6が取り付けてある。またこの断熱材P1の中央付近には貫通孔H1が設けられており、この貫通孔H1の外方端側開口部が、前記光源保持本体61における挿通孔61aの内方端側開口部に臨むとともに、この貫通孔H1の内方端側開口部が、前記セル1の光導入窓11に臨むように配置されている。そして、前記挿通孔61a及びこれに連続する貫通孔H1によって、光源2から光導入窓11に至るまでのほぼ気密となる光路が形成される。
【0040】
光検出器保持構造体7は、図1に示すように、概略直方体ブロック状をなす第2の断熱材P2を介して、セル1の光導出窓12側の側面に取り付けられたものであり、光検出器41、42や光学フィルタ3を収容する光検出器保持本体71と、その付随部材、例えば光検出器保持本体71を第2の断熱材P2に取り付けるための取付板72や光検出器保持本体71をほぼ気密に覆うカバー体73など、を備えてなる。
【0041】
光検出器保持本体71は、前記断熱材P1と同じ断熱性素材で形成したブロック状をなすもので、途中で直角に屈曲する挿通孔71aを内部に挿通させてある。光検出器41、42は、その挿通孔71aの外方端側開口部に環状部材74を介して嵌め込まれており、この光検出器41、42の受光面に臨む位置に前記光学フィルタ3が配置されている。そして、当該挿通孔71aの外方端側開口部を、光検出器41、42を搭載する配線基板43が閉塞する一方、前記挿通孔71aの内方端側開口部を、前記光学フィルタ3が閉塞している。すなわち、これら光学フィルタ3と配線基板43とによって、光検出器41、42が、この挿通孔71a内にほぼ気密状態で収容される。また、この挿通孔71aの屈曲部分には、45度に傾斜させたわずかに凹形状の反射ミラーMが配置してあって、セルを通過してきた光をこの反射ミラーMが反射して光検出器41、42に導く。
【0042】
第2の断熱材P2は、内側面をセル1に取り付けられ、外側面には前記光検出器保持構造体7を取り付けてなるもので、その中央付近には貫通孔H2が設けてある。この貫通孔H2の外方端側開口部は、前記光検出器保持本体71における挿通孔71aの内方端側開口部に臨み、この貫通孔H2の内方端側開口部は、前記セル1の光導出窓12に臨むように配置されている。そして、この貫通孔H2挿通孔71aによって、光導出窓12から光検出器41、42に至るほぼ気密状態の光路が形成される。
【0043】
光源側温度調節機構8は、前記光源保持本体61の例えば大径部外周面(外壁面)に巻き付けた帯状のテープヒータ81と、光源保持本体61を一定温度に保つべく、ヒータ81への電力供給量を制御してその出力をコントロールする図示しない制御部とを備えている。ここでは制御部として、ヒータ81への電流をON/OFF制御する熱電対を用いているが、温度センサと前記情報処理機構5によって、ヒータ81への電力供給量を制御するようにしてもよい。このような構成により、この光源側温度調節機構8は、光源保持本体61の温度、すなわち光源2の周囲温度の調節を、光検出器41、42や光検出器保持構造体7の温度にほぼ影響を与えることなく別個に行うことが可能である。なお、テープヒータ81あるいは光源保持本体61の温度は、周囲外気温以上の温度で、なおかつ光源2をOFFしたときの光源2の温度よりも低い温度が好ましい。ちなみにこの実施形態では、その温度を55℃に保つように制御している。
【0044】
光検出器側温度調節機構9も、光源側温度調節機構8とほぼ同じ構成であり、前記環状部材74の外周面に貼り付けたテープヒータ91と、環状部材74を一定温度に保つべく、前記テープヒータ91への電力供給量を制御してその出力をコントロールする制御部(図示しない)とを備えている。そしてこのような構成により、この光検出器側温度調節機構9は、環状部材74の温度、すなわち光検出器4の周囲温度の調節を、光源2や光源保持構造体6の温度にほぼ影響を与えることなく別個に行うことが可能である。
【0045】
このように構成した本実施形態に係るガス分析装置100によれば、光源保持構造体6と光検出器保持構造体7とを分離させており、構成機器全体を収容するようなケーシングを不要としているので、コンパクトでなおかつインラインでのガス分析用途に適した無理のない構造を実現できる。
【0046】
しかも、光源側温度調節機構8によって光源2の周囲温度を安定に保つことができるため、光源2から射出された時点でのリファレンス光L2と測定光L1との比率を可及的に一定に保つことができ、周囲温度の影響を排除して高精度な測定ができるようになる。さらに、従来のようにケーシング全体を温度調節するよりも、光源保持構造体6のみの温度調節は、熱容量が小さくなる分、容易かつ短時間でできるため、例えば、測定開始前の温度安定までのアップ時間を短縮できる。
【0047】
また、インラインでのガス分析で重要視されるメンテナンスフリーや安定性などを実現すべく、このガス分析装置100では、前述したように光源電圧変調方式を採用しているため、通常であれば、OFF時における光源2側の周囲温度が変動すると、その変動影響を受けてさらに測定誤差がより大きくなるが、光源側温度調節機構8によって、その現象が解消されるため、高精度な測定を担保できる。
【0048】
一方、光検出器41、42の周囲温度も測定誤差の原因となり得るが、このガス分析装置100では、前記光検出器保持構造体7を単独で温度調節する光検出器側温度調節機構9を別個に設けて、その問題を解決している。
【0049】
また、温調機構8にテープヒータ81を採用して、単に光源保持本体61に貼り付けているだけなので、構造の簡単化とコンパクト化を図れる。
【0050】
最後に、周囲温度を変化させたときの出力の変化を、光源2を温調したときとそうでないときとの場合に分けて、それぞれ図4、図5に示す。本ガス分析装置100の温調機構8、9によって測定精度が大きく向上しているのがわかる。なお、図4、図5でR.T.は室温(外気温)を示し、Outputが測定値を示す。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、光源側温度調節機構として、リファレンス光の検出光量をFBしてヒータの出力を制御するようにしてもよいし、セルにガスが流れていない場合は、測定光の検出光量をFBしてヒータの出力を制御するようにしてもよい。さらにヒータはテープヒータに限られず、光源を筐体に入れてその内部空間を温調するようにしてもよい。また、光は赤外線の限られたものではなく、可視光や紫外線を利用したものでも構わない。
【0052】
その他、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態であるガス分析装置の構成を概略的に示す全体概略図である。
【図2】同実施形態に係るガス分析装置の基本機能構成を示す模式図。
【図3】同実施形態に係るガス分析装置の光源保持構造体を主として示す斜視図。
【図4】同実施形態に係るガス分析装置の温調機構を作用させたときの、周囲温度の変化に対する出力値の変化を示す実験グラフ。
【図5】同実施形態に係るガス分析装置の温調機構を作用させていないときの、周囲温度の変化に対する出力値の変化を示す実験グラフ。
【符号の説明】
【0054】
100・・・ガス分析装置
1・・・セル
11・・・光導入窓
12・・・光導出窓
2・・・光源
3・・・分離手段(光学フィルタ)
41、42・・・光検出器(パイロセンサ)
6・・・光源保持構造体
61・・・光源保持本体
7・・・光検出器保持構造体
8・・・光源側温度調節機構
81・・・ヒータ
9・・・光検出器側温度調節機構
P1・・・第1の断熱材
H1・・・貫通孔
P2・・・第2の断熱材
H1・・・貫通孔
L1・・・測定光
L2・・・リファレンス光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導入窓及び光導出窓を有し、測定対象物質を含んだサンプルガスを収容するセルと、前記測定対象物質に照射されると減衰する測定光及び前記測定対象物質に照射されても実質的に減衰しないリファレンス光を、前記光導入窓を介してセル内に照射する光源と、セル内を通って前記光導出窓から導出された測定光及びリファレンス光を分離する分離手段と、分離された測定光及びリファレンス光をそれぞれ受光する光検出器と、を備え、前記光検出器によるリファレンス光の出力値との比較における前記測定光の出力値の減衰量をパラメータとして、前記測定対象物質の濃度を測定できるようにしたものであって、
前記光源を収容保持する光源保持構造体と、
その光源保持構造体とはセルを挟んで別体で設けられ、前記光検出器を収容保持する光検出器保持構造体と、
前記光源保持構造体側に設けられ、光源の周囲温度調節を光検出器側とは切り離して別個に行うことが可能な光源側温度調節機構と、を備えていることを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記光源を電気制御によって周期的にON/OFFし、ON時とOFF時とのそれぞれにおける光検出器の出力値をもパラメータとして、前記測定対象物質の濃度を測定できるように構成している請求項1記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記光検出器保持構造体側に設けられ、光検出器の周囲温度調節を光源側とは切り離して別個に行うことが可能な光検出器側温度調節機構をさらに備えている請求項1又は2記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記光源側温度調整機構が、ヒータと、そのヒータの出力を制御する制御部とからなるものである請求項1乃至3いずれか記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記光源保持構造体が、光源を収容するブロック状の光源保持本体と、その光源保持本体に付随する付随部材とを備えており、
前記ヒータを、前記光源保持本体の外壁面に貼り付けている請求項4記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記制御部が、光検出器によるリファレンス光の出力が一定となるように、ヒータの出力を制御するものである請求項4又は5記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記光源保持構造体が、第1の断熱材を介してセルに取り付けられている請求項1乃至6いずれか記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記第1の断熱材に設けた貫通孔によって、前記光源保持構造体から光導入窓に至るまでの光路を形成している請求項7記載のガス分析装置。
【請求項9】
前記光検出器保持構造体が、第2の断熱材を介してセルに取り付けられている請求項1乃至8いずれか記載のガス分析装置。
【請求項10】
前記第2の断熱材に設けた貫通孔によって、前記光導出窓から光検出器保持構造体に至るまでの光路を形成している請求項9記載のガス分析装置。
【請求項11】
前記測定光及びリファレンス光が赤外光である請求項1乃至10いずれか記載のガス分析装置。
【請求項12】
前記セルが、サンプルガスを連続的に導入出できるフロータイプのものであり、インラインでの測定が可能な請求項1乃至11いずれか記載のガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−101433(P2007−101433A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293411(P2005−293411)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】