説明

ガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置

【課題】ガス化炉と燃焼炉との間で流動媒体が循環されるガス化設備において、ガス化炉内における流動媒体の層高を制御し得、該ガス化炉内に留まる流動媒体の滞留時間を、ガス化炉内での流動媒体の温度とは個別に調節することができ、ガス化炉に投入される原料のガス化率、即ち炭素転換率を要求に応じて変化させ得ると共に、ガス化特性の異なる原料に対してもそのガス化率を目標値とすることができ、安定した運転を行い得るガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】ガス化炉2に媒体分離装置8で分離された流動媒体を供給すると共に、原料を投入し、ガス化炉2にその上下方向へ所要間隔をあけて接続された流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかから流動媒体を抜き出して燃焼炉5へ導くことにより、ガス化炉2の流動媒体の層高を制御しつつ滞留時間を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料として、石炭、バイオマス、タイヤチップ等の原料を用い、ガス化ガスを生成するガス化設備の開発が進められている。
【0003】
図4は開発が進められているガス化設備の一例を示すものであって、該ガス化設備は、蒸気により流動媒体(硅砂、石灰石等)の流動層1を形成して投入される原料(石炭、バイオマス、タイヤチップ等)のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉2と、該ガス化炉2で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入管3から導入され且つ空気又は酸素等の流動用ガスにより流動層4を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉5と、該燃焼炉5から排ガス管6を介して導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体をダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に供給するホットサイクロン等の媒体分離装置8と、前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスより流動媒体を分離するホットサイクロン等の媒体分離装置9と、該媒体分離装置9で分離された流動媒体を回収する回収容器10とを備えてなる構成を有している。
【0004】
尚、図4中、11は前記ガス化炉2の底部へ導入される蒸気を流動層1内へ均一に吹き込むための分散板、12は前記燃焼炉5の底部へ導入される流動用ガスを流動層4内へ均一に吹き込むための分散板である。
【0005】
前述の如きガス化設備においては、通常運転時、ガス化炉2において、蒸気により流動層1が形成されており、ここに石炭、バイオマス、タイヤチップ等の原料を投入すると、該原料は水蒸気ガス化してガス化され、ガス化ガスと可燃性固形分とが生成され、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分は流動媒体と共に導入管3から、前記流動用ガスにより流動層4が形成されている燃焼炉5へ導入され、該可燃性固形分の燃焼が行われ、該燃焼炉5からの燃焼排ガスは、排ガス管6を介してホットサイクロン等の媒体分離装置8へ導入され、該媒体分離装置8において、前記燃焼排ガスより流動媒体が分離され、該分離された流動媒体はダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に戻され、循環される。
【0006】
ここで、前記燃焼炉5で可燃性固形分の燃焼に伴い高温になった流動媒体が燃焼排ガスと共に排ガス管6を通り前記媒体分離装置8で分離され、前記ダウンカマー7を介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化炉2の高温が保持されると共に、原料の熱分解によって生成したガスや、その残渣原料が蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。
【0007】
前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスは、ホットサイクロン等の媒体分離装置9で流動媒体が分離され、該媒体分離装置9で分離された流動媒体は、回収容器10に回収される。
【0008】
因みに、前記ガス化設備における通常運転中の熱不足時、即ち前記ガス化炉2において原料のガス化のための充分な熱が得られないような場合には、図4中、仮想線で示される如く、前記ガス化炉2へ供給される原料と同じ石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料が補助的に前記燃焼炉5へ投入されて燃焼が行われ、不足する熱を補うようになっている。又、前記ガス化設備における通常運転に到る前段階での循環予熱運転時には、前記ガス化炉2への原料の投入は行わずに、該ガス化炉2の底部から蒸気の代わりに流動用の空気を供給した状態で、図4中、仮想線で示される如く、前記石炭、バイオマス、タイヤチップ等の燃料が予熱用として前記燃焼炉5へ投入されて燃焼が行われ、該燃焼炉5での燃料の燃焼に伴い高温になった流動媒体が燃焼排ガスと共に排ガス管6を通り前記媒体分離装置8で分離され、前記ダウンカマー7を介してガス化炉2に供給されることにより、ガス化設備の循環予熱が行われるようになっている。
【0009】
ところで、前述の如きガス化設備におけるガス化炉2の温度は、高温となる流動媒体の循環量によって制御するようになっている。即ち、該流動媒体の循環量を増加させれば、前記ガス化炉2の温度は上昇し、該流動媒体の循環量を減少させれば、前記ガス化炉2の温度は低下する。尚、前記流動媒体の循環量は、通常、前記燃焼炉5の底部へ導入される流動用ガスの流量を調節すること等によって制御可能となっている。
【0010】
そして、一般に、前記ガス化炉2に投入される原料のガス化率(炭素転換率)は、該ガス化炉2内での流動媒体の温度と、該ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間との影響を大きく受ける。
【0011】
このため、ガス化ガスを受け取る側の要求により、例えば、炭素転換率を下げて発生するガス化ガス量を減少させたいときには、前記流動媒体の循環量を減少させてガス化炉2の温度を下げることが一つの方法になる一方、炭素転換率を上げて発生するガス化ガス量を増加させたいときには、前記流動媒体の循環量を増加させてガス化炉2の温度を上げることが一つの方法となる。
【0012】
尚、前述の如きガス化炉とは異なるが、循環流動層の燃焼炉への流動媒体の戻り位置を変更し、燃焼状態の安定性を保つようにした循環流動層燃焼装置を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0013】
又、流動媒体の循環量を制御することで負荷に応じてガス化炉温度を一定にするようにしたバイオマス燃料ガス化装置を示すものとしては、例えば、特許文献2がある。
【特許文献1】特開2002−98308号公報
【特許文献2】特開昭63−120825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前述の如く、ガス化ガスを受け取る側の要求により、例えば、炭素転換率を下げて発生するガス化ガス量を減少させたいときに、前記流動媒体の循環量を減少させてガス化炉2の温度を下げた場合、ガス化炉2内における流動媒体の容積は流動媒体を系外へ抜き出したりしない限り一定であることから、ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間は増加してしまうため、結果的に炭素転換率はあまり変化しない可能性もある。
【0015】
このように、現状の構造では、前記ガス化炉2内での流動媒体の温度と、該ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間とをそれぞれ別々に変えることは困難となっている。
【0016】
又、前述の如きガス化設備においては、多種多様な原料を用いる要求も高くなっているが、原料の種類によって該原料のガス化特性(例えば、熱分解特性、水蒸気ガス化反応速度)が変わるため、原料の種類によってガス化率が変化してしまい、安定した運転ができなくなる虞があった。例えば、バイオマスのようにガス化しやすい原料を用いた場合、ガス化炉2において必要以上に原料のガス化が進んで、燃焼炉5に運ばれる熱源となるチャーの量が減少し、熱バランスがくずれ、燃焼炉5での助燃が必要となったり運転が不安定となる可能性がある。
【0017】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ガス化炉と燃焼炉との間で流動媒体が循環されるガス化設備において、ガス化炉内における流動媒体の層高を制御し得、該ガス化炉内に留まる流動媒体の滞留時間を、ガス化炉内での流動媒体の温度とは個別に調節することができ、ガス化炉に投入される原料のガス化率、即ち炭素転換率を要求に応じて変化させ得ると共に、ガス化特性の異なる原料に対してもそのガス化率を目標値とすることができ、安定した運転を行い得るガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、蒸気により流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉と、該燃焼炉から導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体を前記ガス化炉に供給する媒体分離装置とを備えたガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法であって、
前記ガス化炉に対し媒体分離装置で分離された流動媒体を供給すると共に、原料を投入し、前記ガス化炉に対しその上下方向へ所要間隔をあけて接続された複数の流動媒体抜出ポートのいずれかから流動媒体を抜き出して前記燃焼炉へ導くことにより、前記ガス化炉の流動媒体の層高を制御しつつ滞留時間を制御することを特徴とするガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法にかかるものである。
【0019】
一方、本発明は、蒸気により流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉と、該燃焼炉から導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体を前記ガス化炉に供給する媒体分離装置とを備えたガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御装置であって、
前記ガス化炉に対しその上下方向へ所要間隔をあけて接続された複数の流動媒体抜出ポートと、
該複数の流動媒体抜出ポートのいずれかに前記ガス化炉内の流動媒体を導いて抜き出す流動媒体抜出切換手段と
を備えたことを特徴とするガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御装置にかかるものである。
【0020】
本発明のガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置によれば、以下のような作用が得られる。
【0021】
ガス化ガスを受け取る側の要求により、例えば、炭素転換率を下げて発生するガス化ガス量を減少させたいときに、前記流動媒体の循環量を減少させてガス化炉の温度を下げた場合、ガス化炉内における流動媒体の容積は流動媒体を系外へ抜き出したりしない限り一定であるが、この場合、ガス化炉に対し媒体分離装置で分離された流動媒体を供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポートから流動媒体を抜き出す際に、該流動媒体の抜出位置をより低い方にするよう、流動媒体抜出ポートを選択すれば、ガス化炉内の流動媒体の層高が低くなる分だけ容積(断面積×層高)が縮小され、ガス化炉内に留まる流動媒体の滞留時間が増加してしまうことが避けられ、炭素転換率を下げることが可能となる。
【0022】
又、ガス化しやすい原料を用いる場合も、ガス化炉に対し媒体分離装置で分離された流動媒体を供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポートから流動媒体を抜き出す際に、該流動媒体の抜出位置をより低い方にするよう、流動媒体抜出ポートを選択すれば、ガス化炉内の流動媒体の層高が低くなる分だけ容積(断面積×層高)が縮小され、ガス化炉内に留まる流動媒体の滞留時間が減少し、目標とするガス化率とすることが可能となり、ガス化炉において必要以上に原料のガス化が進んでしまうことが避けられ、燃焼炉に運ばれる熱源となるチャーの量が減少せず、熱バランスがくずれることなく保持され、運転が安定して行われる。
【0023】
逆に、ガス化しにくい原料を用いる場合は、ガス化炉に対し媒体分離装置で分離された流動媒体を供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポートから流動媒体を抜き出す際に、該流動媒体の抜出位置をより高い方にするよう、流動媒体抜出ポートを選択すれば、層高が高くなる分だけガス化炉内の流動媒体の容積(断面積×層高)が増加され、ガス化炉内に留まる流動媒体の滞留時間が確保され、目標とするガス化率とすることが可能となり、ガス化炉において適正に原料のガス化が進んで、燃焼炉に運ばれる熱源となるチャーの量が適量となり、熱バランスがくずれることなく保持され、運転が安定して行われる。
【0024】
又、流動媒体の循環量を変化させずに一定とし、前記ガス化炉に対し媒体分離装置で分離された流動媒体を供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポートのいずれかを選択することにより、温度一定のまま滞留時間を変えることも可能となる。
【0025】
前記ガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置においては、前記流動媒体抜出切換手段を、
前記各流動媒体抜出ポートの先端から垂下する流下管部と、
該各流下管部の下端から水平に延びる水平シール部と、
該各水平シール部の先端を合流させて立ち上がるように延び且つその上端が前記燃焼炉へ流動媒体を導入する導入管に接続される垂直シール部と、
前記各水平シール部及び垂直シール部に対し分散板を介して流動用ガスを送給可能なウインドボックスと、
該各ウインドボックスに接続された流動用ガス供給ラインと、
該各流動用ガス供給ライン途中に設けられた流動用ガス切換弁と
から構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置によれば、ガス化炉と燃焼炉との間で流動媒体が循環されるガス化設備において、ガス化炉内における流動媒体の層高を制御し得、該ガス化炉内に留まる流動媒体の滞留時間を、ガス化炉内での流動媒体の温度とは個別に調節することができ、ガス化炉に投入される原料のガス化率、即ち炭素転換率を要求に応じて変化させ得ると共に、ガス化特性の異なる原料に対してもそのガス化率を目標値とすることができ、安定した運転を行い得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0028】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図4に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1〜図3に示す如く、ガス化炉2に対しその上下方向へ所要間隔をあけて複数の流動媒体抜出ポート40a,40b,40cを所要の下り勾配を有するよう傾斜接続し、該複数の流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかに前記ガス化炉2内の流動媒体を導いて燃焼炉5の導入管3へ導く流動媒体抜出切換手段41を設けた点にある。
【0029】
本図示例の場合、前記流動媒体抜出切換手段41は、図2及び図3に示す如く、前記各流動媒体抜出ポート40a,40b,40cの先端から流下管部42a,42b,42cを垂下せしめ、該各流下管部42a,42b,42cの下端から水平シール部43a,43b,43cを水平に延ばし、該各水平シール部43a,43b,43cの先端を合流させて一本の垂直シール部44を立ち上がるように延ばし、該垂直シール部44の上端を前記燃焼炉5へ流動媒体を導入する導入管3に接続し、前記各水平シール部43a,43b,43c及び垂直シール部44に対し分散板45a,45b,45cを介して流動用ガスを送給可能なウインドボックス46a,46b,46cを設け、該各ウインドボックス46a,46b,46cに流動用ガス供給ライン47a,47b,47cを接続し、該各流動用ガス供給ライン47a,47b,47c途中に流動用ガス切換弁48a,48b,48cを設けてなる構成を有し、該流動用ガス切換弁48a,48b,48cの開度制御を行って所望のウインドボックス46a,46b,46cに流動用ガスを送給することにより、対応する水平シール部43a,43b,43c及び垂直シール部44内の流動媒体を流動化させ、前記ガス化炉2内の流動媒体を前記流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかから抜き出して導入管3を介し前記燃焼炉5へ導くことができるようにしてある。尚、前記各分散板45a,45b,45cには、流動用ガスを噴出可能な多数の噴出ノズル49a,49b,49cを突設してある。
【0030】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0031】
ガス化ガスを受け取る側の要求により、例えば、炭素転換率を下げて発生するガス化ガス量を減少させたいときに、前記流動媒体の循環量を減少させてガス化炉2の温度を下げた場合、ガス化炉2内における流動媒体の容積は流動媒体を系外へ抜き出したりしない限り一定であるが、この場合、ガス化炉2に対し媒体分離装置8で分離された流動媒体をダウンカマー7から供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかから流動媒体を抜き出す際に、該流動媒体の抜出位置をより低い方にする。即ち、流動用ガス切換弁48aのみを開き、流動用ガス切換弁48b,48cを閉じ、ウインドボックス46aに流動用ガスを送給することにより、対応する水平シール部43a及び垂直シール部44内の流動媒体を流動化させると、ガス化炉2内の流動媒体が流動媒体抜出ポート40aから抜き出される形となり、ガス化炉2内の流動媒体の層高がH1となる。このように、流動媒体抜出ポート40aを選択すれば、ガス化炉2内の流動媒体の層高が低くなる分だけ容積(断面積×層高)が縮小され、ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間が増加してしまうことが避けられ、炭素転換率を下げることが可能となる。
【0032】
又、ガス化しやすい原料(例えば、バイオマス)を用いる場合も、ガス化炉2に対し媒体分離装置8で分離された流動媒体をダウンカマー7から供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかから流動媒体を抜き出す際に、該流動媒体の抜出位置をより低い方にするよう、流動媒体抜出ポート40aを選択すれば、ガス化炉2内の流動媒体の層高が低くなる分だけ容積(断面積×層高)が縮小され、ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間が減少し、目標とするガス化率とすることが可能となり、ガス化炉2において必要以上に原料のガス化が進んでしまうことが避けられ、燃焼炉5に運ばれる熱源となるチャーの量が減少せず、熱バランスがくずれることなく保持され、運転が安定して行われる。
【0033】
逆に、ガス化しにくい原料(例えば、亜瀝青炭)を用いる場合は、ガス化炉2に対し媒体分離装置8で分離された流動媒体をダウンカマー7から供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかから流動媒体を抜き出す際に、該流動媒体の抜出位置をより高い方にする。即ち、流動用ガス切換弁48cのみを開き、流動用ガス切換弁48a,48bを閉じ、ウインドボックス46cに流動用ガスを送給することにより、対応する水平シール部43c及び垂直シール部44内の流動媒体を流動化させると、ガス化炉2内の流動媒体が流動媒体抜出ポート40cから抜き出される形となり、ガス化炉2内の流動媒体の層高がH3となる。このように、流動媒体抜出ポート40cを選択すれば、層高が高くなる分だけガス化炉2内の流動媒体の容積(断面積×層高)が増加され、ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間が確保され、目標とするガス化率とすることが可能となり、ガス化炉2において適正に原料のガス化が進んで、燃焼炉5に運ばれる熱源となるチャーの量が適量となり、熱バランスがくずれることなく保持され、運転が安定して行われる。
【0034】
尚、ガス化のしやすさの度合いが中程度の原料(例えば、褐炭)を用いる場合は、ガス化炉2に対し媒体分離装置8で分離された流動媒体をダウンカマー7から供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかから流動媒体を抜き出す際に、該流動媒体の抜出位置を中間にする。即ち、流動用ガス切換弁48bのみを開き、流動用ガス切換弁48a,48cを閉じ、ウインドボックス46bに流動用ガスを送給することにより、対応する水平シール部43b及び垂直シール部44内の流動媒体を流動化させると、ガス化炉2内の流動媒体が流動媒体抜出ポート40bから抜き出される形となり、ガス化炉2内の流動媒体の層高がH2となる。このように、流動媒体抜出ポート40bを選択すれば、ガス化炉2内の流動媒体の容積(断面積×層高)が層高H2に見合う量に変化し、ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間が前記層高H2に対応した時間となって、目標とするガス化率とすることが可能となり、ガス化炉2において必要以上に原料のガス化が進んでしまったり逆にガス化が不充分となることが避けられ、燃焼炉5に運ばれる熱源となるチャーの量も適量となり、やはり熱バランスがくずれることなく保持され、運転が安定して行われる。
【0035】
又、流動媒体の循環量を変化させずに一定とし、前記ガス化炉2に対し媒体分離装置8で分離された流動媒体をダウンカマー7から供給すると共に、原料を投入し、流動媒体抜出ポート40a,40b,40cのいずれかを選択することにより、温度一定のまま滞留時間を変えることも可能となる。
【0036】
このように、本図示例の構造では、高温の流動媒体をガス化炉2から抜き出して燃焼炉5へ導く系統に可動機構部分等を設けることなく所望の流動媒体抜出ポート40a,40b,40cから流動媒体の安定した抜き出しが可能となり、前記ガス化炉2内での流動媒体の温度と、該ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間とをそれぞれ別々に変えることが可能となる。
【0037】
こうして、ガス化炉2と燃焼炉5との間で流動媒体が循環されるガス化設備において、ガス化炉2内における流動媒体の層高を制御し得、該ガス化炉2内に留まる流動媒体の滞留時間を、ガス化炉2内での流動媒体の温度とは個別に調節することができ、ガス化炉2に投入される原料のガス化率、即ち炭素転換率を要求に応じて変化させ得ると共に、ガス化特性の異なる原料に対してもそのガス化率を目標値とすることができ、安定した運転を行い得る。
【0038】
因みに、特許文献1の図4には、循環流動層の燃焼炉への流動媒体の戻り位置を変更し、燃焼状態の安定性を保つようにした循環流動層燃焼装置が開示されているが、これはあくまでも対象が燃焼炉であって、層高を変えて滞留時間をコントロールするガス化炉2とは全く異なるものであり、しかも、ループシールへの空気量を変えることで流動媒体の振り分けを行ってはいるものの、ダウンカマー自体が三つに分岐されており、流動媒体の安定した振り分けは困難であると考えられる。
【0039】
又、特許文献2に記載のものは、流動媒体の循環量を制御することで負荷に応じてガス化炉温度を一定にするようにしたものに過ぎず、流動媒体の抜出位置を変化させる本願のガス化炉2とは全く異なるものである。
【0040】
更に又、前記特許文献1、2に記載のもの以外には、特許第2995692号公報や特開平1−217106号公報に流動層の層高制御装置が開示されているが、これらの公報に開示されている層高制御装置はあくまでも流動媒体が循環していない燃焼炉等にのみ適用可能なものに過ぎず、ガス化炉2と燃焼炉5との間で流動媒体が循環されるガス化設備には適用することはできない。
【0041】
尚、本発明のガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法及び装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、流動媒体抜出ポートの本数は三本に限らず、二本或いは四本以上とすることも可能であること等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例を示す要部拡大平面図である。
【図3】本発明を実施する形態の一例における流動媒体抜出切換手段を示す側断面図であって、図2のIII−III矢視相当図である。
【図4】開発が進められているガス化炉と燃焼炉とを備えたガス化設備の一例を示す全体概要構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 流動層
2 ガス化炉
3 導入管
4 流動層
5 燃焼炉
7 ダウンカマー
8 媒体分離装置
40a 流動媒体抜出ポート
40b 流動媒体抜出ポート
40c 流動媒体抜出ポート
41 流動媒体抜出切換手段
42a 流下管部
42b 流下管部
42c 流下管部
43a 水平シール部
43b 水平シール部
43c 水平シール部
44 垂直シール部
45a 分散板
45b 分散板
45c 分散板
46a ウインドボックス
46b ウインドボックス
46c ウインドボックス
47a 流動用ガス供給ライン
47b 流動用ガス供給ライン
47c 流動用ガス供給ライン
48a 流動用ガス切換弁
48b 流動用ガス切換弁
48c 流動用ガス切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気により流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉と、該燃焼炉から導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体を前記ガス化炉に供給する媒体分離装置とを備えたガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法であって、
前記ガス化炉に対し媒体分離装置で分離された流動媒体を供給すると共に、原料を投入し、前記ガス化炉に対しその上下方向へ所要間隔をあけて接続された複数の流動媒体抜出ポートのいずれかから流動媒体を抜き出して前記燃焼炉へ導くことにより、前記ガス化炉の流動媒体の層高を制御しつつ滞留時間を制御することを特徴とするガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御方法。
【請求項2】
蒸気により流動媒体の流動層を形成して投入される原料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入され且つ流動用ガスにより流動層を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉と、該燃焼炉から導入される燃焼排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体を前記ガス化炉に供給する媒体分離装置とを備えたガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御装置であって、
前記ガス化炉に対しその上下方向へ所要間隔をあけて接続された複数の流動媒体抜出ポートと、
該複数の流動媒体抜出ポートのいずれかに前記ガス化炉内の流動媒体を導いて抜き出す流動媒体抜出切換手段と
を備えたことを特徴とするガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御装置。
【請求項3】
前記流動媒体抜出切換手段を、
前記各流動媒体抜出ポートの先端から垂下する流下管部と、
該各流下管部の下端から水平に延びる水平シール部と、
該各水平シール部の先端を合流させて立ち上がるように延び且つその上端が前記燃焼炉へ流動媒体を導入する導入管に接続される垂直シール部と、
前記各水平シール部及び垂直シール部に対し分散板を介して流動用ガスを送給可能なウインドボックスと、
該各ウインドボックスに接続された流動用ガス供給ラインと、
該各流動用ガス供給ライン途中に設けられた流動用ガス切換弁と
から構成した請求項2記載のガス化設備における流動層ガス化炉の層高制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−25353(P2010−25353A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183329(P2008−183329)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】