説明

ガス排出装置

【課題】電池パックから発生する様々なガスを、そのガスの比重に応じて迅速に車外に排出するガス排出装置を提供する。
【解決手段】ガス排出装置は、車両10の室内に搭載された電池パック20と、電池パック20から車外に連通し電池パック20の設置位置より上方に延びる上方排気経路30と、電池パック20から車外に連通し電池パック20の設置位置より下方に延びる下方排気経路40と、上方排気経路30のガス排出口に設けられた上方排気蓋32と、下方排気経路40のガス排気口に設けられた下方排気蓋42と、電池パック20の状態に応じて、上方排気蓋32と下方排気蓋42の少なくとも一方を動作される制御部60と、を有し、電池パック20から発生したガスは、比重に応じて選択的に2方向から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車等の、電動機により車両の駆動力を得る自動車には、二次電池が搭載されている。さらに、近年、電気自動車、ハイブリッド自動車等に、燃料電池を搭載して駆動させる技術が開発されている。
【0003】
上述のような車両駆動用の二次電池や燃料電池は、電池パックの形式で、一般に、車室内の空調された空気によって冷却されることから、車室内に設置されることが多い。
【0004】
一方、二次電池として、ニッケル水素電池や鉛蓄電池を用いた場合には、ほとんどガスは発生しないが、場合によっては、ニッケル水素電池の負極由来のガスや鉛蓄電池の電解液由来のガスが発生することがある。また、近年、ニッケル水素電池や鉛蓄電池よりもエネルギー密度が高く、小型化が可能なリチウムイオン二次電池を複数積層してなる組電池は、内部に異常が発生すると、組電池内の電池の内部から煙やガスが発生する場合がある。
【0005】
特許文献1では、車室内に搭載されたリチウムイオン電池の状態を検出し、リチウムイオン電池の異常により発生した煙を、換気機構を始動させて車外に排出する電動車両が提案されている。
【0006】
特許文献2には、電池パックに収納された電池の異常時に高温のガスが排出された場合に、電池から放出されたガスを流通させる経路において、ガスの温度を下げて外部に排出させる電池パックが記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、電池パックの電池異常を検出し、電池パックから発生する発生ガスが車室内に侵入することを抑制する発生ガス対応手段として、電池パックと車室内との連通を遮断する遮断手段と、電池パックの内部空気を外部に排出する排出手段と、車室内の空気を外部に排出する換気手段とが例示される。さらに、特許文献3には、電池パックからの発生ガス濃度を検出するガス濃度センサを有し、検出されたガス濃度にしたがって、前記発生ガス対応手段を制御する電気自動車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−303364号公報
【特許文献2】特開2008−117765号公報
【特許文献3】特開2010−6153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、車両に搭載される電池パックは、上述したように、様々な二次電池や燃料電池からなり、これらの電池からは、様々な種類の気体(ガス)が発生する可能性がある。また、発生したガスの排出が遅延すると、電池パック内にガスが溜まるのみならず、高濃度のガスが車室内に籠もる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電池パックから発生する様々なガスを、そのガスの比重に応じて迅速に車外に排出するガス排出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のガス排出装置は以下の特徴を有する。
【0012】
(1)車室内に搭載された電池パックと、前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より上方に延びる上方排気経路と、前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より下方に延びる下方排気経路と、前記上方排気経路のガス排出口に設けられた上方排気蓋と、前記下方排気経路のガス排気口に設けられた下方排気蓋と、前記電池パックの状態に応じて、前記上方排気蓋と下方排気蓋の少なくとも一方を動作させる制御部と、を有するガス排出装置である。
【0013】
電池パックから発生した空気より比重の大きいガスは、上方排気経路を介して上部排気蓋まで送られ、一方、電池パックから発生した空気より比重の小さいガスは、下方排気経路を介して下方排気蓋まで送られ、制御部において、電池パックの状態に応じて、上方排気蓋と下方排気蓋の少なくとも一方を動作され、排気口を開けて、車外に排気を行う。したがって、電池パックから発生したガスは、比重に応じて選択的に2方向から迅速に排出される。
【0014】
(2)上記(1)に記載のガス排出装置において、さらに、前記上方排気経路内に設けられた上方ガス濃度検出器と、前記下方排気路内に設けられた下方ガス濃度検出器と、を有し、前記制御部は、前記上方ガス濃度検出器と下方ガス濃度検出器からの出力に応じて、前記上方排気蓋と下方排気蓋を動作させるガス排出装置である。
【0015】
さらに、ガス濃度に応じて、上方排気蓋と下方排気蓋を動作させ、排気口を開けて、車外に排気を行うので、排気口が車両の走行方向の前方にある場合、電池パックに対する不要な空気流通が抑制される。
【0016】
(3)上記(1)または(2)に記載のガス排出装置において、さらに、電池パックの電池温度を検出する温度検出器を有し、前記制御部は、温度検出器からの出力に応じて、前記上方排気蓋と下方排気蓋を動作させるガス排出装置である。
【0017】
電池温度が予め定められた基準電池温度を超えた場合、電池に異常が発生し、ガスが発生している可能性が高い。そこで、上方排気蓋と下方排気蓋を動作させ、排気口を開けることによって、車外にガスが排気される。また、排気口が車両の走行方向の前方にある場合、電池温度に応じて、上方排気蓋と下方排気蓋を開状態に動作させるので、電池パックに対する不要な空気流通が抑制される。
【0018】
(4)車室内に搭載された電池パックと、前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より上方に延びる上方排気経路と、前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より下方に延びる下方排気経路と、前記上方排気経路のガス排出口に設けられ、上方排気経路が予め定められた内圧を超えると開状態になる上方排気蓋と、前記下方排気経路のガス排気口に設けられ、下方排気経路が予め定められた内圧を超えると開状態になる下方排気蓋と、を有するガス排出装置である。
【0019】
上方排気経路が予め定められた内圧を超えると開状態になる上方排気蓋と、前記下方排気経路のガス排気口に設けられ、下方排気経路が予め定められた内圧を超えると開状態になる下方排気蓋とを設けることにより、内圧に応じて、ガスが排出されるので、他の検出器を用いなくても、電池パックから発生したガスが車外に排出される。
【0020】
(5)車室内に搭載された電池パックと、前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より上方に延びる上方排気経路と、前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より下方に延びる下方排気経路と、を有し、前記上方排出経路および下方排出経路のいずれも、車外に通じる開放状態のガス排気口を有するガス排出装置である。
【0021】
上方排気経路および下方排気経路のいずれも常時開状態であることにより、電池パックから発生したガスは、比重に応じて2方向から常時車外に放出される。
【0022】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載のガス排出装置において、前記電池パックは、二次電池、燃料電池から選択される1種の電池であるガス排出装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電池パックから発生する様々なガスが、そのガスの比重に応じて迅速に車外に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス排出装置が搭載された車両の一例の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるガス排出装置によるガス排出方法の一例を説明するフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるガス排出装置によるガス排出方法の他の例を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施の形態におけるガス排出装置は、図1に示すように、車両10の室内に搭載された電池パック20と、電池パック20から車外に連通し電池パック20の設置位置より上方に延びる上方排気経路30と、電池パック20から車外に連通し電池パック20の設置位置より下方に延びる下方排気経路40と、上方排気経路30のガス排出口に設けられた上方排気蓋32と、下方排気経路40のガス排気口に設けられた下方排気蓋42と、電池パック20の状態に応じて、上方排気蓋32と下方排気蓋42の少なくとも一方を動作させる制御部60と、を有する。上方排気蓋32と下方排気蓋42は、制御部60と電気的に接続されている。ここで、制御部60として、例えば、車両に設けられたバッテリコンピュータ又はECUを用いてもよい。また、図1では、上方排気経路30および下方排気経路40、ならびに、上方排気蓋32および下方排気蓋42を、車両10の走行方向の前方に設けたが、これに限るものではなく、車両10の走行方向の後方に設けてもよい。
【0027】
さらに、本実施の形態のガス排出装置は、上方排気経路30の経路内に設けられた上方ガス濃度検出器34と、下方排気経路40の経路内に設けられた下方ガス濃度検出器44と、を有する。そして、上方ガス濃度検出器34と下方ガス濃度検出器44は、それぞれ電気的に制御部60に接続されている。したがって、制御部60は、上方ガス濃度検出器34と下方ガス濃度検出器44からの出力に応じて、上方排気蓋32と下方排気蓋42の少なくとも一方を動作させる。
【0028】
すなわち、図2に示すように、制御部60は、上方ガス濃度検出器34から上方排気経路30のガス濃度を検出し(S100)、実測ガス濃度を予め制御部60に格納されている基準ガス濃度と比較し(S102)、実測ガス濃度が基準ガス濃度より高い場合には、上方排気蓋32を開けて(S104)、電池パックから発生したガスであって空気よりも比重の小さいガスを、車外に排気する。また、制御部60は、下方ガス濃度検出器44から下方排気経路40のガス濃度を検出し(S200)、実測ガス濃度を予め制御部60に格納されている基準ガス濃度と比較し(S202)、実測ガス濃度が基準ガス濃度より高い場合には、下方排気蓋42を開けて(S204)、電池パックから発生したガスであって空気よりも比重の大きいガスを、車外に排気する。これにより、電池パックから発生したガスは、比重に応じて迅速に2方向から排出される。
【0029】
ここで、例えば、電池パックが、リチウムイオン二次電池を複数積層してなる組電池である場合、例えば、リチウムイオン二次電池の容量劣化に伴い、リチウムイオン二次電池から、水素、二酸化炭素、メタン、エチレンおよびエタンなどが発生する。そして、空気の比重を「1」とすると、水素ガスの比重は0.06952、二酸化炭素ガスの比重は1.5290、メタンガスの比重は0.5544、エチレンガスの比重は0.9749、エタンガスの比重は1.0493である。したがって、本実施の形態におけるガス排出装置を用いた場合、空気より比重の大きいエタンガスは、選択的に、上方排気経路30を介して上方排気蓋32を経て車外に放出され、一方、空気より比重の小さい水素ガス、二酸化炭素ガス、メタンガス、エチレンガスは、選択的に、下方排気経路40を介して下方排気蓋42を経て車外に放出される。
【0030】
また、本実施の形態の他のガス排出装置は、図1に示すように、さらに、電池パック20の電池温度を検出する温度検出器50を有する。したがって、制御部60は、温度検出器50からの出力に応じて、上方排気蓋32と下方排気蓋42を動作させる。
【0031】
すなわち、図3に示すように、制御部60は、電池パック20の温度情報を取得する(S300)。次に、制御部60は、検出された実測温度と、予め格納されている基準温度とを比較し(S302)、実測温度が基準温度より高い場合には、上方排気蓋32および下方排気蓋42を開けて(S304)、電池パックから発生したガスを、比重に応じて選択的に、上方排気経路30および下方排気経路40に分けて、迅速に車外に排気する。一般に、電池パック20の電池温度が基準温度より高い場合、特に、電池パック20がリチウムイオン二次電池を複数積層してなる組電池である場合、電池パック20に収納されているリチウムイオン二次電池の容量劣化が発生している可能性が高く、その場合には、上述したような様々なガスが発生する。したがって、電池パックの温度に応じて、上方排気蓋32および下方排気蓋42を開けることにより、比重に応じて、電池パックから発生したガスが2方向に選択的に分けられ、車外に排出される。
【0032】
さらに、本実施の形態の他のガス排出装置は、図1に示す制御部60、上方ガス濃度検出器34と下方ガス濃度検出器44、および温度検出器50を有さず、一方、上方排気蓋32と下方排気蓋42が、上方排気経路30ならびに下方排気経路40がそれぞれ予め定められた内圧を超えると開状態になる構造になっている以外は、図1と同じ構成である。ここで、上方排気蓋32と下方排気蓋42は、予め定められた圧力以上で開状態になるような重さを有する蓋を用いるが、これに限るものではなく、各排気経路の内圧を超えると開状態になる構成であればいかなる構成であってもよい。
【0033】
上記構成により、電池パック20からガスが発生し、上方排気経路30ならびに下方排気経路40のそれぞれの内圧が、予め定められた内圧を超えると、上方排気蓋32ならびに下方排気蓋42がそれぞれ開状態になるため、比重に応じて、電池パックから発生したガスが2方向に選択的に分けられ、迅速に車外に排出される。
【0034】
また、本実施の形態の他のガス排出装置は、図1に示す制御部60、上方ガス濃度検出器34と下方ガス濃度検出器44、上方排気蓋32と下方排気蓋42および温度検出器50を有しない以外は、図1と同じ構成である。
【0035】
上記構成により、上方排気経路30および下方排気経路40のいずれも常時開状態であることにより、電池パック20から発生したガスは、比重に応じて2方向から常時車外に放出される。
【0036】
本実施の形態で用いる電池パック20は、上述した二次電池の他に、燃料電池も含む。電池パック20が燃料電池の場合には、水素ガスが電池パック20より発生する。そして、発生した水素ガスは空気より比重が小さいことから、選択的に下方排気経路40を介して下方排気蓋42を経て車外に排出される。
【0037】
以上のことから、本実施の形態におけるガス排出装置は、電池パックの種類を問わず、いかなる電池パックを用いた場合にも使用可能な汎用性の高いガス排出装置である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のガス排出装置は、電池パックを用いる用途であれば、如何なる用途にも有効であるが、特に車両に搭載される二次電池や燃料電池を含む電池パックに供することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 車両、20 電池パック、30 上方排気経路、32 上方排気蓋、34 上方ガス濃度検出器、40 下方排気経路、42 下方排気蓋、44 下方ガス濃度検出器、50 温度検出器、60 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に搭載された電池パックと、
前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より上方に延びる上方排気経路と、
前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より下方に延びる下方排気経路と、
前記上方排気経路のガス排出口に設けられた上方排気蓋と、
前記下方排気経路のガス排気口に設けられた下方排気蓋と、
前記電池パックの状態に応じて、前記上方排気蓋と下方排気蓋の少なくとも一方を動作させる制御部と、
を有することを特徴とするガス排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス排出装置において、
さらに、前記上方排気経路内に設けられた上方ガス濃度検出器と、
前記下方排気路内に設けられた下方ガス濃度検出器と、を有し、
前記制御部は、前記上方ガス濃度検出器と下方ガス濃度検出器からの出力に応じて、前記上方排気蓋と下方排気蓋を動作させることを特徴とするガス排出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス排出装置において、
さらに、電池パックの電池温度を検出する温度検出器を有し、
前記制御部は、温度検出器からの出力に応じて、前記上方排気蓋と下方排気蓋を動作させることを特徴とするガス排出装置。
【請求項4】
車室内に搭載された電池パックと、
前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より上方に延びる上方排気経路と、
前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より下方に延びる下方排気経路と、
前記上方排気経路のガス排出口に設けられ、上方排気経路が予め定められた内圧を超えると開状態になる上方排気蓋と、
前記下方排気経路のガス排気口に設けられ、下方排気経路が予め定められた内圧を超えると開状態になる下方排気蓋と、
を有することを特徴とするガス排出装置。
【請求項5】
車室内に搭載された電池パックと、
前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より上方に延びる上方排気経路と、
前記電池パックから車外に連通し電池設置位置より下方に延びる下方排気経路と、を有し、
前記上方排出経路および下方排出経路のいずれも、車外に通じる開放状態のガス排気口を有することを特徴とするガス排出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガス排出装置において、
前記電池パックは、二次電池、燃料電池から選択される1種の電池であることを特徴とするガス排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39006(P2013−39006A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175408(P2011−175408)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】