説明

ガス検出装置

【課題】特定ガス素子における電気的特性が特定ガスとは異なる他種ガスに反応して変化する場合においても、特定ガスの検出精度が低下しがたいガス検出装置を提供する。
【解決手段】ガス検出装置150は、D素子3(特定ガス素子)における電気的特性の変化状態が酸化性ガス(特定ガス:NOx,NO2 など)に対する反応状態であるか否かだけを判定(S240)するのではなく、D素子3における電気的特性の変化状態が還元性ガス(他種ガス:COなど)に対する反応状態であるか否かについても判定する(S210,S220,S230)。つまり、ガス検出装置150は、酸化性ガスではなく還元性ガスの影響によってD素子3の電気的特性が変化した場合であっても、誤って「酸化性ガスが有り」と判定してしまうのを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定ガスに反応して電気的特性が変化する特定ガス素子と、特定ガスの有無を判定する特定ガス判定手段と、を備えるガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象ガスにおける特定ガスの検出を行うガス検出装置が知られている。
このようなガス検出装置としては、特定ガスに反応して電気的特性が変化する特定ガス素子と、特定ガス素子における電気的特性に対応した出力信号の変化状態が特定ガスに対する反応状態である場合に特定ガスが有りと判定する特定ガス判定手段と、を備えて構成されるものがある(特許文献1)。
【0003】
つまり、このようなガス検出装置は、特定ガス素子における電気的特性が特定ガスの検出状態に応じて変化することを利用して、測定対象ガスにおける特定ガスの検出を行うものである。
【特許文献1】特開2003−227807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特定ガス素子によっては、特定ガスとは異なるガス(他種ガス)に反応して電気的特性が変化するものがあり、そのような特定ガス素子を用いる場合には、特定ガスの検出精度が低下する虞があるという問題が生じる。
【0005】
つまり、特定ガスが存在しない状況下であっても、他種ガスの影響により特定ガス素子における電気的特性が変化してしまい、その際の出力信号の変化状態(あるいは、その変化状態の一部)が特定ガスに対する反応状態に近い場合には、ガス検出装置は、誤って特定ガスが有りと判定することがある。このようにして他種ガスの影響を受けて誤検出が発生すると、特定ガスの有無を正確に判定することができなくなり、このガス検出装置は、特定ガスの検出精度が低下してしまう。
【0006】
具体的に、酸化性ガスの濃度上昇に伴い電気的特性としての抵抗値が増加する特定ガス素子であって、還元性ガスの濃度上昇に伴い抵抗値が減少する特定ガス素子を例にとって、他種ガスとしての還元性ガスの影響を受けて誤検出が発生する事象について説明する。このような特定ガス素子では、酸化性ガスが存在しない状況下で還元性ガスの濃度上昇が生じると抵抗値は減少するが、その後に還元性ガスの濃度が低下すると、抵抗値は増加することになる。このような抵抗値の増加状態は、酸化性ガスが存在しないにも関わらず、酸化性ガスの濃度上昇が生じた場合と同様の状態(傾向)を示すため、酸化性ガスが有りと誤って判定してしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、特定ガス素子における電気的特性が特定ガスとは異なる他種ガスに反応して変化する場合においても、特定ガスの検出精度が低下しがたいガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、検出対象ガスである特定ガスに反応して電気的特性が変化する特定ガス素子と、特定ガス素子における電気的特性に対応した第1出力信号の変化状態が特定ガスに対する反応状態である場合に特定ガスが有りと判定する特定ガス判定手段と、を備えるガス検出装置であって、特定ガス素子は、特定ガスに反応するとともに、特定ガスとは異なる他種ガスにも反応して電気的特性が変化するものであって、他種ガスの反応時における第1出力信号の変化状態が特定ガスの反応時における第1出力信号の変化状態とは異なるものであり、特定ガス判定手段において特定ガスが有りと判定されていない状況下において、第1出力信号の変化状態が他種ガスに対する反応時と同じ状態を示した場合に、特定ガス素子が他種ガス反応状態であると判定する他種ガス反応状態判定手段と、他種ガスに反応して電気的特性が変化する他種ガス素子と、他種ガス素子における電気的特性に対応した第2出力信号の変化状態が他種ガスに対する反応状態である場合に、他種ガスが有りと判定する他種ガス判定手段と、他種ガス反応状態判定手段にて特定ガス素子が他種ガス反応状態であると判定され、かつ、他種ガス判定手段にて他種ガスが有りと判定される場合に、特定ガス素子での誤検出有りと判定する誤検出判定手段と、を備えることを特徴とするガス検出装置である。
【0009】
このガス検出装置は、特定ガス素子による第1出力信号の変化状態が特定ガスに対する反応状態であるか否かだけを判定するのではなく、他種ガス反応状態判定手段を備えることで、第1出力信号の変化状態が他種ガスに対する反応状態であるか否かについても判定する。
【0010】
また、このガス検出装置は、他種ガスに反応して電気的特性が変化する他種ガス素子を備えるとともに、他種ガス素子における電気的特性に対応した第2出力信号の変化状態に基づいて他種ガスの有無を判定する他種ガス判定手段を備えている。この他種ガス判定手段は、他種ガス素子による第2出力信号の変化状態に基づいて判定することから、他種ガスの有無を高精度に判定できる。
【0011】
そして、このガス検出装置は、他種ガス反応状態判定手段にて特定ガス素子が他種ガス反応状態であると判定され、かつ、他種ガス判定手段にて他種ガスが有りと判定される場合に、特定ガス素子での誤検出有りと判定する。
【0012】
このように、このガス検出装置は、2つの判定手段(他種ガス反応状態判定手段、他種ガス判定手段)による判定結果を併用して他種ガスの有無を判定することから、他種ガスの有無をより確実に判定できるとともに、特定ガス素子が他種ガスに反応しているか否かを判定できる。
【0013】
このため、このガス検出装置は、特定ガス素子による第1出力信号の変化状態における一部の状態が特定ガスに対する反応状態に近い場合であっても、誤って「特定ガスが有り」と判定してしまうのを抑制できる。
【0014】
よって、本発明のガス検出装置によれば、他種ガスの影響による誤検出の発生頻度を低減でき、特定ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
なお、特定ガス素子としては、使用開始当初は特定ガスのみに反応して他種ガスには反応しない特性を有する特定ガス素子であっても、使用環境の影響などにより特性が変化した場合(換言すれば、経時変化した場合)に、特定ガスに加えて他種ガスにも反応して電気的特性が変化する特定ガス素子がある。本発明は、そのような特定ガス素子を備えるガス検出装置に対しても適用できる。
【0015】
次に、上述のガス検出装置においては、請求項2に記載のように、他種ガス反応状態判定手段は、第1出力信号の一次微分値を演算する一次微分値演算手段と、一次微分値演算手段で演算された一次微分値と、特定ガス素子が他種ガスの影響を受けたときに一次微分値がとりうる範囲である一次微分誤検出範囲とを比較し、一次微分値が一次微分誤検出範囲に含まれるか否かを判断する一次微分判定手段と、一次微分判定手段にて肯定判定される場合に、特定ガス素子が他種ガス反応状態であると判定する一次微分誤検出開始判定手段と、を備える、という構成を採ることができる。
【0016】
つまり、第1出力信号の一次微分値は、特定ガス素子における電気的特性の変化状態に応じて変化する。このため、一次微分判定手段は、一次微分値と一次微分誤検出範囲との比較結果に基づいて、特定ガス素子での誤検出が生じたか否かを判定できる。
【0017】
なお、一次微分誤検出範囲については、例えば、実際の測定により特定ガス素子が他種ガスの影響を受けたときに一次微分値がとりうる値を測定し、その測定結果に基づいて定めることができる。
【0018】
よって、他種ガス反応状態判定手段が一次微分値を用いた判定を行うことにより、本発明のガス検出装置は、特定ガス素子での誤検出が生じたか否かを判定できる。
なお、ここでの一次微分値は、第1出力信号について所定の時間で微分演算して得られる微分値である。
【0019】
次に、上述のガス検出装置においては、請求項3に記載のように、誤検出判定手段にて誤検出有りと判定されている状況下において、他種ガス判定手段による他種ガスが有りとの判定が解消された時点を起点として、他種ガスの影響が解消するまでの所要時間以上の誤検出解消期間が経過したか否かを判定する解消時間経過判定手段と、解消時間経過判定手段にて肯定判定された場合に、特定ガス素子での誤検出が解消したと判定する時間経過誤検出解消判定手段と、を備える、という構成を採ることができる。
【0020】
つまり、このガス検出装置は、特定ガス素子での誤検出が発生したと判定した後に、他種ガスの影響が解消したか否かを判定するように構成されている。
なお、他種ガス判定手段にて他種ガスが無しと判定された場合であっても、特定ガス素子に対する他種ガスの影響は、直ちに解消されるのではなく、一定期間が経過するまで残ることがある。このため、このガス検出装置は、誤検出解消期間が経過したか否かに基づき判定することで、誤検出が解消したか否かを良好に判定することができる。
【0021】
なお、誤検出解消期間については、例えば、実際の測定により、他種ガスの影響が解消するまでの所要時間を測定し、その測定結果に基づいて定めることができる。
次に、時間経過誤検出解消判定手段を備えるガス検出装置においては、請求項4に記載のように、特定ガス判定手段は、第1出力信号の値に基づいて、第1出力信号の変化に対して遅れて追従するように、特定ガスの検出判定に用いる判定基準値を更新する判定基準値更新手段と、第1出力信号の値から判定基準値を差し引いた差分値と、特定ガスの検出判定用として定められた判定用閾値とを比較し、差分値が判定用閾値よりも大きい場合に、特定ガスが有りと判定する特定ガス比較判定手段と、を備えており、解消時間経過判定手段にて肯定判定された場合に、そのときの第1出力信号の値に近づけるように、判定基準値を補正する判定基準補正手段を備える、という構成を採ることができる。
【0022】
つまり、このガス検出装置における特定ガス判定手段は、特定ガス素子による第1出力信号の値から判定基準値を差し引いた差分値と判定用閾値との比較結果に基づいて特定ガスの有無を判定する。そして、判定基準値は、常時一定の固定値ではなく、現在の第1出力信号の値に基づいて、当該第1出力信号の変化に対して遅れて追従するように更新される可変値である。
【0023】
このように、このガス検出装置は、固定値ではなく可変値としての判定基準値を用いて特定ガスの有無を判定することから、周囲環境の温度や湿度の変化等によって特定ガス素子の電気的特性に及ぶ影響をキャンセル(除外)した上での適切な判定が可能となり、特定ガスの有無をより精度良く判定できる。
【0024】
そして、このガス検出装置は、判定基準補正手段を備えている。つまり、他種ガスの影響による誤検出(特定ガス素子での誤検出)が解消したと判定されると(解消時間経過判定手段にて肯定判定されると)、判定基準補正手段が、判定基準値をそのときの第1出力信号の値に近づけるように、判定基準値を補正する。
【0025】
なお、判定基準値は、第1出力信号の値に対して遅れて追従するように更新されることから、他種ガスの影響による誤検出(特定ガス素子での誤検出)が解消したと判定された時点においては、他種ガスの影響が反映された値に設定されている可能性が高い。
【0026】
そこで、誤検出解消時点(解消時間経過判定手段にて肯定判定された時点)の第1出力信号の値に近づけるように、判定基準値を補正することで、判定基準値を他種ガスの影響が軽減された値に近づけることができる。
【0027】
このような補正を行うガス検出装置は、誤検出解消直後の判定基準値が不適切な値(他種ガスの影響が大きく反映された値)に設定されるのを防止できるため、誤検出が解消した直後に、判定基準値が不適切な値に設定されたことに起因して「特定ガスが有り」と誤って判定されること(誤判定)を防止できる。
【0028】
よって、本発明によれば、特定ガスの有無を判定するにあたり、周囲環境の変化等に応じた適切な判定が可能となるため、特定ガスの検出精度を向上できる。また、本発明によれば、他種ガスの影響による誤検出が解消したと判定された直後に、誤って特定ガスが有りと判定されるのを防止できる。
【0029】
また、判定基準値の補正に際しては、判定基準値を誤検出解消時点での第1出力信号の値に設定することにより、判定基準値を補正する方法を採ることができる。このような方法を採用したガス検出装置は、より確実に他種ガスの影響が軽減されるように判定基準値を補正することができる。
【0030】
なお、上記の時間経過誤検出解消判定手段および判定基準補正手段を備えるガス検出装置では、誤検出解消期間が経過した時点で、そのときの第1出力信号の値に近づけるように判定基準値を補正する。しかし、誤検出解消期間中(換言すれば、他種ガス判定手段による他種ガスが有りとの判定が解消された時点を起点として、誤検出解消期間が経過するまでの期間中)に特定ガスの大きな濃度増加が生じた場合には、第1出力信号が、他種ガスの影響の解消に伴った変化と、特定ガスの濃度増加に応じた変化とを含めた変化状態を呈することがある。
【0031】
このような状況下で判定基準値を補正してしまうと、判定基準値が不適切な値に補正される場合があるため、誤検出解消期間の経過時に特定ガスの濃度が相対的に高くなっているにもかかわらず、特定ガス比較判定手段にて特定ガスなしと判定してしまう可能性がある。
【0032】
そこで、時間経過誤検出解消判定手段および判定基準補正手段を備えるガス検出装置においては、請求項5に記載のように、第1出力信号の二次微分値を演算する二次微分値演算手段と、二次微分値演算手段で演算された二次微分値と、特定ガス素子が他種ガスの影響を受けたときに二次微分値がとりうる範囲である二次微分変動範囲とを比較し、二次微分値が二次微分変動範囲に含まれるか否かを判定する二次微分判定手段と、二次微分判定手段での判定結果が否定判定から肯定判定に変わるときの第1出力信号に基づいて、他種ガスの影響を受けているときの特定ガス素子における第1出力信号がとりうる数値範囲としての補正判定用基準範囲を設定する補正判定用基準範囲設定手段と、解消時間経過判定手段にて肯定判定されたときの第1出力信号が補正判定用基準範囲に含まれるか否かを判定し、肯定判定の場合には、判定基準補正手段による判定基準値の補正を許可し、否定判定の場合には、判定基準補正手段による判定基準値の補正を禁止する補正許可判定手段と、を備える、という構成を採ることができる。
【0033】
つまり、このガス検出装置は、誤検出解消期間中に特定ガスの濃度増加が生じているか否かを捉えるべく、解消時間経過判定手段にて肯定判定されたときの第1出力信号が、補正判定用基準範囲に含まれるか否かを判定し、肯定判定された場合にかぎり、判定基準値の補正を行うようにしている。
【0034】
ここで、補正判定用基準範囲の設定にあたっては、第1出力信号の二次微分値が二次微分変動範囲に含まれるか否かを判定することで、第1出力信号に他種ガスの影響が及び始めた状況にあるかを判定(即ち、二次微分判定手段での判定結果が否定判定から肯定判定に変わったかを判定)し、この判定の結果が否定判定から肯定判定に変わったときの第1出力信号に基づいて当該補正判定用基準範囲を設定するようにしている。なお、第1出力信号の二次微分値は、一次微分値のような特性(第1出力信号の大きな変化状態を捉えやすい特性)は有さないが、第1出力信号の変化し始めを捉えやすい特性を有している。なお、第1出力信号の変化状態が他種ガス反応状態にあるか否かを判定するには、その判定精度を確保する点から、一次微分値のような大きな変化状態を捉えられる要素を用いることが適している。
【0035】
つまり、第1出力信号の二次微分値を二次微分変動範囲と比較することで、第1出力信号に他種ガスの影響が及び始めているか否かを判定することができ、この判定結果のもと第1出力信号に基づき補正判定用基準範囲を設定するようにすれば、他種ガスの影響が及び始めかけようとしているとき(換言すれば、特定ガス素子での誤検出有りと判定され得る時期)の第1出力信号に基づき補正判定用基準範囲を設定することができる。
【0036】
そして、上記の補正判定用基準範囲と、解消時間経過判定手段にて肯定判定されたときの第1出力信号とを比較することで、誤検出解消期間経過時の第1出力信号が特定ガス素子での誤検出有りと判定され得る時期の特定ガスの濃度に対応した値にまで戻ってきたか否かを判定することができる。このように、誤検出解消期間経過時の第1出力信号が、特定ガス素子での誤検出有りと判定され得る時期の特定ガスの濃度に対応した値にまで戻ってきたか否かを判定することで、誤検出解消期間中に大きな濃度変化が生じたか否かを推定することができるため、請求項5のガス検出装置によれば、判定基準値の補正を特定ガスの濃度状況に応じて適切に行うことが可能となる。
【0037】
なお、ここでの二次微分値は、特定ガス素子における電気的特性を表す状態量について時間で微分演算して得られる微分値(一次微分値)を、更に微分演算して得られる微分値である。
【0038】
次に、上述のガス検出装置においては、例えば、請求項6に記載のように、特定ガスが酸化性ガスであり、他種ガスが還元性ガスであるとよい。
つまり、検出対象ガスが酸化性ガスである特定ガス素子においては、素子劣化が進むことで、還元性ガスに反応するものがある。
【0039】
そのような特定ガス素子を備えるガス検出装置において、本発明を適用することで、本発明の作用効果を一層発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
実施形態として、本発明が適用されたガス検出装置を備える車両用外気導入制御システムについて、図面と共に説明する。
【0041】
まず、図1に、本発明が適用されたガス検出装置に備えられる一体型ガスセンサ素子10の概略構成図を示す。図1に示すように、一体型ガスセンサ素子10は、還元性ガス用ガスセンサ素子2、酸化性ガス用ガスセンサ素子3およびヒータ4が、単一のセラミック基板1に形成されて構成されている。
【0042】
このうち、還元性ガス用ガスセンサ素子2(以下、単に「G素子2」ともいう)は、SnO2 を主成分とする酸化物半導体からなる抵抗体であり、主としてCO、HC(ハイドロカーボン)等の還元性ガスに反応してその抵抗値(以下、Gセンサ抵抗値Rgともいう)が変化する性質を有している。また、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(以下、単に「D素子3」ともいう)は、WO3 を主成分とする酸化物半導体からなる抵抗体であり、主としてNOx等の酸化性ガスに反応してその抵抗値(以下、Dセンサ抵抗値Rdともいう)が変化する性質を有している。
【0043】
なお、G素子2およびD素子3は、常温ではガスに反応することはなく、所定の活性化温度(例えば、200[℃]以上の温度)になることで、それぞれ還元性ガスあるいは酸化性ガスに反応する活性化状態となる。そして、活性化状態となったG素子2は、還元性ガスの濃度の上昇に伴いGセンサ抵抗値Rgが低下する方向に変化することから、Gセンサ抵抗値Rgの変化に基づいて還元性ガスの濃度変化を検出することができる。また、活性化状態となったD素子3は、酸化性ガスの濃度の上昇に伴いDセンサ抵抗値Rdが上昇する方向に変化することから、Dセンサ抵抗値Rdの変化に基づいて酸化性ガスの濃度変化を検出することができる。
【0044】
また、ヒータ4は、セラミック基板1に形成された抵抗配線からなり、所定の電圧が印加されると発熱するよう構成されており、G素子2およびD素子3を活性化温度以上の目標温度に加熱・維持して活性化状態とするために備えられている。なお、ヒータ4は、少なくともG素子2およびD素子3が活性化温度以上まで加熱できるように、抵抗値などの特性が選択されて構成されている。
【0045】
そして、図1に示す一体型ガスセンサ素子10においては、D素子端子5が後述するマイクロコンピュータ101(後述する図2参照)の第2AD変換入力端子103に接続され、G素子端子6が後述するマイクロコンピュータ101(図2参照)の第1AD変換入力端子102に接続され、ヒータ端子7が後述するヒータ回路131(図2参照)に接続され、基準端子8が後述する電源装置191(図2参照)の負極と同電位のグランドに接続される。
【0046】
次に、図2に、本発明が適用されたガス検出装置150を備える車両用外気導入制御システム100の概略構成を表す構成図を示す。なお、車両用外気導入制御システム100は、ガス検出装置150により外気中に含まれる酸化性ガス濃度および還元性ガス濃度の変化を検出し、その検出結果に基づいて外気導入用フラップ174(以下、単に、フラップ174ともいう)を開閉制御するものである。
【0047】
そして、車両用外気導入制御システム100は、定電圧(定格電圧12[V]。以下、バッテリ電圧VBともいう)を出力する電源装置191(以下、単にバッテリ191ともいう)と、マイクロコンピュータ101(以下、マイコン101ともいう)と、G素子2におけるGセンサ抵抗値Rgの変化に応じた電圧を出力するG素子回路110と、D素子3におけるDセンサ抵抗値Rdの変化に応じた電圧を出力するD素子回路120と、G素子2およびD素子3を活性化温度に加熱・維持するためのヒータ4と、ヒータ4の通電制御を行うヒータ回路131と、駆動電圧Vcc(5[V])を供給するレギュレータ回路140と、フラップ174を制御する電子制御アセンブリ160と、を備えて構成されている。
【0048】
なお、車両用外気導入制御システム100のうち、電源装置191、G素子回路110、D素子回路120、ヒータ4、ヒータ回路131およびマイコン101がガス検出装置150を構成している。
【0049】
電源装置191は、バッテリ電圧VBを出力する電圧出力部192と、アノードが電圧出力部192の負極と同電位のグランドに接続されると共にカソードが電圧出力部192の正極に接続されたツェナーダイオード193と、を備えて構成されており、出力可能な最大出力電圧が40[V]に制限されている。つまり、40[V]を超えるサージ電圧が、電源装置191から装置各部に至る電力供給経路に発生する場合には、ツェナーダイオード193がツェナー降伏することで、電力供給経路の電圧値を40[V]以下に制限している。
【0050】
電子制御アセンブリ160は、外気導入用フラップ174を制御するものである。なお、外気導入用フラップ174は、自動車室内に繋がるダクト171に二股状に接続された内気取り入れ用ダクト172と外気取り入れ用ダクト173とを切り替えるために備えられている。つまり、外気導入用フラップ174は、自動車に備えられる空調システムのうち車室内につながるダクト171に設けられており、車室内への送風の循環状態を外気導入あるいは内気循環に切り替えるために備えられている。
【0051】
また、電子制御アセンブリ160は、フラップ制御回路161と、アクチュエータ162と、を備えて構成されている。このうち、フラップ制御回路161は、マイコン101の出力端子106(OUT端子106)に接続されており、出力端子106からのアセンブリ制御信号(フラップ開閉信号Sf)に従いアクチュエータ162を駆動して、フラップ174を回動することで、内気取り入れ用ダクト172および外気取り入れ用ダクト173のいずれかをダクト171に接続する。なお、ダクト171の内部には、空気を車室内側に向けて圧送するファン175が備えられている。
【0052】
そして、例えば、フラップ174が、図2において実線で示すように、外気取り入れ用ダクト173を塞ぐ位置に配置されると、外気の室内への進入が阻止されてダクト171は内気取り入れ用ダクト172と連通して、車室内の空気を循環させる内気循環状態となる。反対に、フラップ174が、図2において破線で示すように、内気取り入れ用ダクト172を塞ぐ位置に配置されると、ダクト171は外気取り入れ用ダクト173と連通して、車室外の空気を車室内に取り入れる外気導入状態となる。
【0053】
次に、マイコン101は、詳細は図示しないが、公知の構成を有し、演算を行うマイクロプロセッサ、プログラムやデータを一時記憶するRAM、プログラムやデータを保持するROM、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路などを含んで構成されている。なお、A/D変換回路は、第1AD変換入力端子102、第2AD変換入力端子103、第3AD変換入力端子104から入力されるアナログ信号を、マイクロプロセッサなどで使用可能なデジタル信号に変換する。また、マイコン101は、ヒータ回路131に対してパルス指令信号Shを出力するPWM端子105を備えている。
【0054】
さらに、レギュレータ回路140は、レギュレータ141によって、バッテリ電圧VBの変動に拘わらず、常に一定の駆動電圧Vcc(5[V])を出力するよう構成されており、マイコン101、G素子回路110、D素子回路120等に対して駆動電圧Vccを出力することで、電力供給を行う。なお、マイコン101は、受電端子107(Vcc端子)にて駆動電圧Vccを受電する。
【0055】
また、G素子回路110は、G素子2と抵抗値Raの第1抵抗111とで駆動電圧Vccを抵抗分圧する回路であり、G素子2と第1抵抗111との分圧点(以下、動作点Pgともいう)が、マイコン101の第1AD変換入力端子102に接続されている。そして、動作点Pgの電位(以下、G素子電圧Vgともいう)は、Gセンサ抵抗値Rgの変化に応じて値が変化しており、具体的には、還元性ガス(CO、HCなど)の濃度が上昇すると、G素子電圧Vgは低下する。
【0056】
同様に、D素子回路120は、D素子3と抵抗値Rbの第2抵抗121とで駆動電圧Vccを抵抗分圧する回路であり、D素子3と第2抵抗121との分圧点(以下、動作点Pdともいう)が、マイコン101の第2AD変換入力端子103に接続されている。そして、動作点Pdの電位(以下、D素子電圧Vdともいう)は、Dセンサ抵抗値Rdの変化に応じて値が変化しており、具体的には、酸化性ガス(NOxなど)の濃度が上昇すると、D素子電圧Vdは上昇する。
【0057】
そして、マイコン101は、後述するガス検知判定処理を実行することで、第1AD変換入力端子102および第2AD変換入力端子103に入力されたG素子電圧VgおよびD素子電圧Vdの変化に応じて、還元性ガスや酸化性ガスの濃度変化を検出する。また、マイコン101は、還元性ガスや酸化性ガスの濃度変化についての検出結果に基づき、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力し、ダクト171の内部に備えられるフラップ174の切り替え制御処理を行う。
【0058】
また、ヒータ回路131は スイッチング回路132と、電圧検出回路180とを備えて構成されている。
このうち、電圧検出回路180は、抵抗181,182およびコンデンサ183を備えており、バッテリ191からヒータ4への印加電圧値(換言すれば、バッテリ電圧VB)を分圧し、その分圧した分圧バッテリ電圧VEをマイコン101の第3AD変換入力端子104に入力するよう構成されている。つまり、電圧検出回路180は、ヒータ4への印加電圧を、マイコン101の第3AD変換入力端子104に入力可能な電圧レベルに変換して、マイコン101に対して出力するよう構成されている。
【0059】
また、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shに基づき、ヒータ4への電力供給経路を通電状態あるいは遮断状態に切り替え可能に構成されている。つまり、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shが抵抗134を通じてトランジスタ135のベースに入力されるよう構成されており、トランジスタ135は、パルス指令信号Shの状態に応じてオン状態(通電状態)またはオフ状態(遮断状態)に設定される。なお、抵抗136は、バイアス抵抗である。このようなトランジスタ135の状態変化により、抵抗137および抵抗138の接続点に接続するpチャネルMOSFET133のゲート電位が変化して、MOSFET133は、パルス指令信号Shの状態に応じてオン状態(通電状態)またはオフ状態(遮断状態)に設定される。
【0060】
つまり、スイッチング回路132は、マイコン101からのパルス指令信号Shに応じて、ヒータ4への通電・遮断を切り替えることで、ヒータ4への印加電圧をPWM制御するよう構成されている。
【0061】
次に、マイコン101において実行されるガス検知判定処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
なお、ガス検知判定処理は、車両用外気導入制御システム100が起動されると共に処理が開始され、車両用外気導入制御システム100が停止するまで処理を継続する。
【0062】
ガス検知判定処理が開始されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、RAM動作の初期化などを含む初期設定処理を行う。
なお、S110での初期設定処理には、サンプリング時間カウンタ更新処理を起動する処理や各種パラメータの値を初期値に設定する処理などが含まれる。サンプリング時間カウンタ更新処理は、S160での判定処理に用いるサンプリング時間カウンタを経過時間に応じた値に更新する処理を行う。
【0063】
次のS120では、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に応じた値を示すD側センサ出力値と、G素子2の抵抗値(Gセンサ抵抗値Rg)に応じた値を示すG側センサ出力値と、を取得する処理を行う。ここでは、第1AD変換入力端子102および第2AD変換入力端子103から入力されるアナログ信号をA/D変換回路で変換して得られるデジタル信号を、G側センサ出力値およびD側センサ出力値として取得する。
【0064】
なお、以下の説明においては、D素子3の抵抗値(Dセンサ抵抗値Rd)に応じた値を示すD側センサ出力値を「D側センサ出力値S(n)」ともいう。
次のS130では、S120で取得したG側センサ出力値を利用して、還元性ガスの有無について判定を行うGセンサ処理を実行する。
【0065】
なお、Gセンサ処理では、S120で取得したG側センサ出力値の履歴データを記録する処理や、G側センサ出力値の履歴データを用いて判定基準値を設定する処理や、最新のG側センサ出力値と判定基準値との比較結果に基づいて還元性ガスの有無を判定する処理や、判定結果に応じて還元性ガス検知フラグ(G検知F)の状態を設定する処理などを行う。Gセンサ処理における還元性ガスの有無を判定する処理としては、例えば、G素子2より得られるG側センサ出力値の変化状態が還元性ガスに対する反応状態である場合に、還元性ガスが有りと判定する処理を実行する。
【0066】
還元性ガス検知フラグ(G検知F)は、還元性ガスの有無の判定結果に応じて状態が更新されるフラグであり、還元性ガス有りの判定結果である場合にはセット状態(=1)に設定され、還元性ガス無しの判定結果である場合には、リセット状態(=0)に設定される。そして、Gセンサ処理で設定された還元性ガス検知フラグ(G検知F)の状態は、後述するS140やS150の処理などで利用される。
【0067】
なお、本実施形態におけるG側センサ出力値を用いた還元性ガス有無判定処理としては、公知の手法(処理)を用いて行うことができるため詳細な説明は省略するが、例えば、特開2003−227807号公報にて本願出願人が開示した判定処理を利用することができる。
【0068】
次のS140では、S120で取得したD側センサ出力値S(n)を利用して、酸化性ガスの有無について判定を行うDセンサ処理を実行する。なお、Dセンサ処理では、酸化性ガスの有無判定にあたり、還元性ガス(CO)の影響による誤検出が発生したか否かを判定する誤検出判定処理も行う。
【0069】
ここで、S140におけるDセンサ処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを、図4に示す。
Dセンサ処理が起動されると、まず、S210では、各種数値演算処理を実行する。なお、S210では、S120で取得したD側センサ出力値S(n)を用いて、判定基準値B(n)、差分値LD(n)、一次微分値W_D_DIF(n)、二次微分値W_D_DIF2(n)などの演算処理を行う。
【0070】
ここで、S210における各種数値演算処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを図5に示す。
各種数値演算処理が起動されると、まず、S310では、D側センサ出力値S(n)が判定基準値B(n-1)よりも大きいか否かを判定しており、肯定判定する場合には、S330に移行し、否定判定する場合にはS320に移行する。
【0071】
なお、引数nは、センサ出力値の取得時期(サンプリング時期)に応じて値が定められる整数であり、サンプリング時期が過去に遡るほど引数nの値が小さくなり、サンプリング時期が未来になるほど引数nの値が大きくなる。
【0072】
つまり、D側センサ出力値S(n)は、今回のサンプリング時期に取得されたD側センサ出力値であり、判定基準値B(n-1)は、前回のサンプリング時期に設定された判定基準値である。なお、車両用外気導入制御システム100を起動した直後(初回のサンプリング時期)においては、前回のサンプリング時期がないため判定基準値B(n-1)が存在しないが、初回のサンプリングで得られたD側センサ出力値が判定基準値B(n-1)に対して設定される。
【0073】
S310で否定判定されてS320に移行すると、S320では、判定基準値B(n)に今回取得したD側センサ出力値S(n)の値を設定する処理と、差分値LD(n)に0を代入する処理を実行する。
【0074】
また、S310で肯定判定されてS330に移行すると、S330では、判定基準値B(n)および差分値LD(n)の演算処理を行う。具体的には、判定基準値B(n)については[数1]に基づき演算を行い、差分値LD(n)については[数2]に基づき演算を行う。
【0075】
【数1】

【0076】
【数2】

なお、[数1]のうち、k1は予め定められた第1演算係数であり、k2は予め定められた第2演算係数である。
【0077】
また、[数1]の演算では、過去データ(D側センサ出力値S(n-32 )、判定基準値B(n-1)など)を用いるが、車両用外気導入制御システム100の起動から間もない時期においては、過去データが蓄積されていない。このため、起動後間もない時期におけるS330での処理に用いられる過去データには、その時点で得られている分だけの過去データを用いているようにしている。
【0078】
S320またはS330での処理が終了してS340に移行すると、S340では、D側センサ出力値S(n)を時間で微分演算して得られる一次微分値W_D_DIF(n)の演算処理を行う。本実施形態においては、一次微分値を簡易的な手法で演算しており、具体的には、今回取得したD側センサ出力値S(n)と16回前のサンプリング時期に取得したD側センサ出力値S(n-16 )との差分値(=S(n)−S(n-16 ))を、一次微分値W_D_DIF(n)として演算する処理を行う。
【0079】
次にS350では、D側センサ出力値S(n)を時間で微分演算して得られる二次微分値W_D_DIF2(n)の演算処理を行う。そして、本実施形態においては、二次微分値を簡易的な手法で演算している。具体的には、S340での処理で得られる一次微分値W_D_DIF(n)のうち、今回のサンプリング時期に演算した一次微分値W_D_DIF(n)と16回前のサンプリング時期に演算した一次微分値W_D_DIF(n-16 )との差分値(=W_D_DIF(n)−W_D_DIF(n-16 ))を、二次微分値W_D_DIF2(n)として演算する処理を行う。
【0080】
なお、一次微分値W_D_DIF(n)および二次微分値W_D_DIF2(n)の演算方法は、このような方法に限定されることはなく、D側センサ出力値S(n)を時間で微分演算した一次微分値および二次微分値を得られる演算方法であれば、他の演算方法を採用しても良い。
【0081】
続くS360では、上述の演算により得られた判定基準値、差分値、一次微分値、二次微分値などの各数値を記憶部(メモリなど)に記憶する処理を行い、各数値の保管処理を行う。
【0082】
S360での処理が終了して、Dセンサ処理のS210が終了すると、次のS220に移行する。
S220では、S210で演算した二次微分値W_D_DIF2(n)に基づいて、還元性ガスの影響による酸化性ガスの誤検出が生じる状況にあるか否かを判定する処理を行う。ここで、S220における二次微分値に基づく変動判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを図6に示す。
【0083】
二次微分値に基づく変動判定処理が起動されると、まず、S410では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態であること、かつ、二次微分値W_D_DIF2(n)が二次微分値変動判定値Aよりも小さいこと、という条件を満たすか否か判定しており、肯定判定する場合にはS420に移行し、否定判定する場合にはS450に移行する。
【0084】
なお、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)は、後述するS240(酸化性ガス検出判定処理)での判定結果に応じて状態が更新されるフラグであり、酸化性ガス有りの判定結果である場合にはセット状態(=1)に設定され、酸化性ガス無しの判定結果である場合には、リセット状態(=0)に設定される。
【0085】
また、二次微分値変動判定値Aは、二次微分値W_D_DIF2(n)のとりうる数値であって、D素子3(特定ガス素子)が還元性ガス(他種ガス)の影響を受けたときの数値と、D素子3が還元性ガスの影響を受けていないときの数値との境界値が設定されている。つまり、「二次微分値変動判定値Aよりも小さい数値範囲」が特許請求の範囲における二次微分変動範囲に相当する。
【0086】
なお、二次微分値変動判定値A(あるいは、二次微分変動範囲)は、実際の測定によりD素子3が還元性ガスの影響を受けたときに二次微分値W_D_DIF2(n)がとりうる値を測定し、その測定結果に基づいて定めることができる。
【0087】
S410で肯定判定されてS420に移行すると、S420では、誤検出フラグF_D_DIFがリセット状態(=0)であること、かつ、変動検出フラグF_D_DIF2がリセット状態(=0)であること、という条件を満たすか否か判定しており、肯定判定する場合にはS430に移行し、否定判定する場合にはS440に移行する。
【0088】
なお、誤検出フラグF_D_DIFは、一次微分値に基づく誤検出判定により誤検出有りと判定されるとセット状態(=1)に設定され、誤検出が解消されたと判定されるとリセット状態(=0)に設定される内部フラグである。また、変動検出フラグF_D_DIF2は、二次微分値に基づきD側センサ出力値S(n)に還元性ガスの影響が及び始めていると判定されるとセット状態(=1)に設定され、上記影響が解消されたと判定されるとリセット状態(=0)に設定される内部フラグである。
【0089】
S420で肯定判定されてS430に移行すると、S430では、今回のサンプリング時期に取得したD側センサ出力値S(n)を解消判定値DNAMAに代入する処理を実行する。
【0090】
なお、解消判定値DNAMAは、D素子3での誤検出が生じる状況にあると判定されている場合に、その状況が解消したか否かを判定するための判定値である。そして、解消判定値DNAMAは、D側センサ出力値S(n)の取りうる数値であって、還元性ガスが無い場合の数値範囲と還元性ガスがある場合の数値範囲との境界値が設定されている。つまり、「解消判定値DNAMAよりも小さい数値範囲」が特許請求の範囲における補正判定用基準範囲に相当する。
【0091】
S420で否定判定されるか、S430での処理が終了してS440に移行すると、S440では、変動検出フラグF_D_DIF2をセット状態(=1)に設定する。
S410で否定判定されるか、S440での処理が終了してS450に移行すると、S450では、変動検出フラグF_D_DIF2がセット状態(=1)であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS460に移行し、否定判定する場合には本処理(二次微分値に基づく変動判定処理)を終了する。
【0092】
S450で肯定判定されてS460に移行すると、S460では、D側センサ出力値S(n)が解消判定値DNAMAよりも大きいか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS470に移行し、否定判定する場合には本処理(二次微分値に基づく変動判定処理)を終了する。なお、S460では、D側センサ出力値S(n)と解消判定値DNAMAとの比較結果に基づいて、誤検出が生じうる状況が解消したか否かを判定している。
【0093】
S460で肯定判定されてS470に移行すると、S470では、変動検出フラグF_D_DIF2をリセット状態(=0)に設定する。
S450で否定判定されるか、S460で否定判定されるか、S470での処理が終了すると、本処理(二次微分値に基づく変動判定処理)を終了する。
【0094】
このようにしてDセンサ処理のS220が終了すると、次のS230に移行する。
S230では、S210で演算した一次微分値W_D_DIF(n)に基づいて、還元性ガスの影響による酸化性ガスの誤検出が生じたか否かを判定する処理を行う。ここで、S230における一次微分値に基づく誤検出判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートを図7に示す。
【0095】
一次微分値に基づく誤検出判定処理が起動されると、まず、S510では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態(=0)であること、かつ、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態(=1)であること、かつ、一次微分値W_D_DIF(n)が一次微分値誤検出判定値Bよりも小さいこと、という条件を満たすか否か判定しており、肯定判定する場合にはS520に移行し、否定判定する場合にはS530に移行する処理を行う。
【0096】
このうち、一次微分値誤検出判定値Bは、一次微分値W_D_DIF(n)のとりうる数値であって、D素子3(特定ガス素子)が還元性ガス(他種ガス)の影響を受けたときの数値と、D素子3が還元性ガスの影響を受けていないときの数値との境界値が設定されている。つまり、「一次微分値誤検出判定値Bよりも小さい数値範囲」が特許請求の範囲における一次微分誤検出範囲に相当する。
【0097】
なお、一次微分値誤検出判定値B(あるいは、一次微分誤検出範囲)は、実際の測定によりD素子3が還元性ガスの影響を受けたときに一次微分値W_D_DIF(n)がとりうる値を測定し、その測定結果に基づいて定めることができる。
【0098】
S510で肯定判定されてS520に移行すると、S520では、誤検出フラグF_D_DIFをセット状態(=1)に設定し、タイマ用フラグF_G_DTCをセット状態(=1)に設定する。なお、タイマ用フラグF_G_DTCは、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態からリセット状態に変更された時期を特定するためのフラグである。
【0099】
S510で否定判定されるか、S520での処理が終了してS530に移行すると、S530では、誤検出フラグF_D_DIFがセット状態(=1)であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS540に移行し、否定判定する場合には本処理(一次微分値に基づく誤検出判定処理)を終了する。
【0100】
S530で肯定判定されてS540に移行すると、S540では、タイマ用フラグF_G_DTCがセット状態(=1)であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS550に移行し、否定判定する場合にはS570に移行する。
【0101】
S540で肯定判定されてS550に移行すると、S550では、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がリセット状態(=0)であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS560に移行し、否定判定する場合には本処理(一次微分値に基づく誤検出判定処理)を終了する。
【0102】
S550で否定判定されてS560に移行すると、S560では、タイマ変数W_D_TIMERにタイマ初期設定値T1を設定し、タイマ用フラグF_G_DTCをリセット状態(=0)に設定する処理を行う。
【0103】
なお、タイマ初期設定値T1は、D素子3での誤検出有りと判定されている時(F_D_DIFがセット状態の時)に、還元性ガスが無い状態(還元性ガス検知フラグ(G検知F)がリセット状態)と判定された時点(S550での肯定判定時)を起点として、還元性ガスの影響が解消するまでの所要時間以上の値が設定されている。なお、タイマ初期設定値T1については、例えば、実際の測定により、還元性ガスの影響が解消するまでの所要時間を測定し、その測定結果に基づいて定めることができる。
【0104】
そして、S560での処理が終了すると、本処理(一次微分値に基づく誤検出判定処理)を終了する。
また、S540で否定判定されてS570に移行すると、S570では、タイマ変数W_D_TIMERの値が0よりも大きいか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS580に移行し、否定判定する場合には本処理(一次微分値に基づく誤検出判定処理)を終了する。
【0105】
S570で肯定判定されてS580に移行すると、S580では、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がリセット状態(=0)であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS590に移行し、否定判定する場合にはS600に移行する。
【0106】
S580で肯定判定されてS590に移行すると、S590では、タイマ変数W_D_TIMERの値を減算する処理を実行する。このときの減算値は、一連の処理において繰り返し実行されるS590の実行周期に基づいて定めることができ、例えば、500[ms]周期でS590の処理が実行される場合には、S590での減算値を500[ms]に設定すると良い。
【0107】
なお、S590では、減算処理の結果、タイマ変数W_D_TIMERの値が0未満となる場合には、タイマ変数W_D_TIMERの値を0に設定する。つまり、S590では、還元性ガスが無い状態(還元性ガス検知フラグ(G検知F)がリセット状態)と判定された時点(S550での肯定判定時)を起点として、タイマ初期設定値T1として定められた時間が経過した後は、タイマ変数W_D_TIMERの値を0に設定する。
【0108】
S580で否定判定されるか、S590での処理が終了してS600に移行すると、S600では、タイマ変数W_D_TIMERの値が0であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS610に移行し、否定判定する場合には本処理(一次微分値に基づく誤検出判定処理)を終了する。
【0109】
S600で肯定判定されてS610に移行すると、S610では、D側センサ出力値S(n)が解消判定値DNAMAよりも小さいか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS620に移行し、否定判定する場合にはS630に移行する。
【0110】
S610で肯定判定されてS620に移行すると、S620では、判定基準値B(n)に対してD側センサ出力値S(n)の値を代入し、差分値LD(n)に対して0を代入する処理を行う。
【0111】
S610で否定判定されるか、S620での処理が終了してS630に移行すると、S630では、誤検出フラグF_D_DIFをリセット状態(=0)に設定し、変動検出フラグF_D_DIF2をリセット状態(=0)に設定する。
【0112】
そして、S630での処理が終了すると、本処理(一次微分値に基づく誤検出判定処理)を終了する。
一次微分値に基づく誤検出判定処理が終了して、Dセンサ処理のS230が終了すると、次のS240に移行する。
【0113】
S240では、S210〜S230で演算した差分値LD(n)などに基づいて酸化性ガスの有無を判定する処理(酸化性ガス検出判定処理)を行う。ここで、S240における酸化性ガス検出判定処理の処理内容を表したフローチャートを図8に示す。
【0114】
酸化性ガス検出判定処理が起動されると、まず、S710では、差分値LD(n)と濃度高閾値Tuとを比較して、差分値LD(n)が濃度高閾値Tuよりも大きいか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS720に移行し、否定判定する場合にはS730に移行する。
【0115】
S710で肯定判定されてS720に移行すると、S720では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)をセット状態(=1)に設定する処理を行う。つまり、S720では、「酸化性ガス有り」とする判定処理を行う。
【0116】
S710で否定判定されるか、S720での処理が終了してS730に移行すると、S730では、差分値LD(n)と濃度低閾値Tdとを比較して、差分値LD(n)が濃度低閾値Td以下であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS740に移行し、否定判定する場合には本処理(酸化性ガス検出判定処理)を終了する。
【0117】
S730で肯定判定されてS740に移行すると、S740では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)をリセット状態(=0)に設定する処理を行う。つまり、S740では、「酸化性ガス無し」とする判定処理を行う。
【0118】
なお、濃度高閾値Tuは、酸化性ガスの有無を判定するための閾値であり、差分値LD(n)のうち、酸化性ガスを検出している時の差分値(検出時差分値)がとりうる数値範囲と酸化性ガスを検出していない時の差分値(非検出時差分値)がとりうる数値範囲との境界となる値が設定されている。そして、濃度高閾値Tuは、例えば、実際の測定により、検出時差分値がとりうる数値範囲および非検出時差分値がとりうる数値範囲を測定し、その測定結果に基づいて定めることができる。
【0119】
また、濃度低閾値Tdは、濃度高閾値Tuと同様に、酸化性ガスの有無を判定するための閾値であり、濃度高閾値Tuよりも小さい値(Tu>Tdの関係となる値)に設定されている。つまり、差分値LD(n)が閾値近傍で変化する場合に、単一の閾値(濃度高閾値Tu)のみで判定すると、判定結果として「酸化性ガス有り」と「酸化性ガス無し」とが頻繁に切り替わる状態(チャタリング状態)が生じる虞がある。これに対して、2つの閾値(濃度高閾値Tuおよび濃度低閾値Td。Tu>Tdの関係。)を用いることで、差分値LD(n)が閾値近傍で変化する場合であっても、判定結果のチャタリング状態が生じるのを防止できる。
【0120】
S730で否定判定されるか、S740での処理が終了すると、本処理(酸化性ガス検出判定処理)を終了する。
これにより、Dセンサ処理のS240が終了するとともにDセンサ処理が終了し、ガス検知判定処理における次のユニット出力処理(S150)に移行する。
【0121】
S150では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)および還元性ガス検知フラグ(G検知F)の状態に基づいてフラップ開閉信号Sfを設定し、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に出力する処理を行う。ここで、S150におけるユニット出力処理の処理内容を表したフローチャートを図9に示す。
【0122】
ユニット出力処理が起動されると、まず、S810では、誤検出フラグF_D_DIFがセット状態(=1)である、という条件を満たすか否か判定しており、肯定判定する場合にはS840に移行し、否定判定する場合にはS830に移行する。
【0123】
つまり、S810では、還元性ガスの影響によりD素子3に誤検出が発生したか否かを判定している。
S810で否定判定されてS830に移行すると、S830では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態(=1)であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS850に移行し、否定判定する場合にはS840に移行する。
【0124】
S810で肯定判定されるか、S830で否定判定されてS840に移行すると、S840では、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態(=1)であるか否かを判定しており、肯定判定する場合にはS850に移行し、否定判定する場合にはS860に移行する。
【0125】
S830で肯定判定されるか、S840で肯定判定されてS850に移行すると、S850では、フラップ開閉信号Sfを「フラップ174の位置を内気循環状態とする指令内容」(内気循環指令)に設定して、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力する処理を行う。
【0126】
つまり、S830で肯定判定されるか、S840で肯定判定される場合には、外気中に酸化性ガスまたは還元性ガスの少なくとも一方が含まれていると判定できる(換言すれば、外気が汚れていると判定できる)。このような場合、ガス検出装置150は、内気循環指令としてのフラップ開閉信号Sfを出力して、フラップ174の位置を内気循環状態に設定することで、汚れた外気が導入されるのを防止する。
【0127】
S840で否定判定されてS860に移行すると、S860では、フラップ開閉信号Sfを「フラップ174の位置を外気導入状態とする指令内容」(外気導入指令)に設定して、フラップ開閉信号Sfを電子制御アセンブリ160に対して出力する処理を行う。
【0128】
つまり、S840で否定判定される場合には、外気中に酸化性ガスおよび還元性ガスのいずれも含まれていないと判定できる(換言すれば、外気が汚れていないと判定できる)。このような場合、ガス検出装置150は、外気導入指令としてのフラップ開閉信号Sfを出力して、フラップ174の位置を外気導入状態に設定することで、外気が導入されるように制御を行う。
【0129】
なお、フラップ開閉信号Sfを受信した電子制御アセンブリ160は、フラップ開閉信号Sfの指令内容に応じて、フラップ174を駆動制御する。
次のS160では、サンプリング時間カウンタの数値に基づいてサンプリング時間がカウントアップされたか否かを判定しており、肯定判定する場合には再びS120に移行し、否定判定する場合には同ステップを繰り返し実行することで肯定判定されるまで待機する。つまり、S160は、予め定められたサンプリング周期(サンプリング時間)が経過する毎に肯定判定する処理を行う。
【0130】
このように構成されたガス検出装置150は、S120でのセンサ値取得処理が周期的に実行され、D素子3およびG素子2のセンサ値を周期的に取得する。
そして、ガス検出装置150は、S120〜S160までの処理を繰り返し実行することで、D素子3およびG素子2のセンサ値を周期的に取得し、取得したセンサ値に基づいて酸化性ガスまたは還元性ガスの有無について判定を行う。
【0131】
また、ガス検出装置150は、ガス検出判定に際して、還元性ガスの影響によりD素子3のセンサ値が変化した場合に、誤って酸化性ガスが有りと判定しないように、誤検出判定を行う。
【0132】
次に、本実施形態のガス検出装置150を用いて、酸化性ガスを検出する際において、還元性ガスの影響による誤検出の判定精度を評価した実験結果について説明する。
実験は、測定対象ガスにおける酸化性ガスおよび還元性ガスの濃度をそれぞれ変動させる条件下でガス検知判定を行い、そのときの酸化性ガス検知フラグ(D検知F)、誤検出フラグF_D_DIF、変動検出フラグF_D_DIF2などの各変数の変化状態を記録する、という方法を採った。
【0133】
なお、酸化性ガスとしてはNO2 を用い、還元性ガスとしてはCOを用いた。
図10に本実施形態のガス検出装置150における実験結果を示す。なお、図10では横軸を経過時間とし、縦軸を各変数の値や変数の状態として、実験結果を表す。
【0134】
実験結果に示すように、経過時間が約33〜50[sec]となる期間においては、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態となっており、「酸化性ガス有り」と判定されている。これは、経過時間が約33[sec]となった時点で、上述したS720での処理により酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態に変更され、経過時間が約50[sec]となった時点で、上述したS740での処理により酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態に変更されたことを表している。
【0135】
また、時刻t1〜t4の期間では、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態となっており、「還元性ガス有り」と判定されている。これは、S130での処理により、時刻t1にて還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態に変更され、時刻t4にて還元性ガス検知フラグ(G検知F)がリセット状態に変更されたことを表している。S130での処理においては、具体的には、G側センサ出力値とG素子判定基準値との差分の絶対値が所定の判定用閾値(G素子判定用閾値)よりも大きい場合に、「還元性ガス有り」と判定している。
【0136】
さらに、時刻t1〜t5の期間では、変動検出フラグF_D_DIF2がセット状態に設定されている。これは、時刻t1の時点で、S440での処理において、変動検出フラグF_D_DIF2の状態が変更され、時刻t5の時点で、S470での処理において、変動検出フラグF_D_DIF2の状態が変更されたことを表している。
【0137】
また、時刻t2〜t6の期間では、誤検出フラグF_D_DIFがセット状態に設定されており、「D素子3での誤検出有り」と判定されている。これは、時刻t2の時点で、S520での処理において、誤検出フラグF_D_DIFの状態が変更され、時刻t6の時点で、S630での処理において、誤検出フラグF_D_DIFの状態が変更されたことを表している。
【0138】
さらに、時刻t3〜t6の期間では、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態となっており、「酸化性ガス有り」と判定されている。これは、時刻t3の時点で、上述したS720での処理により酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態に変更され、時刻t6の時点で、上述したS740での処理により酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態に変更されたことを表している。
【0139】
しかし、時刻t3〜t6の期間は、誤検出フラグF_D_DIFがセット状態にされており、「D素子3での誤検出有り」と判定されている。このため、時刻t3〜t6の期間においては、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態であることに起因して、外気中に酸化性ガスが含まれている(換言すれば、外気が汚れている)と判定されることはない。つまり、時刻t3〜t6の期間においては、「D素子3での誤検出有り」と判定されているため、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態であることに起因して、「内気循環指令」としてのフラップ開閉信号Sfが出力されることはない。
【0140】
なお、時刻t1〜t4の期間においては、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態であるため、還元性ガス検知フラグ(G検知F)の状態に起因して、「外気導入指令」としてのフラップ開閉信号Sfが出力される。
【0141】
そして、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がリセット状態である時刻t4〜t6の期間においては、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態であるものの、誤検出フラグF_D_DIFがセット状態であることから、外気中に酸化性ガスは含まれていない(外気は汚れていない)と判定できる。このため、時刻t4〜t6の期間においては、フラップ開閉信号Sfは「内気循環指令」ではなく「外気導入指令」に設定されて出力される。
【0142】
つまり、D素子3での誤検出の有無を判定しない従来構成においては、時刻t4〜t6の期間においては、還元性ガスの影響により酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態となり、「外気が汚れている」と判定するため、酸化性ガスの検出精度が低下していた。これに対して、本実施形態のようにD素子3での誤検出の有無を判定する場合には、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がセット状態に設定されたとしても、「D素子3での誤検出有り」との判定を踏まえて、「外気は汚れていない」と判定できる。
【0143】
このため、本実施形態のガス検出装置150は、誤って酸化性ガス有りと判定するのを防止でき、酸化性ガスの検出精度が低下するのを抑制できる。
以上説明したように、本実施形態のガス検出装置150は、D素子3(特定ガス素子)における電気的特性(Dセンサ抵抗値Rd)の変化状態が酸化性ガス(特定ガス:NOx,NO2 など)に対する反応状態であるか否かだけを判定(S240)するのではなく、D素子3によるD側センサ出力値S(n)の変化状態が還元性ガス(他種ガス:COなど)に対する反応状態であるか否かについても判定する(S210,S220,S230,S340,S510,S520)。
【0144】
つまり、このガス検出装置150は、還元性ガスに反応してD素子3における電気的特性が変化した場合には、還元性ガスに対する反応状態であると判定できる。このため、ガス検出装置150においては、D素子3によるD側センサ出力値S(n)の変化状態における一部の状態が酸化性ガスに対する反応状態に近い場合であっても、酸化性ガスに対する反応状態であると誤って判定することを抑制できる。
【0145】
また、ガス検出装置150は、還元性ガス用ガスセンサ素子2(G素子2、他種ガス素子)を備えるとともに、G素子2における電気的特性の変化状態(換言すれば、G素子2より得られるG側センサ出力値の変化状態)に基づいて還元性ガス(他種ガス)の有無を判定するGセンサ処理(S130)を行う。このGセンサ処理(S130)は、D素子3における電気的特性の変化状態ではなく、還元性ガスを検出するためのG素子2における電気的特性の変化状態に基づいて判定することから、還元性ガスの有無を高精度に判定できる。
【0146】
そして、このガス検出装置150は、S510での判定処理において、酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態(=0)であること、かつ、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態(=1)であること、かつ、一次微分値W_D_DIF(n)が一次微分値誤検出判定値Bよりも小さいこと、という条件を満たす場合に、D素子3での誤検出有りと判定する。
【0147】
つまり、ガス検出装置150は、酸化性ガスが有りと判定されていない条件下(D検知F=0)において、D素子3が他種ガス反応状態である(W_D_DIF(n)<B)と判定され、かつ、G素子2を用いたGセンサ処理(S130)にて還元性ガスが有りと判定される場合(G検知F=1)に、D素子3での誤検出有りと判定する。
【0148】
これにより、ガス検出装置150は、酸化性ガスではなく還元性ガスの影響によってD素子3の電気的特性が変化した場合であっても、誤って「酸化性ガスが有り」と判定してしまうのを抑制できる。
【0149】
次に、ガス検出装置150は、S330において、D側センサ出力値S(n)の変化状態に基づいて、酸化性ガスの検出判定に用いる判定基準値B(n)を更新する処理を行う。また、ガス検出装置150は、S330において、D側センサ出力値S(n)から判定基準値B(n)を差し引いた差分値LD(n)を演算する。
【0150】
そして、ガス検出装置150は、S710において、差分値LD(n)と濃度高閾値Tuとを比較して、差分値LD(n)が濃度高閾値Tuよりも大きい場合(肯定判定する場合)に、酸化性ガスが有りと判定して、S720にて酸化性ガス検知フラグ(D検知F)をセット状態(=1)に設定する。
【0151】
また、ガス検出装置150は、「還元性ガスが有り」との判定が解消された時点(S550で肯定判定)を起点として、タイマ初期設定値T1(誤検出解消期間)が経過(S600で肯定判定)した場合には、S620において、判定基準値B(n)に対してD側センサ出力値S(n)の値を代入し、差分値LD(n)に対して0を代入する処理を行う。つまり、S620では、判定基準値B(n)および差分値LD(n)を補正する処理を行う。
【0152】
つまり、このガス検出装置150は、酸化性ガスの有無を判定する判定基準値B(n)として、常時一定の固定値ではなく、D素子3における電気的特性(D側センサ出力値S(n))の変化状態に基づいて更新される可変値を用いている。なお、S330での処理では、D側センサ出力値S(n)の変化に対して遅れて追従するように、判定基準値B(n)を更新する。
【0153】
このように、このガス検出装置150は、固定値ではなく可変値としての判定基準値B(n)を用いて酸化性ガスの有無を判定することから、周囲環境の温度や湿度の変化等による影響(周囲環境の温度や湿度の変化等がD素子3の電気的特性に及ぼす影響)がキャンセル(除外)された上での適切な判定が可能となり、酸化性ガスの有無をより精度良く判定できる。
【0154】
そして、このガス検出装置150は、S620において判定基準値を補正する処理を行うことから、誤検出解消直後の判定基準値B(n)および差分値LD(n)が不適切な値に設定されるのを防止できる。このため、ガス検出装置150は、誤検出が解消した直後に、判定基準値B(n)および差分値LD(n)が不適切な値に設定されたことに起因して誤って「酸化性ガスが有り」と判定されること(誤判定)を防止できる。
【0155】
よって、ガス検出装置150によれば、酸化性ガスの有無を判定するにあたり、周囲環境の温度や湿度の変化等に応じた適切な判定が可能となるため、酸化性ガスの検出精度を向上できる。また、ガス検出装置150によれば、還元性ガスの影響による誤検出が解消したと判定された直後に、誤って「酸化性ガスが有り」と判定されるのを防止できるため、酸化性ガスの検出精度が低下することを抑制できる。
【0156】
次に、ガス検出装置150は、変動検出フラグF_D_DIF2がセット状態(=1)である状況下(S450で肯定判定)において、S460にて、D側センサ出力値S(n)が解消判定値DNAMAよりも大きいか否かを判定する。なお、S460では、D側センサ出力値S(n)と解消判定値DNAMAとの比較結果に基づいて、D素子3に対する還元性ガスの影響が解消されたか否かを判定している。
【0157】
つまり、D側センサ出力値S(n)が解消判定値DNAMAよりも大きい場合(S460で肯定判定)には、D素子3に対する還元性ガスの影響が解消されたと判定し、S470にて、変動検出フラグF_D_DIF2をリセット状態(=0)に設定する。
【0158】
次に、ガス検出装置150は、S410で肯定判定され、かつ、S420で肯定判定されると、S430にて、今回のサンプリング時期に取得したD側センサ出力値S(n)を解消判定値DNAMAに代入する処理を実行する。換言すれば、ガス検出装置150は、D側センサ出力値S(n)に還元性ガスの影響が及び始めていると判定された際のD側センサ出力値S(n)を、解消判定値DNAMAに設定する。
【0159】
つまり、このガス検出装置150は、解消判定値DNAMAを更新する処理を実行しており、固定値の解消判定値DNAMAではなく、可変値の解消判定値DNAMAに基づいて、誤検出が生じうる状況(D素子3に対して還元性ガスの影響が生じる状況)が解消したか否かを判定(S460)するように構成されている。
【0160】
このようなガス検出装置150は、解消判定値DNAMAを固定値とする場合に比べて、解消判定値DNAMAをD素子3の劣化状態やD素子3に対する還元性ガスの影響度合い等に応じた数値範囲に設定できる。
【0161】
また、S410での判定結果が否定判定(D素子3に還元性ガスの影響が及んでいない)から肯定判定(D素子3に還元性ガスの影響が及び始めている)に変更された際のD側センサ出力値S(n)は、D素子3に還元性ガスの影響が及び始めている状態とD素子3に還元性ガスの影響が及んでいない状態との境界値に相当している。このため、S430での処理で設定された解消判定値DNAMAを用いることで、D素子3に還元性ガスの影響が及び始めている状態とD素子3に還元性ガスの影響が及んでいない状態との境界を正確に判定できるとともに、D素子3に還元性ガスの影響が及び始めているか否かを精度良く判定できる。
【0162】
よって、本実施形態のガス検出装置150によれば、D素子3の劣化状態に応じて誤検出が生じうる状況が解消したか否かの判定が可能となる。
次に、ガス検出装置150は、誤検出解消期間中(換言すれば、「還元性ガスが有り」との判定が解消された時点(S550で肯定判定)を起点として、タイマ初期設定値T1(誤検出解消期間)が経過(S600で肯定判定)するまで)に特定ガス(酸化性ガス)の濃度増加が生じているか否かを判定している。
【0163】
具体的には、誤検出解消期間が経過したとき(S600で肯定判定されたとき)に、D側センサ出力値S(n)が解消判定値DNAMAよりも小さいか否かを判定しており(S610)、S610で肯定判定された場合にかぎり、判定基準値B(n)の補正を行うようにしている(S620)。
【0164】
ここで、解消判定値DNAMAの設定にあたっては、D側センサ出力値S(n)の二次微分値W_D_DIF2(n)が二次微分値変動判定値Aよりも小さいか否かを判定し(S410)、その判定結果が変化する時のD側センサ出力値S(n)に基づいて設定するようにしている(S430)。つまり、ガス検出装置150は、D側センサ出力値S(n)に還元性ガスの影響が及び始めている状況にあるかを判定(S410での判定結果が否定判定から肯定判定に変わったかを判定)し、S410での判定結果が否定判定から肯定判定に変わったときのD側センサ出力値S(n)に基づいて解消判定値DNAMAを設定するようにしている。
【0165】
なお、D側センサ出力値S(n)の二次微分値W_D_DIF2(n)は、D側センサ出力値S(n)の変化し始めを捉えやすい特性を有している。なお、D側センサ出力値S(n)の変化状態に関して、還元性ガスを受けている状況にあるか否かを判定するには、その判定精度を確保する点から、一次微分値W_D_DIF(n)のような大きな変化状態を捉えられる要素を用いることが適している。
【0166】
つまり、D側センサ出力値S(n)の二次微分値W_D_DIF2(n)が二次微分値変動判定値Aよりも小さいか否かを判定することで、D側センサ出力値S(n)に還元性ガスの影響が及び始めているか否かを判定することができる。そして、この判定結果のもとD側センサ出力値S(n)に基づき解消判定値DNAMAを設定するようにすれば、還元性ガスの影響が及び始めかけようとしているとき(換言すれば、D素子3での誤検出有りと判定され得る時期)のD側センサ出力値S(n)に基づき解消判定値DNAMAを設定することができる。
【0167】
そして、このようにして設定された解消判定値DNAMAと、S600にて肯定判定されたときのD側センサ出力値S(n)とを比較することで、タイマ初期設定値T1(誤検出解消期間)経過時のD側センサ出力値S(n)がD素子3での誤検出有りと判定され得る時期の酸化性ガスの濃度に対応した値にまで戻ってきたか否かを判定することができる。このように、誤検出解消期間経過時のD側センサ出力値S(n)が、D素子3での誤検出有りと判定され得る時期の酸化性ガスの濃度に対応した値にまで戻ってきたか否かを判定することで、誤検出解消期間中に大きな濃度変化が生じたか否かを推定することができる。
【0168】
このため、ガス検出装置150によれば、判定基準値B(n)の補正を酸化性ガスの濃度状況に応じて適切に行うことが可能となる。
なお、本実施形態においては、酸化性ガス用ガスセンサ素子3(D素子3)が特許請求の範囲における特定ガス素子に相当し、還元性ガス用ガスセンサ素子2(G素子2)が他種ガス素子に相当している。
【0169】
また、S240,S320,S330,S710、S720を実行するマイコン101が特定ガス判定手段に相当し、S340,S510,S520を実行するマイコン101が他種ガス反応状態判定手段に相当している。なお、S510のうち「酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態(=0)であること、かつ、一次微分値W_D_DIF(n)が一次微分値誤検出判定値Bよりも小さいこと、という条件を満たすか否かの判定処理」が他種ガス反応状態判定手段に相当している。
【0170】
また、S130を実行するマイコン101が他種ガス判定手段に相当し、S510,S520を実行するマイコン101が誤検出判定手段に相当している。なお、S510のうち「酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態(=0)であること、かつ、還元性ガス検知フラグ(G検知F)がセット状態(=1)であること、かつ、一次微分値W_D_DIF(n)が一次微分値誤検出判定値Bよりも小さいこと、という条件を満たすか否かの判定処理」が誤検出判定手段に相当している。
【0171】
また、S340を実行するマイコン101が一次微分値演算手段に相当し、S510を実行するマイコン101が一次微分判定手段に相当し、S520を実行するマイコン101が一次微分誤検出開始判定手段に相当している。なお、S510のうち「酸化性ガス検知フラグ(D検知F)がリセット状態(=0)であること、かつ、一次微分値W_D_DIF(n)が一次微分値誤検出判定値Bよりも小さいこと、という条件を満たすか否かの判定処理」が一次微分判定手段に相当している。
【0172】
さらに、S530,S540,S550,S560,S570,S580,S590,S600を実行するマイコン101が解消時間経過判定手段に相当し、S630を実行するマイコン101が時間経過誤検出解消判定手段に相当している。
【0173】
また、S320,S330を実行するマイコン101が判定基準値更新手段に相当し、S710、S720を実行するマイコン101が特定ガス比較判定手段に相当し、S620を実行するマイコン101が判定基準補正手段に相当している。
【0174】
さらに、S350を実行するマイコン101が二次微分値演算手段に相当し、S410を実行するマイコン101が二次微分判定手段に相当し、S430を実行するマイコン101が補正判定用基準範囲設定手段に相当し、S610を実行するマイコン101が補正許可判定手段に相当している。
【0175】
また、「二次微分値変動判定値Aよりも小さい数値範囲」が特許請求の範囲における二次微分変動範囲に相当し、「解消判定値DNAMAよりも小さい数値範囲」が補正判定用基準範囲に相当し、「一次微分値誤検出判定値Bよりも小さい数値範囲」が一次微分誤検出範囲に相当している。さらに、タイマ初期設定値T1が誤検出解消期間に相当し、濃度高閾値Tuおよび濃度低閾値Tdが判定用閾値に相当する。
【0176】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施形態(以下、第1実施形態ともいう)では、誤検出解消期間(タイマ変数W_D_TIMER)として、予め定められた固定値(タイマ初期設定値T1)を設定(S560)しているが、他種ガスの影響度合いの大きさに応じて設定される可変値を誤検出解消期間として設定しても良い。
【0177】
つまり、誤検出判定手段にて前記特定ガス素子での誤検出有りと判定された状況下において、前記特定ガス素子に対する前記他種ガスの影響度合いの大きさに応じて前記誤検出解消期間の値を設定する解消期間設定手段を備えるのである。この場合、他種ガスの影響度合いが大きくなるほど誤検出解消期間の値を大きく設定し、他種ガスの影響度合いが小さくなるほど誤検出解消期間の値を小さく設定することで、誤検出解消期間を他種ガスの影響度合いに応じた値に設定することができる。
【0178】
これにより、誤検出解消判定までの時間が無駄に長くなることや、あるいは、誤検出解消判定までの時間が不足することなどを防止できる。
なお、他種ガスの影響度合いは、例えば、他種ガスの反応時における電気的特性の変化状態に基づいて判定することができる。
【0179】
さらに、上記の第1実施形態では、解消判定値DNAMAは、S430で更新される可変値であるが、予め定められた固定値としても良い。なお、固定値とする場合には、例えば、実際の測定により、還元性ガスが無い場合にD側センサ出力値S(n)が取りうる数値範囲と、還元性ガスがある場合にD側センサ出力値S(n)が取りうる数値範囲と、を測定し、その測定結果に基づいて定めることができる。
【0180】
また、判定基準値B(n)の補正処理(S620)は、上記内容(判定基準値B(n)に対してD側センサ出力値S(n)の値を代入)に限られることはなく、判定基準値B(n)を「誤検出解消時点(S600で肯定判定された時点)のD側センサ出力値S(n)」に近い値に設定するという補正処理としてもよい。このとき、差分値LD(n)の補正処理としては、「補正後の判定基準値B(n)」と「誤検出解消時点(S600で肯定判定された時点)のD側センサ出力値S(n)」との差分値を差分値LD(n)に設定する処理を行う。
【0181】
このような補正方法であれば、判定基準値B(n)を還元性ガス(他種ガス)の影響が軽減された値(誤検出解消時点(S600で肯定判定された時点)のD側センサ出力値S(n))に近づけることができる。
【0182】
このような補正を行うガス検出装置は、誤検出解消直後の判定基準値が不適切な値(他種ガスの影響が大きく反映された値)に設定されるのを防止できるため、誤検出が解消した直後に、判定基準値が不適切な値に設定されたことに起因して「特定ガスが有り」と誤って判定されること(誤判定)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】ガス検出装置に備えられる一体型ガスセンサ素子の概略構成図である。
【図2】ガス検出装置を備える車両用外気導入制御システムの概略構成を表す構成図である。
【図3】マイコンにおいて実行されるガス検知判定処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図4】Dセンサ処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図5】各種数値演算処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図6】二次微分値に基づく変動判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図7】一次微分値に基づく誤検出判定処理の処理内容を詳細に表したフローチャートである。
【図8】酸化性ガス検出判定処理の処理内容を表したフローチャートである。
【図9】ユニット出力処理の処理内容を表したフローチャートである。
【図10】本実施形態のガス検出装置を用いて、酸化性ガスを検出する際において、還元性ガスの影響による誤検出の判定精度を評価した実験結果である。
【符号の説明】
【0184】
1…セラミック基板、2…還元性ガス用ガスセンサ素子(G素子)、3…酸化性ガス用ガスセンサ素子(D素子)、4…ヒータ、5…D素子端子、6…G素子端子、7…ヒータ端子、8…基準端子、10…一体型ガスセンサ素子、100…車両用外気導入制御システム、101…マイクロコンピュータ(マイコン)、110…G素子回路、120…D素子回路、131…ヒータ回路、132…スイッチング回路、140…レギュレータ回路、150…ガス検出装置、160…電子制御アセンブリ、161…フラップ制御回路、162…アクチュエータ、171…ダクト、172…内気取り入れ用ダクト、173…外気取り入れ用ダクト、174…外気導入用フラップ、180…電圧検出回路、191…電源装置(バッテリ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスである特定ガスに反応して電気的特性が変化する特定ガス素子と、
前記特定ガス素子における電気的特性に対応した第1出力信号の変化状態が前記特定ガスに対する反応状態である場合に前記特定ガスが有りと判定する特定ガス判定手段と、
を備えるガス検出装置であって、
前記特定ガス素子は、前記特定ガスに反応するとともに、前記特定ガスとは異なる他種ガスにも反応して電気的特性が変化するものであって、前記他種ガスの反応時における前記第1出力信号の変化状態が前記特定ガスの反応時における前記第1出力信号の変化状態とは異なるものであり、
前記特定ガス判定手段において前記特定ガスが有りと判定されていない状況下において、前記第1出力信号の変化状態が前記他種ガスに対する反応時と同じ状態を示した場合に、前記特定ガス素子が他種ガス反応状態であると判定する他種ガス反応状態判定手段と、
前記他種ガスに反応して電気的特性が変化する他種ガス素子と、
前記他種ガス素子における電気的特性に対応した第2出力信号の変化状態が前記他種ガスに対する反応状態である場合に、前記他種ガスが有りと判定する他種ガス判定手段と、
前記他種ガス反応状態判定手段にて前記特定ガス素子が他種ガス反応状態であると判定され、かつ、前記他種ガス判定手段にて前記他種ガスが有りと判定される場合に、前記特定ガス素子での誤検出有りと判定する誤検出判定手段と、
を備えることを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記他種ガス反応状態判定手段は、
前記第1出力信号の一次微分値を演算する一次微分値演算手段と、
前記一次微分値演算手段で演算された前記一次微分値と、前記特定ガス素子が前記他種ガスの影響を受けたときに前記一次微分値がとりうる範囲である一次微分誤検出範囲とを比較し、前記一次微分値が前記一次微分誤検出範囲に含まれるか否かを判断する一次微分判定手段と、
前記一次微分判定手段にて肯定判定される場合に、前記特定ガス素子が他種ガス反応状態であると判定する一次微分誤検出開始判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記誤検出判定手段にて誤検出有りと判定されている状況下において、前記他種ガス判定手段による前記他種ガスが有りとの判定が解消された時点を起点として、前記他種ガスの影響が解消するまでの所要時間以上の誤検出解消期間が経過したか否かを判定する解消時間経過判定手段と、
前記解消時間経過判定手段にて肯定判定された場合に、前記特定ガス素子での誤検出が解消したと判定する時間経過誤検出解消判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記特定ガス判定手段は、
前記第1出力信号の値に基づいて、前記第1出力信号の変化に対して遅れて追従するように、前記特定ガスの検出判定に用いる判定基準値を更新する判定基準値更新手段と、
前記第1出力信号の値から前記判定基準値を差し引いた差分値と、前記特定ガスの検出判定用として定められた判定用閾値とを比較し、前記差分値が前記判定用閾値よりも大きい場合に、前記特定ガスが有りと判定する特定ガス比較判定手段と、
を備えており、
前記解消時間経過判定手段にて肯定判定された場合に、そのときの前記第1出力信号の値に近づけるように、前記判定基準値を補正する判定基準補正手段を備えること、
を特徴とする請求項3に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記第1出力信号の二次微分値を演算する二次微分値演算手段と、
前記二次微分値演算手段で演算された前記二次微分値と、前記特定ガス素子が前記他種ガスの影響を受けたときに前記二次微分値がとりうる範囲である二次微分変動範囲とを比較し、前記二次微分値が前記二次微分変動範囲に含まれるか否かを判定する二次微分判定手段と、
前記二次微分判定手段での判定結果が否定判定から肯定判定に変わるときの前記第1出力信号に基づいて、前記他種ガスの影響を受けているときの前記特定ガス素子における前記第1出力信号がとりうる数値範囲としての補正判定用基準範囲を設定する補正判定用基準範囲設定手段と、
前記解消時間経過判定手段にて肯定判定されたときの前記第1出力信号が前記補正判定用基準範囲に含まれるか否かを判定し、肯定判定の場合には、前記判定基準補正手段による前記判定基準値の補正を許可し、否定判定の場合には、前記判定基準補正手段による前記判定基準値の補正を禁止する補正許可判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記特定ガスは、酸化性ガスであり、
前記他種ガスは、還元性ガスであること、
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−198373(P2009−198373A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41380(P2008−41380)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】