説明

ガス検知装置

【課題】ガス種の判定ロジックを改良し、検知性能を維持しつつ低消費電力化を実現しようとするガス検知装置を提供する。
【解決手段】通常時にあっては干渉ガスまたは検知対象ガスの有無を検知する温度となるように加熱してガス感知層の電気抵抗特性に基づいて干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれるか否かを判定し、さらに干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれる場合には干渉ガスを燃焼させる温度であってガス感知層が検知対象ガスのみを検知する温度となるように加熱してガス感知層の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスの有無または濃度を判定するガス検知装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池駆動を念頭においた低消費電力型のガス検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にガスセンサは、ガス漏れ警報器等の用途に用いられ、ある特定ガス、例えば、CO,CH,C,COH等の還元性ガスに選択的に感応するデバイスであり、その性格上、高感度、高選択性、高応答性、高信頼性、低消費電力が必要不可欠である。
ところで、家庭用として普及しているガス漏れ警報器には、都市ガス用やプロパンガス用の可燃性ガスの検知を目的としたもの、燃焼機器の不完全燃焼ガスの検知を目的としたもの、または、これら両方の機能を併せ持ったもの等があるが、何れもコストや設置性の問題から普及率はそれほど高くない。
そこで、ガス漏れ警報器の普及率を向上させる観点から、設置性の改善、具体的には、ガス漏れ警報器を電池駆動としてコードレス化することが望まれている。
【0003】
電池駆動を実現するためには低消費電力化が最も重要であるが、接触燃焼式や半導体式のガスセンサでCH、Cを検知する場合は、400℃〜500℃の高温に加熱して検知する必要がある。このため、ガス感知膜としてSnO等の粉体を焼結する従来の方法では、スクリーン印刷等の方法を用いても厚みを薄くするには限界があり、電池駆動に用いるには熱容量が大き過ぎるという問題があった。そこで、微細加工プロセスを用いてダイヤフラム構造等により超低熱容量構造としたガスセンサが開発されている。
【0004】
このようなガスセンサの従来技術としては、例えば、特許文献1(特開2005−164566号公報)に記載されたダイヤフラム構造のガスセンサがある。
ここで、図7は、例えば特許文献1の図7に記載されたガスセンサとほぼ同様の、一般的なダイヤフラム構造のガスセンサの断面図である。
【0005】
ガスセンサ100は、図7の断面図で示すように、Si基板1の上側に、熱酸化SiO層21、CVD−Si層22、CVD−SiO層23によってダイヤフラム構造の熱絶縁支持層2が形成されている。また、ヒータ層3は、Ni−Crにより形成されており、熱絶縁支持層2の上側に設けられる。熱絶縁支持層2およびヒータ層3は、スパッタSiO層からなる電気絶縁層4により覆われる。Ptによる一対の感知電極層52の下側には、下地酸化膜である電気絶縁層4に対する中間層として、Taによる接合層51も形成されている。一対の感知電極層52にはSbをドープしたSnO層からなるガス感知層53が渡された状態で設けられる。電気絶縁層4の一部、一対の感知電極層52およびガス感知層53はPd担持Al焼結材であるガス選択燃焼層54により覆われている。なお、Pd担持Al焼結材に代えてPt担持Al焼結材やPd・Pt合金担持Al焼結材としても良い。
【0006】
また、ガスセンサ100は、図示しないヒータ駆動部からの駆動信号が導線を通じてヒータ層3に入力されてヒータ駆動を行う。そして、ヒータ層3により400℃〜500℃の高温に加熱された状態でガス感知層53がガスに接触し、ガス感知層53の変化するセンサ抵抗値を検知信号として出力することでセンサとして機能する。
【0007】
このようなガスセンサ100は、CH、C等の可燃性ガスを検知する。この場合、ヒータ層3が50〜500msの一定時間にわたり通電され、ガス感知層53の温度が高温(High400〜500℃)に保持される。このような高温の状態で感知電極層52によりガス感知層53のセンサ抵抗値が測定され、その変化からCH、C等の有無や可燃性ガス濃度を検知する。このような検知は周期的(例えば30秒毎)に行われる。(High−Off方式)。
【0008】
ここで高温時のガス選択燃焼層54は、CO、H等の還元性ガスその他の雑ガスを燃焼させるが、不活性なCH、C等の可燃性ガスをガス選択燃焼層54は透過させる。可燃性ガスはガス選択燃焼層54内を拡散してガス感知層53のSnOと反応し、SnOのセンサ抵抗値を変化させる。このセンサ抵抗値の変化を検知してガス機器などのガス漏れ時に発生するCH、C等の可燃性ガスの有無や濃度を検知する。
【0009】
また、不完全燃焼(CO)を検知する場合、一旦、ヒータ層3の温度を50〜500msの一定期間にわたり高温(High400〜500℃)にし、ガス感知層53のクリーニングを行う。そして、低温(Low約100℃)に降温して不完全燃焼(CO)の検知を行う。これにより、CO感度およびガス選択性が高くなることが知られている(High−Low−Off方式)。
【0010】
また、High状態で、クリーニングのみならずCH、C等の可燃性ガス検知も行い、Low状態でのCO等の不完全燃焼ガスの検知と合わせ、ワンセンサで可燃性ガス・不完全燃焼ガスの両方を検知できるガスセンサも存在する。
【0011】
これらガスセンサのヒータ駆動方式は、上記のように(1)High−Off方式による駆動、または(2)High−Low−Off方式による駆動、を所定の周期(例えば150秒周期)で繰り返す間欠駆動としており、低消費電力化を図っている。
前述した特許文献1のガスセンサでも同様な原理によりセンシングを行う。従来技術はこのようなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−164566号公報(段落[0049],[0050]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一般にガスセンサが搭載されたガス検知装置の設置環境の雰囲気においては、検知対象ガスに加え、他の雑ガスも共存する。雑ガスは、検知対象外の可燃性ガス、酸素、窒素、炭酸ガス、水蒸気などのガス種である。このようなガスの一部には、ガスセンサにとって干渉ガスとなり、ガスセンサの抵抗値が一時的に変化し、あたかも検知対象ガスが存在するかのように振舞い、誤検知を誘発する場合がある。
【0014】
このような干渉ガスの影響を排除し、検知対象ガスの有無および濃度を正確に検知するためには、干渉ガスをガス選択燃焼層で除去し、さらに検知対象ガスが検知可能な高温で十分な時間通電する必要がある。しかしながら、このような加熱が、低消費電力化の妨げになっているという課題があった。
【0015】
そこで、本発明は上記した課題を解決しようとするものであり、その目的は、ガス種の判定ロジックを改良し、検知性能を維持しつつ低消費電力化を実現しようとするガス検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、
検知対象ガスとの接触により電気抵抗特性が変化するガス感知層、および、前記ガス感知層を加熱するヒータ層を有するガスセンサと、
前記ヒータ層を駆動するヒータ層駆動部と、
前記ガス感知層および前記ヒータ層駆動部が接続される信号処理・駆動部と、
を備え、前記信号処理・駆動部は、
通常時にあっては前記ヒータ層からの加熱により前記ガス感知層が干渉ガスまたは検知対象ガスの有無を検知する温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第1モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれるか否かを判定する第1モード判定手段と、
干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれる場合に前記ヒータ層からの加熱により干渉ガスを燃焼させる温度であって前記ガス感知層が検知対象ガスのみを検知する温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第2モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスの有無または濃度を判定する第2モード判定手段と、
として機能することを特徴とするガス検知装置である。
【0017】
また、請求項2に記載した発明は、
検知対象ガスとの接触により電気抵抗特性が変化するガス感知層、および、前記ガス感知層を加熱するヒータ層を有するガスセンサと、
前記ヒータ層を駆動するヒータ層駆動部と、
前記ガス感知層および前記ヒータ層駆動部が接続される信号処理・駆動部と、
を備え、前記信号処理・駆動部は、
通常時にあっては前記ヒータ層からの加熱により前記ガス感知層が検知対象ガスの電気抵抗特性と干渉ガスの電気抵抗特性とを異ならせる温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第1モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスが含まれるか否かを判定する第1モード判定手段と、
検知対象ガスである場合にのみ前記ヒータ層からの加熱により前記ガス感知層が検知対象ガスのみを検知する温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第2モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスの有無または濃度を判定する第2モード判定手段と、
として機能することを特徴とするガス検知装置である。
【0018】
また、請求項3に記載した発明は、
請求項2に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段では、前記第1モード駆動手段により前記ヒータ層が駆動されてから複数時点における前記ガス感知層のセンサ抵抗値を用いて複数の差分値を取得し、これら差分値が0に近い所定の値以下のときは検知対象ガスが含まれると判定し、所定の値より大きいときは干渉ガスが含まれると判定することを特徴とするガス検知装置である。
【0019】
また、請求項4に記載した発明は、
請求項2に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段では、前記第1モード駆動手段により前記ヒータ層が駆動されてから複数時点における前記ガス感知層のセンサ抵抗値を用いて複数の微分値を取得し、これら微分値が0に近い所定の値以下のときは検知対象ガスが含まれると判定し、所定の値より大きいときは干渉ガスが含まれると判定することを特徴とするガス検知装置である。
【0020】
また、請求項5に記載した発明は、
請求項2に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段では、前記第1モード駆動手段により前記ヒータ層が駆動されてから複数時点における前記ガス感知層のセンサ抵抗値による時間状態変化特性を取得し、この時間変化状態特性のうち極小値が出現したときは干渉ガスが含まれると判定し、時間変化状態特性のうち極小値が出現しないときは検知対象ガスが含まれると判定することを特徴とするガス検知装置である。
【0021】
また、請求項6に記載した発明は、
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段または前記第2モード判定手段による判定内容に基づいて、検知対象ガスに関係したガス情報を出力する出力制御手段と、
を備えたことを特徴とするガス検知装置である。
【0022】
また、請求項7に記載した発明は、
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のガス検知装置において、
内蔵された電池による電源回路からの電力供給により駆動されることを特徴とするガス検知装置である。
【0023】
また、請求項8に記載した発明は、
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載のガス検知装置において、
前記信号処理・駆動部は所定の周期で前記ヒータ層を通電して駆動し、
前記ガス感知層は所定の周期で加熱されることを特徴とするガス検知装置である。
【0024】
また、請求項9に記載した発明は、
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載のガス検知装置において、
前記ガスセンサは、
貫通孔を有するSi基板と、
前記貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と、
前記熱絶縁支持層上に設けられる前記ヒータ層と、
前記熱絶縁支持層および前記ヒータ層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
前記電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、
前記電気絶縁層および前記一対の感知電極層の上であって前記ヒータ層の近傍に設けられ、接触したガスによりそのセンサ抵抗値が変化する酸化物半導体からなる前記ガス感知層と、
を備えるセンサであることを特徴とするガス検知装置である。
【0025】
また、請求項10に記載した発明は、
請求項9に記載のガス検知装置において、
前記ガスセンサは、更に前記ガス感知層の表面を覆うように設けられ、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、または、PdとPtとを含む合金を触媒として担持したAl焼結材によるガス選択燃焼層を備えることを特徴とするガス検知装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガス種の判定ロジックを改良し、検知性能を維持しつつ低消費電力化を実現しようとするガス検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示すガス検知装置のブロック構成図である。
【図2】250℃に加熱したガスセンサの応答波形を示す特性図である。
【図3】450℃に加熱したガスセンサの応答波形を示す特性図である。
【図4】300℃に加熱したガスセンサの応答波形を示す特性図である。
【図5】干渉ガス判定ロジックの説明図である。
【図6】干渉ガス判定ロジックの説明図である。
【図7】ガスセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。本形態のガス検知装置1000は、図1で示すように、ガスセンサ100、ヒータ層駆動部200、警報表示回路300、警報音出力回路400、外部出力回路500、記憶回路600、信号処理・駆動部700、電源回路800を備えている。
【0029】
ガスセンサ100は、先に図7を用いて説明したセンサであり同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。また、ガスセンサ100に代えて、ガスセンサ100に周辺回路を加えたガス検知回路としても良い。このガスセンサ100(またはガス検知回路)のヒータ層3にはヒータ層駆動部200が電気的に通電できるように接続されており、ヒータ層駆動部200がヒータ層3に通電して加熱するようになされている。また、ガスセンサ100(またはガス検知回路)の一対の感知電極層52には信号処理・駆動部700が接続されており、ガス感知層53のガス検知によるセンサ抵抗値の変化を検知する。この検知の詳細については後述する検知処理にて説明する。
【0030】
ヒータ層駆動部200は、電源回路800から電源が供給されており、後述するように第1モード駆動や第2モード駆動でヒータ層3を通電により駆動するような回路部である。ヒータ層駆動部200は、信号処理・駆動部700に接続されて各種制御が行われる。これら駆動の詳細についても後述する検知処理にて説明する。
【0031】
警報表示回路300は、例えばLED、ランプ、LCDディスプレイなどの表示部とそのドライバで構成されており、異常検知時等に警報表示としてこの表示部により表示することが可能である。警報表示回路300は、信号処理・駆動部700に接続されて各種制御が行われる。なお、図示しないが、警報表示回路300は、電源回路800から電源が供給されている。
【0032】
警報音出力回路400は、例えばスピーカとそのドライバで構成されており、異常検知時等に警報音としてスピーカにより出力することが可能である。警報音出力回路400は、信号処理・駆動部700に接続されて各種制御が行われる。なお、図示しないが、警報音出力回路400は、電源回路800から電源が供給されている。
【0033】
外部出力回路500は、例えば接点回路や通信回路などであり、ガス検知装置1000による異常検知時等に、これらの検知内容を電圧等の出力信号として外部へ出力することが可能である。外部出力回路500は、信号処理・駆動部700に接続されて各種制御が行われる。なお、図示しないが、外部出力回路500は、電源回路800から電源が供給されている。
【0034】
記憶回路600は、信号処理・駆動部700に接続されて各種データの読み出しや書き込みがなされる。記憶回路600は、各種の警報を発生するための閾値等の設定値や後述する第1モード駆動および第2モード駆動の判定条件やガス検知装置が警報を発した時の状態データ等の履歴データを記憶している。なお、図示しないが、記憶回路600は、電源回路800から電源が供給されている。
【0035】
信号処理・駆動部700は、マイクロコンピュータ等のCPUおよびその周辺回路によって構成されており、上記した各部の制御駆動を行う。ガスセンサ100のガス感知層53からのセンサ抵抗値による出力はアナログ信号であるため、信号処理・駆動部700はこれらのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換回路を備えている。このような信号処理・駆動部700は、電源回路800から電源が供給されている。
【0036】
電源回路800は、電源を供給する。この電源回路としては、内蔵される乾電池や充電池などの消耗電池を想定しているが、AC100V等の商用電源と定電圧回路により構成しても良い。
【0037】
続いて、信号処理・駆動部700のプログラム処理により行われるガス検知について以下に説明する。
まず、信号処理・駆動部700は、通常時にあってはガスセンサ100のヒータ層3からの加熱によりガス感知層53が干渉ガスまたは検知対象ガスの有無を検知する温度(250℃)となるようにヒータ層駆動部200を制御する手段として機能する(第1モード駆動手段701)。詳しくは、200msにわたりヒータ層3の温度が250℃となるようなパルスを通電する。
【0038】
続いて、信号処理・駆動部700は、ガス感知層53の電気抵抗特性に基づいて干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれるか否かを判定する手段として機能する(第1モード判定手段702)。
【0039】
このような第1モード駆動により、各雰囲気ガス中でガス感知層53が250℃で200msにわたり加熱されたときのセンサ抵抗値の変化は図2に示すようになる。図2からも明らかなように、通電時間とセンサ抵抗値との関係を表す電気抵抗特性は、時間が経過するに従い、全てのガス(エア、メタンガス、一酸化炭素、水素)についてセンサ抵抗値が減少する特性を示している。このような傾向はヒータ層3の加熱温度が250℃と低いときに発生する。特にメタンガス、一酸化炭素、水素についてのガス特性は傾向が似通っており、判別は不可能である。一方、エアの抵抗に対してメタンガス、一酸化炭素、水素についての抵抗は低いため充分な感度がある。つまり、干渉ガスまたは検知対象ガスの有無については検知が可能である。
【0040】
そこでエアについての通電時間とセンサ抵抗値との関係を表す電気抵抗特性(または簡略化し、エアについての例えば150msという所定時間経過時のセンサ抵抗値など)を記憶回路600に登録して比較することで判定される。例えば所定時間経過時のセンサ抵抗値を登録しているものとすると、この登録したエアの所定時間(例えば150ms)経過時のセンサ抵抗値と、通電から所定時間(例えば150ms)経過時に検知したセンサ抵抗値と、を比較し、登録したエアの所定時間(例えば150ms)経過時のセンサ抵抗値よりも充分低いセンサ抵抗値(例えばメタン1000ppmレベルとなる抵抗値(Air中抵抗値の約80%以下))を検知したときには、干渉ガスまたは検知対象ガスがあると判定できる。そして第2モード駆動へ変更することが可能になる。なお、登録したエアの所定時間(例えば150ms)経過時のセンサ抵抗値と、検知したセンサ抵抗値がほぼ同じであるとき(例えばAir中抵抗値の約80%より大きいとき)は干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれないエアであるとして検知を終了する。通常はこのような250℃という比較的低温の第1駆動モード・第1判定モードで終了することが多く、低消費電力化に寄与している。
【0041】
続いて、信号処理・駆動部700は、干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれる場合にガスセンサ100のヒータ層3からの加熱により干渉ガスを燃焼させる温度であってガス感知層53が検知対象ガスのみを検知する温度となるようにヒータ層駆動部200を制御する手段として機能する(第2モード駆動手段703)。
詳しくは、第1モード駆動手段701よりも高い温度であり、200msにわたりヒータ層3の温度が450℃となるようにパルスを通電する。
なお、第2モード駆動のパルスは、第1駆動モードのパルスに連続して通電しても、第1駆動モードのパルスに間隔をあけて通電してもよい。
【0042】
続いて、信号処理・駆動部700は、ガス感知層53の抵抗特性に基づいて検知対象ガスの有無または濃度を判定する手段として機能する(第2モード判定手段704)。
【0043】
このような第2モード駆動により、各雰囲気ガス中でのガス感知層53が450℃となるときのガス感知層53のセンサ抵抗値の変化は図3に示すようになる。図3からも明らかなように、通電時間とセンサ抵抗値との関係を表す電気抵抗特性は、通電時間が経過するに従い、検知対象ガス(メタンガス)について、ガス感知層53のセンサ抵抗値が通電時間のが経過するにつれて減少の後に一定値に近づくが、他の干渉ガス(一酸化炭素、水素)について、通電時間が経過するにつれてセンサ抵抗値が増大する特性を示している。
また、検知対象ガスについて、ガス感知層53のセンサ抵抗値は、図2の250℃の時のセンサ抵抗値と比較したときは濃度が高くなるにつれて一定値は低下していく傾向にある。
【0044】
例えば、検知対象ガス(メタンガス)の場合の通電時間とセンサ抵抗値との関係は、時間が経過するに従い、センサ抵抗値が減少し、約100ms以降で所定の値に安定する。エアのセンサ抵抗値に対してメタンガス(1000ppm)のセンサ抵抗値が低く、さらにメタンガス(1000ppm)のセンサ抵抗値に対してメタンガス(4000ppm)のセンサ抵抗値が低いため感度がある。したがって、検知対象ガス(メタンガス)の有無については検知が容易であり、また、メタンガスについてはセンサ抵抗値と濃度とがほぼ比例関係にあり、記憶回路600にあるセンサ抵抗値における濃度を算出する算出式を登録しておけば、濃度の検知についても可能となっている。
一方、他の干渉ガス(一酸化炭素、水素)の場合の通電時間とセンサ抵抗値との関係は、時間が経過するに従いセンサ抵抗値が一旦低下し、その後、50ms付近で増加に転じエアのセンサ抵抗値へと近づいていく。これは燃焼により干渉ガスがなくなっていくからである。したがってこの傾向を検知すれば干渉ガス(一酸化炭素、水素)の有無の検知は可能である。したがって干渉ガスについて判定結果を出力するようにしても良い。
【0045】
したがって、第1モード判定手段,第2モード判定手段により、ガス種がエア、検知対象ガス(メタンガス)、干渉ガス(一酸化炭素、水素)であるかが判定される。検知対象ガス(メタンガス)については濃度も判定される。
【0046】
続いて、信号処理・駆動部700は、第1モード判定手段702または第2モード判定手段704による判定内容に基づいて、検知対象ガスに関係したガス情報(例えば検知対象ガスがあることを通知する情報)を出力する手段として機能する(出力制御手段705)。信号処理・駆動部700は、検知対象ガスが検知された場合に警報表示回路300に警報表示をさせたり、警報音出力回路400に警報音出力をさせたり、外部出力回路500に外部出力をさせるように機能する。なお、干渉ガス検出時にもこれらのような出力をしても良い。これらのような第1モード駆動手段701、第1モード判定手段702、第2モード駆動手段703、第2モード判定手段704、出力制御手段705からなる一連の駆動が所定の周期(30sや120sなど)毎に繰り返し行われる。
【0047】
このような本形態のガス検知装置1000によれば、通常は温度を250℃程度に加熱する第1モード駆動として消費電力を少ないモードとし、検知対象ガスまたは干渉ガスを検知したときに初めて温度を450℃程度に加熱する第2モード駆動とすることで、通常運転時の消費電力を大幅に抑えることが可能となる。通常は消費電力が少ない第1モードのみの検知が続くというものであり、長期的に視ると消費電力の低減に寄与する。
【0048】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図1を用いて説明した構成はそのままに、信号処理・駆動部700によるガス検知の判定ロジックを改良した形態である。この形態では特に第1モード駆動にてエアおよび干渉ガスを検知できるようにして第2モード駆動の駆動をさらに抑止することでより効果的な低消費電力化を実現する。
【0049】
続いて、信号処理・駆動部700のプログラム処理により行われるガス検知について以下に説明する。
まず、信号処理・駆動部700は、通常時にあってはガスセンサ100のヒータ層3からの加熱によりガス感知層53が検知対象ガスの電気抵抗特性と干渉ガスの電気抵抗特性とを異ならせる温度(300℃)となるようにヒータ層駆動部200を制御する手段として機能する(第1モード駆動手段701)。詳しくは、200msにわたりヒータ層3の温度が300℃となるように通電する。
【0050】
続いて、信号処理・駆動部700は、ガス感知層53の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスが含まれるか否かを判定する手段として機能する(第1モード判定手段702)。
【0051】
このような第1モード駆動により、各雰囲気ガス中でのガス感知層53が300℃となるときのセンサ抵抗値の変化は図4に示すようになる。図4からも明らかなように、通電時間とセンサ抵抗値との関係を表す電気抵抗特性は、時間が経過するに従い、エアや検知対象ガス(メタンガス)についてはセンサ抵抗値は通電時間経過につれて一旦減少した後で所定の値に安定する軌跡を描くものであるが、他の干渉ガス(一酸化炭素、水素)について通電時間経過につれてセンサ抵抗値が一旦低下し、所定の極小値を経て増加に転じる軌跡を描くものである。また、エア中のセンサ抵抗値に対してメタンガス、一酸化炭素、水素についてのセンサ抵抗値は低いため感度がある。したがって、通電時間とセンサ抵抗値との軌跡がどのような軌跡を描くかを調べることにより、正確かつ簡便にガス種の判定をすることができる。
【0052】
つまり、エア、干渉ガス、検知対象ガスの何れかであるかが判定可能である。そこでエアについての通電時間とセンサ抵抗値との関係を表す電気抵抗特性(または簡略化し、エアについての例えば150msという所定時間経過時のセンサ抵抗値など)を記憶回路600に登録して比較することで判定される。例えばエアについての所定時間経過時のセンサ抵抗値を登録しているものとすると、この登録したエアの所定時間(例えば150ms)経過時のセンサ抵抗値と、通電から所定時間(例えば150ms)経過時に検知したセンサ抵抗値と、を比較し、登録したエアの所定時間(例えば150ms)経過時のセンサ抵抗値よりも充分低い抵抗値(例えばメタン1000ppmレベルとなる抵抗値(Air中抵抗値の約80%以下))を検知したときには、干渉ガスまたは検知対象ガスがあると判定され、さらに所定の干渉ガスか検知対象ガスであるかが以下の判定方法に基づいて判定されて検知対象ガスであるときに第2モード駆動へ変更することが可能である。なお、登録したエアの所定時間(例えば150ms)経過時のセンサ抵抗値と、検知したセンサ抵抗値がほぼ同じであるとき(例えばAir中抵抗値の約80%より大きいとき)は干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれないエアであるとして検知を終了する。そして、後述するが干渉ガスであるときにも検知を終了する。先の形態では干渉ガスでも第2モード駆動に移行していたが、本形態ではエアや干渉ガスでも終了するためさらに低消費電力化に寄与している。
【0053】
なお、第1モード判定手段702では、第1モード駆動手段701によりヒータ層3が駆動されてから複数時点におけるガス感知層53のセンサ抵抗値を用いて複数の差分値を取得し、これら差分値が0に近い所定の値以下(例えば短い時刻の抵抗値の10%以下、より好ましくは5%以下)のときは検知対象ガスが含まれると判定し、所定の値(例えば短い時刻の抵抗値の10%、より好ましくは5%以下)より大きいときは干渉ガスが含まれると判定する。
【0054】
具体的には、図4において、干渉ガス(CO、H)である場合は、通電時間経過につれて40ms程度までセンサ抵抗値が低下し、その後、増加に転じ200msまで増加していることから、例えば、図5(a)で示すように、この40ms〜200ms間の任意の2点のセンサ抵抗値を比較し、通電時間の長い時刻のセンサ抵抗値(例えば150msの黒丸のB点)から短い時刻のセンサ抵抗値(例えば100msの黒丸のA点)を引いた差分値が0に近い所定の値(例えば短い時刻の抵抗値の10%、より好ましくは5%以下)より大きいときは干渉ガスが存在すると判定することができる。なお、検知対象ガスであるならばセンサ抵抗値は低下後に安定しており、通電時間の長い時刻のセンサ抵抗値(例えば150msの白丸のB点)から短い時刻のセンサ抵抗値(例えば100msの白丸のA点)を引いた差分値はほぼ0に近い値となり、上記差分が0に近い所定値以下(例えば短い時刻の抵抗値の10%以下、より好ましくは5%以下)である場合には、検知対象ガス(メタンガス)が存在すると判定することができる。したがって干渉ガスと検知対象ガスとの判別は容易である。
【0055】
なお、上記では、2点のセンサ抵抗値を用いているが、図5(b)のように3点でC点−B点間の差分とB点−A点間の差分とをとってもよい。この場合、干渉ガスではC点−B点間(黒丸)の差分値とB点−A点間(黒丸)の差分値との両者とも極性は正となり上昇傾向が確実に捉えられ、干渉ガスであると判別できる。また、検知対象ガスではB点−A点間(白丸)の差分値は負であるがC点−B点間(白丸)の差分値は0に近い値であって傾斜がない傾向が捉えられ、検知対象ガスであると判別できる。
【0056】
また、図5(c)のように4点でD点−C点間の差分とC点−B点間の差分とB点−A点間の差分とをそれぞれとってもよい。この場合、干渉ガスではB点−A点間(黒丸)の差分値は負となるが、D点−C点間(黒丸)の差分値とC点−B点間(黒丸)の差分値との両者とも極性は正となり上昇傾向が確実に捉えられ、干渉ガスであると判別できる。また、検知対象ガスではB点−A点間(白丸)の差分値は負となるが、D点−C点間(白丸)の差分値とC点−B点間(白丸)の差分値との両者とも0に近い値となり傾斜がない傾向が確実に捉えられ、検知対象ガスであると判別できる。
【0057】
また、第1モード判定手段702では、詳しくは、第1モード駆動手段701によりヒータ層3が駆動されてから複数時点におけるガス感知層53のセンサ抵抗値を用いて複数の微分値を取得し、これら微分値差分値が0に近い所定の値より大きいときは干渉ガスが含まれると判定し、微分値が0に近い所定値以下であるときは検知対象ガスが含まれると判定する。
【0058】
具体的には、図4において、干渉ガス(CO、H)である場合は、40ms程度までセンサ抵抗値が低下し、その後、増加に転じ200msまで増加していることから、例えば、図5(a)で示すように、この40ms〜200ms間の任意の2点のセンサ抵抗値を比較し、通電時間の長い時刻のセンサ抵抗値(例えば150msの黒丸のB点)から短い時刻のセンサ抵抗値(例えば100msの黒丸のA点)を引いた差分値を時間(t2−t1=50ms)で除して微分値を取得し、微分値差分値が0に近い所定の値より大きいときは干渉ガスが存在すると判定することができる。なお検知対象ガスであるならばセンサ抵抗値は低下後に安定しており、通電時間の長い時刻のセンサ抵抗値(例えば150msの白丸のB点)から短い時刻のセンサ抵抗値(例えば100msの白丸のA点)を引いた差分値を時間(t2−t1=50ms)で除して得た微分値もほぼ0となり、上記微分値が0に近い所定値以下である場合には、検知対象ガス(メタンガス)が存在すると判定することができる。したがって干渉ガスと検知対象ガスとの判別は容易である。
なお、この所定の値は、実験等により適宜決定され、例えば10kΩのセンサ抵抗値が100ms〜150ms間に10%以内と規定した場合、所定の値は20Ω/msとなる。
【0059】
なお、上記では、2点のセンサ抵抗値を用いているが、図5(b)のように3点でC点−B点間の微分とB点−A点間の微分とをとってもよい。この場合、干渉ガスではC点−B点間(黒丸)の微分値とB点−A点間(黒丸)の微分値との両者とも極性は正となり上昇傾向が確実に捉えられ、干渉ガスであると判別できる。また、検知対象ガスではB点−A点間(白丸)の微分値は負であるがC点−B点間(白丸)の微分値は0に近い値であって傾斜がない傾向が捉えられ、検知対象ガスであると判別できる。
【0060】
また、図5(c)のように4点でD点−C点間の微分とC点−B点間の微分とB点−A点間の微分とをそれぞれとってもよい。この場合、干渉ガスではB点−A点間(黒丸)の微分値は負となるが、D点−C点間(黒丸)の微分値とC点−B点間(黒丸)の微分値との両者とも極性は正となり上昇傾向が確実に捉えられ、干渉ガスであると判別できる。また、検知対象ガスではB点−A点間(白丸)の微分値は負となるが、D点−C点間(白丸)の微分値とC点−B点間(白丸)の微分値との両者とも0に近い値となり傾斜がない傾向が確実に捉えられ、検知対象ガスであると判別できる。なお、微分値を計算する点は、測定時のノイズに影響されないよう十分な間隔を持って、設定することはいうまでもない。また、処理時にデータを移動平均して瞬時的な変化を除いたデータを用いるなどしてノイズの影響を除去するようにしても良い。
【0061】
また、第1モード判定手段702では、詳しくは、第1モード駆動手段701によりヒータ層3が駆動されてから複数時点におけるガス感知層53のセンサ抵抗値による時間状態変化特性を取得し、この時間変化状態特性のうち極小値が出現したときは干渉ガスが含まれると判定し、時間変化状態特性のうち極小値が出現しないときは検知対象ガスが含まれると判定する。
【0062】
具体的には、図6で示すように、通電開始から0ms〜200msの間に極小値が出現する特性であることから、極小値が出現する特性である場合には干渉ガスが存在し、極小値が出現しない特性である場合には検知対象ガス(メタンガス)が存在すると判定することができる。このような検出手法でも干渉ガスの電気抵抗特性が確実に捉えられ、干渉ガスであると判別できる。第1モード判定はこのように行われる。
そして、第1モード判定ではエアと判定されたときに加え、検知対象ガスではなく干渉ガスであると判定されたときもそのまま終了する。
【0063】
続いて、信号処理・駆動部700は、検知対象ガスである場合にのみヒータ層3からの加熱によりガス感知層53が検知対象ガスのみを検知する温度となるようにヒータ層駆動部を制御する手段として機能する(第2モード駆動手段703)。
詳しくは、第1モード駆動手段701よりも高い温度であり、200msにわたりヒータ温度が450℃となるパルスを通電する。
【0064】
続いて、信号処理・駆動部700は、ガス感知層53の抵抗特性に基づいて検知対象ガスの有無または濃度を判定する手段として機能する(第2モード判定手段704)。
【0065】
このような第2モード駆動により、ガス感知層53が450℃となるときの各雰囲気ガス中でのガス感知層53のセンサ抵抗値の変化は図3に示すようになる。図3からも明らかなように、通電時間とセンサ抵抗値との関係を表す電気抵抗特性は、時間が経過するに従って、検知対象ガス(メタンガス)についてはセンサ抵抗値が減少する特性を示している。
【0066】
例えば、検知対象ガス(メタンガス)の場合の通電時間とセンサ抵抗値との関係は、時間が経過するに従い、センサ抵抗値が減少し、約100ms以降で所定の値に安定する。エアのセンサ抵抗値に対してメタンガス(1000ppm)のセンサ抵抗値が低く、さらにメタンガス(1000ppm)のセンサ抵抗値に対してメタンガス(4000ppm)のセンサ抵抗値が低いため感度がある。したがって、検知対象ガス(メタンガス)の有無については検知が容易であり、また、メタンガスについてはセンサ抵抗値と濃度とがほぼ比例関係にあり、記憶回路600にあるセンサ抵抗値における濃度を算出する算出式を登録しておけば、濃度の検知についても可能となっている。
【0067】
したがって、第1モード判定手段,第2モード判定手段により、ガス種がエア、検知対象ガス(メタンガス)、干渉ガス(一酸化炭素、水素)であるかが判定される。検知対象ガス(メタンガス)については濃度も判定される。
【0068】
続いて、信号処理・駆動部700は、第1モード判定手段702または第2モード判定手段704による判定内容に基づいて、検知対象ガスに関係したガス情報(例えば検知対象ガスがあることを通知する情報)を出力する手段として機能する(出力制御手段705)。信号処理・駆動部700は、警報表示回路300に警報表示をさせたり、警報音出力回路400に警報音出力をさせたり、外部出力回路500に外部出力をさせるように機能する。
これらのような第1モード駆動手段701、第1モード判定手段702、第2モード駆動手段703、第2モード判定手段704、出力制御手段705からなる一連の駆動が所定の周期(ここでは30sまたは120s)毎に繰り返し行われる。
【0069】
このような本実施形態のガス検知装置1000によれば、通常は温度を300℃程度に加熱する第1モード駆動という消費電力を少ないモードとして検知対象ガスの有無の検知を行い、検知対象ガスを検知したときにのみ初めて温度を450℃程度に加熱する第2モード駆動とすることで、通常運転時の消費電力を大幅に抑えることが可能となる。特に干渉ガスのみのときは第2モード駆動とならないため、この点で低消費電力化に寄与する。
なお、本実施例で示したヒータ温度や周期は、使用したセンサの特性によるものであり、異なるヒータ温度や周期を使用しても本発明の内容を逸脱するものではない。また、上述した実施形態は、ガスセンサとして薄膜ガスセンサを用いた場合を説明したが、本発明は薄膜ガスセンサに限定されるものではない。
【0070】
以上、本実施形態のガス検知装置について図を参照しつつ説明した。これら形態によれば、従来技術のように全て高温(450℃)で燃焼しないで、対象ガス又は干渉ガスが存在すると判断された場合にのみ燃焼するようにすれば低消費電力化に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のガス検知装置は、特にガス漏れ警報器等の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1000:ガス検知装置
100:ガスセンサ
1:Si基板
2:熱絶縁支持層
21:熱酸化SiO
22:CVD−Si
23:CVD−SiO
3:ヒータ層
4:電気絶縁層
5:ガス検出部
51:接合層
52:感知電極層
53:ガス感知層
54:選択燃焼層
200:ヒータ層駆動部
300:警報表示回路
400:警報音出力回路
500:外部出力回路
600:記憶回路
700:信号処理・駆動部
701:第1モード駆動手段
702:第1モード判定手段
703:第2モード駆動手段
704:第2モード判定手段
705:出力制御手段
800:電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスとの接触により電気抵抗特性が変化するガス感知層、および、前記ガス感知層を加熱するヒータ層を有するガスセンサと、
前記ヒータ層を駆動するヒータ層駆動部と、
前記ガス感知層および前記ヒータ層駆動部が接続される信号処理・駆動部と、
を備え、前記信号処理・駆動部は、
通常時にあっては前記ヒータ層からの加熱により前記ガス感知層が干渉ガスまたは検知対象ガスの有無を検知する温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第1モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれるか否かを判定する第1モード判定手段と、
干渉ガスまたは検知対象ガスが含まれる場合に前記ヒータ層からの加熱により干渉ガスを燃焼させる温度であって前記ガス感知層が検知対象ガスのみを検知する温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第2モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスの有無または濃度を判定する第2モード判定手段と、
として機能することを特徴とするガス検知装置。
【請求項2】
検知対象ガスとの接触により電気抵抗特性が変化するガス感知層、および、前記ガス感知層を加熱するヒータ層を有するガスセンサと、
前記ヒータ層を駆動するヒータ層駆動部と、
前記ガス感知層および前記ヒータ層駆動部が接続される信号処理・駆動部と、
を備え、前記信号処理・駆動部は、
通常時にあっては前記ヒータ層からの加熱により前記ガス感知層が検知対象ガスの電気抵抗特性と干渉ガスの電気抵抗特性とを異ならせる温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第1モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスが含まれるか否かを判定する第1モード判定手段と、
検知対象ガスである場合にのみ前記ヒータ層からの加熱により前記ガス感知層が検知対象ガスのみを検知する温度となるように前記ヒータ層駆動部を制御する第2モード駆動手段と、
前記ガス感知層の電気抵抗特性に基づいて検知対象ガスの有無または濃度を判定する第2モード判定手段と、
として機能することを特徴とするガス検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段では、前記第1モード駆動手段により前記ヒータ層が駆動されてから複数時点における前記ガス感知層のセンサ抵抗値を用いて複数の差分値を取得し、これら差分値が0に近い所定の値以下のときは検知対象ガスが含まれると判定し、所定の値より大きいときは干渉ガスが含まれると判定することを特徴とするガス検知装置。
【請求項4】
請求項2に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段では、前記第1モード駆動手段により前記ヒータ層が駆動されてから複数時点における前記ガス感知層のセンサ抵抗値を用いて複数の微分値を取得し、これら微分値が0に近い所定の値以下のときは検知対象ガスが含まれると判定し、所定の値より大きいときは干渉ガスが含まれると判定することを特徴とするガス検知装置。
【請求項5】
請求項2に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段では、前記第1モード駆動手段により前記ヒータ層が駆動されてから複数時点における前記ガス感知層のセンサ抵抗値による時間状態変化特性を取得し、この時間変化状態特性のうち極小値が出現したときは干渉ガスが含まれると判定し、時間変化状態特性のうち極小値が出現しないときは検知対象ガスが含まれると判定することを特徴とするガス検知装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のガス検知装置において、
前記第1モード判定手段または前記第2モード判定手段による判定内容に基づいて、検知対象ガスに関係したガス情報を出力する出力制御手段と、
を備えたことを特徴とするガス検知装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のガス検知装置において、
内蔵された電池による電源回路からの電力供給により駆動されることを特徴とするガス検知装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載のガス検知装置において、
前記信号処理・駆動部は所定の周期で前記ヒータ層を通電して駆動し、
前記ガス感知層は所定の周期で加熱されることを特徴とするガス検知装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載のガス検知装置において、
前記ガスセンサは、
貫通孔を有するSi基板と、
前記貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と、
前記熱絶縁支持層上に設けられる前記ヒータ層と、
前記熱絶縁支持層および前記ヒータ層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
前記電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、
前記電気絶縁層および前記一対の感知電極層の上であって前記ヒータ層の近傍に設けられ、接触したガスによりそのセンサ抵抗値が変化する酸化物半導体からなる前記ガス感知層と、
を備えるセンサであることを特徴とするガス検知装置。
【請求項10】
請求項9に記載のガス検知装置において、
前記ガスセンサは、更に前記ガス感知層の表面を覆うように設けられ、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、または、PdとPtとを含む合金を触媒として担持したAl焼結材によるガス選択燃焼層を備えることを特徴とするガス検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−167954(P2012−167954A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27489(P2011−27489)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】