説明

ガス溶解洗浄水の製造方法、製造装置及び洗浄装置

【課題】真空ポンプなどの減圧機構を使用することなく、安全に所望のガス濃度のガス溶解洗浄水を製造することができ、使用済みのガス溶解洗浄水の水と特定ガスを再利用することができ、高度な清浄度を必要とする電子部品などの洗浄に好適に使用することができるガス溶解洗浄水の製造方法、製造装置及び洗浄装置を提供する。
【解決手段】特定ガスを水に溶解したガス溶解洗浄水の製造方法において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とし、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去するガス溶解洗浄水の製造方法、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解するガス溶解装置と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置とを有するガス溶解洗浄水の製造装置、及び、該ガス溶解洗浄水を用いる洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス溶解洗浄水の製造方法、製造装置及び洗浄装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、真空ポンプなどの減圧機構を使用することなく、安全に所望のガス濃度のガス溶解洗浄水を製造することができ、使用済みのガス溶解洗浄水の水と特定ガスを再利用することができ、半導体用のシリコンウェハ、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板などの高度な清浄度を必要とする電子部品などの洗浄に好適に使用することができるガス溶解洗浄水の製造方法、製造装置及び該ガス溶解洗浄水を用いる洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、電子部品となる基板の洗浄は、RCA洗浄と呼ばれるウェット洗浄が主流であった。RCA洗浄は、硫酸と過酸化水素水の混合液(SPM)を120〜150℃に加熱して用いたり、アンモニアと過酸化水素水の混合液(APM)を60〜80℃に加温して用いたり、あるいは、塩酸と過酸化水素水の混合液(HPM)を60〜80℃に加温して用いたりする洗浄方法である。この洗浄方法を採用した場合の高濃度の薬液や洗浄剤の多大なコスト、それを濯ぐおびただしい量の純水、超純水のコスト、薬品蒸気を排気し、新たに清浄な空気を調製する空調コストなどを低減し、さらに水の大量使用、薬品の大量廃棄、排ガスの放出などの環境への負荷を低減するために、さまざまな簡略化の取り組みがなされ、成果を挙げてきた。その代表例が、水素などの特定ガスを溶解した洗浄水による超音波洗浄技術である。
【0003】
特定ガスを高濃度に溶解させることが、この新しい洗浄技術の要点となっている。さらに、安定して高い洗浄効果を保つためには、高濃度かつ使用の場での飽和濃度以下に溶存ガス濃度を制御することが必要である。また、水素を飽和濃度以上に溶解させた場合には、大気圧下に溶存水素が気泡化して系内に滞留する危険性が増すために、安全面でも飽和濃度以下に溶解することが望ましい。このような技術ニーズに対し、原水である純水若しくは超純水に溶存するガス(主に窒素)を脱気処理により除去した後に、溶解させたいガスを飽和濃度以下の量だけ供給して溶解する技術が、本発明者らによって開発された。この方法の有用性が認識され、ウェット洗浄向けの新技術として広く普及してきた。
【0004】
例えば、半導体基板あるいは液晶表示装置用ガラス基板のような極めて清浄な表面を得ることが求められ、特に室温で完全なハイドロカーボンフリー表面を得ることが求められる電子部品などの被処理物ウェット処理方法として、被処理物を水素を含有する超純水又は水素と微量の希ガスとを含有する超純水に20kHz以上の超音波を照射しながら被処理物をウェット処理する方法であって、原水とする超純水が希ガス以外の溶存ガスを少なくとも10ppm以下とするように脱ガスされた水であるウェット処理方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、洗浄用の水素含有超純水を、余剰が生じて廃棄することなく、使用水量が変動する場合にも、安定した溶存水素濃度の水素含有超純水をユースポイントに供給することができる水素含有超純水の供給装置として、水素含有超純水を用いる電子材料の洗浄工程において、ユースポイントで使われなかった余剰の水素含有超純水及び補給される超純水の混合水を保持する密閉式の水槽、水槽に保持された水を送水するポンプ、送水される水の溶存ガスを除去する脱気部、水素供給部から供給される水素を脱気後の水に溶解させる溶解部、フィルター及びユースポイントを経て水槽に戻る循環配管を有し、水素含有超純水を循環させながらユースポイントにおいて必要量の水素含有超純水を供給する水素含有超純水の供給装置が提案されている(特許文献2)。
【0006】
これらの方法又は装置によれば、高濃度かつ飽和濃度以下の特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を効率よく製造することができる。しかし、これらの方法又は装置では、原水である純水、超純水から大部分の溶存ガスを除くための脱気工程が必ず必要であり、適当な真空ポンプなどの減圧機構が必要となっていた。
【0007】
大量のガス溶解洗浄水が必要な洗浄工程において、節水を実現するためには、使用済みのガス溶解洗浄水(洗浄排水)を循環利用することが求められる。洗浄排水中の汚染物の除去と溶存ガス濃度の調整により、循環システムを構築することができる。従来の方法では、洗浄排水を清浄化した後に脱気処理を施し、再度特定ガスを溶解することになる。特に、洗浄効果の高い水素溶解洗浄水を循環させるシステムの場合、洗浄排水中には、洗浄工程での空気との置換により減少するものの、なお相当量の水素が溶解している。これを脱気するには、真空ポンプなどの減圧機構を経由して相当量の水素を排出する必要があり、安全確保上問題となっていた。これらの問題の解決が、特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水による洗浄を活用する上で課題となっていた。
【特許文献1】特許第3521393号公報
【特許文献2】特開平11−77021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、真空ポンプなどの減圧機構を使用することなく、安全に所望のガス濃度のガス溶解洗浄水を製造することができ、使用済みのガス溶解洗浄水の水と特定ガスを再利用することができ、半導体用のシリコンウェハ、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板などの高度な清浄度を必要とする電子部品などの洗浄に好適に使用することができるガス溶解洗浄水の製造方法、製造装置及び該ガス溶解洗浄水を用いる洗浄装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、原水に特定ガスを大気圧を超える加圧下に溶解させて、原水に含まれていた特定ガス以外のガスが共存する過飽和溶解水を調製し、次いでガス溶解水を減圧して過飽和分を除去することにより、特定ガスの濃度が高く、かつ過飽和でないガス溶解洗浄水を真空ポンプなどの減圧機構を用いることなく調製し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)特定ガスを水に溶解したガス溶解洗浄水の製造方法において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とし、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去することを特徴とするガス溶解洗浄水の製造方法、
(2)ガス溶解水を大気圧前後まで減圧する(1)記載のガス溶解洗浄水の製造方法、
(3)ガス溶解水を気体透過膜モジュールに通水し、気体透過膜モジュールの気相部を大気に通じた状態にすることにより、ガス溶解水を大気圧前後まで減圧する(2)記載のガス溶解洗浄水の製造方法、
(4)特定ガスを加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とする操作と、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去する操作を繰り返す(1)記載のガス溶解洗浄水の製造方法、
(5)特定ガスを加圧下に溶解する水が、使用済みのガス溶解洗浄水である(1)記載のガス溶解洗浄水の製造方法、
(6)ガス溶解洗浄水中の汚染物を除去する工程を有する(5)記載のガス溶解洗浄水の製造方法、
(7)特定ガスが水素であり、減圧して除去されるガスを排ガス処理装置で処理する(1)ないし(6)のいずれか1項に記載のガス溶解洗浄水の製造方法、
(8)特定ガスを水に溶解したガス溶解洗浄水の製造装置において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解するガス溶解装置と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置とを有することを特徴とするガス溶解洗浄水の製造装置、
(9)特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を用いる洗浄機と、該洗浄機から排出された使用済みのガス溶解洗浄水に、特定ガスを大気圧を超える加圧下に溶解するガス溶解装置と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置と、ガス部分除去装置から流出する特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を洗浄機に供給するガス溶解洗浄水配管とを有することを特徴とする洗浄装置、及び、
(10)洗浄機から排出された使用済みのガス溶解洗浄水が、熱交換器及び汚染物除去装置を経由して循環する(9)記載の洗浄装置、
を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明の好ましい態様として、
(11)ガス部分除去装置が、ガス溶解水を大気圧前後まで減圧する装置である(8)記載のガス溶解洗浄水の製造装置、
(12)ガス溶解水を大気圧前後まで減圧する装置が、ガス溶解水を通水する気体透過膜モジュールであって、気体透過膜モジュールの気相部が大気に通じた状態である(11)記載のガス溶解洗浄水の製造装置、
(13)ガス溶解装置とガス部分除去装置が、交互に複数組配列されてなる(8)記載のガス溶解洗浄水の製造装置、
(14)使用済みのガス溶解洗浄水をガス溶解装置に返送する返送配管を有する(8)記載のガス溶解洗浄水の製造装置、及び、
(15)ガス溶解洗浄水の汚染物除去装置を有する(14)記載のガス溶解洗浄水の製造装置、
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス溶解洗浄水の製造方法、製造装置及び洗浄装置によれば、従来はガス溶解洗浄水の製造に欠かせなかった真空ポンプなどの減圧機構を用いる必要がなくなる。本発明方法及び本発明装置は、ガス溶解洗浄水を循環して用いるシステムを構築する際に非常に有用であり、例えば、水素を真空ポンプなどの減圧機構を通して排出させる危険な操作を行うことなく、高濃度の水素溶解洗浄水を循環使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のガス溶解洗浄水の製造方法は、特定ガスを水に溶解したガス溶解洗浄水の製造方法において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とし、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去する方法である。本発明方法においては、ガス溶解水を大気圧前後まで減圧して溶存ガスの一部を除去することが好ましい。
【0014】
本発明のガス溶解洗浄水の製造装置は、特定ガスを水に溶解したガス溶解洗浄水の製造装置において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解するガス溶解装置と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置とを有する装置である。本発明装置は、ガス部分除去装置が、ガス溶解水を大気圧前後まで減圧する装置であることが好ましい。
【0015】
本発明において、ガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去する際、加圧状態のガス溶解水を、大気圧又は大気圧前後、例えば、大気圧の±20%の範囲にまで減圧することが好ましい。膜モジュールを用いてガス溶解水を大気圧まで減圧する場合、膜モジュールの気相側を大気圧に連通させるが、水相と気相とが平衡状態になるには多少の時間を要し、装置の容量によっては水の滞留時間が短くなり、大気圧にまで減圧されないときがある。また、工場の排気配管などに気相を連通させて減圧する場合には、大気圧より若干低い圧力になるケースがあり、大気圧よりやや低い圧力になるときがある。
【0016】
本発明において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解するガス溶解装置に特に制限はなく、例えば、気体透過膜モジュールや、エジェクター、ガス溶解機能の高いポンプなどの水とガスが直接接する装置などを挙げることができる。エジェクターやポンプなどの水とガスが直接接触するガス溶解装置を用いる場合は、その後段に気液分離器を設けることが好ましい。本発明において、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置に特に制限はなく、例えば、気体透過膜モジュールや、気液分離器などを挙げることができる。
【0017】
図1は、本発明方法の実施の一態様及び本発明装置の一態様を示す工程系統図である。本発明装置は、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解するガス溶解装置1と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置2とを有する。本発明においては、ガス部分除去装置として気体透過膜モジュールを用い、ガス溶解水を気体透過膜モジュールの水相部に導入し、気体透過膜モジュールの気相部を大気に開放することにより、あるいは、気相部を圧損のない状態で大気と通じることにより、ガス溶解水を大気圧まで減圧することが好ましい。図1に示す態様においては、ガス溶解装置の水相部に原水が送り込まれ、気相部に特定ガスが大気圧を超える圧力で圧入される。特定ガスは、気体透過膜を経由して水に溶解する。ガス溶解装置から流出するガス溶解水は、ガス部分除去装置の水相部へ送られ、気相部の圧力がガス溶解時の圧力より低い圧力とされ、ガス溶解水中の溶存ガスの一部が気体透過膜を経由して気相部に移行し除去される。
【0018】
一定温度、一定圧力でガス雰囲気と接している水は、雰囲気を構成するガスが平衡して溶解し、飽和度1の状態となっている。例えば、25℃で空気と接している水には、酸素8.1mg/Lと窒素13.8mg/Lが溶解して飽和度1の状態となっている。水を完全に脱気して飽和度0としたのち、窒素雰囲気、酸素雰囲気又は水素雰囲気と接触させて平衡状態に達せしめると、それぞれ窒素17.6mg/L、酸素40.4mg/L又は水素1.6mg/Lが溶解して、飽和度1の状態となる。
【0019】
25℃において、窒素17.6mg/Lを溶解している水に、特定ガスとして水素1.6mg/Lを加圧下に溶解すると、ガス溶解水は飽和度1相当量の窒素と飽和度1相当量の水素を溶解し、ガス溶解水の飽和度は2となる。この飽和度2のガス溶解水を大気圧まで減圧すると、窒素の一部と水素の一部が除去されて、ガス溶解水の飽和度が1まで低下する。窒素と水素はほぼ同じ割合で除去されるので、この飽和度2のガス溶解水の飽和度が1まで低下すると、窒素8.8mg/Lと水素0.8mg/Lを溶解したガス溶解水が得られる。
【0020】
本発明に用いる特定ガスに特に制限はなく、例えば、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、希ガスなどを挙げることができる。これらの特定ガスは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明においては、ガス溶解洗浄水の製造に真空ポンプなどの減圧機構を必要とせず、回転・往復等の運動部の静電気に起因する引火の危険がないので、水素溶解洗浄水及び酸素溶解洗浄水の製造に好適に適用することができ、水素溶解洗浄水の製造に特に好適に適用することができる。
【0021】
本発明においては、ガス溶解装置の二次側に付設したバルブによって、ガス溶解装置の圧力を保ちつつ、ガス部分除去装置の圧力を適当に下げ、溶存ガスの一部を除去して、気泡を含まないガス溶解洗浄水を洗浄機に導くことができる。気体透過膜モジュールをガス溶解装置として用いる場合は、ガス溶解水は飽和度が1を超えるガスを溶解しても加圧下では気泡を含まない。この場合も、ガス溶解装置の二次側に設けたバルブ以降で圧を下げると、過飽和分のガスが気泡となって分離するので、気液分離器を適用することができる。しかし、より簡単には、ガス部分除去装置として、別の気体透過膜モジュールを使用することができる。この二本目の気体透過膜モジュールは、気相部の取り合いを大気開放にすることが好ましい。多少過飽和を保ったガス溶解洗浄水が必要な場合は、完全な開放にならないようにバルブの開度を調整して、ガス圧を所定の値に保つことができる。逆に、例えば、減圧されている工場の排気配管、アスピレータなどに、二本目の気体透過膜モジュールの気相部取り合い点につないだ配管を導くことにより、気相部を微減圧にして飽和度が1を超える部分のガスの除去を促進することもできる。ガス溶解装置とガス部分除去装置の双方に気体透過膜モジュールを使用する方法は、ガス溶解装置の二次側で水圧を落とす必要がなく、洗浄機に所定水圧のガス溶解洗浄水を送ることができる。
【0022】
本発明方法においては、ガスを加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とする操作と、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去する操作を繰り返すことができる。本発明装置は、ガス溶解装置とガス部分除去装置が、交互に複数組配列されてなる装置とすることができる。図2は、本発明方法の実施の他の態様及び本発明装置の他の態様の工程系統図である。本態様においては、ガス溶解装置3、ガス部分除去装置4、ガス溶解装置5及びガス部分除去装置6がこの順に配列され、それぞれの水相部が直列に接続されている。第1のガス溶解装置3の水相部に原水が送り込まれ、気相部に特定ガスが大気圧を超える圧力で圧入され、水に溶解する。第1のガス溶解装置から流出するガス溶解水は、第1のガス部分除去装置4の水相部へ送られ、ガス溶解水中の溶存ガスの一部が気相部に移行し除去される。第1のガス部分除去装置から流出するガス溶解水は、第2のガス溶解装置5の水相部に送り込まれ、気相部に特定ガスが大気圧を超える圧力で圧入され、水に溶解する。第2のガス溶解装置から流出するガス溶解水は、第2のガス部分除去装置6の水相部へ送られ、ガス溶解水中の溶存ガスの一部が気相部に移行し除去される。
【0023】
本発明においては、ガスを加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とする操作と、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去する操作を繰り返すことにより、得られるガス溶解洗浄水の特定ガスの濃度を高めることができる。例えば、25℃において、窒素17.6mg/Lを溶解している水に、第1のガス溶解装置において、特定ガスとして水素1.6mg/Lを加圧下に溶解すると、ガス溶解水は飽和度1相当量の窒素と飽和度1相当量の水素を溶解し、ガス溶解水の飽和度は2となる。この飽和度2のガス溶解水を第1のガス部分除去装置において大気圧まで減圧すると、窒素の一部と水素の一部が除去されて、ガス溶解水の飽和度が1まで低下する。窒素と水素はほぼ同じ割合で除去されるので、この飽和度2のガス溶解水の飽和度が1まで低下すると、窒素8.8mg/Lと水素0.8mg/Lを溶解したガス溶解水が得られる。
【0024】
さらに、窒素8.8mg/Lと水素0.8mg/Lを溶解したガス溶解水に、第2のガス溶解装置において、特定ガスとして水素1.6mg/Lを加圧下に溶解すると、ガス溶解水は飽和度0.5相当量の窒素と飽和度1.5相当量の水素を溶解し、ガス溶解水の飽和度は2となる。この飽和度2のガス溶解水を第2のガス部分除去装置において大気圧まで減圧すると、窒素の一部と水素の一部が除去されて、ガス溶解水の飽和度が1まで低下する。窒素と水素はほぼ同じ割合で除去されるので、この飽和度2のガス溶解水の飽和度が1まで低下すると、窒素4.4mg/Lと水素1.2mg/Lを溶解したガス溶解水が得られる。
【0025】
繰り返し方式の場合、溶存水素濃度0mg/Lの水から溶存水素濃度1.2mg/L(飽和度0.75)の水素溶解洗浄水を得るために必要な水素量は、飽和度2に相当する量である。加圧溶解・過飽和分除去の1段階処理の場合、溶存水素濃度1.2mg/Lの水素溶解洗浄水を得るためには、飽和度3に相当する量の水素の供給が必要である。しかも、1段階処理の場合、ゲージ圧0.3MPa以上のガス押し込み圧力が必要となる。繰り返し方式では、気体透過膜モジュールが余分に必要だが、所望の溶存ガス濃度を得るために必要なガス量とガス圧力が少ないことが利点といえる。なお、従来のガス溶解手段の一つとして、気体透過膜モジュールの気相側に溶解させたいガスを通気させて、水相中の溶存ガスとの置換を進める方法がある。しかし、この従来法では、十分高い置換効率が得られず、例えば、水素溶解洗浄水を製造する場合、飽和の5倍量(飽和度5に相当する量)の水素を通気しても、1mg/L以上の溶存水素濃度を得ることは難しい。
【0026】
本発明のガス溶解洗浄水の製造方法においては、特定ガスを加圧下に溶解する水を、使用済みのガス溶解洗浄水とすることができる。使用済みのガス溶解洗浄水を特定ガスを加圧下に溶解する水とするときは、ガス溶解洗浄水中に含有される汚染物を除去することが好ましい。本発明のガス溶解洗浄水の製造装置においては、使用済みのガス溶解洗浄水をガス溶解装置に返送する返送配管を設けることができる。本発明装置においては、ガス溶解洗浄水の汚染物除去装置を設けることが好ましい。
【0027】
図3は、本発明方法の実施の他の態様及び本発明装置の他の態様の工程系統図である。洗浄機7で使用された使用済み水素溶解洗浄水が、返送配管8を経由して水槽9に返送される。水槽には、超純水を補給する配管、水槽上部の空間に窒素を供給する配管、水槽上部の空間を陽圧に保つための圧力調整器10が設けられている。水槽の保有水は、圧送ポンプ11により送り出され、熱交換器12で温度調整されたのち、限外ろ過膜装置13において、洗浄に際して混入した微粒子などが除去される。この位置に限外ろ過膜装置を設けることにより、ポンプからの発塵も除去することができる。限外ろ過膜装置からは濃縮水が除去され、除去された濃縮水に相当する超純水が水槽に補給されて、系の水量が一定に保持される。除去された濃縮水に相当する超純水は、限外ろ過膜装置とガス溶解装置の間の配管に補給することもできる。また、限外ろ過装置の濃縮水のほかに、洗浄機から洗浄排水の一部が系外に排出される場合があり、超純水の補給が必要な場合は、水槽やガス溶解装置の前段でもよいし、洗浄機など系内の任意の位置に補給することもできる。
【0028】
図3に示す態様においては、汚染物除去装置として限外ろ過膜装置を示したが、混入する汚染物の種類に応じて適当な汚染物除去装置を選択することができる。限外ろ過膜装置に代えて、精密ろ過膜(MF)装置を用いることもできる。微粒子の除去が主たる目的の場合は、限外ろ過膜装置又は精密ろ過膜装置が、微粒子の除去の精度と清浄度が良好であり、扱いやすいので好適に用いることができる。また、使用済みガス溶解洗浄水に、汚染物として金属イオンを含有する場合にはカチオン交換樹脂塔を、汚染物としてアニオンやシリカを含む場合にはアニオン交換樹脂塔を、汚染物としてTOCを含む場合には紫外線照射酸化装置を、汚染物除去装置として設けることができる。微粒子などが除去された水は、ガス溶解装置14に送られ、大気圧を超える加圧下に水素が溶解される。水素の溶解により飽和度が1を超えた水素溶解水は、ガス部分除去装置15に送られ、飽和度が1を超える部分のガスが除去されて水素溶解洗浄水となる。水素溶解洗浄水を製造する場合は、ガス部分除去装置から、水素を多く含むガスが排出されるので、その排気配管に酸化触媒を取り付け、水素を空気中の酸素と反応させて水とし、水素排出に伴う危険を回避することが好ましい。除去された排ガスは、排ガス処理装置16を経由し、排ガス中に含まれる水素が処理されたのち、大気中若しくは工場に備えられている排気ダクトに放出される。水素溶解洗浄水は、ガス溶解洗浄水配管17を経由して洗浄機7に送られる。ガス溶解洗浄水配管には、pH計18が付設され、pH計からポンプ19に信号が送られて、アンモニア水貯槽20から水素溶解洗浄水にアンモニア水が添加され、pHが調整される。さらに、ガス溶解洗浄水配管には、溶存水素モニター21が付設され、水素溶解洗浄水中の水素濃度が監視される。
【0029】
本発明において、使用済みガス溶解洗浄水に特定ガスを溶解し、得られた特定ガス溶解洗浄水を再度洗浄機に供給して洗浄に使用する。このような洗浄水の循環使用を繰り返すと、洗浄水の温度が上昇するので、本発明ではこの循環系内の任意の位置に熱交換器を配置し、洗浄水の温度上昇を抑制することが好ましい。通常、室温程度に調整するが、40〜50℃程度の温度に安定的に調整することもできる。
【0030】
本発明においては、ガス溶解洗浄水に添加する薬剤として、アンモニア水の他に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ、フッ化水素、塩化水素、硫酸などの酸、キレート剤、界面活性剤などを挙げることができる。これらの薬剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。薬剤の添加量は、図3に示すように、薬剤の濃度又はそれに準じる数値を計測して、計測値にしたがって制御することができ、あるいは、補給水の量に連動して、比例制御により薬品を補給水に注入することもできる。
【0031】
図3に示す態様の装置によれば、水素溶解洗浄水は循環して利用され、限外ろ過膜装置から除去される濃縮水に相当する量の超純水のみを補給すればよいので、洗浄に使用する超純水の量を大幅に節減することができる。また、洗浄機から水槽に返送される使用済みの水素溶解洗浄水中に残存する水素は、脱気により除去されることなく、新しく調製される水素溶解洗浄水の成分の一部として利用されるので、比較的高濃度、例えば、1mg/L以上の溶存水素濃度の使用済みの水素溶解洗浄水が返送される場合には、洗浄に使用する水素の量を節減するとともに、排出する水素の量を減らして危険を軽減することができる。
【0032】
本発明の洗浄装置は、特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を用いる洗浄機と、該洗浄機から排出された使用済みのガス溶解洗浄水に、特定ガスを大気圧を超える加圧下に溶解するガス溶解装置と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置と、ガス部分除去装置から流出する特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を洗浄機に供給するガス溶解洗浄水配管とを有する洗浄装置である。本発明の洗浄装置においては、洗浄機から排出された使用済みのガス溶解洗浄水が、熱交換器及び汚染物除去装置を経由して循環することが好ましい。本発明装置において、熱交換器と汚染物除去装置を設置する位置に特に制限はなく、例えば、洗浄機と使用済みのガス溶解洗浄水を貯留する水槽の間に設置することができ、あるいは、使用済みのガス溶解洗浄水を貯留する水槽とガス溶解装置の間に設置することもできる。熱交換器と汚染物除去装置の設置順序に特に制限はなく、いずれを前段とすることもできる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
気体透過膜モジュールを用いて、水素溶解洗浄水の調製試験を行った。図4は、用いた試験装置の工程系統図である。3本の気体透過膜モジュール[セルガード(株)、リキセル、4インチ型]の水相部を、直列に接続した。第1の気体透過膜モジュール22の気相部は、バルブ23を経由して大気に開放可能にするとともに、マスフローコントローラー[(株)山武]24を経由して水素ボンベ25と接続し、所定量の水素を供給可能とした。水素供給配管には圧力計26を設け、マスフローコントローラー[(株)山武]27により第2の気体透過膜モジュール28に所定量の水素を供給した。第3の気体透過膜モジュール29の気相部は、配管30を通じて大気に開放し、大気圧下の溶解度以上の濃度のガスを除去した。第1の気体透過膜モジュールの水相部に、水流量計31を経由して、超純水を流量10L/分で送り込んだ。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度を水素濃度計[ハックウルトラアナリティクス ジャパン インク]32で測定し、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度を水素濃度計[ハックウルトラアナリティクス ジャパン インク]33で測定した。また、第3の気体透過膜モジュールの水相部の圧力を圧力計34で測定した。
最初は、第2の気体透過膜モジュールにおいて、水素1.6mg/Lすなわち水に対して飽和度1相当の水素を溶解させ、水の飽和度を2とした。第3の気体透過膜モジュールの出口の水圧は、0.2MPaに保った。第1の気体透過膜モジュールの気相部を大気に開放して、超純水の溶解ガスが大気と平衡になり、第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0mg/Lのとき、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度は0.793mg/Lであった。第1の気体透過膜モジュールの気相部に水素を加圧せず通気する要領で送り込み、第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度を0.46mg/Lかつ溶存ガス全体では大気圧下での飽和としたとき、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度は1.017mg/Lであった。同様に、第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度を0.76mg/Lとしたとき、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度は1.163mg/Lであった。
第3の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度をD1mg/L、大気圧下の溶解度以上の濃度のガスを除去して飽和度1としたときの第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度をD2mg/Lとすると、次式が成り立つ。
2 = D1/(第2の気体透過膜モジュールにおける飽和度)
第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0mg/Lのとき、第3の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度D1は1.6mg/Lであり、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度D2の計算値は1.6/2mg/L=0.8mg/Lとなる。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0.46mg/Lのとき、D1は(0.46+1.6)mg/L、D2の計算値は(0.46+1.6)/2mg/L=1.03mg/Lとなる。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0.76mg/Lのとき、D1は(0.76+1.6)mg/L、D2の計算値は(0.76+1.6)/2mg/L=1.18mg/Lとなる。
次いで、第2の気体透過膜モジュールにおいて、水素3.2mg/Lすなわち水に対して飽和度2相当の水素を溶解させ、水の飽和度を3とした以外は、同じ操作を繰り返した。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0mg/Lのとき、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度は1.015mg/Lであった。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度を0.46mg/Lとしたとき、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度は1.167mg/Lであった。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度を0.76mg/Lとしたとき、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度は1.260mg/Lであった。
第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0mg/Lのとき、第3の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度D1は3.2mg/Lであり、D2の計算値は3.2/3mg/L=1.07mg/Lとなる。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0.46mg/Lのとき、D1は(0.46+3.2)mg/L、D2の計算値は(0.46+3.2)/3mg/L=1.22mg/Lとなる。第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度が0.76mg/Lのとき、D1は(0.76+3.2)mg/L、D2の計算値は(0.76+3.2)/3mg/L=1.32mg/Lとなる。
次に、第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度を1.0mg/Lとして、水素0.8mg/Lすなわち水に対して飽和度0.5相当の水素を溶解させ、一旦水の飽和度を1.5としたのちに、第3の気体透過膜モジュールで飽和度1に戻した。この場合D2=1.8/1.5=1.2mg/Lとなる。
第2の気体透過膜モジュールの入口の溶存水素濃度、第2の気体透過膜モジュールで溶解した水素の量、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度の測定値と計算値を、第1表に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
第1表に見られるように、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度の測定値と計算値はよく一致している。第2の気体透過膜モジュールで、飽和度2相当量の水素を溶解させることにより、洗浄効果発揮の目安となる1mg/Lを大きく上回る溶存水素濃度1.2mg/Lの水素溶解洗浄水が得られている。第2の気体透過膜モジュールで溶解させる水素の量が飽和度1相当の場合よりも、飽和度2相当の場合の方が測定値と計算値の差が大きくなっているが、これは気相部に圧入する水素の量が多い場合には、実際には溶解していない水素の量が多くなるためと考えられる。
第1表最終行の例のように、加圧溶解させる気体透過膜モジュール入口での溶存水素濃度が比較的高い場合、本発明は特に有用となる。従来方式をここに適用すると、一旦1.0mg/Lの水素を真空ポンプを介して排出した後に、1.2mg/L分の水素を供給することになる。これに対し、本発明では、0.8mg/L分の水素を供給し、0.6mg/Lの水素を真空ポンプを介さずに排出させる。安全確保とともに、水素の消費量を減らす効果も得られる。
さらに、第3の気体透過膜モジュールの出口の水圧を0.05MPaに保ち、第1の気体透過膜モジュールの気相部を大気に開放し、第2の気体透過膜モジュールで水素1.6mg/L(飽和度1相当)又は水素3.2mg/L(飽和度2相当)を溶解させて、第3の気体透過膜モジュールの出口の溶存水素濃度を測定した。溶存水素濃度は、それぞれ0.798mg/L及び1.006mg/Lであった。出口の水圧を0.2MPaに保った場合と合わせて、結果を第2表に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
第2表に見られるように、第3の気体透過膜モジュールの出口の水圧は、水素の溶解には影響しない。
実施例2
大型ガラス基板の洗浄機に、本発明により製造した水素溶解洗浄水を用いた。
容量600Lの洗浄槽による大型ガラス基板の洗浄に、水素溶解洗浄水を適用した。洗浄槽からのオーバーフロー水を、容量500Lの貯留槽に受けた。貯留槽の水をポンプ圧送で100L/分の流量、0.2MPaの圧力で送水し、初めに限外ろ過膜(UF)モジュール[栗田工業(株)、KU1510−HS]に通した。ここで20L/分の流量で、異物を含む濃縮水を排出させた。限外ろ過膜モジュールの二次側で、超純水20L/分を分岐配管から合流させ、総流量100L/分を保った。この水を、水素を溶解させる気体透過膜モジュールに導いた。気体透過膜モジュール直前で分岐配管から採水した水の溶存水素濃度を測定したところ、0.8mg/Lであった。同時に、窒素が7mg/L、酸素が4mg/L溶解していた。
気体透過膜モジュールに、水素を1,800mL(標準状態)/分の流量で、ゲージ圧0.15MPaの圧力で供給し、全量を加圧溶解させた。この直後の溶存水素濃度は2.4mg/Lであり、溶存窒素濃度と溶存酸素濃度は気体透過膜モジュールの入口と変わらなかった。飽和度で表すと、水素が飽和度1.5相当量、空気成分が飽和度0.5相当量、合計して飽和度2相当量のガスが溶解していた。
水素溶解のための気体透過膜モジュールの後段に、過飽和のガスの除去部として、もう1本の気体透過膜モジュールを設置し、気相部の取り合いにチューブを接続し、酸化触媒塔に接続した。この間には圧力損失を起こすバルブなどは装着せず、ほぼ大気圧とした。過飽和のガスを除去した直後の水を採水して溶存ガス濃度を測定したところ、水素1.2mg/L(飽和度0.75相当)、窒素4.5mg/L、酸素2.0mg/L(空気成分合わせて飽和度0.25相当)であり、溶存水素濃度の目安である1mg/L以上が十分に確保されていた。
水温は、補給水が23℃であるのに対して、洗浄槽入口の循環水が27℃とやや高めとなっていたが、特に温度調整は行わず、この温度で安定することを確認してそのまま運転した。
洗浄機では、40kHzの超音波を併用して、約1m角四方の大きさのガラス基板を被洗浄物として、5分間の浸漬洗浄を行った。洗浄前のガラス基板上の1μm以上の微粒子数は、平均して約4,000個であった。洗浄水として超純水、調製した溶存水素濃度1.2mg/Lの水素溶解洗浄水又は該水素溶解洗浄水にさらにアンモニア3〜5mg/Lを添加した洗浄水を用いて、ガラス基板各10枚を洗浄した。洗浄後のガラス基板上の1μm以上の微粒子数の平均値は、超純水を用いたとき約800個、水素溶解洗浄水を用いたとき約70個、アンモニア添加水素溶解洗浄水を用いたとき約30個であった。
この結果から、本発明方法及び本発明装置により循環供給する水素溶解洗浄水を用いて、効果の高い洗浄を実施し得ることが確認された。また、水素溶解洗浄水に微量のアンモニアを添加することにより、洗浄効果が一層高まることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のガス溶解洗浄水の製造方法、製造装置及び洗浄装置によれば、脱気ポンプなどの減圧機構を用いることなく、高濃度の特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を安定して安全に供給することができる。とりわけ、大流量の水を循環再利用するような場合には、本発明方法及び本発明装置を好適に適用することができ、実用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明方法の実施の一態様及び本発明装置の一態様の工程系統図である。
【図2】本発明方法の実施の他の態様及び本発明装置の他の態様の工程系統図である。
【図3】本発明方法の実施の他の態様及び本発明装置の他の態様の工程系統図である。
【図4】実施例において用いた用いた試験装置の工程系統図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ガス溶解装置
2 ガス部分除去装置
3 ガス溶解装置
4 ガス部分除去装置
5 ガス溶解装置
6 ガス部分除去装置
7 洗浄機
8 返送配管
9 水槽
10 圧力調整器
11 圧送ポンプ
12 熱交換器
13 限外ろ過膜装置
14 ガス溶解装置
15 ガス部分除去装置
16 排ガス処理装置
17 ガス溶解洗浄水配管
18 pH計
19 ポンプ
20 アンモニア水貯槽
21 溶存水素モニター
22 第1の気体透過膜モジュール
23 バルブ
24 マスフローコントローラー
25 水素ボンベ
26 圧力計
27 マスフローコントローラー
28 第2の気体透過膜モジュール
29 第3の気体透過膜モジュール
30 配管
31 水流量計
32 水素濃度計
33 水素濃度計
34 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定ガスを水に溶解したガス溶解洗浄水の製造方法において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とし、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去することを特徴とするガス溶解洗浄水の製造方法。
【請求項2】
ガス溶解水を大気圧前後まで減圧する請求項1記載のガス溶解洗浄水の製造方法。
【請求項3】
ガス溶解水を気体透過膜モジュールに通水し、気体透過膜モジュールの気相部を大気に通じた状態にすることにより、ガス溶解水を大気圧前後まで減圧する請求項2記載のガス溶解洗浄水の製造方法。
【請求項4】
特定ガスを加圧下に水に溶解して大気圧下の溶解度以上の濃度のガス溶解水とする操作と、次いでガス溶解水を減圧して溶存ガスの一部を除去する操作を繰り返す請求項1記載のガス溶解洗浄水の製造方法。
【請求項5】
特定ガスを加圧下に溶解する水が、使用済みのガス溶解洗浄水である請求項1記載のガス溶解洗浄水の製造方法。
【請求項6】
ガス溶解洗浄水中の汚染物を除去する工程を有する請求項5記載のガス溶解洗浄水の製造方法。
【請求項7】
特定ガスが水素であり、減圧して除去されるガスを排ガス処理装置で処理する請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のガス溶解洗浄水の製造方法。
【請求項8】
特定ガスを水に溶解したガス溶解洗浄水の製造装置において、特定ガスを大気圧を超える加圧下に水に溶解するガス溶解装置と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置とを有することを特徴とするガス溶解洗浄水の製造装置。
【請求項9】
特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を用いる洗浄機と、該洗浄機から排出された使用済みのガス溶解洗浄水に、特定ガスを大気圧を超える加圧下に溶解するガス溶解装置と、ガス溶解装置からのガス溶解水を、ガス溶解時の圧力より低い圧力に減圧し、溶存ガスの一部を除去するガス部分除去装置と、ガス部分除去装置から流出する特定ガスを溶解したガス溶解洗浄水を洗浄機に供給するガス溶解洗浄水配管とを有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項10】
洗浄機から排出された使用済みのガス溶解洗浄水が、熱交換器及び汚染物除去装置を経由して循環する請求項9記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−243113(P2007−243113A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67406(P2006−67406)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】