説明

ガラスおよびコーティング剤

【課題】コーティング層との密着性に優れ、耐擦傷性、飛散防止性および自己治癒性に優れたガラスおよびコーティング剤を提供する。
【解決手段】シランカップリング剤、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、および、イソシアネート樹脂またはメラミン樹脂を含む組成物からなるコーティング層を有するガラスおよびコーティング剤である。前記ポリカプロラクトンおよびポリジメチルシロキサンが、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとの共重合体に由来することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の組成物からなるコーティング層を有するガラスおよびコーティング剤に関する。詳細には、ガラスとコーティング層との密着性に優れ、耐擦傷性および飛散防止性に優れたガラスおよびコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスの耐擦傷性の向上および飛散防止のために、ガラス表面に樹脂コーティング層を設けることが行なわれている。
【0003】
特許文献1および2には、前記目的のために、水性アクリル樹脂または水性ウレタン樹脂などを塗布することが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、ガラス表面に熱可塑性樹脂およびラジカル重合反応性組成物を塗布したのち、活性エネルギー線照射をすることにより、耐衝撃性の改善および破損時の飛散を防止する方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、いずれの特許文献においても、ある程度の飛散防止は可能であるが、充分ではなく、ガラスの耐擦傷性はよくないという問題がある。
【0006】
ところで、特許文献4および5には、ポリジメチルシロキサン系共重合体、ポリカプロラクトンおよびポリシロキサンとを含有する塗料が記載されている。しかし、この塗料は、樹脂成型品、木工製品および金属製品を対象として、その耐擦傷性を向上させるものであり、耐擦傷性および飛散防止性に優れたガラスは、いまだ得られていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2000−104007号公報
【特許文献2】特開2000−169792号公報
【特許文献3】特開2003−306346号公報
【特許文献4】特開平11−228905号公報
【特許文献5】特開2001−11376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ガラスとコーティング層との密着性に優れ、耐擦傷性および飛散防止性に優れたガラスおよびコーティング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、シランカップリング剤、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、および、イソシアネート樹脂またはメラミン樹脂を含む組成物からなるコーティング層を有するガラスに関する。
【0010】
前記ポリカプロラクトンおよびポリジメチルシロキサンが、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとのブロックまたはグラフト共重合体であることが好ましい。
【0011】
前記組成物が、さらに、2官能以上のラクトンポリオールを含むことが好ましい。
【0012】
前記組成物がイソシアネート樹脂を含み、該組成物中の水酸基とイソシアネート基とのモル比が1:0.7〜1:1.3であることが好ましい。
【0013】
前記組成物が、メラミン樹脂を固形分比で5〜40重量%含むことが好ましい。
【0014】
シランカップリング剤、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、および、イソシアネート樹脂またはメラミン樹脂を含む組成物からなるコーティング剤にも関する。
【0015】
前記ポリカプロラクトンおよびポリジメチルシロキサンが、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとのブロックまたはグラフト共重合体であることが好ましい。
【0016】
前記組成物が、さらに、2官能以上のラクトンポリオールを含むことが好ましい。
【0017】
前記組成物がイソシアネート樹脂を含み、該組成物中の水酸基とイソシアネート基とのモル比が1:0.7〜1:1.3であることが好ましい。
【0018】
前記組成物が、メラミン樹脂を固形分比で5〜40重量%含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定の組成物からなるコーティング層を有しているので、ガラスとコーティング層との密着性に優れ、耐擦傷性、および飛散防止性に優れたガラスおよびコーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のガラスは、シランカップリング剤、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、および、イソシアネート樹脂またはメラミン樹脂を含む組成物からなるコーティング層を有する。
【0021】
前記組成物からなるコーティング層は、ガラスとの密着性に優れ、また、得られるガラスは、耐擦傷性および飛散防止性に優れたものとなる。
【0022】
本発明で使用されるガラスは、とくに限定されるものではなく、一般的なソーダ石灰ガラスに少量のアルミナまたは酸化マグネシウムを加えた組成のガラス素材からなるものなどがあげられる。その形状もとくに限定されず、板状ガラス、および、医薬品、化粧品および飲料品などに使用されるガラス容器、ガラスびんおよびガラス製化粧びんなどがあげられる。なお、ガラスは、透明、不透明および無色、着色を問わずどのようなガラスも使用できる。また、レヤ(加熱)処理、イトロ処理などの処理を施したものでもよく、無処理のものでもよい。
【0023】
本発明で使用されるシランカップリング剤は、得られるコーティング層に耐汚染性、耐候性および耐熱性などを付与したり、表面硬度を向上させたりするものである。
【0024】
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、または前記オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する前記シラン化合物を付加させたものなどがあげられる。なかでも、経済性および汎用性の点で、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0025】
前記シランカップリング剤は、前記組成物中に、1〜20重量%含有されていることが好ましく、1〜10重量%含有されていることがより好ましい。シランカップリング剤が1重量%より少ないと、前記コーティング層とガラスとの付着性が劣る傾向にある。20重量%をこえると、耐擦傷性が低下する傾向にある。
【0026】
本発明で使用されるポリカプロラクトンは、得られるコーティング層に高い反発弾性および良好な密着性を付与したり、擦過力が及ぼされた場合に、該擦過力をエネルギー弾性変形により吸収する働きを有する。
【0027】
具体的には、2官能ポリカプロラクトンジオール類、3官能ポリカプロラクトントリオール類および4官能ポリカプロラクトンテトラオールなどがあげられる。また、前記ポリカプロラクトンは、前記のように本発明で使用される組成物中に独立した重合体として含有させてもよいし、前記ポリジメチルシロキサン中に導入させて、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとの共重合体として含有させてもよい。なかでも、塗膜透明性、ガラスへの密着性、耐擦傷性の点で、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとの共重合体として含有させることが好ましい。
【0028】
前記ポリカプロラクトンは、いずれの場合にせよ、前記組成物中に、20〜70重量%含有されていることが好ましく、40〜60重量%含有されていることがより好ましい。ポリカプロラクトンが20重量%より少ないと、得られるコーティング層の耐擦傷性および耐チッピング性が低下する傾向にある。70重量%をこえると、得られるコーティング層の耐汚染性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明で使用されるポリジメチルシロキサンは、ジメチルシロキサンのホモポリマーであってもよいし、ポリジメチルシロキサンとビニルモノマーの重合体とからなるブロック共重合体またはグラフト共重合体であってもよい。なかでも、塗膜透明性、ガラスへの密着性、耐擦傷性、飛散防止性の点で、ポリジメチルシロキサンとビニルモノマーの重合体とからなるブロック共重合体またはグラフト共重合体が好ましい。
【0030】
前記ビニルモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびアリルアルコール、また、カージュラEと、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸またはマレイン酸などとの反応物を用いることもできる。さらに、前記したように、ポリカプロラクトン変性されたビニルモノマーを用いることもできる。なかでも、ガラスへの密着性、塗膜の耐久性の点で、メチルメタクリレートが好ましい。
【0031】
前記共重合体である場合、ポリジメチルシロキサン部分は、共重合体中に、1〜10重量%含有されていることが好ましく、1〜5重量%含有されていることがより好ましい。ポリジメチルシロキサン部分が1重量%より少ないと、塗装表面の滑性が少なくなり、耐擦傷性が低下する傾向にある。10重量%をこえると、塗膜透明性、ガラスへの密着性が低下する傾向にある。
【0032】
また、いずれの場合にせよ、前記ポリジメチルシロキサンの分子量は、1000〜30000程度であることが好ましく、5000〜20000程度であることがより好ましい。ポリジメチルシロキサンの分子量がこの範囲であれば、効果的にコーティング面の表面に配向し、潤滑性を与えることができる傾向にある。
【0033】
前記ポリジメチルシロキサンは、いずれの場合にせよ、前記組成物中に、固形分換算で、1〜10重量%含有されていることが好ましく、1〜5重量%含有されていることがより好ましい。ポリジメチルシロキサン(部分)が1重量%より少ないと、含有させることによる効果が充分に得られない傾向にある。10重量%をこえると、得られるコーティング層の耐汚染性が低下する傾向にある。
【0034】
前記ポリジメチルシロキサン系共重合体は、通常、溶液重合によって合成される。溶剤としては、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチルおよび酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノールおよびイソブタノールなどのアルコール系溶剤などを、単独または混合して用いられる。さらに、必要に応じて、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドおよびアゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性の重合開始剤が用いることができる。反応条件としては、反応温度50〜150℃で、反応時間3〜12時間であることが好ましい。
【0035】
前記ポリカプロラクトンおよびポリジメチルシロキサンが、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとの共重合体に由来する場合、飛散防止性を向上させる点で、さらに、ポリラクトンポリオールを含有することが好ましい。
【0036】
前記ポリラクトンポリオールとしては、ラクトンジオール、トリメチロールプロパン由来のラクトン、トリオール、ジトリメチロールプロパン由来のラクトンおよびテトラオールなどがあげられる。なかでも、塗膜の汚染性の点で、ポリカプロラクトンテトラオールが好ましい。
【0037】
前記ポリラクトンポリオールは、前記組成物中に、固形分換算で10〜40重量%含有されていることが好ましく、15〜30重量%含有されていることがより好ましい。ポリラクトンポリオールが10重量%より少ないと、飛散防止性が低下する傾向にある。40重量%をこえると、塗膜の硬化性が低下する傾向にある。
【0038】
本発明で使用される組成物には、架橋剤として、イソシアネート樹脂またはメラミン樹脂が含まれる。
【0039】
前記イソシアネート樹脂としては、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体などのポリイソシアネート、または、該ポリイソシアネートのブロック型イソシアネートなどがあげられる。なかでも、塗膜の耐候性の点で、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性体またはヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が好ましい。さらに、必要に応じて、ジブチルスズジラウレートまたはジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0040】
前記イソシアネート樹脂は、本発明で使用される組成物中に含まれるポリジメチルシロキサン系共重合体およびポリカプロラクトンなどに由来する水酸基と、該イソシアネート樹脂に由来するイソシアネート基とのモル比が1:0.7〜1:1.3となるように含有することが好ましい。前記モル比は、1:0.8〜1:1.2であることがより好ましい。前記モル比が1:0.7より小さいと、ガラスへの密着性、飛散防止性が低下する傾向にある。1:1.3をこえると、耐擦傷性が低下する傾向にある。
【0041】
また、前記メラミン樹脂としては、アルコキシ化メチロールメラミンなどがあげられる。なかでも、塗膜透明性の点で、メトキシ化メチロールメラミンが好ましい。
【0042】
前記メラミン樹脂は、組成物中に固形分換算で5〜40重量%含有されていることが好ましく、10〜30重量%含有されていることがより好ましい。メラミン樹脂が5重量%より少ないと、塗膜の硬化性が低下する傾向にある。40重量%をこえると、飛散防止性が低下する傾向にある。
【0043】
前記組成物からなるコーティング層の厚さは、乾燥塗膜で10〜80μmが好ましく、15〜40μmがより好ましい。厚さが10μmより薄いと、外観に劣り、飛散防止性および耐擦傷性が低下する傾向にある。80μmをこえると、立面での塗装作業性に劣る傾向にある。
【0044】
前記コーティング層を形成する方法としては、とくに限定されず、たとえばロールコーティング法、ディッピング法、スプレー塗装法、静電塗装法、電着塗装法、ワイヤーコート法、フローコート法、ドクターコート法などがあげられる。なかでも、薄膜のカラーコーティングが可能となるため、ガラスのクリアな素材を生かすことができる点、および、スプレーガンと比べて塗料ミストを最小限に抑えることができ、高品質、省力化、省資源および低公害を達成できる点で静電塗装法が好ましい。
【0045】
ここで静電塗装法とは、被塗物(ここではガラス)をプラスに保ち、霧状にした塗料を高電圧の静電場の中に分散させて、塗料の微粒子に帯電させ電気力線の作用により被塗物に塗料を付着させる塗装技術である。一般的に、導電性のある金属製品に対して行なわれるが、本発明においては不導体のガラスに対して行なうものである。通電剤をガラス表面上に塗布する事により、不導体のガラスに対しても静電塗装することが可能となる。
【0046】
前記通電剤としては、アクリルアミド構造を有するカチオン変性ポリマーがあげられる。
【0047】
また、前記通電剤を塗布する方法としては、とくに限定されず、たとえばロールコーティング法、ディッピング法、スプレー塗装法、ワイヤーコート法、フローコート法およびドクターコート法などがあげられる。
【0048】
前記コーティング層の形成が終了したのち、焼き付けが行なわれる。焼き付けを行なうことにより、形成された膜がより強固なものとなる。この焼き付けは、80〜280℃の温度範囲で行なうことが好ましい。焼き付け時間は、温度にもよるが2〜50分間であることが好ましい。焼き付け温度が80℃より低いと耐溶剤性、塗膜硬度が不足する傾向にあり、280℃より高いと塗膜黄変が生じ、塗膜密着強度が劣る傾向にある。焼き付け時間が短いと耐溶剤性、塗膜硬度が不足する傾向にあり、長いと塗膜黄変が生じ、塗膜密着強度が劣る傾向にある。
【0049】
本発明で使用される組成物には、必要に応じて、顔料、染料、アルミニウム、樹脂ビーズなどの着色剤、密着性を向上させるためのカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、スベリ剤などの塗膜形成助剤を添加してもよい。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお実施例中、「部」は重量部を、「%」は重量%を表わす。
【0051】
(ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(I)の合成)
撹拌機、温度計、滴下漏斗、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコ内に、トルエン50部およびメチルイソブチルケトン50部を仕込み、80℃まで昇温した。これとは別に、メタクリル酸メチル40部、ポリカプロラクトンメタクリルエステル(ダイセル化学工業株式会社製、プラクセルFM5)55部、片末端メタクリル変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製、X−22−174DX)4部、メタクリル酸1部およびアゾビス−2−メチルブチロニトリル(日本ヒドラジン工業株式会社製、ABNE)2部からなる混合モノマーを、均一になるように撹拌し、滴下漏斗に入れた。この混合モノマーを、4時間かけて前記トルエンおよびメチルイソブチルケトンの混合液に滴下した。そののち、6時間かけて反応を終了し、固形分50%のポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を得た。
【0052】
(ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(II)の合成)
メタクリル酸メチル44部用いたこと以外は前記で合成したポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(I)と同様の操作によって合成を行なった。
【0053】
(塗液Aの調製)
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(I)95部およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)5部を混合し、固形分52.5%の塗液Aを得た。
【0054】
(塗液Bの調製)
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(I)90部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)10部を混合し、固形分55%の塗液Bを得た。
【0055】
(塗液Cの調製)
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(I)70部、ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学株式会社製、プラクセル205)15部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)5部および酢酸ブチル10部を混合し、固形分55%の塗液Cを得た。
【0056】
(塗液Dの調製)
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(I)70部、ポリカプロラクトンテトラオール15部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)5部および酢酸ブチル10部を混合し、固形分55%の塗液Dを得た。
【0057】
(塗液Eの調製)
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(II)95部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)を混合し、固形分52.5%の塗液Eを得た。
【0058】
(塗液Fの調製)
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(II)70部、ポリカプロラクトンテトラオール15部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)5部および酢酸ブチル10部を混合し、固形分55%の塗液Fを得た。
【0059】
(塗液Gの調製)
前記ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(I)を塗液Gとした。
【0060】
(塗液Hの調製)
アクリルウレタン塗料(ナトコ株式会社製ガメロンクリアー、ポリジメチルシロキサン・ポリカプロラクトンを含まないアクリル樹脂塗料)を塗液Hとした。
【0061】
(塗液Iの調製)
塗料H95部に対して、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM403)5部を混合して得た塗料を塗液Iとした。
【0062】
(硬化剤aの調製)
酢酸ブチル50部およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートD−170、固形分100%、NCO%:21)50部を混合し、固形分50%、NCO%:10.5%の硬化剤aを得た。
【0063】
(硬化剤bの調製)
イソホロンジイソシアネートのTMPアダクト変性体(三井武田ケミカル株式会社製タケネートD−140N、固形分75%、NCO%:10.8%)を硬化剤bとした。
【0064】
(硬化剤cの調製)
酢酸ブチル50部、メトシキ化メチロールメラミン(日本サイテックインダストリーズ株式会社製サイメル303、固形分100%)を混合し、固形分50%の硬化剤cを得た。
【0065】
実施例1
前記塗液A100部に対し、表1に示すように硬化剤aを配合し、本発明の組成物を得た。表1に示すように、この組成物中に含まれるポリジメチルシロキサン系共重合体に由来する水酸基と、イソシアネート樹脂に由来するイソシアネート基とのモル比は、1:1であった。酢酸ブチル40部を添加して粘度調整を行なったのち、厚さ2mmのガラス板に乾燥膜厚が10μmになるように、バーコーターで塗布した。ついで、170℃で20分間焼き付け、硬化して、コーティング層を有する本発明のガラスを作製した。
【0066】
得られたガラスを以下の方法により評価した。結果を表4に示す。
(1)密着性試験
・密着性(a)
得られた試験板の塗装表面に100個の碁盤目をつけ、碁盤目部分にセロハンテープを密着させ、密着したセロハンテープを直角にかつ急激に剥離する。このとき、残存する碁盤目の目数を数え、全目数100に対して、何個残っているかで判定した。
【0067】
・密着性(b)
得られた試験板を100℃沸騰水に60分間浸透後、塗装表面に100個の碁盤目をつけ、碁盤目部分にセロハンテープを密着させ、密着したセロハンテープを直角にかつ急激に剥離した。このとき、残存する碁盤目の目数を数え、全目数100に対して、何個残っているかで判定した。
【0068】
(2)飛散防止性
試験用塗板をコンクリート面に置き、その上に1m、2mおよび3mの各高さから重さ300gの剛球を自然落下させて試験用塗板を破壊させたときの破片の状況を目視観察した。
○:破片はばらばらにならず連続している。
△:破片の一部はばらばらになり、一部は連続している。
×:全ての破片がばらばらになっている。
【0069】
(3)耐擦傷性
♯0000のスチールウールを使用し、300g荷重をかけ50往復させたのちに、HAZE値(%)で評価した。
○:HAZE値2未満
△:HAZE値2以上10未満
×:HAZE値10以上
【0070】
実施例2〜8
表1、表3に示す配合に従い、本発明の組成物を調製し、酢酸ブチルを添加して粘度調整を行なった。また、該組成物中に含まれるポリジメチルシロキサン系共重合体に由来する水酸基と、イソシアネート樹脂に由来するイソシアネート基とのモル比を求めた。ついで、実施例1と同様にしてコーティング層を有するガラスを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
比較例1〜6
表2、表3に示す配合に従い、本発明の組成物を調製し、酢酸ブチルを添加して粘度調整を行なった。ついで、実施例1と同様にしてコーティング層を有するガラスを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、および、イソシアネート樹脂またはメラミン樹脂を含む組成物からなるコーティング層を有するガラス。
【請求項2】
前記ポリカプロラクトンおよびポリジメチルシロキサンが、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとのブロックまたはグラフト共重合体に由来する請求項1記載のガラス。
【請求項3】
前記組成物が、さらに、2官能以上のラクトンポリオールを含む請求項1または2記載のガラス。
【請求項4】
前記組成物がイソシアネート樹脂を含み、該組成物中の水酸基とイソシアネート基とのモル比が1:0.7〜1:1.3である請求項1、2または3記載のガラス。
【請求項5】
前記組成物が、メラミン樹脂を固形分比で5〜40重量%含む請求項1、2または3記載のガラス。
【請求項6】
シランカップリング剤、ポリカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン、および、イソシアネート樹脂またはメラミン樹脂を含む組成物からなるコーティング剤。
【請求項7】
前記ポリカプロラクトンおよびポリジメチルシロキサンが、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリジメチルシロキサンとのブロックまたはグラフト共重合体に由来する請求項6記載のコーティング剤。
【請求項8】
前記組成物が、さらに、2官能以上のラクトンポリオールを含む請求項6または7記載のコーティング剤。
【請求項9】
前記組成物がイソシアネート樹脂を含み、該組成物中の水酸基とイソシアネート基とのモル比が1:0.7〜1:1.3である請求項6、7または8記載のコーティング剤。
【請求項10】
前記組成物が、メラミン樹脂を固形分比で5〜40重量%含む請求項6、7または8記載のコーティング剤。

【公開番号】特開2006−290696(P2006−290696A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116090(P2005−116090)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(395011621)和光化学工業株式会社 (1)
【出願人】(392007566)ナトコ株式会社 (42)
【Fターム(参考)】