説明

ガラスウエハの製造方法及び圧電デバイスの製造方法

【課題】 導電線が貫通する量産性の高いガラスウエハを提供する。
【解決手段】 貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法は、型(70)内に複数の燃焼性の繊維(23)を略平行に所定の間隔で配置する繊維配置工程(S11)と、燃焼性の繊維の融点以下の軟化点を有するガラスを型内で溶融させた状態にする溶融工程(S13)と、溶融したガラスを軟化点以下の温度まで下げてガラスブロック(25)にした状態で燃焼性の繊維を燃焼させる燃焼工程(S14)と、燃焼性の繊維が燃焼したことによりガラスブロックに形成された貫通孔(15)に対して導電性材料を充填し導電線(13)を形成する充填工程(S16)と、導電線と交差するようにガラスブロックをスライスするスライス工程(S17)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通線を設けたガラスウエハの製造方法、及びガラスウエハを用いた圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体通信機器やOA機器等の小型軽量化及び高周波数化に伴って、それらに用いられる圧電振動子も、より一層の小型化及び高周波数化への対応が求められている。また、回路基板に表面実装が可能な圧電振動子が要求されている。
【0003】
従来、圧電振動子はパッケージ内部に圧電振動片を収容し、圧電振動片はパッケージ内の電極部に接合されている。通常パッケージは、ガラスまたはセラミックで形成され、内部に所定の内部空間を備えている。パッケージ底部には、パッケージ内部と底部とに貫通するスルーホールが形成されており、スルーホールは高温ハンダなどで封止されている。
【0004】
例えば、セラミックパッケージを使った封止技術には特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1では、パッケージの上端面にロウ材などの接着剤が塗布され、加熱可能なチャンバー内で上から荷重をかけながら加熱しロウ材などを溶融し、パッケージを圧着させる。そしてパッケージのスルーホールに、高温ハンダなどの封止材を載せ真空中もしくは不活性ガス中のチャンバー内で、レ−ザー光を照射して高温ハンダが溶融されることでパッケージが封止される。
【特許文献1】特開2003−158439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された封止方法は、パッケージ底部に形成されたスルーホールに封止材を挿入し、レーザー光を照射して封止材を溶融してスルーホールを封止している。しかし、封止方法は個別対応と成り量産性に問題があった。
【0006】
本発明の目的は、導電線が貫通する量産性の高いガラスウエハを提供し、このガラスウエハを用いて封止がしっかりとした圧電デバイスを製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法は、型内に複数の燃焼性の繊維を略平行に所定の間隔で配置する繊維配置工程と、燃焼性の繊維の融点以下の軟化点を有するガラスを型内で溶融させた状態にする溶融工程と、溶融したガラスを軟化点以下の温度まで下げてガラスブロックにした状態で燃焼性の繊維を燃焼させる燃焼工程と、燃焼性の繊維が燃焼したことによりガラスブロックに形成された貫通孔に対して導電性材料を充填し導電線を形成する充填工程と、導電線と交差するようにガラスブロックをスライスするスライス工程と、を備える。
レーザー加工又はドリル加工などの機械加工によりガラスウエハに貫通孔を形成する場合にはガラスウエハが割れることがあるが、第1の観点では燃焼性の繊維を燃やして貫通孔を形成するので、ガラスウエハが割れることなく貫通孔が正確に形成される。
【0008】
第2の観点の貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法は、溶融工程において、型内にガラス粉末を投入しその型とガラス粉末とをガラスの軟化点以上に温度を上げることで、ガラスを溶融させた状態にする。
型内にガラス粉末を投入して、その型をそのまま炉などに入れることでガラスを溶融するので作業効率である。
【0009】
第3の観点の貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法は、充填工程において、貫通孔に金属膜を形成した後に導電性材料を溶融することで導電性材料を充填する。
金属膜を形成してから導電性材料を溶融すると、毛細管現象により隙間なく導電性材料が貫通孔に行き渡る。
【0010】
第4の観点の貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法は、充填工程において、貫通孔に金属をメッキ法により充填する。
メッキ法により金属を充填して導電線を形成してもよい。
【0011】
第5の観点の貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法は、充填工程において、貫通孔に金属微粒子を含む樹脂からなる導電性ペーストを充填する。
導電性ペーストを充填して導電線を形成してもよい。
【0012】
第6の観点の貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法において、燃焼性の繊維は炭素繊維である。そこで、燃焼工程は、この炭素繊維に電気を通し且つ酸素を供給することにより炭素繊維を燃焼させる。
炭素繊維を燃やす際に電気を通すことで燃やすことができる。
【0013】
第7の観点の圧電デバイスの製造方法は、蓋部ウエハを用意する工程と、第1電極パターンと第2電極パターンを有する複数の圧電振動片が形成された圧電ウエハを用意する工程と、第1の観点ないし第6の観点のいずれかのガラスウエハを用意する工程と、圧電ウエハの第1電極パターン及び第2電極パターンに対してガラスウエハの導電線の端部を重ね合わせるとともに蓋部ウエハを圧電ウエハに重ね合わせて接合する工程と、接合された3枚のウエハを圧電デバイスの形状に切断する工程と、を備える。
この構成により、貫通配線のガラスウエハを使ってウエハ単位で圧電デバイスを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<水晶振動子100の概観>
図1は、本実施形態の水晶振動子100の概略斜視図である。
水晶振動子100は、プリント基板などに表面実装される表面実装型の振動デバイスである。水晶振動子100は、大別して、絶縁性のガラスベース40、水晶フレーム50及びガラスリッド65とから構成される。水晶フレーム50、絶縁性のガラスベース40及びガラスリッド65は、生産性を上げるためウエハ単位で製造される。まず、ガラスベース40用のベース用ガラスウエハ20について説明する。
【0015】
<ベース用ガラスウエハ20の構成>
以下、本実施形態のベース用ガラスウエハ20について、図面を参照して説明する。
図2A(a)は、ベース用ガラスウエハ20の概略斜視図であり、(b),(c)及び(d)は、ガラスベース40の金属線13の位置を示す概略平面図である。
【0016】
図2A(a)において、ベース用ガラスウエハ20は、金属線13が所定の間隙で配置され、ベース用ガラスウエハ20に埋め込まれている。金属線13は、直径0.1mmから0.5mmの銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)又は共晶合金などの導電性金属材料より形成される。金属線13は、ベース用ガラスウエハ20の表面から裏面までを貫通するように金属線13が配置されている。ベース用ガラスウエハ20は、図3Bで説明するガラスブロック25をブレードでダイシングされたものである。ベース用ガラスウエハ20の製造方法については図3A及び図3Bを使って後述する。
【0017】
図2A(b),(c)及び(d)は、1個1個に切り出されたガラスベース40において金属線13がどの位置に形成されているかを示している。図2A(b)のA型ガラスベース40aは4つの金属線13をA型ベース40aの角部に間隔を空けて配置している。ガラスベース40の大きさL1×L2は3mm×2mmであり、金属線13の間隔M1は2.3mmから2.8mm、金属線13の間隔M2は1.3mmから1.8mmである。(c)のB型ガラスベース40bは2つの金属線13をB型ガラスベース40bの一辺に間隔を空けて配置している。(d)のC型ガラスベース40cは2つの金属線13をC型ガラスベース40cの対向する二辺に間隔を空けて配置している。これらガラスベース40の金属線13は、水晶フレーム50に形成される水晶振動片の接続電極の位置に応じて決められる。
【0018】
図2Bは、複数のB型ガラスベース40bを形成したベース用ガラスウエハ20を示した部分平面図である。図2Bに示す状態は、角型のベース用ガラスウエハ20から複数のB型ガラスベース40bがエッチングで形成された状態を示した図である。角型のベース用ガラスウエハ20から斜線部で示した開口領域22がエッチングされることにより、ガラスベース40が所定の大きさに形成されている。またB型ガラスベース40bの中央領域にベース用凹部47がエッチングにより形成されている。B型ガラスベース40bは3個1ブロックとして配置した状況を示している。なお開口領域22を設けることなく、ダイシングソーでベース40bを1個1個切り取るようにしてもよい。
【0019】
図2Bに示すように、角型のベース用ガラスウエハ20の一角には、ガラスベース40bの方向を特定するオリエンテーションフラット20cが形成されている。ガラスベース40bはベース用ガラスウエハ20から切り離されず、ガラスベース40bの一部が接続部11でベース用ガラスウエハ20と接続されている。このためガラスベース40bは、1枚のベース用ガラスウエハ20単位で取り扱うことができる。
【0020】
<ベース用ガラスウエハ20の製造方法>
次に、図2A及び図2Bで説明したベース用ガラスウエハ20の製造方法について説明する。
<<第1実施形態>>
図3Aは、第1実施形態のベース用ガラスウエハ20を形成するための型70の構成を示した説明図である。図3A(a)は、ガラスブロック25を形成する型70の斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【0021】
図3A(a)に示す型70は黒鉛から構成され、機械加工して組み立てられる。型70の側面には炭素繊維23を通す孔73が所定の間隙で設けられている。そして、型70の孔73には炭素繊維23が通されている。炭素繊維23の線径(直径)は、0.05mmから0.5mmである。型70の側面に形成された孔73はXY平面で同じ位置に形成されている。Z方向には型70の内寸法は、深さ100mmから150mm、幅20mmから50mm、長さ100mmから150mmである。
【0022】
図3A(b)は、炭素繊維23を、型70の孔73に通した(a)のA−A断面図である。炭素繊維23を孔73に通し終わった後、ガラス粉末を挿入する。炭素繊維の切れを防止するため、ガラス粉末を一度に投入することを避け、炭素繊維23を孔73に通す作業を2〜3回に分け、その都度ガラス粉末を挿入するのが好ましい。炭素繊維23を取り付け、ガラス粉末を投入した型70を不図示の電気炉内に固定する。
【0023】
第1実施形態に使われるガラス粉末はシリカ亜鉛系ガラス(SiO・ZnO・RO)、シリカアルミナ系ガラス(SiO・Al・RO),シリカガラス(SiO・RO)及び,シリカジルコニア系ガラス(SiO・Zr・RO)のいずれか一種を用いる。これらガラスは、軟化点810°Cから910°Cで、溶解時間が約15分から約30分である。
【0024】
炭素繊維23を取り付け、ガラス粉末を投入した型70を電気炉で910°Cから1000°Cに加熱して溶解させてから、800°C程度まで温度を下げて電気炉内に酸素を流入する。炭素繊維23は、800°C程度の温度と酸素雰囲気で燃焼を開始する。炭素繊維23が燃焼することでガラスに貫通孔が形成される。600°Cまで酸素雰囲気を保ちながら冷却してから酸素を止め、以後、ガラスに冷却によるひずみを残さないよう徐冷を行う。なお、炭素繊維23を燃焼させる際に黒鉛からなる型70も燃えることがあるが支障はない。
【0025】
徐冷後、ガラスブロック25を型から取り出すと、図3B(c)に示すように貫通孔15が形成されている。そしてスパッタ、化学気相成長法(CVD法)などを用いて貫通孔15に金属膜が形成される。その後、ガラスブロック25の片側にポリイミドテープ又はフッ素樹脂テープなどの断熱テープを接着して、片側の貫通孔15を塞ぐ。そしてもう一方の金属膜が形成された貫通孔15に、金ペースト、銀ペースト及び共晶合金の金スズ(Au20Sn)合金、金シリコン(Au3.15Si)合金、並びに金ゲルマニューム(Au12Ge)合金などの1つを溶融して流入させる。金属膜を形成してから金ペーストなどを溶融して流し込むと毛細管現象により金ペーストが隙間なく流れ込むことができる。そして断熱テープを剥がす。
【0026】
この他にも金属膜を形成することなく、電解メッキ法を用い貫通孔15に金(Au)、ニッケル(Ni)又は銅(Cu)を埋め込むことで貫通孔15に金属を充填することができる。また、金、銀(Ag)又は銅の微粒子を高い濃度で粘性のあるエポキシなどの樹脂成分にまぜた流動性の高い導電性ペーストを貫通孔15に流し込めば、貫通孔15に金属膜を形成する必要はない。導電性ペーストは樹脂成分が含まれるため、貫通孔15に導電性ペーストを流し込んだ後に乾燥させて、300°C程度に硬化させる。
その後、ガラスブロックの表面に付着した金属を除去してガラスブロック25を形成する。
【0027】
図3B(d)は、ベース用ガラスウエハ20を形成する概略図を示す。ガラスブロック25を金属線13に直交するようにスライスする。金属線13は表裏面に対して直交しているが、表裏面を貫通すれば金属線13は斜めになっていても良い。ベース用ガラスウエハ20の厚さDは0.3mm〜1.0mm程度にダイシングソーでスライスされている。
【0028】
スライスした状態のガラスウエハ20には切断ひずみ及び凹凸があるので、切断ひずみ及び凹凸の除去並びに金属線13をガラスウエハ20の表面に露出させるため、100Åから300Å程度のエッチングを行う。このエッチング工程でガラスウエハ20の表面に金属線13が露出する。
【0029】
<<第2実施形態>>
図4は、第2実施形態のベース用ガラスウエハ20を形成するための型70の構成を示した説明図である。図4(a)は、ガラスブロック25を形成する型70の斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。(c)は、(a)のB−B断面図である。図3Aで説明した同一機能には同一符号を付し、同一符号の説明を省略する。
【0030】
図4(a)に示す型70は黒鉛から構成され、機械加工されて組み立てられる。型70の側面の型枠74には、耐熱性の電極95が取り付けられている。そして、型70の妻板76と型枠74との合わせ面に絶縁のためのセラミックシート75を挟み組み立てられる。図4(b)及び(c)に示すように、セラミックシート75が妻板76と底板77との合わせ面にはセラミックシート75を挟み込まれ、セラミックシートにより電気的に絶縁される。
【0031】
炭素繊維23を孔73に通し終わった後、ガラス粉末が型70の内部に投入される。炭素繊維23の切断を防止するため、ガラス粉末を一度に投入することを避け、炭素繊維23を孔73に通す作業を2〜3回に分け、その都度ガラス粉末を挿入するのが好ましい。炭素繊維23を取り付け、ガラス粉末を投入した型70を不図示の電気炉内にアルミナ系耐火物で固定する。
【0032】
第2実施形態に使われるガラス粉末は、軟化点525°Cから580°Cで溶解時間が約10分のホウ珪酸ガラス(SiO・B・RO)を用いる。
【0033】
炭素繊維23を取り付け、ガラス粉末を投入した型70を電気炉で600°Cに10分ほど加熱して溶解させてから、520°C程度まで温度を下げて電気炉内に酸素を流入しながら、型枠74に電極95を介して通電する。炭素繊維23は発熱して酸素雰囲気中で燃焼を開始しガラスに貫通孔15を形成する。500°Cまで酸素雰囲気を保ちながら徐冷してから酸素を止め、以後、ガラスにひずみを残さないよう除冷を行う。
【0034】
冷却後、ガラスブロックを型から取り出し、メッキ、スパッタ、化学気相成長法(CVD法)などを用いて貫通孔15に金属膜が形成される。そしてこの貫通孔15に、金ペースト、銀ペースト及び共晶合金の金スズ(Au20Sn)合金、金シリコン(Au15Si)合金、並びに金ゲルマニューム(Au12Ge)合金などの1つを溶融して流入させる。
【0035】
この他、電解メッキ法を用い貫通孔15に銅などを埋め込んだり、銀などを主体とした導電性ペーストを流し込んだりして、金属膜を形成することなく貫通孔15に金属を充填してもよい。その後、ガラスブロック25の表面に付着した金属を除去してガラスブロック25を形成し、ガラスブロック25を金属線13に直交するようにスライスする。
なお第1実施形態も第2実施形態も型70内に投入したガラス粉末を溶融したが、型70の外部で溶融されたガラスを型70内に流し込むようにしてもよい。
【0036】
<ベース用ガラスウエハ20の製造フローチャート>
図5は、第1実施形態及び第2実施形態のベース用ガラスウエハ20の製造フローッチャートである。
【0037】
ステップS11では、型70内の複数の孔73に複数の炭素繊維23を略平行に所定の間隔で通す。
ステップS12では、複数の炭素繊維23を切らないように型70内にガラス粉末を投入する。
ステップS13では、ガラス粉末を投入した型70を炉に入れてガラス粉末の軟化点まで温度を上げてガラスを溶融する。なお、炭素繊維はこの軟化点では燃えることはないが、炉内は酸素を少なくして炭素繊維が燃えたりしないようにする。
ステップS14では、溶融したガラスを軟化点以下の温度まで下げてガラスブロック25にした状態で炭素繊維23を燃焼させる。これにより貫通孔15が形成される。
【0038】
ステップS15では、温度を下げガラスブロック25のひずみを取りながら、型70からガラスブロック25を取り出す。
ステップS16では、ガラスブロック25の貫通孔15に各種方法を使って金属を充填する。
ステップS17では、ガラスブロック25をダイシングソーなどで所定の厚さ例えば0.3mm〜1.0mmにスライスしてガラスウエハ20を形成する。
【0039】
ステップS18では、ダイシングソーなどで表面が荒れた状態のガラスウエハ20をエッチングなどを行い表面処理をする。
ステップS19では、ガラスウエハ20に第1及び第2接続電極42,44をフォトリソグラフィー工程などで形成するとともに、第1及び第2外部端子45,46をメタライジングする。貫通孔15に金属膜を形成する場合には第1及び第2接続電極42,44も同時に形成することができる。
【0040】
<水晶振動子100の構成>
以下、各実施形態にかかる水晶振動子100について、図面を参照して説明する。図6Aは、水晶振動子100の概略図を示している。
図6A(a)は、水晶振動子100の構成を示す(c)のX−X全体断面図であり、(b)はガラスリッド65の内面図であり、(c)は水晶フレーム50の上面図であり、(d)はガラスベース40の上面図である。
【0041】
図6A(a)において、水晶振動子100は、音叉型水晶振動片30を備えた水晶フレーム50を中心として、その水晶フレーム50の下にガラスベース40が接合され、水晶フレーム50の上にガラスリッド65が接合されている。ガラスリッド65は、パイレックス(登録商標)ガラス及びホウ珪酸ガラス、並びにソーダガラス(以後ガラスウエハ60と呼ぶ)で形成され、ガラスリッド65は、リッド用凹部67を水晶フレーム50側の片面に有している。ガラスベース40は、ベース用ガラスウエハ20から形成され、エッチングにより形成されたガラスベース用凹部47を水晶フレーム50側の片面に有している。水晶フレーム50は、水晶ウエハ10から形成されエッチングにより形成された音叉型水晶振動片30を有している。
【0042】
図6A(b)に示すように、ガラスベース60から作られたガラスリッド65は、エッチングにより形成されたリッド用凹部67を備えている。
【0043】
図6A(c)に示すように、水晶フレーム50はその中央部にいわゆる音叉型水晶振動片30と外側に外枠部51とを有しており、音叉型水晶振動片30と外枠部51との間には空間部52が形成されている。音叉型水晶振動片30の外形を規定する空間部52は水晶エッチングにより形成されている。音叉型水晶振動片30は、基部32と基部から伸びる一対の振動腕31とを有している。基部32と外枠部51とは一体に形成されている。基部32及び外枠部51の第1主面に第1基部電極33と第2基部電極34とが形成され、第2主面にも同様に第1基部電極33と第2基部電極34とが形成されている。
【0044】
水晶振動片30は、第1主面及び第2主面に第1励振電極35及び第2励振電極36が形成されており、第1励振電極35は、基部32及び外枠部51に形成された第1基部電極33につながっており、第2励振電極36は、基部32及び外枠部51に形成された第2基部電極34につながっている。また、音叉型水晶振動片30の振動腕31の先端には、錘部37及び錘部38が形成されている。第1基部電極33及び第2基部電極34、第1励振電極35及び第2励振電極36並びに錘部37及び錘部38は、同時にフォトリソグラフィー工程で作成される。これらに電圧が加えられると音叉型水晶振動片30は所定の周波数で振動する。錘部37及び錘部38は音叉型水晶振動片30の振動腕31が振動し易くなるため錘であり且つ周波数調整のために設けられる。
【0045】
外枠部51の表面及び裏面に金属膜53を備える。金属膜53は、スパッタリングもしくは真空蒸着などの手法により形成する。金属膜53は、アルミニュウム(Al)層より成りアルミニュウム層の厚みは1000Å〜1500Å程度とする。金属膜53はアルミニュウム以外に、下地のクロム層に金層を重ねた金属膜であってもよい。
【0046】
図3A(d)に示すように、ガラスベース40は、ベース用ガラスウエハ20からなり、ガラスベース40の表面には、第1接続電極42並びに第2接続電極44を備えている。この第1接続電極42及び第2接続電極44は段差部49に形成されている。エッチングによりベース用ガラスウエハ20にベース40を形成すると同時に、ベース用凹部47及び段差部49が形成される。エッチングにより金属線13がベース用ガラスウエハ20の表面に突き出て、第1接続電極42並びに第2接続電極44との接続が容易になる。
【0047】
ガラスベース40の第1接続電極42及び第2接続電極44は、フォトリソグラフィー工程で作成される。第1外部電極45及び第2外部電極46は、底面にメタライジングにより形成される。第1接続電極42は、金属線13を介してガラスベース40の底面に設けた第1外部電極45に接続する。第2接続電極44も金属線13を介してガラスベース40の底面に設けた第2外部電極46に接続する。
【0048】
外枠部51の第2主面に形成された第1基部電極33と第2基部電極34とは、ガラスベース40の表面の第1接続電極42及び第2接続電極44に陽極接合と同時に接続される。
【0049】
図6Bは、パッケージ接合に陽極接合を行う概略断面図を示す。後述するようにウエハ単位で陽極接合するが、理解のため1つのパッケージ80の図が描かれている。ガラスリッド65及びガラスベース40は、第1実施形態及び第2実施形態で説明したように、ソーダガラス又はホウ珪酸ガラスなどを材料としており、これらはナトリウムイオンなどの金属イオンを含有するガラスである。音叉型水晶振動片30を備えた水晶フレーム50を中心として、リッド用凹部67を備えたガラスリッド65及びベース用凹部47を備えたガラスベース40を重ねる。
【0050】
陽極接合させるときには、金属膜を陽極としガラス部材の接合面に対向する面に陰極を配置し、これらの間に電界を印加する。このことにより、ガラスに含まれているナトリウムなどの金属イオンが陰極側に移動し、この結果接合界面においてガラス部材に接触している金属膜が酸化され、両者が接続した状態が得られる。
【0051】
そこで、真空中あるいは不活性ガス中で、200℃から400℃に加熱しながら加圧し、ガラスリッド65の上面及びガラスベース40の下面をマイナス電位に、外枠部51の表面及び裏面の金属膜53をプラス電位にして、直流電源90を用いて400V〜1kV程度の直流電圧を10分間印加して陽極接合技術により接合し、パッケージ80内が真空になった又は不活性ガスで満たされた水晶振動子100が形成される。陽極接合の際に、第1基部電極33及び第2基部電極34と第1接続電極42及び第2接続電極44ともしっかりと結合する。
【0052】
<水晶振動子100の製造工程>
図7は、音叉型水晶振動片30を形成した水晶ウエハ10を示した概略斜視図である。図7に示す状態は、角形の水晶ウエハ10から音叉型水晶振動片30及び水晶フレーム50をエッチングで同時に形成した状態を示した図である。角形の水晶ウエハ10から斜線部で示した開口領域12及び空間部52がエッチングされることにより音叉型水晶振動片30及び水晶フレーム50が所定の大きさに形成されている。音叉型水晶振動片30及び水晶フレーム50を3個1ブロックとして、15ブロック配置した状況を示している。角形の水晶ウエハ10は、軸方向が特定できるように、水晶ウエハ10の周辺部10eの一部には、水晶の結晶方向を特定するオリエンテーションフラットと10cが形成されている。なお、説明の都合上水晶ウエハ10には45個の音叉型水晶振動片30が描かれているが、実際には水晶ウエハ10に数百数千もの音叉型水晶振動片30が形成される。
【0053】
図7において、音叉型水晶振動片30及び、水晶フレーム50は、完全に水晶ウエハ10から切り離されず、水晶フレーム50の一部が角形の水晶ウエハ10と接続されている。このため、一つ一つの水晶フレーム50を処理することなく、1枚の水晶ウエハ10単位で取り扱うことができる。
【0054】
図8は、ガラスリッド65が形成されたガラスウエハ60と、音叉型水晶振動片30及び水晶フレーム50が形成された水晶ウエハ10と、ガラスベース40が形成されたベース用ガラスウエハ20とを重ね合わせる前の図である。ガラスリッド65もガラスベース40も連結部11でガラスウエハ60およびベース用ガラスウエハ20に接続された状態である。
【0055】
重ね合わせる際には、すでにガラスリッド65のリッド用凹部67はエッチングで形成されている。また、ガラスベース40のリッド用凹部47がエッチングで形成されており、さらに第1接続電極42及び第2接続電極44も形成されている。また、図7A及び図7Bで説明したように、音叉型水晶振動片30には第1基部電極33及び第2基部電極34並びに第1励振電極35及び第2励振電極36が形成されている。
【0056】
ガラスウエハ60及びベース用ガラスウエハ20並びに水晶ウエハ10の大きさは、例えば4インチでありオリエンテーションフラット60c,20c及び10cが形成されているため、3枚のウエハを正確に位置合わせして重ね合わせる。重ね合わされた3枚のウエハは、真空中あるいは不活性ガス中で陽極接合される。陽極接合の際に、第1基部電極33及び第2基部電極34と第1接続電極42及び第2接続電極44ともしっかりと結合する。
【0057】
ガラスウエハ60及びベース用ガラスウエハ20並びに水晶ウエハ10の3枚が重ね合わされた状態で、共通する連結部11を折ることで水晶振動子100が完成する。いわゆるパッケージングと電極の結合とが同時に行うことができ、またウエハ単位で製造できるため、生産性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において上記各実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。例えば、水晶ウエハ10は、水晶以外にニオブ酸リチウム等の様々な圧電単結晶材料を用いることができる。
また、上記説明では炭素繊維23を使用したが、燃焼性の繊維であれば他の材料でもよい、また音叉型水晶振動片30を説明したが、AT振動片にもSAW振動片であっても本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態にかかる第1水晶振動子100の斜視図である。
【図2A】(a)は、ガラスウエハ20の概略斜視図であり、(b)、(c)及び(d)は、ガラスベース40の金属線13の位置を示す概略平面図である。
【図2B】ベース40を形成したベース用ガラスウエハ20を示した部分平面図である。
【図3A】第1実施形態のベース用ガラスウエハ20を形成するための型70の構成を示した説明図である。(a)は、ガラスブロック25を形成する型70の斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図3B】(c)は型60からガラスブロック75を取り出した図であり、(d)はベース用ガラスウエハ20をカットする斜視図である。
【図4】第2実施形態のベース用ガラスウエハ20を形成するための型70の構成を示した説明図である。(a)は、ガラスブロック25を形成する型70の斜視図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。(c)は、(a)のB−B断面図である。
【図5】ベース用ガラスウエハ20を形成するフローチャートである。
【図6A】水晶振動子100の概略断面図である。(a)は(c)のX−X断面図であり、(b)は、リッド65の内面図であり、(c)は、水晶フレーム50の上面図であり、(d)は、ベース40の上面図である。
【図6B】陽極接合を行う概略断面図である。
【図7】音叉型水晶振動片30を備える水晶フレーム50を形成した水晶ウエハ10を示す概略斜視図である。
【図8】リッド65が形成されたリッド用ガラスウエハ60と、音叉型水晶振動片30及び水晶フレーム50が形成された水晶ウエハ10と、ガラスベース40が形成されたベース用ガラスベース20とを重ね合わせる斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
10 …… 水晶ウエハ
11 …… 連結部
12,22,62 …… 開口部
13 …… 金属線
20 …… ベース用ガラスウエハ
23 …… 炭素繊維
25 …… ガラスブロック
30 …… 音叉型水晶振動片
31 …… 振動腕
32 …… 基部
33,34 …… 基部電極
35,36 …… 励振電極
37,38 …… 錘部
40,40a、40b、40c …… ガラスベース
42,44 …… 接続電極
45,46 …… 外部電極
47 …… ベース用凹部
49 …… 段差部
50 …… 水晶フレーム
51 …… 外枠部
52 …… 開口部
53 …… 金属膜
60 …… リッド用ガラスウエハ
65 …… リッド
67 …… リッド用凹部
70 …… 型
73 …… 孔
74 …… 型枠
75 …… セラミックシート
76 …… 妻板
77 …… 底板
80 …… パッケージ
90 …… 直流電源
95 …… 電極
100 …… 水晶振動子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電線が貫通する貫通配線のガラスウエハを製造する製造方法であって、
型内に複数の燃焼性の繊維を略平行に所定の間隔で配置する繊維配置工程と、
前記燃焼性の繊維の融点以下の軟化点を有するガラスを前記型内で溶融させた状態にする溶融工程と、
前記溶融したガラスを軟化点以下の温度まで下げてガラスブロックにした状態で前記燃焼性の繊維を燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼性の繊維が燃焼したことにより前記ガラスブロックに形成された貫通孔に対して導電性材料を充填し前記導電線を形成する充填工程と、
前記導電線と交差するように前記ガラスブロックをスライスするスライス工程と、
を備えることを特徴とする貫通配線のガラスウエハの製造方法。
【請求項2】
前記溶融工程は、前記型内にガラス粉末を投入しその型とガラス粉末とをガラスの軟化点以上に温度を上げることで、前記ガラスを溶融させた状態にすることを特徴とする請求項1に記載の貫通配線のガラスウエハの製造方法。
【請求項3】
前記充填工程は、前記貫通孔に金属膜を形成した後に前記導電性材料を溶融することで前記導電性材料を充填することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貫通配線のガラスウエハの製造方法。
【請求項4】
前記充填工程は、前記貫通孔に金属をメッキ法により充填することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貫通配線のガラスウエハの製造方法。
【請求項5】
前記充填工程は、前記貫通孔に金属微粒子を含む樹脂からなる導電性ペーストを充填することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貫通配線のガラスウエハの製造方法。
【請求項6】
前記燃焼性の繊維は炭素繊維であり、前記燃焼工程はこの炭素繊維に電気を通し且つ酸素を供給することにより炭素繊維を燃焼させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の貫通配線のガラスウエハの製造方法。
【請求項7】
蓋部ウエハを用意する工程と、
第1電極パターンと第2電極パターンを有する複数の圧電振動片が形成された圧電ウエハを用意する工程と、
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のガラスウエハを用意する工程と、
前記圧電ウエハの第1電極パターン及び第2電極パターンに対して前記ガラスウエハの導電線の端部を重ね合わせるとともに前記蓋部ウエハを前記圧電ウエハに重ね合わせて接合する工程と、
接合された3枚のウエハを圧電デバイスの形状に切断する工程と、
を備えたことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−159008(P2009−159008A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331659(P2007−331659)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】