説明

ガラスフィルム積層体およびカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体

【課題】ガラスフィルムの変形を防止することができるガラスフィルム積層体を提供する。
【解決手段】本発明によるガラスフィルム積層体10は、ガラスフィルム11と、ガラスフィルム11に粘着層13を介して積層された金属基材12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルム積層体、および、このガラスフィルム積層体のガラスフィルム上に複数色の画素が設けられたカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体に係り、とりわけ、ガラスフィルムの変形を防止することができるガラスフィルム積層体およびカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子ディスプレイ、建築、家具装飾、電子デバイス、半導体デバイス、車体部材等には、従来から、ガラス板が多く用いられている。このうち、液晶ディスプレイ、電子ペーパー、有機ELディスプレイ等の電子ディスプレイに使用されるカラーフィルタには、一般的に、枚葉状のガラス板が基板として用いられており、このガラス板に、複数色の画素がパターン状に形成されて、カラーフィルタが製造されている。また、カラーフィルタの対向基板であるTFT基板若しくは電極基板、有機EL用表示素子基板、または太陽電池等にも、枚葉状のガラス板が用いられている。
【0003】
ところで、最近のガラス製造技術の進歩により、厚さが100μm程度のガラスフィルムが製造されるようになっている。このようなガラスフィルムは、可撓性を有しており、ロール状に巻き取り可能になっている。例えば、このガラスフィルムをカラーフィルタの基板に用いる場合には、ガラスフィルムが巻き取られたロールからガラスフィルムを繰り出して連続的にカラーフィルタを製造することができ(ロール・ツー(to)・ロールプロセス)、枚葉状のガラス板を用いる場合に比べて、生産効率を向上させることができる。しかしながら、このようなガラスフィルムはその厚さが薄いことから、耐衝撃性が低下し、製造工程中に損傷するという問題がある。
【0004】
このような問題の対策として、ガラスフィルム(極薄板ガラス)にプラスチックフィルム(透明樹脂層)が貼着されたガラスフィルム積層体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−273211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガラスフィルムにプラスチックフィルムを貼着した帯状のガラスフィルム積層体をロール・ツー・ロールプロセスに適用した場合、ガラスフィルム積層体には張力が負荷される。この場合、ガラスフィルムとプラスチックフィルムとは、ヤング率が互いに大きく異なることから、負荷された張力に対するガラスフィルムの変形量とプラスチックフィルムの変形量とが異なり、ガラスフィルムが変形するという問題があった。
【0007】
また、上述したガラスフィルム積層体のガラスフィルム上に、フォトリソグラフィー法によりカラーフィルタ用の画素を形成する場合、溶剤や水分の除去と熱架橋の促進とを目的として、ガラスフィルム上に画素が形成されたガラスフィルム積層体を、例えば200℃以上の温度で加熱処理して画素を硬化(ポストベーク)させて、冷却することが一般的に行われている。しかしながら、薄いガラスフィルムは、冷却時におけるプラスチックフィルムの収縮力に対抗可能な剛性を有していない。このため、ガラスフィルムがプラスチックフィルムの収縮力によって反る(カールする)という問題があった。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ガラスフィルムの変形を防止することができるガラスフィルム積層体およびカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された金属基材と、を備えたことを特徴とするガラスフィルム積層体を提供する。
【0010】
なお、上述したガラスフィルム積層体において、前記金属基材は、10GPa以上のヤング率を有している、ことが好ましい。
【0011】
また、上述したガラスフィルム積層体において、前記金属基材の熱収縮率は、IPC TM650 Method2.2.4に準拠して、230℃、150分後の焼成後に、0.05%以下である、ことが好ましい。
【0012】
本発明は、ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された支持基材と、を備え、前記支持基材は、ガラスクロスを有することを特徴とするガラスフィルム積層体を提供する。
【0013】
なお、上述したガラスフィルム積層体において、前記支持基材は、前記ガラスクロスを有するガラス含有プラスチックフィルムにより構成されている、ことが好ましい。
【0014】
本発明は、ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された金属基材と、を有するガラスフィルム積層体と、前記ガラスフィルム積層体の前記ガラスフィルム上に設けられたカラーフィルタ用の複数色の画素と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体を提供する。
【0015】
本発明は、ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された支持基材と、を有するガラスフィルム積層体と、前記ガラスフィルム積層体の前記ガラスフィルム上に設けられたカラーフィルタ用の複数色の画素と、を備え、前記支持基材は、ガラスクロスを有することを特徴とするカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガラスフィルムの変形を防止することができる。
【0017】
また、本発明によれば、カラーフィルタ用の複数色の画素が設けられたガラスフィルム積層体のガラスフィルムの変形を防止することができる。このことにより、カラーフィルタの表示画像の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態において、カラーフィルタの断面構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態において、ガラスフィルム積層体の断面構成を示す図である。
【図3】図3は、カラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体の断面構成の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態において、ガラスフィルム積層体の製造装置およびその製造方法を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態において、ガラスフィルム積層体の断面構成を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態において、ガラスフィルム積層体の変形例の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
(第1の実施の形態)
まず、図1により本実施の形態によるガラスフィルム積層体およびカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態におけるカラーフィルタ1は、ガラスフィルム11と、このガラスフィルム11上に設けられた赤色画素2、緑色画素3および青色画素4、とを備えている。
【0022】
通常、ガラスフィルム11上には、マトリックス形状にパターニングされたブラックマトリックス5が設けられており、各画素2、3、4は、ガラスフィルム11上のブラックマトリックス5により画定される各開口内に形成されている。すなわち、ブラックマトリックス5の各開口内に、赤色(R)画素用感光性材料、緑色(G)画素用感光性材料、および青色(B)画素用感光性材料により、赤色画素2、緑色画素3および青色画素4が形成されている。各画素2、3、4の配列は、図示しないが、ストライプ配列、デルタ配列(トライアングル配列)、正方配列(四画素配列)等の公知の配列とすることができる。このように異なる色を有した三つの隣り合う画素によって、画面上における一つの表示画素が形成されるようになっている。更に、黄色画素(図示せず)等を追加して4色以上の画素が形成されるようにしても良い。なお各画素2、3、4を形成する感光性材料としては、各色の顔料と溶剤と接合性樹脂(バインダー)とを含む顔料分散型の感光性樹脂組成物を用いることができ、ブラックマトリックス5を形成する感光性材料としては、遮光性を有する黒色の顔料を分散させた感光性樹脂組成物を用いることができる。
【0023】
これらの画素2、3、4は、図1に示すように、保護層6で覆われている。この保護層6上に、インジウム錫酸化物(ITO(Indium Tin Oxide))からなる透明電極膜7が形成されている。
【0024】
このようなカラーフィルタ1は、例えば、各画素2、3、4に対応して配列されたTFT等のスイッチング素子と液晶層とを含む液晶素子、および面光源と組み合わされて、液晶ディスプレイ(LCD)または電子ペーパー等に用いられる。この構成において、液晶はスイッチング素子によって制御されてシャッターとして機能し、面光源からの光を所望の色の画素のみを介して出射させる。このようにして、画面上にカラー映像が表示されるようになっている。なお、図1の構成は一例であり、ディスプレイの種類や表示素子の動作原理によって適宜変更され、例えば、ブラックマトリックス6が設けられていない構成や、透明電極膜8が設けられていない構成などがある。
【0025】
上述したガラスフィルム11を有するカラーフィルタ1は、当該ガラスフィルム11を有するガラスフィルム積層体10(図2参照)を用いて製造することができるようになっている。
【0026】
続いて、図2を用いて、本実施の形態におけるガラスフィルム積層体10について説明する。ガラスフィルム積層体10は、ガラスフィルム11と、ガラスフィルム11に粘着層13を介して積層された金属基材12と、を備えている。このうち金属基材12は、本実施の形態においては、箔状(または薄膜状)に形成された金属箔により構成されている。
【0027】
金属基材12は、10GPa以上のヤング率を有していることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム11のヤング率(50GPa以上90GPa以下)と金属基材12のヤング率との差を低減することができる。この場合、ロール・ツー・ロールプロセスにおいてガラスフィルム積層体10に張力が負荷された場合であっても、ガラスフィルム11の変形量と、金属基材12の変形量を同程度にすることができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。また、ヤング率を10GPa以上とすることにより、ガラスフィルム11と金属基材12とを貼り合せる際に生じるガラスフィルム11の歪みと金属基材12の歪みとの差を低減することができ、ガラスフィルム11に応力が負荷されることを抑制し、ガラスフィルム11の割れを防止することができる。なお、金属基材12のヤング率の測定方法としては、JIS Z 2280に準拠して測定することが好適である。
【0028】
また、金属基材12の熱収縮率は、IPC TM650 Method2.2.4に準拠して、230℃、150分後の焼成後に、0.05%以下であることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム11の熱収縮率(0.05%以下)と金属基材12の熱収縮率との差を低減することができる。このように金属基材12の熱収縮率を0.05%以下とすることにより、例えば、カラーフィルタ用の画素2、3、4を形成する場合に、画素2、3、4を硬化(ポストベーク)させるために加熱処理して冷却した場合であっても、ガラスフィルム11の収縮量と金属基材12の収縮量との差が低減されるため、ガラスフィルム11が反る等によりガラスフィルム11が変形することを防止でき、ガラスフィルム積層体10を、ロール・ツー・ロールプロセスにおいて、安定して搬送することができる。
【0029】
次に、図3を用いて、カラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体1aについて説明する。カラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体1aは、ガラスフィルム積層体10を用いてカラーフィルタ1を製造する場合の中間生成物に相当するものであって、上述したガラスフィルム積層体10と、このガラスフィルム積層体10のガラスフィルム11上に設けられた、カラーフィルタ用の複数色の画素2、3、4およびブラックマトリックス5と、を有している。このうち、各画素2、3、4は、保護層6で覆われ、保護層6上に透明電極膜7が形成されている。このカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体1aにおいて、金属基材12を粘着層13と共にガラスフィルム11から剥離することにより、図1に示すカラーフィルタ1が得られるようになっている。
【0030】
次に、各構成部材の材料について説明する。
【0031】
ガラスフィルム11に用いる材料としては、フィルム状に形成できるものであれば特に制限されないが、一般にディスプレイ用途に用いられるソーダライムガラス、無アルカリガラスが好ましい。このうち、無色で透明度が高く、線熱膨張係数が小さくて変形しにくい無アルカリガラスが好適である。また、ガラスフィルム11の厚さは、5〜300μmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム11を安定的に製造可能にし、取り扱い上最低限の強度を持たせることができると共に、ガラスフィルム11を有するガラスフィルム積層体10をロール状に巻き取ることが可能になる。
【0032】
金属基材12に用いる材料としては、例えば、ステンレス、銅、ニッケル、チタン、鉄などを挙げることができる。この中でも、入手性、耐食性に優れたステンレスを用いることが好ましい。また、金属基材12の厚さは、1〜200μmであることが好ましい。金属基材12の厚さを1μm以上とすることにより、ガラスフィルム11の補強に必要な強度を確保するとともに、金属基材12が破断することを防止して取り扱い性を向上させることができる。また、金属基材12の厚さを200μm以下とすることにより、金属基材12の剛性が大きくなってガラスフィルム積層体10の巻き取りが困難になることを防止できる。
【0033】
粘着層13に用いる材料としては、柔軟性を有しているものであれば、特に限定されないが、アクリル系、スチレン系等の樹脂材料が好ましい。また、粘着層13の厚さは、5〜200μmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム11と金属基材12とを粘着するために十分な粘着力を確保できる。
【0034】
次に、図4を用いて、本実施の形態におけるガラスフィルム積層体の製造装置(ラミネーター)20について説明する。
【0035】
図4に示すように、ガラスフィルム積層体の製造装置20は、帯状の連続したガラスフィルム11が巻き付けられたガラスフィルム11のロールが取り付けられるガラスフィルム供給部21と、帯状の連続した金属基材12が巻き付けられた金属基材12のロールが取り付けられる金属基材供給部22と、を有している。このうち、金属基材12の一方の面に設けられた粘着層13上に、カバーシート(離型紙)14が剥離自在に貼り付けられており、金属基材12のロールにおいて、互いに隣接する金属基材12の部分同士が粘着層13によって貼り付くことを防止している。また、金属基材供給部22の近傍には、金属基材供給部22から繰り出された金属基材12から、カバーシート14を剥離するための剥離部23と、剥離されたカバーシート14を巻き取って回収する回収部24とが設けられている。
【0036】
ガラスフィルム供給部21および金属基材供給部22の搬送方向下流側に、ガラスフィルム11および金属基材12をラミネートする押圧部25が設けられている。この押圧部25によって、ガラスフィルム11に粘着層13を介して金属基材12が積層されて貼り付けられ、図2に示すガラスフィルム積層体10が得られるようになっている。
【0037】
押圧部25の下流側には、ガラスフィルム積層体10を円筒状のコア27aに巻き取る巻取部26が設けられている。この巻取部26において、ガラスフィルム積層体10がコア27aに巻き取られたガラスフィルム積層体ロール27が形成される。
【0038】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態によるガラスフィルム積層体の製造方法について、図4を用いて説明する。
【0039】
まず、帯状の連続したガラスフィルム11と、粘着層13付きの帯状の連続した金属基材12と、を準備する。すなわち、ガラスフィルム積層体の製造装置20において、ガラスフィルム11のロールがガラスフィルム供給部21に取り付けられ、金属基材12のロールが金属基材供給部22に取り付けられる。
【0040】
続いて、ガラスフィルム供給部21からガラスフィルム11が繰り出され、金属基材供給部22から粘着層13付きの金属基材12が繰り出される。この際、金属基材供給部22から繰り出された粘着層13上のカバーシート14は、剥離部23によって粘着層13から剥離されて、回収部24に巻き取られて回収される。このようにして、押圧部25には、カバーシート14が剥離された粘着層13付きの金属基材12が搬送される。
【0041】
次に、押圧部25において、ガラスフィルム11に粘着層13を介して金属基材12が積層されて貼り付けられる。このようにして、図2に示すガラスフィルム積層体10が得られる。
【0042】
その後、得られたガラスフィルム積層体10は、巻取部26に搬送されて、コア27aに巻き取られる。このようにしてガラスフィルム積層体ロール27が形成される。
【0043】
ところで、ガラスフィルム積層体の製造装置20においてガラスフィルム積層体10を製造している間、ガラスフィルム供給部21および金属基材供給部22から巻取部26に搬送されているガラスフィルム11および金属基材12に、所定の張力が負荷されている。しかしながら、金属基材12は10GPa以上のヤング率を有していることにより、ガラスフィルム11の変形量と金属基材12の変形量とを同程度にすることができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。
【0044】
上述したガラスフィルム積層体10を用いてカラーフィルタ1を製造する場合には、まず、ガラスフィルム積層体ロール27からガラスフィルム積層体10が繰り出され、ガラスフィルム11上に画素用感光性材料が塗布されて、乾燥(プリベーク)、露光、現像およびポストベークという一連の工程を画素毎に繰り返すことで、ガラスフィルム11上に各色の画素2、3、4およびブラックマトリックス5が形成される。
【0045】
なお、現像の後、画素が形成されたガラスフィルム積層体10は巻き取られて、加熱オーブン(図示せず)に投入される。この加熱オーブンにおいて、ガラスフィルム積層体10は、例えば、200℃で30分間加熱されて、ポストベークされる。ポストベークされたガラスフィルム積層体10は、加熱オーブンから取り出されて、大気中で冷却される。この冷却によって、ガラスフィルム積層体10のガラスフィルム11および金属基材12は収縮する。しかしながら、金属基材12の熱収縮率は、0.05%以下であるため、ガラスフィルム11の収縮量と金属基材12の収縮量とを同程度にすることができ、ガラスフィルム11が反る等によるガラスフィルム11の変形を防止することができる。
【0046】
また、ガラスフィルム11上に画素用感光性材料を塗布して、乾燥、露光および現像を行っている間、ガラスフィルム11および金属基材12に所定の張力が負荷されているが、金属基材12は10GPa以上のヤング率を有していることにより、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。
【0047】
続いて、各画素2、3、4を覆う保護層6が形成され、保護層6上に透明電極膜7が形成されて、図3に示すカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体1aが得られる。その後、金属基材12が粘着層13と共にガラスフィルム11から剥離されて、図1に示すカラーフィルタ1を得ることができる。
【0048】
このように本実施の形態によれば、ガラスフィルム11は、金属基材12によって支持されている。このことにより、ガラスフィルム11を補強することができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。この場合、ガラスフィルム積層体10を、ロール・ツー・ロールプロセスにおいて、安定して搬送することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、金属基材12が、10GPa以上のヤング率を有していることにより、ガラスフィルム11のヤング率と金属基材12のヤング率との差を低減することができる。この場合、ロール・ツー・ロールプロセスにおいてガラスフィルム積層体10に張力が負荷された場合であっても、ガラスフィルム11の変形量と、金属基材12の変形量を同程度にすることができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、金属基材12の熱収縮率が、0.05%以下であることにより、ガラスフィルム11の熱収縮率と金属基材12の熱収縮率との差を低減することができる。この場合、カラーフィルタ用の画素2、3、4を形成する場合に、画素2、3、4をポストベークするために加熱処理して冷却した場合であっても、ガラスフィルム11の収縮量と金属基材12の収縮量との差が低減され、ガラスフィルム11が反る等によるガラスフィルム11の変形を防止することができる。この結果、ガラスフィルム積層体10を、ロール・ツー・ロールプロセスにおいて、安定して搬送することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、ガラスフィルム11が金属基材12によって支持されているため、ガラスフィルム11がプラスチックフィルム(図示せず)によって支持されたガラスフィルム積層体を加熱処理した場合に析出されるオリゴマー等の異物の発生を防止することができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、ガラスフィルム11が金属基材12によって支持されていることにより、以下のような利点が生じる。すなわち、単体のガラスフィルム11を、異物を巻き込んで巻き取った場合には、局所的な衝撃、加圧、傷等により、ガラスフィルム11が容易に破損する可能性があるが、ガラスフィルム11に金属基材12を貼り合せることにより、ガラスフィルム11を補強して、ガラスフィルム11の破損を防止可能にしている。また、ガラスフィルム11に金属基材12を貼り合せることにより、ガラスフィルム11が割れた場合であっても、ガラスの破片等の飛散を防止することができる。
【0053】
さらに、本実施の形態によれば、カラーフィルタ用の複数色の画素2、3、4が設けられたガラスフィルム積層体10のガラスフィルム11の変形を防止することができる。このことにより、カラーフィルタ1の表示画像の精度を向上させることができる。
【0054】
なお、本実施の形態においては、金属基材12が箔状に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、金属基材12が、例えば金属メッシュのように、網状に形成されていてもよい。この場合においても、ガラスフィルム11を支持することができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。
【0055】
(第2の実施の形態)
次に、図5により、本発明の第2の実施の形態におけるガラスフィルム積層体について説明する。
【0056】
図5に示す第2の実施の形態においては、ガラスフィルムに、粘着層を介して、ガラスクロスを有する支持基材が積層されている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図5において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
図5に示すように、本実施の形態におけるガラスフィルム積層体10は、ガラスフィルム11と、ガラスフィルム11に粘着層13を介して積層された支持基材31と、を備えている。このうち支持基材31は、ガラスクロス32を有するガラス含有プラスチックフィルム33により構成されている。
【0058】
ガラスクロス32とは、微細な多数のガラス繊維により形成された織布である。このガラス繊維に用いる材料としては、特に限定されるものではなく、ガラスフィルム11と同様の材料とすることができる。また、ガラス繊維の繊維径は、3〜24μmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム11の補強に必要な強度を確保できると共に、ガラスクロス32を有するガラスフィルム積層体10をロール状に巻き取ることが可能となる。なお、ガラス繊維の繊維径の測定方法としては、JIS L 1095に準拠して測定することが好適である。
【0059】
ガラス含有プラスチックフィルム33は、ガラスクロス32に樹脂を含浸させたものであって、ここで用いるプラスチック材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。また、ガラス含有プラスチックフィルム33の厚さは、10〜300μmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム11の補強に必要な強度を確保することができると共に、ガラス含有プラスチックフィルム33を有するガラスフィルム積層体10をロール状に巻き取ることが可能になる。
【0060】
なお、このような本実施の形態における支持基材31を有するガラスフィルム積層体10は、図4に示すガラスフィルム積層体の製造装置20を用いて、第1の実施の形態によるガラスフィルム積層体10と同様にして製造することができる。
【0061】
このように本実施の形態によれば、ガラスフィルム11は、支持基材31としてのガラスクロス32を有するガラス含有プラスチックフィルム33によって支持されている。このことにより、ガラスフィルム11を補強することができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。この場合、ガラスフィルム積層体10を、ロール・ツー・ロールプロセスにおいて、安定して搬送することができる。
【0062】
とりわけ、本実施の形態によれば、支持基材31がガラスクロス32を有していることにより、ガラスフィルム11のヤング率と支持基材31のヤング率との差を低減することができる。この場合、ロール・ツー・ロールプロセスにおいて、ガラスフィルム11の変形量と支持基材31の変形量を同程度にすることができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。また、ガラスフィルム11の熱収縮率と支持基材31の熱収縮率との差を低減することができるため、加熱処理して冷却した場合であっても、ガラスフィルム11の収縮量と支持基材31の収縮量との差が低減され、ガラスフィルム11が反る等によるガラスフィルム11の変形を防止することができる。この結果、ガラスフィルム積層体10を、ロール・ツー・ロールプロセスにおいて、安定して搬送することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、ガラスフィルム11がガラス含有プラスチックフィルム33によって支持されていることにより、ガラスフィルム11を補強することができる。このため、ガラスフィルム積層体10を、異物を巻き込んで巻き取った場合においても、局所的な衝撃、加圧、傷等によりガラスフィルム11が破損することを防止できる。また、ガラスフィルム11にガラス含有プラスチックフィルム33を貼り合せることにより、ガラスフィルム11が割れた場合であっても、ガラスの破片等の飛散を防止することができる。
【0064】
さらに、本実施の形態によれば、カラーフィルタ用の複数色の画素2、3、4が設けられたガラスフィルム積層体10のガラスフィルム11の変形を防止することができる。このことにより、カラーフィルタ1の表示画像の精度を向上させることができる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、支持基材31がガラスクロス32を有するガラス含有プラスチックフィルム33により構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図6に示すように、支持基材31が、ガラスクロス32のみにより構成されていてもよい。この場合においても、ガラスフィルム11を補強することができ、ガラスフィルム11の変形を防止することができる。また、この場合、支持基材31にプラスチック材料が含まれていないため、ガラスフィルム11がプラスチックフィルム(図示せず)によって支持されたガラスフィルム積層体を加熱処理した場合に析出されるオリゴマー等の異物の発生を防止することができる。なお、図6に示す形態において用いられるガラスクロス32の厚さは、10〜300μmであることが好ましい。このことにより、ガラスフィルム11の補強に必要な強度を確保することができると共に、ガラスクロス32を有するガラスフィルム積層体10をロール状に巻き取ることが可能になる。このようなガラスクロス32としては、例えば、ユニチカ株式会社製のガラスクロス E06B(厚さ55μm)を用いることができる。なお、ガラスクロス32の厚さの測定方法としては、オリンパス社製超音波厚み測定装置(35DL−HP)を用いて測定することが好適である。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、当然のことながら、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【実施例】
【0067】
本発明の第1の実施の形態によるガラスフィルム積層体10を、ロール・ツー・ロールプロセスに適用した場合、および、カラーフィルタ1用の画素2、3、4を形成するために加熱処理をした場合において、ガラスフィルム11が変形するかどうかを確認した。
【0068】
まず、ガラスフィルム11として、厚さ70μm、幅300mm、長さ10mの薄板ガラス(日本電気硝子社製、OA−10G)を準備した。また、金属基材12として、厚さ50μm、幅300mm、長さ10mの粘着層付きステンレス箔(日本金属株式会社製、鋼種SUS304)を準備した。この金属基材12に設けられた粘着層13上には、カバーシート14が剥離自在に貼り付けられている。
【0069】
続いて、ラミネーターにより、ガラスフィルム11に、粘着層13を介して金属基材12を積層して貼り付けて、ガラスフィルム積層体10を得た。得られたガラスフィルム積層体10を、直径が6インチのコア27aに巻き取り、ガラスフィルム積層体ロール27を形成した。
【0070】
次に、ガラスフィルム積層体ロール27を塗工装置の巻出部にセットし、ガラスフィルム積層体10を繰り出した。
【0071】
そして、繰り出されたガラスフィルム積層体10のガラスフィルム11上に、マイクログラビアにてレジストを塗布し、その後に露光および現像を行った。
【0072】
現像後、ガラスフィルム積層体10を巻き取り、加熱オーブンに投入し、200℃、30分間加熱してポストベークを行った。ポストベーク後、ガラスフィルム積層体10を加熱オーブンから取り出して、大気中で冷却した。
【0073】
その後、他の画素用の塗工装置の巻出部にセットし、ガラスフィルム積層体10を繰り出した。この際、ガラスフィルム積層体10がスムーズに繰り出されることが確認できた。すなわち、ガラスフィルム11に反り等の変形が生じていないことが確認できた。
【0074】
(比較例)
金属基材12の代わりに支持基材として、厚さ50μm、幅300mm、長さ10mの粘着層付きPETフィルム(リンテック社製、フジクリア50)を用いたこと以外は、実施例と同様にしてガラスフィルム積層体を作製した。しかしながら、実施例のようにポストベークして冷却した後に塗工装置の巻出部にセットしてガラスフィルム積層体を繰り出そうとしたが、ガラスフィルム11に反りが発生していたため、ガラスフィルム11が割れ、ガラスフィルム積層体を繰り出すことができなかった。
【0075】
以上の説明においては、本発明によるガラスフィルム積層体をカラーフィルタに適用した例を示している。しかしながらこのことに限られることはなく、カラーフィルタの対向基板であるTFT基板若しくは電極基板、有機EL用表示素子基板、または太陽電池等の基板に、本発明によるガラスフィルム積層体を適用することも可能である。さらには、既存のガラス製品の全て、例えば、建築、家具装飾、電子デバイス、半導体デバイス、車体部材などに用いられるガラス製品にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 カラーフィルタ
1a カラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体
2 赤色画素
3 緑色画素
4 青色画素
5 ブラックマトリックス
6 保護層
7 透明電極膜
10 ガラスフィルム積層体
11 ガラスフィルム
12 金属基材
13 粘着層
14 カバーシート
20 ガラスフィルム積層体の製造装置
21 ガラスフィルム供給部
22 金属基材供給部
23 剥離部
24 回収部
25 押圧部
26 巻取部
27 ガラスフィルム積層体ロール
27a コア
31 支持基材
32 ガラスクロス
33 ガラス含有プラスチックフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された金属基材と、を備えたことを特徴とするガラスフィルム積層体。
【請求項2】
前記金属基材は、10GPa以上のヤング率を有していることを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項3】
前記金属基材の熱収縮率は、IPC TM650 Method2.2.4に準拠して、230℃、150分後の焼成後に、0.05%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項4】
ガラスフィルムと、
前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された支持基材と、を備え、
前記支持基材は、ガラスクロスを有することを特徴とするガラスフィルム積層体。
【請求項5】
前記支持基材は、前記ガラスクロスを有するガラス含有プラスチックフィルムにより構成されていることを特徴とする請求項4に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項6】
ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された金属基材と、を有するガラスフィルム積層体と、
前記ガラスフィルム積層体の前記ガラスフィルム上に設けられたカラーフィルタ用の複数色の画素と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体。
【請求項7】
ガラスフィルムと、前記ガラスフィルムに粘着層を介して積層された支持基材と、を有するガラスフィルム積層体と、
前記ガラスフィルム積層体の前記ガラスフィルム上に設けられたカラーフィルタ用の複数色の画素と、を備え、
前記支持基材は、ガラスクロスを有することを特徴とするカラーフィルタ用の画素付ガラスフィルム積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−35132(P2013−35132A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170364(P2011−170364)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】